説明

眼鏡装置

【課題】立体映像の視聴品質を向上させることが可能な眼鏡装置を提供する。
【解決手段】眼鏡装置は、フレーム部により保持された右眼レンズ部22Aおよび左眼レンズ部22Bを備えている。右眼レンズ部22Aおよび左眼レンズ部22Bは、いずれも視線方向に向かって凸型の断面形状を有する光透過性の電極23A,23Bと、その電極23A,23Bに沿って設けられると共に電気的に光透過率を制御可能な光透過制御層24とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過率を制御可能な一対のレンズ部を備えた眼鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像技術の進歩に伴い、立体映像表示に関する研究開発が盛んに行われており、最近では、家庭向けの立体映像表示用システムも登場している。
【0003】
立体映像表示用システムは、映像を表示する映像表示装置と、映像を視聴するための眼鏡装置と、それらの動作を管理および制御する管理制御装置とにより構成される(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
映像表示装置では、右眼用映像および左眼用映像が時分割で表示される。眼鏡装置は、一対のレンズ部を備え、各レンズ部の光透過率を独立して制御可能なシャッタ眼鏡である。各レンズ部は、2枚の光透過性ガラスの間に液晶層を有しており、各レンズ部の開閉(光透過率の増減)は、液晶分子の配向状態に応じて電気的に制御される。立体映像表示用システムでは、上記した眼鏡装置の開閉機構を利用して、視聴者(右眼または左眼)により視認される映像が時分割映像の種類(右眼用映像または左眼用映像)に応じて切り換えられるため、視差を利用して映像が立体視される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−275575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
眼鏡装置を用いて高品質の立体映像を視聴するためには、視差を十分に利用するために、右眼または左眼で時分割映像を的確に視認する必要がある。しかしながら、従来の眼鏡装置では、外来光(時分割映像以外の光)の影響を受けやすいと共に、外部景色(映像表示装置の周辺における時分割映像以外の像)が視認されやすいため、立体映像の視聴品質の点において未だ改善の余地がある。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、立体映像の視聴品質を向上させることが可能な眼鏡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の眼鏡装置は、一対のレンズ部を備えている。このレンズ部は、視線方向に向かって凸型の断面形状を有する光透過性の電極と、その電極に沿って設けられると共に電気的に光透過率を制御可能な光透過制御層とを含んでいる。なお、「視線方向」とは、眼鏡装置を装着した視聴者が映像を見る方向である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の眼鏡装置によれば、レンズ部が視線方向に向かって凸型の断面形状を有しているので、そのレンズ部と視聴者の顔面との間に生じる隙間が狭くなる。これにより、レンズ部と眼との間の空間に外来光が入りにくくなると共に、外部景色が視認されにくくなる。よって、立体映像の視聴品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態の眼鏡装置の構成を表す斜視図である。
【図2】図1に示した眼鏡装置の主要部の構成を表す斜視図および断面図である。
【図3】第1実施形態の眼鏡装置の動作を説明するための断面図である。
【図4】眼鏡装置の利点および問題点を説明するための断面図である。
【図5】第1実施形態の眼鏡装置の構成に関する変形例を表す断面図である
【図6】第1実施形態の眼鏡装置の構成に関する他の変形例を表す斜視図である
【図7】第1実施形態の眼鏡装置の構成に関するさらに他の変形例を表す斜視図である。
【図8】第1実施形態の眼鏡装置の構成に関するさらに他の変形例を表す断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態の眼鏡装置の構成を表す断面図である。
【図10】第2実施形態の眼鏡装置の動作を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.第1実施形態(エレクトロデポジションを用いた眼鏡装置)
2.第2実施形態(散乱型液晶を用いた眼鏡装置)
【0012】
<1.第1実施形態(エレクトロデポジションを用いた眼鏡装置)>
図1は、本発明の第1実施形態の眼鏡装置の斜視構成を表しており、図2は、図1に示した眼鏡装置の主要部の構成を表している。図2において、(A)は斜視構成、(B)は図1に示したB−B線に沿った断面構成、(C)は図1に示したC−C線に沿った断面構成をそれぞれ示している。
【0013】
[眼鏡装置の構成]
この眼鏡装置は、立体映像を視聴するために用いられるシャッタ眼鏡であり、図1および図2に示したように、支持部1により支持された光学部2と、その光学部2を制御するための制御回路3とを備えている。なお、図1等に示した矢印Eは、眼鏡装置の使用者(視聴者)の視線方向を表している。すなわち、眼鏡装置から見て、視線方向Eの先に映像表示装置(図示せず)が位置することになる。
【0014】
[支持部]
支持部1は、主に、一般的な眼鏡におけるテンプルおよびモダンなどの役割を果たしており、視聴者が眼鏡装置を装着するために使用される。この支持部1は、例えば、プラスチックまたは金属などにより形成されており、テンプルに相当する部分の長さを調整可能な機構(図示せず)などを有していてもよい。なお、支持部1の形状は、任意である。
【0015】
[光学部]
光学部2は、フレーム部21により保持された一対のレンズ部22(右眼レンズ部22Aおよび左眼レンズ部22B)を含んでいる。
【0016】
フレーム部21は、主に、一般的な眼鏡におけるリム、ブリッジ、ヨロイおよびパッドなどの役割を果たしている。このフレーム部21は、例えば、プラスチックまたは金属などにより形成されており、右眼レンズ部22Aと左眼レンズ部22Bとの間の距離を調整可能な機構(図示せず)などを有していてもよい。なお、フレーム部21の形状は、任意である。
【0017】
右眼レンズ部22Aは、例えば、図2(B)および図2(C)に示したように、視線方向Eにおける前方から後方に向かって順に、電極23Aと、その電極23Aに沿って設けられた光透過制御層24と、その光透過制御層24に沿って設けられた封止材25とを含んでいる共に、光透過制御層24を介して電極23Aと部分的に対向するように封止材25に設けられた対向電極26Aとを含んでいる。
【0018】
左眼レンズ部22Bは、例えば、図2(B)および図2(C)に示したように、右眼レンズ部22Aと同様の構造を有しており、電極23Bと、光透過制御層24と、封止剤25と、対向電極26Bとを含んでいる。
【0019】
電極23A,23Bは、それらの間に設けられた封止剤27を介して分離されており、それぞれに独立して電圧が印加されるようになっている。
【0020】
特に、電極23A,23Bは、いずれも視線方向Eに向かって凸型の断面形状を有している。「凸型の断面形状を有する」とは、視線方向Eにおいて電極23A,23Bを切断した際に、その切断面において中央部が周辺部よりも視線方向Eに突出していることを意味している。この電極23A,23Bの形状に応じて、右眼レンズ部22Aおよび左眼レンズ部22Bは、視線方向Eに向かって凸型の立体的形状を有している。ここでは、例えば、図2(A)に示したように、電極23A,23Bは、いずれも凸型に湾曲した断面形状を有しており、より具体的には半球状である。「半球状」とは、内部が空洞である球を2つに分割した際に得られる形状(いわゆるお椀型)を意味している。ただし、分割した際に生じる断面(輪郭)の形状は、必ずしも円に限らず、楕円などでもよい。
【0021】
また、電極23A,23Bは、光透過性の導電材料により形成されており、その光透過性の導電材料は、例えば、酸化物、金属、導電性高分子または炭素材料のいずれか1種類または2種類以上である。酸化物は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)または酸化亜鉛などである。金属は、例えば、銀グリットなどである。導電性高分子は、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)およびポリスチレンスルホン酸(PSS)などである。炭素材料は、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)またはグラフェンなどである。中でも、光透過性の導電材料は、炭素材料であることが好ましい。炭素材料は電気的および化学的に安定であるため、電極23A,23Bが変質、溶解および腐食しにくいからである。また、炭素材料ではイオン化およびマイグレーションが生じにくいため、電極23A,23Bと一緒に用いられる他の部材(例えば配線など)が影響を受けにくいからである。
【0022】
光透過制御層24は、電気的に光透過率を制御可能なものであり、例えば、エレクトロデポジション層である。この光透過制御層24は、例えば、電極23Aおよび電極23Bのそれぞれに沿って設けられた部分と共に、それらの間に位置する部分を含んでおり、それらの部分が一体化されたものである。これにより、光透過制御層24は、右眼レンズ部22Aおよび左眼レンズ部22Bにおいて共有されている。
【0023】
エレクトロデポジション層である光透過制御層24は、電圧印加の有無に応じて可逆的に溶解および析出可能であり、例えば、電極23A,23Bと封止材25とにより囲まれた空間に電解液が封入されたものである。なお、光透過制御層24では、電圧印加の有無に応じて電極23A,23Bごとに独立して溶解および析出が生じるため、上記したように、光透過制御層24は右眼レンズ部22Aおよび左眼レンズ部22Bにおいて共有されていてもよい。
【0024】
電解液は、例えば、溶媒により銀塩などの金属塩が溶解されたものである。銀塩は、例えば、フッ化銀(AgF)、塩化銀(AgCl)、臭化銀(AgBr)、ヨウ化銀(AgI)またはチオシアン化銀(AgSCN)などのいずれか1種類または2種類以上であり、中でも、ハロゲン化銀が好ましい。可逆的反応を安定して繰り返すことができるからである。溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、アセトニトリル(AN)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルプロピオンアミド(MPA)、N−メチルピロリドン(MP)、2−エトキシエタノール(EEOH)、2−メトキシエタノール(MEOH)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3−ジオキソラン(DOL)、エチルアセテート(EA)、テトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、ジメトキシエタン(DME)、ジエトキシエタン(DEE)またはγ−ブチロラクトン(γ−BL)などのいずれか1種類または2種類以上である。
【0025】
なお、電解液は、銀塩を溶解させるために、他の種類の塩を含んでいてもよい。このような他の種類の塩は、例えば、銀塩と同種または異種のハロゲン元素を供給可能なナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩または四級アンモニウム塩などのいずれか1種類または2種類以上である。
【0026】
封止材25,27は、光透過制御層24を封止するものであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)などの光透過性の絶縁材料により形成されている。この封止材25は、例えば、電極23Aおよび電極23Bのそれぞれに沿って設けられた部分と共に、それらの間および外側に設けられた部分を含んでおり、それらの部分が一体化されたものである。
【0027】
対向電極26A,26Bは、電極23A,23Bと一緒に光透過制御層24に電圧を印加するものであり、例えば、銀(Ag)などの導電材料により形成されている。この対向電極26A,26Bは、互いに分離されている。対向電極26Aは、例えば、封止材25における電極23Aと対向する部分に設けられていると共に、対向電極26Bは、例えば、封止材25における電極23Bと対向する部分的に設けられている。なお、対向電極26A,26Bは、電極23A,23Bとの間に電位差を生じさせることができればよいため、必ずしも電極23A,23Bに対して全面的に対向していなくてもよい。
【0028】
制御回路3は、主に、右眼レンズ部22Aおよび左眼レンズ部22Bに対する電圧印加の有無を切り換えて、それぞれの光透過率を制御するものである。この制御回路3は、例えば、各種回路基板などを含んでおり、フレーム部21の内部に収納されている。
【0029】
[眼鏡装置の動作]
この眼鏡装置は、以下のように動作する。図3は、眼鏡装置の動作を説明するためのものであり、(A),(B)は、いずれも図2(B)に対応している。
【0030】
制御回路3により右眼レンズ部22Aおよび左眼レンズ部22Bに電圧が印加されると、その電圧の印加方向に応じて電極23A,23Bでは正負が逆になる。
【0031】
例えば、図3(A)に示したように、右眼レンズ部22Aの光透過制御層24が溶解状態になると共に、左眼レンズ部22Bの光透過制御層24が析出状態になる。この場合には、溶解状態である右眼レンズ部22Aでは、光透過率が維持されるため、光Lが光透過制御層24を透過可能である。これにより、右眼では、映像表示装置に表示された映像(右眼用映像)を見ることができる。これに対して、析出状態である左眼レンズ部22Bでは、電解液から析出した金属層40により電極23Bの表面が覆われて光透過率が低下するため、光Lが光透過制御層24を透過不能になる。これにより、左眼では、映像表示装置に表示された映像(左眼用映像)を見ることができない。
【0032】
一方、電圧の印加方向が逆になると、例えば、図3(B)に示したように、右眼レンズ部22Aの光透過制御層24が析出状態になると共に、左眼レンズ部22Bの光透過制御層24が溶解状態になる。これにより、右眼レンズ部22Aでは金属層40の析出に応じて光Lが光透過制御層24を透過不能になるため、右眼では右眼用映像を見ることができない。これに対して、左眼レンズ部22Bでは光Lが光透過制御層24を透過可能であるため、左眼では左眼用映像を見ることができる。
【0033】
[眼鏡装置の作用および効果]
本実施形態の眼鏡装置によれば、右眼レンズ部22Aおよび左眼レンズ部22Bにおいて、電極23A,23Bが視線方向Eに向かって凸型の断面形状を有しているので、以下の理由により、立体映像の視聴品質を向上させることができる。
【0034】
図4は、眼鏡装置の利点および問題点を説明するためのものであり、(A)および(B)は、それぞれ比較例および本実施形態の眼鏡装置の断面構成を示している。比較例の眼鏡装置は、右眼レンズ部22Aに代えて、電極23A等が平坦である右眼レンズ部32Aを備えていることを除き、本実施形態の眼鏡装置と同様の構造を有している。
【0035】
比較例では、図4(A)に示したように、右眼レンズ部32Aが平坦であるため、視聴者が眼鏡装置を装着すると、右眼レンズ部32Aと視聴者の顔面Fとの間に生じる隙間Gが広くなる。この場合には、右眼レンズ部32Aと右眼Mとの間の空間に隙間Gを通じて外来光LXが入りやすいと共に、その隙間Gを通じて外部景色が視認されやすいため、立体映像の視聴品質が低下してしまう。
【0036】
これに対して、本実施形態では、図4(B)に示したように、右眼レンズ部22Aが凸型に湾曲しているため、比較例の場合と比較して、右眼レンズ部22Aと顔面Fとの間に生じる隙間Gが狭くなる。よって、外来光LXが入りにくいと共に、外部景色が視認されにくいため、立体映像の視聴品質を向上させることができるのである。なお、上記した右眼レンズ部22Aにおける利点は、左眼レンズ部22Bにおいても同様に得られる。
【0037】
これに伴い、本実施形態では、以下の利点も得られる。まず、眼球に入射する外来光LXの光量が減少するため、立体映像の視聴時における眼の疲労感を低減することができる。また、右眼レンズ部22Aまたは左眼レンズ部22Bにより眼が覆われるため、立体映像を視聴する際の視野を広げることができる。さらに、右眼レンズ部22Aおよび左眼レンズ部22Bの端部が顔面に近づいており、その顔面に対して光学部2(フレーム部21)が接触しやすくなるため、眼鏡装置の装着性(フィット感)を向上させることができると共に、使用時における眼鏡装置のずれを防止することができる。
【0038】
特に、本実施形態では、電極23A,23Bが半球状であるため、図2(B),(C)および図4(B)から明らかなように、右眼レンズ部22Aの周囲における全方向において隙間Gが狭くなる。よって、外来光LXが入り込むと共に外部景色が視認される可能性が著しく低下するため、立体映像の視聴品質をより向上させることができる。
【0039】
また、電極23A,23Bが炭素材料により形成されていれば、それらが電気的および化学的に安定になると共に、それらに起因して他の部材が影響を受けにくくなるため、眼鏡装置の耐久性を向上させることができると共に、それに応じて良好な視聴品質を維持できる。しかも、炭素材料はプラスチックなどの上でも成膜可能であるため、金属およびガラスなどと比較して、軽量化を図ると共に、物理的耐久性(衝撃時の破損などに対する耐久性)を向上させることができる。
【0040】
[変形例]
なお、図2(B),(C)に示した右眼レンズ部22Aでは、視線方向Eにおける前方から後方に向かって順に、電極23Aと、光透過制御層24と、封止材25とが配置されるようにしたが、電極23Aと封止材25とを入れ換えてもよい。同様に、左眼レンズ部22Bにおいて、電極23Bと封止材25とを入れ換えてもよい。この場合においても、同様の作用および効果を得ることができる。
【0041】
また、図2(B),(C)では、右眼レンズ部22Aおよび左眼レンズ部22Bにおいて光透過制御層24が共有されるようにしたが、電極23A,23Bと同様に、光透過制御層24が右眼レンズ部22Aおよび左眼レンズ部22Bにおいて分離されてもよい。この場合においても、同様の作用および効果を得ることができる。
【0042】
また、図2(B)に対応する図5に示したように、光透過制御層24を介して電極23A,23Bとそれぞれ対向するように補助電極28A,28Bを設けてもよい。補助電極28A,28Bは、例えば、互いに分離されていると共に、電極23A,23Bと同様の材料により形成されている。なお、電極23A,23Bと補助電極28A,28Bとが意図せずに接触(短絡)することを防止するために、それらの間に樹脂などのスペーサを設けてもよい。この場合には、補助電極28A,28Bをそれぞれ電極23A,23Bと等電位にすれば、電極23Aおよび補助電極28A(または電極23Bおよび補助電極28B)に金属層40(図3)が析出するため、その金属層40の析出量が多くなる。よって、金属層40の析出時において光透過率をより低下させることができると共に、その光透過率をより短時間で変化させることができる。
【0043】
また、図2(A)に対応する図6および図7に示したように、電極23A,23Bの形状を半球状に代えて、X軸方向において凸型に湾曲したアーチ状(いわゆる瓦状)にしてもよいし(図6)、Y軸方向において凸型に湾曲したアーチ状にしてもよい(図7)。これらの場合においても、電極23A,23Bが湾曲している方向において、半球状にした場合(図2(A))と同様の作用が得られるため、立体映像の視聴品質を向上させることができる。
【0044】
また、電極23A,23Bは、凸型に湾曲した断面形状を有する代わりに、図2(B)に対応する図8に示したように、凸型に折れ曲がった多面状の断面形状を有していてもよい。この多面状における各面は、平坦でもよいし、湾曲していてもよい。この場合においても、湾曲した場合(図2(B))と同様の作用が得られるため、立体映像の視聴品質を向上させることができる。もちろん、電極23A,23Bが瓦状である場合(図6および図7)においても同様に、その電極23A,23Bが多面状に折れ曲がっていてもよい。
【0045】
<2.第2実施形態(散乱型液晶を用いた眼鏡装置)>
図9は、本発明の第2実施形態の眼鏡装置の断面構成を表しており、図10は、眼鏡装置の動作を説明するためのものである。なお、図9および図10では、第1実施形態において既に説明した構成要素に同一の符号を付しており、以下では、その構成要素に関する説明を省略する。
【0046】
[眼鏡装置の構成]
この眼鏡装置は、右眼レンズ部22Aおよび左眼レンズ部22Bに代えて右眼レンズ部42Aおよび左眼レンズ部42Bを備えていることを除き、図5に示した眼鏡装置と同様の構造を有している。
【0047】
右眼レンズ部42Aは、例えば、図9に示したように、視線方向Eにおける前方から後方に向かって順に、電極23Aと、その電極23Aに沿って設けられた光透過制御層29Aと、その光透過制御層29Aに沿って設けられた対向電極30Aとを含んでいる。
【0048】
左眼レンズ部42Bは、例えば、図9に示したように、右眼レンズ部42Aと同様の構造を有しており、視線方向Eにおける前方から後方に向かって順に、電極23Bと、光透過制御層29Bと、対向電極30Bとを含んでいる。
【0049】
光透過制御層29A,29Bは、例えば、散乱型液晶層であり、右眼レンズ部42Aおよび左眼レンズ部42Bにおいて互いに分離されている。
【0050】
散乱型液晶層である光透過制御層29A,29Bは、電圧印加の有無に応じて光散乱強度が変化可能であり、例えば、電極23A,23B、対向電極30A,30Bおよび封止材25により囲まれた空間に散乱型液晶が封入されたものである。
【0051】
散乱型液晶層は、例えば、三次元網目状のネットワーク構造を有する高分子と、その高分子のネットワーク構造中に分散された複数の液晶ドロプレットとを含んでおり、各液晶ドロプレットには、複数の液晶分子が包括されている。この液晶分子は、複屈折性を有しており、その配向状態は、電圧印加に応じて変化可能になっている。高分子は、例えば、重合開始剤などにより(メタ)アクリレート誘導体が重合された光透過性の重合体などである。液晶分子は、例えば、安息香酸エステル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、ビフェニル系、ターフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ピリジン系、トラン系またはアルケニル系の液晶化合物などである。
【0052】
対向電極30A,30Bは、電極23A,23Bと一緒に光透過制御層29A,29Bに電圧を印加するものであり、例えば、電極23A,23Bと同様の材料により形成されている。また、対向電極26A,26Bは、互いに分離されており、それぞれ電極23A、23Bに対向配置されている。
【0053】
[眼鏡装置の動作]
この眼鏡装置では、制御回路3により右眼レンズ部42Aだけに電圧が印可されると、図10(A)に示したように、右眼レンズ部42Aが透過状態になると共に、左眼レンズ部42Bが非透過状態になる。この場合には、右眼レンズ部42Aでは、光透過制御層29Aにおいて液晶分子が電極23A,23Bおよび対向電極30A,30Bに対して垂直に配向するため、光透過率が維持され、光Lが光透過制御層29Aを透過可能である。これにより、右眼では右眼用映像を見ることができる。これに対して、左眼レンズ部42Bでは、光透過制御層29Bにおいて液晶分子が垂直に配向しないため、光透過率が低下し、光Lが光透過制御層29Bを透過不能になる。これにより、左眼では左眼用映像を見ることができない。
【0054】
一方、制御回路3により左眼レンズ部42Bだけに電圧が印可されると、図10(B)に示したように、図10(A)に示した場合とは透過状態および非透過状態が逆転する。この場合には、右眼レンズ部42Aでは、光透過制御層29Aにおいて液晶分子が垂直に配向しないため、右眼では右眼用映像を見ることができないのに対して、左眼レンズ部42Bでは、光透過制御層29Bにおいて液晶分子が垂直に配向するため、左眼では左眼用映像を見ることができる。
【0055】
[眼鏡装置の作用および効果]
本実施形態の眼鏡装置によれば、右眼レンズ部42Aおよび左眼レンズ部42Bにおいて、電極23A,23Bが視線方向Eに向かって凸型に湾曲した断面形状を有しているので、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0056】
特に、光透過制御層29A,29Bは散乱型液晶層であるため、他の種類の液晶層である場合とは異なり、光Lの透過の可否を制御するために配向膜および偏光板などが不要になる。この場合には、配向膜などに起因して光透過率が低下しないため、高い光透過率が得られる。よって、立体映像の視聴品質をより向上させることができる。
【0057】
[変形例]
なお、光透過制御層29A,29Bは、散乱型液晶層に限らず、ねじれネマティック(TN:twisted nematic )などの一般的な液晶層でもよい。この場合においても、同様の作用および効果を得ることができる。
【0058】
以上、いくつかの実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は各実施形態において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、眼鏡装置の主要部以外の構成(フレーム部および支持部の形状および大きさなど)は、適宜変更可能である。また、上記した変形例は、1または2以上組み合わされてもよい。さらに、光透過制御層は、エレクトロデポジション層および液晶層(散乱型液晶層を含む)に代えて、光透過率を制御可能な他の層でもよい。この他、本発明の眼鏡装置は、立体映像の視聴用途以外の用途に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…支持部、2…光学部、3…制御回路、21…フレーム部、22A,42A…右眼レンズ部、22B,42B…左眼レンズ部、23A,23B…電極、24,29A,29B…光透過制御層、25,27…封止材、26A,26B,30A,30B…対向電極、28A,28B…補助電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のレンズ部を備え、
前記レンズ部は、視線方向に向かって凸型の断面形状を有する光透過性の電極と、その電極に沿って設けられると共に電気的に光透過率を制御可能な光透過制御層とを含む、
眼鏡装置。
【請求項2】
前記電極は半球状である、請求項1記載の眼鏡装置。
【請求項3】
前記電極は炭素材料を含む、請求項1記載の眼鏡装置。
【請求項4】
前記炭素材料はカーボンナノチューブおよびグラフェンのうちの少なくとも一方である、請求項3記載の眼鏡装置。
【請求項5】
前記光透過制御層はエレクトロデポジション層または散乱型液晶層である、請求項1記載の眼鏡装置。
【請求項6】
前記レンズ部は、前記光透過制御層を介して前記電極のうちの少なくとも一部と対向配置された対向電極を含む、請求項1記載の眼鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−14026(P2012−14026A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151615(P2010−151615)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】