説明

着色硬化性組成物、カラーフィルタ及びその製造方法、固体撮像素子、画像表示デバイス、並びに、色素化合物、及びその互変異性体

【課題】色純度、耐熱性、耐光性に優れ、薄層でも高発色の着色層を形成可能な着色硬化性組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(M)で表される色素化合物、又は、下記一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物と、重合性化合物と、を含有する着色硬化性組成物。






(Dは下記一般式(1)から水素原子を取り除いた残基を表す。)



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色硬化性組成物、カラーフィルタ及びその製造方法、固体撮像素子、画像表示デバイス、並びに、色素化合物、及びその互変異性体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、特に大画面液晶テレビの発達に伴い、液晶ディスプレイ(LCD)、とりわけカラー液晶ディスプレイの需要が増加する傾向にある。更なる高画質化の要求から有機ELディスプレイの普及も待ち望まれている。
一方、デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話等の普及から、CCDイメージセンサーなどの固体撮像素子の需要が大きく伸びている。これらのディスプレイや光学素子のキーデバイスとしてカラーフィルタが使用されており、更なる高画質化の要求とともにコストダウンへの要求が高まっている。このようなカラーフィルタは、通常、赤(R)、緑(G)、および青(B)の3原色の着色パターンを備えており、画像表示デバイスや固体撮像素子において、通過する光を着色し、または3原色へ分解する役割を果たしている。
【0003】
カラーフィルタに使用されている着色剤には、共通して次のような性質を具備していることが求められる。即ち、色再現性上好ましい光吸収特性を有すること、液晶ディスプレイのコントラスト低下の原因である光散乱や固体撮像素子の色ムラ・ザラツキ感の原因となる光学濃度の不均一性といった光学的な乱れがないこと、使用される環境条件下における堅牢性、例えば、耐熱性、耐光性、耐湿熱性等が良好であること、モル吸光係数が大きく薄膜化が可能なこと等が必要とされている。
【0004】
固体撮像素子、液晶ディスプレイ、及び有機ELディスプレイ等に用いられるカラーフィルタを作製する方法の一つに顔料分散法が用いられている。顔料分散法で、フォトリソ法やインクジェット法によってカラーフィルタを作製する方法は、顔料を使用しているために光や熱に対して安定である。
【0005】
フォトリソ法によりカラーフィルタを作製するには、基板上に感放射線性組成物をスピンコーター、スリットコーター、ロールコーター等により塗布し、乾燥させて塗布膜を形成し、該塗布膜をパターン露光し現像することによって、着色された画素を得る。この操作を色相の数だけ繰り返すことでカラーフィルタを作製することができる。光によってパターニングするため位置精度も充分に確保でき、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等に用いられる大画面で、高精細のカラーフィルタの作製に好適な方法として広く利用されている。
【0006】
固体撮像素子用のカラーフィルタにおいては、微細パターンのマスクを通して、露光、次いでアルカリ液による現像を行い、未露光部をアルカリ現像液に溶解して微細パターンを形成させているが、露光部、未露光部の溶解性(現像性)の調節が難しい。
【0007】
近年、固体撮像素子用のカラーフィルタの更なる高精細化が望まれており、従来の顔料分散法では、顔料の粗大粒子による色ムラが発生する等の問題のために、解像度をさらに向上させることは困難であり、高精細化のためには、顔料分散法を用いたフォトリソ法の適用が難しくなりつつある。
一方、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等においても、顔料分散法を用いたフォトリソ法により製造されたカラーフィルタは、耐光性、耐熱性に優れるが、顔料粒子による光散乱のためコントラストの低下や、ヘイズの増加といった問題が大きな課題として残っている。
【0008】
また、フォトリソ法は、前述の通り、感放射線性組成物の塗布、乾燥、パターン露光、現像の各工程を色相数の回数繰り返す必要があり、コスト高になるという問題や、同様の工程を繰り返すため歩留まりが低下するという問題もある。特に、液晶ディスプレイへのコストダウン要求の高まりから、コスト的に比重の高いカラーフィルタに対するコストダウンの要求が高くなってきており、より高生産性のカラーフィルタの製造方法への要望が高まってきている。
【0009】
フォトリソ法の問題を解決するカラーフィルタの製造方法として、インクジェット法で着色インクを吐出して着色層(色画素)を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0010】
インクジェット法は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出、付着させて、文字や画像を得る記録方式である。インクジェット法は、インクジェットヘッドを順次移動させることにより、大面積のカラーフィルタを高生産性で製造でき、低騒音で操作性がよいという利点をもつ。このようなインクジェット法によるカラーフィルタの製造には、顔料分散法を使用したインクジェット用インクが用いられている。このような顔料分散法を使用したインクジェット用インクとしては、例えば、バインダー成分、顔料、および、沸点が180℃〜260℃でかつ常温での蒸気圧が0.5mmHg以下の溶剤を含むカラーフィルタ用インクジェットインクが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0011】
顔料分散法を使用したインクジェット用インクをカラーフィルタの製造に用いた場合、顔料の凝集によるノズル目詰まりが頻繁に発生するため、吐出安定性という点から好ましくない。さらに、凝集した顔料のために、ワイピングやパージといった吐出回復動作によるインク吐出状態の回復機能が悪化する。加えて、ワイピング時、凝集した顔料によりノズル面がこすれて、インクの吐出方向の曲がりを引き起こすこともある。
【0012】
顔料分散法に替えて染料を使用した場合、固体撮像素子用カラーフィルタでは色むら・ザラツキ感の問題解消による高解像度の達成が、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイにおいてはコントラストやヘイズなどの光学特性の向上が、夫々期待される。また、染料を用いたインクジェット法では概して吐出安定性も高く、インク粘度の増加などに伴うノズル目詰まりがあった場合でも、ワイピングやパージにより容易にインク吐出状態を回復することが期待される。
【0013】
以上のような理由から、着色材として染料を用いることが検討されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、染料を含む着色硬化性組成物は、以下に示すような新たな問題点を有している。
(1)染料は、一般に顔料に比べて、耐光性、耐熱性に劣る。特に、液晶ディスプレイなどの電極として多用されているITO(酸化インジウムスズ)の成膜時の高温工程により、光学特性が変化してしまうという問題がある。
(2)染料は、ラジカル重合反応を抑制する傾向があるため、ラジカル重合を硬化手段として用いる系では、着色硬化性組成物の設計に困難が伴う。
特にフォトリソ法では、
(3)通常の染料は、アルカリ水溶液又は有機溶剤(以下単に溶剤ともいう)への溶解度が低いため、所望のスペクトルを有する着色硬化性組成物を得るのが困難である。
(4)染料は、着色硬化性組成物中の他の成分との相互作用を示すことが多く、露光部、未露光部の溶解性(現像性)の調節が難しい。
(5)染料のモル吸光係数(ε)が低い場合には多量の染料を添加しなければならず、そのために着色硬化性組成物中の重合性化合物(モノマー)やバインダー、光重合開始剤等の他の成分を相対的に減らさざるを得ず、組成物の硬化性、硬化後の耐熱性、現像性等が低下する。
【0014】
これらの問題のために、これまで高精細カラーフィルタ用の微細かつ薄膜に構成され、堅牢性にも優れた着色パターンを、染料を用いて形成することは困難であった。また、固体撮像素子用のカラーフィルタの場合においては、着色層を1μm以下の薄膜にすることが要求される。したがって、所望の吸収を得るためには硬化性組成物中に、多量の色素を添加する必要があり、前述の問題を生じる結果となる。
【0015】
また一方、染料を含有する着色硬化性組成物においては、成膜後に加熱処理を施した場合に、隣接の色相の異なる着色パターン間や積層されて重なり合っている層間で色移りする現象が生じやすいことが指摘されている。色移りの他にも、感度低下によって低露光量領域でパターンが剥離し易くなったり、フォトリソ性に寄与する感光性成分が相対的に量が減るために熱ダレや現像時の溶出等により所望の形状や色濃度が得られない等の問題もある。
【0016】
このような問題を解決する方法として、従来から開始剤の種類を選択したり、開始剤の添加量を増量する等の種々の方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。また、着色パターン形成後に基材を加熱しながら着色パターンに光を照射することにより、露光温度を上昇させた状態で重合を行ない、系の重合率を高めるカラーフィルタの製造方法が開示されている(例えば、特許文献5参照)。更に、現像処理と加熱処理の間で光照射を行ない、カラーフィルタの形状変形を防止するカラーフィルタの製造方法が開示されている(例えば、特許文献6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開昭59−75205号公報
【特許文献2】特開2004−339332号公報
【特許文献3】特開2002−201387号公報
【特許文献4】特開2005−316012号公報
【特許文献5】特許第3309514号公報
【特許文献6】特開2006−258916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、色純度、耐熱性、耐光性に優れ、薄層でも高発色の着色層を形成可能な着色硬化性組成物を提供することを課題とする。
また、フォトリソ法による着色パターン形成に用いられる着色硬化性組成物、及び、インクジェット法による着色パターン形成に用いられ、吐出安定性に優れた着色硬化性組成物を提供することを課題とする。
また、色純度、耐熱性、耐光性に優れた、形状の良好な着色パターンを有するカラーフィルタ及びその製造方法を提供することを課題とする。
更に、高解像度の固体撮像素子、及び、色再現性が良好で、高精細な画像表示デバイスを提供することを課題とする。
更に、本発明は、カラーフィルタ用の着色硬化性組成物等に有用な、吸収特性に優れ、モル吸光係数が高い新規な色素化合物、及びその互変異性体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、各種色素を詳細に検討した結果、特定の構造を有するアゾ色素化合物が、良好な色相と高い吸光係数を有し、耐熱性、耐光性等の堅牢性に優れると共に、有機溶剤に対する溶解性に優れるとの知見を得、一般式(1)で表されるアゾ色素骨格由来の部分構造を導入した色素化合物を用いることで、上記課題が解決されることを見出した。更に、必要によりアルカリ可溶性基を導入した色素化合物を着色硬化性組成物に用いることで、パターン形成性に優れる(アルカリ現像液の濃度依存性が小さい)着色硬化性組成物が開発可能であるとの知見を得た。このような色素化合物は、熱プロセスにおいて着色剤の拡散を防止することが可能であり、加えて熱による昇華性を抑制することが可能であるとの知見を得た。
前記の課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
【0020】
<1> 下記一般式(M)で表される色素化合物、及びその互変異性体からなる群より選択される少なくとも1種と、重合性化合物と、を含有する着色硬化性組成物。
【0021】
【化1】



【0022】
(一般式(M)中、RM1、RM2、及びRM3は各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、L、及びLは各々独立に、単結合、又は2価の連結基を表し、AはpKaが10以下の酸基を表し、Dは下記一般式(1)から水素原子をn+m個取り除いた残基を表し、nは0〜10の整数を表し、mは1〜10の整数を表す。)
【0023】
【化2】



【0024】
(一般式(1)中、R、R、R、R、及びRは、各々独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。RとR、及びRとRは、各々独立に互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0025】
<2> 下記一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物、及びその互変異性体からなる群より選択される少なくとも1種と、重合性化合物と、を含有する着色硬化性組成物。
【0026】
【化3】



【0027】
(一般式(P)中、RP1、RP2、及びRP3は各々独立に、水素原子、または1価の置換基を表し、Dは下記一般式(1)から水素原子を1つ取り除いた残基を表す。)
【0028】
【化4】



(一般式(1)中、R、R、R、R、及びRは、各々独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。RとR、及びRとRは、各々独立に互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0029】
<3> 重合開始剤をさらに含有する<1>又は<2>に記載の着色硬化性組成物。
【0030】
<4> フォトリソ法による着色パターン形成に用いられる<1>〜<3>のいずれか1つに記載の着色硬化性組成物。
【0031】
<5> インクジェット法による着色パターン形成に用いられる<1>〜<3>のいずれか1つに記載の着色硬化性組成物。
【0032】
<6> <1>〜<5>のいずれか1つに記載の着色硬化性組成物を用いて形成された着色パターンを有するカラーフィルタ。
【0033】
<7> <4>に記載の着色硬化性組成物を支持体上に塗布して着色層を形成する工程と、該着色層をパターン露光する工程と、前記パターン露光後に現像により着色パターンを形成する工程と、を含むカラーフィルタの製造方法。
【0034】
<8> <6>に記載のカラーフィルタを備える固体撮像素子。
【0035】
<9> <6>に記載のカラーフィルタを備える画像表示デバイス。
【0036】
<10> 下記一般式(M)で表される色素化合物、及びその互変異性体。
【0037】
【化5】



【0038】
(一般式(M)中、RM1、RM2、及びRM3は各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、L、及びLは各々独立に、単結合、又は2価の連結基を表し、AはpKaが10以下の酸基を表し、Dは下記一般式(1)から水素原子をn+m個取り除いた残基を表し、nは0〜10の整数を表し、mは1〜10の整数を表す。)
【0039】
【化6】



【0040】
(一般式(1)中、R、R、R、R、及びRは、各々独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。RとR、及びRとRは、各々独立に互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0041】
<11> 下記一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物、及びその互変異性体。
【0042】
【化7】



【0043】
(一般式(P)中、RP1、RP2、及びRP3は各々独立に、水素原子、または1価の置換基を表し、Dは下記一般式(1)から水素原子を1つ取り除いた残基を表す。)
【0044】
【化8】



【0045】
(一般式(1)中、R、R、R、R、及びRは、各々独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。RとR、及びRとRは、各々独立に互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0046】
<12> 更に酸基を含み、酸価が、25mgKOH/g〜200mgKOH/gである<11>に記載の色素化合物、及びその互変異性体。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、色純度、耐熱性、耐光性に優れ、薄層でも高発色の着色層を形成可能な着色硬化性組成物を提供することができる。
また、フォトリソ法による着色パターン形成に用いられる着色硬化性組成物、及び、インクジェット法による着色パターン形成に用いられ、吐出安定性に優れた着色硬化性組成物を提供することができる。
また、色純度、耐熱性、耐光性に優れた、形状の良好な着色パターンを有するカラーフィルタ及びその製造方法を提供することができる。
更に、高解像度の固体撮像素子、及び、色再現性が良好で、高精細な画像表示デバイスを提供することができる。
更に、本発明は、カラーフィルタ用の着色硬化性組成物等に有用な、吸収特性に優れ、モル吸光係数が高い新規な色素化合物、及びその互変異性体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1で作製したカラーフィルタの透過スペクトルを示す図である。
【図2】冷陰極管光源の波長スペクトル分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下に、本発明の着色硬化性組成物、カラーフィルタ、及びカラーフィルタの製造方法等について詳述する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0050】
−着色硬化性組成物−
本発明の第一の着色硬化性組成物は、下記一般式(M)で表される色素化合物、及びその互変異性体からなる群より選択される少なくとも1種と、重合性化合物と、を含有する。
【0051】
【化9】



【0052】
(一般式(M)中、RM1、RM2、及びRM3は各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、L、及びLは各々独立に、単結合、又は2価の連結基を表し、AはpKaが10以下の酸基を表し、Dは下記一般式(1)から水素原子をn+m個取り除いた残基を表し、nは0〜10の整数を表し、mは1〜10の整数を表す。)
【0053】
【化10】



【0054】
(一般式(1)中、R、R、R、R、及びRは、各々独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。RとR、及びRとRは、各々独立に互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0055】
また、本発明の第二の着色硬化性組成物は、下記一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物、及びその互変異性体からなる群より選択される少なくとも1種と、重合性化合物と、を含有する。
【0056】
【化11】



【0057】
(一般式(P)中、RP1、RP2、及びRP3は各々独立に、水素原子、または1価の置換基を表し、Dは下記一般式(1)から水素原子を1つ取り除いた残基を表す。)
【0058】
【化12】



【0059】
(一般式(1)中、R、R、R、R、及びRは、各々独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。RとR、及びRとRは、各々独立に互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0060】
本発明の第一の着色硬化性組成物は、一般式(M)で表される色素化合物、及びその互変異性体からなる群より選択される少なくとも1種に加えて、必要に応じて、一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物、及びその互変異性体からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。
また、本発明の第二の着色硬化性組成物は、一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物、及びその互変異性体からなる群より選択される少なくとも1種に加えて、必要に応じて、一般式(M)で表される色素化合物、及びその互変異性体からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0061】
本発明の第一又は第二の着色硬化性組成物(以下、単に「本発明の着色硬化性組成物」と称することがある)は、熱、光またはその両方で硬化することを特徴とするものであり、必要によって、重合開始剤、溶剤、バインダー、および架橋剤など他の成分を用いて構成することができる。
【0062】
本発明の着色硬化性組成物に含有される一般式(M)で表される色素化合物、又は、一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物は、一般式(1)で表される色素の残基を部分構造として有していることを特徴とする、モノマー染料又はポリマー型染料である。
まず、一般式(1)で表される化合物及びこれを前記染料に導入する態様である色素残基について説明する。
【0063】
<一般式(1)で表される色素の残基>
一般式(1)で表される特定アゾ色素骨格は、カップリング成分がアミノチアゾールであり、かつジアゾ成分がイソチアゾールであることを特徴とするアゾ色素骨格である。アミノチアゾールをカップリング成分とするアゾ色素は、特開昭54−65730号公報、および米国特許5,789,560号明細書(例えば、例示化合物76)に記載され、またイソチアゾールをジアゾ成分とする色素は、特開平2−123166号公報に開示されている。
下記一般式(1)で示される特定アゾ色素化合物を拡散(感熱)転写用色素として用いる例は、特開2005−255868号公報および特開2009−56711号公報に開示されている。この特定アゾ色素化合物のクロモフォア(発色団)のみをもつ分子では熱により昇華することが知られており、フォトリソ法による着色パターン形成に用いることは困難であった。
本発明においては、この特定アゾ色素の残基を部分構造として有するモノマー染料又はポリマー型染料を、カラーフィルタ用途において着色硬化性組成物として用いたとき、カラーフィルタとして必要な特性、特に高解像度、高精細、高色再現、高コントラストを満足することができる。さらに、昇華性を抑制することが可能となる。
【0064】
【化13】



【0065】
一般式(1)中、R、R、R、R、及びRは、各々独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。RとR、及びRとRは、各々独立に互いに結合して環を形成していてもよい。
ただし、R、R、R、R、及び/又はRから、一般式(M)で表される色素化合物の場合はn+m個の水素原子が、一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物の場合は1個の水素原子が除かれて色素残基となる。
【0066】
一般式(1)において、R、R、およびRは各々独立に、水素原子または1価の置換基を表す。1価の置換基は、例えばハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基(本明細書では、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む飽和脂肪族基を意味する)、炭素数2〜30のアルケニル基(本明細書では、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む二重結合を有する不飽和脂肪族基を意味する)、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数3〜30のヘテロ環基、シアノ基、炭素数1〜30の脂肪族オキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、炭素数2〜30のアシルオキシ基、炭素数1〜30のカルバモイルオキシ基、炭素数2〜30の脂肪族オキシカルボニルオキシ基、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数0〜30のアミノ基(脂肪族アミノ基、アリールアミノ基およびヘテロ環アミノ基を含む)、炭素数2〜30のアシルアミノ基、炭素数1〜30のアミノカルボニルアミノ基、炭素数2〜30の脂肪族オキシカルボニルアミノ基、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニルアミノ基、炭素数0〜30のスルファモイルアミノ基、炭素数1〜30の脂肪族もしくはアリールスルホニルアミノ基、炭素数1〜30の脂肪族チオ基、炭素数6〜30のアリールチオ基、炭素数0〜30のスルファモイル基、炭素数1〜30の脂肪族もしくはアリールスルフィニル基、炭素数1〜30の脂肪族もしくはアリールスルホニル基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜30の脂肪族オキシカルボニル基、炭素数1〜30のカルバモイル基、炭素数3〜30のアリールもしくはヘテロ環アゾ基、イミド基があげられ、それぞれの基はさらに置換基を有していてもよい。
【0067】
一般式(1)において、R、およびRは各々独立に、水素原子または1価の置換基を表す。1価の置換基としては、例えば炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数3〜30のヘテロ環基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜30のカルバモイル基があげられ、それぞれの基はさらに置換基を有していてもよい。
【0068】
以下にR、R、R、R、及びRにおける1価の置換基と、該置換基を更に置換する置換基に関して詳細に説明する。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。中でも塩素原子、臭素原子が好ましく、特に塩素原子が好ましい。
【0069】
脂肪族基は、直鎖、分枝又は環状の脂肪族基であり、前述のように、飽和脂肪族基には、アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基が含まれ、置換基を有してもよい。これらの炭素数は1〜30が好ましく、1〜15が更に好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基及び2−エチルヘキシル基を挙げることができ、これらの中でもメチル基、tert−ブチル基、及びベンジル基が好ましい。ここで、シクロアルキル基としては置換又は無置換のシクロアルキル基が含まれる。置換又は無置換のシクロアルキル基は、炭素数3〜30のシクロアルキル基が好ましい。例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基を挙げることができ、これらの中でもシクロヘキシル基が好ましい。ビシクロアルキル基としては、炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基を挙げることができる。例として、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル基を挙げることができ、これらの中でも、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル基が好ましい。
脂肪族基には、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含してもよい。
【0070】
不飽和脂肪族基としては、直鎖、分枝又は環状の不飽和脂肪族基であり、アルケニル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基、アルキニル基が含まれる。アルケニル基としては直鎖、分岐、環状の置換又は無置換のアルケニル基を表す。アルケニル基としては、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルケニル基が好ましく、炭素数2〜10の置換又は無置換のアルケニル基が更に好ましい。例としてはビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基を挙げることができ、これらの中でもビニル基が好ましい。シクロアルケニル基としては、炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例としては、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基が挙げられ、これらの中でも2−シクロペンテン−1−イル基が好ましい。ビシクロアルケニル基としては、置換又は無置換のビシクロアルケニル基が含まれる。ビシクロアルケニル基としては炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例として、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル基を挙げることができ、これらの中でもビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル基が好ましい。
【0071】
アルキニル基は、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキニル基が好ましく、炭素数2〜10の置換又は無置換のアルキニル基が更に好ましく、例えば、エチニル基、及び、プロパルギル基が挙げられ、これらの中でもエチニル基が好ましい。
【0072】
アリール基は、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリール基が好ましく、炭素数6〜20の置換又は無置換のアリール基が更に好ましく、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基が挙げられ、置換基を有してもよいフェニル基が好ましい。
【0073】
ヘテロ環基は、置換若しくは無置換の芳香族又は非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、それらはさらに縮環していてもよい。これらのヘテロ環基としては、好ましくは5又は6員のヘテロ環基であり、また環を構成するヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましい。さらに好ましくは、炭素数3〜30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基であり、特に好ましくは、炭素数3〜15の5又は6員の芳香族のヘテロ環基である。
ヘテロ環基におけるヘテロ環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、シンノリン環、フタラジン環、キノキサリン環、ピロール環、インドール環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、ベンズオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イソチアゾール環、ベンズイソチアゾール環、チアジアゾール環、イソオキサゾール環、ベンズイソオキサゾール環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、イミダゾリジン環、チアゾリン環が挙げられ、これらの中でも、置換基を有しても良いピリジン環、イソキノリン環、ピロール環、チオフェン環、イミダゾール環が好ましい。
【0074】
脂肪族オキシ基(代表としてアルコキシ基)は、置換又は無置換の脂肪族オキシ基(代表としてアルコキシ基)が含まれ、炭素数は1〜30が好ましく、1〜15が更に好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−オクチルオキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基及び3−カルボキシプロポキシ基などを挙げることができ、これらの中でもメトキシ基、イソプロポキシ基が好ましい。
【0075】
アリールオキシ基は、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールオキシ基が好ましく、炭素数6〜15の置換又は無置換のアリールオキシ基が更に好ましい。アリールオキシ基の例として、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基などを挙げることができる。好ましくは、置換基を有してもよいフェニルオキシ基である。
【0076】
アシルオキシ基は、ホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルオキシ基が好ましい。アシルオキシ基の例には、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基などを挙げることができ、これらの中でもアセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基が好ましい。
【0077】
カルバモイルオキシ基は、炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイルオキシ基が好ましく、炭素数1〜15の置換又は無置換のカルバモイルオキシ基が更に好ましい。カルバモイルオキシ基の例には、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基などを挙げることができ、これらの中でもN,N−ジメチルカルバモイルオキシ基が好ましい。
【0078】
脂肪族オキシカルボニルオキシ基(代表としてアルコキシカルボニルオキシ基)は、炭素数2〜30が好ましく、炭素数2〜15が更に好ましく、置換基を有していてもよい。例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基などを挙げることができ、これらの中でもメトキシカルボニルオキシ基が好ましい。
【0079】
アリールオキシカルボニルオキシ基は、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましく、炭素数7〜15の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が更に好ましい。アリールオキシカルボニルオキシ基の例には、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基などを挙げることができる。好ましくは置換基を有してもよいフェノキシカルボニルオキシ基である。
【0080】
アミノ基は、アミノ基、脂肪族アミノ基(代表としてアルキルアミノ基)、アリールアミノ基及びヘテロ環アミノ基を含む。アミノ基は、炭素数1〜30の置換若しくは無置換の脂肪族アミノ基(代表としてアルキルアミノ基)、又は、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールアミノ基が好ましい。アミノ基の例には、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基、ヒドロキシエチルアミノ基、カルボキシエチルアミノ基、スルフォエチルアミノ基、3,5−ジカルボキシアニリノ基、4−キノリルアミノ基などを挙げることができ、これらの中でも置換基を有してもよいアニリノ基、が好ましい。
【0081】
アシルアミノ基は、ホルミルアミノ基、炭素数2〜30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、又は、炭素数7〜30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基が好ましい。アシルアミノ基の例には、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基などを挙げることができ、これらの中でもアセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基が好ましい。
【0082】
アミノカルボニルアミノ基は、炭素数1〜30の置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基が好ましく、炭素数1〜15の置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基が更に好ましい。アミノカルボニルアミノ基の例には、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基などを挙げることができ、これらの中でもN,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基が好ましい。なお、この基における「アミノ」の用語は、前述のアミノ基における「アミノ」と同じ意味である。
【0083】
脂肪族オキシカルボニルアミノ基(代表としてアルコキシカルボニルアミノ基)は、炭素数2〜30が好ましく、炭素数2〜15が更に好ましく、置換基を有してもよい。例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基などを挙げることができ、これらの中でもメトキシカルボニルアミノ基が好ましい。
【0084】
アリールオキシカルボニルアミノ基は、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましく、炭素数7〜15の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が更に好ましい。アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基などを挙げることができる。置換基を有してもよいフェニルオキシカルボニルアミノ基が好ましい。
【0085】
スルファモイルアミノ基は、炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイルアミノ基が好ましく、炭素数0〜10の置換又は無置換のスルファモイルアミノ基が更に好ましい。スルファモイルアミノ基の例には、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基などを挙げることができ、これらの中でもN,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基が好ましい。
【0086】
脂肪族(代表としてアルキル)又はアリールスルホニルアミノ基は、炭素数1〜30の置換若しくは無置換の脂肪族スルホニルアミノ基(代表としてアルキルスルホニルアミノ基)、又は、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルホニルアミノ基)が好ましい。例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基などを挙げることができ、これらの中でも置換基を有してもよいフェニルスルホニルアミノ基が好ましい。
【0087】
脂肪族チオ基(代表としてアルキルチオ基)は、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルチオ基が好ましく、炭素数1〜15の置換又は無置換のアルキルチオ基が更に好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基などを挙げることができ、これらの中でもメチルチオ基が好ましい。
【0088】
アリールチオ基は、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールチオ基が好ましく、炭素数6〜12の置換又は無置換のアリールチオ基が更に好ましい。アリールチオ基の例には、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基などを挙げることができ、これらの中でも置換基を有してもよいフェニルチオ基が好ましい。
【0089】
スルファモイル基は、炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイル基が好ましく、炭素数0〜15の置換又は無置換のスルファモイル基が更に好ましい。スルファモイル基の例には、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基などを挙げることができ、これらの中でもN−エチルスルファモイル基が好ましい。
【0090】
脂肪族(代表としてアルキル)又はアリールスルフィニル基は、炭素数1〜30の置換若しくは無置換の脂肪族スルフィニル基(代表としてアルキルスルフィニル基)、又は、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールスルフィニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルフィニル基)が好ましい。例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基などを挙げることができ、これらの中でも置換基を有してもよいフェニルスルフィニル基が好ましい。
【0091】
脂肪族(代表としてアルキル)又はアリールスルホニル基は、炭素数1〜30の置換若しくは無置換の脂肪族スルホニル基(代表としてアルキルスルホニル基)、又は、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールスルホニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルホニル基)が好ましい。例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル基などを挙げることができ、これらの中でも置換基を有してもよいフェニルスルホニル基が好ましい。
【0092】
アシル基は、ホルミル基、炭素数2〜30の置換若しくは無置換の脂肪族カルボニル基(代表としてアルキルカルボニル基)、炭素数7〜30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルカルボニル基)、又は、炭素数4〜30の置換若しくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基が好ましい。例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニル基などを挙げることができ、これらの中でもアセチル、ピバロイル置換基を有してもよいフェニルカルボニル基、が好ましい。
【0093】
アリールオキシカルボニル基は、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基が好ましく、炭素数7〜15の置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基が更に好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基などを挙げることができる。好ましくは置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基である。
【0094】
脂肪族オキシカルボニル基(代表としてアルコキシカルボニル基)は、炭素数2〜30が好ましく、炭素数2〜15が更に好ましく、置換基を有してもよい。例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル基などを挙げることができ、これらの中でもメトキシカルボニル基が好ましい。
【0095】
カルバモイル基は、炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイル基が好ましく、炭素数1〜15の置換又は無置換のカルバモイル基が更に好ましい。カルバモイル基の例には、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基などを挙げることができ、これらの中でもN,N−ジメチルカルバモイル基が好ましい。
【0096】
アリールもしくはヘテロ環アゾ基としては、炭素数3〜30が好ましく、炭素数3〜15が更に好ましい。例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ基などを挙げることができ、これらの中でもフェニルアゾ基が好ましい。
【0097】
イミド基として、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基などを挙げることができ、これらの中でもN−フタルイミド基が好ましい。
【0098】
これらに加え、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、解離性基(例えばスルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基)やエチレン性不飽和基を有する置換基が挙げられる。
【0099】
これらの各基はさらに置換基を有してもよく、このような置換基としては、上述の置換基が挙げられる。
【0100】
は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点から、好ましくは置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基であり、より好ましくは置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−チエニル基であり、最も好ましくは、無置換のアルキル基、置換または無置換のフェニル基である。
【0101】
は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点から、好ましくはシアノ基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のアリールオキシカルボニル基であり、より好ましくはシアノ基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基であり、最も好ましくはシアノ基である。
【0102】
は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点から、好ましくは置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアシル基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のアリールオキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、ヘテロ環基であり、より好ましくは置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアシル基であり、最も好ましくは置換または無置換のアルキル基である。
【0103】
及びRは各々独立に、効果的に本発明の効果を奏しうる観点から、好ましくは水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のアシル基であり、より好ましくは、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基であり、最も好ましくは置換又は無置換のアルキル基である。
【0104】
一般式(1)で表される色素の残基における好ましい置換基の組み合わせについては、これらの置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である色素残基が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である色素残基がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である色素残基が最も好ましい。
【0105】
<一般式(M)で表される化合物>
次に、一般式(M)で表される色素化合物(モノマー染料)について説明する。
一般式(M)で表される化合物は、一般式(1)で表される特定アゾ色素化合物に由来する色素残基を有しており、かつ同一分子内にpKaが10以下の酸基を少なくともひとつ有することを特徴とするアゾ色素化合物である。
【0106】
【化14】



【0107】
一般式(M)中、RM1、RM2、及びRM3は各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、L、及びLは各々独立に、単結合、又は2価の連結基を表し、AはpKaが10以下の酸基を表し、Dは前記一般式(1)から水素原子をn+m個取り除いた残基を表し、nは0〜10の整数を表し、mは1〜10の整数を表す。
【0108】
一般式(M)において、RM1、RM2、及びRM3は各々独立に、水素原子または1価の置換基を表す。RM1、RM2、及びRM3における1価の置換基としては、例えば炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15)のアルキル基、炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜15)のアリール基、炭素数3〜30(好ましくは炭素数3〜15)のヘテロ環基、シアノ基、炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15)のアシル基、炭素数7〜30(好ましくは炭素数7〜15)のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15)の脂肪族オキシカルボニル基、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15)のカルバモイル基、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15)の脂肪族オキシ基、炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜15)のアリールオキシ基、炭素数0〜30(好ましくは炭素数3〜15)のアミノ基(アルキルアミノ基、アニリノ基およびヘテロ環アミノ基を含む)、があげられ、それぞれの基はさらに置換基を有していてもよい。
【0109】
一般式(M)において、L、及びLは各々独立に、単結合、または2価の連結基を表す。ここで表す2価の連結基としては、例えば炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15)のアルキレン基(例:エチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、1,4−ブチレン)、炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15)のアルケニレン基(例:エテニレン、プロペニレン)、炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15)のアルキニレン基(例エチニレン、1,3−プロピニレン)、炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜15)のアリーレン基(例:フェニレンやナフチレン)、炭素数3〜30(好ましくは炭素数3〜15)の2価のヘテロ環基(例:6−クロロ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル基、ピリミジン−2,4−ジイル基、キノキサリン−2,3−ジイル基)、−O−、−CO−、−NR−(Rは水素原子または炭素数1〜30のアルキルまたはアリール基)、−S−、−SO−、−SO−またはこれらの組み合わせでできる総炭素数が0〜30(好ましくは総炭素数0〜10)の2価の置換基(例:o−キシリレン、m―キシリレン、p−キシリレン)があげられ、それぞれの基はさらに置換基を有していてもよい。
【0110】
一般式(M)において、AはpKaが10以下の酸基を表す。ここで表す酸基としては、例えばカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、四級アンモニウム基、フェノール基、チオール基、カルボニル基があげられ、それぞれの基はさらに置換基を有していてもよい。
【0111】
M1、RM2、及びRM3は各々独立に、効果的に本発明の効果を奏しうる観点から、好ましくは水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基であり、より好ましくは水素原子、置換または無置換のアルキル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0112】
は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点から、好ましくは単結合、置換又は無置換の炭素数2〜8のアルキレン、キシリレン、または−CO−であり、より好ましくは置換又は無置換の炭素数3〜6のアルキレン、p−キシリレン、m−キシリレン、−CO−であり、最も好ましくはp−キシリレン、−CO−である。
【0113】
は、効果的に本発明の効果を奏しうる観点から、好ましくは単結合、置換又は無置換の炭素数2〜20のアルキレン、またはキシリレンであり、より好ましくは置換又は無置換の炭素数2〜15のアルキレン、p−キシリレン、m−キシリレンであり、最も好ましくは無置換の炭素数2〜10のアルキレンまたはp−キシリレンである。
【0114】
Aは、効果的に本発明の効果を奏しうる観点から、好ましくはカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基であり、より好ましくはカルボキシル基、リン酸基であり、最も好ましくはカルボキシル基である。
【0115】
残基Dが有する置換基としては、効果的に本発明の効果を奏しうる観点から、好ましくは一般式(1)の好ましい置換基と同じである。一般式(1)で表される色素から水素原子が取り除かれて残基Dとなるときの、取り除かれる水素原子の位置はいずれであってもよいが、好ましくは、R、R、R、及びRにおける水素原子であり、より好ましくはR、R、及びRにおける水素原子であり、最も好ましくはR、及びRにおける水素原子である。
【0116】
前記一般式(M)におけるmとしては、1〜8が好ましく、1〜6が更に好ましく、1〜4が特に好ましい。
前記一般式(M)におけるnとしては、0〜8が好ましく、0〜6が更に好ましく、0〜4が特に好ましい。
【0117】
前記一般式(M)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、これらの置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0118】
効果的に本発明の効果を奏しうる観点から、好ましくは、RM1、RM2、及びRM3が水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基であり、Lが単結合、置換又は無置換の炭素数2〜8のアルキレン、キシリレン、または−CO−であり、Lが単結合、置換又は無置換の炭素数2〜20のアルキレン、またはキシリレンであり、Aがカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基であり、mが1〜8であり、nが0〜8であり、残基として一般式(1)中のRが置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基であり、Rがシアノ基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のアリールオキシカルボニル基であり、Rが置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアシル基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のアリールオキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、置換または無置換のヘテロ環基であり、R及びRが水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のアシル基である組み合わせである。
【0119】
効果的に本発明の効果を奏しうる観点から、より好ましくは、RM1、RM2、及びRM3が水素原子、置換または無置換のアルキル基であり、Lが置換又は無置換の炭素数3〜6のアルキレン、p−キシリレン、m−キシリレン、−CO−であり、Lが置換又は無置換の炭素数2〜15のアルキレン、p−キシリレン、m−キシリレンであり、Aがカルボキシル基、リン酸基であり、mが1〜6であり、nが0〜6であり、残基として一般式(1)中のRが置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−チエニル基であり、Rがシアノ基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基であり、Rが置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアシル基であり、R及びRが置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基である組み合わせである。
【0120】
効果的に本発明の効果を奏しうる観点から、最も好ましくは、RM1、RM2、及びRM3が水素原子であり、Lがp−キシリレン、−CO−であり、Lが無置換の炭素数2〜10のアルキレンまたはp−キシリレンであり、Aがカルボキシル基であり、mが1〜4であり、nが0〜4であり、残基として一般式(1)中のRが無置換のアルキル基、置換または無置換のフェニル基であり、Rがシアノ基であり、Rが置換または無置換のアルキル基であり、R及びRが置換又は無置換のアルキル基である組み合わせである。
【0121】
<一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物>
前記一般式(1)で表される化合物は、一般式(1)中のR〜Rで表される置換基として高分子化合物由来の基が結合してもよく、下記一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物であることを特徴とするアゾ色素高分子化合物であることも好ましい様態である。
一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物(ポリマー型染料)は、一般式(1)で表される化合物と同様に、カップリング成分がアミノチアゾールであり、かつジアゾ成分がイミダゾールであることを特徴とし、かつ該色素から水素原子を1つ取り除いた残基を側鎖に有する繰り返し単位を少なくとも1種有する高分子化合物であることを特徴とするアゾ色素高分子化合物である。
特定アゾ色素化合物の中でも、下記一般式(P)で表される繰り返し単位を含むアゾ色素高分子化合物で表される化合物は、特に有機溶剤に対する溶解性、耐熱性、耐光性が高く、経時安定性、及び硬化後の耐溶剤性に優れた着色硬化性組成物を得ることができる。
【0122】
【化15】



【0123】
一般式(P)中、RP1、RP2、及びRP3は各々独立に、水素原子、または1価の置換基を表し、Dは前記一般式(1)から水素原子を1つ取り除いた残基を表す。
【0124】
一般式(P)において、RP1、RP2、およびRP3は各々独立に、水素原子または1価の置換基を表す。RP1、RP2、およびRP3における1価の置換基としては、例えばハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基(本明細書では、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む飽和脂肪族基を意味する。)、炭素数2〜30のアルケニル基(本明細書では、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む二重結合を有する不飽和脂肪族基を意味する。)、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数3〜30のヘテロ環基、シアノ基、炭素数1〜30の脂肪族オキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、炭素数2〜30のアシルオキシ基、炭素数1〜30のカルバモイルオキシ基、炭素数2〜30の脂肪族オキシカルボニルオキシ基、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数0〜30のアミノ基(本明細書では、脂肪族アミノ基、アリールアミノ基およびヘテロ環アミノ基を含む。)、炭素数2〜30のアシルアミノ基、炭素数1〜30のアミノカルボニルアミノ基、炭素数2〜30の脂肪族オキシカルボニルアミノ基、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニルアミノ基、炭素数0〜30のスルファモイルアミノ基、炭素数1〜30の脂肪族もしくはアリールスルホニルアミノ基、炭素数1〜30の脂肪族チオ基、炭素数0〜30のスルファモイル基、炭素数1〜30の脂肪族もしくはアリールスルフィニル基、炭素数1〜30の脂肪族もしくはアリールスルホニル基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜30の脂肪族オキシカルボニル基、炭素数1〜30のカルバモイル基、炭素数3〜30のアリールもしくはヘテロ環アゾ基、イミド基があげられ、それぞれの基は、さらに置換基を有していてもよい。これら置換基の具体例等は、一般式(1)におけるR、R、およびRの場合と同様である。
【0125】
P1、RP2、およびRP3は各々独立に、効果的に本発明の効果を奏しうる観点から、好ましくは水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のアシル基であり、より好ましくは、水素原子又は無置換のアルキル基であり、最も好ましくは水素またはメチル基である。
【0126】
残基Dの置換基としては、効果的に本発明の効果を奏しうる観点から、好ましくは一般式(1)の好ましい置換基と同じである。一般式(1)で表される色素から水素原子が取り除かれて残基Dとなるときの、取り除かれる水素原子の位置はいずれであってもよいが、好ましくは、R、R、R、及びRにおける水素原子であり、より好ましくはR、R、及びRにおける水素原子であり、最も好ましくはR、及びRにおける水素原子である。
【0127】
一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物の好ましい態様は、一般式(P)で表される繰り返し単位と、酸基を有する繰り返し単位と、を有する共重合高分子の色素化合物である。該色素化合物が酸基を有する繰り返し単位を有することで、フォトリソ法による着色パターン形成が容易になる。
【0128】
酸基を有する繰り返し単位として使用する共重合成分のモノマーの例としては、カルボキシル基を有するビニルモノマーやスルホン酸基を有するビニルモノマーなどが挙げられる。
カルボキシル基を有するビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシル基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマーを用いてもよい。なお、これらの中では、共重合性やコスト、溶解性などの観点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0129】
また、スルホン酸基を有するビニルモノマーとしては、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられ、リン酸基を有するビニルモノマーとして、リン酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル)、リン酸モノ(1−メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル)などが挙げられる。
【0130】
本発明における一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物は、上述のような酸基を有するモノマーに由来する繰り返し単位を含むことが好ましい。このような繰り返し単位を含むことにより、未露光部の現像除去性に優れる。
【0131】
本発明における一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物は、酸基を有するモノマーに由来する繰り返し単位を、1種のみ含むものであってもよいし、2種以上を含んでもよい。
一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物の酸価は、好ましくは25mgKOH/g〜200mgKOH/gであり、特に好ましくは50mgKOH/g〜200mgKOH/gである。即ち、現像液中での析出物の生成抑制という点では、酸価は25mgKOH/g以上であることが好ましい。さらに、顔料の1次粒子の凝集体である2次凝集体の生成を効果的に抑制、あるいは、2次凝集体の凝集力を効果的に弱めるためには、酸価は25mgKOH/g〜200mgKOH/gであることが好ましい。
なお、酸価は電位差法(溶媒テトラヒドロフラン/水=54/6(体積比)、滴定液 0.01N水酸化ナトリウム水溶液(酸価))により決定した。
【0132】
一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物には、その効果を損なわない範囲において、更に、共重合可能な他の構造のビニルモノマーに由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0133】
ここで使用可能なビニルモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、スチレン類、(メタ)アクリロニトリルなどが好ましい。このようなビニルモノマーの具体例としては、例えば以下のような化合物が挙げられる。なお、本明細書において「アクリル、メタクリル」のいずれか或いは双方を示す場合「(メタ)アクリル」と記載することがある。
【0134】
(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチルなどが挙げられる。
【0135】
クロトン酸エステル類の例としては、クロトン酸ブチル、及びクロトン酸ヘキシル等が挙げられる。
ビニルエステル類の例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、及び安息香酸ビニルなどが挙げられる。
マレイン酸ジエステル類の例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、及びマレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
フマル酸ジエステル類の例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、及びフマル酸ジブチルなどが挙げられる。
イタコン酸ジエステル類の例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、及びイタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0136】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミドなどが挙げられる。
【0137】
ビニルエーテル類の例としては、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、及びメトキシエチルビニルエーテルなどが挙げられる。
スチレン類の例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、及びα−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0138】
本発明における一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物は、分子中に一般式(P)で表される繰り返し単位を、一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物の全質量中に20質量%〜99.5質量%含むことが好ましく、より好ましくは40質量%〜95質量%含むことである。
また、本発明における一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物は、分子中に酸基を有する繰り返し単位を、一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物の全質量中に1質量%〜80質量%含むことが好ましく、より好ましくは3質量%〜50質量%含むことである。
一般式(P)で表される繰り返し単位及び酸基を有する繰り返し単位がこの範囲内にあると、薄膜における分光特性とアルカリ現像性の性能が良好である。
【0139】
本発明における一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物の好ましい分子量は、重量平均分子量(Mw)で5000〜100000の範囲、数平均分子量(Mn)で2500〜50000の範囲であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)で10000〜50000の範囲、数平均分子量(Mn)で5000〜30000の範囲であることがより好ましい。
特に、重量平均分子量(Mw)で10000〜30000の範囲、数平均分子量(Mn)で5000〜15000の範囲であることが最も好ましい。着色硬化性組成物によりカラーフィルタを製造する際の現像性の観点からは、重量平均分子量(Mw)は30000以下であることが好ましい
なお、本発明において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPC法によりポリスチレン換算値として測定された値をいう。
【0140】
以下に、一般式(M)で表される色素化合物、及び、一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物の具体例を示すが、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
【0141】
(一般式(M)で表される色素化合物の具体例)
【0142】
【化16】



【0143】
【化17】



【0144】
【化18】



【0145】
【化19】



【0146】
【化20】



【0147】
(一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物の具体例)
下記に示す例示化合物(P1)〜(P100)のAおよびBは、それぞれ下記に示す構造の繰り返し単位(A−1)〜(A−20)および(B−1)〜(B〜27)である。
下記の例示化合物(P1)〜(P100)の数平均分子量(Mn)は3,000〜25,000の範囲であり、重量平均分子量(Mw)は、3,500〜30,000の範囲であり、分子量分布指数(Mw/Mn)は1.30〜3.00の範囲である。
【0148】
【化21】



【0149】
【化22】

【0150】
【化23】

【0151】
【化24】

【0152】
【表1】

【0153】
【表2】

【0154】
【表3】

【0155】
【表4】

【0156】
これらのアゾ色素化合物は、米国特許第5,789,560号明細書などに記載の方法に準じて容易に合成することができる。すなわち本発明における前記一般式(1)で表されるアゾ色素化合物の合成方法は、一般的に行われているジアゾカップリング、により合成することができる。
具体的には、下記一般式(A)で表される5−アミノイソチアゾール誘導体のアミノ基をジアゾ化剤で、下記一般式(B)のジアゾニウム塩に変換し、該ジアゾニウム塩と下記一般式(C)で表される2−アミノチアゾール誘導体とカップリング反応させ、下記一般式(D)で表される化合物を容易に合成できる。具体的には実施例で例示する。
また、一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物の調製は、前記一般式(1)で表されるアゾ色素化合物を通常の方法で重合して合成できる。
【0157】
【化25】



【0158】
一般式(A)中、R、及びRには各々独立に水素原子または1価の置換基を表す。また、R、およびRは互いに結合して環を形成していてもよい。R、及びRに係る1価の置換基の具体例は、一般式(1)の場合と同様である。
【0159】
【化26】



【0160】
一般式(B)中、R、及びRは、一般式(A)におけるR、およびRと同義である。Xはジアゾニウム塩の対アニオンである。
【0161】
【化27】



【0162】
一般式(C)中、R、R、及びRは各々独立に水素原子または1価の置換基を表す。また、R、およびRは互いに結合して環を形成していてもよい。R、R、及びRに係る1価の置換基の具体例は、一般式(1)の場合と同様である。
【0163】
【化28】



【0164】
一般式(D)中、R、R、R、R、及びRは一般式(A)〜(C)のR、R、R、R、及びRと同義である。
【0165】
一般式(A)で表される化合物は、従来公知方法で合成することができる(例えば、J.Chem.Soc.Perkin Trans.1(1984年)2巻147〜153頁など)。一般式(C)で表される化合物は、従来公知方法で合成することができる(例えば、J.Hetelocycle.Chem(1975年)883〜887頁など)。
【0166】
一般式(M)で表される色素化合物、及びその互変異性体、並びに、一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物、及びその互変異性体の着色硬化性組成物中における総濃度は、分子量及びモル吸光係数によって異なるが、該組成物の全固形成分に対して、0.5〜80質量%が好ましく、0.5〜70質量%がより好ましく、1〜70%質量%が特に好ましい。
【0167】
本発明の着色硬化性組成物においては、特定アゾ色素化合物と他の構造の色素を併用してもよい。他の構造の色素としては、特に制限はなく、従来カラーフィルタ用途として用いられている公知の色素を使用できる。例えば、特開2002−14220号公報、特開2002−14221号公報、特開2002−14222号公報、特開2002−14223号公報、米国特許第5,667,920号明細書、米国特許第5,059,500号明細書、等に記載の色素である。
化学構造としては、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、アンスラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系等の染料が使用できる。
他の構造の色素の着色硬化性組成物中における含有量は、着色硬化性組成物中の固形分に対して0.1質量%〜90質量%が好ましく、1.0質量%〜80質量%がさらに好ましく、2.0質量%〜70質量%が特に好ましい。
【0168】
<着色硬化性組成物>
次に、本発明の着色硬化性組成物について説明する。
本発明の着色硬化性組成物は、一般式(M)で表される色素化合物、及びその互変異性体からなる群より選択される少なくとも1種、又は、一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物、及びその互変異性体からなる群より選択される少なくとも1種と、重合性化合物と、を含有する。
重合性化合物は、400nm以下のUV光による露光または熱により、重合、または架橋し、着色硬化性組成物を現像液に不溶化させる。フォトリソ法においては、露光部と未露光部とが区別されパターン成形することができる。
またインクジェット法においては、硬化させた着色パターンを得ることができる。
【0169】
着色硬化性組成物には、さらに硬化反応の速度を大きくするため、ラジカルや酸を発生する重合開始剤をさらに含有することが好ましい。インクジェット法で画素を形成するときは熱で硬化させることもできるので重合開始剤は必須ではないが、着色硬化性組成物に使用することが好ましい。
重合開始剤の着色硬化性組成物中における含有量は、重合性化合物の固形分に対して0.01〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%が特に好ましい。該含有量が前記範囲内であると重合が良好に進み、また、良好な膜強度が得られる。
さらに着色硬化性組成物には、バインダー、界面活性剤、その他の添加物を使用することができる。
【0170】
<重合性化合物>
重合性化合物としては、常圧下で100℃以上の沸点を有し、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物が好ましく、3つ以上有する化合物がさらに好ましい。その例としては、特開2008−292970号公報の段落〔0254〕〜〔0257〕、特開2009−13206号公報の段落〔0054〕〜〔0068〕記載の化合物などが挙げられ、(メタ)アクリル系モノマー、エポキシ系モノマー、およびオキセタニル系モノマーから選択される1種以上を含有することが好ましい。
【0171】
特に、分子中にアクリロイル基を3個以上有するアクリル化合物が好ましく、例えばトリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトンを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート化したものなどが挙げられる。
【0172】
重合性化合物の着色硬化性組成物中における含有量は、着色硬化性組成物中の固形分に対して0.1質量%〜90質量%が好ましく、1.0質量%〜80質量%がさらに好ましく、2.0質量%〜70質量%が特に好ましい。
本発明の第一の着色硬化性組成物においては、一般式(M)のnが1以上であれば一般式(M)で表される色素化合物、及びその互変異性体は重合性化合物として機能する。この場合の、一般式(M)で表される色素化合物、及びその互変異性体の合計量と、一般式(M)で表される色素化合物、及びその互変異性体以外の重合性化合物との含有比率は、質量基準で6:1〜1:6が好ましく、5:1〜1:2が更に好ましい。
着色硬化性組成物を特にインクジェット用インクとして用いる場合には、着色硬化性組成物の固形分中の30質量%〜80質量%が重合性化合物であることが好ましく、40質量%〜80質量%がより好ましい。重合性化合物の使用量が上記範囲内であれば、画素部の重合が十分となるため、画素部の膜強度の不足に起因する傷の発生が起こりにくくなる。さらには、透明導電膜を付与する際にクラックやレチキュレーションが発生しにくくなったり、配向膜を設ける際の耐溶剤性が向上したり、電圧保持率を低下させない等の効果が得られる。
ここで、配合割合を特定するための着色硬化性組成物の固形分とは、溶剤を除く全ての成分を含み、液状の重合性化合物なども固形分に含まれる。
以下フォトリソ法で用いられる着色硬化性組成物について説明する。フォトリソ法による着色パターン形成に用いられる本発明の着色硬化性組成物は、カラーレジスト用組成物として好適である。
【0173】
<光重合開始剤>
本発明の着色硬化性組成物には、光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤は重合性化合物を重合させられるものであれば特に限定されないが、特性、開始効率、吸収波長、入手性、コスト等の観点で選ばれることが好ましい。
光重合開始剤の例としては、特開2008−292970号公報の段落〔0260〕〜〔0271〕に記載の化合物が挙げられる。
【0174】
上記光重合開始剤の着色硬化性組成物中における含有量は、重合性化合物の固形分に対して0.01〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%が特に好ましい。該含有量が前記範囲内であると重合が良好に進み、また、良好な膜強度が得られる。
【0175】
<バインダー>
また、着色硬化性組成物には、バインダーを含有することが好ましい。前記バインダーとしては、アルカリ可溶性であれば特には限定されないが、耐熱性、現像性、入手性等の観点から選ばれることが好ましい。
アルカリ可溶性のバインダーとしては、線状有機高分子重合体で、有機溶剤に可溶性で、弱アルカリ水溶液で現像できるものが好ましい。このような線状有機高分子重合体としては、特開2008−292970号公報の〔0227〕〜〔0234〕段落に記載の重合体が挙げられる。
バインダーの着色硬化性組成物中における含有量は、該着色硬化性組成物中の固形分に対して0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜40質量%がさらに好ましく、0.1質量%〜30質量%が特に好ましい。
【0176】
<架橋剤>
架橋剤を着色硬化性組成物に加えることも好ましく、架橋剤としては、架橋反応によって膜硬化を行なえるものであれば特に限定はなく、例えば、特開2008−292970号公報の段落〔0237〕〜〔0253〕に記載の架橋剤が挙げられる。
架橋剤を含有する場合、着色硬化性組成物の全固形分に対して、1〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、7〜30質量%が特に好ましい。該含有量が前記範囲内であると、充分な硬化度と未露光部の溶出性とを保持できる。架橋剤が不足すると露光部の硬化度が不足することがある。また架橋剤が過剰になると未露光部の溶出性が著しく低下することがある。
【0177】
<溶剤>
本発明の着色硬化性組成物を調製する際には、一般に溶剤を含有することができる。使用される溶剤は、該組成物の各成分の溶解性や着色硬化性組成物の塗布性を満足すれば基本的に特には限定されないが、特にバインダーの溶解性、塗布性、安全性を考慮して選ばれることが好ましい。
前記溶剤の例としては、特開2008−292970号公報の段落〔0272〕記載の溶剤が挙げられる。
中でも、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等がより好ましい。
【0178】
<各種添加物>
本発明の着色硬化性組成物には、必要に応じて各種添加物、例えば充填剤、上記以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を配合することかできる。これらの例としては、特開2008−292970号公報の段落〔0274〕〜〔0276〕に記載の添加物を挙げることができる。
【0179】
<着色硬化性組成物の調製方法>
本発明の着色硬化性組成物の調製に際しては、組成物の上述の各成分を一括配合しても良いし、各成分を溶剤に溶解した後に逐次配合しても良い。また、配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。全成分を同時に溶剤に溶解して組成物を調製してもよいし、必要に応じては各成分を適宜2つ以上の溶液としておいて、使用時(塗布時)にこれらの溶液を混合して組成物として調製してもよい。
上記のようにして調製された組成物は、好ましくは孔径0.01〜3.0μm、より好ましくは孔径0.05〜0.5μm程度のフィルタなどを用いて濾別した後、使用に供することもできる。
【0180】
本発明の着色硬化性組成物は、液晶表示装置(LCD)や固体撮像素子(例えば、CCD、CMOS等)に用いられるカラーフィルタなどの着色パターン形成用として好適に用いることができる。特に、CCD、及びCMOS等の固体撮像素子用のカラーフィルタ形成用として好適に用いることができる。
本発明の着色硬化性組成物は、着色パターンが微少サイズで薄膜に形成され、しかも良好な矩形の断面プロファイルが要求される固体撮像素子用のカラーフィルタの形成に特に好適である。
【0181】
具体的には、カラーフィルタを構成する画素パターンサイズ(基板法線方向からみた画素パターンの辺長)が2μm以下である場合(例えば0.5〜2.0μm)は、着色剤量が増大したりして、線幅感度が悪くなり、DOFマージンが狭くなる結果、パターン形成性が損なわれやすい。これは、特に画素パターンサイズが1.0〜1.7μm(更に1.2〜1.5μm)の場合に顕著になる。また、厚み1μm以下の薄膜である場合、着色剤を除くフォトリソ性に寄与する成分の膜中の量が相対的に減少し、着色剤量の増大で他成分の量は更に減少して、低感度化し、低露光量領域ではパターンが剥離しやすくなる。この場合、ポストベーク等の熱処理を施した際に熱ダレを起こし易い。これらは、特に膜厚が0.005μm〜0.9μm(更に0.1μm〜0.7μm)の場合に顕著である。
一方、本発明の着色硬化性組成物を用いれば、上記のような2μm以下の画素パターンサイズでも、パターン形成に優れ、良好な断面プロファイルを有するカラーフィルタを作製することができる。
【0182】
<着色硬化性組成物を用いたパターン形成方法>
本発明の着色硬化性組成物を用いて、フォトリソ法でカラーフィルタを形成する方法は、着色硬化性組成物を支持体上に塗布して着色層を形成する工程と、該着色層に対してマスクを介してパターン露光する工程と、前記パターン露光後に現像により着色パターンを形成する工程と、を含むことを特徴とし、詳細には例えば、特開2008−292970号公報の〔0277〕〜〔0284〕記載の方法が挙げられる。
【0183】
−後硬化工程−
本発明においては、上記した現像により着色パターンを形成する工程の後に、該パターンをさらに硬化させる後硬化工程を実施することが好ましい。
後硬化工程は、加熱及び/又は露光(紫外線照射)によって行うが、得られた着色パターンをさらに硬化させ、次色のパターン形成のための着色層を形成する工程等での、着色パターンの溶解等を防止したり、得られたカラーフィルタの画素の耐溶剤性を向上したりすることができる。
後硬化工程は、紫外線照射によることが好ましい。
【0184】
−後硬化工程 紫外線照射−
後露光による着色パターンの硬化に用いる紫外線照射工程は、前記パターン形成工程で現像処理を行なった後の着色パターンに、現像前の露光処理における露光量[mJ/cm]の10倍以上の照射光量[mJ/cm]の紫外光(UV光)を照射する。パターン形成工程での現像処理と後述の加熱処理との間に、現像後の着色パターンにUV光を所定時間、照射することにより、後に加熱された際に色移りするのを効果的に防止できる。本工程での照射光量が現像前の露光処理における露光量の10倍未満であると、着色パターン(着色画素)間や上下層間における色移りを防止できないことがある。
中でも、UV光の照射光量は、パターン形成工程での露光時の露光量の12倍以上200倍以下が好ましく、15倍以上100倍以下がより好ましい。
【0185】
後露光は、g線、h線、i線、KrF、ArF、UV光、電子線、X線等により行うことができるが、g線、h線、i線、UV光が好ましく、特に、UV光が好ましい。UV光の照射(UVキュア)を行う際は、20℃以上50℃以下(好ましくは25℃以上40℃以下)の低温で行うことが好ましい。UV光の波長は、200〜300nmの範囲の波長を含んでいることが好適である。照射時間としては、10〜180秒、好ましくは20〜120秒、更に好ましくは30〜60秒である。
【0186】
UV光を照射する光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、DEEP UVランプなどを用いることができる。中でも、照射される紫外光中に275nm以下の波長光を含み、かつ275nm以下の波長光の照射照度[mW/cm]が紫外光中の全波長光の積分照射照度に対して5%以上である光を照射できるものが好ましい。紫外光中の275nm以下の波長光の照射照度を5%以上とすることで、着色画素間や上下層への色移りの抑制効果及び耐光性の向上効果をより効果的に高めることができる。この点から、前記パターン形成工程での露光に用いられるi線等の輝線などの光源と異なる光源、具体的には高圧水銀灯、低圧水銀灯などを用いて行なうことが好ましい。中でも、前記同様の理由から、紫外光中の全波長光の積分照射照度に対して7%以上が好ましい。また、275nm以下の波長光の照射照度の上限は、25%以下が望ましい。
【0187】
なお、積分照射照度とは、分光波長ごとの照度(単位面積を単位時間に通過する放射エネルギー;[mW/m])を縦軸とし、光の波長[nm]を横軸とした曲線を引いた場合に照射光に含まれる各波長光の照度の和(面積)をいう。
【0188】
後露光の紫外線照射工程において照射される紫外光における積分照射照度が200mW/cm以上であることが好ましい。積分照射照度が200mW/cm以上であると、着色画素間や上下層への色移りの抑制効果及び耐光性の向上効果をより効果的に高めることができる。中でも、250〜2000mW/cmが好ましく、300〜1000mW/cmがより好ましい。
また後加熱は、ホットプレートやオーブンを用いて、100℃〜300℃で実施することが好ましく、更に好ましくは、150℃〜250℃である。後加熱時間は、30秒〜30000秒が好ましく、更に好ましくは、60秒〜1000秒である。
【0189】
後硬化工程においては、後露光と後加熱は、併用してもよく、この場合はどちらを先に行ってもよいが、後加熱に先立って、後露光を実施することが好ましい。後露光で硬化を促進させることにより、後加熱過程で見られるパターンの熱ダレやすそ引きによる形状の変形を抑止するためである。
【0190】
このようにして得られた着色パターンがカラーフィルタにおける画素を構成することになる。複数の色相の画素を有するカラーフィルタの作製においては、前記パターン形成工程(及び必要に応じて硬化工程)を所望の色数に合わせて繰り返すことにより、所望数の色相に構成されたカラーフィルタを作製することができる。
【0191】
次に、インクジェット法で使用される着色硬化性組成物について説明する。インクジェット法による着色パターン形成に用いられる本発明の着色硬化性組成物は、インクジェット用インクとして好適である。
インクジェット用インクとして用いる場合の着色硬化性組成物の構成の特に好ましい態様を下記に示す。
本発明の硬化性着色組成物を、インクジェット用インクとしたときは、インクの保存安定性に優れ、インクの凝集や分解などが抑制される。また、連続的および断続的な吐出の際にも、飛翔曲がり不吐出等の吐出の乱れが生じにくく、吐出安定性に優れ、一定期間休止後の回復性、さらに不吐出等が生じた場合の回復性に優れる。
【0192】
着色硬化性組成物においては、一般式(M)で表される色素化合物、及びその互変異性体、並びに、一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物、及びその互変異性体の着色硬化性組成物中の総含有量が、インク全量に対して、1〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。1質量%未満の場合、カラーフィルタとして必要な光学濃度を達成するために、膜厚が厚くなる場合がある。そのため隔壁であるブラックマトリクスも厚くする必要があり、ブラックマトリクスの形成が困難になるので好ましくない。20質量%を超える場合、インク粘度が高くなり吐出が困難になること、また溶剤への溶解が困難になることがある。
【0193】
<溶剤>
本発明のインクジェット用インクとしての着色硬化性組成物(以下、単に「インクジェット用インク」と称することがある)は、溶剤を含有する。溶剤としては、各成分の溶解性や後述する溶剤の沸点を満足すれば基本的に特に限定されないが、特に後述するバインダーの溶解性、塗布性、安全性を考慮して選ばれることが好ましい。溶剤の具体例としては、特開2009−13206号公報の段落〔0030〕〜〔0040〕に記載の溶剤を挙げることが出来る。
【0194】
本発明のインクジェット用インク中の該溶剤の含有量は、インク組成物全量に対して、30〜90質量%が好ましく、50〜90質量%がさらに好ましい。30質量%以上であると1画素内に打滴されるインク量が保たれ、画素内でのインクの濡れ広がりが良好である。また、90質量%以下であると、インク中の機能膜(例えば画素など)を形成するための溶剤以外の成分量を所定量以上に保つことができる。これより、カラーフィルタを形成する場合には、1画素当たりのインク必要量が多くなり過ぎることがなく、例えば隔壁で区画された凹部にインクジェット法でインクを付与する場合に、凹部からのインク溢れや隣の画素との混色の発生を抑制することができる。
【0195】
本発明のインクジェット用インクは、ノズルに対するインクの吐出性および基板に対する濡れ性の点で、上述した溶剤のうち、沸点の高い溶剤を含有していることが好ましい。沸点の低い溶剤は、インクジェットヘッド上でもすばやく蒸発するため、ヘッド上でのインクの粘度上昇や固形分の析出等を容易に引き起こし、吐出性の悪化を伴う場合が多い。また、インクが基板面に着弾し、基板面上を濡れ拡がる場合も、濡れ拡がりの縁の部分において溶剤が蒸発することでインクの粘度上昇が起こり、ピニング(PINNING)という現象により、濡れ拡がりが抑えられる場合がある。
【0196】
本発明で用いられる溶剤の沸点は、130〜280℃であることが好ましい。130℃より低いと、面内の画素の形状の均一性の点で好ましくない場合がある。280℃より高いと、プリベークによる溶剤除去の点で好ましくない場合がある。なお、溶剤の沸点は、圧力1atmのもとでの沸点を意味し、化合物辞典(Chapman & Hall 社)などの物性値表により知ることができる。これらは1種単独で、または2種以上を併用してもよい。
【0197】
<バインダー>
本発明のインクジェット用インクには、粘度の調整やインク硬度の調整などの目的で、バインダーを入れてもよい。バインダーとしては、それ自体は重合反応性のない樹脂のみから構成されるような単に乾燥固化するバインダー樹脂を用いてもよい。しかしながら、塗工膜に十分な強度、耐久性、密着性を付与するためには、インクジェット法により基板上に画素のパターンを形成後、該画素を重合反応により硬化させることのできるバインダーを用いるのが好ましく、例えば、可視光線、紫外線、電子線等により重合硬化させることができる光硬化性のバインダーや、加熱により重合硬化させることができる熱硬化性のバインダーのような、重合硬化可能なバインダーを用いることができる。
【0198】
<架橋剤>
エポキシ系モノマー(エポキシ基含有モノマー)、熱硬化性バインダー樹脂には、通常、架橋剤を組み合わせて配合することができる。架橋剤としては、エポキシ樹脂技術協会発行の「総説エポキシ樹脂基礎編I」2003年11月19日発行、第3章に記載の硬化剤、促進剤を好適に用いることができ、例えば、多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸を用いることができる。
【0199】
<界面活性剤>
本発明のインクジェット用インクには、さらに界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤の例として、特開平7−216276号公報の段落番号〔0021〕や、特開2003−337424号公報、特開平11−133600号公報に開示されている界面活性剤が、好適なものとして挙げられる。界面活性剤の含有量は、着色硬化性組成物全量に対して5質量%以下が好ましく、0.1〜5質量%が更に好ましい。
【0200】
その他の添加剤としては、特開2000−310706号公報の段落番号〔0058〕〜〔0071〕に記載のその他の添加剤が挙げられる。
インクジェット用インクにおいては、溶剤の含有量はインクジェット用インク全量に対して30〜90質量%が好ましく、50〜85質量%がより好ましい。
【0201】
<インクジェット用インクの製造方法>
本発明のインクジェット用インクの製造には、公知のインクジェット用インクの製造方法を適用することが可能である。例えば、溶剤中に一般式(M)で表される色素化合物、又は、一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物を溶解した後、インクジェット用インクに必要な各成分(例えば重合性化合物やバインダーなど)を溶解させてインクジェット用インクを調製することができる。
【0202】
重合性化合物の溶液を作製する際には、溶剤に対して使用する素材の溶解性が低い場合には、重合性化合物が重合反応を起こさない範囲内で、加熱や超音波処理等の処理を適宜行うことが可能である。
【0203】
一般式(M)で表される色素化合物、又は、一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物を水性媒体に分散させる場合は、特開平11−286637号、特開2001−240763(特願2000−78491)号、特開2001−262039(特願2000−80259)号、特開2001−247788(特願2000−62370)号のように一般式で表される化合物と油溶性ポリマーとを含有する着色微粒子を水性媒体に分散させたり、特開2001−262018(特願2000−78454)号、特開2001−240763(特願2000−78491)号、特開2001−335734(特願2000−203856)号のように高沸点有機溶剤に溶解した各一般式で表される化合物を水性媒体中に分散させてもよい。一般式(M)で表される色素化合物、又は、一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物を水性媒体に分散させる場合の具体的な方法、使用する油溶性ポリマー、高沸点有機溶剤、添加剤およびそれらの使用量は、前記特許文献に記載されたものを好ましく使用することができる。あるいは、各一般式で表される化合物を固体のまま微粒子状態に分散してもよい。分散時には、分散剤や界面活性剤を使用することができる。
【0204】
分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000等)を使用することができる。上記のインクジェット用インクの調製方法については、先述の特許文献以外にも特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号、特開平11−286637号、特開2001−271003(特願2000−87539)号の各公報に詳細が記載されていて、本発明のインクジェット用インクの調製にも利用できる。
【0205】
<インクジェット用インクの物性値>
本発明のインクジェット用インクの物性値としては、インクジェットヘッドで吐出可能な範囲であれば特に限定されないが、吐出時における粘度は安定吐出の観点から、2〜30mPa・sであることが好ましく、2〜20mPa・sがより好ましい。また、装置で吐出する際には、インクジェット用インクの温度を20〜80℃の範囲でほぼ一定温度に保持することが好ましい。装置の温度を高温に設定すると、インクの粘度が低下し、より高粘度のインクを吐出可能となるが、温度が高くなることにより、熱によるインクの変性や熱重合反応がヘッド内で発生したり、インクを吐出するノズル表面で溶剤が蒸発したり、ノズル詰まりが起こりやすくなるため、装置の温度は20〜80℃の範囲が好ましい。
【0206】
なお、粘度は、25℃にインクジェット用インクを保持した状態で、一般に用いられるE型粘度計(例えば、東機産業(株)製E型粘度計(RE−80L)を用いることにより測定される値である。
【0207】
また、インクジェット用インクの25℃の表面張力(静的表面張力)としては、非浸透性の基板に対する濡れ性を向上、吐出安定性の点で、20〜40mN/mが好ましく、20〜35mN/mがより好ましい。また、装置で吐出する際には、インクジェット用インクの温度を20〜80℃の範囲で略一定温度に保持することが好ましく、そのときの表面張力を20〜40mN/mとすることが好ましい。インクジェット用インクの温度を所定精度で一定に保持するためには、インク温度検出手段と、インク加熱または冷却手段と、検出されたインク温度に応じて加熱または冷却を制御する制御手段とを備えていることが好ましい。あるいは、インク温度に応じてインクを吐出させる手段への印加エネルギーを制御することにより、インク物性変化に対する影響を軽減する手段を有することも好適である。
【0208】
上述の表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計FACE SURFACE TENSIOMETER CBVB−A3など)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃、60%RHにて測定される値である。
【0209】
また、インクジェット用インクが基板着弾後に濡れ拡がる形状を適正に保つためには、基板に着弾後のインクジェット用インクの液物性を所定に保持することが好ましい。このためには、基板および/または基板の近傍を所定温度範囲内に保持することが好ましい。あるいは、基板を支持する台の熱容量を大きくするなどにより、温度変化の影響を低減することも有効である。
【0210】
<カラーフィルタおよびその製造方法>
本発明のインクジェット用インクを用いてインクジェット法でカラーフィルタを製造する方法は特に限定されないが、例えば、特開2008−250188号公報の〔0114〕〜〔0128〕段落に記載の方法等を用いることができる。
【0211】
<本発明のカラーフィルタの用途>
本発明のカラーフィルタは、本発明の着色硬化性組成物を用いて形成された着色パターンを有するものであるが、さらに透明導電膜として、酸化インジウムスズ(ITO)層を有していてもよい。ITO層の形成方法としては、例えば、インライン低温スパッタ法や、インライン高温スパッタ法、バッチ式低温スパッタ法、バッチ式高温スパッタ法、真空蒸着法、およびプラズマCVD法などが挙げられ、特にカラーフィルタに対するダメージを少なくするため、低温スパッタ法が好ましく用いられる。
【0212】
本発明のカラーフィルタは、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、液晶プロジェクタ、ゲーム機、携帯電話などの携帯端末、デジタルカメラ、カーナビなどの画像表示デバイス、特にカラー画像表示の用途に特に制限なく好適に適用できる。本発明の画像表示デバイスは、本発明のカラーフィルタを備えていればよい。また、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、内視鏡、携帯電話などに使用されるCCDイメージセンサー,CMOSイメージセンサーなどの固体撮像素子用のカラーフィルタとして好適に用いることができる。特に100万画素を超えるような高解像度のCCD素子やCMOS素子等に好適である。固体撮像素子の構成としては、本発明のカラーフィルタを備え、固体撮像素子として機能する構成であれば限定はないが、例えば、次のような構成が挙げられる。即ち、支持体上に、受光エリアを構成するフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、カラーフィルタ層を設け、次いでマイクロレンズを積層するような構成である。
本発明のカラーフィルタを備えるカメラシステムは、色材の光褪色性の観点から、カメラレンズやIRカット膜がダイクロコートされたカバーガラス、マイクロレンズ等を備えており、その材料の光学特性は、400nm以下のUV光の一部または全部を吸収するものであることが望ましい。また、カメラシステムの構造としては、色剤の酸化褪色を抑止するため、カラーフィルタへの酸素透過性が低減されるような構造になっていることが好ましく、例えば、カメラシステムの一部または全体が窒素ガスで封止されていることが好ましい。
【0213】
以上、本発明の着色硬化性組成物、カラーフィルタおよびその製造方法、ならびにそれを用いる画像表示デバイスや固体撮像素子等について、種々の実施形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は、上記の実施形態には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんのことである。
【実施例】
【0214】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、機器、操作等は本発明の範囲から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り「%」および「部」は、「質量%」および「質量部」を表し、分子量とは重量平均分子量のことを示す。
【0215】
[合成例1]
<比較色素2及び例示化合物P5の合成>
下記の合成スキームに従い、以下に記載の方法で比較色素2及び例示化合物P5を合成した。
【0216】
【化29】



【0217】
<中間体(b)の合成>
チオシアン酸ナトリウム120.5g(1.48モル)とメタノール280mLを加え、内温を55℃まで加温した。ここへ1−クロロピナコロン(a)200g(1.48モル)を30分間かけて滴下し、滴下終了後、内温55℃のまま2時間反応させた。反応終了後、内温を10℃まで冷却し、これに水250mLを加え、10℃で30分間撹拌し、結晶を濾別し中間体(b)の白色結晶を得た。収量218g(収率94%)。質量分析結果:(m/z)=158([M+1]、100%)。
【0218】
<中間体(c)の合成>
中間体(b)15.7g(0.10モル)、トルエン71mL、酢酸6.0g(0.10モル)を加え、内温80℃まで加温した。ここへ4−ヒドロキシピペリジン10.1gを分割添加し、滴下終了後から、内温80℃のまま3時間反応させた。反応終了後、内温を30℃まで冷却し、水50mL、酢酸エチル50mLを加えて、トルエン層を洗浄した。トルエン層から1N塩酸を用いて抽出し(50mL×2回)、抽出液を苛性ソーダで中和し、再度酢酸エチルで抽出した。抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥し、ロータリーエバポレータを用いて濃縮し、中間体(c)を主成分とする淡黄色液体を得た。質量分析結果:(m/z)=240(M、100%)。
【0219】
<中間体(d)の合成>
(ジアゾニウム塩の合成)
5−アミノ−4−シアノ−3−メチル−イソチアゾール11.1g(0.08モル)、リン酸100mLを加え、内温0℃まで冷却した。ここへ亜硝酸ナトリウム6.1g(0.09モル)を分割添加し、内温0℃〜5℃で1時間撹拌した。
(カップリング反応)
別のフラスコに先に得た淡黄色液体、メタノール300mLを加え、内温0℃まで冷却した。ここへ前述のようにして合成したジアゾニウム塩分散液を、内温20℃以下に保ちつつゆっくりと滴下し、滴下終了後から、内温0〜5℃で1時間、室温で1時間反応させた。反応終了後、水300mLを加え、室温で60分撹拌し、結晶を濾別し、温水およびアセトニトリルで洗浄し、中間体(d)の赤色結晶を得た。収量5.0g(収率13%)。質量分析結果:(m/z)=391([M+1]、100%)。
【0220】
<比較色素2の合成>
中間体(d)4.8g(0.0122ミリモル)、無水メタクリル酸13.5g(0.144ミリモル)、ピリジン7.2mL、アセトニトリル20mL、酢酸エチル50mLを加え、室温で3日間反応させた。反応終了後、メタノール/水=1:2混合溶剤を200mL加え、得られた固体を濾別し、メタノール/水=1:2混合溶剤で洗浄した。次にメタノールで加熱溶解し、セライトろ過した後、ろ液をエバポレーターで濃縮した。得られた結晶を濾別し、比較色素2の結晶を得た。収量4.2g(収率74%)。質量分析結果:(m/z)459([M+1)、100%)。比較色素2の酢酸エチル中の吸収スペクトルにおける吸収極大波長は520nmであった。
【0221】
<例示化合物P5の合成>
100mLの三ツ口フラスコに、上記で得られた比較色素2を4.0g(0.0087モル)、メタクリル酸1.00g(0.0116モル)、シクロヘキサノン11.7gを加え、窒素雰囲気下、内温を70℃まで昇温した。内温を70℃に保ったままV−601(商品名/和光純薬工業(株)製)141mgを2時間ごとに計3回添加した。反応終了後、反応液を内温90℃に昇温後、2時間撹拌して未反応のV−601を分解させた。反応液を放冷し、ヘキサン100mLで再沈殿し、例示化合物P5の赤色粉末を得た。収量4.20g(収率80%)。分子量分析結果(GPC):数平均分子量 Mn=22000、重量平均分子量 Mw=44000、分子量分布指数 Mw/Mn=2.0。例示化合物P5の酢酸エチル中の吸収スペクトルにおける吸収極大波長は519nmであった。
【0222】
<例示化合物2、13、15、24、28、31〜33、35〜37、42の合成>
例示化合物2、13、15、24、28、31〜33、35〜37、42は上記合成例に準じた方法で合成した。
また、例示化合物2、13、15、24、28、31〜33、35〜37および42以外の例示化合物に関しても、化学的な見地から、上記合成例に準じた方法で合成することができる
【0223】
<例示化合物P2、P5、P10、P36、P39、P40、P47、P57、P77、P80およびP84の合成>
例示化合物P2、P5、P10、P36、P39、P40、P47、P57、P77、P80およびP84は上記合成法に準じて合成した。また、例示化合物P2、P5、P10、P36、P39、P40、P47、P57、P77、P80およびP84以外のP1〜P100の例示化合物に関しても、化学的な見地から、上記合成例に準じた方法で合成することができる。
【0224】
[実施例1]
(1)レジスト溶液Aの調製(ネガ型)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 5.20部
・シクロヘキサノン 52.6部
・バインダー 30.5部
(メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸/メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル)共重合体(モル比=60:20:20)平均分子量30200(ポリスチレン換算)、41%シクロヘキサノン溶液
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 10.2部
・重合禁止剤(p−メトキシフェノール) 0.006部
・フッ素系界面活性剤(商品名:F−475、DIC(株)製) 0.80部
・光重合開始剤:4−ベンズオキソラン−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(TAZ−107 みどり化学(株)製) 0.58部
を混合して溶解し、レジスト溶液Aを調製した。
【0225】
(2)下塗り層付ガラス基板の作製
ガラス基板(コーニング1737)を0.5%NaOH水で超音波洗浄した後、水洗、脱水ベーク(200℃/20分)を行った。ついで上記(1)で得たレジスト溶液Aを洗浄したガラス基板上に乾燥後の膜厚が2μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、220℃で1時間加熱乾燥させて、下塗り層付ガラス基板を調製した。
【0226】
(3)着色硬化性組成物の調製
・シクロヘキサノン 80部
・重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 14.0部
・重合禁止剤:p−メトキシフェノール 0.006部
・フッ素系界面活性剤(商品名:F−475、DIC(株)製) 0.80部
・光重合開始剤(TAZ−107 みどり化学(株)製) 2.0部
・例示化合物13 4.0部
を混合して溶解し、着色硬化性組成物(カラーレジスト用組成物)を調製した。
【0227】
(4)着色硬化性組成物の露光・現像(画像形成)
上記(3)で得られた着色硬化性組成物を、上記(2)で得た下塗り層付ガラス基板の下塗り層の上に乾燥後の膜厚が0.6μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃で120秒間プリベークした。
次いで、露光装置UX3100−SR(ウシオ電機(株)製)を使用して、塗布膜に365nmの波長で線幅2μmのマスクを通して、200mJ/cmの露光量で照射した。露光後、現像液CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を使用して、25℃40秒間の条件で現像した。その後、流水で30秒間リンスした後、スプレー乾燥した。その後、200℃で15分間ポストベークを行った。
以上のようにしてカラーフィルタを構成する赤色として好適なパターンが得られた。
また図1に、実施例1で作製したカラーフィルタの透過スペクトルを示す。
【0228】
(5)評価
上記で調製した着色硬化性組成物の経時での保存安定性、及び、着色硬化性組成物を用いてガラス基板上に塗設された塗布膜の耐熱性、耐光性、耐溶剤性、パターン形状を下記のようにして評価した。評価結果は下記表5に示す。
【0229】
〔経時での保存安定性〕
着色硬化性組成物を室温で1ケ月保存した後、組成物中における異物の析出度合いを目視により下記判定基準に従って評価した。
−判定基準−
○:析出は認められなかった。
△:僅かに析出が認められた。
×:析出が認められた。
【0230】
〔耐熱性〕
着色硬化性組成物が塗布されたガラス基板を、該基板面で接するように200℃のホットプレートに載置して1時間加熱した後、色度計MCPD−1000(大塚電子(株)製)にて、加熱前後での色差(ΔEab値)を測定して熱堅牢性を評価する指標とし、下記判定基準に従って評価した。ΔEab値は、値の小さい方が、耐熱性が良好なことを示す。なお、ΔEab値は、CIE1976(L,a,b)空間表色系による以下の色差公式から求められる値である(日本色彩学会編 新編色彩科学ハンドブック(昭和60年)p.266)。
ΔEab={(ΔL+(Δa+(Δb1/2
−判定基準−
○:ΔEab値<5
△:5≦ΔEab値≦15
×:ΔEab値>15
【0231】
〔耐光性〕
着色硬化性組成物が塗布されたガラス基板に366nm以下カットオフの紫外線カットフィルターを設置し、これに対しキセノンランプを10万luxで20時間照射(200万lux・h相当)した後、照射前後での色差(ΔEab値)を測定して耐光性を評価する指標とし、下記判定基準に従って評価した。
ΔEab値は、値の小さいほうが、耐光性が良好なことを示す。
−判定基準−
○:ΔEab値<5
△:5≦ΔEab値≦12
×:ΔEab値>12
【0232】
〔耐溶剤性〕
上記(4)で得られたポストベーク後の塗膜の分光を測定した(分光A)。この塗膜に対し、この上に上記(1)で得られたレジスト溶液Aを膜厚1μmとなるように塗布しプリベークを行った後、CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)現像液を使用して23℃・120秒間の条件で現像を行い、再度分光を測定した(分光B)。この分光A、Bの差より色素残存率(%)を算出し、これを耐溶剤性を評価する指標とした。この数値は100%に近いほど耐溶剤性に優れていることを示す。
−判定基準−
○:染料残存率>90%
△:70%≦染料残存率≦90%
×:染料残存率<70%
【0233】
〔パターン形状〕
上記(4)で得られたポストベーク後の塗膜の現像パターンを光学顕微鏡(オリンパス(株)製デジタルマイクロスコープRX−20)で観察し、精細なパターンが作成できているかを以下判定基準に従って評価した。
−判定基準−
○:精細なパターンが作製できている。
△:パターンは作製できているが、パターンの縁部が精細でない。
×:パターンが作製できない。
【0234】
[実施例2〜12]
実施例1の(3)着色硬化性組成物の調製において、例示化合物13を表5に記載の色素(色素化合物)に変更(但し、等質量)した以外、実施例1と同様にしてパターンを形成し、更に同様の評価を行った。評価結果は下記表5に示す。
【0235】
[比較例1〜2]
実施例1の(3)着色硬化性組成物の調製において、例示化合物13を下記比較色素1〜2(比較例1〜2)に変更したこと以外(但し等質量)、実施例1と同様にしてパターンを形成し、同様の評価を行った。評価結果は実施例の結果と共に下記表5に示す。
【0236】
【表5】

【0237】
表5に示すように、本発明に係る色素化合物を用いた実施例1〜12の着色硬化性組成物を用いて形成されたパターンは、いずれも良好な耐熱性、耐光性、及び耐溶剤性を示した。
これに対し、比較例1の着色硬化性組成物を用いて形成されたパターンは、耐熱性、耐光性、耐溶剤性に劣り、またパターン形状も劣り縁部が精細でなかった。さらに、比較例1の着色硬化性組成物は保存安定性に劣るものであった。また比較例2の着色硬化性組成物を用いて形成されたパターンは、耐熱性が悪く、耐溶剤性が劣り、パターン形状も劣り縁部が精細でなかった。
表5に示すように、本発明(実施例1〜12)のうち、特に一般式(M)においてn=1以上で表される色素化合物を用いた実施例1及び4〜6は、保存安定性及び耐溶剤性が特に優れていた。また、本発明の特定色素化合物は、実施例で用いたシクロヘキサノンを含めさまざまな有機溶剤への溶解性(例えば、より安全性の高い乳酸エチルなど)が非常に高く、作業安全性の観点、作業負荷軽減にも効果的であった。
また一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物を用いた実施例7〜12は、保存安定性、耐熱性、耐光性、耐溶剤性、パターン形状のすべてにおいて良好な結果であった。
【0238】
【化30】



【0239】
【化31】



【0240】
[実施例13〜21、比較例3、4、実施例22〜30、比較例5、6]
実施例1〜9、および比較例1、2で用いた着色硬化性組成物を用いてカラーフィルタを以下の手順で作成し、実施例13〜21、および比較例3、4として色移り評価を実施した。
また、現像工程後の紫外線照射工程を施さずにカラーフィルタを作製し、実施例22〜30、および比較例5、6を実施し、色移り評価を実施した。
得られた結果を、表6に示す。
【0241】
−単色カラーフィルタの作製−
実施例1において作製した(2)下塗り層付ガラス基板上に、実施例1〜9、および比較例1、2で用いた着色硬化性組成物を用いて、乾燥膜厚が1μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃で120秒間プリベークし、着色膜を形成した。この着色膜に対して、7.0μmの正方ピクセルがそれぞれ基板上の4mm×3mmの領域に配列されたマスクパターンを介してi線ステッパー(キャノン(株)製のFPA−3000i5+)により、200[mJ/cm]の露光量、照度1200mW/cm(積分照射照度)で露光した。露光後、現像液(商品名:CD−2000、60%、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間、パドル現像し、パターンを形成した。次いで、流水で20秒間リンスした後、スプレー乾燥させた。その後、現像工程後の紫外線照射工程として、パターンが形成されたガラス基板全体に、高圧水銀灯(ウシオ電機(株)UMA−802−HC552FFAL)を用いて10000[mJ/cm]の紫外線を照射した。照射後、220℃で300秒間、ホットプレートでポストベーク処理し、ガラス基板上に着色パターンを形成した。なお、高圧水銀灯からの照射光に含まれる275nm以下の波長光は、10%である。
以上のようにして、実施例13〜21、比較例3、4の単色カラーフィルタを作製した。また、現像工程後の紫外線照射を施さずに実施例22〜30、および比較例5、6の単色カラーフィルタを作製した。
【0242】
−色移り評価−
上記のようにして作製したカラーフィルタの着色パターン形成面に、乾燥膜厚が1μmとなるようにCT−2000L溶液(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製;下地透明剤)を塗布し、乾燥させて、透明膜を形成した後、200℃で5分間加熱処理を行なった。加熱終了後、着色パターンに隣接する透明膜の吸光度を顕微分光測定装置(大塚電子(株)製 LCF−1500M)にて測定した。得られた透明膜の吸光度の値の、同様に加熱前に測定した着色パターンの吸光度に対する割合[%]を算出し、色移りを評価する指標とした。
−判定基準−
隣接ピクセルへの色移り(%)
◎:隣接ピクセルへの色移り<1%
○:1%≦隣接ピクセルへの色移り≦10%
△:10%<隣接ピクセルへの色移り≦30%
×:隣接ピクセルへの色移り>30%
【0243】
【表6】

【0244】
[実施例31〜実施例39]
−固体撮像素子用カラーフィルタの作製−
(下塗り層付シリコンウエハ基板の作製)
6インチシリコンウエハをオーブン中で200℃のもと30分加熱処理した。次いで、このシリコンウエハ上に、実施例1の(1)で調整したレジスト溶液Aを、乾燥膜厚1.0μmとなるように塗布し、更に220℃のオーブン中で1時間乾燥させて下塗り層を形成し、下塗り層付きシリコンウエハ基板を得た。
【0245】
(固体撮像素子用カラーフィルタのパターンの作製)
得られた下塗り層付きシリコンウエハ基板の下塗り層上に、実施例1〜9で用いた各着色硬化性組成物を、各々の塗布膜の乾燥膜厚が0.8μmになるように塗布し、光硬化性の塗布膜を形成した。そして、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行った。次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して365nmの波長でパターンが1.2μm四方のアイランドパターンマスクを通して100〜2500mJ/cmの範囲で露光量を100mJ/cmずつ変化させて照射した。その後、照射された塗布膜が形成されているシリコンウエハ基板をスピン・シャワー現像機(DW−30型;(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、60%CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間パドル現像を行ない、シリコンウエハ基板に着色パターンを形成した。
【0246】
着色パターンが形成されたシリコンウエハ基板を真空チャック方式で前記水平回転テーブルに固定し、回転装置によって該シリコンウエハ基板を回転数50rpmで回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理を行ない、その後スプレー乾燥した。
実施例1〜9で用いた各着色硬化性組成物を用いて、得られたそれぞれのパターン画像は、正方形で、且つ断面の形状が矩形であった。固体撮像素子用に好適で、良好なプロファイルを示していた。
【0247】
[実施例40、41]
次に、インクジェット法によるカラーフィルタの作製を行った。まず、隔壁を設けた基板の作製の準備として、隔壁形成用組成物(K1)に用いるカーボンブラックを分散した顔料分散液Kを下記の組成で調製した。
【0248】
<顔料分散物Kの組成>
・カーボンブラック(デグッサ社製 Nipex35) 13.1%
・分散剤(下記構造の化合物B1) 0.65%
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物、分子量3.7万) 6.72%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.53%
【0249】
【化32】

【0250】
<隔壁形成用組成物(K1)の調製>
隔壁形成用組成物(K1)の組成を表7に示す。
顔料分散物K、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを、温度24℃(±2℃)で混合して150rpmで10分間攪拌し、さらに攪拌しながら、メチルエチルケトン、バインダー2、ハイドロキノンモノメチルエーテル、DPHA液、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスジエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン、界面活性剤1を、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpmで30分間攪拌することによって得た。なお、表中の「量」は質量部を意味する。
【0251】
【表7】

【0252】
<バインダー2>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比のランダム共重合物、分子量3.8万) 27%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73%
【0253】
<DPHA液>
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(重合禁止剤MEHQ 500ppm含有、日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD DPHA) 76%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 24%
【0254】
<界面活性剤1>
・下記構造物1 30%
・メチルエチルケトン 70%
【0255】
【化33】

【0256】
<隔壁の形成>
無アルカリガラス基板を、UV洗浄装置で洗浄後、洗浄剤を用いてブラシ洗浄し、更に超純水で超音波洗浄した。基板を120℃3分熱処理して表面状態を安定化させた。
基板を冷却し23℃に温調後、スリット状ノズルを有すガラス基板用コーター(エフ・エー・エス・アジア社製、商品名:MH−1600)にて、上述の隔壁形成用組成物K1を塗布した。引き続きVCD(真空乾燥装置、東京応化工業社製)で30秒間、溶剤の一部を乾燥して塗布層の流動性を無くした後、120℃で3分間プリベークして膜厚2.3μmの隔壁形成層を有する基板を得た。
次いで、超高圧水銀灯を有すプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)で、基板とマスクを垂直に立てた状態で、露光マスク面と隔壁形成層との間の距離を200μmに設定し、窒素雰囲気下、露光量300mJ/cmで隔壁幅20μm、スペース幅100μmにパターン露光した。
【0257】
次に、純水をシャワーノズルにて噴霧して、隔壁形成層の表面を均一に湿らせた後、KOH系現像液(ノニオン界面活性剤含有、商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製を100倍希釈したもの)を23℃80秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像しパターニング画像を得た。引き続き、超純水を、超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で噴射して残渣除去を行い、大気下にて露光量2500mJ/cmにて基板の隔壁形成層が形成された面側からポスト露光を行って、オーブンにて240℃で50分加熱し、膜厚2.0μm、光学濃度4.0、100μm幅の開口部を有するストライプ状の隔壁を得た。
【0258】
(撥インク化プラズマ処理)
隔壁を形成した基板に、カソードカップリング方式平行平板型プラズマ処理装置を用いて、以下の条件にて撥インク化プラズマ処理を行った。
使用ガス :CF
ガス流量 :80sccm
圧力 :40Pa
RFパワー:50W
処理時間 :30sec
【0259】
(赤色(R)用インクの調製)
表8に記載の成分を混合し、1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmの富士フイルム(株)社製ミクロフィルターで減圧濾過して本発明の赤色用インク液(インクR−1、およびインクR−2)を調製した。
【0260】
【表8】

【0261】
赤色(R)用インクの調製で用いた素材の詳細を以下に示す。
・色素:一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物の例示化合物P80
・重合性化合物(日本化薬社製(KAYARAD DPCA−60)):カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・KF−353(信越シリコーン社製):ポリエーテル変性シリコーンオイル
・重合開始剤:アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、和光純薬社製V−40
【0262】
(粘度、表面張力の測定)
得られたインクを25℃に調温したまま、東機産業(株)製E型粘度計(RE−80L)を用いて以下の条件で粘度を測定した。
(測定条件)
・使用ロータ:1° 34’×R24
・測定時間 :2分間
・測定温度 :25℃
【0263】
得られたインクを25℃に調温したまま、協和界面科学(株)製表面張力計(FACE
SURFACE TENSIOMETER CBVB−A3)を用いて表面張力を測定した。
【0264】
(コントラスト測定方法)
バックライトユニットとして冷陰極管光源(図2に示す波長スペクトル分布の光を射出する光源)に拡散板を設置したものを用い、2枚の偏光板(ルケオ製 POLAX−15N)の間に単色基板を設置し、偏光板をパラレルニコルに設置したときに通過する光の色度のY値を、クロスニコルに設置したときに通過する光の色度のY値で割ることでコントラストを求めた。色度の測定には色彩輝度計((株)トプコン製BM−5A)を用いた。
色彩輝度計の測定角は1°に設定し、サンプル上の視野φ5mmで測定した。バックライトの光量は、サンプルを設置しない状態で、2枚の偏光板をパラレルニコルに設置したときの輝度が400cd/mになるように設定した。
【0265】
単色基板は以下の方法で作製した。カラーフィルタを構成するRインク(インクR−1、インクR−2)のうち一色のインクを用いて、ガラス基板上にインクジェット法あるいはスピンコート法によってベタ膜を形成して、カラーフィルタ形成と同じようにプリベーク(予備加熱)(温度100℃、2分)、ポストベーク(後加熱)(温度220℃、30分)を行い、膜厚2μmの単色基板を形成した。
上記で得た単色基板(2種類)のコントラストを測定したところ、いずれの単色基板でも50000以上の値を得た。
【0266】
(ITO層作製)
次に、上記で得た単色基板上にスパッタ装置を用い、膜面温度200℃にて15分間、ITO(酸化インジウムスズ)をスパッタして、膜厚1500ÅのITO膜を形成し、ITO付きのカラーフィルタ基板を作製した。
【0267】
(ITOスパッタ前後における分光特性変化)
ITOスパッタ前後において、紫外可視吸収分光装置(日本分光製V−570)を用いて、400nm〜700nmの波長範囲における分光透過率曲線を得た。スパッタ前後での、最大ピークにおける分光透過率変化量が小さい場合、耐熱性がよいことを意味する。作成した基板においてITOスパッタ前後においてスペクトル形状はほとんど変化しておらず、高い耐熱性を有することがわかった。
【0268】
[比較例7、8]
(顔料分散液の調製)
顔料C.I.ピグメント・レッド177(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:Cromophtal Red A2B)17.5部、顔料分散剤(前記化合物B1)2.5部、および溶剤(1,3−ブタンジオールジアセテート)(以下1,3−BGDAと略す)80部で配合し、プレミキシングの後、モーターミルM−50(アイガー・ジャパン社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを充填率80%で用い、周速9m/sで25時間分散し、R用顔料分散液(R−177)を調製した。
【0269】
R用顔料分散液(R−177)において、顔料をC.I.ピグメント・レッド254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):Irgaphor Red B−CF)に変更した以外は、R用顔料分散液(R−177)と同様にして、R用顔料分散液(R−254)を調製した。なお、日機装社製ナノトラックUPA−EX150を用いて、この顔料分散液の数平均粒径を測定した結果いずれも50nmであった。
【0270】
(比較例7、および8に用いるインクの調製)
比較例7、および8として、上記の顔料分散液(R−177)、および(R−254)をそれぞれ用いて、表9に記載の組成で比較インクR−3、およびR−4を調製した。なお、使用した材料は、以下の通りである。
・溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(MMPGACと略記)
・重合性化合物:日本化薬社製 KAYARAD DPS100
・重合性化合物:日本化薬社製 KAYARAD TMPTA
・界面活性剤:前記の界面活性剤1
・重合開始剤:アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(和光純薬社製)V−40
【0271】
【表9】

【0272】
(評価用カラーフィルタの作製方法)
上記で調製されたインクR−1〜R−4を用いて、上記で得られた基板上の隔壁で区分された領域内(凸部で囲まれた凹部)に、富士フイルムDimatix製インクジェットプリンターDMP−2831を用い、吐出を行い、その後、100℃オーブン中で2分間加熱を行った。次に、220℃のオーブン中で30分間静置することにより、単色のカラーフィルタを作製した。
【0273】
(インク保存安定性評価)
上記で調製された各インクを50℃の恒温室に保管し、30日後の粘度を測定し、インク調製直後の値との差(%)[(30日後の粘度−調製直後の粘度)/調製直後の粘度]により評価を行った。評価基準は以下の様に分類した。
◎:インク調製直後の粘度との差が10%未満
○:インク調製直後の粘度との差が10%以上20%未満
△:インク調製直後の粘度との差が20%以上30%未満
×:インク調製直後の粘度との差が30%以上
【0274】
(連続吐出安定性評価)
上記で調製された各インクを用いて、吐出安定性の評価を行った。評価方法は、富士フイルムDimatix社製インクジェットプリンターDMP−2831、打滴量10pLのヘッドカートリッジ、打滴周波数10kHzで行い、30分間連続吐出をした際の状態を観察した。評価基準は以下の様に分類した。
◎:問題なく連続吐出が可能。
○:吐出中に、少々不吐出、吐出乱れなど観察されるが、吐出中に復帰し、概ね問題の無い状態。
△:吐出中に不吐出、吐出乱れが生じ、吐出中に復帰しないが、メンテナンスによって正常な状態に復帰する状態。
×:吐出中に不吐出、吐出乱れが生じ、正常に吐出ができず、メンテナンスによっても吐出が復帰しない状態。
メンテナンスは、DMP−2831によるパージ(ヘッド内インクを加圧してノズルからインクを強制的に吐き出す)、ブロット(ヘッドノズル面をクリーニングパッドに僅かに接触させて、ノズル面のインクを吸い取る)を実施した。
【0275】
(休止後吐出安定性評価)
上記で調製された各インクを用いて、吐出安定性の評価を行った。評価方法は連続吐出安定性評価同様に、富士フイルムDimatix製インクジェットプリンターDMP−2831、打滴量10pLのヘッドカートリッジを用い、打滴周波数10kHzで一度5分間の吐出を行い、24時間の休止後、再び同条件で吐出を開始した際の状態を観察した。評価基準は以下の様に分類した。
◎:打滴指示と同時に問題なく吐出が可能。
○:打滴指示直後は少々不吐出、吐出乱れなど観察されるが、吐出中に復帰し、概ね問題の無い状態。
△:不吐出、吐出乱れが生じ、吐出中に復帰しないが、メンテナンスによって正常な状態に復帰する状態。
×:不吐出、吐出乱れが生じ、正常に吐出ができず、メンテナンスによっても吐出が正常なレベルまで復帰しない状態。
メンテナンスは、DMP−2831によるパージ(ヘッド内インクを加圧してノズルからインクを強制的に吐き出す)、ブロット(ヘッドノズル面をクリーニングパッドに僅かに接触させて、ノズル面のインクを吸い取る)を実施した。
【0276】
(耐熱性評価)
上記で作製した各カラーフィルタを、230℃に加熱したオーブン内に入れ、1時間放置した後、色相を測定した。色相の測定は、UV−560(日本分光社製)を用い、評価前後のΔEabが5未満を○とした。ΔEabが5以上15未満を△とし、ΔEabが15以上を×とした。ΔEabの評価方法は、上記と同様である。
【0277】
(耐薬品性評価)
上記で作製した各カラーフィルタを、評価を行う薬品(N−メチルピロリドン、2−プロパノール、5%硫酸水溶液、5%水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)水溶液)中に20分間浸し、その前後の色相を測定した。色相の測定は、UV−560(日本分光社製)を用い、ΔEabが5未満を○とした。ΔEabが5以上15未満を△とし、ΔEabが15以上を×とした。ΔEabの評価方法は、上記と同様である。
【0278】
表10に、インクジェット用インクおよびカラーフィルタの評価結果を纏めて示す。
【0279】
【表10】

【0280】
表10に示すように、本発明に係る色素化合物を用いたインクジェット用インクは、保存性に優れるとともに、吐出安定性の点からも優れていた。また、本発明のインクジェット用インクを用いて製造されたカラーフィルタは、顔料を用いたインクを使用した場合と同等程度の優れた耐薬品性、耐熱性を有していた。
一方、顔料を用いたインクを使用した比較例7、および8は、休止後の吐出安定性が劣り、また連続吐出の安定性にも不足しており、実用性を欠いていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(M)で表される色素化合物、及びその互変異性体からなる群より選択される少なくとも1種と、重合性化合物と、を含有する着色硬化性組成物。
【化1】



(一般式(M)中、RM1、RM2、及びRM3は各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、L、及びLは各々独立に、単結合、又は2価の連結基を表し、AはpKaが10以下の酸基を表し、Dは下記一般式(1)から水素原子をn+m個取り除いた残基を表し、nは0〜10の整数を表し、mは1〜10の整数を表す。)
【化2】



(一般式(1)中、R、R、R、R、及びRは、各々独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。RとR、及びRとRは、各々独立に互いに結合して環を形成していてもよい。)
【請求項2】
下記一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物、及びその互変異性体からなる群より選択される少なくとも1種と、重合性化合物と、を含有する着色硬化性組成物。
【化3】



(一般式(P)中、RP1、RP2、及びRP3は各々独立に、水素原子、または1価の置換基を表し、Dは下記一般式(1)から水素原子を1つ取り除いた残基を表す。)
【化4】



(一般式(1)中、R、R、R、R、及びRは、各々独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。RとR、及びRとRは、各々独立に互いに結合して環を形成していてもよい。)
【請求項3】
重合開始剤をさらに含有する請求項1又は請求項2に記載の着色硬化性組成物。
【請求項4】
フォトリソ法による着色パターン形成に用いられる請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の着色硬化性組成物。
【請求項5】
インクジェット法による着色パターン形成に用いられる請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の着色硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の着色硬化性組成物を用いて形成された着色パターンを有するカラーフィルタ。
【請求項7】
請求項4に記載の着色硬化性組成物を支持体上に塗布して着色層を形成する工程と、該着色層をパターン露光する工程と、前記パターン露光後に現像により着色パターンを形成する工程と、を含むカラーフィルタの製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載のカラーフィルタを備える固体撮像素子。
【請求項9】
請求項6に記載のカラーフィルタを備える画像表示デバイス。
【請求項10】
下記一般式(M)で表される色素化合物、及びその互変異性体。
【化5】



(一般式(M)中、RM1、RM2、及びRM3は各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、L、及びLは各々独立に、単結合、又は2価の連結基を表し、AはpKaが10以下の酸基を表し、Dは下記一般式(1)から水素原子をn+m個取り除いた残基を表し、nは0〜10の整数を表し、mは1〜10の整数を表す。)
【化6】



(一般式(1)中、R、R、R、R、及びRは、各々独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。RとR、及びRとRは、各々独立に互いに結合して環を形成していてもよい。)
【請求項11】
下記一般式(P)で表される繰り返し単位を含む色素化合物、及びその互変異性体。
【化7】



(一般式(P)中、RP1、RP2、及びRP3は各々独立に、水素原子、または1価の置換基を表し、Dは下記一般式(1)から水素原子を1つ取り除いた残基を表す。)
【化8】



(一般式(1)中、R、R、R、R、及びRは、各々独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。RとR、及びRとRは、各々独立に互いに結合して環を形成していてもよい。)
【請求項12】
更に酸基を含み、酸価が、25mgKOH/g〜200mgKOH/gである請求項11に記載の色素化合物、及びその互変異性体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−74270(P2011−74270A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228538(P2009−228538)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】