睡眠改善作用の皮膚外用剤
【課題】睡眠改善用、取り分け、入眠までに掛かった時間(SL:sleep latency)、深睡眠に到達するまでに掛かった時間(Deep sleep Latency)、又は、終夜睡眠中のグレ−ド3及び4の深睡眠の割合を改善する等の「睡眠の質」を改善するために好適な皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】ミカン科に属する植物より選択される1種若しくは2種以上の植物より得られる植物精油を皮膚外用剤に含有させる。
【解決手段】ミカン科に属する植物より選択される1種若しくは2種以上の植物より得られる植物精油を皮膚外用剤に含有させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミカン科の植物より得られる精油を含有する睡眠改善用の皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
健康な生活を送るためには、食事、睡眠、運動が重要なポイントとされる。しかしながら、今日の生活においては、社会環境及び生活様式の変化等により、多様なストレスと対峙する場面は確実に増加し、不規則な生活を余儀なくされている。このため、規則正しい食事、十分な睡眠、適度な運動等の健康を維持ためによいとされる生活習慣を実行することは、非常に難しくなっている。睡眠は、身体の休息は勿論のこと、身体をコントロ−ルする大脳を休め、肉体的及び精神的なストレスを解消するために重要な役割を果たしている。近年、日常的なストレスにより不眠に悩む人々は、急増している。さらに、その自覚症状は、単純な「睡眠時間が短い」等の睡眠の量に関する自覚症状から、「寝付きが悪い」、「眠りが浅い」、「何度も目覚める」、「目覚めが悪い」、「熟睡感がない」「昼間に眠気がある」等の睡眠の質的な症状へと変化している。これらの自覚症状においては、特に、「寝付きが悪い」、「何度も目覚める」ことに対する改善欲求が高い。また、逆に睡眠障害を自覚する人における、睡眠障害の主訴が、「寝付きが悪い」、「何度も目覚める」ことでもある。
【0003】
肉体及び精神的なストレスから身体を守るためには、充分な睡眠時間を確保するのみならず、睡眠の質を向上させることが重要である。一般に、健常成人の夜間における睡眠は、「頭が起きていて身体が眠っている睡眠」といわれるREM期(睡眠経過を表す睡眠ポリグラフ等においてstage-REMに分類される)と、「身体が起きていて頭が眠っている睡眠」といわれるNREM期(睡眠経過を表す睡眠ポリグラフ等においてstage-1〜stage-4に分類される)のふたつの睡眠相により構成されている。健常成人の睡眠では、入眠後30分から1時間ほどで一日の中で最も深いREM睡眠に入り、その後は、約90分(60分〜120分)の間隔で「深くなったり」、「浅くなったり」を繰り返す睡眠周期(ウルトラディアン・リズム)を経た後、覚醒にいたる。また、睡眠周期中のREM睡眠は、睡眠の経過と共に長くなり、NREM睡眠の深度は、次第に浅くなる傾向が認められる。この様な睡眠のバランスが崩れることにより、睡眠の質が低下し、前記の自覚症状が顕在化することが検証されている。
【0004】
現在、睡眠を評価する方法としては、アンケ−トなどによる実感を伴う評価方法に加え、睡眠ポリグラフ等の客観的な評価方法が広く用いられる。また、睡眠ポリグラフは、脳波(EEG)、呼吸、脚の運動、あごの運動、眼球運動(EOG)、心電図、酸素飽和度、胸壁の運動、腹壁の運動等を記録することにより、「睡眠の質」を評価することが可能である。また、終夜睡眠ポリグラフは、入眠潜時、睡眠の深さと質、睡眠中断を引き起こす症状の有無を測定することにより、睡眠の質を評価することが出来る。この様な睡眠の質的な評価は、単純に睡眠の量を改善するだけでは解決することが出来ない睡眠障害を改善するために、非常に有効な解析手段として確立されている。
【0005】
また、ストレス等による不眠を改善するためには、寝具や睡眠環境を改善するなどのほかに、医療用医薬品の睡眠導入薬が広く使用されている。睡眠導入剤としては、ベンゾジアゼピン系睡眠薬、チエノジアゼピン系睡眠薬、バルビツ−ル系睡眠薬など多様な化学構造を有する睡眠薬(例えば、非特許文献1を参照)が広く利用されている。さらに、抗ヒスタミン薬(例えば、特許文献1を参照)、抗不安薬及び統合失調症薬等も不眠症状を緩和するとして使用されている。これらの睡眠導入薬には、一時的な寝付きの悪さ、眠りの浅さなどの症状を緩和する作用が報告されているが、この様な多くの睡眠導入薬等には、起床時の頭重感、悪心、頭痛などの副作用を伴うことが確認されており、患者の大きな悩みとなっている。さらに、これらの睡眠導入薬には、薬物依存性や、異常行動の問題が存する場合がある(例えば、非特許文献2を参照)ため、その使用のみならず管理が大きな課題となっている。
【0006】
睡眠改善には、前記の化学合成による医薬品のほかに、睡眠改善作用が緩和であり、安全性が高いとされる漢方薬、睡眠改善作用を有するとされる精油を配合した香気成分なども知られている。特に、ミカン科の植物より得られる植物精油には、睡眠時間を延長する作用(例えば、特許文献2を参照)が報告されている。しかしながら、当該精油の作用は、睡眠時間を延長する作用、即ち、「睡眠の量」を改善する作用に限定されており、「睡眠の質」に関する作用は全く知られていない。さらに、ミカン科の植物より得られる植物精油は、抗ヒスタミン剤との併用により、睡眠改善作用を増強するための鎮静作用(例えば、特許文献3を参照)を発現することが知られている。しかしながら、ミカン科の植物より得られる植物精油そのものに、寝つきのよさ、睡眠の深さ等に関連する「睡眠の質」を改善する作用があることは全く知られていなかった。また、植物精油を用いた香気成分によるリフレシュ効果なども広く知られているが、この様な成分は、揮発成分であるために、その作用時間が極めて短く、充分な効果を得るには至っていない。
【0007】
一方、ミカン科の植物より得られる植物精油を配合した皮膚外用剤が、経皮的な投与経路をとることにより、入眠までに掛かった時間(SL:sleep latency)、深睡眠に到達するまでに掛かった時間(Deep sleep Latency)、又は、終夜睡眠中のグレ−ド3及び4の深睡眠の割合を改善する等の「睡眠の質」を改善する作用を有することは、全く知られていなかった。また、当該植物精油を配合した皮膚外用剤が睡眠改善作用に基づき肌状態の改善効果を発揮することも知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−272388号公報
【特許文献2】特開2007−246428号公報
【特許文献3】特開2005−272388号公報
【特許文献4】特開2005−023044号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】New薬理学、南江堂、田中千賀子、加藤隆一編集
【非特許文献2】Minzer M. Z., et.al., Mem. Congnit., 28(8)、1357−1365(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の様な状況を鑑みてなされたものであり、睡眠改善用に好適な、皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、睡眠改善作用を有する物質を求め鋭意努力を重ねた結果、ミカン科に属する植物より選択される1種若しくは2種以上の植物より得られる精油を含有する皮膚外用剤が、優れた睡眠改善作用を示すことを見出し、発明を完成させるに至った。言い換えれば、ミカン科に属する植物より選択される1種若しくは2種以上の植物より得られる植物精油を含有する睡眠改善用の皮膚外用剤を提供することにより、前記課題は解決される。即ち、本発明は、次に示す通りである。
<1> ミカン科(Rutaceae)に属する植物より得られる精油を含有することを特徴とする、睡眠改善用の皮膚外用剤。
<2> ミカン科(Ruraceae)の植物が、ミカン属(Citrus)の植物であることを特徴とする、<1>に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
<3> 前記ミカン科ミカン属の植物が、ダイダイ(Citrus aurantium Linne var. daidai Makino)であることを特徴とする、<1>又は<2>に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
<4> 前記睡眠改善作用が、眠りの質を改善することを特徴とする、<1>又は<3>の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
<5> 前記睡眠改善作用が、入眠までに掛かった時間、深睡眠に到達するまでに掛かった時間、又は、深睡眠の割合の改善であることを特徴とする、<1>〜<4>の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
<6> 前記睡眠改善作用が、起床後の満足度の改善であることを特徴とする、<1>〜<4>の何れか一コ項に記載の睡眠用の皮膚外用剤。
<7> 前記睡眠改善作用が、目を覚ました回数、又は、寝つきのよさの改善であることを特徴とする、<1>〜<4>の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
<8> 肌状態の改善用であることを特徴とする、<1>〜<7>の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
<9> 化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、<1>〜<9>の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
<10> 肌状態に悪化の存する人において、その人の睡眠特性を、入睡までに要する時間、深睡眠に達するまでに要する時間及び睡眠途中での覚醒回数から選択される項で評価し、睡眠特性において障害が認められた人に使用されるべきものであることを特徴とする、<1>〜<9>の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、睡眠改善用に好適な、ミカン科に属する植物精油を含有する皮膚外用剤を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤の入眠までに掛かった時間(SL:Sleep Latency)を示す図である
【図2】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤の深睡眠に到達するまでの時間(Deep sleep latency)を示す図である。
【図3】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤の終夜睡眠中のグレ−ド3及び4の深睡眠の割合を示す図である。
【図4】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤の起床後睡眠に関するアンケ−ト(VAS(visual analogue scale:睡眠満足度)の結果を示す図である。
【図5】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤のセントマリ−質問表による「あなたの睡眠に○をつけてください」に対する回答結果を示す図である。
【図6】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤のセントマリ−質問表による「何回目を覚ましましたか?」に対する回答結果を示す図である。
【図7】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤のセントマリ−質問表による「昨夜は、どのくらいよく眠れたか」に対する回答結果を示す図である。
【図8】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤のセントマリ−質問表による「今朝起床した後、どのくらい頭がすっきりしていましたか?」に対する回答結果を示す図である。
【図9】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤のセントマリ−質問表による「昨夜の睡眠にどのくらい満足しましたか?」に対する回答結果を示す図である。
【図10】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤のセントマリ−質問表による「早く目が覚めて再び眠りにつけずに困りましたか?」に対する回答結果を示す図である。
【図11】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤のセントマリ−質問表による「昨夜眠りにつくのはどのくらいむずかしかったですか?」に対する回答結果を示す図である。
【図12】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤の角質水分量変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)本発明の睡眠改善用の皮膚外用剤の有効成分である植物精油
本発明の睡眠改善用の皮膚外用剤は、ミカン科の植物より得られる植物精油を含有することを特徴とする。本発明における睡眠改善作用を有する植物精油とは、睡眠改善作用を有する植物抽出物であれば特段の限定なく適応することが出来るが、特に、「睡眠の質」に関する改善作用を有する植物精油が好ましい。本発明における「睡眠の質」を改善する作用としては、睡眠ポリグラフ及び脳波測定による睡眠の質の解析により、「寝つきのよさ」に関係する「入眠までに掛かった時間(SL:Sleep Latency)を短縮する作用」、「睡眠の深さ」に関係する「深睡眠に到達するまでに掛かった時間(Deep Sleep Latency)を短縮する作用」、「終夜睡眠中のグレ−ド3及び4の深睡眠の割合を増加させる作用」、更には、起床後の睡眠に関するアンケ−ト(VAS:visual analogue scale:睡眠満足度)による「睡眠満足度を向上させる作用」、セントマリ−質問表により質問による、「寝つきのよさ」、「眠りにつくまでの時間の短縮」、「目覚めの回数の減少」、「睡眠満足度の向上」等を改善することが出来る作用を有する植物精油が好適に例示出来る。
【0015】
本発明の睡眠改善用の皮膚外用剤の必須成分である植物精油は、ミカン科に属する植物より選択される1種若しくは2種以上の植物より得られる植物精油であることを特徴とする。本発明における「植物精油」とは、ミカン科に属する植物の植物体に含まれる揮発成分であって、水に不溶乃至は難溶の成分であり、ミカン科に属する植物の一部又は全部を用い、水蒸気蒸留、ノルマルへキサンなどの非極性溶媒を用いた薬剤抽出又は圧搾などにより得られる、特有の芳香を有する揮発成分を含む留出物の非水溶性分又はその画分精製物などの総称を意味する。通常、精油は、多種類の化合物の混合物であり、モノテルペン、セスキテルペンなどの炭化水素化合物類、アルコ−ル化合物類、酸化物類、カルボニル化合物類、フェノ−ル化合物類、ラクトン化合物類、エステル化合物類などから構成される。特に、ミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物精油には、1−リナロ−ル、ネロリド−ル、酢酸リナリル、α−テルピネオ−ル、ゲラニオ−ル、酢酸ゲラニルなどが主要な成分として含まれるほか、α−ピネン、ジテルペン、カフェイン、オシメンなどのテルペン類、アンスラニル酸メチル、インド−ルなどの含窒素化合物等が含有されることが知られている。本発明において使用する植物精油は、ミカン科に属する植物から前記方法に従って得られる植物精油を用いることも出来るし、ロベルテ社より市販されている市販品を用いてもよい。
【0016】
本発明の睡眠改善用の皮膚外用剤の必須成分である植物精油を得るための植物体としては、ミカン科に属する植物が好適に例示出来る。前記ミカン科に属する植物としては、ミカン属に属する植物が好ましく、特に好ましくは、ミカン科ミカン属ダイダイが好適に例示出来る。本発明の実施例において用いたミカン科ミカン属の植物は、何れも日本に自生しているものを用いている。ダイダイの原産国は、インドとされており、日本には古くより自生している。その果実は、八百屋などで市販されており、その入手は容易である。ここで、植物精油を精製するために使用される植物部位としては、植物体の全部、又は、花、葉、木部、果皮、樹皮、根、種などの一部であれば、特段の限定なく使用することが出来、特に好ましくは、ミカン科ミカン属ダイダイの花などが好適に例示出来る。かかるミカン科ミカン属ダイダイは、フランス、イタリア、スペイン、モロッコ及びアルジェリアなどを主産地とする植物であり、古くは中国より日本に伝わり、日本国内においては、本州をはじめとする広い範囲にその成育が認められる植物である。本発明の実施例においては、日本にて生育したミカン科ミカン属ダイダイより得られた植物精油を用いた。
【0017】
本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物精油は、前記の睡眠の質を改善する作用、並びに、肌状態の改善作用を有する。かかる効果を奏するためには、前記ミカン科に属する植物より得られる植物精油を、皮膚外用剤全量に対し総量で、0.00001質量%〜10質量%含有することが好ましく、より好ましくは、0.001質量%〜5質量%、さらに好ましくは、0.01質量%〜3質量%である。これは、かかる成分が少なすぎると睡眠改善作用、並びに、肌状態の改善作用が発現しない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、この系の自由度を損なう場合が存するためである。また、当該成分を皮膚外用剤に配合することにより、標的分子への集積性が高まり前記効果の向上、前記効果の持続時間延長、更には、高い選択性及び安全性を期待することが出来る。
【0018】
(2)本発明の睡眠改善用の皮膚外用剤
本発明の睡眠改善用の皮膚外用剤は、ミカン科の植物より得られる植物精油を含有することを特徴とする。本発明における睡眠改善用の皮膚外用剤は、就寝前に、美容液などの化粧料の態様をとる皮膚外用剤として、顔面などに塗布し、経皮的に吸収させることにより、前記の「寝つきのよさ」、「睡眠の深さ」、更には、「睡眠の満足度」等の睡眠の質を改善する作用を発現する。これは、揮発物質を含有する香気成分として使用する場合には、空気中に広く拡散し、その効果及び作用持続時間が充分に得られないためであり、皮膚外用剤として使用することにより、その効果発現及び作用時間を制御することが出来る。さらに、化粧料など態様をとる皮膚外用剤として使用することにより、医薬品などの投薬時とは異なり、精神的なリフレッシ及びリラック効果をもたらすことが期待される。
【0019】
本発明の皮膚外用剤においては、前記成分以外に、通常の化粧料や皮膚外用医薬で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリ−ブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワ−油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パ−ム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、イソステアリルアルコ−ル、ベヘニルアルコ−ル、オクチルドデカノ−ル、ミリスチルアルコ−ル、セトステアリルアルコ−ル等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコ−ル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコ−ル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロ−ルプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロ−ルプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコ−ン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノ−ルアミンエ−テル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレ−ト、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコ−ル脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコ−ル等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエ−テル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエ−ト、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレ−ト等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレ−ト等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコ−ルモノオレ−ト、POEジステアレ−ト等)、POEアルキルエ−テル類(POE2−オクチルドデシルエ−テル等)、POEアルキルフェニルエ−テル類(POEノニルフェニルエ−テル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエ−テル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエ−テル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコ−ル、グリセリン、1,3−ブチレングリコ−ル、エリスリト−ル、ソルビト−ル、キシリト−ル、マルチト−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、ジグリセリン、イソプレングリコ−ル、1,2−ペンタンジオ−ル、2,4−ヘキサンジオ−ル、1,2−ヘキサンジオ−ル、1,2−オクタンジオ−ル等の多価アルコ−ル類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパ−ル剤類;レ−キ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマ−等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノ−ル等の低級アルコ−ル類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテ−ト、ビタミンB6ジオクタノエ−ト、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロ−ル、β−トコフェロ−ル、γ−トコフェロ−ル、ビタミンEアセテ−ト等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノ−ル等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
【0020】
これらの必須成分、任意成分を常法に従って処理し、ロ−ション、乳液、エッセンス、クリ−ム、パック化粧料、洗浄料などに加工することにより、本発明の皮膚外用剤は製造できる。皮膚に適応させることの出来る剤型であれば、いずれの剤型でも可能であるが、有効成分が皮膚に浸透して効果を発揮することから、皮膚への馴染みの良い、ロ−ション、乳液、クリ−ム、エッセンスなどの剤型がより好ましい。
【0021】
尚、本発明のミカン科に属する植物より得られる精油を含有する皮膚外用剤としては、一般的に広く使用される、化粧料や医薬部外品に適用するのが好ましい。本発明の皮膚外用剤としては、皮膚に外用で適用されるものであれば特段の限定はなく応用でき、例えば、医薬部外品を含む化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨等が好ましく例示できる。これは本発明のミカン科の植物より得られる植物精油及び植物精油を含有した皮膚外用剤の安全性が高いため、連続的に使用することが可能であるためである。また、睡眠改善作用を発揮することにより、本発明の皮膚外用剤は、睡眠障害に起因する肌荒れなどの肌障害を改善或いは悪化を予防することが出来る。睡眠障害に起因する肌障害は、まず肌障害の有無を調べ、しかる後に肌障害の存した人に対して、睡眠障害の有無の鑑別を行い、睡眠障害と肌障害とをともに有する人を以て睡眠障害に起因する肌障害を有する人と判別することができる。本発明の皮膚外用剤はこの様な人に用いることが好ましい。前記肌障害は、例えば、角質における水分含有量の少ない人、経表皮水分蒸散値の高い人や、表面の角層細胞において、平均面積が異常に小さい、重層に角層細胞層が剥離する、角層細胞に核の残ったものが存するなどの特徴を持った人の皮膚と定義できる。本発明の皮膚外用剤はこの様な人を対象にすることが好ましい。即ち、肌障害が存することを確認し、その後、睡眠障害が存することも確認した人を使用の対象とすることが好ましい。
【0022】
以下に、本発明について、実施例を挙げて更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ、限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0023】
<本発明の睡眠改善用の皮膚外用剤の製造>
表1に記載の処方成分を室温にて混合することにより、本発明の睡眠改善用の皮膚外用剤(皮膚外用剤1)を製造した。また、「本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物精油」を「スクワラン」に置換した比較例1を同様に作製した。
【0024】
【表1】
【実施例2】
【0025】
<本発明の皮膚外用剤を用いた睡眠の質の改善効果に関する検討>
被験者(20〜30代女性9名)により試験を実施した。被験者は就寝2時間前および10分前に精油配合(皮膚外用剤1)、または精油無配合の製剤(比較例1)を顔・デコルテ等に使用してもらい、終夜睡眠ポリグラフィ−を測定した。測定項目は、脳波(EEG)、眼球運動(EOG)、筋電図(EMG)、体位、酸素飽和度等とし、睡眠状態、特に、入眠までに掛かった時間(SL:Sleep Latency)、深睡眠に到達するまでに掛かった時間(Deep Sleep Latency)、終夜睡眠中グレ−ド3及び4の深睡眠の割合、に対する精油の効果を検討した。また同時に、起床後睡眠に関するアンケ−ト(VAS(visual analogue scale:睡眠満足度)及びセントマリ−質問表(質問内容は表2に記載)にて睡眠満足度を調査した。セントマリ−質問表においては、各項目の評価を、1〜5点のスコアにより評価した。結果を図1〜図11に示した。
【0026】
【表2】
【0027】
図1の結果より、本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤(皮膚外用剤1)には、顕著な入眠までに掛かった時間の短縮(SL:Sleep Latency)が認められた。また、図2及び図3の結果より、深睡眠に到達するまでに掛かった時間(Deep Sleep Latency)の時間短縮、並びに、終夜睡眠中グレ−ド3及び4の深睡眠の割合の増加が認められた。上記のポリグラフィ−解析の結果より、本発明のミカン科の植物より得られる植物精油を含有する皮膚外用剤には、睡眠改善作用、取り分け、「寝つきのよさ」、「睡眠の深さ」等の睡眠の質に関する改善効果が認められた。一方、図4に示した起床時に関するアンケ−ト(VAS(visual analogue scale:睡眠満足度)結果より、本発明の皮膚外用剤1には、比較例1と比較し、顕著な睡眠の満足度の向上が認められた。また、セントマリ−質問表による質問の結果より、本発明の皮膚外用剤1には、睡眠改善作用、特に、「目覚めの回数の減少」、「寝つきのよさの改善」に関し、統計的な有意差を持って睡眠の質に関する改善効果が認められた。上記結果より、本発明のミカン科の植物より得られる植物精油を含有した皮膚外用剤には、顕著な睡眠改善作用が認められた。
【実施例3】
【0028】
<本発明の皮膚外用剤を用いた肌状態に関する効果検討>
前記の睡眠の質の改善効果に関する検討と同様に、被験者9名に関し、睡眠後の肌状態に関する精油の効果を検討した。就寝2時間前および10分前に精油配合(皮膚外用剤1)または精油無配合の製剤(比較例1)を顔に使用してもらい、翌朝起床後、使用右頬部位における角層水分量を測定した。コルネオメ−タ−(Courage+Khazaka社製、corneometer CM825)にて右頬部位を5回測定し、最高値と最低値を除いた3つの値の平均値を解析に用いた。検定は対応のあるT検定にて行った。結果を図12に示す。
【0029】
図7の結果より、本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物精油を含有する皮膚外用剤(皮膚外用剤1)には、起床後の角質水分量を増加させる効果が認められた。本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物精油を含有する皮膚外用剤には、角質における水分含量を増加させることによる保湿作用、肌状態の改善作用が存することが明らかとなった。言い換えれば、角質における水分含有量の少ない人を選び、その人の睡眠について、障害の有無を調べ、障害が存した場合に本発明の皮膚外用剤を投与することにより、前記の角質の水分含有量は上昇し、皮膚状態が改善することを指し示している。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、睡眠改善用の化粧料などの皮膚外用剤に応用出来る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミカン科の植物より得られる精油を含有する睡眠改善用の皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
健康な生活を送るためには、食事、睡眠、運動が重要なポイントとされる。しかしながら、今日の生活においては、社会環境及び生活様式の変化等により、多様なストレスと対峙する場面は確実に増加し、不規則な生活を余儀なくされている。このため、規則正しい食事、十分な睡眠、適度な運動等の健康を維持ためによいとされる生活習慣を実行することは、非常に難しくなっている。睡眠は、身体の休息は勿論のこと、身体をコントロ−ルする大脳を休め、肉体的及び精神的なストレスを解消するために重要な役割を果たしている。近年、日常的なストレスにより不眠に悩む人々は、急増している。さらに、その自覚症状は、単純な「睡眠時間が短い」等の睡眠の量に関する自覚症状から、「寝付きが悪い」、「眠りが浅い」、「何度も目覚める」、「目覚めが悪い」、「熟睡感がない」「昼間に眠気がある」等の睡眠の質的な症状へと変化している。これらの自覚症状においては、特に、「寝付きが悪い」、「何度も目覚める」ことに対する改善欲求が高い。また、逆に睡眠障害を自覚する人における、睡眠障害の主訴が、「寝付きが悪い」、「何度も目覚める」ことでもある。
【0003】
肉体及び精神的なストレスから身体を守るためには、充分な睡眠時間を確保するのみならず、睡眠の質を向上させることが重要である。一般に、健常成人の夜間における睡眠は、「頭が起きていて身体が眠っている睡眠」といわれるREM期(睡眠経過を表す睡眠ポリグラフ等においてstage-REMに分類される)と、「身体が起きていて頭が眠っている睡眠」といわれるNREM期(睡眠経過を表す睡眠ポリグラフ等においてstage-1〜stage-4に分類される)のふたつの睡眠相により構成されている。健常成人の睡眠では、入眠後30分から1時間ほどで一日の中で最も深いREM睡眠に入り、その後は、約90分(60分〜120分)の間隔で「深くなったり」、「浅くなったり」を繰り返す睡眠周期(ウルトラディアン・リズム)を経た後、覚醒にいたる。また、睡眠周期中のREM睡眠は、睡眠の経過と共に長くなり、NREM睡眠の深度は、次第に浅くなる傾向が認められる。この様な睡眠のバランスが崩れることにより、睡眠の質が低下し、前記の自覚症状が顕在化することが検証されている。
【0004】
現在、睡眠を評価する方法としては、アンケ−トなどによる実感を伴う評価方法に加え、睡眠ポリグラフ等の客観的な評価方法が広く用いられる。また、睡眠ポリグラフは、脳波(EEG)、呼吸、脚の運動、あごの運動、眼球運動(EOG)、心電図、酸素飽和度、胸壁の運動、腹壁の運動等を記録することにより、「睡眠の質」を評価することが可能である。また、終夜睡眠ポリグラフは、入眠潜時、睡眠の深さと質、睡眠中断を引き起こす症状の有無を測定することにより、睡眠の質を評価することが出来る。この様な睡眠の質的な評価は、単純に睡眠の量を改善するだけでは解決することが出来ない睡眠障害を改善するために、非常に有効な解析手段として確立されている。
【0005】
また、ストレス等による不眠を改善するためには、寝具や睡眠環境を改善するなどのほかに、医療用医薬品の睡眠導入薬が広く使用されている。睡眠導入剤としては、ベンゾジアゼピン系睡眠薬、チエノジアゼピン系睡眠薬、バルビツ−ル系睡眠薬など多様な化学構造を有する睡眠薬(例えば、非特許文献1を参照)が広く利用されている。さらに、抗ヒスタミン薬(例えば、特許文献1を参照)、抗不安薬及び統合失調症薬等も不眠症状を緩和するとして使用されている。これらの睡眠導入薬には、一時的な寝付きの悪さ、眠りの浅さなどの症状を緩和する作用が報告されているが、この様な多くの睡眠導入薬等には、起床時の頭重感、悪心、頭痛などの副作用を伴うことが確認されており、患者の大きな悩みとなっている。さらに、これらの睡眠導入薬には、薬物依存性や、異常行動の問題が存する場合がある(例えば、非特許文献2を参照)ため、その使用のみならず管理が大きな課題となっている。
【0006】
睡眠改善には、前記の化学合成による医薬品のほかに、睡眠改善作用が緩和であり、安全性が高いとされる漢方薬、睡眠改善作用を有するとされる精油を配合した香気成分なども知られている。特に、ミカン科の植物より得られる植物精油には、睡眠時間を延長する作用(例えば、特許文献2を参照)が報告されている。しかしながら、当該精油の作用は、睡眠時間を延長する作用、即ち、「睡眠の量」を改善する作用に限定されており、「睡眠の質」に関する作用は全く知られていない。さらに、ミカン科の植物より得られる植物精油は、抗ヒスタミン剤との併用により、睡眠改善作用を増強するための鎮静作用(例えば、特許文献3を参照)を発現することが知られている。しかしながら、ミカン科の植物より得られる植物精油そのものに、寝つきのよさ、睡眠の深さ等に関連する「睡眠の質」を改善する作用があることは全く知られていなかった。また、植物精油を用いた香気成分によるリフレシュ効果なども広く知られているが、この様な成分は、揮発成分であるために、その作用時間が極めて短く、充分な効果を得るには至っていない。
【0007】
一方、ミカン科の植物より得られる植物精油を配合した皮膚外用剤が、経皮的な投与経路をとることにより、入眠までに掛かった時間(SL:sleep latency)、深睡眠に到達するまでに掛かった時間(Deep sleep Latency)、又は、終夜睡眠中のグレ−ド3及び4の深睡眠の割合を改善する等の「睡眠の質」を改善する作用を有することは、全く知られていなかった。また、当該植物精油を配合した皮膚外用剤が睡眠改善作用に基づき肌状態の改善効果を発揮することも知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−272388号公報
【特許文献2】特開2007−246428号公報
【特許文献3】特開2005−272388号公報
【特許文献4】特開2005−023044号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】New薬理学、南江堂、田中千賀子、加藤隆一編集
【非特許文献2】Minzer M. Z., et.al., Mem. Congnit., 28(8)、1357−1365(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の様な状況を鑑みてなされたものであり、睡眠改善用に好適な、皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、睡眠改善作用を有する物質を求め鋭意努力を重ねた結果、ミカン科に属する植物より選択される1種若しくは2種以上の植物より得られる精油を含有する皮膚外用剤が、優れた睡眠改善作用を示すことを見出し、発明を完成させるに至った。言い換えれば、ミカン科に属する植物より選択される1種若しくは2種以上の植物より得られる植物精油を含有する睡眠改善用の皮膚外用剤を提供することにより、前記課題は解決される。即ち、本発明は、次に示す通りである。
<1> ミカン科(Rutaceae)に属する植物より得られる精油を含有することを特徴とする、睡眠改善用の皮膚外用剤。
<2> ミカン科(Ruraceae)の植物が、ミカン属(Citrus)の植物であることを特徴とする、<1>に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
<3> 前記ミカン科ミカン属の植物が、ダイダイ(Citrus aurantium Linne var. daidai Makino)であることを特徴とする、<1>又は<2>に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
<4> 前記睡眠改善作用が、眠りの質を改善することを特徴とする、<1>又は<3>の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
<5> 前記睡眠改善作用が、入眠までに掛かった時間、深睡眠に到達するまでに掛かった時間、又は、深睡眠の割合の改善であることを特徴とする、<1>〜<4>の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
<6> 前記睡眠改善作用が、起床後の満足度の改善であることを特徴とする、<1>〜<4>の何れか一コ項に記載の睡眠用の皮膚外用剤。
<7> 前記睡眠改善作用が、目を覚ました回数、又は、寝つきのよさの改善であることを特徴とする、<1>〜<4>の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
<8> 肌状態の改善用であることを特徴とする、<1>〜<7>の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
<9> 化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、<1>〜<9>の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
<10> 肌状態に悪化の存する人において、その人の睡眠特性を、入睡までに要する時間、深睡眠に達するまでに要する時間及び睡眠途中での覚醒回数から選択される項で評価し、睡眠特性において障害が認められた人に使用されるべきものであることを特徴とする、<1>〜<9>の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、睡眠改善用に好適な、ミカン科に属する植物精油を含有する皮膚外用剤を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤の入眠までに掛かった時間(SL:Sleep Latency)を示す図である
【図2】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤の深睡眠に到達するまでの時間(Deep sleep latency)を示す図である。
【図3】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤の終夜睡眠中のグレ−ド3及び4の深睡眠の割合を示す図である。
【図4】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤の起床後睡眠に関するアンケ−ト(VAS(visual analogue scale:睡眠満足度)の結果を示す図である。
【図5】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤のセントマリ−質問表による「あなたの睡眠に○をつけてください」に対する回答結果を示す図である。
【図6】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤のセントマリ−質問表による「何回目を覚ましましたか?」に対する回答結果を示す図である。
【図7】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤のセントマリ−質問表による「昨夜は、どのくらいよく眠れたか」に対する回答結果を示す図である。
【図8】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤のセントマリ−質問表による「今朝起床した後、どのくらい頭がすっきりしていましたか?」に対する回答結果を示す図である。
【図9】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤のセントマリ−質問表による「昨夜の睡眠にどのくらい満足しましたか?」に対する回答結果を示す図である。
【図10】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤のセントマリ−質問表による「早く目が覚めて再び眠りにつけずに困りましたか?」に対する回答結果を示す図である。
【図11】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤のセントマリ−質問表による「昨夜眠りにつくのはどのくらいむずかしかったですか?」に対する回答結果を示す図である。
【図12】本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤の角質水分量変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)本発明の睡眠改善用の皮膚外用剤の有効成分である植物精油
本発明の睡眠改善用の皮膚外用剤は、ミカン科の植物より得られる植物精油を含有することを特徴とする。本発明における睡眠改善作用を有する植物精油とは、睡眠改善作用を有する植物抽出物であれば特段の限定なく適応することが出来るが、特に、「睡眠の質」に関する改善作用を有する植物精油が好ましい。本発明における「睡眠の質」を改善する作用としては、睡眠ポリグラフ及び脳波測定による睡眠の質の解析により、「寝つきのよさ」に関係する「入眠までに掛かった時間(SL:Sleep Latency)を短縮する作用」、「睡眠の深さ」に関係する「深睡眠に到達するまでに掛かった時間(Deep Sleep Latency)を短縮する作用」、「終夜睡眠中のグレ−ド3及び4の深睡眠の割合を増加させる作用」、更には、起床後の睡眠に関するアンケ−ト(VAS:visual analogue scale:睡眠満足度)による「睡眠満足度を向上させる作用」、セントマリ−質問表により質問による、「寝つきのよさ」、「眠りにつくまでの時間の短縮」、「目覚めの回数の減少」、「睡眠満足度の向上」等を改善することが出来る作用を有する植物精油が好適に例示出来る。
【0015】
本発明の睡眠改善用の皮膚外用剤の必須成分である植物精油は、ミカン科に属する植物より選択される1種若しくは2種以上の植物より得られる植物精油であることを特徴とする。本発明における「植物精油」とは、ミカン科に属する植物の植物体に含まれる揮発成分であって、水に不溶乃至は難溶の成分であり、ミカン科に属する植物の一部又は全部を用い、水蒸気蒸留、ノルマルへキサンなどの非極性溶媒を用いた薬剤抽出又は圧搾などにより得られる、特有の芳香を有する揮発成分を含む留出物の非水溶性分又はその画分精製物などの総称を意味する。通常、精油は、多種類の化合物の混合物であり、モノテルペン、セスキテルペンなどの炭化水素化合物類、アルコ−ル化合物類、酸化物類、カルボニル化合物類、フェノ−ル化合物類、ラクトン化合物類、エステル化合物類などから構成される。特に、ミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物精油には、1−リナロ−ル、ネロリド−ル、酢酸リナリル、α−テルピネオ−ル、ゲラニオ−ル、酢酸ゲラニルなどが主要な成分として含まれるほか、α−ピネン、ジテルペン、カフェイン、オシメンなどのテルペン類、アンスラニル酸メチル、インド−ルなどの含窒素化合物等が含有されることが知られている。本発明において使用する植物精油は、ミカン科に属する植物から前記方法に従って得られる植物精油を用いることも出来るし、ロベルテ社より市販されている市販品を用いてもよい。
【0016】
本発明の睡眠改善用の皮膚外用剤の必須成分である植物精油を得るための植物体としては、ミカン科に属する植物が好適に例示出来る。前記ミカン科に属する植物としては、ミカン属に属する植物が好ましく、特に好ましくは、ミカン科ミカン属ダイダイが好適に例示出来る。本発明の実施例において用いたミカン科ミカン属の植物は、何れも日本に自生しているものを用いている。ダイダイの原産国は、インドとされており、日本には古くより自生している。その果実は、八百屋などで市販されており、その入手は容易である。ここで、植物精油を精製するために使用される植物部位としては、植物体の全部、又は、花、葉、木部、果皮、樹皮、根、種などの一部であれば、特段の限定なく使用することが出来、特に好ましくは、ミカン科ミカン属ダイダイの花などが好適に例示出来る。かかるミカン科ミカン属ダイダイは、フランス、イタリア、スペイン、モロッコ及びアルジェリアなどを主産地とする植物であり、古くは中国より日本に伝わり、日本国内においては、本州をはじめとする広い範囲にその成育が認められる植物である。本発明の実施例においては、日本にて生育したミカン科ミカン属ダイダイより得られた植物精油を用いた。
【0017】
本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物精油は、前記の睡眠の質を改善する作用、並びに、肌状態の改善作用を有する。かかる効果を奏するためには、前記ミカン科に属する植物より得られる植物精油を、皮膚外用剤全量に対し総量で、0.00001質量%〜10質量%含有することが好ましく、より好ましくは、0.001質量%〜5質量%、さらに好ましくは、0.01質量%〜3質量%である。これは、かかる成分が少なすぎると睡眠改善作用、並びに、肌状態の改善作用が発現しない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、この系の自由度を損なう場合が存するためである。また、当該成分を皮膚外用剤に配合することにより、標的分子への集積性が高まり前記効果の向上、前記効果の持続時間延長、更には、高い選択性及び安全性を期待することが出来る。
【0018】
(2)本発明の睡眠改善用の皮膚外用剤
本発明の睡眠改善用の皮膚外用剤は、ミカン科の植物より得られる植物精油を含有することを特徴とする。本発明における睡眠改善用の皮膚外用剤は、就寝前に、美容液などの化粧料の態様をとる皮膚外用剤として、顔面などに塗布し、経皮的に吸収させることにより、前記の「寝つきのよさ」、「睡眠の深さ」、更には、「睡眠の満足度」等の睡眠の質を改善する作用を発現する。これは、揮発物質を含有する香気成分として使用する場合には、空気中に広く拡散し、その効果及び作用持続時間が充分に得られないためであり、皮膚外用剤として使用することにより、その効果発現及び作用時間を制御することが出来る。さらに、化粧料など態様をとる皮膚外用剤として使用することにより、医薬品などの投薬時とは異なり、精神的なリフレッシ及びリラック効果をもたらすことが期待される。
【0019】
本発明の皮膚外用剤においては、前記成分以外に、通常の化粧料や皮膚外用医薬で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリ−ブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワ−油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パ−ム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、イソステアリルアルコ−ル、ベヘニルアルコ−ル、オクチルドデカノ−ル、ミリスチルアルコ−ル、セトステアリルアルコ−ル等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコ−ル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコ−ル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロ−ルプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロ−ルプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコ−ン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノ−ルアミンエ−テル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレ−ト、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコ−ル脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコ−ル等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエ−テル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエ−ト、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレ−ト等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレ−ト等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコ−ルモノオレ−ト、POEジステアレ−ト等)、POEアルキルエ−テル類(POE2−オクチルドデシルエ−テル等)、POEアルキルフェニルエ−テル類(POEノニルフェニルエ−テル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエ−テル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエ−テル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコ−ル、グリセリン、1,3−ブチレングリコ−ル、エリスリト−ル、ソルビト−ル、キシリト−ル、マルチト−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、ジグリセリン、イソプレングリコ−ル、1,2−ペンタンジオ−ル、2,4−ヘキサンジオ−ル、1,2−ヘキサンジオ−ル、1,2−オクタンジオ−ル等の多価アルコ−ル類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパ−ル剤類;レ−キ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマ−等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノ−ル等の低級アルコ−ル類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテ−ト、ビタミンB6ジオクタノエ−ト、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロ−ル、β−トコフェロ−ル、γ−トコフェロ−ル、ビタミンEアセテ−ト等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノ−ル等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
【0020】
これらの必須成分、任意成分を常法に従って処理し、ロ−ション、乳液、エッセンス、クリ−ム、パック化粧料、洗浄料などに加工することにより、本発明の皮膚外用剤は製造できる。皮膚に適応させることの出来る剤型であれば、いずれの剤型でも可能であるが、有効成分が皮膚に浸透して効果を発揮することから、皮膚への馴染みの良い、ロ−ション、乳液、クリ−ム、エッセンスなどの剤型がより好ましい。
【0021】
尚、本発明のミカン科に属する植物より得られる精油を含有する皮膚外用剤としては、一般的に広く使用される、化粧料や医薬部外品に適用するのが好ましい。本発明の皮膚外用剤としては、皮膚に外用で適用されるものであれば特段の限定はなく応用でき、例えば、医薬部外品を含む化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨等が好ましく例示できる。これは本発明のミカン科の植物より得られる植物精油及び植物精油を含有した皮膚外用剤の安全性が高いため、連続的に使用することが可能であるためである。また、睡眠改善作用を発揮することにより、本発明の皮膚外用剤は、睡眠障害に起因する肌荒れなどの肌障害を改善或いは悪化を予防することが出来る。睡眠障害に起因する肌障害は、まず肌障害の有無を調べ、しかる後に肌障害の存した人に対して、睡眠障害の有無の鑑別を行い、睡眠障害と肌障害とをともに有する人を以て睡眠障害に起因する肌障害を有する人と判別することができる。本発明の皮膚外用剤はこの様な人に用いることが好ましい。前記肌障害は、例えば、角質における水分含有量の少ない人、経表皮水分蒸散値の高い人や、表面の角層細胞において、平均面積が異常に小さい、重層に角層細胞層が剥離する、角層細胞に核の残ったものが存するなどの特徴を持った人の皮膚と定義できる。本発明の皮膚外用剤はこの様な人を対象にすることが好ましい。即ち、肌障害が存することを確認し、その後、睡眠障害が存することも確認した人を使用の対象とすることが好ましい。
【0022】
以下に、本発明について、実施例を挙げて更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ、限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0023】
<本発明の睡眠改善用の皮膚外用剤の製造>
表1に記載の処方成分を室温にて混合することにより、本発明の睡眠改善用の皮膚外用剤(皮膚外用剤1)を製造した。また、「本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物精油」を「スクワラン」に置換した比較例1を同様に作製した。
【0024】
【表1】
【実施例2】
【0025】
<本発明の皮膚外用剤を用いた睡眠の質の改善効果に関する検討>
被験者(20〜30代女性9名)により試験を実施した。被験者は就寝2時間前および10分前に精油配合(皮膚外用剤1)、または精油無配合の製剤(比較例1)を顔・デコルテ等に使用してもらい、終夜睡眠ポリグラフィ−を測定した。測定項目は、脳波(EEG)、眼球運動(EOG)、筋電図(EMG)、体位、酸素飽和度等とし、睡眠状態、特に、入眠までに掛かった時間(SL:Sleep Latency)、深睡眠に到達するまでに掛かった時間(Deep Sleep Latency)、終夜睡眠中グレ−ド3及び4の深睡眠の割合、に対する精油の効果を検討した。また同時に、起床後睡眠に関するアンケ−ト(VAS(visual analogue scale:睡眠満足度)及びセントマリ−質問表(質問内容は表2に記載)にて睡眠満足度を調査した。セントマリ−質問表においては、各項目の評価を、1〜5点のスコアにより評価した。結果を図1〜図11に示した。
【0026】
【表2】
【0027】
図1の結果より、本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物抽出物を含有する皮膚外用剤(皮膚外用剤1)には、顕著な入眠までに掛かった時間の短縮(SL:Sleep Latency)が認められた。また、図2及び図3の結果より、深睡眠に到達するまでに掛かった時間(Deep Sleep Latency)の時間短縮、並びに、終夜睡眠中グレ−ド3及び4の深睡眠の割合の増加が認められた。上記のポリグラフィ−解析の結果より、本発明のミカン科の植物より得られる植物精油を含有する皮膚外用剤には、睡眠改善作用、取り分け、「寝つきのよさ」、「睡眠の深さ」等の睡眠の質に関する改善効果が認められた。一方、図4に示した起床時に関するアンケ−ト(VAS(visual analogue scale:睡眠満足度)結果より、本発明の皮膚外用剤1には、比較例1と比較し、顕著な睡眠の満足度の向上が認められた。また、セントマリ−質問表による質問の結果より、本発明の皮膚外用剤1には、睡眠改善作用、特に、「目覚めの回数の減少」、「寝つきのよさの改善」に関し、統計的な有意差を持って睡眠の質に関する改善効果が認められた。上記結果より、本発明のミカン科の植物より得られる植物精油を含有した皮膚外用剤には、顕著な睡眠改善作用が認められた。
【実施例3】
【0028】
<本発明の皮膚外用剤を用いた肌状態に関する効果検討>
前記の睡眠の質の改善効果に関する検討と同様に、被験者9名に関し、睡眠後の肌状態に関する精油の効果を検討した。就寝2時間前および10分前に精油配合(皮膚外用剤1)または精油無配合の製剤(比較例1)を顔に使用してもらい、翌朝起床後、使用右頬部位における角層水分量を測定した。コルネオメ−タ−(Courage+Khazaka社製、corneometer CM825)にて右頬部位を5回測定し、最高値と最低値を除いた3つの値の平均値を解析に用いた。検定は対応のあるT検定にて行った。結果を図12に示す。
【0029】
図7の結果より、本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物精油を含有する皮膚外用剤(皮膚外用剤1)には、起床後の角質水分量を増加させる効果が認められた。本発明のミカン科ミカン属ダイダイより得られる植物精油を含有する皮膚外用剤には、角質における水分含量を増加させることによる保湿作用、肌状態の改善作用が存することが明らかとなった。言い換えれば、角質における水分含有量の少ない人を選び、その人の睡眠について、障害の有無を調べ、障害が存した場合に本発明の皮膚外用剤を投与することにより、前記の角質の水分含有量は上昇し、皮膚状態が改善することを指し示している。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、睡眠改善用の化粧料などの皮膚外用剤に応用出来る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミカン科(Rutaceae)に属する植物より得られる精油を含有することを特徴とする、睡眠改善用の皮膚外用剤。
【請求項2】
ミカン科(Ruraceae)の植物が、ミカン属(Citrus)の植物であることを特徴とする、請求項1に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記ミカン科ミカン属の植物が、ダイダイ(Citrus aurantium Linne var. daidai Makino)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記睡眠改善作用が、眠りの質を改善することを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
【請求項5】
前記睡眠改善作用が、入眠までに掛かった時間の短縮、深睡眠に到達するまでに掛かった時間の短縮、又は、深睡眠の割合の増加であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
【請求項6】
前記睡眠改善作用が、起床後の満足度の向上であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一コ項に記載の睡眠用の皮膚外用剤。
【請求項7】
前記睡眠改善作用が、目を覚ました回数の減少、又は、寝つきのよさの向上であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
【請求項8】
睡眠障害に起因する肌状態の悪化における、肌状態の改善用であることを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
【請求項9】
化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
【請求項10】
肌状態に悪化の存する人において、その人の睡眠特性を、入睡までに要する時間、深睡眠に達するまでに要する時間及び睡眠途中での覚醒回数から選択される項で評価し、睡眠特性において障害が認められた人に使用されるべきものであることを特徴とする、請求項1〜9の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項1】
ミカン科(Rutaceae)に属する植物より得られる精油を含有することを特徴とする、睡眠改善用の皮膚外用剤。
【請求項2】
ミカン科(Ruraceae)の植物が、ミカン属(Citrus)の植物であることを特徴とする、請求項1に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記ミカン科ミカン属の植物が、ダイダイ(Citrus aurantium Linne var. daidai Makino)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記睡眠改善作用が、眠りの質を改善することを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
【請求項5】
前記睡眠改善作用が、入眠までに掛かった時間の短縮、深睡眠に到達するまでに掛かった時間の短縮、又は、深睡眠の割合の増加であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
【請求項6】
前記睡眠改善作用が、起床後の満足度の向上であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一コ項に記載の睡眠用の皮膚外用剤。
【請求項7】
前記睡眠改善作用が、目を覚ました回数の減少、又は、寝つきのよさの向上であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
【請求項8】
睡眠障害に起因する肌状態の悪化における、肌状態の改善用であることを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
【請求項9】
化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載の睡眠改善用の皮膚外用剤。
【請求項10】
肌状態に悪化の存する人において、その人の睡眠特性を、入睡までに要する時間、深睡眠に達するまでに要する時間及び睡眠途中での覚醒回数から選択される項で評価し、睡眠特性において障害が認められた人に使用されるべきものであることを特徴とする、請求項1〜9の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−37721(P2011−37721A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183658(P2009−183658)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】
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