説明

石目調建築板とその製造方法

【課題】深みのある石目調外観を有する建築材とその製造方法を提供する。
【解決手段】スライス加工されたシート状の樹脂発泡体が、そのスライス加工表面が石目模様を表現する石目模様層2として基材1上に貼着され、さらにその表面に樹脂製シートまたは樹脂塗膜が保護層3として形成されていることとする。樹脂発泡体は異なる色の樹脂発泡体をそれぞれ粉砕し、これらを混合して熱で溶かして互いに溶着して集成された圧着成形体からなるブロック体をシート状にスライス加工してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、石目調建築板とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、石目調の建築材は、天然石材よりの切り出し、天然石材の集成材、樹脂等による人造石、石目模様を有する印刷シート等により製造している(たとえば特許文献1〜4)。
【特許文献1】特開平6−306272号公報
【特許文献2】特開平7−82670号公報
【特許文献3】特開平7−207607号公報
【特許文献4】特許第3090226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、天然石材は比較的高価なこと、柄を合わせられずその使用は制限されてしまうという問題があった。また、天然石材の集成材はせっかくの外観が損なわれてしまうこと、樹脂等による人造石や印刷シートでは、素材そのものが深みのある石目調外観を表現することが十分にできていないという問題があった。
【0004】
そこで、本願発明は、以上の通りの背景から、深みのある石目調外観を有する建築材とその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明の石目調建築板は、前記の課題を解決するものとして、第1には、スライス加工されたシート状の樹脂発泡体が、そのスライス加工表面が石目模様を表現する石目模様層として基材上に貼着され、さらにその表面に樹脂製シートまたは樹脂塗膜が保護層として形成されていることを特徴とする。
【0006】
また、第2には、上記の石目調建築板における樹脂発泡体は、その粉砕物が互いに溶着して集成されたものであることを特徴とする。
【0007】
第3には、上記第2の発明の石目調建築板において、異なる色の樹脂発泡体の粉砕物が混合されて互いに溶着されていることを特徴とする。
【0008】
そして、第4には、上記石目調建築板の製造方法として、樹脂発泡体をシート状にスライス加工してこれを基材上に貼着し、さらにその表面に樹脂製シートを接着するかまたは樹脂を塗布することを特徴とする。
【0009】
第5には、上記の石目調建築板の製造方法において、樹脂発泡体を直径10〜300mmの範囲になるように粉砕し、これら粉砕した樹脂発泡体の表面を熱で溶かしながら圧着成形してブロック体とした後、これをシート状にスライス加工して基材上に貼着することを特徴とする。
【0010】
第6には、上記第5の発明の石目調建築板の製造方法において、ブロック体は、異なる色の樹脂発泡体をそれぞれ粉砕し、これらを混合して熱で溶かしながら圧着成形したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記第1の発明によれば、スライス加工されたシート状の樹脂発泡体が、そのスライス加工表面が石目模様を表現する石目模様層として基材上に貼着され、さらにその表面に樹脂製シートまたは樹脂塗膜が保護層として形成されていることにより、樹脂発泡体のスライス加工面では厚み方向に乱反射が生じ、深みのある石目調外観を実現することができる。
【0012】
上記第2の発明によれば、樹脂発泡体の粉砕物が互いに溶着して集成されたものであることにより、スライス加工面での発泡がより不均一なものとなって、さらに深みの強調された外観が得られる。
【0013】
上記第3の発明によれば、異なる色の樹脂発泡体の粉砕物が混合されて互いに溶着されていることにより、より一層深みが強調された深みのある石目調外観を実現することができる。
【0014】
上記第4の発明によれば、樹脂発泡体をシート状にスライス加工してこれを基材上に貼着し、さらにその表面に樹脂製シートを接着するかまたは樹脂を塗布することにより、上記のとおりの石目調建築板が簡易に製造可能となる。
【0015】
さらに、上記第5の発明によれば、樹脂発泡体を直径10〜300mmの範囲になるように粉砕し、これら粉砕した樹脂発泡体の表面を熱で溶かしながら圧着成形してブロック体とした後、これをシート状にスライス加工して基材上に貼着することにより、より一層の深みのある石目調外観を実現することができる。
【0016】
上記第6の発明によれば、ブロック体が、異なる色の樹脂発泡体をそれぞれ粉砕し、これらを混合して熱で溶かしながら圧着成形したものであることにより、以上の効果をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本願発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、その実施の形態について説明する。
【0018】
本願発明の石目調建築板は、たとえば図1にその概要を示したように、基材1上にスライス加工されたシート状の樹脂発泡体が、そのスライス加工表面が石目模様を表現する石目模様層2として貼着されている。そして、その表面には樹脂製シートまたは樹脂塗膜が保護層3として形成されている。
【0019】
建築板としての素材の外観の深みは、その素材の持つ厚み方向での乱反射によって発現する。特に透明性のある素材は乱反射の起こる深さに幅があり深みが強調される。さらに、乱反射の起こる深さが種々存在すると素材の厚み感も強調されることになる。本願発明は、樹脂発泡体のスライス加工表面の微細な凹凸によって生じる厚み方向の乱反射を利用して、深みのある石目調外観を表現するものである。この微細な凹凸は、樹脂発泡体のスライス加工された際に樹脂発泡体中の気泡が凹部として加工表面に露出して形成されることで生じる。一般的に行われているのこ刃による切削加工の場合には、表面の樹脂発泡体の多くが破泡してしまい加工面が粗くなってしまうため、乱反射が生じず深みのある石目調外観を得ることができないのである。
【0020】
本願発明に用いられる樹脂発泡体は、どのような発泡倍率であってもよく、たとえば10〜30倍程度の範囲であってもよい。樹脂発泡体の材質としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系、スチレン系あるいはポリウレタン等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。本願発明では、以上の樹脂発泡体がシート状にスライス加工されて用いられるが、その厚みは深みのある石目調外観が得られれば特に限定されるものではなく、たとえば厚さ0.5mm以上にスライス加工されることが考慮される。上限については、コスト等を考慮すると5mm程度である。また、この樹脂発泡体は、接着剤等により基材1に接着されていてもよいし、熱溶着等により接着されていてもよい。
【0021】
以上のシート状の樹脂発泡体は、樹脂発泡体の粉砕物が表面で互いに溶着して集成されたものであってもよい。このようなシート状の樹脂発泡体は、たとえば、あらかじめ樹脂発泡体を所定の大きさに粉砕し、これら粉砕した樹脂発泡体の表面を熱で溶かしながら圧着成形してブロック体とする。次いでこのブロック体を所定の厚さにシート状にスライス加工することで製造される。樹脂発泡体の粉砕物同士が表面で溶着されていることからそれぞれの樹脂発泡体の粉砕物表面にスキン層が生じ、このスキン層がスライス加工面の各粉砕物の輪郭をより明瞭化するため、さらに一層深みのある石目調外観を実現することができる。また、上記ブロック体は、異なる色の樹脂発泡体をそれぞれ粉砕し、これらを混合して熱で溶かしながら圧着成形したものであってもよい。異なる色の樹脂発泡体が混合されていることによって配色効果が高まり、より一層深みのある石目調外観を実現することができる。
【0022】
以上のような効果は、たとえば直径10〜300mmの範囲の大きさになるように粉砕した樹脂発泡体を用いることでより好適に実現される。10mm未満ではスライス加工面が集成界面ばかりになってしまい、深みを十分に表現することができない場合があるため好ましくない。300mmを超える場合では、樹脂発泡体の粉砕物間に隙間ができやすくなり製造することができない場合があるので好ましくない。
【0023】
保護層3としての樹脂製シートは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、フッ素樹脂等よりなるシートを例示することができる。この樹脂製シートは接着剤等によりシート状の樹脂発泡体に接着されていてもよいし、熱溶着等により接着されていてもよい。
【0024】
保護層3としての樹脂塗膜としては、アクリル系、ウレタン系、エポキシ樹脂系、シリコーン系、フッ素樹脂系などの塗料を塗布して得られる各種の樹脂塗膜が考慮される。このとき、塗料の塗装方法は特に限定されず、たとえば、スプレー、ロールコーター等の一般的な手法が適用できる。
【0025】
以上の保護層3は、シート状樹脂発泡体の石目模様層を保護し、かつ石目模様が透視できる透明性を有していることはもちろんであり、保護層3のレンズ効果により石目模様を透視して浮き上がらせ、深みのある石目調外観をより効果的に現出することができる。
【0026】
本願発明における基材1は、一般に天井、壁、床等の内装材や外壁等の外装材、キッチン、浴室等の水回り部材、扉、家具等に用いられる各種のものから選択され、特に限定されない。具体的には、木材、合板、MDF、パーティクルボード等の木質基材、FRP、樹脂成形品等のプラスチック基材、石膏ボード、各種セメント板等の無機質基材が挙げられる。
【0027】
以上のとおりの石目調建築板は、樹脂発泡体が石材の代替として基材1表面に貼着されるため、防音性能や断熱性能の向上も期待される。さらには、施工自体も通常の木質床材と同様の施工が可能となるため、作業性向上も期待される。
【0028】
以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって本願発明が限定されることはない。
【実施例】
【0029】
<実施例1>
<樹脂発泡体> ポリエチレン樹脂(平均発泡倍率15倍)
<スライス加工> スライサーにて厚み0.8mmに加工
<張り合わせ> 基材:合板12mm
接着剤:水性ビニルウレタン(中央理化工業株式会社)
リカボンド 主剤 BA−10L 100部
硬化剤 BA−11B 3部
塗布量 80g/cm
冷圧:0.5MPa 1時間
<表面仕上げ(保護層)> クリア−PETフィルム貼り、フィルム ルミラーQ27(東レフィルム加工(株))
接着剤:水性ビニルウレタン(中央理化工業株式会社)
リカボンド 主剤 BA−10L 100部
硬化剤 BA−11B 3部
塗布量 35g/cm
冷圧:0.5MPa 3時間
以上の条件で石目調建築板を製造し、外観を観察した。
<実施例2>
実施例1の樹脂発泡体を直径がほぼ10〜30mm程度の範囲になるように粉砕した。これら樹脂発泡体の粉砕物を約200℃の温度で表面を溶かしながら圧着成形してブロック体とし、これを厚み0.8mmにスライス加工した。その他の条件は実施例1と同様にして石目調建築板を製造し、外観を観察した。
<実施例3>
実施例2において、以下の2色の樹脂発泡体を使用して石目調建築板を製造し、外観を観察した。
色A:樹脂発泡体に着色剤PE−M E7802 GOLD(大日精化工業(株))6部配合
色B:樹脂発泡体に着色剤PE−M E7803 DARK BROWN(大日精化工業(株))3部配合
<比較例>
実施例1において、スライス加工のかわりにのこ刃による切断加工にて石目調建築板を製造し、外観を観察した。
【0030】
以上の観察結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

表1より、スライス加工により製造された石目調建築板は、印刷では表現できない深みのある石目調外観を有することが確認できた。特に、樹脂発泡体を粉砕して熱で溶かしながら圧着成形したものをスライス加工したり、2色の樹脂発泡体を用いることで、より深みに変化があり石目調が強調された外観を有することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本願発明の石目調建築板の概要を示した断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 基材
2 石目模様層
3 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライス加工されたシート状の樹脂発泡体が、そのスライス加工表面が石目模様を表現する石目模様層として基材上に貼着され、さらにその表面に樹脂製シートまたは樹脂塗膜が保護層として形成されていることを特徴とする石目調建築板。
【請求項2】
樹脂発泡体は、その粉砕物が互いに溶着して集成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の石目調建築板。
【請求項3】
異なる色の樹脂発泡体の粉砕物が混合されて互いに溶着されていることを特徴とする請求項2に記載の石目調建築板。
【請求項4】
樹脂発泡体をシート状にスライス加工してこれを基材上に貼着し、さらにその表面に樹脂製シートを接着するかまたは樹脂を塗布することを特徴とする石目調建築板の製造方法。
【請求項5】
樹脂発泡体を直径10〜300mmの範囲になるように粉砕し、これら粉砕した樹脂発泡体の表面を熱で溶かしながら圧着成形してブロック体とした後、これをシート状にスライス加工して基材上に貼着することを特徴とする請求項4に記載の石目調建築板の製造方法。
【請求項6】
ブロック体は、異なる色の樹脂発泡体をそれぞれ粉砕し、これらを混合して熱で溶かしながら圧着成形したものであることを特徴とする請求項5に記載の石目調建築板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−118260(P2007−118260A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310529(P2005−310529)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】