説明

知覚過敏歯の処置方法

本発明は、食品、化粧品又は医薬品を、歯を減感させる(teeth-desensitising)有効量のポリオールと混合することを含む、食品、化粧品又は医薬品に歯減感効果を付与する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処置の必要なヒト又は動物の知覚過敏歯(知覚過敏症の歯)を処置する方法、組成物及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
歯の象牙質層は、通常、象牙細管(dentine channel)を含んでいることがよく知られている。エナメル質の損失及び/又は歯肉退縮によって、この細管の外部刺激への露出が生じ得ると考えられている。このような露出した細管は、熱い若しくは冷たい流体又は加えられた機械的圧力などの外部刺激に対する知覚過敏現象の原因である可能性があると推測されている。
【0003】
知覚過敏歯は、歯の表面に様々な物質を塗布することによって治療し得ることがよく知られている。米国特許第3,863,006号には、硝酸塩による歯の減感(desensitising)が記載されている。米国特許第3,689,636号には、塩化物塩の溶液による歯の減感が記載されている。米国特許第4,057,021号には、歯の表面にアルカリ金属塩とシュウ酸アンモニウムの水溶液を塗布することによる知覚過敏歯の減感が記載されている。米国特許第4,631,185号及び同第4,751,072号には、カリウム塩処理による歯の減感が記載されている。米国特許第4,990,327号及び同第3,122,483号には、ストロンチウムイオン及び/又はフッ化物イオンによる歯の減感が記載されている。米国特許第4,992,258号には、モンモリロナイト粘土を含む歯磨剤を塗布することによる歯の減感が記載されている。米国特許第4,011,309号には、クエン酸、クエン酸ナトリウム及び非イオン性ポリオール界面活性剤を含む減感歯磨組成物が記載されている。米国特許第3,888,976号及び同第3,772,431号には、発泡性洗口錠剤中における亜鉛イオン又はストロンチウムイオンを含有する収斂性減感剤の使用が記載されている。米国特許第3,863,006号には、硝酸塩による歯の減感が記載されている。米国特許第3,689,636号には、塩化物塩の溶液による歯の減感が記載されている。米国特許第4,634,589号及び同第4,710,372号には、知覚過敏歯治療用アパタイト粒子を含有する歯磨剤が記載されている。米国特許第4,685,883号には、病巣へ化学治療薬剤を送達する生分解性マイクロスフェアの使用が記載され、米国特許第3,956,480号には、クロルヘキシジンなどの陽イオン性殺菌剤と陰イオン性ポリマーの錯体による歯の治療が記載されている。国際公開第2004/028262号には、歯の損傷の再石灰化を補助し得る水難溶性カルシウム塩又はその複合体を含むコーティングされたチューインガムが開示されている。
【0004】
このように、先行技術は、歯を減感するための特別に調製された又は高価な薬物を含有する、錠剤又は溶液などの医薬品を教示している。一方、歯の損傷を再石灰化するのを助けるが、その目的を達成するためにやはり特殊な物質、すなわちカルシウム塩又はその複合体を必要とするチューインガムなどの菓子製品が知られている。一部の例では、先行技術の治療法は、他の理由、例えば栄養面での考慮のために、すでに食品、化粧品又は医薬品に存在しているが、所望の減感効果を達成するためには食品中の濃度を大幅に増加させる必要がある化合物に頼っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,863,006号
【特許文献2】米国特許第3,689,636号
【特許文献3】米国特許第4,057,021号
【特許文献4】米国特許第4,631,185号
【特許文献5】米国特許第4,751,072号
【特許文献6】米国特許第4,990,327号
【特許文献7】米国特許第3,122,483号
【特許文献8】米国特許第4,992,258号
【特許文献9】米国特許第4,011,309号
【特許文献10】米国特許第3,888,976号
【特許文献11】米国特許第3,772,431号
【特許文献12】米国特許第4,634,589号
【特許文献13】米国特許第4,710,372号
【特許文献14】米国特許第4,685,883号
【特許文献15】米国特許第3,956,480号
【特許文献16】国際公開第2004/028262号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、その必要がある動物又はヒトにおいて予防的又は治療的に歯を減感させることが可能な、さらなる且つ特に改善された使用、方法及び組成物を提供するニーズがまだ残されている。このことは特に、先行技術の歯の減感処置が、高価な又は特別に調製した又は大量の活性物質、例えば無機物、塩、ポリマー又はマイクロスフェアの使用を伴うことに起因している。従って、特に歯を減感させるために、消費者が手軽に使え、且つ広く受け入れられている食品成分を使用する、歯を減感させるための教示を提供することが、本発明の特別な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の根底にある技術的課題は、特許請求の範囲の教示によって解決された。特に本発明は、ポリオール、特に糖アルコール、特にイソマルト、マルチトール又はキシリトールそれぞれ単独又は組み合わせ、好ましくはイソマルトが(これらは全て広く受け入れられており周知な糖代替物である)、特にそれと混合するさらなる物質を必要とすることなく、且つ、ポリオール、特にイソマルト、マルチトール又はキシリトール、好ましくはイソマルトを食品、化粧品又は医薬品に従来用いられている範囲を超えた濃度又は量で使用する必要なく、ヒト又は動物の歯を減感させるという驚くべき且つ非常に有利な能力を有するという教示を提供することによって、根底にある技術的課題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、痛覚感受性試験の統計的評価のグラフによる提示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特に好ましい実施形態において、本発明は、ポリオール、特にイソマルト、マルチトール及びキシリトールからなる群より選択される1種以上のポリオールの、摂取者の口内の唾液産生及び唾液分泌を改変する能力を使用し、特に唾液分泌及び/又は唾液産生を増加させ、特に長期にわたる唾液分泌及び/又は唾液産生をもたらす。
【0010】
特に好ましい実施形態において、本発明は、食品、化粧品又は医薬品を、歯を減感させる(teeth-desensitising)のに有効な量のポリオール、特にイソマルト、マルチトール又はキシリトールからなる群より選択される1種以上のポリオールと混合することを含む、食品、化粧品又は医薬品に歯の減感効果を付与する方法を提供することによって、根底にある課題を解決する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、有効量のポリオール、特にイソマルト、マルチトール及びキシリトールからなる群より選択される1種以上を動物又はヒトに投与(塗布)することを含む、処置の必要な動物又はヒトにおける知覚過敏歯の予防的又は治療的処置方法を提供することによって、根底にある課題を解決する。
【0012】
さらに別の実施形態において、本発明は、有効量のポリオール、特にイソマルト、マルチトール及びキシリトールからなる群より選択される1種以上を、歯の表面に投与して歯を減感させることを含む、知覚過敏歯の減感方法に関する。
【0013】
さらなる実施形態において、本発明は、ポリオール、特にイソマルト、マルチトール及びキシリトールからなる群より選択される1種以上を動物又はヒトの歯を減感させるのに有効な量で医薬品、化粧品又は食品中に用いる、動物又はヒトにおける知覚過敏歯の予防的又は治療的処置用食品、化粧品又は医薬品の製造のためのポリオール、特にイソマルト、マルチトール及びキシリトールからなる群より選択される1種以上の使用、又はポリオール、特にイソマルト、マルチトール及びキシリトールからなる群より選択される1種以上を含有する調製物の使用を提供することによって、根底にある課題を解決する。
【0014】
本発明はまた、知覚過敏歯を予防的又は治療的に処置するための、特に知覚過敏歯を減感させるための、ポリオール、特にイソマルト、マルチトール及びキシリトールからなる群より選択される1種以上の使用、又はポリオール、特にイソマルト、マルチトール及びキシリトールからなる群より選択される1種以上を含有する調製物の使用に関する。
【0015】
本発明はまた、ポリオール、特にイソマルト、マルチトール及びキシリトールからなる群より選択される1種以上を含む、知覚過敏歯の治療用食品、化粧品又は医薬品に関し、ここで、知覚過敏歯を治療するために、ポリオール、特にイソマルト、マルチトール及びキシリトールからなる群より選択される1種以上が特定され、また、これらは知覚過敏歯を治療することが可能である。本発明はまた、知覚過敏歯を治療するためのポリオール、特にイソマルト、マルチトール及びキシリトールからなる群より選択される1種以上のポリオールに関する。本発明はまた、特に食品、化粧品又は医薬品中に歯減感剤として使用するための、ポリオール、特にイソマルト、マルチトール及びキシリトールからなる群より選択される1種以上のポリオールに関する。
【0016】
本発明において、「からなる群より選択される1種以上」という用語は、該群の任意の個々のメンバー及び該メンバーのうち少なくとも2種の組み合わせを明確に特定するものである。イソマルト、マルチトール及びキシリトールの群からの「組み合わせ」、特にイソマルト、マルチトール又はキシリトールのうち少なくとも2種の「組み合わせ」とは、a)イソマルト及びマルチトール、b)イソマルト及びキシリトール、c)マルチトール及びキシリトール又はd)イソマルト、マルチトール及びキシリトールを意味するものである。
【0017】
特に好ましい実施形態において、本発明は、摂取者の口内の唾液産生及び唾液分泌を改変するというイソマルトの能力を使用し、特に唾液分泌及び/又は唾液産生を増加させ、特に持続的な唾液分泌及び/又は唾液産生をもたらす。
【0018】
特に好ましい実施形態において、本発明は、食品、化粧品又は医薬品を、歯を減感させるのに有効な量のイソマルトと混合することを含む、食品、化粧品又は医薬品に歯の減感効果を付与する方法を提供することによって、根底にある課題を解決する。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、有効量のイソマルトを動物又はヒトに投与することを含む、処置の必要な動物又はヒトにおける知覚過敏歯の予防的又は治療的処置方法を提供することによって、根底にある課題を解決する。
【0020】
さらに別の実施形態において、本発明は、有効量のイソマルトを、歯を減感させるために歯の表面に投与することを含む、知覚過敏歯の減感方法に関する。
【0021】
さらなる実施形態において、本発明は、イソマルトを動物又はヒトの歯を減感させるための有効量で医薬品、化粧品又は食品中に用いる、動物又はヒトにおける知覚過敏歯の予防的又は治療的処置用食品、化粧品又は医薬品の製造のためのイソマルトの使用、又はイソマルトを含有する調製物の使用を提供することによって、根底にある課題を解決する。
【0022】
本発明はまた、知覚過敏歯を予防的又は治療的に処置するための、特に知覚過敏歯を減感させるための、イソマルトの使用、又はイソマルトを含有する調製物の使用に関する。
【0023】
本発明はまた、イソマルトが知覚過敏歯を治療するために選択され、且つ知覚過敏歯を治療可能である、イソマルトを含む知覚過敏歯の治療用食品、化粧品又は医薬品に関する。本発明はまた、知覚過敏歯の治療用イソマルトに関する。本発明はまた、特に食品、化粧品又は医薬品中に歯減感剤として使用するためのイソマルトに関する。
【0024】
従って、本発明は、ポリオール、特にイソマルト、マルチトール又はキシリトールを単独で又は組み合わせて、好ましくはイソマルトを単独で、齲蝕原性(akariogenic)の糖の代替物としての従来の用途に加え、ヒト又は動物において特に知覚過敏歯を治療する目的で、すなわち歯を減感させる目的で使用することができる、という有利な教示を提供する。従って、本発明は、摂取者の歯に、特に歯の表面に、有効量のポリオール、特にイソマルト、マルチトール又はキシリトールを単独で又は組み合わせて、好ましくはイソマルトを単独で、歯を減感させるために投与(塗布)することによって、予防的又は治療的方法で知覚過敏歯を処置するための技術的教示を当業者に提供する。特に好ましい実施形態において、投与されるポリオールの量、特にイソマルト、マルチトール又はキシリトール単独又は組み合わせた量、好ましくはイソマルト単独の量は、ポリオール、特にイソマルト、マルチトール又はキシリトールを単独で又は組み合わせて、好ましくはイソマルトを単独で、従来の糖代替物として様々な食品、化粧品又は医薬品中に用いる場合に通常使用する量である。本教示は、当業者に、知覚過敏歯を治療する有利な可能性を開き、それにより、(知覚過敏歯を治療する必要のない)食品、化粧品又は医薬品中には存在しないか、あるいは少なくとも用いられている量では存在しない、コストがかかり、潜在的に毒性の(例えばストロンチウム塩)又は特別に調製した成分を使用する必要性を回避する。
【0025】
本発明において、イソマルトは、1.1-GPM(1-O-α-D-グルコピラノシル-D-マンニトール)及び1.6-GPS(6-O-α-D-グルコピラノシル-D-ソルビトール)の混合物、特に1〜99重量%の1.1-GPMと99〜1%の1.6-GPSを含む混合物を意味すると解される(重量%で与えられるすべての値は乾燥物質に基づく)。特に好ましい実施形態において、イソマルトは、1.1-GPM及び1.6-GPSの等モル又はほぼ等モルの混合物である標準イソマルト(イソマルトST)であり得る。好ましい実施形態において、イソマルトは、43〜57%の1.6-GPS及び57〜43%の1.1-GPMの混合物、好ましくは等モルの1.1混合物である(重量%で与えられる値は乾燥物質に基づく)。
【0026】
さらに好ましい実施形態において、本発明で用いる場合、イソマルトという用語は、イソマルト変異体も含むものである。そのようなイソマルト変異体は、好ましい実施形態において、イソマルトGS、1.6-GPSに富んだ混合物、1.1-GPMに富んだ混合物、又は1.1-GPS(1-O-α-D-グルコピラノシル-D-ソルビトール)をさらに含む1.1-GPMと1.6-GPSを含有する混合物であり得る。
【0027】
本発明において、イソマルトGSとは、71〜79%の1.6-GPS及び21〜29%の1.1-GPM、好ましくは75%の1.6-GPS対25%の1.1-GPMの比率における1.6-GPS及び1.1-GPMの混合物である。
【0028】
特に好ましい実施形態において、1.1-GPMに富んだ混合物とは、混合物が57超〜99重量%の1.1-GPM及び43未満〜1重量%の1.6-GPSを含む、1.1-GPM及び1.6-GPSを含む混合物である。本発明において、1.6-GPSに富んだ混合物とは、1.1-GPMの量が43重量%未満〜1%であり、1.6-GPSの量が57超〜99重量%である、1.1-GPM及び1.6-GPSを含む混合物である(重量%で与えられるすべての値は乾燥物質に基づく)。
【0029】
本発明のさらに好ましい実施形態において、用いるイソマルトは、粉砕及び凝集したイソマルト、特に粉砕したイソマルト粒子が100μm未満、好ましくは50μm未満の直径を有する粉砕及び凝集したイソマルトである。好ましくは、そのような粉砕及び凝集したイソマルトはイソマルトDCである。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、イソマルト、特に標準イソマルト又はイソマルトGSは、粒子の90%が100μm未満、好ましくは50μm未満の直径を有する、粒子の形態で使用する。
【0031】
本明細書に記載する場合、粒子サイズは、走査型電子顕微鏡(SEM)又は他の光学的技術若しくはスクリーニング技術によって、例えばコールターカウンターを用いて測定する。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、食品とは、ヒト又は動物が主に栄養のために、場合により楽しみのためにも摂取するのに適した任意の物質、特に炭水化物、タンパク質、水及び/又は脂肪を大抵含有する物質であると解される。特に、本発明における食品は、固体、半固体又は液体であってよい。特に、本発明における食品は、好ましい実施形態において、甘い物又は高級食品と呼ばれることもある菓子製品であってもよい。さらに好ましい実施形態において、食品は、焼いた食品、機能的食品、シリアル、乳製品、果物ベースの製品、経腸栄養剤、抽出物、濃縮物、飲料、又はコーティングされた(coated)製品であってもよい。
【0033】
特に好ましい実施形態において、本発明でいう医薬品は、処置の必要なヒト又は動物を予防的又は治療的に処置するために決定され、且つ、その処置に適した任意の組成物であり得る。そのような医薬品は、製薬上許容される担体、場合により少なくとも1種の補助物質、及び本発明に従ってポリオール、特にイソマルト、マルチトール又はキシリトールをそれぞれ単独で又は組み合わせて、好ましくはイソマルトを含み得る。特に好ましい実施形態において、そのような医薬品は、好ましい実施形態において、錠剤、歯磨剤、ペースト剤、液剤、カプセル剤、ゲル剤又は被覆錠剤あるいは被覆カプセル剤の形態であってよい。
【0034】
特に好ましい実施形態において、本発明でいう化粧品は、人体又は動物体の外観又は匂いを増進又は保護するために用いる物質又は組成物である。化粧品は、粉末、歯の漂白剤、マウスウォーター(mouth water)、ローション、クリーム、スキンケア調製物、リップスティック、顔用化粧品、ベビー用品、顔用オイル、バター又はジェルを含む。
【0035】
本発明において、「組成物」という用語は、食品、化粧品及び医薬品に関するものである。
【0036】
ポリオールを含有する組成物、特にイソマルト、マルチトール又はキシリトールを含有する組成物がコーティングされた製品である場合、本発明は、特に好ましい実施形態において、ポリオール、特にイソマルト、マルチトール又はキシリトール、好ましくはイソマルトが製品のコーティング中に存在する唯一の歯減感剤である、ポリオール、特にイソマルト、マルチトール又はキシリトール、好ましくはイソマルトを歯減感剤として用いるコーティングされた製品、それらの使用又はその使用方法を予期している。特に好ましい実施形態において、コーティングされた製品は、歯減感効果をもたらすのに適したいかなる他の物質もコーティング中に用いない。従って、特に好ましい実施形態において、本発明は、コーティングがポリオール、特にイソマルト、キシリトール又はマルチトール、好ましくはイソマルトを含むが、カルシウム、特にカルシウム塩又はカルシウム組成物を含まない、コーティングされた製品、その使用方法又はそれらの使用を予期する。
【0037】
さらに好ましい実施形態において、本発明はコーティングされた製品のコーティングがポリオール、特にイソマルト、キシリトール又はマルチトール、好ましくはイソマルトを含むが、リン酸カルシウム塩を含まない、コーティングされた製品、その使用方法又はそれらの使用に関する。さらに好ましい実施形態において、本発明は、コーティングされた製品のコーティングが、ポリオール、特にイソマルト、キシリトール又はマルチトール、好ましくはイソマルトを含むが、アルギニンを含有する複合体を含まない、コーティングされた製品、その使用方法又はそれらの使用を予期する。さらに好ましい実施形態において、本発明は、コーティングされた製品のコーティングがポリオール、特にイソマルト、キシリトール又はマルチトール、好ましくはイソマルトを含むが、神経減感剤、例えばカリウム塩、ストロンチウム塩又は亜鉛イオン若しくはストロンチウムイオンの組み合わせ、あるいはそれらの混合物を含まない、コーティングされた製品、その使用方法又はそれらの使用に関する。さらに好ましい実施形態において、本発明は、コーティングされた製品のコーティングがポリオール、特にイソマルト、キシリトール又はマルチトール、好ましくはイソマルトを含むが、酵素又は改変された酵素を含まない、コーティングされた製品、その使用方法又はそれらの使用に関する。さらに好ましい実施形態において、本発明は、コーティングされた製品のコーティングがポリオール、特にイソマルト、キシリトール又はマルチトール、好ましくはイソマルトを含むが、生物活性ガラス粒子を含まない、特にどんなガラス粒子も含まない、コーティングされた製品、その使用方法又はそれらの使用に関する。さらに好ましい実施形態において、本発明は、コーティングされた製品のコーティングがポリオール、特にイソマルト、キシリトール又はマルチトール、好ましくはイソマルトを含むが、a)ショ糖を含まず、b)グルコースを含まず、c)ラクトースを含まず、d)マルトースを含まず、e)フルクトースを含まず又はf)前記糖のすべて若しくは一部の組み合わせを含まない、コーティングされた製品、その使用方法又はそれらの使用に関する。
【0038】
特に好ましい実施形態において、本発明は、ポリオール、特にイソマルト、マルチトール又はキシリトール、好ましくはイソマルトが方法、使用又は組成物中に用いる唯一の歯減感剤である、ポリオール、特にイソマルト、マルチトール又はキシリトール、好ましくはイソマルトを歯減感剤として用いる組成物、使用又は方法を予期する。特に好ましい実施形態において、この使用、方法又は組成物は、歯減感効果をもたらすのに適した他の物質を使用しない。従って、特に好ましい実施形態において、本発明は、カルシウム、特にカルシウム塩又はカルシウム組成物を含まない方法、使用又は組成物を予期する。さらに好ましい実施形態において、本発明は、リン酸カルシウム塩を含まない方法、使用及び組成物に関する。さらに好ましい実施形態において、本発明は、アルギニンを含有する複合体を含まない方法、使用又は組成物を予期する。さらに好ましい実施形態において、本発明の方法、使用又は組成物は、神経減感剤、例えばカリウム塩、ストロンチウム塩又は亜鉛イオン若しくはストロンチウムイオンの組み合わせ、あるいはそれらの混合物を含まない。さらに好ましい実施形態において、本発明は、酵素又は改変された酵素を含まない方法、使用及び組成物に関する。さらに好ましい実施形態において、本発明は、生物活性ガラス粒子を含まない、特にどんなガラス粒子も含まない方法、使用及び組成物に関する。さらに好ましい実施形態において、本発明は、a)ショ糖を含まず、b)グルコースを含まず、c)ラクトースを含まず、d)マルトースを含まず、e)フルクトースを含まず又はf)前記糖のすべて若しくは一部の組み合わせを含まない方法、使用又は組成物に関する。
【0039】
本発明の特に好ましい実施形態において、方法、使用又は組成物、特に菓子製品は、唯一の糖アルコールとしてイソマルトを用いる、すなわち他の糖アルコールを含まない。
【0040】
本発明の特に好ましい実施形態において、本発明のコーティングされた組成物又はその利用方法若しくは使用方法、特にコーティングされた菓子製品は、唯一の糖アルコールとして、コーティング中にイソマルトを用いる、すなわちコーティングは他の糖アルコールを含まない。
【0041】
本発明の好ましい実施形態において、方法、使用又は組成物、特に菓子製品は、糖を含まない。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、本発明のコーティングされた組成物のコーティング又はその利用方法若しくは使用方法、特にコーティングされた菓子製品のコーティングは、糖を含まない。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、方法、使用又は組成物、特に菓子製品は、歯にやさしい(tooth-friendly)。
【0044】
さらに好ましい実施形態において、食品、特に菓子製品の具体的な性質に応じて、化粧品又は医薬品添加物が、食品、化粧品又は医薬品あるいはそのコーティング中に存在し得ることは明らかである。
【0045】
本発明において、製品添加物は、製造工程自体に影響を与える、及び/又は製品の特徴(例えば官能性、感覚性、生理的挙動、貯蔵性又は光学的挙動、あるいはその栄養価)に影響を与えるために製造工程に添加され得る、工程又は最終的に得られる製品に関連し得る物質である。
【0046】
特に好ましい実施形態において、本発明の食品、化粧品又は医薬品は、5〜100重量%、特に10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、特に40〜99.9重量%、好ましくは45〜90重量%、好ましくは60〜99重量%及び好ましくは30〜60重量%のポリオール、特にイソマルト、キシリトール又はマルチトールをそれぞれ単独で又は組み合わせて、好ましくはイソマルトを含み(各重量%は製品全体の乾燥物質に基づく)、残りは製品添加物で100重量%まで合わせる。
【0047】
特に好ましい実施形態において、食品、化粧品又は医薬品がコーティングされた製品である場合に、好ましい実施形態では、コーティングは70〜100重量%、好ましくは80〜99重量%、好ましくは50〜95重量%、特に50〜75重量%、好ましくは80〜99重量%、好ましくは85〜99重量%、最も好ましくは90〜99重量%のポリオール、特にイソマルト、キシリトール又はマルチトールをそれぞれ単独で又は組み合わせて、好ましくはイソマルトを含み(各重量%はコーティングの乾燥物質に基づく)、残りは製品添加物、特に強力な甘味料、アラビアゴム又はゼラチン及び着色料で100重量%まで合わせることが予期される。
【0048】
食品若しくは特に菓子製品、化粧品又は医薬品の性質に応じて、ポリオール、特にイソマルト、キシリトール又はマルチトールそれぞれ単独又は組み合わせ、好ましくはイソマルトに加えて、それは、0〜95重量%、特に0〜75重量%、好ましくは30〜80重量%、好ましくは40〜70重量%及び好ましくは0.1〜60重量%、好ましくは10〜55重量%(重量%で与えられるすべての%は製品全体の乾燥物質に基づく)、最も好ましくは1〜40重量%の製品添加物を含み、それらはすべて、ポリオール、特にイソマルト、キシリトール又はマルチトールそれぞれ単独又は組み合わせ、好ましくはイソマルトと共に100%まで合わせる。
【0049】
本発明の好ましい実施形態において、製品添加物は、強力な甘味料、親水コロイド、ガム基礎剤、可塑剤(plastifier)、潤滑剤、乳化剤、タンパク質、タンパク質成分、ミルク成分、植物性原料、炭水化物、小麦粉、増量剤(bulking agent)、乳製品原料、果物、野菜、脂肪及び脂肪代用品、植物性脂肪、ビタミン、無機物、医薬品活性成分、保存料、香料、香味料、例えばペパーミント、メントール、果物、イチゴフレーバー、着色料、TiO2、水、食用酸、例えばクエン酸、及び食物繊維からなる群より選択される。
【0050】
本発明の好ましい実施形態において、強力な甘味料は、チクロ、サッカリン、アスパルテーム、グリシリシン(glycyrrhicine)、ネオヘスペリジン−ジヒドロカルコン、ステビオシド(steveoside)、レバウジオシドA、タウマチン、モネリン、アセサルファーム、アリテーム、スクラロース又はそれらの混合物の群より選択される。
【0051】
本発明の好ましい実施形態において、食品、特に菓子製品は、チューインガム、ハードキャラメル、ソフトキャラメル、タフィー、トローチ(pastille)、錠剤、ガム、ゼリー、マシュマロ、ドロップ(lozenge)、ファッジ及びフォンダンの群より選択される。
【0052】
さらに好ましい実施形態において、菓子製品とは、コーティングされていない製品、特にチューインガム、例えばチューインガム片であり得る。
【0053】
本発明において、錠剤とは、圧縮製品、すなわち成分を乾燥且つ粉末形態で混合し、該混合物に圧力をかけて固い、いわゆる圧縮製品を得ることによって製造される製品である。
【0054】
本発明において、ハードキャンディー及びソフトキャンディーは、ハードキャラメル及びソフトキャラメルとも呼ばれる。
【0055】
本発明の好ましい実施形態において、菓子製品はコーティングされた製品である。
【0056】
特に好ましい実施形態において、ポリオール、特にイソマルト、マルチトール又はキシリトールそれぞれ単独又はそれらの組み合わせ、特にイソマルトは、本発明の食品、化粧品又は医薬品がコーティングされた製品である場合、該コーティング中に独占的(exclusively)又は部分的に存在することが予期される。特に好ましい実施形態において、コーティングは、ポリオール、特にイソマルト、マルチトール又はキシリトールそれぞれ単独又はそれらの組み合わせ、特にイソマルトで、独占的に、すなわちそれらのみでできている。さらに好ましい実施形態において、ポリオール、特にイソマルト、マルチトール又はキシリトールそれぞれ単独又はそれらの組み合わせ、特にイソマルトに加えて、添加物がコーティング中に存在することも当然予期し得る。好ましい実施形態において、ポリオール、特にイソマルト、マルチトール又はキシリトールそれぞれ単独又はそれらの組み合わせ、特にイソマルトに加えて、上記コーティング中に存在する上記添加物は、着色料及び強力な甘味料及び場合によりアラビアゴム又はゼラチンである。
【0057】
本発明の好ましい実施形態において、コーティングされた製品は、コーティングされたチューインガム、コーティングされたタフィー、コーティングされたゼリー、コーティングされた錠剤又はコーティングされたソフトキャラメルである。
【0058】
本発明の好ましい実施形態において、コーティングされた製品は、15〜70、好ましくは25〜45重量%の製品コーティングを含む(コーティングされた製品全体の乾燥重量に基づいて)。好ましくは、コーティングされた製品は、30〜85、好ましくは55〜75重量%の製品コアを含む(コーティングされた製品全体の乾燥重量に基づいて)。
【0059】
特に好ましい実施形態において、製品コーティングは、1、2又はそれ以上、例えば50〜100層の製品コーティング材料を含み得る。特に好ましい実施形態において、該層は、同じ又は異なる組成物から成ってよい。
【0060】
さらに好ましい実施形態は、従属クレームの内容である。
【実施例1】
【0061】
本発明を、下記実施例及び該実施例を説明する図によってより詳細に例示する。
【0062】
イソマルトを含むコーティングされたチューインガムの製造
コーティングシロップのレシピ:
バッチサイズ:7.5 kgチューインガム中身
イソマルトGS 6500 g
水 3364 g
ゼラチン 26 g
アスパルテーム 5 g
アセサルファームK 5 g
二酸化チタン 100 g
合計 10000 g
ドライチャージ(Drycharge):
イソマルトST/PF:フェーズ1:1 x 100 g;フェーズ2:5 x 80 g
香味料:フェーズ3でH&R オプタミント(Optamint):2 x 25 g、光沢剤(Glazing agent):艶出しワックス(polishing wax)(Fa. Kahl)、シロップ温度:65℃
シロップの調製:
まずイソマルトGSを水に溶解し、他の成分をシロップに添加する。調製後、シロップを65℃に保つ。
【表1】

【実施例2】
【0063】
1.6-GPS、1.1-GPS及び1.1-GPMの甘味料混合物を含有するコーティングされていないチューインガム片の製造
【表2】

【0064】
製造:
基本のチューインガムコンパウンドを、ニーダー(kneader)に移す前に、加熱キャビネット中で50℃〜55℃の温度に加熱する。その後、基本のチューインガムコンパウンドを1〜2分間練る。練っている間に、甘味料混合物の最初の半分、その後グリセロールを添加し、そして最後に香味料、メントール及び甘味料を添加する。均一になるまで混合物を練る(最終温度約45℃)。塊をニーダーから取り出し、約1 kg重量の部分に分ける。中間の保存のため、分割したチューインガムの塊をタルカムを撒いた基板上に約15〜20分間置き、適切な押出機で押し出し、従来の方法でさらに加工する。
【実施例3】
【0065】
チューインガム摂取により歯の知覚過敏症が軽減する
冷たいものに対する知覚過敏症を有する50人の被験体がこの実験に参加した。56日目まで8週間(以下の表を参照)、1日に3回(午前中、正午及び夜に)、実施例1のイソマルトを含有するチューインガムを10分間噛んだ。
【0066】
この処置期間後さらに2週間、被験体をモニターした(退行期(regression phase))。開始日0日目、14日目、28日目、56日目(処置の終わり)及び70日目での訪問において、前回の訪問からの全体的な痛覚を尋ねた。
【0067】
歯を磨いた後毎回、全体的な疼痛感を書き留めた。
【0068】
結果を表に示す。
【表3】

【0069】
-7日目及び-21日目(チューインガム摂取の開始前1週間及び3週間)では全体的な疼痛感は5.26であった(ネガティブコントロール値とみなす)。
【0070】
チューインガム摂取開始後14日目ですでに、知覚過敏症の軽減を示す全体的な疼痛感の有意な低下が認められた。この効果は、その後の週にわたり70日目の実験終了まで伸びていった。
【0071】
図1は結果をグラフに示している。従って、イソマルトを含有するチューインガムの摂取により、明らかに且つ大幅に、ヒトの歯における知覚過敏症が軽減する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品、化粧品又は医薬品を、歯を減感させるのに有効な量のポリオールと混合することを含む、食品、化粧品又は医薬品に歯減感効果を付与する方法。
【請求項2】
ポリオールがイソマルト、マルチトール又はキシリトールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリオールがイソマルトである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
イソマルトが、1,1-GPM(1-O-α-D-グルコピラノシル-D-マンニトール)及び1,6-GPS(6-O-α-D-グルコピラノシル-D-ソルビトール)の等モル混合物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
イソマルトがイソマルト変異体である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
食品が、チューインガム、ハードキャラメル、ソフトキャラメル、タフィー、トローチ(pastille)、錠剤、ガム、ゼリー、マシュマロ、ドロップ(lozenge)、ファッジ及びフォンダンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
有効量のポリオールを動物又はヒトに投与することを含む、処置が必要な動物又はヒトにおける知覚過敏歯の予防的又は治療的処置方法。
【請求項8】
ポリオールがイソマルト、マルチトール又はキシリトールである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ポリオールがイソマルトである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
歯を減感させるために歯の表面に有効量のポリオールを投与することを含む、知覚過敏歯の減感方法。
【請求項11】
ポリオールがイソマルト、マルチトール又はキシリトールである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ポリオールがイソマルトである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ポリオールが食品、化粧品又は医薬品中に有効量で含まれる、請求項7又は10に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−529093(P2011−529093A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520354(P2011−520354)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005169
【国際公開番号】WO2010/012386
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(500175772)ズートツッカー アクチェンゲゼルシャフト マンハイム/オクセンフルト (47)
【Fターム(参考)】