説明

眼および付属器組織の炎症を処置するための治療組成物

本発明は、炎症性サイトカインIL-Iの機能を阻害する手段を有する組成物、ならびに局所表面投与による眼および付属器組織の炎症疾患を処置するために本発明の組成物を用いるための方法を含む。本発明はまた、標的組織にこの組成物を送達するための装置も開示する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、そのそれぞれの全内容物が参照により本明細書に組み入れられる、2007年8月16日に提出された仮出願である米国特許出願第60/965,135号、および2008年6月2日に提出された米国特許出願第61/130,687号に関連する。
【0002】
発明の分野
本発明は一般的に眼科学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
眼および付属器組織の炎症は、多様な機序によって起こりえて、多数の疾患状態に一次的にまたは二次的に関連する。これらの組織の炎症に関する現在の処置は、抗生物質、ステロイド、および免疫系阻害剤の全身投与を伴う。これらの全身投与薬を用いることの難しさは、ステロイドの場合では長期の障害性の副作用、抗生物質の場合には長期の薬物耐性、またはシグナル伝達阻害剤の場合には標的部位での不適切な長期間の持続を通して明らかとなっている。その上、免疫系におけるシグナル伝達の全身的阻害は、疾患に既に罹患している個体に関して有害な結末を有しえて、これらの処置の全身的な使用の結果として追加の合併症に対する個体の感受性が増加する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、眼および付属器組織の炎症を局所的に減少または予防するために、IL-1機能の1つまたは複数のアンタゴニスト、またはIL-1と他の炎症アンタゴニストとの併用を含む局所表面組成物を投与することによってこれらの障害を克服する。
【0005】
眼の炎症障害を抑制またはその重症度を低減させるための方法は、炎症性IL-1サイトカインのIL-1受容体への結合などの炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を、被験体の眼または付属器組織に局所投与することによって行われる。被験体は、炎症性サイトカインの上皮過剰発現、眼瞼縁の血管過形成もしくは肥厚、眼瞼縁もしくは角膜辺縁部の新生血管形成、眼もしくは付属器組織での白血球の増加、または眼もしくは付属器組織でのマトリクスメタロプロテアーゼの過剰発現からなる群より選択される徴候または症状を検出することによって、眼の炎症障害に罹っていると同定される。治療法は、これらの徴候または症状の少なくとも1つを阻害またはその重症度を低減させる。たとえば、炎症障害は眼瞼炎である。方法は、炎症性IL-1サイトカインのIL-1受容体への結合を阻害する化合物の投与を含む。任意で、組成物はまた、抗生物質化合物も含有する。組成物は、たとえばIL-1を特異的に標的とする機能的アンタゴニストの非存在下で、テトラサイクリンを単独で含まない。たとえば、組成物は、IL-1を特異的に標的とする機能的アンタゴニストと併用して投与される抗生物質組成物を含む。
【0006】
炎症性IL-1サイトカインのIL-1受容体への結合を阻害する組成物は、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含む。たとえば、組成物は、0.1%〜10%の濃度範囲で存在し、好ましい範囲は1〜5%、または2〜2.5%(mg/ml)である。点眼液のための例示的な液体製剤は、2〜2.5%(mg/ml)の組成物を含有する。好ましい製剤は、固体、パスタ剤、軟膏、ゲル、液剤、エアロゾル剤、噴霧剤、ポリマー剤、フィルム剤、乳剤、または懸濁剤の剤形である。製剤は局所表面に投与され、たとえば組成物はその組織に直接接触するように眼または付属器組織に送達される。方法は、組成物の全身投与または非眼もしくは非付属器組織への実質的な散布を伴わない。たとえば、Kineret(SEQ ID NO:15および16を参照されたい)の1〜2 mg/kgの皮下注射によって、注射後7時間での推定ピーク血清濃度約1200〜1500 ng/mlが得られる。本明細書において開示されるように、Kineretの局所表面投与は、皮下注射よりかなり大きい程度に薬物の吸収を時間的および空間的に制限する。局所表面に投与されたKineret組成物の全身への散布は、皮下注射より、血清濃度に対する薬物の寄与が有意に少ない。
【0007】
任意で、組成物はさらに、生理的に許容される塩、カルボポル(carbopol)を有するポロキサマー類似体、カルボポル/ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボポル-メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、および鉱油からなる群より選択される化合物を含有する。
【0008】
本発明は、炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を含み、組成物は固体、パスタ剤、軟膏、ゲル、液剤、エアロゾル剤、噴霧剤、ポリマー剤、フィルム剤、乳剤、または懸濁剤の剤形である。組成物は、0.1〜10%(mg/ml)の濃度で存在する。例示的な組成物には、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むポリペプチドが含まれる。
【0009】
眼の炎症障害を阻害またはその重症度を低減させるための方法はまた、炎症性インターロイキン-1サイトカイン(IL-1a、SEQ ID NO:1および2、またはIL-1b、SEQ ID NO:3および4)、IL-1受容体(1型、SEQ ID NO:17および18、または2型、SEQ ID NO:17〜21)、IL-1R結合タンパク質(IL-1RAP、SEQ ID NO:24〜27)、またはIL-1R下流のシグナル伝達エフェクター(IRAK1、SEQ ID NO:28〜33)をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む組成物を被験体の眼または付属器組織に局所投与することによっても行われる。
【0010】
または、組成物は、IL-1受容体2型(IL-1R2)をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害または増強する。IL-1R2はIL-1に結合して、IL-1R1の機能を阻害することができる。このように、1つの態様において、IL-1R2の機能の増強は、それによってIL-1R1活性が阻害されるもう1つの機序を提供する。この同じ態様において、IL-1R2のアンタゴニスト、特にIL-1Ra3の阻害は、IL-1R1機能を阻害する。このように、組成物単独またはIL-1R2のエンハンサーとの併用は、IL-1Ra3をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチド、SEQ ID NO:22または23の転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する。または、IL-1R2受容体機能がIL-1R1の活性を増大させる態様において、組成物は、IL-1R2阻害を増大させるためにIL-1Ra3をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの1つまたは複数の領域を含有する。その上、本態様の組成物は、IL-1Ra3をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチド全体を含む。
【0011】
組成物は、IL-1受容体のアクセサリタンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む。たとえば、このIL-1受容体アクセサリタンパク質は、IL-1RAPであり、これはIL-1およびIL-1R1に直接結合して、SEQ ID NO:24または26のポリヌクレオチド配列、およびSEQ ID NO:25または27のポリペプチド配列によって定義される。IL-1RAPは、IL-1R1からのシグナル伝達にとって必要であるシグナル伝達複合体に属する。このように、IL-1RAPの阻害はIL-1R1機能に拮抗する。
【0012】
もう1つの態様において、組成物は、IL-1受容体の関連キナーゼをコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む。たとえば、IL-1受容体関連キナーゼはIRAK1である。IRAK1は、漸増する炎症反応に関連する転写事象をもたらす下流のシグナル伝達エフェクターであり、SEQ ID NO:28、30、または32のポリヌクレオチド配列、およびSEQ ID NO:29、31、または33のポリペプチド配列によって定義される。IL-1がIL-1受容体に結合すると、IRAK1は、受容体複合体に動員され、過リン酸化されるようになり、過リン酸化IRAK1およびTRAF6からなる新しいタンパク質複合体の形成に関与する。このIRAK1/TRAF6複合体の形成は、核因子κB(NF-κB)の腫瘍壊死因子(TNF)関連因子6(TRAF6)媒介活性化およびその後の炎症反応の誘導にとって必須である。このように、IRAK1発現および/または機能の阻害は、IL-1媒介免疫応答の阻害にとって追加の機序を提供する。
【0013】
組成物は、IL-1α、IL-1b、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、またはIRAK1に結合するまたはその機能を改変するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または低分子を含む。その上、組成物は、遺伝子発現をサイレンシングするために、モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、または低分子干渉RNA(siRNA)を含む。局所表面投与のために適合される例示的な化合物には、アナキンラ/Kineret(登録商標)(組み換え型ヒトIL-1Ra、rhIL-1Ra、ならびにSEQ ID NO:15および16)、IL-1Rアンチセンスオリゴマー(米国特許第2005033694号)、IL-1Ra様核酸分子(Amgen、米国特許第2001041792号)、および可溶性IL-1Rアクセサリ分子をコードするポリヌクレオチド(Human Genome Sciences、米国発行特許第6974682号)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0014】
組成物は、遺伝子発現をサイレンシングするために眼または付属器組織に局所表面投与するように適合されたマイクロRNA分子を含む。ヒトIL-1αに結合する例示的なmiRNAには、miR-30c(SEQ ID NO: 34)、miR-30b(SEQ ID NO: 35)、miR-30a-5p(SEQ ID NO: 36)、およびmiR-24(SEQ ID NO: 37)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。ヒトIL-1R1に結合する例示的なmiRNA(およびその対応する配列)には、miR-135b(SEQ ID NO: 38)、miR-326(SEQ ID NO: 39)、miR-184(SEQ ID NO: 40)、miR-214(SEQ ID NO: 41)、miR-203(SEQ ID NO: 42)、miR-331(SEQ ID NO: 43)、およびmiR-205(SEQ ID NO: 44)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0015】
眼または付属器組織に局所表面投与されるために適合される例示的なポリペプチドには、アナキンラ/Kineret(登録商標)(組み換え型ヒトIL-1Ra、rhIL-1Ra、ならびSEQ ID NO: 15および16)、AF12198(ヒトIL-1R1に結合する、Ac-FEWTPGWYQJYALPL-NH2、式中Jは、非天然アミノ酸、2-アゼチジン-1-カルボン酸を表す、SEQ ID NO: 45)、IL-1RおよびIL-1RAPペプチドアンタゴニスト(米国特許第20060094663号)、IL-1Rアクセサリ分子ポリペプチド(米国特許第20050171337号)、IL-1Raペプチド(米国特許第2005105830号)、ならびにIL-1Ra関連ペプチド(Amgen、米国特許第2001042304号)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0016】
眼または付属器組織に局所表面投与されるために適合される例示的なポリペプチドには、IL-1 TRAP(IL-1R-gp130とhIgGFcとの直列融合二重鎖タンパク質、Regeneron、米国発行特許第6,927,044号)、抗IL-1α(米国特許第20030026806号)、抗IL-1β(米国特許第20030026806号、およびYamasaki et al. Stroke. 1995; 26:676-681)、およびヒト化モノクローナル抗IL-1R(Amgen、米国特許第2004022718号、およびRoche、米国特許第2005023872号)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0017】
低分子は有機または無機分子である。例示的な有機低分子には、脂肪族炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、有機酸、エステル、単糖および二糖、芳香族炭化水素、アミノ酸、ならびに脂質が含まれるがこれらに限定されるわけではない。例示的な無機低分子は、微量元素、鉄、フリーラジカル、および代謝物を含む。または、低分子阻害剤を、酵素の結合ポケットを埋めるために断片、小さい部分、またはより長いアミノ酸からなるように合成的に工学操作することができる。典型的に、低分子は1キロダルトン未満である。眼または付属器組織に局所表面投与するために適合される例示的な低分子は、ZnPP(IL-1遮断剤亜鉛プロトポルフィリン、天然に存在する代謝物、Yamasaki et al. Stroke. 1995; 26:676-681)である。
【0018】
組成物は、IL-1機能のアンタゴニストと併用して用いられる1つまたは複数の抗生物質組成物を含むか、または含まない。抗生物質およびIL-1アンタゴニスト組成物は、同時または連続的に投与される。IL1媒介炎症のアンタゴニストとの併用治療のために用いられる例示的な抗生物質組成物には、アミカシン、ゲンタミシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、テイコプラニン、バンコマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロザシリン、ジクロキサシリン、フルコザシリン、メズロシリン、ナフシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフラザシン、トロバフロキサシン、マフェニド、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、コトリモキサゾール、デメクロサイクリン、ソキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、またはテトラサイクリンが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0019】
組成物は、第二の免疫抑制組成物と同時または連続的に投与されるIL-1サイトカインまたはIL-1受容体のアンタゴニストを含む。免疫抑制化合物は、シクロスポリンAまたはその類似体を0.05〜4.0%(mg/ml)の濃度で含む。または、もしくは加えて、免疫抑制組成物は、グルココルチコイド、細胞増殖抑制剤、アルキル化剤(ナイトロジェンマスタード/シクロホスファミド、ニトロソウレア、白金化合物)、代謝拮抗剤(メソトレキセート、任意の葉酸類似体、アザチオプリン、メルカプトプリン、任意のプリン類似体、任意のピリミジン類似体、タンパク質合成阻害剤)、細胞障害性抗生物質(ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミスラマイシン)、ポリクローナル抗体(Atgam(登録商標)、Thympglobuline(登録商標)、抗リンパ球または抗胸腺細胞抗原に対する任意の抗体)、モノクローナル抗体(OKT3(登録商標)、T細胞受容体に対する任意の抗体、IL-2に対する任意の抗体、バシリキシマブ/Simulect(登録商標)、デクリズマブ/Zenapax(登録商標))、タクロリムス/Prograf(商標)/FK506、シロリムス/Rapamune(商標)/ラパマイシン、インターフェロンβ、インターフェロンγ、オピオイド、TNFα結合タンパク質、ミコフェノレート(mycophenolate)、またはFTY720を含む。
【0020】
組成物は、薬学的に適当な担体と共に局所表面投与される、IL-1α、IL-1b、IL-1Ra、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、またはIRAK1に結合するまたはその機能を改変するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または低分子を含む。ポリヌクレオチド組成物の送達法には、中でも、リポソーム、受容体媒介送達系、裸のDNA、ならびにヘルペスウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスなどの工学操作されたウイルスベクターが含まれるがこれらに限定されるわけではない。ポリヌクレオチド組成物は、薬学的に許容される液体担体、たとえば、水性または部分的に水性である液体担体と共に局所表面投与される。または、組成物内のポリヌクレオチド配列はリポソーム(たとえば、陽イオンまたは陰イオンリポソーム)に会合する。
【0021】
低分子DNAまたはRNA配列を細胞に送達するために、多数の方法が開発されており;たとえばポリヌクレオチド配列を、組織部位に直接接触させることができ、または所望の細胞タイプを特異的に標的とするように設計された改変ポリヌクレオチド分子(たとえば、標的細胞表面上に発現された受容体または抗原に特異的に結合するペプチドまたは抗体に連結した配列)が開発されている。
【0022】
好ましいアプローチは、低分子ポリヌクレオチド配列が、強いポリメラーゼIIIまたはポリメラーゼIIプロモーターの制御下に置かれる組み換え型DNA構築物を用いる。そのような構築物を用いることによって、本発明の核酸分子の内因性の転写物と相補的塩基対を形成するであろう十分量のポリヌクレオチドの転写が起こり、それによって内因性のmRNA転写物の翻訳が防止されるであろう。本発明は、鋳型として相補鎖を用いる低分子ポリヌクレオチドの構築を包含する。たとえば、ベクターを、それが細胞に取り込まれて干渉RNAまたは前駆体の二本鎖RNA分子への転写を指示するように、インビボで導入することができる。または、低分子ポリヌクレオチド転写物の鋳型を、細胞タイプ特異的プロモーターまたは他の調節要素の転写制御下に置く。このように、局所表面に投与された組成物が、意図される眼または付属器標的組織を超えて拡散または吸収しても、有害または全身性の副作用を引き起こさない。ベクターは、それが転写されて望ましいポリヌクレオチドを産生することができる限り、エピソームに留まるか、または染色体に組み入れられるようになる。
【0023】
ベクターは、当技術分野において標準的な組み換えDNA技術法によって構築される。ベクターは、哺乳動物細胞における複製および発現のために用いられる、プラスミド、ウイルス、または当技術分野において公知の他のベクターでありうる。低分子ポリヌクレオチドをコードする配列の発現を、哺乳動物、好ましくはヒト細胞において作用することが当技術分野において公知である任意のプロモーターの制御下に置くことができる。プロモーターは誘導型または構成的である。例示的なプロモーターには、SV40初期プロモーター領域(Bernoist et al., Nature 290:304, 1981);ラウス肉腫ウイルスの3'長末端反復に含有されるプロモーター(Yamamoto et al., Cell, 22:787-797, 1988);ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:1441, 1981);またはメタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster et al., Nature, 296:39, 1988)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0024】
ポリペプチド組成物は、細胞質膜を超えて輸送することができるように、単独で、または受容体媒介送達系と一緒にリポソームに会合する。ポリペプチド組成物は、可溶性または膜結合型である。例示的な受容体媒介送達系は、C型肝炎ウイルス(HCV)感染症およびHCV媒介薬物送達法に関して観察されるように、低密度リポタンパク質(LDL)受容体(LDLR)に対する、粒子または小胞を含有する低密度または超低密度リポタンパク質の融合を伴う。
【0025】
組成物は、イントラボディとも呼ばれる、以下の1つまたは複数に対して作製された1つまたは複数の細胞外または細胞内抗体を含む:IL-1α、IL-1b、IL-1Ra、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、またはIRAK1。細胞外抗体は、薬理学的に適当な水性または非水性担体と共に局所表面投与される。細胞内抗体をコードする配列を、ウイルスまたは哺乳動物発現ベクターにサブクローニングして、細胞質膜を超えての輸送を促進するために親油性装置に充填して、薬理学的に適当な水性または非水性担体と共に眼または付属器組織に局所表面投与する。細胞質膜内部に入ると、宿主細胞の機構が、イントラボディのコードを転写、翻訳、およびプロセシングして、IL-1α、IL-1b、IL-1Ra、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、またはIRAK1を標的とする細胞内機能遮断抗体を生成する。分泌型抗体の場合、細胞内抗体は、標的タンパク質の翻訳後修飾または分泌を防止する。膜結合型分子の場合、細胞内抗体は、IL-1サイトカインによる受容体の会合時の細胞内シグナル伝達事象を防止する。
【0026】
組成物は、他の阻害要素と組み合わせてIL-1および/またはIL-1R機能のアンタゴニストを含む。IL-1および/またはIL-1Rのアンタゴニストおよび他の阻害要素は、同時または連続的に投与される。1つの態様において、組成物は、IL-1および/またはIL-1R機能のアンタゴニストと、腫瘍壊死因子α(TNFα)のアンタゴニストとを含む。TNFαの例示的な機能的遮断剤には、組み換え型および/または可溶性TNFα受容体、モノクローナル抗体、および低分子アンタゴニストおよび/または逆アゴニストが含まれるがこれらに限定されるわけではない。1つまたは複数の市販のTNF-α遮断物質は、この態様において局所表面投与のために再製剤化される。再製剤化のために用いられる例示的な市販のTNFα遮断剤には、エタネルセプト/Embrel、インフリキシマブ/Remicade、およびアダリムマブ/Humiraが含まれるがこれらに限定されるわけではない。または、組成物は、IL-1および/またはIL-1R機能のアンタゴニストおよび1つまたは複数のインターロイキンサイトカインのアンタゴニストを含む。例示的なサイトカインには、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-12、IL-17、IL-18、およびIL-23が含まれるがこれらに限定されるわけではない。もう1つの態様において、組成物は、IL-1および/またはIL-1R機能のアンタゴニスト、ならびに増殖因子および受容体(VEGFR)で構成される血管上皮増殖因子(VEGF)ファミリーの1つまたは複数のメンバーのアンタゴニストを含む。例示的なメンバーには、VEGF-A、VEGF-C、VEGFR-2、およびVEGFR-3が含まれるがこれらに限定されるわけではない。もう1つの態様において、組成物は、IL-1および/またはIL-1R機能のアンタゴニストとインターフェロン-γのアンタゴニストとを含む。もう1つの態様において、組成物は、IL-1および/またはIL-1R機能のアンタゴニストと1つまたは複数のケモカインおよびその受容体のアンタゴニストとを含む。本態様の組成物によって含まれる例示的なケモカインおよび受容体には、ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体1(CCRl)、ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体2(CCR2)、ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体5(CCR5)、ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体7(CCR7)、およびケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体3(CXCR3)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0027】
組成物がIL-1および/またはIL-1R機能のアンタゴニストと1つまたは複数の炎症種のアンタゴニストを含む態様において、IL-1アンタゴニスト対他の炎症アンタゴニストのそれぞれの用量は、1:10〜10:1の比(質量/重量)である。または、比は、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、または9:1である。
【0028】
本発明はまた、炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物と、薬学的に適合性のポリマーからなるコンタクトレンズ装置も含む。本組成物はまた、IL-1またはIL-1R機能のアンタゴニストと他の炎症物質のアンタゴニストとの組み合わせを含む。たとえば、組成物は、レンズに組み入れられる、またはコーティングされる。組成物は、コンタクトレンズポリマーによって化学的に結合されるかまたは物理的に捕捉される。コンタクトレンズは、疎水性または親水性のいずれかである。
【0029】
本発明は、炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物と薬学的に適合性のポリマーからなる薬物送達装置を含む。この組成物はまた、IL-1またはIL-1R機能のアンタゴニストと他の炎症物質のアンタゴニストとの組み合わせを含む。たとえば、組成物は、ポリマーに組み入れられる、またはポリマーにコーティングされる。組成物は、ポリマーによって化学的に結合されるかまたは物理的に捕捉される。コンタクトレンズは、疎水性または親水性のいずれかである。ポリマー装置は、多数の物理的配置を含む。ポリマー装置の例示的な物理的型には、フィルム、足場、チャンバ、球、マイクロスフェア、ステント、または他の構造が含まれるがこれらに限定されるわけではない。ポリマー装置は内部および外部表面を有する。装置は、1つまたは複数の内部チャンバを有する。これらのチャンバは1つまたは複数の組成物を含有する。装置は、1つまたは複数の化学的に区別可能なモノマーのポリマーを含有する。装置のサブユニットまたはモノマーは、インビトロまたはインビボで重合化する。
【0030】
装置から形成される例示的な粘膜接着性の多価陰イオン性の天然または半合成ポリマーには、ポリガラクツロン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルアミロース、カルボキシメチルキチン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン硫酸、およびメソグリカンが含まれるがこれらに限定されるわけではない。1つの態様において、装置は、任意で全体または部分的に生体分解性であってもよい生体適合性のポリマーマトリクスを含む。ハイドロゲルは、適したポリマーマトリクス材料の一例である。ハイドロゲルを形成することができる材料の例には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGAポリマー、アルギネートおよびアルギネート誘導体、ゼラチン、コラーゲン、アガロース、天然および合成多糖類、ポリペプチドなどのポリアミノ酸、特にポリ(リジン)、ポリヒドロキシブチレートおよびポリ-ε-カプロラクトンなどのポリエステル、ポリアンヒドリド、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、特にポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)(PAM)、ポリ(アクリレート)、ポリ(4-アミノメチルスチレン)などの修飾スチレンポリマー、プルロニックポリオール、ポリオキサマー、ポリ(ウロン酸)、ポリ(ビニルピロリドン)、およびグラフトコポリマーが含まれる上記のコポリマーが含まれる。もう1つの態様において、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、アガロース、およびラミニンに富むゲルなどの、しかしこれらに限定されない多様な合成ポリマーおよび天然に存在するポリマーから足場を加工してもよい。
【0031】
ハイドロゲルのための1つの好ましい材料は、アルギネートまたは修飾アルギネート材料である。アルギネート分子は、(1-4)-連結β-D-マンヌロン酸(M単位)とαL-グルロン酸(G単位)モノマーとを含み、これらは比率およびポリマー鎖に沿った配列分布が多様である。アルギネート多糖類は、二価の陽イオン(たとえば、Ca+2、Mg+2、Ba+2)に対して強い親和性を有する多電解質系であり、これらの分子に曝露されると安定なハイドロゲルを形成する。Martinsen A., et al., Biotech. & Bioeng., 33 (1989) 79-89を参照されたい。
【0032】
本発明の態様は、アルギネートまたは低分子量の他の多糖類、好ましくは溶解後、ヒトによる腎クリアランス閾値である大きさの多糖類を利用する。ポリマー装置は、局所表面にまたは非常に浅い皮下に配置され、ポリマー装置に化学的に結合したもしくは物理的に捕捉された組成物、または装置それ自身は、分解して、体から排泄されなければならない。生体分解性のポリマー装置に関して、アルギネートまたは多糖類は分子量が1000〜80,000ダルトンまで低減されることが好ましく、より好ましくは1000〜60,000ダルトン、特に好ましくは1000〜50,000ダルトンまで低減される。同様に、グルロネート単位はマンヌロネート単位と比較して、二価の陽イオンを通してイオンクロスリンクのための部位を提供して、ポリマーをゲル化することから、高いグルロネート含有量のアルギネート材料を用いることも有用である。
【0033】
内部および外部表面は、任意で孔を含有する。孔は、被験体に投与する前に作製されるか、または被験体に投与する際に表面を貫通する孔形成物質を装置内に含めることに起因する。例示的な孔形成物質には、無機塩および糖などの水溶性化合物が含まれるがこれらに限定されるわけではない。孔形成物質は微粒子として加えられ、1〜30%(重量/ポリマーの重量)を含む。孔の大きさは、タンパク質の拡散にとって十分であるが、細胞が装置の内にまたは外に移動するほど大きくない。
【0034】
装置は、結膜下の局所表面に、または強膜上空隙で皮下、または腺管内に投与される。具体的に、装置は、眼または付属器組織の表面上にまたは表面の真下に置かれる。または、装置は、涙管または腺の内部に置かれる。ポリマーの中または上に組み入れられる組成物は、装置から放出されるかまたは拡散する。
【0035】
本発明は、後部眼瞼炎の症状または関連する状態を呈する被験体の眼または付属器組織表面に、IL-1R活性を阻害する手段を有する組成物を接触させる方法を含む。この状態に関する他の全ての処置とは異なり、本方法は、被験体に局所表面投与されて、全身投与処置の場合に存在する副作用を引き起こすことなく、局所疾患機序に影響を及ぼす組成物を含む。組成物は、直ちに有効であるのみならず、長期間の投与の場合でも安全である。
【0036】
本発明は、IL-1またはIL-1R機能の阻害剤を含有する組成物が、罹患した被験体の眼表面に組成物を接触させることによって、疾患の症状、原因、または機序を緩和、防止、または減弱させる、非感染性の眼科疾患を処置する方法を含む。例示的な疾患の機序は、表層部眼構造および眼表面に近接する構造内での、炎症、過形成、新生血管形成、白血球動員、またはサイトカイン産生を含む。例として、非感染性の眼科疾患は、マイボーム腺の閉塞、肥厚、炎症、新生血管形成、または萎縮によって引き起こされる。または、非感染性の眼科疾患は、マイボーム腺以外の構造に対する障害によって引き起こされる。例示的な代わりの原因には、油性涙液層、瞼板結膜の乳頭状肥大、角膜点状上皮症、春季カタル、萎縮性角結膜炎、化学物質による火傷、トラコーマ、翼状膜、類天疱瘡、角膜血管新生(新規血管の成長)、乾癬、痒症(icthyosis)、多形性紅斑、無汗性外胚葉性形成異常、全身のレチノイド治療、またはポリ塩化ビフェノールに対する曝露が含まれるがこれらに限定されるわけではない。最後に、非感染性の眼科疾患はまた、脂質涙液層の欠損、涙液蒸発の増加、または涙液蒸発亢進型ドライアイの発生に起因しうる。方法は、しゅさ性ざ瘡、脂漏性皮膚炎、またはアトピー性皮膚炎を含む皮膚病の症状発現と一致するまたは一致しない非感染性の眼科疾患を処置する。さらに、方法は、さん粒腫、パンヌス、小水疱、再発性結膜炎、眼表面の障害、眼のしゅさ、角膜潰瘍、角膜穿孔、または眼の感染症の二次合併症と一致する原発性または二次性非感染性眼科疾患を処置するために適用可能である。
【0037】
本明細書において記述される方法は、眼または付属器組織の上または中への外来組織の移植後に結果として生じる免疫応答に起因する眼科疾患を処置することを意図しない。例として、角膜移植の宿主再拒絶後に、または外科技法後の感染症の結果として、炎症反応が起こる。本出願は、組織の再拒絶または感染疾患に直接起因する眼科疾患を処置することを意図しない。しかし、外来組織または感染物質に対する免疫応答によって、血管もしくはリンパ管の成長などの不定形の二次合併症、または組織損傷を引き起こす分子の過剰発現が起こりうる;そのような場合、本出願において記述される方法は、そのような二次合併症に関連する炎症を低減させるための処置として有用である。さらに、本出願を含む方法および装置は、自己免疫応答、たとえば健康な宿主組織に対する免疫応答から生じる疾患を処置することを意図しない。
【0038】
好ましい態様において、非感染性の眼科疾患は、後部眼瞼縁の炎症、眼表面の炎症、焼灼感、刺激感、または患者の不快感と一致するかもしくは一致しない眼瞼炎および/または後部眼瞼炎を含む。または、本発明は、マイボーム腺機能障害と一致する眼瞼炎を処置すると意図される。
【0039】
方法は、非感染性の眼科疾患の症状を緩和する。例示的な症状には、乾燥、不快感、焼灼感、痒み、刺激感、炎症、眼周囲の皮膚の異常、光恐怖症、眼のかすみ、コンタクトレンズ不耐性が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0040】
本発明は、多様な物理的および化学的型の組成物を含む;しかし組成物は、局所表面に投与されて、眼または付属器組織に直接接する。組成物は、固体、パスタ剤、軟膏、ゲル、液剤、エアロゾル剤、噴霧剤、ポリマー剤、フィルム剤、乳剤、または懸濁剤として投与される。さらに、組成物は、コンタクトレンズに組み入れられるか、またはコーティングされて、そこから1つまたは複数の分子がレンズから拡散する、または時間的に制御されて放出される。この態様において、コンタクトレンズ組成物は、たとえば視力矯正のためにレンズが必要である場合には、なおも眼の表面に留まり、またはコンタクトレンズは時間の関数として溶解して、すぐ近接する組織に組成物を同時に放出する。
【0041】
1つの好ましい態様において、本発明は、IL-1α、IL-1β、または双方のサイトカインの組み合わせの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または受容体結合を阻害する手段を有する組成物を含む。1つの態様において、組成物は、SEQ ID NO:1によって定義される、IL-1αmRNA転写物の領域に結合することができるポリヌクレオチドを含む。もう1つの態様において、組成物は、SEQ ID NO:3によって定義される、IL-1βmRNA転写物の領域に結合することができるポリヌクレオチドを含む。
【0042】
もう1つの態様において、組成物は、天然に存在するIL-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)の量を増加させることができる。組成物は、IL-1Ra遺伝子の領域に結合するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、もしくは低分子、SEQ ID NO:5、7、9、11、もしくは13によって定義されるmRNA転写物、SEQ ID NO:6、8、10、12、もしくは14によって定義されるIL-1Raのポリペプチドイソ型、またはSEQ ID NO:16によって定義される組み換え型IL-1Raタンパク質を含む。または、組成物は、IL-1Ra遺伝子の領域または全体をコードするmRNA転写物またはポリペプチドを含有する。
【0043】
組成物は、IL-1αまたはIL-1βに関する受容体、特にIL-1R1のアンタゴニストまたは逆アゴニストを含む。この態様において、アンタゴニストは、アゴニストIL-1の機能を阻害するIL-1Rの結合パートナーもしくはリガンドとして、または受容体に対するその結合を遮断することによる逆アゴニストとして定義される。逆アゴニストは、アゴニスト、例としてIL-1と同じIL-1R結合部位に結合するが、反対の薬理学的効果を発揮する分子として定義される。組成物は、SEQ ID NO:17〜21のポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列によって定義されるIL-1R1の領域に結合する、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含有する。代わりの態様において、組成物は、IL-1R転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、リガンド結合、またはIL-1Rのアクセサリタンパク質(IL-1RAP)との会合を阻害する手段を有する分子を含む。IL-1RAPは、SEQ ID NO:24または26のポリヌクレオチド配列およびSEQ ID NO:25または27のアミノ酸配列によって定義される。
【0044】
組成物は、組織内のコラーゲンマトリクスを分解して創傷治癒を遅らせる、マトリクスメタロプロテナーゼ(MMP)過剰発現のIL-1αまたはIL-1β媒介調節を阻害する手段を有する分子を含む。
【0045】
もう1つの好ましい態様において、組成物は、ヒト組み換え型IL-1Rアンタゴニストを純粋な型でまたは混合物の成分として含む。ヒト組み換え型IL-1Rアンタゴニストは、組成物を眼または眼瞼表面に接触させる前に、緩衝生理食塩液、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸(HA)、または他のビヒクルと組み合わせられる。これらの混合物の中で、ヒト組み換え型IL-1Rアンタゴニストは、投与される全容積の少なくとも0.1%、2.0%、2.5%、5%、または多くて10%を含む。好ましい水性製剤は、2〜2.5%の精製アンタゴニストを含有する。精製されたとは、無関係なポリヌクレオチド、ポリペプチド、細胞オルガネラ、または脂質の非存在下のアンタゴニストとして定義される。精製されたとは、ヒト被験体に対する投与にとって安全である、たとえば感染物質または毒物を欠損する無菌性の程度を定義する。
【0046】
本発明が投与される罹患被験体は、多様な方法によって同定される。以下の検査を個々にまたは組み合わせて用いて、非感染性眼科疾患の有無を査定する(検査の説明に関しては、実施例を参照されたい)。被験体は、標準的な涙液層破壊時間(TFBT)検査に従う破壊時間が10秒未満として同定される。被験体は、涙液層の有意な角膜フルオレセイン染色および/または結膜のリサミングリーンもしくはローズベンガル染色によって同定される。被験体は、麻酔下または非麻酔下でのシルマー試験の10 mmまたはそれ未満の結果によって同定される。被験体は、有意な粘性涙液排出物および/または涙液を排出することができるマイボーム腺の数またはマイボーム腺開口部の減少によって同定される。被験体は、眼瞼縁の赤色変色の影、瞼板結膜、および/または極度の血管充血(紅斑)の増加を示す眼球結膜によって同定される。被験体はまた、上記の要因の量および重症度が増加した、ますます重度の非感染性眼科疾患を呈するとして分類される。
【0047】
本明細書において提供される組成物および方法は、眼内圧を改変するために用いられる。本発明の1つの局面において、本明細書において提供される組成物および方法は、眼内圧を減少させるために用いられる。IL-1サイトカインおよび/またはIL-1受容体の阻害剤またはアンタゴニストは、眼内圧を改変するために、単独でまたは他の化合物と併用して用いられる。本発明の好ましい態様において、IL-1サイトカインおよび/またはIL-1受容体の阻害剤またはアンタゴニストは、眼内圧を減少させるために、単独でまたは他の化合物と併用して用いられる。または、もしくは加えて、IL-1サイトカインおよび/またはIL-1受容体の阻害剤またはアンタゴニストは、高眼圧症を処置するために、単独でまたは他の化合物と併用して用いられる。
【0048】
IL-1サイトカインおよび/またはIL-1受容体と併用して用いられる例示的な化合物には、プロスタグランジン類似体(房水のブドウ膜強膜または小柱網流出を増加させるラタノプロスト(Xalatan)、ビマトプロスト(Lumigan)、およびトラボプロスト(Travatan)など);局所表面βアドレナリン受容体アンタゴニスト(毛様体による房水産生を減少させるチモロール、レボブノロール(Betagan)、およびベタキソロールなど);α2-アドレナリンアゴニスト(房水産生を増加させて、ブドウ膜強膜流出を増加させる、二重の機序によって働くブリモニジン(Alphagan)など)、より選択性の低い交感神経模倣薬(たぶんβ2-アゴニスト作用によって、小柱網を通しておよびおそらくブドウ膜胸膜流出経路を通して房水の流出を増加させるエピネフリンおよびジピベフリン(Propine)など);縮瞳剤(副交感神経模倣薬)(毛様筋の収縮、小柱網の緊張、および房水の流出を増加させることによって働くピロカルピンなど);炭酸脱水素酵素阻害剤(毛様体における炭酸脱水素酵素を阻害することによって房水の分泌を低下させるドルゾラミド(Trusopt)、ブリンゾラミド(Azopt)、アセタゾラミド(Diamox)など);同様に緑内障および胃内容排出遅延を処置するために用いられるフィソスチグミン;魚油;ω3脂肪酸、コケモモ、ビタミンE、カンナビノイド、カルニチン、補酵素Q10、クルクミン、タンジン(Salvia miltiorrhiza)、ダークチョコレート、エリスロポエチン、葉酸、イチョウ(Ginkgo biloba)、チョウセンニンジン、L-グルタチオン、ブドウ種子抽出物、緑茶、マグネシウム、メラトニン、メチルコバラミン、N-アセチル-Lシステイン、ピクノジェノール(pycnogenol)、レスベラトロール、ケルセチン、およびフルドロコルチゾンが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0049】
本発明はまた、IL-1またはIL-1Rの阻害剤またはアンタゴニストを含む組成物をこれらの被験体に投与する段階が含まれる、高眼圧症を有する個体または被験体を処置するための組成物および方法も提供する。本発明の1つの局面において、IL-1またはIL-1Rの阻害剤またはアンタゴニストは、眼の表面に液体として局所表面投与される。本発明のもう1つの局面において、IL-1またはIL-1Rの阻害剤またはアンタゴニストは、注射によって眼内投与される。
【0050】
本発明はまた、IL-1またはIL-1Rの阻害剤またはアンタゴニストを含む組成物をこれらの被験体に投与する段階が含まれる、高眼圧症を有する個体または被験体における緑内障を予防するための組成物および方法も提供する。本発明の1つの態様において、IL-1またはIL-1Rの阻害剤またはアンタゴニストは、液体として眼の表面に局所表面投与される。本発明のもう1つの局面において、IL-1またはIL-1Rの阻害剤またはアンタゴニストは、注射によって眼内投与される。
【0051】
本発明は、正常より上の眼内圧に関連する状態に罹っているまたはそのリスクを有する被験体を同定する段階、および炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体に局所投与する段階が含まれる、眼内圧を低減させるための方法を提供する。本発明の1つの好ましい局面において、状態は緑内障である。
【0052】
本発明の1つの局面において、被験体は、その眼内圧を測定する段階、および測定された眼内圧が正常レベルより上に上昇しているか否かを決定する段階によって、同定される。本明細書において用いられるように、「正常レベル」という用語は、当業者および/または医学の専門職が、類似の身体的特徴および病歴を有する健康な被験体が持つであろうと予想する値の許容範囲内の値を記述することを意味する。たとえば、正常な眼内圧(IOP)は、10 mmHg〜21 mmHgの範囲のIOPであると定義される。
【0053】
本発明のもう1つの局面において、被験体は、病歴(例として、糖尿病)、薬剤の副作用、ライフスタイルおよび/または食事、医学的介入(眼に対する手術など)、外傷/損傷、ホルモンの変化、および加齢などの非制限的な要因に基づいて、眼内圧の上昇を発症するリスクがある個体であると同定される。本発明の組成物は、予防的手段のためにこれらの被験体に投与される。
【0054】
本発明の全てのポリヌクレオチドおよびポリペプチドは精製および/または単離される。本明細書において用いられるように、「単離された」または「精製された」核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、組み換え技術によって産生された場合に、他の細胞材料もしくは培養培地を実質的に含みえず、または化学合成された場合には化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含みえない。
【0055】
本明細書において引用される刊行物、米国特許および出願、Genbank/NCBIアクセッション番号、および他の全ての参考文献は、参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】眼表面疾患指数(OSDI)の12項目の質問票である。
【図2】角膜および結膜染色を等級付けするためのOxford Schemaである。
【図3】眼内圧(IOP)に及ぼすIL-1aの効果を表すグラフである。
【図4】IL-1Rおよびこれらの細胞内シグナルを運ぶのに関係する下流のエフェクターから伝達されるシグナル伝達経路の図解である(BioCartaのウェブサイトから再現された図面)。
【図5】マイボーム腺機能障害(後部眼瞼炎)を診断するために試験の被験体に出した質問票。
【図6】実施例8において記述されるスクリーニングプロセスの際に試験被験体について行われた臨床検査の順序を示す作業工程である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
詳細な説明
後部眼瞼炎
後部眼瞼炎は、後部眼瞼縁の全般的炎症として記述され、眼表面の炎症ならびに焼灼感、刺激感、および不快感の症状に関連する一般的な慢性眼瞼状態である。後部眼瞼炎は、集合的にマイボーム腺機能障害(MGD)として知られるマイボーム腺の様々な障害に関連する。これはマイボーム腺の閉塞および炎症に関連するか、またはより一般的ではないが、マイボーム腺の萎縮に関連する(Foulks, G. et al. 2003. Ocul Surf. 107-26;Bron, A. J. et al. 2004. Ocul Surf. 2:149-65)。
【0058】
臨床的に、MGDはしばしば、濃化(inspissated)マイボーム腺、油性涙液層と共に、マイボーム腺開口部の炎症および血管形成を示す。瞼板結膜の乳頭状肥大および角膜点状上皮症がしばしば存在し、しゅさ性ざ瘡、脂漏性皮膚炎、およびアトピー性皮膚炎などの皮膚病に顕著に関連する。MGDの他の原因および関連は、春季カタル、萎縮性角結膜炎、化学物質火傷、トラコーマ、類天疱瘡、乾癬、痒み、多形性紅斑、無汗性外胚葉性形成異常、および全身レチノイド治療である。加えて、汚染した食用油の摂取を通してのポリ塩化ビフェニルに対する曝露は、甚だしくかつ広範囲のざ瘡様皮膚変化を伴う慢性型のMGDを引き起こす(Fu, Y. A. 1984. Am J Ind Med. 5:127-32)。
【0059】
十分な広がりおよび程度のMGDは、涙液脂質層の欠損、涙液蒸発の増加、および涙液蒸発亢進型ドライアイの発生に関連する。実際に、MGDは、涙液蒸発亢進型ドライアイの最も一般的な原因であると考えられている(Foulks, G. et al. 2003. Ocul Surf. 107-26)。MGDを有する個人は、しばしば、焼灼感、痒み、刺激感、および光恐怖症が含まれる著しい不快感を訴える。彼らはまた、他の関連するドライアイの症状を有することがあり、目のかすみ、段階的コンタクトレンズ不耐性に悩まされることがある。さらに、これらの患者は、働く、読む、コンピューターを使用する、および運転するなどの非常に重要な日常活動に対するドライアイの負の影響によって機能的にハンディキャップを有するようになる可能性がある(Goto, E. et al. 2002. Am J Opthalmol. 133:181-186;Miljanovic, B. et al. 2007. Am J Opthalmol. 143: 409-15 )。
【0060】
ドライアイに加えて、眼科医が直面するMGDの他の続発症には、さん粒腫、パンヌス、小水疱、および再発性結膜炎が含まれ、これらは眼表面の障害、眼の感染症、角膜潰瘍、および穿孔のリスクを増加させる。
【0061】
後部眼瞼炎の高い発生率にもかかわらず、現在のところ、この状態の一貫して有効な処置はなく、治療の課題となっている。後部眼瞼炎は従来、眼瞼を清潔にすること、局所表面の抗生物質(エリスロマイシンまたはバシトラシン軟膏)、経口テトラサイクリン(テトラサイクリン、ドキシサイクリン、またはミノサイクリン)、およびコルチコステロイドによって管理されてきたが、これらはしばしば時間がかかり、苛立たしく、無効であるかまたは有効性が変化することが多い。
【0062】
後部眼瞼炎の現在の処置は、部分的に、基礎となる病理生理的プロセスを標的とすることができないことから限定的である。後部眼瞼炎は、マイボーム腺と眼の表面の双方に影響を及ぼす基礎となるサイトカインおよび炎症媒介プロセスの結果である(Kocak-Altintas, A.G. et al. 2003. Eur J Opthalmol. 13:351-359;McCulley, J.P. et al. 2000. Cornea. 19:650-658)。実験的眼瞼結膜炎において、T細胞は、他の炎症細胞の結膜への浸潤と共にケモカインのアップレギュレーションを駆動する主な画策体であることが示されている(Fukushima, A. et al. 2003. Invest. Opthalmol. Vis. Sci. 44:4366-4374)。
【0063】
眼瞼炎およびMGDの大きい病群に属する眼のしゅさにおいて、眼表面の炎症は、インターロイキン(IL)-1αなどの涙液における炎症メディエータの増加によって明らかに証明された(Barton, K. et al. 1997. Opthalmology. 104:1868-1874)。眼のしゅさにおける結膜上皮のフローサイトメトリーおよびインプレッションサイトロジーから、ドライアイ疾患に関連する炎症において有意な役割を果たすことが示されている細胞内接着分子-1(ICAM-1)の、有意により高いレベルが証明された。ICAM-1のこの発現は、IL-1βまたはインターフェロン-γなどの1つまたは複数の炎症促進性サイトカインの放出によりうるであろう(Pisella, P.J. et al. 2000. Opthalmology. 107:1841-9)。
【0064】
後部眼瞼炎の発病における炎症の重要性は、MGCの徴候および症状が局所表面ステロイドなどの抗炎症治療によって顕著に改善するという報告によって強調されている(Marsh, P. et al. 1999. Opthalmology.106: 811-816)。
【0065】
テトラサイクリン抗生物質の全身投与は、長い間眼表面の炎症疾患にとって有効な治療であると認識されてきた。半合成テトラサイクリンであるドキシサイクリンは、一般的なドライアイ病態であるしゅさ性ざ瘡を首尾よく処置することができると報告されている。MGDおよびドライアイにおけるドキシサイクリンの作用機序の1つは、角膜上皮におけるIL-1媒介炎症カスケードのダウンレギュレーションである可能性がある(Solomon, A. et al. 2000. Invent. Opthalmol. Vis. Sci. 41:2544-57)。
【0066】
加えて、いくつかの試験からの知見は、MGDがまた房水欠損型ドライアイ患者、特にシェーグレン症候群(SS)患者にも関連していることを示している(McCulley, J.P. et al.1977. A, J Opthalmol. 84:788-93;Shimazaki, J. et al. 1998. Opthalmology. 105: 1485-1488)。これらの試験において、水層涙液欠損を有する患者の少なくとも35%がMGDを有した。古典的に、SSは外分泌腺を冒し、マイボーム腺などの脂腺には影響しない。基礎となる炎症ならびに眼表面上皮の乾燥および角質化は、慢性的なドライアイ疾患において起こり、MGDの発病において役割を果たす。
【0067】
水層涙液欠損およびマイボーム腺疾患がいずれも、コルチコステロイドであるメチルプレドニゾロンによって有効に処置されるという知見は、炎症がドライアイ症候群の病理生理学における重要な特色であるという考え方と一致する(Marsh, P. et al. 1999. Opthalmology. 107:967-74)。残念なことに、局所コルチコステロイドの長期間の使用は、緑内障および白内障などの視力を脅かす可能性がある副作用によって制限されている。ゆえに、この共通の状態における眼の表面の基礎となる炎症環境を標的とする非毒性でステロイドを使用しない抗炎症治療が臨床的に必要である。
【0068】
炎症は、MGDおよびドライアイの発病の重要な構成要素であるという考え方に基づいて、基礎となる眼表面の炎症環境を標的とする治療は、これらの状態の管理における大幅な改善を示し、主要な臨床的影響を有するであろう。IL-1媒介炎症活性が、MGDおよびドライアイ患者の眼の表面において重要な役割を果たすという事実を考慮して、ゆえに、IL-1RaによるIL-1活性の局所的遮断は、ドライアイ症候群の1つまたは複数の症状を低減させるために用いられる。
【0069】
眼および付属器組織:
本発明に含まれる組成物に接触する眼の組織または区画には、角膜、房水、虹彩、および強膜が含まれるがこれらに限定されるわけではない。「付属器」という用語は、臓器の付属体としての一般的な用語として定義される。本発明において付属器は、眼表面に直接接する多数の組織または表面を定義するが、定義によって眼表面は含まれない。例示的な付属器組織には、眼瞼、涙腺、および外眼筋が含まれるがこれらに限定されるわけではない。本発明の組成物の局所表面投与は、眼瞼内の以下の組織および構造に接する:皮膚、皮下組織、眼輪筋、眼窩隔膜、瞼板、眼瞼結膜、およびマイボーム腺。付属器組織は、眼窩および眼瞼部分が含まれる涙腺の全ての小区分と共に、これらの腺によって接触される全ての組織を含む。付属器組織のこのカテゴリーに属する外眼筋には、上および下直筋、外および内直筋、ならびに上および下斜筋が含まれるがこれらに限定されるわけではない。本発明に含まれる組成物は、局所表面に適用され、単独で、または眼の組織と共にこれらの組織に接する。
【0070】
眼内圧
眼内圧は、眼の毛様体によって産生される液体である房水によって維持される。房水は通常、眼の後区には行かない;これは水晶体およびチン小体によってこの領域外で維持される。その代わりに、房水は、前眼房および後眼房に分けられる前区のみに留まる。前眼房および後眼房は前区および後区と非常に類似の名称であるが、それらは類義語ではない。前眼房および後眼房は、いずれも前区の一部である。
【0071】
毛様体が房水を産生する場合、これは最初に後眼房の中に流れる(水晶体と虹彩によって境界が定められる)。次に、これは虹彩の瞳孔を通して前眼房(虹彩と角膜によって境界が定められる)の中に流れる。ここから、房水は柱状網として知られる構造の中を流れて、正常な体循環に入る。このように、高眼圧症の2つの主な機序は、房水の産生の増加または房水の流出の減少である。
【0072】
高眼圧症(OHT)は、視神経障害または視野の喪失の非存在下で正常より高い眼内圧である。眼科学における現在のコンセンサスは、正常な眼内圧(IOP)を10 mmHg〜21 mmHgのあいだであると定義している。眼内圧は、眼圧計によって測定される。IOPの上昇は、緑内障の最も重要な危険因子であり、高眼圧症を有する人は、この状態を発症する機会がより大きいと見なされることが多い。眼内圧は、患者が横になった場合に増加しうる。座っているまたは立っている際に正常なIOPを有する何人かの緑内障患者(たとえば、正常眼圧緑内障患者)は、横になった場合に、問題を引き起こしうるほど上昇した眼内圧を有する可能性があるという証拠がある。
【0073】
両眼の眼圧の差は、しばしば臨床的に重要であり、一定のタイプの緑内障と共に虹彩炎または網膜剥離に関連する可能性がある。
【0074】
測定された眼内圧の値に及ぼす角膜の厚さと硬さの効果のために、いくつかの型の屈折矯正手術(光学的角膜屈折矯正手術などの)は、実際の眼圧が異常に高い可能性がある場合でも、従来の眼内圧測定を正常に見えさせることがありうる。
【0075】
眼内圧は、解剖学的問題、眼の炎症、遺伝的要因により、薬物の副作用として、または運動時に上昇する可能性がある。眼内圧は通常、年齢と共に増加して、遺伝的に影響を受ける。
【0076】
低圧または低眼圧は、典型的に5 mmHgに等しいまたはそれ未満の眼内圧であると定義される。そのような低い眼内圧は、液体漏出および眼球の収縮を示しうる。
【0077】
緑内障
緑内障は、非可逆的失明の主な原因である。緑内障の第一の危険因子は眼内圧(IOP)の上昇であり、これは著しい視神経障害および失明に寄与しうる。房水流出の容易さの低減によるIOPの上昇は、主要な原因となる危険因子である。眼の主な房水流出経路は、小柱網(TM)、シュレム管、収集チャネル、および上強膜静脈系を含む、前眼房角における一連の内皮細胞裏打ちチャネルからなる。
【0078】
緑内障は、眼ニューロパシーの特徴的なパターンにおける網膜神経節細胞の喪失を伴う視神経疾患群である。眼内圧の上昇は緑内障を発症する重要な危険因子であるが、緑内障を引き起こす眼内圧に関して設定された閾値はない。無処置の緑内障は、視神経の永続的な障害および結果としての視野の喪失に至り、これが失明へと進行しうる。視野の喪失はしばしば長い期間のあいだに徐々に起こり、既に完全に進行してから初めて認識されることがある。視野が失われると、損傷を受けた視野は決して回復させることができない。世界全体でこれは失明の第二の主な原因である。緑内障は、50歳およびそれより若い人では200人に1人が罹患するが、80歳を超えた人では10人に1人が罹患する。
【0079】
高眼圧症は、ほとんどの緑内障における最大の危険因子である。しかし、いくつかの集団において、原発性開放隅角緑内障患者では眼内圧が上昇しているのは患者の50%に過ぎない。糖尿病患者およびアフリカ系の祖先を有する人は、原発開放隅角緑内障を発症する可能性が3倍高い。より高齢、より薄い角膜の厚さ、および近視も同様に原発開放隅角緑内障の危険因子である。家族に緑内障の既往を有する人が緑内障を発症する機会は約6%である。アジア人は、閉塞隅角緑内障を発症する傾向があり、イヌイットは、原発性閉塞隅角緑内障を発症するリスクが白人より20倍〜40倍高い。女性は、前眼房が浅いことにより、急性閉塞隅角緑内障を発症する可能性が男性より3倍高い。ステロイドの使用は緑内障を引き起こしうる。
【0080】
原発性開放隅角緑内障(POAG)は、いくつかの遺伝子座での遺伝子変異に関連することが見いだされている。POAGの3分の1を含む正常眼圧緑内障は、遺伝的変異に関連している。
【0081】
眼の血流が緑内障の病因に関係するという証拠が増えつつある。現在のデータは、血流の変動は、着実な低減より緑内障視神経障害において有害であることを示している。不安定な血圧および一時的低下(dip)は、視神経乳頭の障害に連結して、視野の悪化に相関する。
【0082】
多数の研究により、緑内障と全身高血圧症(すなわち、高血圧)とのあいだに必ずしも偶然ではない相関があることが示唆されている。正常眼圧緑内障において、夜間高血圧症は重要な役割を果たす可能性がある。一方で、ビタミン欠損がヒトにおいて緑内障を引き起こす明確な証拠はなく、経口ビタミン補助剤が緑内障の処置において有効であるという証拠もない。
【0083】
様々なまれな先天性/遺伝性の眼の奇形が緑内障に関連している。時に、正常な妊娠第三トリメスターでの硝子体管および水晶体血管膜の萎縮の不全は、他の異常に関連している。閉塞隅角誘発高眼圧症および緑内障性視神経障害も同様に、これらの異常と共に起こる可能性がある。緑内障のこれらのまれな発生的原因は、マウスにおいてモデルが作製されている。
【0084】
ごく一部の緑内障は眼の区画において目に見える細胞炎症に関連する;しかし、インターロイキン-1(IL-1)は、緑内障TM細胞によって一貫してアップレギュレートされ、TM細胞損傷の加速における重要な要因として作用する。この状態は、TM細胞機能に及ぼすIL-1の効果、および流出の容易さに影響を及ぼしうる接着因子の発現の双方によって媒介される。最終的な効果は、IL-1が小柱網の機能を損ない、開放隅角緑内障において流出の容易さの低減を引き起こしうることである。インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)は、IL-1受容体に高い親和性で結合して、その効果を遮断する天然に存在するIL-1イソ型である。ゆえに、ヒト組み換え型(アナキンラ/Kineret)などのIL-1Raの局所表面適用は、TMにおけるIL-1媒介細胞損傷を抑制して、流出の容易さを増強して、緑内障の眼においてIOPを低減させる。
【0085】
この作用機序は、IL-1自身がTMにおけるマトリクスメタロプロテナーゼ発現を増加させて、流出の容易さを増加させるという他の考え方とは対照的である。ゆえに、他の研究者らは、IL-1中和抗体またはIL-1受容体アンタゴニストによるIL-1の作用の阻害が、小柱網における流出の容易さの低減を引き起こすと考えた。
【0086】
インターロイキン-1(IL-1):
IL-1ファミリーは、炎症および免疫応答の主要なメディエータとして機能するサイトカイン群である(Dinarello, C. A. 1996. Blood. 15:2095-2147)。このファミリーは、3つの型で構成される:それぞれが前駆体型を有する2つの炎症促進型、IL-1αおよびIL-1β、ならびに抗炎症型、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)。炎症促進性サイトカインであるIL-1は、ケモカイン産生、接着因子、マクロファージ浸潤および活性、ならびにリンパ球の増殖を増加させることによって、炎症および免疫において重要な役割を果たす。IL-1は、リウマチ性関節炎、敗血症ショック、および歯周炎などのヒトの炎症疾患の病因に関係している(Jiang, Y. et al. 2000. Arthritis Rheum. 43:1001-1009;Okusawa, S. et al. 1988. J Clin Invest. 81:1162-1172;McDevitt, M. J. et al. 2000. J. Periodontol. 71:156-163)。
【0087】
IL-1サイトカインは、角膜および眼表面の疾患における炎症および創傷治癒の制御において重要な役割を果たす(Fabre, E.J. et al. 1991. Curr Eye Res. 10:585-592;Rosenbaum, J.T. et al. 1995. Invest Opthalmol Vis Sci. 36: 2151-2155)。IL-1αおよびIL-1βはいずれも、角膜間質線維芽細胞によるマトリクスメタロプロテナーゼ(MMP)発現を調整することが見いだされている(Fini, M.E. et al. 1990. Invest Opthalmol Vis Sci. 31:1779-1788)。IL-1αおよびIL-1βレベルの増加は、シェーグレン症候群患者および眼のしゅさの患者において示されている(Pflugfelder, S.C. et al. 1999. Curr Eye Res. 19:201-211;Solomon, A. et al. 2001. Invest Opthalmol Vis Sci. 42:2283-2292)。炎症促進型IL-1のレベルは、角膜のフルオレセイン染色強度に正比例して、結膜の杯細胞密度に反比例する。涙液蒸発亢進型および涙液減少型のいずれのタイプのドライアイ症候群においても、眼の表面からの涙液クリアランスが減少することから、炎症促進性サイトカインIL-1の双方のイソ型の濃度は涙液において増加する(Solomon, A. et al. 2001. Invest Opthalmol Vis Sci. 42:2283-2292)。強い炎症刺激に応答したヒト眼瞼縁上皮におけるIL-1遺伝子ファミリーの発現パターンに及ぼすドキシサイクリンの効果に関する研究の結果は、炎症性サイトカインIL-1βの発現に及ぼすドキシサイクリンの阻害効果を証明し、抗炎症性IL-1Raが同時にアップレギュレートされることを証明した(Solomon, A. et al. 2000. Invest Opthalmol Vis Sci. 41:2544-57)。これらの結果は、MGDおよびドライアイという眼表面疾患の処置においてテトラサイクリン化合物(テトラサイクリン、ドキシサイクリン、およびミノサイクリン)に関して臨床的に証明された利益のいくつかが、IL-1の合成、プロセシング、または放出に対するその調節効果を通して媒介される可能性があることを暗示している。
【0088】
IL-1は眼表面の疾患、たとえばMGDおよびドライアイの慢性的な潜在性の眼表面の炎症を誘導する。本明細書において記述される組成物および方法は、シグナル伝達の誘導能、またはIL-1受容体からの下流のシグナル伝達カスケードの開始/活性化能によって定義されるように、ヒトIL-1αおよび/またはIL-1βの活性を阻害する。ヒトIL-1αまたはIL-1β機能の阻害剤を含有する組成物は、IL-1受容体の活性に拮抗する。組成物は、ヒトIL-1αまたはIL-1βをコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む。その上、阻害性ポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物は、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2(IL-1α)またはSEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4(IL-1β)に含まれるIL-1αまたはIL-1βの1つまたは複数の領域に結合する。阻害性ポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物は、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2(IL-1α)またはSEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4(IL-1β)に含まれるIL-1αまたはIL-1βの1つまたは複数の断片に結合する。
【0089】
本明細書において提供されるこれらの配列および他の全ての配列における断片は、全体より小さい全体の一部として定義される。その上、断片は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列内の1つのヌクレオチドまたはアミノ酸から、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの全配列より1つ少ないヌクレオチドまたはアミノ酸までの大きさの範囲である。最後に、断片は、先に定義した極値のあいだの中間である完全なポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の任意の部分として定義される。
【0090】
ヒトIL-1αは、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_000575およびSEQ ID NO: 1)によってコードされる:(本出願において組み入れられる全てのmRNA転写物に関して、コドン「atg」によってコードされる開始メチオニンを、太字の大文字で示し、コード領域の開始を示す)。

【0091】
ヒトIL-1αは、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_000575およびSEQ ID NO: 2)によってコードされる。

【0092】
ヒトIL-1βは、以下のmRNA配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_000576およびSEQ ID NO:3)。

【0093】
ヒトIL-1βは、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_000576およびSEQ ID NO:4)によってコードされる。

【0094】
インターロイキン-1受容体(1型)アンタゴニスト(IL-1Ra):
IL-1Raは、活性化単球および組織マクロファージによって主に産生される内因性の受容体アンタゴニストであり、IL-1受容体に競合的に結合することによって、炎症促進型のIL-1の活性を阻害する(Gabay, C. et al. 1997. 159: 5905-5913)。IL-1Raは、リウマチ性関節炎などの炎症状態において典型的にアップレギュレートされる誘導型遺伝子である(Arend, W.P. 1993. Adv Immunol. 54: 167-223)。
【0095】
正常な涙液は、IL-1の双方の炎症促進型より25,000〜40,000倍高い濃度のIL-1Raを含有することが見いだされている(Solomon, A. et al. 2001. Invest Opthalmol Vis Sci. 42:2283-2292)。涙液における高濃度のIL-1Raは、眼表面におけるIL-1媒介炎症事象の不適切な活性化を防止するための自然の恒常性機序である可能性がある(Dinarello, C. A. 1996. Blood. 15:2095-2147)。
【0096】
増加したIL-1Ra濃度が、ドライアイ患者の涙液、およびドライアイ症候群患者の結膜上皮において検出されている(Solomon, A. et al. 2001. Invest Opthalmol Vis Sci. 42:2283-2292)。この増加した発現レベルにもかかわらず、IL-1Ra対炎症促進型IL-1の比は、ドライアイにおいて正常被験体より有意に低かった。IL-1Raをリウマチ性関節炎患者に投与したプラセボ対照臨床試験の報告は、IL-1Ra対炎症促進型の比の増加が臨床症状を有意に改善することを表している(Dinarello, C. A. 2000. N Engl J Med. 343:732-734)。
【0097】
本発明において、組成物は、IL-1Ra転写物1、2、3、もしくは4、細胞内IL-1Ra(icIL-1Ra)、または他の対応するポリペプチドイソ型の1つまたは複数の領域を含む。または、組成物は、IL-1Ra転写物1、2、3、もしくは4、細胞内IL-1Ra(icIL-1Ra)、または他の対応するポリペプチドイソ型の全体を含む。任意の型のヒトIL-1Raまたはその断片を含む組成物は、IL-1R1の機能を阻害する。これらのポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、以下の配列によって定義される。
【0098】
ヒトIL-1Ra転写物1は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_173842およびSEQ ID NO:5)によってコードされる。

【0099】
ヒトIL-1Ra転写物1は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_173842およびSEQ ID NO:6)によってコードされる。

【0100】
ヒトIL-1Ra転写物2は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_173841およびSEQ ID NO:7)によってコードされる。

【0101】
ヒトIL-1Ra転写物2は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_173841およびSEQ ID NO:8)によってコードされる。

【0102】
ヒトIL-1Ra転写物3は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_000577およびSEQ ID NO:9)によってコードされる。

【0103】
ヒトIL-1Ra転写物3は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_000577およびSEQ ID NO:10)によってコードされる。

【0104】
ヒトIL-1Ra転写物4は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_173843およびSEQ ID NO:11)によってコードされる。

【0105】
ヒトIL-1Ra転写物4は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_173843およびSEQ ID NO:12)によってコードされる。

【0106】
ヒト細胞内IL-1Ra、icIL-1Raは、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号M55646およびSEQ ID NO:13)によってコードされる。

【0107】
ヒト細胞内IL-1Ra、icIL-1Raは、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号M55646およびSEQ ID NO:14)によってコードされる。

【0108】
ヒト組み換え型IL-1Ra:
組み換え型ヒトIL-1Ra(rHuIL-1Ra)は、関節炎の動物モデルにおいて開発および試験された。この型のrHuIL-1Raはまた、アナキンラまたはKineret(登録商標)としても知られ、N末端メチオニンの付加によって本来の非グリコシル化IL-1Raとは異なる。これは、IL-1βと同じ親和性でIL-1R 1型に結合する。Kineret(登録商標)は、アミノ酸153個からなり、分子量17.3キロダルトンを有する。これは、大腸菌(E.coli)細菌発現系を用いて組み換えDNA技術によって産生される。
【0109】
アナキンラは、少なくとも部分的にIL-1によって媒介されると見なされるいくつかの状態において試験されている。いくつかの証拠は、リウマチ性関節炎および敗血症ショックの病因におけるIL-1の関与を示唆している(Jiang, Y. et al. 2000. Arthritis Rheum. 43:1001-1009;Fisher, C.J. et al.1994. JAMA.271:1836-1843;Okusawa, S. et al. 1988. J Clin Invest. 81:1162-1172;Bresnihan, B. et al. 1998. Rheum Dis Clin North Am. 24(3):615-628;Dayer, J.M. et al. 2001. Curr Opin Rheumatol. 13:170-176;Edwards, C.K. 2001. J Clin Rheumatol. 7:S17-S24)。アナキンラは、1つまたは複数の疾患改変抗リウマチ薬が失敗した18歳またはそれより上の患者における中等度から重度の活動性リウマチ性関節炎の徴候および症状の低減に関してFDAによって承認されている。その高い安全性プロファイルを考慮して、アナキンラの投与はまた、若年性リウマチ性関節炎患者の関節炎の処置においても用いられている(Reiff, A. 2005. Curr Rheumatol Rep. 7:434-40)。他の適応には、骨髄移植後の移植片対宿主病(GVHD)(Antin, J.H. et al. 1994. Blood.84: 1342-8)、ブドウ膜炎(Teoh, S.C. et al. 2007. Br J Opthalmol. 91:263-4)、変形性関節症(Caron, J.P. et al. 1996. Arthritis Rheum. 39:1535-44)、喘息、炎症性腸疾患、急性膵炎(Hynninen, M. et al. 1999. J Crit Care. 14:63-8)、乾癬、およびII型真性糖尿病(Larsen, C.M. et al. 2007. N Engl J. Med. 356:1517-26)の予防が含まれる。IL-1Raの全身性の安全性プロファイルは、特にTNF-α遮断剤、細胞障害剤、またはさらにステロイドなどの他の免疫抑制処置と比較して、極めて都合がよい。
【0110】
局所表面ヒト組み換え型IL-1Raは、実験的動物モデルにおいて、角膜移植拒絶(Yamada, J. et al. 2000. Invest Opthalmol Vis Sci. 41:4203-8)、およびアレルギー性結膜炎(Keane-Myers, A.M. et al. 1999. Invest Opthalmol Vis Sci. 40:3041-6)の予防のために用いられて成功している。同様に、局所表面のIL-1Raを用いることは、ラット角膜アルカリ損傷モデルにおいて、角膜の炎症を有意に減少させて角膜の透明性を増強させる(Yamada, J. et al. 2003. Exp Eye Res. 76:161-7)。
【0111】
組み換え型ヒトIL-1Ra(rHuIL-1Ra)は、関節炎の処置のために皮下注射によってヒトでの使用のために開発され承認された。アナキンラまたはKineret(登録商標)(Amgen Inc.)としても知られるこの型のrHuIL-1Raは、N末端メチオニンの付加によって本来の非グリコシル化IL-1Raとは異なる。これは、IL-1βと同じ親和性でヒトIL-1R 1型(IL-1R1)に結合する。Kineret(登録商標)は、アミノ酸153個(SEQ ID NO:16を参照されたい)からなり、分子量17.3キロダルトンを有する。これは、大腸菌細菌発現系を用いて組み換えDNA技術によって産生される。この組成物は、SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16の1つまたは複数の領域を含む。さらに、この組成物は、SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16のいずれかの全配列を含む。
【0112】
アナキンラ/Kineret(登録商標)は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号M55646およびSEQ ID NO:15)によってコードされる。

【0113】
アナキンラ/Kineret(登録商標)は、以下のポリペプチド配列(DrugBankアクセッション番号BTD00060およびSEQ ID NO:16)によってコードされる。

【0114】
IL-1受容体:
本発明の組成物は、IL-1受容体1型または2型のいずれかをコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む。本出願において、IL-1受容体、1型(IL-1R1)は、SEQ ID NO:17のポリヌクレオチド配列またはSEQ ID NO:18のポリペプチド配列によって定義される。本出願において、IL-1受容体2型(IL-1R2)、転写物変種1および2は、SEQ ID NO:19および20のポリヌクレオチド配列またはSEQ ID NO:21のポリペプチド配列によって定義される。IL-1R2は、IL-1サイトカインに結合して、IL-1R1を阻害する「デコイ」受容体として機能しうる。ポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物は、SEQ ID NO:17〜21によって含まれるIL-1R1またはIL-1R2およびその関連するイソ型の1つまたは複数の領域に結合する。
【0115】
IL-1R1は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_000877およびSEQ ID NO:17)によってコードされる。


【0116】
IL-1R1は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_000877およびSEQ ID NO:18)によってコードされる。

【0117】
IL-1R2転写物変種1は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_004633およびSEQ ID NO:19)によってコードされる。

【0118】
IL-1R2転写物変種2は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_173343およびSEQ ID NO:20)によってコードされる。

【0119】
IL-1R2転写物変種1および2は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_004633、NM_173343、およびSEQ ID NO:21)によってコードされる。

【0120】
インターロイキン-1受容体(2型)アンタゴニスト(IL-1Ra3):
本発明は、ヒトIL-1R2の活性を阻害または増強する手段を有する組成物を含む。IL-1R2アンタゴニスト、IL-1Ra3を含む組成物は、IL-1R1機能の有効性に関してアゴニストまたはアンタゴニスト活性のいずれかを有する。組成物は、IL-1Ra3をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む。阻害性のポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物は、SEQ ID NO:22およびSEQ ID NO:23に含まれるIL-1Ra3の1つまたは複数の領域に結合する。
【0121】
IL-1Ra3は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号AF_057168およびSEQ ID NO:22)の領域または全体によってコードされる:(この配列に関して、太字で大文字のコドンはメチオニンをコードせず、むしろ対応するポリペプチドの最初のアミノ酸をコードするコドンを表す)。

【0122】
IL-1Ra3の1つまたは複数のイソ型は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号AF_057168およびSEQ ID NO:23)を含む。

【0123】
インターロイキン-1受容体アクセサリタンパク質(IL-1RAP):
ヒトIL-1RAPの活性を阻害する組成物は、IL-1サイトカインまたはIL-1受容体に対するIL-1RAPの結合を阻害して、その後の下流の細胞内シグナルの伝達を阻害する。IL-1RAP機能の阻害剤を含む組成物は、IL-1受容体の活性に拮抗する。組成物は、IL-1RAPをコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む。阻害性ポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物は、SEQ ID NO:24〜27に含まれるIL-1RAPおよび関連するイソ型の1つまたは複数の領域に結合する。
【0124】
IL-1RAP転写物変種1は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_002182およびSEQ ID NO:24)によってコードされる。


【0125】
IL-1RAP転写物変種1は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_002182およびSEQ ID NO:25)によってコードされる。

【0126】
IL-1RAP転写物変種2は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_134470およびSEQ ID NO:26)によってコードされる。

【0127】
IL-1RAP転写物変種2は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_134470およびSEQ ID NO:27)によってコードされる。

【0128】
インターロイキン-1受容体関連キナーゼ1(IRAK1):
本発明はまた、この受容体とIL-1とのライゲーション後にIL-1受容体に結合し、かつ炎症反応に至る下流のシグナルを伝達するこのタンパク質の能力として定義される、ヒトIRAK1の活性を阻害する組成物および方法を含む。IRAKの阻害剤を含む組成物は、IL-1受容体からの下流のシグナル伝達に拮抗する。組成物は、IRAK1をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む。阻害性ポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物は、SEQ ID NO:28〜33に含まれるIRAK1および関連するイソ型の1つまたは複数の領域に結合する。
【0129】
IRAK1転写物変種1は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_001569およびSEQ ID NO:28)によってコードされる。

【0130】
IRAK1転写物変種1は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_001569およびSEQ ID NO:29)によってコードされる。

【0131】
IRAK1転写物変種2は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_001025242およびSEQ ID NO:30)によってコードされる。

【0132】
IRAK1転写物変種2は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_001025242およびSEQ ID NO:31)によってコードされる。

【0133】
IRAK1転写物変種3は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_001025243およびSEQ ID NO:32)によってコードされる。

【0134】
IRAK1転写物変種3は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_001025243およびSEQ ID NO:33)によってコードされる。

【0135】
マイクロRNAによる発現のサイレンシング
本発明は、マイクロRNA(miRNA)分子を、適当な薬学的担体と共に眼または付属器組織に送達することによって、IL-1α、IL-1b、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、またはIRAK1の活性を阻害する手段を有する組成物を含む。IL-1α、IL-1b、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、またはIRAK1のいずれかを標的とするmiRNAを含む組成物は、IL-1R1の機能に拮抗する。組成物は、IL-1α、IL-1b、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、またはIRAK1の1つまたは複数の領域に結合する1つまたは複数のmiRNAを含む。以下の表は、ヒトIL-1αまたはIL-1R1の発現を部分的または完全にサイレンシングすることが示されている例示的なmiRNAを含む。
【0136】
(表1)miRNA、そのヒト標的遺伝子、ヌクレオチド配列、およびその配列識別番号の概要

【0137】
IL-1およびIL-1R媒介シグナル伝達
本明細書において用いられるように、「炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する」という用語は、IL-1受容体から開始、連絡、または伝達された細胞内シグナル伝達の阻害、防止、減損、低減、減少、抑制、または中断を記述することを意味する。本発明の1つの局面において、IL-1受容体から開始、連絡、または伝達された細胞内シグナル伝達の阻害、防止、減損、低減、減少、抑制、または中断は、IL-1サイトカインのIL-1Rに対する結合を防止または減少させることによって達成される。またはもしくは加えて、IL-1Rからの細胞内シグナル伝達の伝達は、シグナル伝達カスケード内の下流のエフェクターまたは標的を除去、サイレンシング、または変異させることによって防止される。下流のエフェクターおよび/または標的の発現および/または機能または活性は、遺伝子改変または治療化合物の投与によって、除去される(たとえば、欠失、ノックアウト、隔離、変性、分解される等)、サイレンシングされる(分解される、転写的または翻訳的に抑制される)、または変異される(活性産物をコードするヌクレオチドまたはアミノ酸配列が、非機能的産物をコードするように変更されている)。
【0138】
例示的な下流のエフェクターおよび/または標的には、IL-1(インターロイキン-1)、IL-1α(インターロイキン1α)、IL-1β(インターロイキン1β)、IL-1R(インターロイキン1受容体、I型)、IL-1Ra(IIL-1Rアンタゴニスト)、IL-1RAcP(IL-1Rアクセサリタンパク質)、TOLLIP(TOLL相互作用タンパク質)、IRAK1(IL-1R関連キナーゼ1)、IRAK2(IL-1R関連キナーゼ2)、IRAK3(IL-1R関連キナーゼ3)、MYD88(骨髄分化主応答遺伝子88)、ECSIT(Toll経路における進化的に保存されたシグナル伝達中間体)、TRAF6(TNF受容体関連因子6)、MEKK1(MAP ERKキナーゼキナーゼ1)、TAB1(TAK1結合タンパク質1)、TAK1(トランスフォーミング増殖因子b活性化キナーゼ1)、NIK(NFκB誘導キナーゼ)、RKIP(Rafキナーゼ阻害タンパク質)、MEK3(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ3;MEK3またはMKK3)、MEK6(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ6;MEK6またはMKK6)、MAPK14(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ14)、MAPK8(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ8)、MEKK1(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼキナーゼ1)、MAP3K14(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼキナーゼ14)、MEKK7(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼキナーゼ7またはMKK7)、MAP3K7IP1(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼキナーゼ7相互作用タンパク質1)、JNK(Jun N末端キナーゼ)、p38(p38 MAPKまたはp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼとしても知られる)、cJUN(jun腫瘍遺伝子)、AP-1(活性化因子タンパク質1;転写因子)、IL-6(インターフェロンβ2としても知られるインターロイキン6)、TNFα(腫瘍壊死因子-α)、TNF(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー)、IFNα(インターフェロンα、インターフェロンα1)、IFNβ(インターフェロンβ、インターフェロンβ1)、TGFβ1(トランスフォーミング増殖因子β1)、TGFβ2(トランスフォーミング増殖因子β2)、TGFβ3(トランスフォーミング増殖因子β3)、IKKα(B細胞におけるκ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサーの阻害剤、キナーゼα)、IKKβ(B細胞におけるκ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサーの阻害剤、キナーゼβ)、IκBα(B細胞阻害剤におけるκ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサーの核因子、α)、Chuk(保存されたヘリックスループヘリックス汎在キナーゼ)、およびNFκB(B細胞におけるκ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサーの核因子1;p105としても知られる)の1つまたは複数のイソ型または相同体が含まれるがこれらに限定されるわけではない。追加のシグナル伝達分子および関係は、O'Neill, L. A. J. and Greene, C. 1998. Journal of Leukocyte Biology. 63: 650-657によって定義される。
【0139】
炎症性のインターロイキン-1サイトカインの活性の阻害は、眼または付属器組織をサンプリングする段階、およびIL-1Rシグナル伝達カスケードの構成要素をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの量を決定する段階によって決定される。投与前のIL-1Rシグナル伝達カスケードの構成要素の量と比較して、本発明の治療組成物の投与後のIL-1Rシグナル伝達カスケードの構成要素をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの量が増加または減少すれば、炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性が阻害されたことを示している。
【0140】
具体的に、図4は、2つの例示的なカスケードの構成要素間の機能的相互関係を示す。この図における構成要素間の矢印は、矢印の先の構成要素が矢印の後の構成要素を活性化することを示している。逆に、矢印のない線は、矢印のない線の前の構成要素が、矢印のない線の後の構成要素の活性または機能を阻害することを示した。
【0141】
簡単に説明すると、IL-1R I型は、IL-1βに結合するが、IL-1Rは、シグナルを伝達するためにIL-1受容体アクセサリタンパク質(IL-1RAcP)を必要とする。IL-1結合は、IL-1受容体複合体に会合した2つのキナーゼ、IRAK-1およびIRAK-2の活性化を引き起こす。IRAK-1(IL-1受容体関連キナーゼ)は、TRAF6を活性化してIL-1受容体複合体へと動員する。TRAF6は、2つの経路を活性化して、1つはNF-κB活性化に至り、もう1つはc-jun活性化に至る。TRAF関連タンパク質ECSITは、Mapキナーゼ/JNKシグナル伝達系を通してc-Jun活性化に至る。TRAF6はまた、TAB1/TAK1キナーゼを通してシグナルを伝達し、I-kBの分解およびNF-kBの活性化を誘発する。
【0142】
例として、本発明のある態様において、眼もしくは付属器組織または涙液におけるMEKK1のプロセシング型の量の減少もしくは非存在、リン酸化IκBαの量の減少もしくは非存在、リン酸化c-JUNの量の減少もしくは非存在、ICAM-1の量の減少もしくは非存在、またはIL-6、TNF-α、IFNα、IFNβ、TGFβの量の減少もしくは非存在は、炎症性インターロイキン-1サイトカインの阻害を示している。同様に、上記の構成要素のいずれかの活性または機能の減少または非存在は、炎症性インターロイキン-1サイトカインの阻害を示している。
【0143】
薬学的に適当な担体
眼または付属器組織への局所表面組成物の経皮送達を容易にしてはかどらせるために組み入れられる例示的な化合物には、アルコール(エタノール、プロパノール、およびノナノール)、脂肪アルコール(ラウリルアルコール)、脂肪酸(吉草酸、カプロン酸、およびカプリン酸)、脂肪酸エステル(イソプロピルミリステートおよびイソプロピルn-ヘキサノエート)、アルキルエステル(酢酸エチルおよび酢酸ブチル)、ポリオール(プロピレングリコール、プロパンジオンおよびヘキサントリオール)、スルホキド(ジメチルスルホキシドおよびデシルメチルスルホキシド)、アミド(ウレア、ジメチルアセトアミドおよびピロリドン誘導体)、界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ポロキサマー、スパン、ツイーン、胆汁酸塩、およびレシチン)、テルペン(d-リモネン、α-テルペンオール、1,8-シネオール、およびメントン)、アルカノン(N-ヘプタンおよびN-ノナン)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。その上、局所表面に投与された組成物は、カドヘリンアンタゴニスト、セレクチンアンタゴニスト、およびインテグリンアンタゴニストが含まれるがこれらに限定されるわけではない表面接着分子調整物質を含む。
【0144】
任意で、組成物は、生理的に許容される塩、カルボポルを有するポロキサマー類似体、カルボポル/ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボポル-メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、および鉱油からなる群より選択される化合物を含有する。
【0145】
コンタクトレンズによる薬物送達
本発明は、炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害するコンタクトレンズおよび組成物を含む。たとえば、組成物は、レンズに組み入れられるかまたはレンズ上にコーティングされる。組成物は、コンタクトレンズポリマーに化学的に結合されるか、または物理的に捕捉される。または、着色添加剤をポリマー組成物に化学的に結合させるかまたは物理的に捕捉させて、着色添加剤の強度の変化がポリマー内で結合してまたは捕捉されて残っている治療薬組成物の量または用量の変化を示すように、これを治療薬組成物と同じ速度で放出する。または、もしくは加えて、紫外線(UV)吸収体をコンタクトレンズポリマーに化学結合させるか、またはポリマー内に物理的に捕捉させる。コンタクトレンズは疎水性または親水性のいずれかである。
【0146】
本発明の組成物を送達する手段を有する疎水性レンズを加工するために用いられる例示的な材料は、アメフォコンA、アムシルフォコンA、アキラフォコンA、アルフォコンA、カブフォコンA、カブフォコンB、カルボシルフォコンA、クリルフォコンA、クリルフォコンB、ジメフォコンA、エンフルフォコンA、エンフロフォコンB、エリフォコンA、フルロフォコンA、フルシルフォコンA、フルシルフォコンB、フルシルフォコンC、フルシルフォコンD、フルシルフォコンE、ヘキサフォコンA、ホフォコンA、ヒブフォコンA、イタビスフルオロフォコンA、イタフルオロフォコンA、イタフォコンA、イタフォコンB、コルフォコンA、コルフォコンB、コルフォコンC、コルフォコンD、ロチフォコンA、ロチフォコンB、ロチフォコンC、メラフォコンA、ミガフォコンA、ネフォコンA、ネフォコンB、ネフォコンC、オンシフォコンA、オプリフォコンA、オキシフルフロコンA、パフルフォコンB、パフルフォコンC、パフルフォコンD、パフルフォコンE、パフルフォコンF、パシフォコンA、パシフォコンB、パシフォコンC、パシフォコンD、パシフォコンE、ペムフォコンA、ポロフォコンA、ポロフォコンB、ロフルフォコンA、ロフルフォコンB、ロフルフォコンC、ロフルフォコンD、ロフルフォコンE、ロシルフォコンA、サタフォコンA、シフルフォコンA、シラフォコンA、ステラフォコンA、スルフォコンA、スルフォコンB、テラフォコンA、チシルフォコンA、トロフォコンA、トリフォコンA、ユニフォコンA、ビナフォコンA、およびウィロフォコンAが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0147】
本発明の組成物を送達する手段を有する親水性レンズを加工するために用いられる例示的な材料には、アバフィルコンA、アコフィルコンA、アコフィルコンB、アクアフィルコンA、アロフィルコンA、アルファフィルコンA、アムフィルコンA、アスチフィルコンA、アトラフィルコンA、バラフィルコンA、ビスフィルコンA、ブフィルコンA、コムフィルコンA、クロフィルコンA、シクロフィルコンA、ダルフィルコンA、デルタフィルコンA、デルタフィルコンB、ジメフィルコンA、ドロクスフィルコンA、エラストフィルコンA、イプシルフィルコンA、エステリフィルコンA、エタフィルコンA、フォコフィルコンA、ガリフィルコンA、ゲンフィルコンA、ゴバフィルコンA、ヘフィルコンA、ヘフィルコンB、ヘフィルコンC、ヒラフィルコンA、ヒラフィルコンB、ヒオキシフィルコンA、ヒオキシフィルコンB、ヒオキシフィルコンC、ヒドロフィルコンA、レネフィルコンA、リクリフィルコンA、リクリフィルコンB、リドフィルコンA、リドフィルコンB、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、マフィルコンA、メサフィルコンA、メタフィルコンB、ミパフィルコンA、ネルフィルコンA、ネトラフィルコンA、オクフィルコンA、オクフィルコンB、C、オクフィルコンD、オクフィルコンE、オフィルコンA、オマフィルコンA、オキシフィルコンA、ペンタフィルコンA、ペルフィルコンA、ペバフィルコンA、フェムフィルコンA、ポリマコン、セノフィルコンA、シラフィルコンA、シロキシフィルコンA、スルフィルコンA、テフィルコンA、テトラフィルコンA、トリフィルコンA、ビフィルコンA、ビフィルコンB、およびキシロフィルコンAが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0148】
実施例
実施例1:眼表面疾患指数(OSDI)
眼表面疾患指数(OSDI)は、後部眼瞼炎およびドライアイ疾患が含まれる眼表面疾患に一貫する眼の刺激感の症状、および視力関連機能に及ぼすその影響の迅速な査定を提供する12項目の質問票である(図1)。OSDI質問票の12項目は0から4までの尺度で等級付けされ、0は全くない;1はときどきある;2は半分の時間ある;3はほとんどの時間ある;および4は常にあることを示す。次に全OSDIスコアを以下の式に基づいて計算する:OSDI=[(回答があった全ての質問に関するスコアの合計)×100]/[(回答があった質問の総数)×4]。このように、OSDIは0から100までの尺度で採点され、より高いスコアはより大きい能力障害を表す。ベースラインからの負の変化は、視力関連機能および本明細書において記述される眼の炎症障害の改善を示している。本明細書において記述される治療法に関して、処置は、OSDIに関するベースラインからの平均変化(減少)が対照と比較して>10単位によって示される場合、対照(ビヒクル)より有効であると見なされる。
【0149】
治療的処置は、眼表面疾患指数(OSDI)に関する代表値スコア(0〜100)のベースラインからの平均変化がビヒクルより>10単位良好であると示される場合にビヒクルより有効であると見なされる。
【0150】
実施例2:涙液層破壊時間
標準的なTBUT測定は、フルオレセイン片を滅菌非保存生理食塩液によって湿らせて、内部眼瞼結膜に適用することによって行われる。数回の瞬きの後、青色のフィルターを備えた細隙灯の広い光線を用いて涙液層を調べる。最後のまばたきからフルオレセイン染色涙液層における最初の無作為に分布した暗色のとぎれめの出現までの経過時間を3回測定して、測定の平均値を計算する。涙液層破壊時間は、いかなる点眼液も点眼する前、および眼瞼をいかなるようにも操作する前に評価する。10秒未満の破壊時間は異常であると見なされる。ベースラインからの正の変化は、本明細書において記述される眼の炎症障害の症状の改善を示す。本明細書において記述される処置は、ビヒクル単独による処置から観察された場合より有意に大きいTBUTの改善に至る。
【0151】
実施例3:角膜および結膜染色
角膜染色は、中でも後部眼瞼炎およびドライアイなどの眼表面疾患の場合に典型的に認められる、上皮疾患または眼表面の上皮障壁の破壊の測定である。重要なことに、角膜染色は、後部眼瞼炎などの有意な眼瞼疾患が存在する場合、臨床的に明確なドライアイがなくても存在しうる。角膜染色は、全ての患者ではないが多くの患者において眼の不快感と高度に相関する;一般的に角膜染色は、先に記述したようにOSDIの高いスコアに関連する。角膜フルオレセイン染色の場合、生理食塩液で湿らせたフルオレセイン片または1%フルオレセインナトリウム溶液を用いて涙液層を染色する。次に角膜全体を、黄色の障壁フィルター(#12 Wratten)およびコバルトブルー照明(染色は黄色のフィルターで観察する場合により強度である)によって細隙灯評価を用いて調べる。染色をOxford Schema(図2)に従って等級付けする。
【0152】
結膜染色は、中でも後部眼瞼炎およびドライアイなどの眼表面疾患の場合に典型的に認められる、上皮疾患または眼表面の上皮障壁の破壊の測定である。重要なことに、結膜染色は、角膜染色と同様に、後部眼瞼炎などの著しい眼瞼疾患が存在する場合、臨床的に明確なドライアイがなくても存在しうる。結膜染色はまた、眼の刺激感の症状および先に記述した高いOSDIスコアと相関しうる。結膜染色は、リサミングリーンを用いて細隙灯下で行う。生理食塩液に湿らせた小片または1%リサミングリーン溶液を用いて涙液層を染色して、瞼板間結膜染色を、その後30秒間より長いが、2分未満評価する。中等度の強度の白色光を用いて、鼻および側頭結膜染色の瞼板間領域のみをOxford Schema(上記)を用いて等級付けする。本明細書において記述した処置によって、ビヒクル単独において観察されたスコアを超えた眼の染色スコアの減少に至る。
【0153】
治療的処置は、角膜および結膜染色に関する代表値スコア(0〜5の尺度)のベースラインからの平均変化が、たとえばOxford Schemaを用いて検出した場合にビヒクルより>1単位良好であることによって示される場合に、ビヒクルより有効であると見なされる。
【0154】
実施例4:シルマー試験
シルマー試験は、細い濾紙片(Whatman #41濾紙の5×35 mm片)を下結膜嚢に置くことによって麻酔の存在下および非存在下で行われる。この試験は、かすかな光の部屋で行われる。患者は軽く眼を閉じて、5分が経過すると小片を取り出す。眼から取り出した後も涙液の先端は数ミリメートル進行し続けることから、正確に5分で涙液の先端にボールペンで印をつける。水層涙液層破壊を、小片が5分間のあいだに湿ったミリメートルでの長さによって測定する。非麻酔下でのシルマー試験に関して10 mmまたはそれ未満、および麻酔下でのシルマー試験の5 mmまたはそれ未満という結果は、異常であると見なされる。ベースラインからの正の変化は、本明細書において記述された眼の炎症障害の1つまたは複数の症状の改善を示している。
【0155】
実施例5:マイボーム腺の評価
下位眼瞼の中心において、隣接する中心の腺10個が両側面に位置して、腺の基底部でしっかりした指圧を適用することによって腺を圧出する。それぞれの眼に関して圧出された腺の数を報告する。分泌の質を以下のように記述する:
・透明な排出物または小さい粒子を有する透明な排出物(0)
・正常な粘度の不透明の排出物(1)
・粘度が増加した不透明の排出物(2)
・圧出後に分泌物が形状を保持する(3)
【0156】
後部眼瞼炎は、眼瞼の炎症およびマイボーム腺分泌の量および/または質の変更に関連して、重度の疾患は先に記述したように質の等級2〜3に関連する。本明細書において記述された処置によって、このスコアの減少を特徴とするマイボーム腺の分泌の、たとえば3から2、または2から1への改善に至る。改善は、マイボーム腺分泌の質に関するベースラインからの平均変化(0〜3尺度)がビヒクルより>1単位良好であることによって示される。
【0157】
実施例6:眼瞼および眼瞼縁紅斑
眼瞼縁の血管充血(紅斑)は、周辺の眼瞼皮膚と比較して赤色の変色として定義され、以下のように等級付けされる:
なし(0):なし
軽度(1):眼瞼縁または皮膚の小さい領域に局在する赤み
中等度(2):眼瞼縁の大部分での赤み
重度(3):眼瞼縁と皮膚の大部分または全てでの赤み
非常に重度(4):眼瞼縁および皮膚の双方の顕著な散在性の赤み
瞼板の毛細管拡張症の有無も同様に記入する。眼瞼の毛細管拡張症は、眼瞼縁に沿った少なくとも2つの血管の存在として定義される。
【0158】
実施例7:結膜充血
眼球結膜充血は以下のように等級付けされる:
なし(0):なし
軽度(1):軽度の局在する充血
中等度(2):ピンク色、瞼板または眼球結膜に限定される
重度(3):瞼板および/または眼球結膜の赤み
非常に重度(4):瞼板および/または眼球結膜の顕著な暗色の赤み
瞼板の乳頭状肥大の有無も同様に記入する。
【0159】
実施例8:後部眼瞼縁を処置するためのIL-1Raの局所表面投与
以下の試験は、公知の市販の組み換え型IL-1受容体アンタゴニスト、アナキンラ(Kineret(登録商標))を含む溶液対ビヒクルを1つまたは複数の眼および/または付属器組織を冒した炎症状態を有する被験体に局所表面投与する治療利益を評価する。
【0160】
以下は、プロスペクティブ単一施設無作為二重盲検ビヒクル対照並行群間臨床試験である。1つの活性処置群と1つのビヒクル対照群が存在する。スクリーニング診察時に選択/除外基準の必要条件を満たす患者を、マイボーム腺分泌の質に基づいて中等度の階層および重度の階層に分離する。それぞれの階層において、患者を、2.5%局所表面ヒト組み換え型IL-1Raまたはビヒクルのいずれかに均等な割付で無作為化する。中等度の階層の各処置群には患者少なくとも20人、および重度の階層の各処置群には患者少なくとも10人が存在する。本臨床試験は、4ヶ月間で6回の予定診察からなる(表2)。
【0161】
眼または付属器組織を冒す炎症疾患と一貫する徴候または報告された症状を呈する被験体を、上記の眼表面疾患指数(OSDI)を用いて処置前にさらに評価する。例示的な被験体は、末期涙腺(非麻酔下でのシルマー試験の読み<3 mm/5分、またはドライアイ疾患が結膜杯細胞の破壊または瘢痕の結果である場合)を有する患者を除外する、水性涙液欠損の存在下または非存在下で後部眼瞼炎(圧出可能でない腺が7個を超えないことを条件として)の徴候および症状を有する男女の患者である。被験体は、以下の基準を満たす場合に以下の試験に含められる:男性または女性;年齢少なくとも18歳;試験前少なくとも2週間のあいだコンタクトレンズを装着せず、試験中コンタクトレンズを装着しないことに同意する;患者は一般的に良好で安定的な全身健康状態であり、患者は図5において定義されるように後部眼瞼炎の診断を有しなければならない;妊娠の可能性がある女性に関しては妊娠尿検査陰性;妊娠の可能性がある女性は、試験参加前および試験参加期間中に適切な避妊(産児制限のためのホルモンまたは障壁法)を用いることに同意しなければならない;正常な眼瞼の位置および閉鎖;試験に参加するインフォームドコンセントを理解して提出できること;ならびに試験の指示に進んで従い、必要な全ての診察を完全に受ける意志。
【0162】
被験体は、過去2週間以内に局所表面ステロイドまたは市販薬Restasisと共に、過去1ヶ月以内にテトラサイクリン化合物(テトラサイクリン、ドキシサイクリン、およびミノサイクリン)、または過去6ヶ月以内にイソトレチノイン(Accutane)を使用していた場合には除外される。アナキンラ(Kineret(登録商標))またはIL-1遮断を標的とする任意の治療物質によるいかなるこれまでの処置も報告する被験体も同様に除外する。さらに、被験体は、スティーブンス・ジョンソン症候群または眼の類天疱瘡の既往を有する;眼瞼手術の既往;3ヶ月以内に眼内手術または眼のレーザー手術を受けたことがある;ヘルペスが含まれる微生物角膜炎の既往を有する;活動性眼アレルギーを有する;>1 mm2の角膜上皮欠損を有する;過去2週間以内に局所ステロイドまたはRestasisを使用した;1ヶ月以内のテトラサイクリン化合物(テトラサイクリン、ドキシサイクリン、およびミノサイクリン)の任意の用量変化を経験した;過去6ヶ月以内にイソトレチノイン(Accutane)を使用した;アナキンラ(Kineret(登録商標))またはIL-1遮断を標的とする任意の治療物質による任意のこれまでの処置を受けたことがある;妊娠している、または授乳中の女性である;発熱および抗生物質による現在の処置が含まれる、現在の感染症の徴候を有する;肝疾患、腎疾患、または血液疾患を有する;癌の既往を有する;任意の他の治験薬の使用があった場合には除外される。
【0163】
一定の状況において、被験体は、以下の試験から離脱する。以下の基準は、被験体が試験から離脱しなければならないかまたは試験をやめることを許可されなければならない時期を決定するために用いられる。個人は、プロトコール違反、有害事象、有効性の欠如、妊娠、および管理上の理由(例、継続することができない、追跡できない)が含まれるがこれらに限定されるわけではない理由から試験を早期に中止する。
【0164】
スクリーニング診察
選択/除外基準によって定義されるプロスペクティブな患者を、試験の参加に関して検討する。試験設計および処置養生法を各患者に関して考察する。参加を希望する人を、以下の検査によって試験への参加に関して調べる。
・内科および眼科での既往
・患者の質問票(OSDI)(実施例1および図1を参照されたい)
・完全矯正視力(BCVA)(スネレン視力表)
・フルオレセイン涙液層破壊時間(TBUT)(実施例2を参照されたい)
・角膜および結膜染色(実施例3を参照されたい)
・非麻酔下でのシルマー試験(実施例4を参照されたい)
・麻酔下でのシルマー試験(実施例4を参照されたい)
・マイボーム腺の評価(実施例5を参照されたい)
・生体顕微鏡検査
・眼内圧
・眼底検査
【0165】
シルマー試験は、涙液層の安定性を破壊して、疑陽性の眼表面色素染色を引き起こしうることから、1つの技法がもう1つの技法に及ぼす影響を回避するために、ドライアイ試験および眼表面の評価は以下の順序で行われる:涙液層破壊時間(TBUT)の測定、眼表面色素染色パターン(フルオレセインおよびリサミングリーン染色)、非麻酔下および麻酔下でのシルマー試験、ならびにマイボーム腺評価(図6)。
【0166】
眼の検査後、試験を継続する資格を有する(選択/除外基準に従って)各患者に、無作為に割付されたマスクされた処置を両眼に1日3回1滴点眼するように指示する。Kineretの2.5%(25 mg/ml)濃度の局所表面溶液は、MEEI病院薬局によって無菌的技術を用いて、市販の保存剤を含まないKineret(登録商標)溶液(Amgen, Thousand Oaks, CA)から製剤化して調製される。対照群に関して、ビヒクル(Refresh Liquigel(1%カルボキシメチルセルロース))を1日3回両眼に用いる。処置相のあいだ、患者に、試験薬1滴を1日3回3ヶ月間点眼するように指示する;朝起床時、正午、および就寝時に各眼に1滴。
【0167】
Kineretの全身吸収の機会を低減させるために、患者には、涙管に指圧を5分間あてるように要請する。試験薬の希釈を防止するために、試験薬の点眼前30分または点眼後30分に、人工涙液または他の局所表面薬剤を使用しないように患者に助言する。本試験には、採血またはいかなる薬物動態測定も含まれない。
【0168】
コンプライアンス診察
各患者は2週間目にコンプライアンス診察のために戻ってくる(表2)。この診察時に、試験者は試験処置に対する患者のコンプライアンスおよび有害事象に関して直接質問する。患者は有害事象およびプロトコール違反のために試験を中止されうるが、コンプライアンスを強化して、処置プロトコールに被験体を維持するように、あらゆる努力を行う。
【0169】
追跡診察
後部眼瞼炎の管理のために、局所表面IL-1Raの安全性および有効性を決定するために、5回の追跡診察(眼の検査)を1日目、2週目、6週目、12週目および16週目に予定する(表2を参照されたい)。患者を、試験診察スケジュールに厳密に従うように指導する。それぞれの追跡診察時に、患者にOSDI質問票(図1)に記入するように要請する。総合的な眼の検査に加えて、TBUT、角膜および結膜染色試験、マイボーム腺評価、ならびにシルマー試験が含まれる、涙液機能および眼表面の試験を行う。
【0170】
(表2)事象および技法の予定

【0171】
同時治療
もう1つの臨床治験薬または装置の試験への同時登録は禁止される。いかなる同時の薬剤、処方、または大衆薬の使用も、薬剤を使用した理由と共に記録する。試験のあいだ、全ての同時薬物処置レジメン、眼の衛生的処置(すなわち、眼をこするおよび加温圧迫)、または涙点プラグの挿入も、容認された医学の実践によって許容されるように一定に維持される。
【0172】
人工涙液の使用は、スクリーニング診察時および試験中許される。しかし、人工涙液の同時使用は、モニターされる。各試験診察時、患者に、前の1週間のあいだにそれぞれの日に人工涙液を使用した回数の平均値および前の1週間に人工涙液を使用しなかった日数について質問する。
【0173】
試験薬に対する応答または試験結果の解釈に干渉しうる全身および局所眼科用薬は、試験期間中禁止される。これには、任意の全身または局所ステロイド、シクロスポリン、およびテトラサイクリン化合物が含まれる。
【0174】
患者の処置にとって必要である場合、主な検討として試験参加者の安全のために禁止される治療の投与を行う。禁止される薬剤の投与または技法は、プロトコール違反と見なされ、患者は試験を中止されうる。
【0175】
試験のあいだ、患者が軽度から中等度の眼表面の症状を訴える場合、患者に試験薬を明らかにすることなく、より頻繁な人工涙液(Refresh(登録商標))の使用を推奨する。人工涙液による処置が不適切である場合、または患者が重度の眼表面の疾患およびドライアイを発症する場合、被験体の安全性および適切な処置のために、治験担当者は、どの処置が割付されているかを決定するために被験体の処置の割付を明らかにして、適切な追跡ケアを始めることができる。しかし、患者は「治療企図」分析を行うことができるように試験に留まる。
【0176】
有効性の測定
本発明の治療化合物の投与の有効性のいくつかの徴候をモニターする。客観的徴候はマイボーム腺分泌の質、マイボーム腺閉塞、涙液層破壊時間、角膜および結膜染色、ならびにシルマー試験(麻酔下および非麻酔下)である。主観的エンドポイントは、OSDI質問票スコアである。これらの変数は全て、ベースライン時および追跡調査の終了まで全ての診察時に注意深く測定される(表2)。
【0177】
以下は、一次有効性変数の非制限的な例である。マイボーム腺分泌の質;涙液層破壊時間;角膜および結膜染色スコア;ならびにOSDI質問票スコア。またはもしくは加えて、二次有効性変数を用いて、本発明の組成物の投与の治療的価値を決定する。二次有効性変数の非制限的な例には:マイボーム腺閉塞;非麻酔下でのシルマー試験;麻酔下でのシルマー試験。一次および/または二次有効性変数を検討する。
【0178】
本試験において、局所表面IL-1Raによる処置は、2.5%溶液が、12週目の診察時にビヒクルより>1単位よい、マイボーム腺分泌の質に関するベースライン(0〜3の尺度)からの平均変化を示す場合に有効であると見なされる。または、局所表面IL-1Raによる処置は、2.5%溶液が、12週目の診察時にビヒクルより>1単位よい、角膜および結膜染色に関するスコアの代表値(0〜5の尺度)のベースラインからの平均変化を示す場合に有効であると見なされる。
【0179】
安全性の測定
モニターされる一次安全性変数は、有害事象の発生である。観察された各有害事象の重症度(眼および全身)を、軽度(徴候または症状の自覚はあるが、容易に認容される)から重度(仕事をすることができないまたは日常活動を行うことができない)まで評定をつける。事象と試験薬との関連は、治験担当者によって、なし、可能性は低い、ありうる、可能性がある、または明確として査定される。安全性変数はベースラインおよび全ての試験診察時に評価する。
【0180】
試験を通して各診察時に、治験担当者は、各患者に、「前回の診察以降どんな気分ですか?」などの一般的で非方向性の質問を尋ねることによって有害事象に関して質問し始める。次に、適当であれば、方向性の質問および検査を行う。治験担当者は、前回の診察以降同時投薬の使用に何らかの変化があったか否かを決定するために、毎回の診察時に被験体に質問を行う。完全矯正視力、眼内圧の測定、眼瞼/まつげ、結膜、角膜、前眼房、虹彩/瞳孔、水晶体、硝子体、黄斑、および視神経の状態に関する評価が含まれる総合的な眼科検査を行う。ベースライン診察時からの試験眼におけるいかなる変化も記録する。
【0181】
統計技法
検出力および標本規模の検討:
(表3)マイボーム腺の質のスコアの予想順序化カテゴリーの推定発生率

【0182】
試験の検出力を推定するために、被験体の50%が局所表面IL-1Raに無作為化され、および50%がビヒクルに無作為化されると仮定する。次に、試験の検出力の保存的推定値を、Sullivan and D'Agostino(Sullivan, L.M. and D'Agostino, R.B. 2003. Stat Med. 22(8):1317-34)に従って、順序化カテゴリー内でのプライマリエンドポイントに関して予測された分布のt検定比較を用いて構築することができる。この方法を用いる検出力の推定値は、実際の分析がその相関を適切に考慮に入れながら両眼からのデータを用いることから、保存的であり、これは分析単位として個体を用いることに基づく方法と比較してより大きい検出力を有することが証明されている。
【0183】
Sullivan and D'Agostinoの研究は、t検定が3〜5個の順序カテゴリーを有する順序尺度の比較に関してはうまく行くことを示している。検出力の推定値は、プラセボ群におけるスコアの予想される分布に関して3つのシナリオ(高い、中等度、および低い)に基づく。先の表3において表示されるように、1.04〜1.52のあいだの平均スコアが予想され、標準偏差は1.02〜1.09である。臨床的に意味のある差は、平均スコアの1の低減であるか、またはおよそ1標準偏差の低減である。
【0184】
2標本のt検定に基づいて、多重比較に関するボンフェローニ補正(4つの一次結果変数)を行って、オブザーバーはそれぞれ、高い、中等度および低いシナリオにおいて、1群あたり28、30および28の標本規模に関して1標準偏差の平均の差を検出するためには>80%の検出力を有するであろう。注目したように、実際の検出力は、分析におけるもう片方の眼との相関を考慮することによって、試験参加者の両眼のスコアを用いることを通して増強されるであろう。ゆえに、1群あたりN=30の標本規模を選択した。
【0185】
統計分析:
有効性変数および安全性を除く他の任意の変数に関して、被験体を全員、無作為化された処置に関して分析する(治療企図集団)。安全性変数に関して、被験体を実際に受けた処置に関して分析する(安全性集団)。
【0186】
提唱される試験の一次分析は、最終的なコンプライアンスにかかわらず、各試験参加者を無作為化された処置割付に関して分析する標準的な治療企図分析に基づく。二次分析には、選択された変数に関する紛失データの転嫁が含まれてもよい。患者または患者の診察を不適格とする計画適合例分析(per protocol analysis)も同様に行ってもよいが、実際の処置の使用の観察分析は、使用パターンがいくぶん結果に関連する場合に偏見を導入しうることから、計画されない。
【0187】
処置割付の無作為化性質にもかかわらず、この比較的小さい試験被験体標本では、潜在的な交絡変数に関して不均衡が存在する可能性がある。このように、分析における最初の段階として、活性処置に割付された患者対ビヒクルに無作為化された患者を、連続または順序変数に関するノンパラメトリックWilcoxon順位和検定、およびカテゴリー変数に関するカイ二乗検定またはFisherの直接検定を用いて、人口統計学的特徴および潜在的交絡変数に関して比較する。
【0188】
局所表面IL-1Ra処置の効果を査定するために、a)マイボーム腺分泌スコアの分布、およびb)局所表面IL-1Raに割付された患者と、ビヒクルに割付された患者のあいだの角膜および結膜染色スコアの分布を、Rosner and Glynn(Rosner, et al. 2003. Biometrics. 59(4):1089-98)によって最近開発されたクラスタリング効果に関する分散の補正を行って、階層化Wilcoxon順位和検定を用いて比較する。シミュレーション試験に基づき、両眼からの情報を用いてその相関を適切に考慮する眼科学データの分析は、1つの眼に基づくまたは両眼の代表値に基づく方法より大きい検出力を有する(Rosner, et al. 2003. Biometrics. 59(4):1089-98;Glynn, R.J. and Rosner, B. 1994. Stat Med. 13(10): 1023-36)。この方法は、本明細書において用いられる臨床採点尺度などの順序結果にクラスタリング効果を組み入れるために大標本論を用いる。これは標準的なソフトウェア(たとえば、SAS PROC RANK)によって実行することができ、1群あたり>20のクラスタが存在する場合のデータセットにおける互角の順位の有無における均衡または非均衡クラスタデータのいずれかに関する有効な検定を提供する。試験はクラスタ-平均値技法の代わりに用いてもよく(たとえば、SAS PROC MIXEDを用いる分析に起因する場合のように)、標準的なWilcoxon検定が不適当である場合に偏りのないp-値を提供する。次に、これらの分析を、試験の階層化型を用いて変数による潜在的交絡に関して対照に拡大する。連続変数の階層化に関する論理的カットポイントは、ビヒクル処置群におけるレベルの中央値であろう。
【0189】
これらの方法を開発する前では、試験は、一般的に複合スコアまたは被験体あたり1つの眼からのデータのいずれかを用いて人を分析単位として用いていた。しかし、眼特異的等級を1人の人特異的等級に崩壊することによって、情報がおそらく失われる。
【0190】
二次分析において、OSDIスコアおよび涙液層破壊時間などの他の結果に及ぼす局所表面IL-1Raの効果も同様に探索される。同様に、これらの分析は分散を補正した階層化Wilcoxon検定を用いる。
【0191】
一般的に、p値が0.0125未満またはそれに等しい両側の検定は統計学的に有意であると見なされる。この有意水準は、全1型誤差率0.05を、一次分析における比較の数である4で除することによって到達された。
【0192】
患者は試験のあいだ複数の時点で評価されるが、一次エンドポイントは、3ヶ月間処置した最後の観察である。
【0193】
実施例9:眼内圧(IOP)に及ぼすIL-1Raの効果
IL-1Raを、野生型BALB/cマウスの片眼に投与して、処置および無処置(反対側の眼)の双方に関する平均眼内圧(IOP)を測定した。これらの実験からのデータは、IL-1Raの投与が、1回の日中に対して、および特に1回の夜間の期間に対して統計学的に有意な量でIOPを低減させるために十分であることを示している(以下の表4、および図3)。IOPは、緑内障発症の危険因子である。重要なことに、用いた組成物および方法は野生型、または正常な被験体において有効であった。そのため、本実施例は、本発明の組成物および方法が、IL-1媒介炎症が含まれるがこれらに限定されるわけではない多様な機序によって引き起こされている眼内圧上昇または高眼圧症を処置するために有効であるという概念の証明である。
【0194】
(表4)BALB/cマウスにおける日中(6時間後)および終夜(12時間後)の眼内圧(IOP)に及ぼす局所表面IL-1Ra(2.5%)の1滴点眼の効果。データは、IOPの平均値(mm Hg)±SEMとして表記する。P値は、処置した眼対反対側の眼に関する値である(対応のあるt検定)。

【0195】
他の態様
本発明は、その詳細な説明に関連して説明してきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明を例証することを意図しており、本発明の範囲を制限することを意図していない。他の局面、長所、および改変は、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【0196】
本明細書において参照した特許および科学論文は、当業者に利用できる知識を確立している。本明細書において引用される全ての米国特許および公開されたまたは未公開の米国特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用された公開された全ての外国特許および特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用されるアクセッション番号によって示されるGenbenkおよびNCBI提出物は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用される他の全ての公表された参考文献、文書、原稿、および科学論文は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0197】
本発明は、その好ましい態様を参照して特に示され、記述されてきたが、型および詳細に様々な変化を行ってもよく、それらも添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲に含まれることは、当業者によって理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の眼または付属器組織に局所投与する段階を含む、眼および付属器組織を冒す炎症障害を阻害するかまたはその重症度を低減させるための方法。
【請求項2】
前記活性が、IL-1受容体に対する炎症性IL-1サイトカインの結合を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
眼および付属器組織を冒す炎症障害に罹っていると特徴付けされた被験体を同定する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記同定する段階が、炎症性サイトカインの上皮過剰発現、眼瞼縁の血管過形成もしくは肥厚、眼瞼縁もしくは角膜辺縁の新生血管形成、眼の表面での白血球の増加、または眼表面でのマトリクスメタロプロテアーゼの過剰発現からなる群より選択される徴候または症状の検出を含み、かつ方法が該徴候または症状の少なくとも1つを阻害またはその重症度を低減させる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
炎症障害が感染性眼瞼炎を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
炎症障害が非感染性眼瞼炎を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
抗生物質化合物の投与を含まない、請求項1記載の方法。
【請求項8】
抗生物質化合物と、IL-1受容体に対する炎症性IL-1サイトカインの結合を阻害する組成物の双方の投与を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
IL-1受容体に対する炎症性IL-1サイトカインの結合を阻害する組成物が、SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
組成物が0.1〜10%(mg/ml)の濃度で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
組成物の剤形が固体、パスタ剤、軟膏、ゲル、液剤、エアロゾル剤、噴霧剤、ポリマー剤、フィルム剤、乳剤、または懸濁剤である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
組成物が局所表面に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
全身投与または非眼組織への実質的な散布を含まない、請求項1記載の方法。
【請求項14】
組成物が、生理的に許容される塩、カルボポル(carbopol)を有するポロキサマー類似体、カルボポル/HPMC、カルボポル-メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、および鉱油からなる群より選択される化合物をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
剤形が固体、パスタ剤、液剤、軟膏、ゲル、エアロゾル剤、噴霧剤、ポリマー剤、フィルム剤、乳剤、または懸濁剤であり、かつ0.1〜10%(mg/ml)の濃度で存在する、炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を含む、組成物。
【請求項16】
SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を含むコンタクトレンズであって、該組成物が該レンズに組み入れられるかまたはその上にコーティングされる、コンタクトレンズ。
【請求項18】
炎症性インターロイキン-1サイトカインまたはIL-1受容体をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する組成物を被験体の眼または付属器組織に局所投与する段階を含む、眼の炎症障害を阻害するかまたはその重症度を低減させるための方法。
【請求項19】
前記組成物がポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または低分子を含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が、モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、または低分子干渉RNA(siRNA)を含む、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が局所表面に投与される、請求項18記載の方法。
【請求項22】
ポリマーと、ポリマーの中にまたはその上に組み入れられた生物活性組成物とを含む装置であって、該生物活性組成物が炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害し、かつ該装置が、眼または付属器組織の中またはその上に組み入れられる、装置。
【請求項23】
IL-1受容体に対する炎症性IL-1サイトカインの結合を阻害する組成物と、1つまたは複数の炎症性アンタゴニストを含む第二の組成物の双方の投与を含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記第二の組成物が、腫瘍壊死因子α(TNFα)、1つもしくは複数のインターロイキンサイトカイン、血管上皮増殖因子(VEGF)ファミリーの1つもしくは複数のメンバー、インターフェロン-γ、または1つもしくは複数のケモカインおよびその受容体を阻害する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記第二の組成物が、エタネルセプト/Embrel、インフリキシマブ/Remicade、またはアダリムマブ/Humiraを含む、請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記第二の組成物が、TNFα、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-12、IL-17、IL-18、IL-23、VEGF-A、VEGF-C、VEGFR-2、VEGFR-3、インターフェロン-γ、CCR1、CCR2、CCR5、CCR7、またはCXCR3の阻害剤を含む、請求項23記載の方法。
【請求項27】
前記第二の組成物が免疫抑制剤を含む、請求項23記載の方法。
【請求項28】
前記第二の組成物が、シクロスポリンAもしくはその類似体、グルココルチコイド、細胞増殖抑制剤、アルキル化剤、ナイトロジェンマスタード、シクロホスファミド、ニトロソウレア、白金化合物、代謝拮抗剤、メソトレキセート、葉酸類似体、アザチオプリン、メルカプトプリン、プリン類似体、ピリミジン類似体、タンパク質合成阻害剤、細胞障害性抗生物質、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミスラマイシン、ポリクローナル抗体、Atgam(登録商標)、Thympglobuline(登録商標)、抗リンパ球抗原に対する抗体、抗胸腺細胞抗原に対する抗体、モノクローナル抗体、OKT3(登録商標)、T細胞受容体に対する抗体、IL-2に対する抗体、バシリキシマブ/Simulect(登録商標)、デクリズマブ/Zenapax(登録商標)、タクロリムス/Prograf(商標)/FK506、シロリムス/Rapamune(商標)/ラパマイシン、インターフェロンβ、インターフェロンγ、オピオイド、TNFα結合タンパク質、ミコフェノレート(mycophenolate)、またはFTY720を含む、請求項23記載の方法。
【請求項29】
上昇した眼内圧を有する被験体を同定する段階、および炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を該被験体の眼または付属器組織に局所投与する段階を含む、上昇した眼内圧を抑制するかまたはその重症度を低減させるための方法。
【請求項30】
上昇した眼内圧を有する被験体を同定する段階、および炎症性インターロイキン-1サイトカインまたはIL-1受容体をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する組成物を被験体の眼または付属器組織に局所投与する段階を含む、上昇した眼内圧を抑制するかまたはその重症度を低減させるための方法。
【請求項31】
正常より上の眼内圧に関連する状態に罹っているかまたはそのリスクを有する被験体を同定する段階、および炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体に局所投与する段階を含む、眼内圧を低減させるための方法。
【請求項32】
前記状態が緑内障である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記炎症障害が、上昇した眼内圧、高眼圧症、または緑内障を含む、請求項1または18記載の方法。
【請求項34】
前記同定する段階が、眼内圧を測定する段階、および該眼内圧が正常レベルより上に上昇しているか否かを決定する段階を含む、請求項3、29、30、または31記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が、プロスタグランジン類似体(ラタノプロスト(Xalatan)、ビマトプロスト(Lumigan)、およびトラボプロスト(Travatan)など);局所表面βアドレナリン受容体アンタゴニスト(チモロール、レボブノロール(Betagan)、およびベタキソロールなど);α2-アドレナリンアゴニスト(ブリモニジン(Alphagan)など)、交感神経模倣薬(エピネフリンおよびジピベフリン(Propine)など);縮瞳剤(副交感神経模倣薬)(ピロカルピンなど);炭酸脱水素酵素阻害剤(ドルゾラミド(Trusopt)、ブリンゾラミド(Azopt)、アセタゾラミド(Diamox)など);フィソスチグミン;魚油;ω3脂肪酸、コケモモ、ビタミンE、カンナビノイド、カルニチン、補酵素Q10、クルクミン、タンジン(Salvia miltiorrhiza)、ダークチョコレート、エリスロポエチン、葉酸、イチョウ(Ginkgo biloba)、チョウセンニンジン、L-グルタチオン、ブドウ種子抽出物、緑茶、マグネシウム、メラトニン、メチルコバラミン、N-アセチル-Lシステイン、ピクノジェノール(pycnogenol)、レスベラトロール、ケルセチン、およびフルドロコルチゾンからなる群より選択される化合物をさらに含む、請求項1、18、29、30、または31記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2011−516400(P2011−516400A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521046(P2010−521046)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/009776
【国際公開番号】WO2009/025763
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(502144235)ザ スキーペンズ アイ リサーチ インスティチュート インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】