説明

眼粘膜適用製剤

【課題】ソフトコンタクトレンズ装用時の眼の痒みを効果的に抑制することができる安全な粘膜適用製剤を提供することを目的とする。
【解決手段】グリチルリチン酸又はその塩、塩酸ピリドキシンとともに、特定量のメントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、酢酸リナリル及びメントンからなる群から選択される1種又は2種以上を眼粘膜適用製剤に含有することによってソフトコンタクトレンズ装用時の掻痒感を抑制することができる点眼薬や洗眼薬などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼粘膜適用製剤に関する。ソフトコンタクトレンズ装用時に生じる特有の目の痒みを有効に抑制することができる鎮痒のための眼粘膜適用製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトコンタクトレンズ装用者の不定愁訴の一つに痒みがある。ソフトコンタクトレンズはアレルギー反応の抗原となる成分を吸着しやすく、角結膜に常に刺激を与え続けている。ソフトコンタクトレンズ装用中の装用者に角結膜の痒みの自覚症状が認められる場合、その主原因は、アトピー性角結膜炎,アレルギー性結膜炎,巨大乳頭結膜炎等のアレルギー反応が関与した過敏反応であるといわれている。
しかしながら、いわゆるアレルギー反応に起因しない痒みも少なくない。アレルギー性の痒みが、CL装用を中止しても直ちには緩解することがない(アレルギー反応が継続する限り痒みが継続する)ことに対し、非アレルギー性痒みはCL装用を中止すると緩解することが特徴である。このように、ソフトコンタクトレンズ装用中に生じる特異な痒みを、安全かつ効果的に抑制する眼粘膜適用製剤は知られていない。
【0003】
このソフトコンタクトレンズ装用中に生じる特異な非アレルギー性痒みについては、レンズエッジの不備やベースカーブが適性でないことによる角結膜への機械的刺激や、コンタクトレンズが涙液交換を妨げることによって生じる酸素や栄養不足等の化学的刺激に因るものとも推測されるが、不明なことが多く未だ原因究明はなされていない。アレルギー性の痒みに対しては、抗ヒスタミン薬を始めとする多くの薬剤が提供され効果が実証されていることに対し、このような免疫反応に起因しない非アレルギー性痒みに対しては、明確な効果をもたらす治療剤がなかった。そのため、この非アレルギー性痒みに対しては、ソフトコンタクトレンズ装用を中止することが最善の治療法であった。
【0004】
しかしながら、ソフトコンタクトレンズ装用者人口が1600万人を超えようかという現在、眼鏡を常に併用できる環境にいない消費者も多く、ソフトコンタクトレンズ装用の中止はQOV(=Quality Of Vision)を著しく損なう方法である。ソフトコンタクトレンズを装用したままで、非アレルギー性痒みを抑制する方法が強く望まれている。
【0005】
ところで、メントールやカンフルなどを配合した点眼剤により、コンタクトレンズ装用中の眼の痒みが改善できることが知られている(特許文献1)。
【0006】
また、抗炎症作用のあるグリチルリチン酸塩とメントールを含有した点眼剤には、眼のアレルギー症状を有する被験者の眼の痒みに対して改善効果があることが知られている(特許文献2)。しかしながら、ソフトコンタクトレンズ装用中に生じる特有の非アレルギー性の痒みに対する効果については知られていない。
【0007】
【特許文献1】特開平11−180858号公報
【特許文献2】特開2005−162747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ソフトコンタクトレンズを装着したままの眼においても安全に点眼することが可能で、痒みを有効に抑制することができる眼粘膜適用製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、(A)塩酸ピリドキシン、グリチルリチン酸及びグリチルリチン酸の塩からなる群から選択される1種又は2種以上、及び(B)メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、酢酸リナリル及びメントンからなる群から選択される1種又は2種以上を製剤全体に対して0.005(w/v)%以上で含有することを特徴とする眼粘膜適用製剤が、ソフトコンタクトレンズ装用時における顕著な鎮痒効果を奏しながらもコンタクトレンズや眼粘膜に悪影響を与えることのない安全な製剤であることをみいだした。
即ち、本発明は、下記に掲げる発明である。
(1)(A)塩酸ピリドキシン、グリチルリチン酸及びグリチルリチン酸の塩からなる群から選択される1種又は2種以上、及び
(B)メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、酢酸リナリル及びメントンからなる群から選択される1種又は2種以上を製剤全体に対して0.005(w/v)%以上
で含有することを特徴とするソフトコンタクトレンズ装用時における鎮痒のための眼粘膜適用製剤、
(2)(A)塩酸ピリドキシン、グリチルリチン酸及びグリチルリチン酸の塩からなる群から選択される1種又は2種以上、及び
(B)メントールと、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、酢酸リナリル及びメントンからなる群から選択される1種又は2種以上とを、製剤全体に対して0.005(w/v)%以上
で含有することを特徴とするソフトコンタクトレンズ装用時における鎮痒のための眼粘膜適用製剤、
(3)マレイン酸クロルフェニラミン又はジフェンヒドラミン塩酸塩を実質的に含まない(1)又は(2)に記載の眼粘膜適用製剤、
(4)点眼薬又は洗眼薬である(1)乃至(3)のいずれかに記載の眼粘膜適用製剤、
(5)塩酸ピリドキシンを、0.005(w/v)%以上で含有する(1)乃至(4)のいずれかに記載の眼粘膜適用製剤、
(6)グリチルリチン酸又はその塩を、その総量で0.025(w/v)%以上で含有する(1)乃至(5)のいずれかに記載の眼粘膜適用製剤。
なお、本明細書中、特に言及しない限り、「%」はw/v%(g/100mL)を意味するものとする。また、ソフトコンタクトレンズという用語は、特記しない限り、ディスポーザブル、高/低含水率、カラー等のあらゆるタイプのソフトコンタクトレンズを包含する意味で用いる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の眼粘膜適用製剤は、(A)塩酸ピリドキシン、グリチルリチン酸及びグリチルリチン酸の塩からなる群から選択される1種又は2種以上、及び(B)メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、酢酸リナリル及びメントンからなる群から選択される1種又は2種以上を製剤全体に対して0.005(w/v)%以上で含有することを特徴とするソフトコンタクトレンズ装用時における鎮痒のための眼粘膜適用製剤である。かかる眼粘膜適用製剤は、ソフトコンタクトレンズ装用時における痒みに対して有効な鎮痒効果を発揮する。また、本発明の眼粘膜適用製剤は、ソフトコンタクトレンズを装着したままに安全に点眼することが可能である。ソフトコンタクトレンズをの装用者に特有の眼の痒みを改善するための点眼剤、洗眼剤などに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の眼粘膜適用製剤は、(A)塩酸ピリドキシン、グリチルリチン酸及びグリチルリチン酸の塩からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物を必須成分とするものである。塩酸ピリドキシン及びグリチルリチン酸は公知の化合物であり、グリチルリチン酸の塩としては薬学的に許容されるものであれば特に制限されないが、グリチルリチン酸ジカリウムなどが例示できる。なかでも、塩酸ピリドキシンとグリチルリチン酸ジカリウムの2種を組み合わせて用いる場合に痒みの改善効果が優れている。
【0012】
本発明の眼粘膜適用製剤において、(A)成分の製剤中の含有量は特に制限されないが、眼粘膜適用製剤に対する割合として、たとえば塩酸ピリドキシンが、0.001〜0.5%、好ましくは0.005〜0.5%、より好ましくは、0.005〜0.2%、更に好ましくは0.01〜0.1%となる割合が挙げられる。グリチルリチン酸又はその塩が、0.001〜1%、好ましくは0.01〜0.5%、更に好ましくは0.025〜0.5%、特に好ましくは0.025〜0.25%となる割合が挙げられる。
【0013】
塩酸ピリドキシンとグリチルリチン酸またはその塩を組み合わせて用いる場合には、塩酸ピリドキシン1重量部に対してグリチルリチン酸またはその塩を好ましくは0.1重量部〜100重量部、より好ましくは0.1重量部〜50重量部、さらに好ましくは1重量部〜50重量部、特に好ましくは5重量部〜25重量部である。
【0014】
本発明の眼粘膜適用製剤では、ソフトコンタクトレンズ装用に際して生じる特有の痒みに対して有効であり(A)成分及び(B)成分を必須成分として含むものであるが、ソフトコンタクトレンズ装用中の非アレルギー性の痒みは、ときにアレルギー性の痒みとともに生じることもあるため、マレイン酸クロルフェニラミンやジフェンヒドラミン塩酸塩、アシタザノラスト、アンレキサノクス、イブジラスト、トラニラスト、塩酸レボカバスチン、クロモグリク酸ナトリウム、フマル酸ケトチフェン、ペミロラストカリウムなどの抗アレルギー薬を必要に応じて含有してもよい。
【0015】
しかしながら、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬のなかには、マレイン酸クロルフェニラミンやジフェンヒドラミン塩酸塩のように、ソフトコンタクトレンズに対して悪影響を及ぼす可能性があるので、そのようなソフトコンタクトレンズとの適合性に問題のある成分については、含有量を少量に制限することが好ましく、実質的に含有しないのがより好ましい。
【0016】
本発明の眼粘膜適用製剤は、(B)メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、酢酸リナリル及びメントンからなる群から選択される1種又は2種以上を、これらの総量で、製剤全体に対して0.005(w/v)%以上で含有する。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。なかでも、メントールとともに、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、酢酸リナリル及びメントンからなる群から選択される1種又は2種以上とを組み合わせて使用することによって鎮痒効果がより高まる。本発明の眼粘膜適用製剤は、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、酢酸リナリル、メントンをそれぞれ単独で含有してもよく、また、これらの化合物を含む精油を含有してもよい。例えば、メントールを含む精油としてはハッカ油、ペパーミント油など、酢酸リナリルを含む精油としてはベルガモット油など、メントンを含む精油としてはペパーミント油などが例示されるがこれらに限るものではない。
【0017】
眼粘膜適用製剤中における(B)成分が、総量で、製剤全体に対して0.005%以上含有することで本発明の効果が奏される。より高い効果が得られるのは0.007%以上であり、さらに高い効果が得られるのは0.01%以上である。
【0018】
本発明の眼粘膜適用製剤は、通常眼粘膜適用製剤に用いられるpHに適宜調整して製するが、pHが5.5〜8.0であることが安全性の観点から好ましい。さらに好ましくは、6.0〜7.5である。
【0019】
本発明の眼粘膜適用製剤は特に制限されない。眼粘膜適用製剤の一例として、ソフトコンタクトレンズ装用中に使用される点眼薬(剤)、ソフトコンタクトレンズ装用中に使用される洗眼薬(剤)、ソフトコンタクトレンズ装着時に使用されるコンタクトレンズ装着液等を挙げることができる。これらの中で、好ましくは点眼薬(剤)、洗眼薬(剤)である。また、本発明の眼粘膜適用製剤は、長時間連続装用したソフトコンタクトレンズを外した直後に生じる非アレルギー性の痒みに対しても適用することができる。
【0020】
本発明の眼粘膜適用製剤の形態は特に制限されず、例えば、液剤、懸濁剤、リポソーム製剤などの形態を挙げることができる。
【0021】
本発明の眼粘膜適用製剤の必須成分であるグリチルリチン酸またはその塩が、それ自体抗炎症成分としても作用するので、本発明の眼粘膜適用製剤は、抗炎症作用を発揮し得る。さらに、他の薬効成分を含有することができる。例えば、充血除去成分、眼筋調節薬成分、抗炎症薬成分または収斂薬成分、抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、アミノ酸類、スルファ剤、糖類、多糖類またはその塩、セルロース誘導体又はその塩、前述以外の水溶性高分子、局所麻酔薬成分、ステロイド成分、緑内障治療薬などが例示できる。本発明において好適な成分としては、例えば、次のような成分が挙げられる。しかしながら、ソフトコンタクトレンズに対して悪影響を及ぼす成分については、実質的に含有しないのが好ましくはあるが、薬効面から配合が必要である場合には含有量を少量に制限したり、ソフトコンタクトレンズに当該成分が吸着しないよう製剤処方したうえで含有するのがより好ましい。
【0022】
充血除去成分:例えば、α−アドレナリン作動薬、具体的にはエピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリン、硝酸ナファゾリンなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0023】
眼筋調節薬成分:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン硫酸アトロピンなど。
【0024】
抗炎症薬成分または収斂薬成分:例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、イプシロン−アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、プラノプロフェン、アズレンスルホン酸ナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンなど。
【0025】
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸、酢酸トコフェロールなど。
【0026】
アミノ酸類:例えば、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウム、グルタミン酸、クレアチニン、グルタミン酸ナトリウムなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0027】
スルファ剤:例えば、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウムなど。
【0028】
糖類:例えば単糖類、二糖類、具体的にはグルコース、トレハロースなど。
【0029】
多糖類又はその塩:例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウムなど。
【0030】
セルロース誘導体又はその塩:例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど。
【0031】
前述以外の水溶性高分子:ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、デキストランなど。
【0032】
局所麻酔薬成分:例えば、塩酸オキシブプロカイン、塩酸コカイン、塩酸コルネカイン、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル、塩酸ピペロカイン、塩酸プロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸ヘキソチオカイン、塩酸リドカイン、クロロブタノールなど。
【0033】
ステロイド成分:例えば、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、フルオロメトロン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロキシメステロン(hydroxymesterone)、カプロン酸ヒドロコルチゾン、カプロン酸プレドニゾロン、酢酸コルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、デキサメタゾンメタスルホベンゾエートナトリウム、デキサメタゾン硫酸ナトリウム、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾンリン酸ナトリウム、メタスルホ安息香酸デキサメタゾンナトリウム、メチルプレドニゾロンなど。
【0034】
緑内障治療成分:例えば、イソプロピルウノプロストン、エピネフリン、塩酸アプラクロニジン、塩酸カルテオロール、塩酸ジピベフリン、塩酸ドルゾラミド、塩酸ピロカルピン、塩酸ブナゾシン、塩酸ブプラノロール、塩酸ベタキソロール、塩酸ベフノロール、カルバコール、塩酸レボブノロール、ジピバル酸エピネフリン、臭化ジスチグミン、ニプラジロール、マレイン酸チモロール、ラタノプロストなど。
【0035】
眼粘膜適用製剤中のこれらの成分の配合量は製剤の種類、活性成分の種類などに応じて適宜選択され、例えば、製剤全体に対して0.0001〜30%、好ましくは、0.001〜10%程度の範囲から選択できる。
【0036】
また、本発明の眼粘膜適用製剤には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を組み合わせて含有していてもよい。該成分または添加物の配合割合については、当業界において通常採用されている範囲に基づいて、適宜設定すればよい。該成分または添加物として、例えば、液剤などの調製に一般的に使用される担体(水、水性溶媒、水性または油性基剤など)、増粘剤、pH調整剤、等張化剤、香料または清涼化剤、キレート剤、緩衝剤、界面活性剤などの各種添加剤を挙げることができる。以下に、本発明の眼粘膜適用製剤に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定されない。 しかしながら、ソフトコンタクトレンズに対して悪影響を及ぼす成分については、実質的に含有しないのが好ましくはあるが、薬効面から配合が必要である場合には含有量を少量に制限したり、ソフトコンタクトレンズに当該成分が吸着しないよう製剤処方したうえで含有するのがより好ましい。
【0037】
非イオン性界面活性剤:ポリオキシエチレン(以下、POEと略す)−ポリオキシプロピレン(以下、POPと略す)ブロックコポリマー (具体的には、ポロクサマー407など) 、エチレンジアミンのPOE-POPブロックコポリマー付加物(具体的には、ポロキサミンなど)、モノオレイン酸POEソルビタン (具体的には、ポリソルベート80など) 、POE硬化ヒマシ油(具体的には、POE(60)硬化ヒマシ油など)、ステアリン酸ポリオキシルなど。
【0038】
防腐剤:ソルビン酸またはその塩、ポリヘキサメチレンビグアニドまたはその塩、高分子四級アンモニウム化合物またはその塩、亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素など。
【0039】
水性担体:例えば、水、メタノール、含水メタノール、エタノール、含水エタノールなど。
【0040】
増粘剤:例えば、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸またはその塩、ポリビニルアルコール(完全、又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストラン、グリセリンなど。
【0041】
pH調節剤:例えば、塩酸、イプシロン−アミノカプロン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなど。
【0042】
等張化剤:例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二 ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グリセリン、プロピレングリコールなど。
【0043】
キレート剤:例えば、アスコルビン酸またはその塩、エデト酸またはその塩、クエン酸またはその塩など。
【0044】
緩衝剤:ホウ酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、リン酸緩衝剤など。具体的には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムなど。
【0045】
安定剤:ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、グリセリン、プロピレングリコール、シクロデキストリン、デキストランなど。
【0046】
溶解剤、基剤:オクチルドデカノール、オリーブ油、ゴマ油、酸化チタン、臭化カリウム、ダイズ油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、パラフィン、ヒマシ油、プラスチベース、ラッカセイ油、ラノリン、ワセリン、グリセリン、プロピレングリコール、シクロデキストリン、マクロゴールなど。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例、試験例等に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0048】
試験例1 掻痒感抑制評価試験
表1−3に記載の処方に従って調整した液剤を、濾過して無菌的にプラスチック製点眼容器に充填した点眼剤(実施例1−23及び比較例1−3)を製造した。以下のソフトコンタクトレンズユーザーを被験者(10名)とした。被験者は、アレルギーや角結膜炎などの他覚所見のない被験者とした。
各被験者には、1日に12時間以上ソフトコンタクトレンズを装用してもらい、試験期間中において掻痒感を感じたときに試験用点眼剤を点眼してもらった。
【0049】
各試験用点眼剤を適用したときの点眼直後及び点眼10分後の掻痒感の抑制程度を以下の評価基準に従って自己評価させ、1処方の試験用点眼剤につき5回分の平均点を各被験者の評点とした。さらに試験用点眼剤毎に全ての被験者の評点の平均値を計算して掻痒感の抑制程度を評価した。結果は表1−3に示した。
【0050】
評価基準:点眼前と比較した掻痒感(評点)
掻痒感を感じない(5点)
掻痒感がかなり改善された(4点)
掻痒感が改善された(3点)
掻痒感がわずかに改善された(2点)
掻痒感が変わらない(1点)
【0051】
塩酸ピリドキシン又はグリチルリチン酸ジカリウムとともに、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、酢酸リナリル又はメントンを0.005(w/v)%以上で含有することによって、ソフトコンタクトレンズ装用中の痒みを抑制することができることが確認された。また、この効果は、点眼直後のみならず点眼10分後にも継続して認められた。また、メントールとカンフル、又はメントールとゲラニオールを組み合わせて含有する眼粘膜適用製剤においてさらに顕著であることが示された。
また、別途、試験用洗眼剤(実施例24)を製造し、これを用いて、上記と同様に試験したところ、試験用点眼剤で示す結果と同様に、ソフトコンタクトレンズ装用における痒みを抑制することができることが確認された。尚、洗眼剤については、試験期間中にソフトコンタクトレンズを外した直後に掻痒感を感じたときに試験用洗眼剤で洗眼してもらった。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
試験例2 点眼回数評価試験
表4に記載の処方に従って調整した液剤を、濾過して無菌的にプラスチック製点眼容器に充填した点眼剤を製造した。アレルギーや角結膜炎などの他覚所見のないソフトコンタクトレンズユーザー3名を被験者として以下の試験を実施した。
各被験者には、1日に12時間以上ソフトコンタクトレンズを装用してもらい、1処方につき1日ずつ、掻痒感を感じたときに試験用点眼剤を点眼してもらった。
【0056】
被験者3名の1日あたりの平均点眼回数を算出し、結果は表4に示した。
【0057】
塩酸ピリドキシン及びグリチルリチン酸ジカリウムとともに、メントールとカンフル、又はメントールとゲラニオールとを0.005(w/v)%以上で含有することによって、ソフトコンタクトレンズ装用中の痒みを抑制し、痒みの発生を予防して1日あたりの痒みによる点眼回数を減少させることが確認された。
【0058】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)塩酸ピリドキシン、グリチルリチン酸及びグリチルリチン酸の塩からなる群から選択される1種又は2種以上、及び
(B)メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、酢酸リナリル及びメントンからなる群から選択される1種又は2種以上を製剤全体に対して0.005(w/v)%以上
で含有することを特徴とするソフトコンタクトレンズ装用時における鎮痒のための眼粘膜適用製剤。
【請求項2】
(A)塩酸ピリドキシン、グリチルリチン酸及びグリチルリチン酸の塩からなる群から選択される1種又は2種以上、及び
(B)メントールと、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、酢酸リナリル及びメントンからなる群から選択される1種又は2種以上とを、製剤全体に対して0.005(w/v)%以上
で含有することを特徴とするソフトコンタクトレンズ装用時における鎮痒のための眼粘膜適用製剤。
【請求項3】
マレイン酸クロルフェニラミン又はジフェンヒドラミン塩酸塩を実質的に含まない請求項1又は2に記載の眼粘膜適用製剤。
【請求項4】
点眼薬又は洗眼薬である請求項1乃至3のいずれかに記載の眼粘膜適用製剤。
【請求項5】
塩酸ピリドキシンを、0.005(w/v)%以上で含有する請求項1乃至4のいずれかに記載の眼粘膜適用製剤。
【請求項6】
グリチルリチン酸又はその塩を、総量で0.025(w/v)%以上で含有する請求項1乃至5のいずれかに記載の眼粘膜適用製剤。

【公開番号】特開2007−70350(P2007−70350A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215892(P2006−215892)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】