説明

短パルス大気圧グロー放電方法及び装置

ガス組成物で充填されている処理空間(5)に大気圧グロー放電プラズマを発生させる方法及びプラズマ発生装置。2つの電極(2、3)が、オン時間(ton)の間に電力を供給するために電源(4)に接続されている。電源(4)は所定の時間より短いオン時間(ton)で周期信号を供給するように構成されており、この所定の時間はガス組成物からのダスト凝集中心が処理空間(5)でクラスタとなるのに要する時間に実質的に相当する。本方法及び装置は、処理空間(5)の基板(6)に材料の層を堆積させるために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの電極に電力を印加することにより、オン時間の間にガス組成物で充填された処理空間に大気圧グロー放電プラズマを発生させる、処理空間に大気圧グロー放電プラズマをもたらす方法に関する。さらなる態様において、本発明は、オン時間の間に少なくとも2つの電極に電力を供給するための電源に接続された少なくとも2つの電極を備える、ガス組成物が充填された処理空間に大気圧グロー放電プラズマを発生させるためのプラズマ生成装置に関する。本発明のさらなる態様において、この装置は化学元素の堆積に使用される。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願1340838号Aは、例えば基板をエッチングする又は基板に膜を堆積させるなどの大気プラズマ処理の方法及びデバイスを開示している。処理済ガスは、プラズマ処理のために基板の周囲が清浄に保たれるように処理セクションの近傍から排出される。処理ガスの吸入口と排出口が、指定された大気を、処理される物体の近辺に維持するために使用される。プラズマは、安定したグロー放電を発生させるために、電極へのパルスを用いて発生させる。
【0003】
米国特許出願2004/146660号Aは、ガス混合物から基板に層を形成するために、例えばAPGプラズマが使用される表面被覆法を開示している。
【0004】
欧州特許出願1029702号Aは、プラズマ処理を用いて記憶媒体(インクジェット紙)の水分吸収性能を高める表面処理法を開示している。
【0005】
独国特許出願4438533号Aは、大気圧においてパルス電源を使用するフィラメント状(コロナ)プラズマを発生させる方法を開示している。この発生させたフィラメント状プラズマは、表面の粘着特性を変更するなどの様々な素材の表面処理に使用されている。条件は、フィラメント状プラズマのみを発生させるというものである。
【0006】
特開平07−074110号の要約は、プラズマ発生電極に印加する電力を、低圧において特定の規定されたパルス形状にして与え、ダストを発生させずに膜堆積工程の品質を高めるプラズマ化学蒸着法を開示している。
【0007】
論文'Formation Kinetics and Control of Dust Particles in Capacitively-Coupled Reactive Plasmas' by Y. Watanabe et al., Physica Scripta, Vol. T89, 29-32, 2001には、静電結合RF放電(13.56MHz)でのパルスオン時間(ton)及びパルスオフ時間(toff)双方の、減圧時におけるダストパーティクル形成への影響に関する研究についての記載がある。ton持続時間の増加(ton>1ミリ秒)は、クラスタの大きさと体積分率をわずかに増加させるが、最も大きな増加はパルスオン時間が10ミリ秒以上で発生することが示された。この文献では、クラスタ、パーティクル、ダストパーティクル、ダスト及びパウダーの用語はすべて同じ意味を有する。
【0008】
大気圧グロー放電プラズマは、表面処理に使用されている。いくつかの例では、少なくとも2ミリ秒のパルスの最小オン時間をもつパルス電源が使用されている。これらのパルス時間の大気グロー放電プラズマには、ダスト形成という欠点があり、このために化合物の円滑な堆積が得られない。上記の従来技術の文献は、プラズマ処理の間のダスト形成という問題に対処していない。
【特許文献1】欧州特許出願1340838号A
【特許文献2】米国特許出願2004/146660号A
【特許文献3】欧州特許出願1029702号A
【特許文献4】独国特許出願4438533号A
【特許文献5】特開平07−074110号
【非特許文献1】'Formation Kinetics and Control of Dust Particles in Capacitively-Coupled Reactive Plasmas' by Y. Watanabe et al., Physica Scripta, Vol. T89, 29-32, 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、大気圧グロー放電プラズマ中での特定の種の生成の制御を可能にする方法を提供し、例えば基板に層を堆積させるためのプラズマ中の反応物質処理を、上述した問題なしに可能にすることを目指すものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、オン時間が所定の時間より短く、かかる所定の時間がガス組成物からのダスト凝集中心が処理空間でクラスタとなるのに要する時間に実質的に相当する、上記に定義した前文による方法がもたらされる。プラズマパルスを形成する電力のオン時間を制御することによって、特定の反応物質の形成を制御し得る。
【0011】
材料の層の堆積にプラズマを使用する上での問題は、ダスト又は材料パウダーの形成であり、これは(むらがある、不均質などの)不良な品質の堆積層の原因となる。処理空間では、堆積させる化合物前駆体に加えて、酸素又は水素及び/又はヘリウム、ネオン又はアルゴンなどの希ガス、及び/又は窒素などの不活性ガスを含み得るガス組成物も大気圧において存在する。本発明による方法の適用により、層品質の著しい改善、はるかに少ないパウダーの形成、及びよりよい表面平滑度がもたらされる。
【0012】
さらなる実施形態では、所定の時間は0.5ミリ秒未満、例えば0.3ミリ秒未満である。これにより、プラズマ中でダスト凝集中心が、まったく又はほとんど形成され得ないことが保証される。オン時間は、0.2ミリ秒のように短くてもよく、たとえ0.1ミリ秒であってもよい。そのように短いオン時間は、十分な厚さの材料の層の堆積が確保できるようにガス組成物の変化を伴い得る。
【0013】
さらなる実施形態では、ダストの抑制は、パワーオンパルスの間に生成される電荷密度(電流密度と時間の積)の絶対値を制御することによって達成される。一実施形態では、この値は、2マイクロクーロン/cmより小さく、例えば1マイクロクーロン/cmである。
【0014】
層堆積の品質を高めるさらなる手段は、オフ時間の間に少なくとも2つの電極に電力を印加しないことを含んでよい。このオフ時間によって、オン時間の間に形成されたダスト凝集中心(もしあれば)を崩壊させることができる。さらなる実施形態では、オン時間(ton)とオフ時間(toff)との合計がガス組成物の処理空間での滞留時間に実質的に相当する。これにより、例えば指定された厚さの層をもたらすのに必要なガス組成を正確に決定することができる。
【0015】
さらなる実施形態では、オン時間及びオフ時間のデューティサイクルは10%未満、例えば0.5〜10%の範囲である。これは、ダストの形成を防止するために必要な短いオン時間と組み合わせることで、適したAPGプラズマ条件を確保するための電源信号を規定するための別の方法となる。電力は、電極への周期的給電として、例えば正弦波の行列信号のシーケンスを供給する発電機を使用して印加してよい。周波数帯域は、10kHzと30MHzの間、例えば100kHzと450kHzの間でよい。
【0016】
さらなる実施形態では、ガス組成物は、化合物又は化学元素の前駆体と酸素又は水素含有ガスとを含む。前駆体は、例えば10〜500ppmの濃度で使用される。ガス組成物はさらに、ヘリウム、ネオン又はアルゴンなどの希ガス、及び/又は窒素などの不活性ガスを含んでよい。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、電源が所定の時間より短いオン時間で周期信号を供給するように構成され、所定の時間はガス組成物からのダスト凝集中心が処理空間でクラスタとなるのに要する時間に実質的に相当する、上で定義した前文に従うプラズマ生成装置に関する。さらなる実施形態では、所定の時間は、0.5ミリ秒未満、例えば0.3ミリ秒未満である。電源は、オフ時間の間に少なくとも2つの電極に電力を印加しないように構成されてよく、さらなる実施形態では、オン時間(ton)とオフ時間(toff)の合計がガス組成物の処理空間での滞留時間に実質的に相当する。
【0018】
電源は、パワーオンパルスの間に生成される電荷密度(電流密度と時間の積)の絶対値が2マイクロクーロン/cmより小さい、例えば1マイクロクーロン/cmであるようなパルスシーケンスを生成するように構成されてよい。
【0019】
電源は、オン時間及びオフ時間のデューティサイクルが10%未満の周期信号を供給するように構成されてよい。デューティサイクルは、1%刻みで調整されてよい。電源は、10kHzと30MHzの間、例えば100kHzと450kHzの間の周波数帯域を与えるように構成されてよい。本プラズマ発生装置は、上述した方法の実施形態を同様の利点を得ながら実施することができる。
【0020】
方法の実施形態に関連して上述したように、本プラズマ発生装置は、基板に材料の層を堆積させるために有利に使用され得る。このために、プラズマ発生装置は、処理空間内に堆積させる化合物又は化学元素の前駆体と酸素又は水素含有ガスとを含むガス組成物を収容するように構成されてよい。前駆体は、例えば10〜500ppmの濃度で使用される。ガス組成物は、ヘリウム、ネオン又はアルゴンなどの希ガス、及び/又は窒素などの不活性ガスを含んでよい。
【0021】
さらなる態様では、本発明は、処理チャンバー内の基板に材料の層を堆積させるための本発明の任意の一実施形態に従うプラズマ発生装置の使用に関する。
【0022】
添付の図面を参照しつついくつかの例示の実施形態を使用して、以下に本発明をより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は本発明を適用することができるプラズマ装置の概略図である。囲壁7中の処理チャンバーであっても、開放的な構造の処理空間5であってもよい処理空間5は、2つの電極2、3を備える。通常、電極2、3は、処理空間での大気圧におけるグロー放電の発生と持続を可能にするために誘電体バリアを備えている。別法として、複数の電極2、3が設置される。電極2、3は電源4に接続されており、電源4は電極にグロー放電プラズマを発生させるために電力を供給するように構成されている。電源4は、オン時間tonとオフ時間toffを有する周期電気信号を供給するように構成されてよく、オン時間及びオフ時間の合計は周期電気信号の周期である。電源は、幅広い周波数帯域を与える電源であり得る。例えばオン時間の間には、低周波数(f=10〜450kHz)電気信号を供給することができる。また、例えばf=450kHz〜30MHzの高周波電気信号を供給することができる。オン時間は様々変化し得るが、本発明の場合には、オン時間は、極めて短い間(例えば2μ秒)から短い間(例えば500ミリ秒)までの範囲でよい。オン時間の間に、これは、0.1〜0.3ミリ秒のオン時間総持続時間(例えば正弦波10〜30周期)の、動作周波数において一連の正弦波周期を有するパルス列を効果的にもたらす。図2のグラフにこれを概略に示す。
【0024】
図1の構成は、基板6への無機材料の堆積に使われてよい。そのような堆積工程では、堆積させる材料の前駆体を含むガス組成物を、パルス状の大気プラズマと接触させる。プラズマに触れると、前駆体は反応又は分離して処理空間5に化合物を形成し、化合物は基板6に堆積させるか又はガス相に留まる。極めて短いAPGプラズマのオン時間を使用することにより化合物のさらなる反応が効果的に防止され、処理空間5での化学反応をより効率的に制御できる。
【0025】
前駆体はプラズマ環境に入り次第分解する。どのように前駆体が正確に分解するのか(初期の分解成分との反応がさらにプラズマ中に起こり得る)は明らかでない。プラズマ中に非常に高濃度の反応種があるために、これらの3以上の種の間及び2つの種の間、例えば酸素との間で容易に反応が起こり得る。多数のこれらの種が互いに反応する場合、いわゆる凝集中心が発生し得る。文献によると、これらは約10nmより小さい大きさで、おそらくそれぞれの中心は異なる組成を持つ可能性がある。これらの中心の組合せは最終的には、ダスト、パウダー、パーティクル、又はクラスタの類をもたらすので、そのような小さな中心の形成は可能な限り少なくするべきである。ここでのダストを有する表面の1つのSEM写真(図3及び図4参照)は、ダストパーティクルが10nm(凝集中心の値参照)のように小さいものから150nmを超えるものまであり得ることを示す。
【0026】
例示の実施形態において、図2の電源4の時間設定を使用する図1の装置の、処理空間5内の基板6に化合物又は化学元素の層を堆積させる上での使用法を以下に説明する。処理空間5に、例えばヘリウム、ネオン又はアルゴンなどの希ガス、窒素などの不活性ガス、析出されるべき物質の前駆体及び例えば水素又は酸素などの反応ガスを含む、ガスの組合せが導入される。電源からの電気パルスの影響の下で、パルス状の大気圧グロー放電プラズマが処理空間5に形成される。APGプラズマのパワーオン時間は、前駆体の分解後に形成される化合物の追加の二次反応を引き起こさないように十分に短くされ、これによりはるかに効果的な堆積工程が可能になる。これまでは、この現象を十分に説明することができなかった。
【0027】
大気圧におけるパルシングの使用は、コロナ誘電体バリア放電プラズマにフィラメントを高密度に発生させる方法として当業者に知られている。そのようなコロナ状のプラズマにおけるプラズマバーストは、例えば15〜50kHzの周波数を有する正弦波の列からなる。そうした例では、プラズマバーストの間隔は20〜100ミリ秒の範囲である。
【0028】
本発明において、図1に示す装置はフィラメント放電の発生ではなくグロー放電を発生させるために使用される。
【0029】
低圧プラズマの応用では、プラズマの化学的性質に影響を与えるためにプラズマのパルシングを適用することが知られている。プラズマの化学反応は、反応する分子の分解で発生する。いくつかの例では、プラズマ中での過剰な分子の劣化若しくはマクロポリマーの形成、又はダストの形成を避けるために、プラズマによる分子の分解を制限することが必要である。プラズマに印加される電力のパルシングは、プラズマに伝達される時間単位あたりの平均エネルギーを減らすことによってプラズマ反応を低減させる標準的なやり方である。パルシングは表面処理が緩慢になるという欠点があるため、低いデューティサイクルを選択肢とするパルシングは、分解分子の密度がプラズマオフ時間の間も十分に高いままであるときのガス混合物の限られた範囲のみに対する選択肢である。通常、デューティサイクル10〜50%を有する1〜20ミリ秒のパルスが使用される。
【0030】
大気圧グロープラズマの場合、ダスト形成は、高品質用途(超小型電子技術、透過バリア、光学的用途)で使用されるプラズマの重要な懸念である。そのような用途では、ダストの形成により被覆の品質が損なわれ得る。大気圧においては、プラズマの典型的に高い電力密度と前駆体分子の分解後に形成される反応分子の高い濃度のために、ダストの形成は一般的な事実である。このために被覆用途における大気プラズマの工業的利用は現在、粘着性増進などの低価格(low-end)用途に限られている。例えば低圧の適用では、ダスト形成の事例は例えばAr/O/HMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)のプラズマでは皆無であるが、高圧においてはわずか数秒間のプラズマへの曝露後にこのプラズマの変化(variety)が著しくダストを含む被覆をもたらす。
【0031】
大気圧におけるプラズマ中のダスト形成メカニズムに関し、ダスト凝集中心は正イオンと負イオンであると考えられる。低圧においては、イオンはプラズマが消滅した後は数ミリ秒しか残存し得ない。数ミリ秒のオフ時間でプラズマをパルシングさせれば、ダストパーティクルの成長を防止してダスト形成を制限するには十分である。低圧においてはダストパーティクルは比較的緩慢(有意な大きさになるのに約10秒)に成長するので、パワーオン時間は比較的長くてよい(数百ミリ秒程度)。
【0032】
そのため概して、ダスト形成の抑止の標準的な方法は、プラズマのパワーオフ時間の間のダスト凝集中心の速やかな崩壊に基づいている。これは、プラズマオフ時間の間のダスト凝集中心の「自然死」と見なすことができる。さらに、短時間であることが要求されるのはパワーオフ時間のみであり、パルス持続時間は比較的長いため、これらのパルシング例のデューティサイクルは大きく、通常50〜98%の範囲となる。
【0033】
本発明によれば、極めて短いパルスが、プラズマ中の大気圧におけるガス相中のパウダー又はダストの形成を防止するために印加され、こうして基板6上の堆積物の品質が実質的に改善される。
【0034】
低圧の場合と異なり、大気圧においてはダスト凝集中心の崩壊は低圧での場合よりずっと緩慢であり、即ち、少なくとも数十ミリ秒程度である。原則として、数十ミリ秒の長めのパワーオフ時間を与える電源4を有することによってダスト形成が抑制されると期待される。
【0035】
しかしこの実験中に、大気プラズマでは、様々な前駆体をAr/O2などのガス混合物に使用すると、パルス間隔が100ミリ秒(5ミリ秒のプラズマオン時間)であってもダスト形成を十分に抑制することが不可能なことが、意外にも判明した。このことはダスト形成の原因である化学反応が、パワーオフ時間の間も強いことを示唆する。
【0036】
本発明では、前駆体を(これらに限定されないが)以下から選択することができる:W(CO)6、Ni(CO)4、Mo(CO)6、Co2(CO)8、Rh4(CO)12、Re2(CO)10、Cr(CO)6、又はRu3(CO)12、ペンタエトキシタンタル(Ta(OC)、テトラジメチルアミノチタン(又はTDMAT)、SiH、CH、B又はBCl、WF、TiCl、GeH4、Ge2H6Si2H6(GeH3)3SiH、(GeH3)2SiH2、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、及び1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタンシロキサン、テトラエトキシシラン(TEOS)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アミノメチルトリメチルシラン、ジメチルジメチルアミノシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、アリルアミノトリメチルシラン、ジエチルアミノジメチルシラン、1−トリメチルシリルピロール、1−トリメチルシリルピローリジン、イソプロピルアミノメチルトリメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシラン、アニリノトリメチルシラン、2−ピペリジノエチルトリメチルシラン、3−ブチルアミノプロピルトリメチルシラン、3−ピペリジノプロピルトリメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、1−トリメチルシリルイミダゾール、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ブチルアミノ)ジメチルシラン、2−アミノエチルアミノメチルジメチルフェニルシラン、3−(4−メチルピペラジノプロピル)トリメチルシラン、ジメチルフェニルピペラジノメチルシラン、ブチルジメチル−3−ピペラジノプロピルシラン、ジアニリノジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(クロロメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ジブチルスズジアセタート、ジメチルアルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、トリス(2,4−ペンタジオナート)アルミニウムインクルード、ジブチルジエトキシスズ、ブチルスズトリス(2,4−ペンタンジオナート)、テトラエトキシスズ、メチルトリエトキシスズ、ジエチルジエトキシスズ、トリイソプロピルエトキシスズ、エチルエトキシスズ、メチルメトキシスズ、イソプロピルイソプロポキシスズ、テトラブトキシスズ、ジエトキシスズ、ジメトキシスズ、ジイソプロポキシスズ、ジブトキシスズ、ジブチリロキシスズ、ジエチルスズ、テトラブチルスズ、スズビス(2,4−ペンタンジオナート)、エチルスズアセトアセトナート、エトキシスズ(2,4−ペンタンジオナート)、ジメチルスズ(2,4−ペンタンジオナート)、ジアセトメチルアセタートスズ、ジアセトキシスズ、ジブトキシジアセトキシスズ、ジアセトキシスズジアセトアセトナート、スズハイドライド、スズジクロリド、スズテトラクロリドトリエトキシチタン、トリメトキシチタン、トリイソプロポキシチタン、トリブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルジメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、メチルトリプロポキシチタン、トリエチルチタン、トリイソプロピルチタン、トリブチルチタン、テトラエチルチタン、テトライソプロピルチタン、テトラブチルチタン、テトラジメチルアミノチタン、ジメチルチタンジ(2,4−ペンタンジオナート)、エチルチタントリ(2,4−ペンタンジオナート)、チタントリス(2,4−ペンタンジオナート)、チタントリス(アセトメチルアセタート)、トリアセトキシチタン、ジプロポキシプロピオニルオキシチタン、ジブチリロキシチタン、モノチタンハイドライド、ジチタンハイドライド、トリクロロチタン、テトラクロロチタン、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラン、テトライソプロポキシシラン、ジエチルシランジ(2,4−ペンタンジオナート)、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、シランテトラハイドライド、ジシランヘキサハイドライド、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、イソプロポキシアルミニウム、トリス(2,4−ペンタンジオナート)ニッケル、ビス(2,4−ペンタンジオナート)マンガン、イソプロポキシボロン、トリ−n−ブトキシアンチモン、トリ−n−ブチルアンチモン、ジ−n−ブチルビス(2,4−ペンタンジオナート)スズ、ジ−n−ブチルジアセトキシスズ、ジ−t−ブチルジアセトキシスズ、テトライソプロポキシスズ、ジメチルジンク、ジンクジ(2,4−ペンタンジオナート)、並びにそれらの組合せ。さらに前駆体は、例えば欧州特許出願第1351321号A又は欧州特許出願第1371752号Aに記載されているように使用され得る。概して前駆体はガス組成全体の10〜500ppmの濃度、例えば約50ppmで使用される。
【0037】
分子及びラジカルが高密度であるため、パワーオフ時間であってすらラジカル、イオン及び前駆体ガス間の反応中に高速でダスト形成が発生し得る。このため、ダストの崩壊が緩慢でアフターグロー中の化学反応が低圧プラズマと比べてずっと強いために、パワーオフ時間中のダスト凝集中心の崩壊に基づく標準的な方法は、大気圧においては機能しない。
【0038】
本発明の実施形態による提案の方法は、ダスト凝集中心の「自然死」(崩壊)に基づくのではなく、プラズマ中、即ち、パワーオン時間の段階からダスト凝集中心の密度を最小にすることに基づく。パワーオフ時間の調整による凝集中心の崩壊に基づくダスト形成の操作を伴う従来技術の方法とは対照的に、この方法は、むしろパワーオン時間を調整することによって当初から凝集中心の形成を防止することに基づく方法である。
【0039】
本発明によれば、パワーオン時間は、おそらく電子付着や、オゾン形成などの二次反応を最小にすることによってダスト凝集中心の形成が最小になるように選択される。効率的な堆積を維持するために、パルスは有効な堆積レートを維持するように十分長く選択される。
【0040】
これらの制限のために電源4によって電極2、3に供給されるパルスの幅はプラズマの種類ごとに精密に定義され、電力値に依存している。通常、数分の1ミリ秒のパワーオン時間(0.1〜0.5ミリ秒の範囲、例えば0.1〜0.3ミリ秒のton)が使われる。概算では、電子密度は電力密度(半周期にわたって平均化された)に比例する。本発明者の実験結果によると、パルス持続時間とプラズマ電力密度の積は2mJ/cmより小さくなくてはならず、又はより好ましくは、パワーオンパルスの間に生成される電荷密度(電流密度と時間の積)の絶対値は、例えば2マイクロクーロン/cmより小さく、例えば1マイクロクーロン/cmである。
【0041】
電源によって与えられる周波数は、上述した制限を考慮して自由に選択してよい。周波数は、例えば10kHzと30MHzの間の値を有してよい。100〜450kHzの低い周波数範囲でもよい結果が得られた。
【0042】
なお、さらなる実施形態では、パルス間の間隔(オフ時間toff)及びガス組成が、形成されたダスト凝集中心がパルス間の間隔の終了時に抑制されるように調整される。例えば、パワーオフ時間の間に凝集中心の量が抑制されない場合は、クラスタ形成がパワーオン時間ton中に極めて速く生じる。そのような場合には極めて短いパワーオン時間tonを使用しなければならない。
【0043】
ダスト凝集中心の密度を最小にするために、反応器の処理空間5でのガスの滞留時間とほぼ同程度のパルス間の間隔(toff)の使用も、本発明で有利に用い得る。この場合、パルス間の時間は、放電空間でのガス滞留時間に対比し得るものであるべきである。例えばアルゴン/酸素/HMDSOの場合、次のパルス開始以前に排出することが必要な寿命の長い凝集が存在するように推測される。サイクル時間(パルスオン時間及びパルスオフ時間の合計)より短い滞留時間が安全であり、滞留時間はいかなる場合もダスト凝集中心の累積がないように選択されるべきである。
【0044】
提案されている本発明のパルスプラズマ法は、パワーオン時間tonの間の初段階からのダスト凝集中心の形成抑止に基づく。さらにそれは、パワーオフ時間toffの調整及びガス組成の調整によるダスト凝集中心の崩壊に基づく。凝集中心の総量は、プラズマガス組成物中で堆積される化合物又は化学元素の前駆体の量、使用されるガス混合物(例えば酸素のパーセント)、及び勿論上述したガスの流量によって決定されるように思われる。ガス混合物の前駆体の量及び/又は水素若しくは酸素などの反応ガスの量が減らされた場合は、プラズマガスの凝集中心の量もまた減る。ガス組成物中の前駆体の量を減少させることは勿論、堆積工程の効率に影響する。一般的にガス相が10〜500ppmの前駆体濃度、及び例えばガス相の0.1%を超える酸素濃度で最適の結果を得る。
【0045】
ダスト凝集中心の生成を制御する効率的な方法は、電源4を低いデューティサイクル(0.5〜10%)及び0.1〜0.3ミリ秒程度の短いパワーオン時間で作動させることにより達成できる。パワーオン時間ton及びパワーオフ時間toffは、効率的な堆積工程を維持するために、上述の条件で課せられた制限内ではあるが、精密に調整される。概してオン時間(ton)及びオフ時間(toff)の合計、即ちサイクル時間は、ガス組成物の処理空間滞留時間に実質的に相当する。
【0046】
極めて短いパルスを供給可能な電源が存在しなかったために、これまで大気圧グロー放電プラズマを使用するダストのない化合物の堆積を達成することができなかった。本発明によれば、50μsから500ミリ秒を超えるまでの極めて短いパルス列を生成する可能性を有する電源4が使用される。本電源を使用すると、パルス列は実際、全持続時間(パルスオン時間)が100〜300マイクロ秒の一連の正弦波から形成され得る。合計すると、パルス列は通常、そのような正弦波を10〜30周期含む。
【0047】
第1の例示的な参照試験は、130kHzの励起周波数、4ミリ秒のパルスオン時間、10%のデューティサイクル(即ち36ミリ秒パルスオフ時間)を使用して実施した。典型的な電極の寸法は、間隙距離1mm及び「作用長」(幅)4cmである。ガス流は、典型的なガス流速度の約1m/sである。処理空間5中のガス組成物は、アルゴン、5%のO、及びHMDSOの混合物を含んでいた。表面6を20,000倍の拡大画像で観察した結果、図4に示すように、表面6の層堆積には明白なダスト形成があった。パルスオン時間が長ければ長いほど、さらに強いパウダー形成が示された。
【0048】
本発明の一実施形態による第2の例示的な試験は、130kHzの励起周波数、0.2ミリ秒のパルスオン時間、0.5%のデューティサイクルを使用して実施された。電極間隙及びガス流は、第1の例示的な参照試験と同様のままであった。処理空間5中のガス組成物は、やはりアルゴン、5%のO、及びHMDSOの混合物を含んでいた。やはり20,000倍の拡大画像で観察した結果、図3に示すように、表面6の層堆積は極めて均一だった。この場合、表面6上での焦点調節を可能にするために、一部にダストパーティクルをいくつか含む試料を使用しなければならなかったことに留意されたい。
【0049】
下の表I〜IVに、様々な条件及び様々な前駆体を使用して得られた被膜の品質に関してのいくつかの結果を示す。
【0050】
そのような短いパルスを生成するために、National Instruments社製インターフェースカードPCI−MIO−16E−4を装備する標準のPCを使用して、外部の発振器を構築した。所望のパルス列が、増幅器(この場合は型式RFPP−LF10a)に対するアナログ信号としてプログラムされ発信される。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明を具体化し得るプラズマ発生装置の概略図である。
【図2】図1のプラズマ発生装置の電極に給電する電源によって生成される周期信号のプロットである。
【図3】本発明による装置及び方法によって堆積がなされた表面の電子顕微鏡写真である。
【図4】従来技術の方法を使用して得られた表面堆積物の電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理空間(5)に大気圧グロー放電プラズマをもたらす方法であって、前記大気圧グロー放電プラズマが、少なくとも2つの電極(2、3)に電力を印加することによりオン時間(ton)の間に、ガス組成物が充填された前記処理空間(5)に発生し、前記オン時間(ton)が所定の時間より短く、前記所定の時間が前記ガス組成物からのダスト凝集中心が前記処理空間(5)でクラスタになるのに要する時間に実質的に相当する前記方法。
【請求項2】
所定の時間が0.5ミリ秒未満、例えば0.3ミリ秒未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
パワーオンパルスの間に生成される電荷密度の絶対値が、2マイクロクーロン/cmより小さく、例えば1マイクロクーロン/cmである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
オフ時間(toff)の間に少なくとも2つの電極(2、3)に電力が印加されない、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
オン時間(ton)とオフ時間(toff)の合計が、ガス組成物の処理空間(5)での滞留時間に実質的に相当する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
オン時間(ton)及びオフ時間(toff)のデューティサイクルが10%未満である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
10kHzと30MHzの間の周波数帯域で電力が印加される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
100kHzと450kHzの間の周波数帯域で電力が印加される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ガス組成物が、化合物又は化学元素の前駆体と酸素又は水素含有ガスとを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前駆体が10〜500ppmの濃度で使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ガス組成物がさらに、ヘリウム、ネオン又はアルゴンなどの希ガスを含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
ガス組成物がさらに、窒素などの不活性ガスを含む、請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ガス組成物で充填されている処理空間(5)に大気圧グロー放電プラズマを発生させるプラズマ発生装置であって、オン時間(ton)の間に少なくとも2つの電極(2、3)に電力を供給するための電源(4)に接続された少なくとも2つの電極(2、3)を備え、
前記電源(4)は所定の時間より短いオン時間(ton)で周期信号を供給するように構成され、前記所定の時間は前記処理空間(5)でクラスタとなる前記ガス組成物からのダスト凝集中心を形成するのに要する時間に実質的に相当するプラズマ発生装置。
【請求項14】
所定の時間が0.5ミリ秒未満、例えば0.3ミリ秒未満である、請求項13に記載のプラズマ発生装置。
【請求項15】
電源(4)が、オフ時間(toff)の間に少なくとも2つの電極(2、3)に電力を印加しないように構成された、請求項13又は14に記載のプラズマ発生装置。
【請求項16】
オン時間(ton)とオフ時間(toff)の合計がガス組成物の処理空間(5)での滞留時間に実質的に相当する、請求項15に記載のプラズマ発生装置。
【請求項17】
電源(4)が、オン時間(ton)及びオフ時間(toff)のデューティサイクルが10%未満の周期信号を供給するように構成された、請求項15又は16に記載のプラズマ発生装置。
【請求項18】
電源(4)が、10kHzと30MHzの間の周波数帯域を与えるように構成された、請求項13〜17のいずれかに記載のプラズマ発生装置。
【請求項19】
電源(4)が、100kHzと450kHzの間の周波数帯域を与えるように構成された、請求項18に記載のプラズマ発生装置。
【請求項20】
電源(4)が、パワーオンパルスの間に2マイクロクーロン/cmより小さい、例えば1マイクロクーロン/cmの電荷密度絶対値をもたらすように構成された、請求項13〜19のいずれかに記載のプラズマ発生装置。
【請求項21】
プラズマ発生装置が、処理空間(5)に化合物又は化学元素の前駆体と酸素又は水素含有ガスとを含むガス組成物を収容するように構成された、請求項13〜20のいずれかに記載のプラズマ発生装置。
【請求項22】
前駆体が10〜500ppmの濃度で使用される、請求項21に記載のプラズマ発生装置。
【請求項23】
ガス組成物がさらに、ヘリウム、ネオン又はアルゴンなどの希ガスを含む、請求項21又は22に記載のプラズマ発生装置。
【請求項24】
ガス組成物がさらに窒素などの不活性ガスを含む、請求項21、22又は23に記載のプラズマ発生装置。
【請求項25】
材料の層を処理空間(5)の基板(6)に堆積させるための、請求項13〜24のいずれかに記載のプラズマ発生装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−526129(P2009−526129A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554166(P2008−554166)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050052
【国際公開番号】WO2007/091891
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(505232782)フジフィルム マニュファクチャリング ユーロプ ビー.ブイ. (50)
【Fターム(参考)】