説明

短X線パルスを発生するX線装置およびこのX線装置を利用する検査装置

短X線パルスを発生するX線装置であって、熱陰極(12)および陽極(16)を有するX線管(10)と、X線パルスを発生するために陽極(16)に印加される高圧パルスを発生する第1の回路(22,20,18)とを備えたX線発生器である。X線発生器は、X線放射(30)の発生には不十分な程度の、X線管(10)を余熱する低電圧を陽極(16)に永続的に印加する第2の回路(26)を含む。第1の回路は、高圧スイッチ(18)を介して陽極(16)に印加され得る高圧コンデンサ(20)を充電させる高圧電源装置(22)を有する。第2の回路はマルクス発生器で、永続的に低電圧を発生するとともに、高電圧を発生するマルクス発生器を駆動する電源が1つだけ存在する。このX線発生装置は、X線(30)によって物体の像を生成する撮像装置(44,46)を有する物体検査装置の一部を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、短X線パルスを発生するX線装置に関するもので、熱陰極と陽極とを備えたX線管と、高電圧パルスを発生する第1の回路と、この高電圧パルスを陽極に印加してX線パルスを発生するX線発生機とによって構成される。
【0002】
本発明はまた、移送装置上を搬送される容器、例えば、飲料容器、スーツケースまたは旅行用カバンなどを検査する装置に関する。この検査装置は上述のX線装置とともに撮像装置(imaging apparatus)を備えている。
【背景技術】
【0003】
短X線パルスを発生するためのX線装置は、特許文献1〜3などで知られている。これらの装置は、数ナノ秒間持続する極短X線パルスを発生するように機能する。極短パルスの持続時間内に高圧エネルギーを陽極に伝達することができるように、特別に開発されたコンデンサが高圧パルス発生のために使用される。
【0004】
特許文献4により公知の電界放射型カソードを備えたX線装置は、電子ビームを異なる陽極材料上に収束させることにより異なるエネルギーのX線パルスを発生するものである。
【0005】
特許文献5により公知のX線パルスを発生するためのX線ビーム発生器では、高電圧が永続的に陽極に印加され、格子電圧をカソード電圧に応じて制御することにより、X線ビームを発生させない期間中は、電子を陽極に到達させないようにするものである。このパルス持続時間はまた、格子電圧によっても制御される。これにより、安定したX線パルスを発生することが可能になる。
【0006】
撮像装置を介して搬送装置を移動する飲料容器および手荷物をX線を用いて検査することは公知である。下流側にCCDカメラを備えたX線イメージインテンシファイヤまたはコンバータが撮像システムとして用いられ、記録された画像が評価システムに中継される。X線イメージインテンシファイヤにおいて表面センサを用いることによって、放射エネルギーおよびX線パルスの入力電力の双方を大幅に低減することができる。しかしながら、X線照射される物体が移動するため、画像の輪郭は鮮明さを欠く。
【0007】
他のセンサ、例えばラインセンサを用いた場合、全エネルギーが継続的に、すなわち、ビーム路に被検体がないときであっても、利用可能であることが必要とされる。その結果第1に高放射線エネルギーが放出され、第2に高電気出力が必要となる。それゆえ、機器の放射線防護および高接続負荷のための、高価なスクリーニングおよび安全対策が必要となる。
【特許文献1】独国特許第3216733号 (DE-C-32 16 733)
【特許文献2】米国特許第4947415号 (US-A 4 97 415)
【特許文献3】国際公開公報WO94/23552 (WO 94/23552)
【特許文献4】国際公開公報WO02/31857 (WO 02/31857)
【特許文献5】欧州公開特許第1158842号 (EP-A-1 158 842)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の主たる目的は、ミリ秒の範囲でX線パルスを発生させることを可能にし、かつ比較的に低放射線エネルギーで、輪郭が鮮明な画像が得られるX線装置を提供することである。
【0009】
本発明の前記目的は、前述のようなこの種X線発生装置に、永続的に低電圧を陽極に印加する第2の回路を備えしめることにより達成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここで、「低電圧」とは、その電圧でX線放射が発生したとしても低エネルギーであり、X線管のガラス壁によって吸収されてしまうような高電圧を意味する。この低電圧は永続的に陽極に印加されるため、実質的にX線は放射されないが、X線管が常時余熱されることにより迅速にX線管を作動させ、短X線パルスを発生させることができる。
【0011】
X線管はシマーモード(simmer mode)で作動する。第2の回路はシマー電源装置(simmer power supply unit)である。保護ダイオードは、高電圧に切り替えられたときにシマー電源装置を保護する。また、高電圧パルスを発生させるのにマルクス発生器を使用することもできる。
【0012】
陰極は、加熱制御装置を介して常に一定の加熱電流で加熱される。
【0013】
このようなX線装置は、物体、特に、不規則な間隔で検査デバイス内を運搬される容器を検査する装置に特に適しているが、これは、X線管を作動させる始動段階が非常に短く、本質的にコンデンサの放電曲線によってのみ規定されるためである。X線イメージインテンシファイヤまたはコンバータ等において表面センサを備えた撮像処理では、動きによるボケを回避できるなど特に有利である。
【0014】
ラインセンサ、例えばシンチレータ結晶とともに一列に配置された複数の光電子増倍管を備えた撮像処理では、高ビーム出力を永続的に作動させる必要がないことが有利である。すなわち、検査すべき物体がビーム路にない場合に有効である。
【0015】
本発明によるX線装置は、特に、独国実用新案出願第20217559.6号(出願日2002年11月12日、名称「満たされた容器をX線を用いて検査するデバイス」)に使用する場合のX線ビーム源として特に適している。
【0016】
以下、本発明の一実施態様を図面を用いて説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1の回路図において、X線管10の陰極12は加熱制御部14に接続される。これにより、陰極12に一定の加熱電流が与えられる。陽極16は、高圧スイッチ18を介して、高圧電源装置22によって充電される高圧コンデンサ20に接続される。陽極16はまた、保護ダイオード24を介してシマー電源装置26に接続される。
【0018】
高圧電源装置22は、高圧コンデンサ20を60kVに充電させる。高圧スイッチ18を閉じることによって、この電圧がX線管10の陽極16に印加され、それによって、X線30が発生する。
【0019】
X線管10は、シマー電源装置26によりシマーモードで動作し、このシマー電源装置26は、約5kVの電圧を発生し、約1mA〜10mAの直流電流をX線管10に永続的に流すことが可能である。これによって、X線管10は、直ちに作動する状態まで余熱され、高圧スイッチ18が閉じられるとすぐにX線30を発生する。シマー電源装置26は、保護ダイオード24によって、コンデンサ20の高電圧から保護される。
【0020】
高圧電源22、高圧コンデンサ20、および高圧スイッチ18の代わりに、図2に示すようなマルクス発生器を用いることができる。このマルクス発生器は、パルス状の高電圧を生成することができる電圧増倍装置である。抵抗器34を介して並列接続されるn個のコンデンサ33が、電圧源32を介して充電される。高圧パルスをトリガーするために、コンデンサ33が電子スイッチ36を介して直列接続され、次いで、n倍のコンデンサ電圧が出力38に印加される。
【0021】
例えば、5kVの電圧源32および並列接続された12個のコンデンサ33を使用した場合、発生する高圧パルスは60kVである。それゆえ、この実施例においては、シマー電源装置26を電圧源32として用いることができる。
【0022】
図3は、搬送装置42例えばリンクチェーンコンベヤ上を搬送される飲料ボトル40を検査するデバイスを示す。搬送装置42の一方側にはX線管10が、他方側にはX線イメージコンバータ44が設けられ、このコンバータの後方にはCCDカメラ46が配置されている。検査される飲料ボトル40がX線管10とX線イメージコンバータ44との間に位置する場合、光バリヤまたは容量センサ(light barrier or capacitive sensor)等の装置によってトリガ信号が生成される。このトリガ信号によって高圧スイッチ18が閉じられ、X線管10からパルス状のX線30が発生する。ボトル40を通過したX線30はX線イメージコンバータ44に照射され、これによって、飲料ボトル40の像が生成される。この像は、CCDカメラ46によって記録され、満たされた飲料ボトル40内の異物、例えばガラス片を認識するために、公知の画像認識処理方法で処理される。飲料ボトル40の底の湾曲部分に如何なるガラス片も隠れないようにするために、X線管10は搬送装置42の平面に対して、例えば30°の角度方向から照射するように上方に配置される。これは独国実用新案出願第20217559.6号(名称:満たされた容器をX線を用いて検査するデバイス)に詳述されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のX線発生装置の実施例の回路図
【図2】マルクス発生器の回路図
【図3】図1のX線装置の実施例を用いた飲料ボトルを検査する装置の動作説明図
【符号の説明】
【0024】
10 X線管
12 陰極
14 加熱制御部
16 陽極
18 高圧スイッチ
20 高圧コンデンサ
22 高圧電源装置
24 保護ダイオード
26 シマー電源装置
30 放射X線
40 飲料ボトル
32 電圧源
33 コンデンサ
34 抵抗器
36 電子スイッチ
38 出力端子部
42 搬送装置
44 X線イメージコンバータ
46 CCDカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱陰極(12)と陽極(16)を有するX線管(10)と、陽極(16)にX線パルスを発生させるための高圧パルスを印加する第1の回路(22,20,18)を備えた短X線パルスを発生するX線装置において、前記陽極(16)に、X線の発生には不十分な低い電圧を常時供給してX線管(10)を余熱しておくための第2の回路(26)を設けたことを特徴とするX線装置。
【請求項2】
前記第1の回路に、高圧電源装置(22)とこれによって充電される高圧コンデンサ(20)と高電圧スイッチ(18)とを備え、この高電圧スイッチを介して陽極に前記コンデンサの電荷を印加するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のX線装置。
【請求項3】
前記第2の回路はマルクス発生器であることを特徴とする請求項1に記載のX線装置。
【請求項4】
1個だけの電源供給部を備え、これによって常時低電圧の供給と、高電圧を発生するためのマルクス発生器の駆動とを行うことを特徴とする請求項3に記載のX線装置。
【請求項5】
物体を検査する装置であって、X線発生装置とX線によって前記物体の像を生成する撮像装置(44,46)とを備え、前記X線発生装置は請求項1〜4のいずれかに記載した装置であることを特徴とするX線検査装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱陰極(12)と陽極(16)を有するX線管(10)と、陽極(16)にX線パルスを発生させるための高圧パルスを印加する第1の回路(22,20,18)と、陽極(16)に低い電圧を連続的に供給してこれを余熱し、最大時には低エネルギーのX線(30)を発生させるに十分な電圧を供給する第2の回路(26)とを備えた短X線ビームパルスを発生する装置において、第1の回路がマルクス発生器であり、第2の回路がシマー電源装置(26)であって、これが前記マルクス発生器の電源としても使用されるようにしたことを特徴とするX線装置。
【請求項2】
物体を検査する装置であって、X線発生装置と、X線によって前記物体の像を生成する撮像装置(44,46)とを備え、前記X線発生装置が請求項1に記載した装置であることを特徴とするX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−507630(P2006−507630A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552697(P2004−552697)
【出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013082
【国際公開番号】WO2004/047504
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(505190220)ホイフト ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】