説明

眼部検出装置、眼部検出方法及びプログラム

【課題】化粧等を施した場合でも、顔画像から眼部を精度よく検出する装置を提供する。
【解決手段】顔画像を取得する画像入力部21と、顔画像から上瞼又は下瞼の所定の条件に適合する上瞼候補及び下瞼候補を検出する瞼エッジラベリング部24と、上瞼候補と下瞼候補の組み合わせを比較し、上瞼候補と下瞼候補の関係が所定の条件に最も適合する組み合わせを上瞼および下瞼と判定する瞼判定部27とを備える。瞼エッジラベリング部24は、エッジ算出部23で算出した水平方向エッジ及び垂直方向エッジのうち、所定の条件に適合する度合いによって、上瞼候補及び下瞼候補を分類する。下瞼候補の左右方向に少なくとも1つの水平方向エッジが存在する場合に、その下瞼候補を除外する下瞼候補評価部26を備えてもよい。下瞼候補のうち、その垂直方向エッジが所定の条件を満たさないものを下瞼予備候補として分類する下瞼候補分別部25を備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔画像から眼部を検出する眼部検出装置、眼部検出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
顔画像に基づいて眼の状態を判定し、その人の視線の方向を計測したり、その人の覚醒度を推定する方法がある。眼の状態を判定するためには、顔画像の眼部を正確に検出することが必要である。
【0003】
例えば、特許文献1は、顔画像から眼部を検出する技術が記載されている。顔画像内で上方向から下方向に向かって明(白)から暗(黒)に変化する上エッジと暗(黒)から明(白)に変化する下エッジを抽出する。上下のエッジペアに基づいてテンプレートを作成し、このテンプレートと顔画像との相関演算により眼の候補を検出する。相関値が高い候補が上下に2つ存在する場合には、それぞれ眉と眼であるとして下の候補を眼の候補とする。眼の候補が瞬きする場合には真の眼であるとして、眼の近傍領域を追跡用のテンプレートとして記憶する。
【特許文献1】特開2000−137792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化粧をした人の顔画像から瞼のエッジを検出する場合、アイシャドウや付け睫などの化粧部分から、瞼のエッジに類似した余分なエッジが検出されることが多い。また、強い太陽光が当たっている場合に、上瞼の下に生じる濃い影などからエッジを検出することがある。それらのエッジを瞼でできるエッジと間違えて、上下瞼のペアを誤って検出すると、眼の状態を正確に判定することができない。特に、眼の開閉度や瞬きを計測する場合、上下瞼の誤検出は、計測精度を左右する。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、化粧等を施した場合でも、顔画像から眼部を精度よく検出する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る眼部検出装置は、顔画像を取得する画像取得手段と、前記顔画像から上瞼又は下瞼の所定の条件に適合する上瞼候補及び下瞼候補を検出する瞼候補検出手段と、前記瞼候補検出手段で検出した前記上瞼候補と下瞼候補の組み合わせを比較し、前記上瞼候補と下瞼候補の関係が所定の条件に最も適合する組み合わせを、上瞼および下瞼と判定する瞼判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
好ましくは、前記瞼候補検出手段は、前記顔画像から、水平方向に輝度が変化する画素の並びである水平方向エッジ、及び垂直方向に輝度が変化する画素の並びである垂直方向エッジを算出するエッジ算出手段と、前記エッジ算出手段で算出した水平方向エッジ及び垂直方向エッジのうち、上瞼又は下瞼について水平方向エッジ又は垂直方向エッジの所定の条件に適合する度合いによって、前記上瞼候補及び下瞼候補を分類して検出する瞼エッジラベリング手段と、を備える。
【0008】
好ましくは、前記瞼判定手段は、前記下瞼候補の左右方向に少なくとも1つの前記水平方向エッジが存在する場合に、その下瞼候補を除外する下瞼候補評価手段と、前記下瞼候補評価手段で除外した結果、残存する上瞼候補及び下瞼候補について、所定の上下瞼位置条件を満たすものを上下瞼対として選択する上下瞼対選定手段と、を備える。
【0009】
また、前記瞼エッジラベリング手段は、前記下瞼候補のうち、その垂直方向エッジが所定の条件を満たさないものを下瞼予備候補として分類する下瞼候補分別手段を備え、前記瞼判定手段は、前記下瞼候補分別手段で分類された前記下瞼予備候補について、その左右方向に少なくとも1つの前記上瞼候補の水平方向エッジが存在する場合に、その下瞼予備候補を除外する下瞼候補評価手段と、前記下瞼候補評価手段で前記下瞼予備候補を除外した結果、残存する前記上瞼候補と前記下瞼候補及び前記下瞼予備候補について、所定の上下瞼位置条件を満たすものを上下瞼対として選択する上下瞼対選定手段と、を備えてもよい。
【0010】
好ましくは、前記瞼判定手段は、前記瞼候補検出手段で検出した前記下瞼候補の数が所定の値以下の場合に、前記下瞼候補評価手段による前記下瞼候補の除外を行わないことを特徴とする。
【0011】
さらに、前記瞼候補検出手段で検出した前記上瞼候補及び前記下瞼候補の位置関係を記憶する記憶手段を備え、前記瞼判定手段は、前記瞼候補検出手段が前記上瞼候補及び前記下瞼候補を再度検出した場合に、前記記憶手段に記憶されている前記位置関係に基づいて、前記上瞼候補及び前記下瞼候補のうち所定の瞼候補を除外する、よう構成してもよい。
【0012】
本発明の第2の観点に係る眼部検出方法は、顔画像から、上瞼又は下瞼の所定の条件に適合する上瞼候補及び下瞼候補を検出する瞼候補検出ステップと、前記瞼候補検出ステップで検出した前記上瞼候補と下瞼候補の組み合わせを比較し、前記上瞼候補と下瞼候補の関係が所定の条件に最も適合する組み合わせを、上瞼および下瞼と判定する瞼候補判定ステップと、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の観点に係るプログラムは、コンピュータを、顔画像から上瞼又は下瞼の所定の条件に適合する上瞼候補及び下瞼候補を検出する瞼候補検出手段と、前記瞼候補検出手段で検出した前記上瞼候補と下瞼候補の組み合わせを比較し、前記上瞼候補と下瞼候補の関係が所定の条件に最も適合する組み合わせを、上瞼および下瞼と判定する瞼判定手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の眼部検出装置によれば、アイシャドウや付け睫等の化粧をした人や、太陽光等によって眼の付近に濃い影が生じる等、眼周辺部に瞼に類似した紛らわしい画像が存在する場合でも、精度よく眼を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は繰り返さない。図1は、本発明の一実施の形態に係る眼部検出装置1の構成を示すブロック図である。本実施形態の眼部検出装置1は、運転者の顔を撮影して顔画像を生成するカメラ2と、運転者の顔を照明する照明光源3と、運転者の眼部を検出するコンピュータ10と、コンピュータ10に接続された表示装置7とを備える。なお、表示装置7は必須の構成要素ではなく、顔画像や検出結果及び判定結果等を表示する必要がなければ特に設ける必要はない。
【0016】
カメラ2は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)などでレンズの結像を電気信号に変換し、画素ごとにデジタル化した画像データを出力する。カメラ2は、例えば、運転者の顔の階調画像を取得する。カメラ2によって生成される画像データは、運転者の顔だけでなく、その背景なども含まれている。
【0017】
表示装置7は、LCD(Liquid Crystal Display)又はCRT(Cathode Ray Tube)などから構成され、カメラ2で撮影された顔画像から生成された二値化画像などを表示する。
【0018】
コンピュータ10は、カメラ2により取得された画像データを処理して顔の左右両端位置、上下位置を検出する。この検出した左右両端位置、上下位置に基づいて、眼部を探索する領域(眼部探索領域)を設定する。そして、眼部探索領域における上下瞼を検出する。
【0019】
図2は、本発明の一実施の形態である眼部検出装置1の論理的な構成を示すブロック図である。眼部検出装置1は、カメラ2、画像入力部21、眼探索領域設定部22、エッジ算出部23、瞼エッジラベリング部24、下瞼候補分別部25、下瞼候補評価部26、瞼判定部27、表示処理部28、データ保持部5、表示装置7などから構成される。データ保持部5には、顔画像データ51、顔領域・眼探索領域データ52、水平・垂直エッジデータ53、瞼候補・下瞼予備候補データ54、瞼データ55及び位置関係データ56が記憶保持される。眼部検出装置1は、顔画像から眼部の上瞼と下瞼のペアを検出する。
【0020】
図3は、眼部検出装置1の物理的な構成の一例を示すブロック図である。コンピュータ10は、図3に示すように、送受信部16と、画像メモリ12と、外部記憶部13と、制御部14と、主記憶部15と、表示制御装置17と、光源制御装置18と、を備える。画像メモリ12、外部記憶部13、主記憶部15、送受信部16、表示制御装置17及び光源制御装置18はいずれも内部バス11を介して制御部14に接続されている。
【0021】
制御部14はCPU(Central Processing Unit)等から構成され、外部記憶部13に記憶されているプログラムに従って、画像入力部21、眼探索領域設定部22、エッジ算出部23、瞼エッジラベリング部24、下瞼候補分別部25、下瞼候補評価部26、瞼判定部27及び表示処理部28の処理を実行する。画像入力部21、眼探索領域設定部22、エッジ算出部23、瞼エッジラベリング部24、下瞼候補分別部25、下瞼候補評価部26、瞼判定部27及び表示処理部28は、制御部14とその上で実行されるプログラムで実現される。
【0022】
主記憶部15はRAM(Random-Access Memory)等から構成され、制御部14の作業領域として用いられる。データ保持部5は、画像メモリ12及び主記憶部15の一部に記憶領域の構造体として記憶保持される。
【0023】
外部記憶部13は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM(Digital Versatile Disc Random-Access Memory)、DVD−RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等の不揮発性メモリから構成され、前記の処理を制御部14に行わせるためのプログラムを予め記憶し、また、制御部14の指示に従って、このプログラムのデータを制御部14に供給し、制御部14から供給されたデータを記憶する。例えば、時系列画像データは、外部記憶部13に格納されている場合がある。
【0024】
送受信部16は、モデム又は網終端装置、及びそれらと接続するシリアルインタフェース又はLAN(Local Area Network)インタフェースあるいはNTSCインタフェース等から構成されている。制御部14は、送受信部16を介して、カメラ2から画像データを入力する。画像メモリ12は、カメラ2により生成され、送受信部16を経由して入力された画像データを記憶する。
【0025】
表示制御装置17は、制御部14の制御下に、表示装置7を制御する。
光源制御装置18は、照明光源3の点灯・消灯を制御する。
【0026】
制御部14は、外部記憶部13に格納されているプログラムを実行することにより、カメラ2により取得された画像データを処理して顔の両端位置、上下位置を検出し、この検出した両端位置、上下位置に基づいて、眼部探索領域における上下瞼の候補を検出し、その候補の中で最も上下瞼の条件に適合する候補を上下瞼対として選択する。
【0027】
図2に戻って、眼部検出装置1の各部の作用を説明する。カメラ2は顔の画像を撮像する。画像入力部21は、一定時間間隔でカメラ2から時系列の画像データを入力し、データ保持部5に顔画像データ51として記憶する。
【0028】
眼探索領域設定部22は、顔画像データ51から顔領域を抽出し、顔領域の中に眼探索領域を設定する。顔の領域を抽出するには、例えば、顔画像から顔輪郭のエッジを算出する。あるいは、顔輪郭のパターンマッチングによって顔輪郭を抽出してもよい。顔輪郭の範囲で、上から眉のエッジを、下から口下のエッジを検出することによって、顔の領域を設定する。そして、例えば、統計的データに基づいた比率で、顔領域の中に眼探索領域を設定する。図5は、顔領域Fと眼探索領域Eの例を示す。眼探索領域設定部22は、設定した顔領域F及び眼探索領域Eを、顔領域・眼探索領域データ52として、データ保持部5に記憶する。
【0029】
なお、検出しやすい特徴的な部分、例えば鼻孔を検出し、鼻孔の位置に基づいて眼探索領域Eを設定してもよい。例えば、鼻孔の上から眉までの距離に所定の比率を乗じた長さを眉からとり、顔輪郭の幅に所定の比率を乗じた長さを顔輪郭の中央にとって、眼探索領域Eとすることができる。眼探索領域Eを設定することによって、眼部検出の効率を向上できる。
【0030】
図4Aないし図4Dは、エッジ算出用の固定データの例を説明する図である。外部記憶部13は、図4A、図4Bに示すような、水平方向エッジ検出用と垂直方向エッジ検出用ソーベルフィルタのオペレータを格納する。本発明では、画像中で水平方向に輝度が明から暗、又は暗から明に変化する点の連なりを水平方向エッジという。水平方向エッジの点は概ね縦方向に連続するので、縦エッジともいう。また、垂直方向に輝度が明から暗、又は暗から明に変化する点の連なりを垂直方向エッジという。垂直方向エッジの点は概ね横方向に連続するので、横エッジともいう。
【0031】
図4Aに示す水平方向エッジ(縦エッジ)検出用ソーベルフィルタは、図4Cに示すような縦方向に連続する濃淡差の境界(エッジ)を抽出するためのオペレータである。図4Bに示す垂直方向エッジ(横エッジ)検出用のソーベルフィルタは、図4Dに示すような横方向に連続する濃淡差の境界(エッジ)を抽出するためのオペレータである。
【0032】
また、外部記憶部13は、図5に示すように、主記憶部15に格納される顔画像のうち、顔の範囲Fを特定するデータ、及び、眼や眉の画像が存在すると想定される眼探索領域Eを特定するデータを格納する。
【0033】
エッジ算出部23は、眼探索領域Eから、例えば図4A及び図4Bに示すフィルタを用いて、水平方向エッジ及び垂直方向エッジを算出する。図6は、眼探索領域Eの原画像の例を模式的に示す。図6では、画像の暗領域をハッチングを付して表している。図6は、例として上瞼の影が生じている場合を示す。図7Aは、眼探索領域Eの原画像から算出した垂直方向エッジの例を示す。図7Bは、眼探索領域Eの原画像から算出した水平方向エッジの例を示す。
【0034】
図7Aにおいて、上から下に向かって明から暗に変化する点を横マイナスエッジA、上から下に向かって暗から明に変化する点を横プラスエッジBで表す。横マイナスエッジAのうち、主要なものが上瞼候補になる。また、横プラスエッジBのうち、主要なものが下瞼候補になる。他に、眉の上下エッジ、上瞼の影(又はアイシャドウ)の下エッジ、虹彩の下エッジなどが垂直方向エッジとして算出される。
【0035】
図7Bにおいて、左から右に向かって明から暗に変化する点を縦マイナスエッジC、左から右に向かって暗から明に変化する点を縦プラスエッジDで表す。上瞼の両端には縦エッジ(水平方向エッジ)が現れるので、上瞼は概ね、左から縦マイナスエッジC、横マイナスエッジA、縦プラスエッジDで構成される。下瞼には、横プラスエッジB(垂直方向エッジ)が現れるが、縦エッジ(水平方向エッジ)はほとんど現れない。図7Bでは、眼探索領域Eを横に広く取っているので、顔の輪郭も縦エッジとして現れている。他に、眼窩の影、上瞼の影(又はアイシャドウ)、虹彩の左右のエッジなどが水平方向エッジとして算出される。
【0036】
エッジ算出部23は、算出した水平方向エッジ及び垂直方向エッジを、水平・垂直エッジデータ53として、データ保持部5に記憶する。
【0037】
瞼エッジラベリング部24は、水平・垂直エッジデータ53から、所定の長さ以上連続する点をエッジとしてグループ化する。また所定の長さ(連続点数)以下のエッジを削除する。図7Cは、図7Aの垂直方向エッジから瞼エッジラベリング処理を施した結果を示す。図7Dは、図7Bの水平方向エッジから瞼エッジラベリング処理を施した結果を示す。図7C及び図7Dでは、短いエッジが削除されている。データでは、連続する点がひとまとまりのエッジとしてラベリングされている。
【0038】
瞼エッジラベリング部24は、グループ化したエッジのうち、横マイナスエッジAを上瞼候補とする。また、横プラスエッジBを下瞼候補とする。水平方向エッジのうち、横マイナスエッジA(上瞼候補)の左部分に近い縦マイナスエッジCを上瞼候補の一部とする。また、水平方向エッジのうち、横マイナスエッジA(上瞼候補)の右部分に近い縦プラスエッジDを上瞼候補の一部とする。このように、横マイナスエッジAの両側に縦マイナスエッジCと縦プラスエッジDが存在するものを、確度の高い上瞼候補とすることができる。
【0039】
図8は、瞼エッジラベリング処理した結果の垂直方向エッジと水平方向エッジを重ねて表した図である。両側に縦マイナスエッジCと縦プラスエッジDが存在する横マイナスエッジAが、確からしい上瞼候補であることが示されている。
【0040】
瞼エッジラベリング部24は、また、連続エッジ検出を行うと共に、その長さ、重心の位置を計算する。瞼エッジラベリング部24は、ラベリング処理したエッジのデータを瞼候補データ54としてデータ保持部5に記憶する。
【0041】
下瞼候補分別部25は、下瞼候補である横のプラスエッジBのうち、下瞼の形状条件によって分別する。下瞼候補分別部25は、分別した下瞼候補、下瞼予備候補のデータを瞼候補データ54に記憶する。
【0042】
例えば、アイシャドウや上瞼の影の下のエッジは、下瞼と同じく横プラスエッジBとして現れるが、下瞼以外は、楕円の上部のように湾曲した形状になる。そこで、例えば、横プラスエッジBのうち、その重心と極大・極小点との垂直距離が所定の長さ以下のものを下瞼候補として残す。また、例えば、重心と極大・極小点との垂直距離が所定の長さより大きいものを、下瞼候補としては疑わしい下瞼予備候補とする。重心から極大・極小点までの垂直距離と、エッジの長さの比を下瞼候補の分別基準としてもよい。
【0043】
図9は、図8の部分Rを拡大して示す。図9に示された部分のうち、横プラスエッジB1、B2、B3が下瞼候補である。横プラスエッジB1、B2、B3のそれぞれについて、その重心G1、G2、G3を示す。例えば、横プラスエッジB1は重心G1と極大点の垂直距離が大きい(上に湾曲している)ので、下瞼予備候補とする。また、横プラスエッジB2は、重心G2から極小点までの垂直距離と、エッジの長さの比が大きい(下に湾曲している)ので、下瞼予備候補とする。横プラスエッジB3は、長さに対して、重心G3から極小点までの垂直距離が小さい(湾曲が小さい)ので、下瞼候補として残す。
【0044】
下瞼候補評価部26は、下瞼候補又は下瞼予備候補について、水平方向エッジとの組み合わせ条件で、下瞼としての確からしさを評価する。すなわち、下瞼候補又は下瞼予備候補の左右の所定の範囲に縦エッジが存在する場合は、下瞼候補から除外する。
【0045】
例えば図9を参照して、下瞼予備候補である横プラスエッジB1について、その重心G1から左右に探索すると、縦マイナスエッジC1及び縦プラスエッジD1があるので、横マイナスエッジB1を下瞼候補から除外する。また、横プラスエッジB2の重心G2から左右に探索すると、縦マイナスエッジC2及び縦プラスエッジD2があるので、横マイナスエッジB2を下瞼候補から除外する。横プラスエッジB3の重心G3から左右に探索しても、所定の範囲に縦エッジ(水平方向エッジ)がないので、横プラスエッジB3は下瞼候補として残す。
【0046】
横プラスエッジB1は、上瞼の影の下エッジである。また、横プラスエッジB2は、瞳孔の下エッジであり、縦マイナスエッジC2と縦プラスエッジD2は、虹彩のエッジである。なお、横プラスエッジB1がアイシャドウの下エッジであっても同様に除外できる。
【0047】
上述のとおり、下瞼と影や化粧又は虹彩などの特徴の違いを具体的条件にして評価することによって、下瞼候補を分別し、最も確からしい下瞼候補を選択できる。
【0048】
なお、下瞼候補分別を行わなくてもよい。その場合は、下瞼候補評価部26は、全ての下瞼候補について、水平方向エッジとの組み合わせ条件で、下瞼としての確からしさを評価する。下瞼候補が少ない場合は、下瞼候補分別を行わなくても、下瞼候補評価の処理量は多くならず、判定誤りの可能性は小さい。
【0049】
つまり、検出された下瞼候補の数が所定値以下の場合には、下瞼候補評価部26による下瞼候補分別(下瞼候補の除外)を行わないようにすることで、処理速度を向上することができる。あるいは、検出された下瞼候補の数が所定値を超える場合に、下瞼候補評価部26による下瞼候補分別(下瞼候補の除外)を行うようにすることで、処理速度を向上することができる。
【0050】
あるいは、下瞼候補分別を行って、下瞼候補評価部26は、下瞼予備候補についてのみ水平方向エッジとの組み合わせ条件で、下瞼としての確からしさを評価してもよい。その場合は、下瞼予備候補でない下瞼候補について、水平方向エッジとの組み合わせ条件で、下瞼としての確からしさ評価をしないことになるが、既に形状条件で分別を行っているので、以後の判定で誤って選択する可能性は小さい。下瞼評価を簡略化することによって、処理量を軽減できる。
【0051】
瞼判定部27は、最終的に残った上瞼候補、下瞼候補及び下瞼予備候補について、上下の瞼をペアとしたときの条件に最も適合する組合わせを上下の瞼とする。例えば、横マイナスエッジ及び横プラスエッジの長さがそろっていること、エッジ重心の横方向の位置が上下瞼対でそろっていること、エッジ重心間の距離が所定の範囲内であることなどで判定する。
【0052】
具体的には、例えば、横マイナスエッジAの長さをLm、横プラスエッジBの長さをLp、しきい値をLtとして、
|Lm−Lp|<Lt
の条件を満たす横マイナスエッジAと横プラスエッジBの組み合わせを残す。
【0053】
また、例えば、横マイナスエッジAの重心X座標をXm、横プラスエッジBの重心X座標をXp、しきい値をXtとして、
|Xm−Xp|<Xt
の条件を満たす横マイナスエッジAと横プラスエッジBの組み合わせを残す。
【0054】
さらに、横マイナスエッジAの重心Y座標をYm、横プラスエッジBの重心Y座標をYp、しきい値をDtとして、
(Xm−Xp)+(Ym−Yp)<Dt
の条件を満たす横マイナスエッジAと横プラスエッジBの組み合わせを残す。
【0055】
そして、残った組み合わせのうち、例えば、左右の眼として妥当な組み合わせで、かつ最もエッジ重心の横方向の位置が近い組み合わせを上下瞼対として選択する。
【0056】
図10は、上下瞼対を選択する方法を説明する図である。下瞼候補評価の結果、残った横マイナスエッジA4、A5、A6と、横プラスエッジB4、B5、B6で、上下瞼の組み合わせを作る。上に述べた方法で選択すると、横マイナスエッジA4と横プラスエッジB4の組と、横マイナスエッジA5と横プラスエッジB5の組が上下瞼対として選択される。破線の楕円で囲んで示す横マイナスエッジA6と横プラスエッジB6については、エッジの長さ、及び/又は、エッジ重心の横方向の位置の条件で、上下瞼対としての組み合わせができない。瞼判定部27は、上下瞼の対であると判定された上下瞼候補のデータを瞼データ55としてデータ保持部5に記憶する。
【0057】
さらに、瞼判定部27は、図10において、上下瞼対として判定されなかった横マイナスエッジA6及び横プラスエッジB6(上瞼候補、下瞼候補)の位置を位置関係データ56としてデータ保持部5に記憶する。なお、横マイナスエッジA6及び横プラスエッジB6(上瞼候補、下瞼候補)相互の位置関係を位置関係データ56としてデータ保持部5に記憶するようにしてもよい。また、横マイナスエッジA6及び横プラスエッジB6(上瞼候補、下瞼候補)と、横マイナスエッジA4、A5及び横プラスエッジB4、B5との位置関係を位置関係データ56としてデータ保持部5に記憶するようにしてもよい。
【0058】
そして、瞼エッジラベリング部24がエッジのデータを瞼候補データ54として再度データ保持部5に記憶した際、位置関係データ56に基づいて、前回の判定で上下瞼対から排除された瞼候補(横マイナスエッジA6と横プラスエッジB6)に対応するエッジのデータが瞼候補データ54として記憶されているかどうかを判断する。その結果、横マイナスエッジA6、横プラスエッジB6に対応するエッジのデータが瞼候補データ54として記憶されていれば、この時点でそのエッジのデータを瞼候補データから除外するようにしてもよい。
【0059】
これにより、前回の処理で図10のような位置関係の瞼候補が残り、最終的にエッジA6、B6が上下瞼対から排除されていれば、次回の処理ではこのエッジA6、B6に対応する位置の瞼候補については評価することなくそのまま排除できるので、瞼判定処理を短縮することができる。
【0060】
表示処理部28は、検出された結果の上下瞼を顔の輪郭等とともに表示装置7に表示する。上下瞼から眼の開閉度を判定してもよい。上下瞼の開閉度から運転者の覚醒度合いを推定し、居眠りと判定された場合に、表示装置7で警告を表示(音響等を含む)してもよい。また、視線の方向の推定に、上下瞼データを利用することもできる。
【0061】
つぎに、眼部検出装置1の動作について説明する。なお、眼部検出装置1の動作は、制御部14がカメラ2、送受信部16、画像メモリ12、外部記憶部13及び主記憶部15と協働して行う。
【0062】
図11は、眼部検出装置1の動作の一例を示すフローチャートである。制御部14は送受信部16を介してカメラ2から顔画像を入力する(ステップS1)。そして、前述のとおり、顔領域を設定し、顔領域の中に眼探索領域を設定する(ステップS2)。
【0063】
制御部14は、設定された眼探索領域内で水平方向エッジ及び垂直方向エッジを算出する(ステップS3)。制御部14は、算出した水平方向エッジ及び垂直方向エッジについて、グループ化し、所定の長さ(連続点数)以下のエッジを削除するなどの瞼エッジラベリング処理を行う(ステップS4)。また、その長さ、重心の位置を計算する。さらに、下瞼候補である横のプラスエッジBのうち、下瞼の形状条件によって分別する下瞼候補分別処理を行う(ステップS5)。
【0064】
次に、下瞼候補ごとにその横に水平方向エッジがあるかどうかを調べる(ステップS6)。水平方向エッジが所定の範囲にあれば(ステップS7;Yes)、その下瞼候補を除外する(ステップS8)。水平方向エッジが所定の範囲になければ(ステップS7;No)、その下瞼候補を残す。
【0065】
さらに下瞼候補があれば(ステップS9;Yes)、その横に水平方向エッジがあるかどうかを調べ(ステップS6)、その下瞼候補を除外するか残すかを決定する(ステップS7、S8)。
【0066】
下瞼候補が尽きれば(ステップS9;No)、残った上瞼候補と下瞼候補(及び下瞼予備候補)でできる上下瞼対の組み合わせのうち、所定の条件、例えば、前述の条件に最も適合する組み合わせを上下瞼対として選択する(ステップS10)。
【0067】
本発明の眼部検出装置1によれば、顔画像データから、アイシャドウや付け睫等の化粧をした人や、太陽光等によって眼の付近に濃い影が生じる等、眼周辺部に瞼に類似した紛らわしい画像が存在する場合でも、精度よく眼を検出することができる。
【0068】
その他、前記のハードウエア構成やフローチャートは一例であり、任意に変更及び修正が可能である。
【0069】
制御部14、送受信部16、画像メモリ12、外部記憶部13及び主記憶部15などから構成される眼部検出装置1の処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読みとり可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する眼部検出装置1を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで眼部検出装置1を構成してもよい。
【0070】
また、眼部検出装置1の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0071】
また、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)に前記コンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態に係る眼部検出装置のブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態である眼部検出装置の論理的な構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示すコンピュータの構成を示すブロック図である。
【図4A】縦エッジ検出用オペレータの例を示す図である。
【図4B】横エッジ検出用オペレータの例を示す図である。
【図4C】縦方向に連続する濃淡差の例を表す図である。
【図4D】横方向に連続する濃淡差の例を表す図である。
【図5】顔画像の領域を特定するデータの例を示す図である。
【図6】眼探索領域の原画像の例を模式的に示す図である。
【図7A】眼探索領域における垂直方向エッジの検出例を示す図である。
【図7B】眼探索領域における水平方向エッジの検出例を示す図である。
【図7C】図7Aの垂直方向エッジから、短いエッジを除去した結果を示す図である。
【図7D】図7Bの水平方向エッジから、短いエッジを除去した結果を示す図である。
【図8】垂直方向エッジと水平方向エッジを重ねて表した図である。
【図9】図8の部分Rを拡大して示す図である。
【図10】上下瞼対を選択する方法を説明する図である。
【図11】眼部検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
1 眼部検出装置
2 カメラ(画像取得手段)
5 データ保持部(記憶手段)
10 コンピュータ
12 画像メモリ
13 外部記憶部
14 制御部(画像取得手段、瞼候補検出手段、瞼判定手段、エッジ算出手段、瞼エッジラベリング手段、下瞼候補評価手段、上下瞼対選定手段、下瞼候補分別手段)
15 主記憶部
16 送受信部(画像取得手段)
21 画像入力部
22 眼探索領域設定部
23 エッジ算出部(エッジ算出手段)
24 瞼エッジラベリング部(瞼エッジラベリング手段)
25 下瞼候補分別部(下瞼候補分別手段)
26 下瞼候補評価部(下瞼候補評価手段)
27 瞼判定部(上下瞼対選定手段)
51 顔画像データ
52 顔領域・眼探索領域データ
53 水平・垂直エッジデータ
54 瞼候補・下瞼予備候補データ
55 瞼データ
56 位置関係データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔画像を取得する画像取得手段と、
前記顔画像から上瞼又は下瞼の所定の条件に適合する上瞼候補及び下瞼候補を検出する瞼候補検出手段と、
前記瞼候補検出手段で検出した前記上瞼候補と下瞼候補の組み合わせを比較し、前記上瞼候補と下瞼候補の関係が所定の条件に最も適合する組み合わせを、上瞼および下瞼と判定する瞼判定手段と、
を備えることを特徴とする眼部検出装置。
【請求項2】
前記瞼候補検出手段は、
前記顔画像から、水平方向に輝度が変化する画素の並びである水平方向エッジ、及び垂直方向に輝度が変化する画素の並びである垂直方向エッジを算出するエッジ算出手段と、
前記エッジ算出手段で算出した水平方向エッジ及び垂直方向エッジのうち、上瞼又は下瞼について水平方向エッジ又は垂直方向エッジの所定の条件に適合する度合いによって、前記上瞼候補及び下瞼候補を分類して検出する瞼エッジラベリング手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の眼部検出装置。
【請求項3】
前記瞼判定手段は、
前記下瞼候補の左右方向に少なくとも1つの前記水平方向エッジが存在する場合に、その下瞼候補を除外する下瞼候補評価手段と、
前記下瞼候補評価手段で除外した結果、残存する上瞼候補及び下瞼候補について、所定の上下瞼位置条件を満たすものを上下瞼対として選択する上下瞼対選定手段と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の眼部検出装置。
【請求項4】
前記瞼エッジラベリング手段は、前記下瞼候補のうち、その垂直方向エッジが所定の条件を満たさないものを下瞼予備候補として分類する下瞼候補分別手段を備え、
前記瞼判定手段は、
前記下瞼候補分別手段で分類された前記下瞼予備候補について、その左右方向に少なくとも1つの前記上瞼候補の水平方向エッジが存在する場合に、その下瞼予備候補を除外する下瞼候補評価手段と、
前記下瞼候補評価手段で前記下瞼予備候補を除外した結果、残存する前記上瞼候補と、前記下瞼候補及び前記下瞼予備候補について、所定の上下瞼位置条件を満たすものを上下瞼対として選択する上下瞼対選定手段と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の眼部検出装置。
【請求項5】
前記瞼判定手段は、前記瞼候補検出手段で検出した前記下瞼候補の数が所定の値以下の場合に、前記下瞼候補評価手段による前記下瞼候補の除外を行わないことを特徴とする請求項3に記載の眼部検出装置。
【請求項6】
前記瞼候補検出手段で検出した前記上瞼候補及び前記下瞼候補の位置関係を記憶する記憶手段を備え、
前記瞼判定手段は、前記瞼候補検出手段が前記上瞼候補及び前記下瞼候補を再度検出した場合に、前記記憶手段に記憶されている前記位置関係に基づいて、前記上瞼候補及び前記下瞼候補のうち所定の瞼候補を除外する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の眼部検出装置。
【請求項7】
顔画像から、上瞼又は下瞼の所定の条件に適合する上瞼候補及び下瞼候補を検出する瞼候補検出ステップと、
前記瞼候補検出ステップで検出した前記上瞼候補と下瞼候補の組み合わせを比較し、前記上瞼候補と下瞼候補の関係が所定の条件に最も適合する組み合わせを、上瞼および下瞼と判定する瞼候補判定ステップと、
を備えることを特徴とする眼部検出方法。
【請求項8】
コンピュータを、
顔画像から上瞼又は下瞼の所定の条件に適合する上瞼候補及び下瞼候補を検出する瞼候補検出手段と、
前記瞼候補検出手段で検出した前記上瞼候補と下瞼候補の組み合わせを比較し、前記上瞼候補と下瞼候補の関係が所定の条件に最も適合する組み合わせを、上瞼および下瞼と判定する瞼判定手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−140270(P2008−140270A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327430(P2006−327430)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】