説明

石炭ガス化複合発電設備

【課題】ガス化炉に導入する空気の温度を上昇させて、発電効率を向上させた石炭ガス化複合発電設備を提供する。
【解決手段】石炭をガス化するガス化炉11と、空気を圧縮する燃焼用空気圧縮機13と、ガス化炉11により生成されたガスと燃焼用空気圧縮機13により圧縮された空気との混合気を燃焼させる燃焼器14と、燃焼器14において発生した燃焼ガスにより駆動されるガスタービン15と、ガスタービン15により駆動されて発電を行う発電機16と、ガスタービン15からの排ガスを用いて蒸気を発生させる排ガスボイラ17と、燃焼用空気圧縮機13により圧縮された空気の一部を抽気してガス化炉11に導入する抽気系統20とを備え、排ガスボイラ17が、抽気系統20により燃焼用空気圧縮機13から抽気された空気とガスタービン15からの排ガスとの熱交換を行う排ガス熱交換器21を有する石炭ガス化複合発電設備1を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭ガス化炉とコンバインドサイクル発電とを組み合わせた石炭ガス化複合発電設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭をガス化し、C/C(コンバインドサイクル発電)と組み合わせた石炭ガス化複合発電設備(以下、「IGCC」という。)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
IGCCは、資源量が豊富な石炭をガス化し、このガスを用いてガスタービンを駆動して発電するとともに、排ガスボイラによってガスタービンの排ガスが持つ熱エネルギーを回収して蒸気を発生させ、この蒸気によって蒸気タービンを駆動して発電する設備である。このように、ガスタービンおよび蒸気タービンを用いて電力を発生させることで、発電効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−233084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されている石炭ガス化複合発電設備において、石炭をガス化させるための空気は、燃焼用空気圧縮機から抽気した空気を抽気空気圧縮機により圧縮してガス化炉に導入される。本来、ガス化炉に導入する空気は、高温である方が発電効率の面からは望ましいが、圧縮機部材に許容温度があるとともに、高温になると圧縮機動力が増加するため、冷却器により冷却した空気を抽気空気圧縮機に供給せざるを得なかった。そのため、ガス化炉に導入される空気の温度も低くなり、石炭ガス化複合発電設備全体として、発電効率を低下させてしまうという不都合があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、ガス化炉に導入する空気の温度を上昇させて、発電効率を向上させることができる石炭ガス化複合発電設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、石炭をガス化するガス化炉と、該ガス化炉により生成されたガスを燃焼させるための空気を圧縮する燃焼用空気圧縮機と、前記ガス化炉により生成されたガスと前記燃焼用空気圧縮機により圧縮された空気との混合気を燃焼させる燃焼器と、該燃焼器において発生した燃焼ガスにより駆動されるガスタービンと、該ガスタービンにより駆動されて発電を行う発電機と、前記ガスタービンからの排ガスを用いて蒸気を発生させる排ガスボイラと、前記燃焼用空気圧縮機により圧縮された空気の一部を抽気して前記ガス化炉に導入する抽気系統とを備え、前記排ガスボイラが、前記抽気系統により前記燃焼用空気圧縮機から抽気された空気と前記ガスタービンからの排ガスとの熱交換を行う排ガス熱交換器を有する石炭ガス化複合発電設備を採用する。
【0008】
本発明によれば、ガス化炉により生成されたガスと燃焼用空気圧縮機により圧縮された空気との混合気が燃焼器において燃焼され、発生した燃焼ガスによりガスタービンが駆動されて、発電機により発電が行われる。この際、燃焼用空気圧縮機により圧縮された空気の一部は、抽気系統により抽気され、排ガスボイラに備えられた排ガス熱交換器により排ガスと熱交換されて昇温された後に、ガス化炉に導入されて石炭をガス化するために使用される。
【0009】
ここで、石炭をガス化するためには、例えば1800℃程度の燃焼温度が必要であるが、本発明によれば、排ガス中の熱量を利用してガス化炉に導入する空気を昇温することができるため、効率的にガスを生成することができる。
【0010】
また、ガス化炉に導入する空気の温度を上げることで、その顕熱をガス生成に利用することができるので、ガス化炉に導入する空気の量を減らすことができる。その結果、ガス化炉での空気比を低下させることができるので、高い発熱量の生成ガスが得られ、冷ガス効率といったガス化性能を高くすることができる。
【0011】
以上のように、本発明によれば、排ガス中の熱量を有効に利用することで、高いガス化性能が得られるので、石炭ガス化複合発電設備全体の発電効率を向上させることができる。
【0012】
上記発明において、前記抽気系統が、前記燃焼用空気圧縮機から抽気された空気を冷却する冷却器と、該冷却器により冷却された空気を圧縮する抽気空気圧縮機とを備え、前記排ガス熱交換器が、前記抽気空気圧縮機により圧縮された空気と前記ガスタービンからの排ガスとの熱交換を行うこととしてもよい。
【0013】
冷却器により燃焼用空気圧縮機から抽気された空気を冷却することで、抽気空気圧縮機の動力を低減させることができる。また、抽気空気圧縮機により圧縮された空気を、排ガス熱交換器によりガスタービンからの排ガスと熱交換することで、ガス化炉に導入する空気を昇温することができるため、効率的にガスを生成することができる。
【0014】
上記発明において、前記抽気系統が、前記燃焼用空気圧縮機と前記冷却器との間に設けられ、前記抽気空気圧縮機により圧縮された空気と前記燃焼用圧縮機から抽気された空気とを熱交換する抽気空気熱交換器を備えることとしてもよい。
【0015】
抽気空気熱交換器を備えることで、抽気空気圧縮機により圧縮された空気を、燃焼用圧縮機から抽気された空気と熱交換して昇温することができる。これにより、燃焼用圧縮機から抽気された空気の熱量を、抽気空気圧縮機により圧縮された空気、すなわち、ガス化炉に導入する空気を昇温するために利用することができるため、効率的に石炭をガス化することができる。
【0016】
上記発明において、前記排ガスボイラにより発生される蒸気を用いて駆動される蒸気タービンを備え、前記発電機が、前記ガスタービンおよび前記蒸気タービンにより駆動されて発電を行うこととしてもよい。
【0017】
蒸気タービンを備えることで、排ガスボイラにより排ガスの熱量を利用して蒸気を発生させ、該蒸気を用いて蒸気タービンにより発電機を駆動させて発電を行うことができる。これにより、ガスタービンおよび蒸気タービンの回転駆動力を用いて発電を行うことができるので、石炭ガス化複合発電設備全体の発電効率を向上させることができる。
【0018】
上記発明において、前記排ガスボイラは、蒸気を過熱する複数の過熱器を有し、前記排ガス熱交換器が、前記蒸気タービンに供給する蒸気が定格温度となるように、前記複数の過熱器の間に配置されることとしてもよい。
【0019】
蒸気タービンに供給する蒸気、すなわち、複数の過熱器により過熱する蒸気が定格温度となるように、排ガス熱交換器を複数の過熱器の間、例えば2次過熱器と3次過熱器との間に配置する。このような配置とすることで、燃焼用空気圧縮機から抽気されてガス化炉に導入する空気を、排ガス熱交換器により昇温するとともに、複数の過熱器により蒸気を過熱して蒸気タービンに供給する蒸気を定格温度に昇温することができる。これにより、ガスタービンおよび蒸気タービンを効率的に駆動させることができるので、石炭ガス化複合発電設備全体の発電効率を向上させることができる。
【0020】
上記発明において、前記ガスタービンの回転軸が、前記燃焼用空気圧縮機の回転軸に連結されることとしてもよい。
【0021】
これにより、ガスタービンの駆動力を直接、燃焼用空気圧縮機による空気を圧縮するために用いることができ、燃焼用空気圧縮機の圧縮効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ガス化炉に導入する空気の温度を上昇させて、発電効率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る石炭ガス化複合発電設備の概略構成図である。
【図2】図1の排ガスボイラの部分拡大図である。
【図3】従来の石炭ガス化複合発電設備の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の石炭ガス化複合発電設備の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る石炭ガス化複合発電設備1は、石炭をガス化し、このガスを用いてガスタービンを駆動して発電するとともに、排ガスボイラによってガスタービンの排ガスが持つ熱エネルギーを回収して蒸気を発生させ、この蒸気によって蒸気タービンを駆動して発電する設備である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る石炭ガス化複合発電設備1は、ガス化炉11と、ガス精製装置12と、燃焼用空気圧縮機13と、燃焼器14と、ガスタービン15と、蒸気タービン(図示略)と、発電機16と、排ガスボイラ(HRSG)17と、排ガスボイラ17を通過した排ガスを排出する煙突18と、抽気系統20とを主な構成要素として備えている。
【0026】
ガス化炉11は、例えば、固定床式、流動床式、噴流床式、あるいは溶融床式の石炭を加熱する炉であり、炉内に石炭および空気を供給して、例えば加圧下において1800℃の高温で加熱して、一酸化炭素や水素等の可燃性ガスを生成する設備である。
【0027】
ガス精製装置12は、ガス化炉11により生成されたガスから窒素酸化物や硫黄酸化物や微量成分等を除去してガスを精製し、精製したガスを燃焼器14に供給する設備である。また、ガス精製装置12と燃焼器14との間には、ガス精製装置12により精製されたガスの流量を調節する流量調節弁41が設けられている。
【0028】
燃焼用空気圧縮機13は、外部から取り入れた空気を圧縮する設備であり、圧縮した空気を燃焼器14に供給するようになっている。すなわち、燃焼用空気圧縮機13は、ガス精製装置12により精製されたガスを燃焼させるための燃焼用空気を圧縮する設備である。また、燃焼用空気圧縮機13は、ガスタービン15と回転軸が連結されており、ガスタービン15が回転駆動されることで、空気を圧縮する構成とされている。
【0029】
燃焼器14は、ガス化炉11により生成されガス精製装置12により精製されたガスと、燃焼用空気圧縮機13により圧縮された空気との混合気を燃焼させる設備であり、燃焼により発生した高温の燃焼ガスをガスタービン15に供給するようになっている。
【0030】
ガスタービン15は、燃焼器14において発生した燃焼ガスにより駆動される設備であり、燃焼器14から供給された燃焼ガスが有するエネルギーを回転駆動力に変換するようになっている。また、ガスタービン15は、その回転駆動力を、燃焼用空気圧縮機13に回転軸19を介して伝達可能な構成とされている。
【0031】
回転軸19は、燃焼用空気圧縮機13、ガスタービン15、および発電機16を連結する設備であり、ガスタービン15から回転駆動力を燃焼用空気圧縮機13および発電機16に伝達するものである。これにより、ガスタービン15の駆動力を直接、燃焼用空気圧縮機13による空気を圧縮するために用いることができる。
【0032】
発電機16は、ガスタービン15により回転駆動されて発電を行う設備である。発電機16には、回転軸19が連結されており、回転軸19の回転駆動力を伝達されるようになっている。また、発電機16には、図示しない蒸気タービンの回転軸が連結されており、蒸気タービンにより回転駆動されて発電が行われる。これにより、発電機16は、ガスタービンおよび蒸気タービンからの回転駆動力を用いて発電を行うことができるので、石炭ガス化複合発電設備1全体の発電効率を向上させることができる。
【0033】
排ガスボイラ17は、ガスタービン15からの排ガスを用いて蒸気を発生させる設備であり、発生させた蒸気を蒸気タービンに供給するようになっている。また、排ガスボイラ17には、排ガス熱交換器21が設けられており、排ガス熱交換器21は抽気系統20に接続されている。
【0034】
抽気系統20は、燃焼用空気圧縮機13により圧縮された空気の一部を抽気して、ガス化炉11に導入する系統である。
抽気系統20には、前述の排ガス熱交換器21の他、冷却器22と、抽気空気圧縮機23と、抽気空気熱交換器24とが設けられている。
【0035】
また、抽気系統20は、燃焼用空気圧縮機13から抽気された空気が流通する順序に、燃焼用空気圧縮機13と抽気空気熱交換器24とを接続する配管31と、抽気空気熱交換器24と冷却器22とを接続する配管32と、冷却器22と抽気空気圧縮機23とを接続する配管33と、抽気空気圧縮機23と抽気空気熱交換器24とを接続する配管34と、抽気空気熱交換器24と排ガス熱交換器21とを接続する配管35と、排ガス熱交換器21とガス化炉11とを接続する配管36とが設けられている。配管36には、ガス化炉11に導入する空気の流量を調節する流量調節弁42が設けられている。
【0036】
冷却器22は、燃焼用空気圧縮機13と抽気空気圧縮機23との間に設けられており、燃焼用空気圧縮機13から抽気された空気を冷却する設備である。冷却器22により燃焼用空気圧縮機13から抽気された空気を冷却することで、抽気空気圧縮機23の動力を低減させることができる。
【0037】
抽気空気圧縮機23は、モータにより回転駆動されて、燃焼用空気圧縮機13から抽気されて冷却器22により冷却された空気を圧縮する設備であり、圧縮した空気をガス化炉11に供給するようになっている。すなわち、抽気空気圧縮機23は、ガス化炉11において石炭とともに加熱されてガスを生成するための空気を圧縮する設備である。
【0038】
抽気空気熱交換器24は、燃焼用空気圧縮機13と冷却器22との間、且つ、抽気空気圧縮機23と排ガス熱交換器21との間に設けられており、抽気空気圧縮機23により圧縮された空気と、燃焼用空気圧縮機13から抽気された空気とを熱交換するようになっている。
【0039】
抽気空気熱交換器24により、抽気空気圧縮機23により圧縮された空気と燃焼用空気圧縮機13から抽気された空気とを熱交換することで、抽気空気圧縮機23により圧縮された空気を昇温することができる。これにより、燃焼用空気圧縮機13から抽気された空気の熱量を、抽気空気圧縮機23により圧縮された空気、すなわち、ガス化炉11に導入する空気を昇温するために利用することができるため、効率的に石炭をガス化することができる。また、冷却器22に供給する空気の温度を低下させることができるため、冷却器22の負荷を低減することができる。
【0040】
排ガス熱交換器21は、抽気系統20により燃焼用空気圧縮機13から抽気された空気と、ガスタービン15からの排ガスとの熱交換を行うようになっている。
排ガス熱交換器21により、抽気空気圧縮機23により圧縮された空気を、ガスタービン15からの排ガスと熱交換することで、ガス化炉11に導入する空気を昇温することができるため、ガス化炉11において効率的にガスを生成することができる。
【0041】
ここで、排ガスボイラ17内における排ガス熱交換器21の配置について、図2に示す具体例を参照して説明する。
図2に示す具体例において、排ガスボイラ17は、蒸気を過熱する過熱器を複数備えている。また、排ガスボイラ17には、図示しない1次過熱器と、2次過熱器52と、3次過熱器53と、例えば図示しない蒸気タービンを駆動させるための蒸気を再過熱する再熱器54とが設けられている。このような構成を有する排ガスボイラ17内において、排ガス熱交換器21は、2次過熱器52と3次過熱器53および再熱器54との間に配置されている。
【0042】
ここで、排ガスボイラ17内において、排ガス熱交換器21通過前の排ガスの温度は、例えば558℃であり、排ガス熱交換器21通過後の排ガスの温度は、例えば545℃となる。この場合において、排ガス熱交換器21通過前の空気の温度は370℃であり、排ガス熱交換器21通過後の空気の温度は450℃となる。また、この場合、複数の過熱器および再熱器により、蒸気の温度を蒸気タービンの定格温度まで昇温することができるものとする。
【0043】
このように、図2に示すような配置とすることで、燃焼用空気圧縮機13から抽気されてガス化炉11に導入する空気を、排ガス熱交換器21により昇温することができる。また、複数の過熱器および再熱器により蒸気を過熱して、蒸気タービンに供給する蒸気を定格温度に昇温することができるので、ガスタービン15および蒸気タービンを効率的に駆動させることができ、石炭ガス化複合発電設備1全体の発電効率を向上させることができる。
【0044】
上記構成を有する石炭ガス化複合発電設備1の運転について、図1を用いて説明する。
まず、流量調節弁42により流量が調節された空気が、配管36を介してガス化炉11に導入され、ガス化炉11において石炭がガス化される。生成されたガスは、ガス精製装置12により硫黄酸化物等が除去され、流量調節弁41により流量が調節されて燃焼器14に供給される。
【0045】
一方、燃焼用空気圧縮機13は、回転軸19により回転駆動されることにより、外部の空気を吸入し、所定の圧力にまで昇圧する。昇圧された空気は、燃焼用空気圧縮機13から燃焼器14に供給される。
【0046】
燃焼器14では、ガス化炉11により生成されたガスと、燃焼用空気圧縮機13により昇圧された空気との混合気が燃焼され、高温の燃焼ガスが生成される。生成された燃焼ガスは、燃焼器14からガスタービン15に供給される。
【0047】
ガスタービン15では、燃焼ガスの有する熱エネルギーなどが回転駆動力に変換される。回転駆動力はガスタービン15から回転軸19に伝達される。燃焼ガスは、その後、排ガスとしてガスタービン15から排ガスボイラ17に供給される。
【0048】
回転軸19は、燃焼用空気圧縮機13および発電機16に回転駆動力を伝達し、燃焼用空気圧縮機13および発電機16を回転駆動する。これにより、燃焼用空気圧縮機13は外部の空気を圧縮し、発電機16は発電を行う。
【0049】
排ガスボイラ17では、ガスタービン15からの排ガスを用いて蒸気を発生させ、該蒸気が蒸気タービンに供給される。蒸気タービンでは、蒸気の有する熱エネルギーなどが回転駆動力に変換される。この回転駆動力は、発電機16に伝達されて発電を行うために用いられる。
【0050】
ここで、燃焼用空気圧縮機13からは圧縮された空気の一部が、抽気系統20により抽気され、排ガスボイラ17に備えられた排ガス熱交換器21により排ガスと熱交換されて昇温された後に、ガス化炉11に導入されて石炭をガス化するために使用される。
【0051】
具体的には、燃焼用空気圧縮機13から抽気された空気は、配管31を通って抽気空気熱交換器24に供給される。ここで、燃焼用空気圧縮機13から抽気された空気の温度は、例えば450℃である。
抽気空気熱交換器24に供給された空気は、配管32を通って冷却器22に供給され、冷却器22により、例えば50℃まで冷却される。
【0052】
冷却器22に供給された空気は、配管33を通って抽気空気圧縮機23に供給され、抽気空気圧縮機23により昇圧される。
抽気空気圧縮機23により昇圧された空気は、配管34を通って再び抽気空気熱交換器24に供給され、燃焼用空気圧縮機13から抽気された空気との熱交換が行われ、例えば370℃まで昇温される。
【0053】
抽気空気熱交換器24により昇温された空気は、配管35を通って排ガスボイラ17内に設けられた排ガス熱交換器21に供給される。
排ガス熱交換器21に供給された空気は、排ガス熱交換器21により、ガスタービン15からの排ガスとの熱交換が行われ、例えば450℃まで昇温される。
排ガス熱交換器21により昇温された空気は、配管36を通って流量調節弁42により流量が調節され、ガス化炉11に導入されてガスを生成するために使用される。
【0054】
ここで、比較例として、従来の石炭ガス化複合発電設備100の運転について図3を用いて説明する。
ガス化炉111により生成されたガスは、ガス精製装置112および流量調節弁141を介して燃焼器114に供給される。燃焼器114では、ガス化炉111により生成されたガスと、燃焼用空気圧縮機113により昇圧された空気との混合気が燃焼され、生成された燃焼ガスによりガスタービン115が駆動されて、発電機116により発電が行われる。
【0055】
一方、燃焼用空気圧縮機113から抽気された空気は、抽気空気熱交換器124および冷却器122を通って抽気空気圧縮機123に供給されて昇圧される。
抽気空気圧縮機123により昇圧された空気は、再び抽気空気熱交換器124に供給され、燃焼用空気圧縮機113から抽気された空気との熱交換が行われ、例えば370℃まで昇温される。
抽気空気熱交換器124により昇温された空気は、そのままガス化炉111に導入されてガスを生成するために使用される。
【0056】
このように、従来の石炭ガス化複合発電設備100によれば、ガス化炉111に導入される空気は、抽気空気熱交換器124により昇温されるのみであるため、その昇温能力に限界があり、ガス化炉111に導入される空気を好適に昇温することができない。その結果、効率的に石炭のガス化を行うことができず、石炭ガス化複合発電設備100全体としての発電効率を低下させてしまうこととなる。
【0057】
これに対して、本実施形態に係る石炭ガス化複合発電設備1によれば、燃焼用空気圧縮機13により圧縮された空気の一部は、抽気系統20により抽気され、排ガスボイラ17に備えられた排ガス熱交換器21により排ガスと熱交換されて昇温された後に、ガス化炉11に導入されて石炭をガス化するために使用される。
【0058】
石炭をガス化するためには、例えば1800℃程度の燃焼温度が必要であるが、本実施形態に係る石炭ガス化複合発電設備1によれば、排ガス中の熱量を利用してガス化炉11に導入する空気を昇温することができるため、効率的にガスを生成することができる。
【0059】
また、ガス化炉11に導入する空気の温度を上げることで、その顕熱をガス生成に利用することができるので、ガス化炉11に導入する空気の量を減らすことができる。その結果、ガス化炉11での空気比を低下させることができるので、高い発熱量の生成ガスが得られ、冷ガス効率といったガス化性能を高くすることができる。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る石炭ガス化複合発電設備1によれば、排ガス中の熱量を有効に利用することで、高いガス化性能が得られるので、石炭ガス化複合発電設備1全体の発電効率を向上させることができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、図2の具体例において、排ガス熱交換器21の配置を例示したが、排ガスボイラ17内の温度分布によって異なる配置としてもよい。すなわち、蒸気タービンに供給する蒸気が定格温度となるように各過熱器および再熱器で蒸気を過熱できればよく、本発明は当該配置に限定されるものではない。
【0062】
また、発電機16にガスタービン15および蒸気タービンが接続されていることとして説明したが、ガスタービン15および蒸気タービンのそれぞれに発電機を設けることとしてもよい。
また、抽気空気圧縮機23はモータにより駆動するものとして説明したが、回転軸19に連結して、ガスタービン15により駆動することとしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 石炭ガス化複合発電設備
11 ガス化炉
12 ガス精製装置
13 燃焼用空気圧縮機
14 燃焼器
15 ガスタービン
16 発電機
17 排ガスボイラ
19 回転軸
20 抽気系統
21 排ガス熱交換器
22 冷却器
23 抽気空気圧縮機
24 抽気空気熱交換器
52 2次過熱器
53 3次過熱器
54 再熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭をガス化するガス化炉と、
該ガス化炉により生成されたガスを燃焼させるための空気を圧縮する燃焼用空気圧縮機と、
前記ガス化炉により生成されたガスと前記燃焼用空気圧縮機により圧縮された空気との混合気を燃焼させる燃焼器と、
該燃焼器において発生した燃焼ガスにより駆動されるガスタービンと、
該ガスタービンにより駆動されて発電を行う発電機と、
前記ガスタービンからの排ガスを用いて蒸気を発生させる排ガスボイラと、
前記燃焼用空気圧縮機により圧縮された空気の一部を抽気して前記ガス化炉に導入する抽気系統とを備え、
前記排ガスボイラが、
前記抽気系統により前記燃焼用空気圧縮機から抽気された空気と前記ガスタービンからの排ガスとの熱交換を行う排ガス熱交換器を有する石炭ガス化複合発電設備。
【請求項2】
前記抽気系統が、
前記燃焼用空気圧縮機から抽気された空気を冷却する冷却器と、
該冷却器により冷却された空気を圧縮する抽気空気圧縮機とを備え、
前記排ガス熱交換器が、
前記抽気空気圧縮機により圧縮された空気と前記ガスタービンからの排ガスとの熱交換を行う請求項1に記載の石炭ガス化複合発電設備。
【請求項3】
前記抽気系統が、
前記燃焼用空気圧縮機と前記冷却器との間に設けられ、前記抽気空気圧縮機により圧縮された空気と前記燃焼用圧縮機から抽気された空気とを熱交換する抽気空気熱交換器を備える請求項2に記載の石炭ガス化複合発電設備。
【請求項4】
前記排ガスボイラにより発生される蒸気を用いて駆動される蒸気タービンを備え、
前記発電機が、前記ガスタービンおよび前記蒸気タービンにより駆動されて発電を行う請求項1から請求項3のいずれかに記載の石炭ガス化複合発電設備。
【請求項5】
前記排ガスボイラは、蒸気を過熱する複数の過熱器を有し、
前記排ガス熱交換器が、前記蒸気タービンに供給する蒸気が定格温度となるように、前記複数の過熱器の間に配置された請求項4に記載の石炭ガス化複合発電設備。
【請求項6】
前記ガスタービンの回転軸が、前記燃焼用空気圧縮機の回転軸に連結された請求項1から請求項5のいずれかに記載の石炭ガス化複合発電設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−241957(P2010−241957A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92071(P2009−92071)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】