説明

石英ガラスルツボ及び石英ガラスルツボの表面を処理するための方法

還元された化学的性質をもたらす新規のコート物質によって表面処理された石英ガラス製品が提供され、ここで融解ケイ素もしくは同様の腐食性の環境への接触に際し還元された化学的性質を有する石英ガラス表面は、石英ガラスルツボのコートされた表面の少なくとも30%を覆う結晶構造を形成する。前記結晶が覆う表面は融解ケイ素との接触でのより安定した表面と単結晶のケイ素の成長をもたらす。本発明の一実施態様において、コートされた表面上に少なくとも一つの水素化およびメチル化された表面をもたらすためにコート物質は少なくとも一つのメチル基を含有し、コートされた表面の少なくとも80%を覆うロゼット構造、または他の結晶形態を形成する。本発明の他の実施態様において、コート物質は、アミン、オルガノシランハロゲンおよびそれらの混合物の少なくとも一つより選択される。
【課題】
【解決手段】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2006年10月18日に出願された米国特許出願第11/550,646号、第11/550,666号および第11/550,680号の便益を主張し、それらの全内容を参照によりここに組み入れる。
【0002】
本発明は、半導体産業におけるケイ素単結晶を引き上げるために用いる石英ガラスルツボを含む石英ガラス製品ならびに石英ガラス製品の表面を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
大部分の半導体電子部品製造のための出発物質である単結晶ケイ素は、いわゆるチョクラルスキー(「Cz」)法によって一般的に調製される。Cz法を用いて、結晶の成長は結晶引き出し溶鉱炉中で実施され、ここで多結晶ケイ素(「ポリシリコン」)がルツボへと充填され、ルツボの側壁の外部表面を囲むヒーターによって融解される。種結晶は融解ケイ素と接触するようもたらされ、単結晶のインゴットは結晶引き出しを介する抽出によって成長する。この引き出しプロセスにおいて、石英ガラスルツボは数時間高温下におかれる。この期間に石英ガラスルツボは、ガラス引張温度(glass strain temperature)を通って昇温され、それがその温度に到達する前に熱機械的張力および引張を耐えるようにされる。温度がそのポイントすなわち1100℃を超えるまで上昇する時、ガラス状のシリカ(SiO)の粘度は減少し続ける。1421℃もしくはそれ以上の時、ガラスは高粘度の液体そのもののように流れはじめる。一旦ポリシリコンの充填物が融解し始めると、液体ケイ素はSiOルツボを融解し始め、内部表面を溶媒和し、そして内部表面のシリカ物質を徐々にエッチングする。ルツボは、典型的な融解および液晶引き上げプロセスのサイクルの間、これらの反応を耐えなければならない。ルツボおよびそこへと受け入れる融解物の容量がより大きくなればなるほど、一般的に融解時間もより長くなる。
【0004】
米国特許第5,976,247号は石英ガラスルツボの熱安定性を向上させるプロセスを開示し、そこではルツボはクリストバライトの表面層を伴って提供される。約1720℃であるクリストバライトの融点は、一般的な半導体物質の融解温度(例えば融解ケイ素では1420℃)よりも非常に高いのであるが、アモルファスな石英ガラスのおおよそ1600〜1610℃という融点よりもほんの少しだけ高いだけである。クリストバライトの表面層を生成するために、石英のルツボのガラスの外壁は、石英ガラスのクリストバライトへの失透を導く基質(「結晶化プロモーター」)、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、重遷移金属、水酸化バリウムおよび炭酸バリウムを含有する化学溶液によって処理される。石英ガラスルツボが1420℃を超える温度へと加熱されるとき、前処理されたルツボの壁の表面はクリストバライトへと転換するように結晶化し、チョクラルスキーの結晶成長に対してより良い性能を持つ石英ガラスルツボとなる。失透はルツボ表面の融解に対して耐性であり、それへの改善された制御をもたらす。
【0005】
米国特許公開番号2000/0178319は、石英ガラス中でネットワーク破壊および/もしくはネットワーク改変として作用する第一のアルカリ金属成分と、石英ガラス中でネットワーク形成として作用するアルカリ金属を含まない第二の成分、例えば4つの結合を形成し、そして4面体構造を形成できる酸素とを含有する結晶化プロモーターを伴う石英ガラスルツボを開示する。これらの成分の例はチタン酸バリウム、ジルコン酸バリウムもしくはそれらの混合物である。米国特許公開番号2003/0211335は、詳細には、クリストバライトの核生成と成長とを促進し、石英製品の寿命を延ばすためにバリウム、ストロンチウムおよびカルシウムのような金属カチオンを添加したコロイド状シリカのスラリーによってルツボをコートすることによって制御された失透によって向上した耐クリープ性を伴うルツボのような融合石英製品を提供する。
【0006】
ルツボを融解する融解ケイ素にとって、シリカ(SiO)の表面における一酸化ケイ素を生成する結合の一つの第一の破壊、そしてSiOをバルクのシリカ表面へと結合するネットワークへの残りの結合を破壊すること、そして結局個々のSiO粒子を溶媒和することを減ずる必要がある。米国特許番号第6,280,522号において、長時間の使用の後、石英ルツボが融解ケイ素と接触する表面(A)に小さい環状様パターン(B)を形成し、そして図1に描写されるように時間の経過と共に形状におけるパターンが変化し、サイズは成長することが開示される。この現象のより良い説明は、クリスタリンクリストバライト(C)種の成長のための表面の核が生成するということである。これらの小さい結晶核は円盤状のロゼット構造(C)へと成長する。明らかに外端が、ロゼット円盤の表面の内部部分よりも早く減じ、融解するので、これらの円盤の外周はしばしば淡褐色もしくは小麦色(B)である。しばしば円盤の内部部分は、微小片として出てきて融解する(D)。最終的にはロゼット円盤の内部表面領域は、クリストバライト(E)の下のガラス表面へと接触し、融解する。ガラス表面はクリストバライト円盤よりも非常に不均一で、かつより早く融解する傾向にある。最終的には内部領域は、褐色の環が存在する外周に届くまで外側へと拡張する。このとき、全体のクリストバライト円盤は侵食され、断片をきわめて簡単に軽視できる荒んで不規則なガラス表面を露出する。
【0007】
結晶部分が侵食される一方で、それは一般に容易に融解する微小な断片として失われる。一旦、中心が融解すると、結晶部分と下に存在するガラス物質との間の界面層が融解し、結晶物質の下部を切断するので、それはより大きな断片として失われる。界面層は、結晶種とアモルファスガラス種との間の比容積の違いがあるので、必然的に弱いことは注目すべきである。この結果、引っ張られる二つの間の化学結合が生じる。それは融解ケイ素の粒子断片に寄与する。ガラス表面が侵食されるかもしくは融解されるとき、それは不均一に融解し、ケイ素結晶成長中に転位しがちであり、そして収量を減ずる融解へ粒子をほぐれさせる。米国特許第6,280,522号に描写されるような「褐色の環」(B)は、SiOへと還元されるSiOであると信じられている。図3は通常の倍率で撮られた写真であり、1回の結晶引き上げの後の未処理のルツボの表面の褐色の環をロゼットの小集合と同様に個々のロゼットと共に示す。
【0008】
図3の褐色の環の詳細な検査では、個々のロゼット(図2に見られるような)が少ない核生成密度を持ち、SiOの沈着である褐色の環がロゼットの端に残ることを見て取れる。経時的に、ロゼットが、それらが互いにぶつかりるまで増大する放射状の成長と同化し始め、図1の褐色の環のサイズを拡大する。最終的にロゼットの部分が剥離しはじめるが、図4に描写されるように剥離するのは非常に多くの場合、ロゼッタの中心であり、孔食を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
今日のケイ素の完全結晶は、結晶構造を得るためにすべての努力が可能な限り完全になされる条件で成長する。これは、ケイ素の空孔の数と同様に格子のすきまの数を最小化するようになされる。しかしながら、熱力学的条件/遅い成長条件へと近づく最良の試みでさえも空孔を組み込んでしまう。格子のすきまおよび空孔は完全に除外できないため、改善された石英ガラスルツボによってそのような格子の張力を減ずる必要がある。本発明の一実施態様において、少なくともゲルマニウム系の種の薄膜を含有するコートは、結晶の成長への利点となる石英ガラスルツボへと用いられる。
【0010】
ケイ素結晶成長において用いる石英ルツボの寿命を拡張する改善された方法への必要性もまた存在する。従来技術における興味の中心は褐色の環を持つロゼットの形成を抑制することであった。本発明は、他の結晶の成長の核生成をし、そしてロゼットの条件を改善し、従来技術の教示に反し石英ルツボに形成される褐色の環を持つロゼットの数を増加することによって石英ルツボの寿命を延ばす方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様において、本発明は、石英ガラスルツボの表面を、石英ガラスルツボの表面における還元された化学的性質をもたらし、ここで前記還元された化学的性質を持つ石英ガラス表面が融解ケイ素への接触に際し、コートされた石英ガラスルツボ表面の少なくとも30パーセントを覆うロゼットを形成するコート剤によってコートすることによって石英ガラスルツボの寿命を延ばす方法に関する。
【0012】
本発明の一実施態様は、コートした表面をでの還元された化学的性質を伴う複数の化学種を提供するコート物質をその上にコートした表面を含有するガラス製品を提供し、ここで還元された化学的性質を伴うコートされた表面を持つガラス製品は、コート物質によってコートされていない石英ガラス製品よりも少なくとも10%長い耐用年数を持ち、ここで石英ガラス製品は少なくとも99.0パーセントのSiOを含有する。
【0013】
本発明の一実施態様において、コートされた表面での還元された化学的性質をもたらすSiOの原子当たりの平均電気陰性度値よりも小さい原子当たりの平均電気陰性度値(すなわち、ポーリングの電気陰性度)を持つ少なくとも一つの化学種をもたらすコート物質がその上にコートされた表面を持つガラス製品が提供され、ここで石英ガラス製品は少なくとも99.0%のSiOを持つ。
【0014】
本発明の一実施態様において、コート物質は、コートされたルツボ上に少なくとも一つの水素化され、そしてメチル化された表面の少なくとも一つをもたらすためのメチル基を少なくとも含有し、石英ガラスルツボのコートされた表面の少なくとも30%を覆うロゼットを生成する。他の実施態様において、コート物質はアミン、オルガノシランハロゲン(オルガノハロシラン)およびそれらの混合物の少なくとも一つより選択される。さらに他の実施態様において、コート物質は少なくともメチル基を含有する。
【0015】
一態様において、本発明はさらに、石英ガラスルツボの表面を、a)シランもしくはゲルマン化合物を含有するゲルフィルム中での結晶二酸化ケイ素の核の分散をもたらすこと;b)還元された反応性のシランもしくはゲルマン化合物の適用により石英ガラスルツボの表面での還元された化学的性質をもたらすこと;ならびにc)少なくとも成長するケイ素結晶中の引張張力の緩和に効果があるのに充分なゲルマニウム化合物の量の少なくとも一つである、コート物質によってコートすることによって石英ガラスルツボの寿命を延ばす方法に関し、ここで、石英ガラス表面は、融解ケイ素への接触に際し、石英ガラスルツボのコートされた表面の少なくとも30%を覆うロゼットもしくは結晶形態を生成する。
【0016】
一実施態様において、コート物質は、コートされたルツボの表面に物理的な核をもたらす少なくとも結晶の二酸化ケイ素種を含有し、石英ガラスルツボのコートされた表面の少なくとも30%を覆う結晶表面覆いもしくはロゼットを生成する。
【0017】
他の実施態様において、コート物質は、アルキルシラン、アミノシラン、アルキルアルコキシシラン、アルキルゲルマン、アミノゲルマン、アルキル−アルコキシ−シラン、アルキルアミノシラン、アミノ−アルコキシ−シラン、アルキルアミノゲルマン、アミノ−アルコキシ−ゲルマン、アルキルハロゲンシラン、アルキルハロゲンゲルマンおよびそれらの混合物の少なくとも一つより選択される。さらに他の実施態様において、コート物質は、少なくとも一つ物理的な核、アルキルシラン、アルキルゲルマン、アルコキシシラン、およびアルコキシゲルマン、アルキル−アルコキシ−シラン、アルキル−アミノ−シラン、アミノ−アルコキシ−シラン、アルキル−アミノ−ゲルマン、アミノ−アルコキシ−ゲルマン、アルキル−ハロゲン−シラン、アルキル−ハロゲン−ゲルマン、アルキル−アルコキシ−ゲルマン、またはそれらの可能な混合物を含有する。
【0018】
さらに他の態様において、本発明は、表面処理プロセスにおいてルツボの表面の還元/酸化状態を変化させることによって石英ガラス製品の寿命を延ばすプロセスに関する。ルツボの内部表面は、結晶成長の核として作用する二酸化ケイ素化合物結晶の拡散する石英表面をもたらす物質によってコートされる。一実施態様において、石英ガラス表面を操作する際に追加の成分が、SiOよりもより化学的に還元された化合物の構造を減らしてさらなる核を生成するために、それらの物理的な核を保持するゲルもしくはフィルムとして作用するのに用いられる。
【0019】
さらに他の態様において、本発明はチョクラルスキー操作におけるケイ素単結晶の成長に用いるルツボの形でガラス製品を提供し、ここで、得られるケイ素単結晶は、前記コート物質の非存在下で得られるケイ素単結晶の収量よりも、少なくとも10パーセント多いケイ素単結晶物質の収量を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、従来の石英ガラスルツボの内部表面において観察される褐色の環および失透点の形成のステージの例を示すスケッチもしくは像である。
【図2】図2は、おおよそ100倍の倍率(スケールは250μmの長さに対応する)で撮られたマイクロ写真の連続であり、従来の石英ガラスルツボの内部表面で観察される単独のロゼット(褐色の環の内部)から融合したロゼット、そして最後に形成された中心部の剥離した失透した点のロゼット結晶構造の核形成ステージを示す。
【図3】図3は、おおよそ1倍の倍率のカメラで撮られた写真であり、コートが一切無く作成された従来の石英ガラスルツボ、すなわち従来技術の処理されないルツボからの切り取り試片サンプルを描写し、ルツボの内部表面でのロゼッタを含有する「褐色の環」の近接図を示す。
【図4】図4は、少し近接の(サイズの参照のための指先に注目)1〜2倍の倍率で撮られた写真であり、ロゼットの荒んだもしくは光沢なく変色した領域としてのロゼットの中心が剥離した証拠を伴う、従来技術の非処理のルツボの表面に生成したロゼットの近接を示す。
【図5】図5は、おおよそ1倍もしくは通常の倍率で撮られた写真であり、本発明のコートの一実施態様によって作製されたルツボからの切り取り試片サンプルを描写し、コートが塗布された領域において形成する堅牢なロゼットを含有する「褐色の環」の濃密な形成を示す。
【図6】図6は、おおよそ1倍もしくは通常の倍率で撮られた写真であり、本発明のコートの第二の実施態様によって作製されたルツボからの切り取り試片サンプルを描写し、堅牢なロゼットを持つ濃密に形成された「褐色な環」を持つ。
【図7】図7は、ルツボ上の還元された化学的性質の存在を検出するための比較試験の一実施態様の分析的な結果を示すグラフである。
【図8】図8は、ルツボ上の還元された化学的性質の存在を検出するための比較試験の一実施態様の分析的な結果を示すグラフである。
【図9】図9は、SiOの原子当たりの平均電気陰性度値より低い、異なる置換基もしくは付加基を持つさまざまな化合物の原子当たりの平均電気陰性度値のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで用いられるとき、用語「処理された」もしくは「コートされた」は、相互交換可能に用いられ、本発明のコートによってルツボ表面を処理することを指し石英ガラスルツボ表面の実質的にすべてを、実質的に完全に還元化、部分的に還元化、部分的に酸化もしくは完全に酸化された状態にする。
【0022】
実施例以外において、もしくは他に示されていなければ、物質の量、反応条件、時間、物質の定量化された性質などを表す、明細書および請求項に述べられるすべての数字は、すべての場合において言葉「約」によって修飾されていると理解されるべきである。
【0023】
ここで列挙される任意の数値範囲は、その範囲中のすべてのサブ範囲(sub−range)とそのような範囲もしくはサブ範囲のさまざまな終点の任意の組み合わせとを含むことを意図されているともまた理解されるべきである。
【0024】
構造的、構成的ならびに/または機能的に関連した化合物、物質もしくは基質の群に属するとして、明細書に明確にもしくは暗に開示される、ならびに/または請求項に引用される任意の化合物、物質もしくは基質は、その群の個々の要素およびそれらのすべての組み合わせを含むと理解されるべきである。
【0025】
ここで用いられるとき、「レドックスコート物質」もしくは「レドックスコート」(還元−酸化)は、一実施態様において石英ガラスルツボの表面を処理するために用いる(実際、分子の単層を形成できる)コート物質もしくは反応物のゲルもしくはフィルムを指す。一実施例において、コートは、表面にわたって結晶SiOの核を分散することを指す。第二の例において、完全に酸化したSiOと比べて還元されたゾルもしくはゲルまたはフィルムのコートは、例えば、アルコキシシランゲル、アルコキシゲルマンゲル、アルキル−アルコキシ−シラン、アルキル−アルコキシ−ゲルマンなどである。他の例において、コートは、SiOルツボの表面と室温もしくは室温近くで、石英ガラス表面へとヘテロ原子を直接的に結合して反応するルイス酸(金属もしくは半金属塩化物)を含有する。さらに第4の例において、コートは上述の任意のものを含有する複数の層を含有する。
【0026】
ここで用いられるとき、用語「石英ガラスルツボ表面の実質的にすべて」は、選択されたコート、例えば核生成コート、レドックスコート、ルイス酸コートなどが所望の制御された還元/酸化状態をもたらすのに十分なだけ、意図された表面の部分を覆うように塗布されることを示す。また、ここで用いられるとき、用語「実質的に」もしくは「十分な部分」は、一実施態様において、融解ケイ素と接する石英表面が少なくとも75%コートで覆われていることを示す。第二の実施態様において、少なくとも90%がコートされる。
【0027】
一実施態様において、融解ケイ素と接するコートされたルツボ表面は、ロゼット構造を持つ褐色の環によって少なくとも30%覆われているか、または代替的に、他の結晶構造によって少なくとも30%覆われている。他の実施態様において、融解ケイ素と接するコートされたルツボ表面は、ロゼット構造を持つ褐色の環によって少なくとも50%覆われているか、または代替的に、他の結晶構造によって少なくとも50%覆われている。さらに他の実施態様において、融解ケイ素と接するルツボ表面は、ロゼット構造を持つ褐色の環によっておよび/もしくは結晶形態構造によって少なくとも75%覆われている。さらに他の実施態様において、融解ケイ素と接するルツボ表面は、堅牢なロゼット構造を持つ褐色の環によっておよび/もしくは結晶形態構造によって少なくとも80%覆われている。さらなる実施態様において、コートされた表面は、ロゼットによっておよび/もしくは結晶形態構造によって少なくとも90%覆われている。
【0028】
ここで用いられるとき、用語「第一の」「第二の」などは、その他のものもしくは重要なものを指すのではなく、むしろ一つの要素と他のものとを区別するために用いられ、そして用語「the」「a」および「an」は、量の限定を指すのではなく、むしろ、参照されたものが少なくとも一つ存在することを指す。さらに、ここに開示されるすべての範囲は端点を排除せず、そして独立して組み合わせ可能である。
【0029】
ここで用いられるとき、おおよそという言葉は、それが関係する基本的な機能における変化を生じることなく変化できる任意の定量的な表現を修飾するために用いられる。従って、「約」および「実質的に」のような用語もしくは複数の用語によって修飾される値は、ある場合には特定される正確な値に限定されない。
【0030】
ここで用いられるとき、「石英ガラス製品」は、「石英ガラスルツボ」、「石英ルツボ」、「融合石英ルツボ」および「石英ルツボ」と交換可能に用いられ、石英ルツボを検出可能なだけ、およびしばしば大きな影響を与える度合いまで融解するような、ならびに融解ケイ素へと接触させられる結晶引き上げに用いられるときの、高い機械的な、化学的なおよび熱のストレス、高い熱力学的ストレスおよび張力、高圧、反応性融解、ならびに融解に長大な期間置くことの出来るガラス製品を指す。
【0031】
ここで用いられるとき、用語「実質的に連続な」は重大でない破損を持つかもしくは持たないような連続性を指す。
【0032】
ここで用いられるとき、用語「結晶形態」は「結晶成長構造」と交換可能に用いられる。形態の定義は、当分野に公知のように、巨視的もしくは微視的なレベルで定義される。一実施態様において、「結晶形態」はガラス状(アモルファス)のSiOがSiO2の結晶相、例えばクリストバライト、トリジマイト、石英などの一つもしくはそれ以上へと結晶化する領域を指す。これらの相はそれら自体、異なる巨視的な構造もしくは形で現れるかまたは存在する。微視的なレベルにおいて、用語は存在する実際の結晶成長面によって定義され、例えば結晶は1−0−0、0−1−0および0−0−1の配向成長面によって存在する。
【0033】
ここで用いられるとき、用語「ロゼット(rosettes)」は、ヘミスフェルライト(hemispherulite)成長構造もしくは形態を指し、ここで、それは石英の高い粘度のため扁平な深さの次元である、中心の核から外側へ向かう半球状の成長であり、それゆえ、扁平な円盤状の結晶構造を持つ。この結晶構造は通常、ロゼットの端に残る「褐色の環」もしくはSiOの沈着の境界とともに存在する。これらの構造はしばしば褐色の環と呼ばれる。
【0034】
ここで用いられるとき、用語、結晶表面構造は、SiOの任意のおよびすべての結晶相を指し、クリストバライト、石英アルファ、石英ベータ、トリジマイトなどを含むがそれらに限定されない。
【0035】
出願人は、(SiO)の褐色の環それ自体の形成は結晶の収量に関係ないことを見出した。代わりに、結晶の収量に関係しているのはロゼットの濃度、ロゼットの品質及び条件であることが信じられる。一実施態様において、石英ルツボの寿命は、結晶成長の核生成およびロゼットの条件の改善によって延ばされる。さらに従来技術の教示に反して、寿命は、石英ルツボに形成される褐色の環の数の増加によって延びる。しばしばこれは、形成されるロゼットが非常に濃密で互いの端にまで成長し、生じる表面が一つであって、そこでそれは端同士が隣接するロゼット円盤によって実質的に覆われるようために、褐色の環がもはや可視化できない程度まで行われる。一実施態様において、石英ガラス製品の寿命は、表面処理プロセスにおけるルツボの表面の還元/酸化状況を変化させることによって延ばし得る。ガラス製品、例えばルツボの内部表面は化学化合物によってコートされ、SiOよりもより還元された種もしくは基を伴う(分子レベルの)内部表面を提供する。一実施態様において、石英ガラスルツボコートはケイ素に対する十分な量のゲルマニウム置換を組み入れ格子上に少量の圧縮を置き、成長するケイ素結晶における空孔の集合の存在によって置かれる張力をいくらか補完する。
【0036】
本発明の石英ガラスルツボの表面における還元された化学的性質をもたらす表面修飾プロセスの予想しない活性の理由を裏づけする理論が調べられた。出願人は理論的な理由づけに限定されることを望まないが、本発明による特性および予期しない結果のより良い理解の助けになるであろうと信じられる。石英ガラスルツボ(SiO)の表面が部分的におよび/もしくは完全に表面のシリカの電気陰性度に影響を与えるさまざまな化合物によって化学的に還元される(すなわち化合物中の元素の電子吸引力もしくは分子中の原子のそれへと電子をひきつける力として元素の電気陰性度を記述するポーリングの理論)と現在では信じられる。
【0037】
原子当たりの平均電気陰性度値、すなわちポーリングの電気陰性度は、分子中の原子のそれぞれの電気陰性度の合計を分子群中に存在する原子の数で割り、分子種に対する電気陰性度の正味の推量を与えるように計算される。本発明の実施態様によると、表面シリカの化学的還元は、酸素よりもより電気陰性度の低い化合物、もしくはより詳細には、石英ガラスの表面SiOの原子当たりの平均電気陰性度より低い原子当たりの平均電気陰性度を持つ置換基/基を持つ化合物の使用によって行われ得る。
【0038】
電気陰性度のポーリングの理論は電気陰性度を計算する一般的に用いられる方法であり、おおよそ0.7から4.0への相対スケール上の次元のない量をもたらす。電気陰性度は化合物の相対結合エネルギーより決定される平均値であり、単一の値は一般的に酸化状態に関わらずそれぞれの元素に用いられる。ポーリングの電気陰性度値の例は、例えば、2.2の電気陰性度値を持つ水素、3.44の電気陰性度値を持つ酸素および3.04の電気陰性度値を持つ窒素を含む。
【0039】
本発明の一実施態様において、ガラス製品、たとえばルツボの内部表面は、ガラス製品表面のSiOの原子当たりの平均電気陰性度値より小さい原子当たりの平均電気陰性度を持つ置換基/基を持つ化合物によってコートされる。実施態様によると、それらの置換基/基は、SiOの原子当たりの平均電気陰性度値、すなわち2.927よりも小さい原子当たりの平均電気陰性度値を持つ。さまざまな化合物の平均のポーリングの電気陰性度値は、上述のような原子当たりの電気陰性度を平均化することによって得られ、たとえば、Siの電気陰性度値は1.90であり、そしてSiOの平均電気陰性度値は、1.90と6.88(Oの電気陰性度値)を足し、そして原子の数、すなわち3で割ることで、平均電気陰性度値2.927が得られる。Si(NHの平均電気陰性度値は、1.90(Siの電気陰性度値)と14.88((NHの電気陰性度値)を足して7、すなわち原子の数で割ることで、2.397の平均電気陰性度値が得られる。他の実施態様によると、本発明のコート物質として有用な好適な化合物は、例えば、それぞれSiO(2.670)、Si(OH)(2.636)、SiOH(2.513)、Si(NH(2.397)、Si(CHCH(2.273)、Si(NH(2.244)、Si(1.90)のような原子当たりの平均電気陰性度値を持つものである。SiOと比較したさまざまな化合物の原子当たりの平均電気陰性度値のグラフ表示は図9に示される。
【0040】
還元された化学的性質を伴うコート層の存在は、還元された表面を含有する複数の還元種を検出するよう調整された試験による公知の方法で試験され、試験は潜在的なさまざまな還元されたコート種のために調整される。例えば、メチル基を含有するコート表面の検出のために、コート表面は低入射角赤外吸光によって分光分析される。図7および8は、石英ルツボ上のメチル化したコートと参照標準(コート無しのルツボ)との比較ならびに表面のOHの量を増加するように処理されたSiOルツボ表面の試験の分析結果を描写したグラフである。
【0041】
実施態様によると、融解ケイ素への接触に際し還元された化学的性質をもたらす本発明の新規のコート物質によって処理された表面を持つ、ケイ素結晶引き上げ操作における使用のための石英ガラス製品からケイ素の単結晶を調製するプロセスが提供され、前記コート物質を含まないガラス石英製品より得られるケイ素の単結晶よりも少なくとも約10パーセントより大きいケイ素の単結晶を産生する。他の実施態様によると、融解ケイ素への接触に際し還元された化学的性質をもたらす本発明の新規のコート物質によって処理された表面を持つ、ケイ素結晶引き上げ操作における使用のための石英ガラス製品からケイ素の単結晶を調製するプロセスが提供され、前記コート物質を含まないガラス石英製品より得られるケイ素の単結晶よりも少なくとも約15パーセントより大きいケイ素の単結晶を産生する。さらに他の実施態様において、融解ケイ素への接触に際し還元された化学的性質をもたらす本発明の新規のコート物質によって処理された表面を持つ、ケイ素結晶引き上げ操作における使用のための石英ガラス製品からケイ素の単結晶を調製するプロセスが提供され、前記コート物質を含まないガラス石英製品より得られるケイ素の単結晶よりも少なくとも約20パーセントより大きいケイ素の単結晶を産生する。
【0042】
開始物質としての石英ガラスルツボ
本発明の方法による表面の処理のための「開始物質」としての使用に好適な石英ガラス製品は公知である。一実施態様において、石英ガラス製品は、例えば光学的品質のガラスブール(boules)を製造する光学産業における使用のための石英チューブの形状のである。他の実施態様において、石英ガラス製品は、参照によりその内容をここに組み入れる米国特許第4,416,680号に開示されるような方法を用いて作製される融合石英ルツボの形状である。
【0043】
他の実施態様において、石英製品は、米国特許公開番号2005/0178319および2003/0211335ならびに日本特許公開番号08−002932を含む当分野で開示された/公知のプロセスの任意のものによって結晶化プロモーターによって処理された石英ルツボの形状である。さらに他の実施態様において、石英ルツボは、米国特許第6,280,522号に開示されるような均一に結晶した失透した内部表面のために残余の窒素含量の合成シリカを用いて融合されている。参照により上述の引用文献のすべての内容をここに組み入れる。
【0044】
レドックスコートの実施態様:本発明の一実施態様において、例えばルツボのような石英製品は、メチル基を含有する物質でコートされ、水素原子と炭素原子の両方は、ルツボ表面の普通の酸素およびOH基と比べて還元された化学的性質をもたらす。他の実施態様において、レドックスコートは、置換シランを含有する物質を含有し、シリカ上に、結晶引き上げにおいて用いられる時に最適化され安定な性能に好適なルツボの制御を助ける水素化されたかもしくはメチル化された表面を提供する。さらに他の実施態様において、コートはアルキルおよびアルコキシシランを含有し、ゲル化して部分的にSi−O系でかつ部分的に有機系のコートをもたらすシランのゾルを提供する。この態様は、完全に酸化したSiO表面と比較してより化学的に還元されている。より還元されている末尾もしくはリガンド末端はケイ素の中心に直接結合したアルキル基である。この場合、フィルムは還元されていることは注目すべきである。しかし、さらなる還元反応が、ルツボが加熱するにつれて起こり、ゲルはいくらか分解し、生じる炭素と水素の豊富な薄膜フィルムはその下にあるSiO表面と反応して結合し、そして完全な結合および還元された内部表面とを効果的に作り出す。
【0045】
一例において、メチル−トリメトキシシランは、還元された表面フィルム処理を残すために用いられる。他の例において、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランおよび他の類似のものが還元されたフィルムを残すのに用いられ、結晶表面もしくはロゼットのより濃密なコートの構造を触媒する。
【0046】
一実施態様において、レドックスコートは、無水アンモニア、アミン、もしくはそれらの混合物の少なくとも一つを含有し、非水性の溶媒に溶解する。一実施態様において、コートは、アルキルアミン、アミノアルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミン、メルカプトアルキルアミンの群より選択されるアミンならびにアミノアルキルシランおよびアミノシランを含有する。一実施態様において、アミンは、RNH、RNHもしくはRNであって、ここでRが1から36個の炭素原子を持ち、例えばメチル、エチル、プロピル、オクチル、ドデシル、オクタデシル、プロピレン、ブチレン、フェニル、エチルフェニルもしくはベンジルのようなアルキル、シクロアルケニル、アリールまたはアラルキルアミンであり得るようなモノアミンであって良い。他の実施態様においてアミンは、HN−R−NHであって、ここでRが2から36個の炭素原子のアルキレン基である例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキシレンジアミン、ドデセニルジアミンもしくはジアミン由来のダイマーであるものならびに、ここでRがポリアミンである、例えばトリエチレンテトラミンのようなもの;例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、2−ヒドロキシプロピルアミン、ヒドロキシエチル−ステアリールアミンのような2から18個の炭素原子を持つヒドロキシアルキルアミン;例えばメルカプトエチルアミンもしくはメルカプトプロピルアミンのようなメルカプトアミン;アミノトリアルコキシシラン、ジアミノトリアルコキシシランもしくはトリアミノトリアルコキシシランであってシラン基と隣接したアミノ基の間にならびにジアミノもしくはトリアミノ誘導体の場合は、アミノ基の間にアルキル、シクロアルキルもしくはアラルキル基を持つものであって例えば、HNRNHRSi(ORもしくはHNRSi(ORであってここでRおよびRは上述のように定義され、Rが1から4個の炭素原子のアルキル基であるようなもののようなジアミンの群より選択され得る。一実施態様において、アミンはアミノエチルトリメトキシシラン、アミンプロピルトリメトキシシラン、カルベトキシアミノエチルトリメトキシシランもしくはアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(HNCHCHNHCHCHCHSi(OCH)のようなアミノトリアルコキシシランの群より選択される。
【0047】
レドックスコートでの使用に好適なアミンの例は、メチルアミンCH−NH、エチルアミンCHCH−NH、ジメチルアミンCHNHCH、トリエチルアミン(CHCHNおよびトリメチルアミン(CHNを含む。
【0048】
アンモニアもしくはアミンを溶解するのに好適な溶媒は、一例では10個より多くの炭素原子を持たない飽和脂肪族アルコール、脂肪族および芳香族炭化水素、エーテル、脂肪族および芳香族ニトリルならびに芳香族アミンである。例はメタノール、エタノール、n−ブタノール、t−ブタノール、n−オクタノール、n−デカノール、エチレングリコール、ヘキサン、デカン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アニリン、フェニレンジアミンおよびp−フェニレンジアミンを含む。一実施態様において、アニリンが溶媒として用いられる。
【0049】
一実施態様において、レドックスコートは、アルキルマグネシウムハライド、例えば、1から10個の炭素含有のアルキルマグネシウムクロリドおよびアルキルマグネシウムブロミドを含む。アルキル基の非限定的な例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。他の実施態様は、アルキルカルシウムハライド、アルキルストロンチウムハライドおよびアルキルバリウムハライドを含有するレドックスコートを含む。他の実施態様はより一般的にアルキル金属ハライドを含む。
【0050】
さらに他の実施態様において、レドックスコートは少なくとも一つのオルガノシランハロゲン、すなわちオルガノシランもしくはオルガノ官能性シランであって、少なくとも一つのハロゲンがSiへと結合しているものを含み、いくつかの例は、(アルキル)SiCl、(アルキル)SiCl、(アルキル)SiCl、(アルキル)SiBr、(アルキル)SiFもしくは(アリール)SiClのようなアルキル基の代わりにアリール基であるものを含むがそれらには限定されない。例は(CHSiCl、(CHSiBr、(CHSiI、(CHSiF、CHSiHCl、(CH)SiCl、(CH)SiBr、(CH)SiI、(CH)SiF、SiHCl、SiHCl、(CHSiCl、(CHSiBr、(CHSiI、(CHSiF、SiHCl、(CHCHSiCl、(CSiCl、(CHCHCHSiCl、(CHCH)SiCl、((CHCH)SiCl、((CHCH)SiCl、(CSiHCl、(CHCHCHCHSiCl、((CHCHCHSiCl、(CHCHCHCH)SiHCl、((CHC)SiCl、(CSiCl;(CH)SiClOSi(CH、(CH)SiClO(CHSiCl、(CH)SiClO(CH)SiCl、(CHCH)SiClO(CHCHSiおよび(CHCH)SiClO(CHCHSiClのようなシロキサン;(CHO)SiCl、(CHCHO)SiClを含む。一実施態様において、レドックスはジクロロシランSiHClおよびジクロロジメチルシラン(CH3)2SiCl2の少なくとも一つを含有する。他の実施態様において、コートは、モノハロシランおよびメチルトリハロシランの一つより選択される。他の組み合わせは意図されており、列挙された例は代表であるが、限定する事は意図されない。
【0051】
一実施態様において、コートは石英製品表面上のシリカのヒドロキシル化された表面をルイス酸と反応させ、シリカの表面をシリカへと金属もしくは半金属が結合するように変化させる。ルイス酸の金属部分はシリカ構造に対する電子供与体である。このように金属もしくは半金属シリケートをルツボ のちょうど表面に得る。実際において、これはルツボの表面の化学的性質を変化させ、結晶の成長をうながす。表面における金属カチオンおよび表面に沿って配向される金属カチオンの存在は、表面単層において、表面が還元された種を含有する事を示す。
【0052】
一実施態様において、ルイス酸コートは金属もしくは半金属クロリドを含有する。例は、AlCl、ScCl、YCl、LaCl、CeCl、CeCl、CHMgCl、CHCaCl、CHSrCl、CHBaCl、HSiCl、HSiCl、SnCl、SnCl、ブロミド類、イオジド類、エチル金属ハライド類およびそれらの混合物を含むがそれらに限定されない。石英ガラス製品表面に塗布されたとき、それらの種は表面上に単に沈着して残るのではない。それらは非常に強いルイス酸であるため、それらは通常の大気にさらされているかもしくは通常水和したSiO2の表面に存在するダングリング(dangling)OH結合基、すなわちSi−OHのヒドロキシル化表面と反応し、そして、金属をシリカの表面に直接に化学的に結合させる。
【0053】
核生成/レドックスコートの実施態様
一実施態様において、コート物質はさらに、コート成分の一部として組み込まれて物理的な核として作用する粉状の結晶物質、例えば一実施態様で平均粒子径50μm未満、他の実施態様で20μm未満の結晶化シリカを含有する。第三の実施態様において、コート物質はさらに1から5μmの範囲の平均粒子径を持つ結晶シリカを含有する。一例において、粉状の結晶物質はアルファ石英、もしくはベータ石英またはクリストバライトである。粉状の結晶物質の源は、Unimin Corporationを含むさまざまな販売元より市販されている。
【0054】
一実施態様において、ルツボはクリストバライトのような粉状の結晶物質を含有する物質によりコートされ、コート中にはアルキルもしくはアルコキシ基を含み、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシランおよびそれらの混合物である。
【0055】
一実施態様に置いて、コートは置換シランもしくは置換ゲルマンを含有する物質を含有し、結晶引き上げにおいて用いられる好適な安定した性能のためのルツボ表面を「制御する」のを助けるメチル化もしくはアルキル化した表面をシリカ上にもたらす。さらに他の実施態様において、コートは、ゲル化して部分的にGe−O系で部分的に有機系であって、完全に酸化したSiO表面と比較してより化学的に還元されているコートをもたらすゲルマンゾルを提供するアルキルおよびアルコキシゲルマンを含有する。より還元されている末尾もしくはリガンド末端は、ケイ素中心原子へと直接的に結合しているアルキル基である。
【0056】
一実施態様において、コートはクリストバライトのような粉状の結晶物質、ならびにテトラメトキシゲルマン、テトラエトキシゲルマン、ジメトキシジメチルゲルマン、ジエトキシジメチルゲルマンおよびそれらの混合物の一つもしくはそれ以上を含有する。
【0057】
一実施態様において、コートはハロゲンシラン、ハロゲンゲルマン、ハロゲンスズ酸塩もしくはそれらの組み合わせを含有する。他の実施態様において、コートはアルキル4価もしくはアルコキシ4価のまたは2価のスズ酸塩、例えばTin(IV)およびTin(II)化合物を含有する。
【0058】
一実施態様において、コートは反応性ルイス酸ハライドの少なくとも一つを含有し、例はAlCl;三フッ化ホウ素、塩化リン(実際、ホウ素化合物もしくはリン化合物を使わないであろう。)、塩化鉄(塩化鉄(III))、金属の、モノ、ジもしくはトリハライド;トリアルキルクロロゲルマン;ジアルキルジクロロゲルマン、もしくはそれらの混合物、もしくはそれらの同属体、であって、それらの種を溶解及び希釈するのに好適であり、容易に蒸発でき、そしてルイス酸ハライドと非反応性である非水性溶媒に溶解されているもののような好適な酸ハライドである。一実施態様において、コートはジアルキルジハロゲンシランもしくはジアルキルジハロゲンゲルマンを含有する。
【0059】
一実施態様において、コートはグリニャール試薬と類似の試薬であるルイス酸を含有し、例は、アルキルもしくはアリールマグネシウムハライドであり、例えば1から10個の炭素を含有するアルキルもしくはアリール基であって、直鎖もしくは分岐、環状であり、芳香族もしくはヘテロ環単位を持っているもので、例えば塩化マグネシウムおよび臭化マグネシウムである。アルキル基の非限定的な例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。さらに他の実施態様において、レドックスコートはアルキルカルシウムハライド、アルキルストロンチウムハライドおよびアルキルバリウムハライドであって、それらは普通のグリニャール試薬である。第三の実施態様において、コートはアルキル金属ハライドを含有する。ルイス酸の一実施態様において、コートは金属もしくは半金属、ならびに、コートされるルツボ表面を水素化することおよびコートされるルツボ表面に金属結合することの少なくとも一つを提供するハロゲンリガンド基として作用するハロゲン化合物を含有する。
【0060】
一実施態様において、コートは少なくとも一つのオルガノシランハロゲンもしくはオルガノゲルマンハロゲン、すなわち、(アルキル)SiCl、(アルキル)GeCl、(アルキル)SiBr、(アルキル)GeBr、(アルキル)SiF、(アルキル)GeFもしくは(アリール)SiCl、(アリール)GeClのようなオルガノシランもしくはゲルマンであって少なくとも一つのハロゲンがSiもしくはGeへと結合するものを含有する。アニオンはF、Cl、BrおよびIを含む。例は、(CHSiCl、(CHGeCl、(CHSiBr、(CHSiF、(CHGeBr、(CHGeFを含むがそれらには限定されない。明らかに、有機末尾はより長いアルキル基に関してより複雑となりえる。一実施態様において、含有されるレドックスは、ジクロロシランSiHClおよびジクロロジメチルシラン(CHSiClの少なくとも一つを含有する。
【0061】
溶媒の実施態様
核生成コートにおいて用いる溶媒である、本発明のレドックスコートおよびルイス酸コートは当分野に公知である。好適な溶媒の例は、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、トリクロロプロパン、および類似のC4、C5、C6、C7などの化合物のようなアルキルハライドを含む。さらに、アルコキシ置換シランおよびゲルマンを含有するコート組成物として、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、n−オクタノール、n−デカノール、エチレングリコール、ヘキサン、デカン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ジメトキシエタンなどが用いられ得る。
【0062】
オルガノシランコートの一実施態様において、オルガノシランは、ガラス製品の表面上への塗布の前に最初に溶媒に溶解される。好適な溶媒の例は、ブタン、ペンタン、ヘキサンなどの炭化水素;例えばジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化アルカン溶媒のようなクロロ化炭化水素、またはそれらの混合物を含むがそれらには限定されない。
【0063】
処理された石英ガラス製品の最終産物
処理された石英ガラスは例えば、光学品質ガラスブーレを産生するファイバー光学産業での使用のための棒、チューブなどとして使用できる。処理された石英ガラス製品は、拡散炉のためのチューブのとして半導体産業においての使用のためのより小さいおよびより大きい径のチューブとなし得る。形成される失透は、半導体ウエハープロセス産業において非常に一般的な拡散チューブプロセスにおいて長期間利用されるときのチューブの物理的安定性およびたわみ耐性を向上させる。一実施態様において、処理された製品は、ケイ素単結晶成長において用いる石英ルツボである。処理の後、ルツボの表面は完全に還元されるか、部分的に還元されるか、部分的に酸化されるかもしくは完全に酸化される状態に置かれ、ルツボの最終的な表面の還元/酸化状態はチョクラルスキー結晶引き上げにおける最適な性能のために制御される。
【0064】
一実施態様において、表面はチョクラルスキーサイクル核生成の初期におけるそれ自体によるかまたは物理的な反応および物理的な再構築によって還元された化学種を伴う。融解ケイ素との接触の操作において、溶媒化学反応が後に続く高温においてレドックス化学反応が起こる。いまだ未知の種のロゼットの制御できない核生成という自然の傾向がある。本発明の処理されたルツボ表面により、結晶の二酸化ケイ素の結晶核生成、結晶成長および/もしくはロゼット成長の可能性が有意に向上する。これは、例えば産生される結晶構造がロゼットとは明確に異なるものであるバリウム化合物による石英ルツボ表面の処理と反することである。一実施態様において、核生成し成長するいくつかの結晶構造はロゼットと類似であり、炭酸バリウムコートされたルツボにおいて見られるような成長構造と類似である。
【0065】
処理される石英ルツボの一実施様態において、ルツボの表面には、表面へと付着する物理的な核が置かれ、例えば結晶成長の核として作用する結晶二酸化ケイ素化合物の分散である。第二の実施態様において、表面に操作中に石英ルツボの表面と反応する金属カチオンが置かれる。第三の実施態様において、表面に完全に還元されるか、部分的に還元されるか、部分的に酸化されるかもしくは完全に酸化される状態のゲルもしくはフィルムが置かれ、ルツボの最終的な表面の還元/酸化状態は、後に続くシリコン電荷融解の間の反応を介してチョクラルスキー結晶引き上げの最適な性能のために制御される。
【0066】
処理された石英ガラス製品表面におけるゲルマニウムの存在のさらに他の実施態様において、ゲルマニウムは空孔組み込みの取り除かれた結晶張力をもたらす。ゲルマニウム原子は少量の圧縮を格子上にもたらし、そして、空孔集合の存在によりそれへともたらされる張力をいくらか埋め合わせる。
【0067】
表面コートを塗布する方法
一実施態様において、コートのための溶液は、コート物質を好適な溶媒に希釈することによって最初に調整される。レドックスコートにおいて用いられる溶媒の例は、ハロゲン化アルカン溶媒、10個未満の炭素原子を含有する飽和脂肪族アルコール、脂肪族および芳香族炭化水素、エーテル、脂肪族および芳香族ニトリルならびに芳香族アミンを含む。OH反応性実施態様のための溶媒の例はハロゲン化アルカン溶媒を含む。レドックスコート物質がシランである一実施態様において、液中のシラン含有分子のモル濃度は0.1から1ミリモル濃度の範囲である。
【0068】
さらに他の実施態様において、コートのための溶液は微粉砕された結晶粉をテトラメトキシシランもしくはテトラメトキシゲルマン中でスラリー化し、メタノールもしくはエタノール中に希釈し、そして、石英ガラス表面に塗布し、溶媒を蒸発させることによって最初に調整される。次のステップにおいて、処理された表面は大気中で硬化され、水和化され、もしくはフィルム乾燥を促進するために低温(30から300℃)に加熱され、そしてメタノール中で脱気される。
【0069】
コートは、ブラシのような手動のものもしくは浸漬コート(自己集合分子コート)、スピンコート、スプレーおよび化学蒸着のような機械を用いるものののような当分野に公知の方法を用いて石英ガラス表面上に塗布される。浸漬コートは1分もしくはそれ以上の時間行われる。スピンコートは10から300rpmの速さで行われる。さらに他の実施態様において、スピンコートは20から150rpmの速さで行われる。
【0070】
コートプロセスの一実施態様において、石英ルツボ表面の分子を含有するコートのフィルムを離すのに十分な時間、石英ルツボがコートを含有する溶液と接触するようにコートが塗布される。一実施態様において、石英ルツボ表面は約30秒から15分の間レドックスコート含有溶液に接触させられる。
【0071】
一実施態様において、還元された化学的性質の表面を持つ製品が融解ケイ素表面への露出でコート無しの表面よりも少なくとも10%長い寿命を持つように、十分な量のコート物質がコートされる石英製品に塗布される。他の実施態様において、コート無しのルツボよりも少なくとも30%長い寿命を持つように十分な量のコート物質が製品に塗布される。本発明のさらに他の実施態様において、融解ケイ素への暴露においてコート無しの表面よりも少なくとも50%長い寿命を持つ還元された化学的性質の表面を持つように、物質がコートされた石英製品に塗布される。さらに他の実施態様において、コート無しのルツボよりも少なくとも75%長い寿命を持つように、十分な量のコート物質が製品に塗布される。
【0072】
本発明の一実施態様において、少なくとも60時間1420℃を越える温度での操作でも残るのに十分な量でコートがルツボに塗布される。第二の実施態様において、1420℃を超える温度において、ルツボが少なくとも90時間の操作で残る。第三の実施態様において、ルツボの寿命は少なくとも120時間である。
【0073】
コートの厚さはコートが塗布される型ならびに塗布方法によって変わる。一実施態様において、石英ルツボ上のコートの厚さは単層の厚さへと制御される。一実施態様において、コートはシラン分子を含有するコート層の一分子の長さにおおよそ等しく塗布される。他の実施態様において、全体の厚さは、一分子のの2−5の長さである形成される所望の層の数による。一実施態様において、コートの厚さは10オングストロームから1000オングストロームである。他の実施態様において、厚さは1000オングストロームから10,000オングストロームである。他の実施態様において、厚さは10,000オングストロームよりも大きくあり得る。
【0074】
一実施態様において、ガラス製品、例えば石英グラスルツボ内部の少なくとも一部分はコート物質で処理されていない石英ガラス製品よりも少なくとも10%長い寿命を持つガラス製品を提供する発明のコートによって実質的にコートされている。他の実施態様において、チョクラルスキー操作におけるケイ素単結晶の成長に用いられる石英ガラスルツボのようなガラス製品の表面の少なくとも一部は、前記コート物質のないケイ素単結晶の収量よりも少なくとも10%多いケイ素単結晶物質を含有するケイ素単結晶を得る本発明のコートによって実質的にコートされる。さらに他の実施態様において、石英ガラスルツボの全内部表面は実質的に連続的な層、すなわち少なくとも75%の表面がコートされ、可能な限り切れ目なくコートされる。他の実施態様において、一部分のみが融解ケイ素と接触している石英ガラスルツボはレドックスコートにより処理される。たとえば、コート領域は融解ラインにおける環、もしくはルツボの下部外部角曲線における角湾曲の環であり得る。他の実施態様において、石英ガラスルツボの内部表面はコートの実質的に連続な層、すなわち融解と接するルツボ表面の少なくとも80%がコートされ、可能な限り切れ目無いようにように実質的にコートされる。
【0075】
コートの後の一実施態様において、処理される石英ガラス製品は、操作される前に100℃から300℃の範囲の温度で20から40分間の範囲の間、焼きなまして固くされる。
【0076】
コートが塗布される前の一実施態様において、任意選択で石英ルツボ表面を、加湿するかまたは表面を湿気のある空気へさらすことによって前処理してコートする準備をする。一実施態様において、表面は、水へと浸すかもしくは上記で処理することによって表面の水和化を促進する処理をされ、あるいは表面はルイス酸反応性コート物質の塗布前に洗浄される。
【0077】
一実施態様において、ルツボ表面は任意選択で、表面を水性フッ酸および/もしくは水性硝酸によって洗浄するような米国特許第6,302,957号に開示される方法によって調製される。
【0078】
他の実施態様において、ルツボ表面は、米国特許公開番号2003/0211335に開示されるように制御された失透のために、例えばバリウム、カルシウムおよびストロンチウムのカチオンのような少なくとも一つの金属カチオンを含有する外部コートによって最初に処理される。
【0079】
一実施態様において、任意選択の処理ステップの後でかつレドックスコートの前に、石英ルツボ表面はレドックス剤の結合を最適化する表面の化学的性質の状態を作り出すために調製される。一実施態様において、ルツボ表面は、原則的にダングリングClリガンドの表面を作り出すために、無水環境において、四塩化ケイ素(SiCl)によって最初に洗われるか洗浄される。次の段階として、石英ガラス表面は、例えば(CHSiN(CH、CHSiHN(CHもしくは(CHSiHN(CHのようなアミノシランであるレドックスコート物質によってコートされる。
【0080】
本発明の方法の他の例において、ルツボ表面を洗浄するかもしくは四塩化ケイ素(SiCl)で反応することによって「準備」したのち、ルツボ表面が大気もしくは蒸気の湿気によって水和化されるか、あるいは液体のHOによってリンスされ、露出表面のSi−OH結合が豊富な表面を作り出す。次の段階として、ルツボ表面は、(CHSiClのようなオルガノシランによってコートされるか処理され、ルツボにおけるメチル基による表面の被覆度合いを最大化する。
【0081】
他の実施態様において、石英ガラス表面は、ダングリングClリガンドの表面を作り出す塩素ガスによって最初に処理され、続いて蒸気中のH2Oによって水和され、その後溶液中のレドックスコートによってコートされる。
【実施例】
【0082】
実施例
本発明を説明するためにここに実施例が提供されるが、本発明の範囲を限定することは意図しない。
【0083】
実施例1
米国オハイオ州WilloughbyのMomentive Quartzからのきれいな未処理のルツボを(CHSiClを1,2−ジクロロプロパンに1:2で溶解したレドックスコートで反応させた。コートは全ルツボの表面を溶液によってブラシし、過剰のものを清潔なワイプでふき取ることで手動で行われた。
【0084】
第一のチョクラルスキー結晶引き上げの実行の操作中および終了後において、多くの濃密に形成した褐色の環が図5のコートされるルツボ表面で部分的に観察された。ルツボ表面は、どうようの結晶引き上げの実行の後の非処理のルツボ上に現れる褐色の環の数に比べ、少なくとも50%通常の濃度よりも濃いロゼット(褐色の環で表わされる)を成長させた。さらにロゼットは実行の全期間中安定であり、中心部に分解をまったく見せなかった。
【0085】
「褐色の環」の数もしくはロゼットの濃さの増加に加え、ロゼットはよりよく形成され、本発明のレドックスコートによって処理されていないルツボの褐色の環において形成されるロゼットよりも濃く見える。図6に示される近接の検定において、褐色の環中に形成されるロゼットは、非常に堅牢な構造、すなわち厚い褐色の環であり、外観において異なり、さらに従来技術の非処理のルツボにおけるロゼットにあるような中心部の剥離の兆候を見せない、見せたとしても少しだけである。
【0086】
実施例2
米国オハイオ州WilloughbyのMomentive Quartzからの非処理のルツボからの切り取り試片は、四塩化ケイ素によって最初に洗浄され、続いて湿気の源(HO)によって処理され、そして(CHSiClを1,1,1トリクロロエタンで1:2の比率で希釈したレドックスコートによってコートされた。コートはシラン溶液によって全ルツボ表面をブラシすることで手動で実施された。コートの後、過剰の溶媒は、コートの場所から離れて蒸発させられた。コートの化学物質の過剰の副産物は取り除かれ、ルツボの使用準備がなされた。
【0087】
切り取り試片は、チョクラルスキー結晶引き上げの実行の条件をまねて1420℃を超える温度で30から60時間融解ケイ素へと暴露された。切り取り試片は融解ケイ素より取り出され、顕微鏡観察された。切り取り試片の表面の少なくとも80%を覆う褐色の環の濃い形成が観察された(予めレドックスコートで処理されている)。さらに褐色の環の中のロゼットは非常に濃く、非常に堅牢でるように見え、検出できる剥離の証拠が全くない。
【0088】
実施例3
この実施例では、米国オハイオ州、NewarkのGE Quartzからの非処理の55.88センチメートル(22インチ)のルツボが、本発明のルツボの実施態様である、実施例1の手順による(CHSiClを1,2−ジクロロプロパンに1:2で溶解したレドックスコートでコートされた55.88センチメートル(22インチ)のルツボと比較して、ケイ素結晶引き上げ操作で試験された。非処理のルツボの最初のパス(pass)の後の収量は、本発明のコートされたルツボで得られた収量の1/2より少なかった。収量は、実行により得られる良質なケイ素結晶のインチもしくはセンチメートルで測られた。
【0089】
実施例4
未処理の55.88センチメートル(22インチ)のルツボと実施例1によって調製されたルツボ、すなわち(CHSiClを1,2−ジクロロプロパンに1:2で溶解したレドックスコートでコートされた55.88センチメートル(22インチ)のルツボとの比較は、スループット(throughput)を測定するためにチョクラルスキーの実行において、試験された。スループットは、結晶引き上げにおいて得られるケイ素の1時間当たりのキログラムとして定義される。本発明のルツボの平均的な第一のパスのスループットは、非処理のルツボにより得られる平均的な第一のパスのスループットの約3倍にも達した。これらの収量の向上は説明としての役割を果たすことを意味する。この収量は、チョクラルスキーサイクルを実行する結晶引き上げ単位の方法と成長する結晶の単位に依存する。チョクラルスキーの結晶引き上げ単位は当業者の方法に従った実行であると想定される。
【0090】
書かれている記述は本発明を、ベストモードを含んで開示し、当業者が本発明を作成したり用いたりできるようにもしている。本発明の特許されるべき範囲は請求項によって定義され、当業者に想到し得る他の例も含む。もしそれらが本請求項の文言と異なる構成要素を含むとしても、あるいはそれらが本請求項の文言とごくわずかに異なる等価の構成要素を含むとしても、そのような他の例は本請求項の範囲に入れることが意図される。
【0091】
参照によりすべてのここで引用される引用文献は明確にここに組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス製品であって、
コートされる表面に還元された化学的性質を持つ複数の化学種をもたらすコート物質によってその上をコートされた表面を含有し、
前記還元された化学的性質を伴うコートされた表面を持つガラス製品が、コート物質によってコートされていない石英ガラス製品よりも少なくとも10%長い耐用年数を持ち、ここで石英ガラス製品が少なくとも99.0パーセントのSiOを含有する、
ガラス製品。
【請求項2】
チョクラルスキー操作のケイ素単結晶の成長に用いるルツボの形状であって、融解ケイ素へと暴露され、融解ケイ素への暴露の際、還元された化学種が反応して、石英ガラスルツボのコートされた表面の少なくとも30%を覆う複数のロゼットおよび/もしくは他の結晶形態構造を形成する、請求項1に記載の石英ガラス製品。
【請求項3】
前記コート物質が、アミン、オルガノシランハロゲン、アルキル、ハロシランおよびそれらの混合物の少なくとも一つの実質的に連続の層を含有し、前記コート物質が融解ケイ素へと暴露されるルツボ表面の少なくとも75%を覆う、請求項2に記載の石英ガラスルツボ。
【請求項4】
前記コート物質が、コートされるルツボ表面上に水素化、ヒドロキシル化およびメチル化される表面の少なくとも一つをもたらすメチル基を少なくとも含有する、請求項3に記載の石英ガラスルツボ。
【請求項5】
請求項2に記載の石英ガラスルツボの少なくとも表面を調製するためのプロセスであって、チョクラルスキー操作における単結晶ケイ素成長における融解ケイ素への暴露において、前記プロセスが、融解ケイ素へと暴露される少なくとも75%をアミン、オルガノシランハロゲン、アルキル、ハロ−シラン、アルキルシラン、アルコキシ−シラン、アルキル−アルコキシ−シラン、アルキルハロゲンシランおよびそれらの混合物の少なくとも一つの複数の分子を含有するコート物質でコートし、ここで複数の分子がルツボ表面に還元された化学的性質をもたらし、融合ケイ素への暴露に際し還元された化学種表面が核生成し、ルツボのコートされる表面の少なくとも30%を覆うロゼットおよび/もしくは他の結晶形態構造を形成する、プロセス。
【請求項6】
コート物質をアルカン、ハロゲン化アルカンおよびそれらの混合物より選択される溶媒へと溶解し、融解ケイ素へと暴露されるルツボの表面へと溶解したコート物質を塗布することによってコートするステップをさらに含有する、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
チョクラルスキー操作におけるケイ素単結晶の成長に用いるためのものであって、前記ルツボが、チョクラルスキーサイクルの開始の際に融解ケイ素へと暴露される表面を持ち、前記融解ケイ素へと暴露されるルツボ表面の少なくとも75%がコートされる表面に還元された化学的性質の化学種を含有する層をもたらす物質によってコートされ、前記化学種が石英ガラスルツボのコートされる表面の少なくとも30%を覆うロゼットおよび/もしくは結晶形態構造を形成し、ここで前記ルツボが、ルツボ表面に還元された化学的性質の層をもたらす物質によって処理されていないルツボよりも少なくとも10%長い寿命を持つ、請求項2に記載の石英ガラスルツボ。
【請求項8】
コート物質がアルキル基、アルコキシ基、アミン、オルガノシランアルコキシド、アルコキシ−シランおよびそれらの混合物の少なくとも一つを含有し、ここで前記コート物質がルツボ表面への塗布に際し、水素化、メチル化、メトキシ化、エチル化、エトキシ化、およびそれらの混合物の少なくとも一つを含有する化学種をコートされるルツボの表面にもたらす、請求項7に記載の石英ガラスルツボ。
【請求項9】
前記コート物質がアルキルシラン、アルコキシシランおよびそれらの混合物の少なくとも一つを含有し、前記コート物質がルツボ表面への塗布に際し、還元された化学的性質を持ち、水素化、メチル化、メトキシ化、エチル化、エトキシ化、およびそれらの混合物の少なくとも一つを含有する化学種を含有する層をコートされる表面にもたらし、チョクラルスキー操作における融解ケイ素への暴露に際し、還元された化学的性質を持つ化学種が、石英ガラスルツボのコートされる表面の少なくとも75%を覆うロゼットおよび/もしくは他の結晶形態構造を形成するように反応する、請求項7に記載の石英ガラスルツボ。
【請求項10】
前記還元された化学種が、コートされる表面に少なくともカルビドを形成し、および/もしくは、ルツボが少なくとも800℃へと加熱されるとき表面シリカと反応し下にあるシリカを熱的に還元する、請求項7に記載の石英ガラスルツボ。
【請求項11】
ガラス製品であって、
コートされる表面に還元された化学的性質をもたらすコート物質によってその上をコートされた表面を含有し、前記コート物質が、置換シラン、ハロゲルマン、ハロスズ酸塩、アルキルハロゲルマン、アルキルハロスズ酸塩、置換ゲルマン、ルイス酸およびそれらの混合物の少なくとも一つを含有し、
前記還元された化学的性質を伴うコートされた表面を持つガラス製品が、コート物質によってコートされていない石英ガラス製品よりも少なくとも10%長い耐用年数を持ち、ここで石英ガラス製品が少なくとも99.0パーセントのSiOを含有する、
ガラス製品。
【請求項12】
チョクラルスキー操作のケイ素単結晶の成長に用いるルツボの形状であって、融解ケイ素へと暴露され、融解ケイ素への暴露の際、還元された化学種が、石英ガラスルツボのコートされた表面の少なくとも30%を覆う複数のロゼットおよび/もしくは他の結晶形態構造を形成する、請求項11に記載の石英ガラス製品。
【請求項13】
前記コート物質が、ルツボ表面へと塗布されるより前にアルカン、ハロゲン化アルカン、アルコールおよびそれらの混合物からなる群より選択される溶媒に溶解される、請求項12に記載の石英ガラスルツボ。

【請求項14】
前記コート物質が、ハロゲン水素シラン、金属水素ルイス酸、アルキル−ハロ−シランおよびそれらの混合物の少なくとも一つを含有する、請求項12に記載の石英ガラスルツボ。
【請求項15】
前記アルキル−ハロ−シランが、(CHSiCl、(CHSiBr、(CHSiI、(CHSiF、CHSiHCl、(CH)SiCl、(CH)SiBr、(CH)SiI、(CH)SiF、SiHCl、SiHCl、(CHSiCl、(CHSiBr、(CHSiI、(CHSiF、SiHCl、(CHCHSiCl、(CSiCl、(CHCHCHSiCl、(CHCH)SiCl、((CHCH)SiCl、((CHCH)SiCl、(CSiHCl、(CHCHCHCHSiCl、((CHCHCHSiCl、(CHCHCHCH)SiHCl、((CHC)SiClからなる群より選択される、請求項14に記載の石英ガラスルツボ。

【請求項16】
前記コート物質が、アルキルマグネシウムハライド、アリールマグネシウムハライド、アルキルカルシウムハライド、アルキルストロンチウムハライド、アルキルバリウムハライド、三フッ化ホウ素、塩化鉄および三塩化アルミニウムからなる群より選択されるルイス酸を含有する、請求項13に記載の石英ガラスルツボ。

【請求項17】
前記コート物質が、水素化基の少なくともひとつを提供するルイス酸とルツボのコートされる表面へと結合する金属とを少なくとも含有し、コートされる表面の化学的性質を改変する、請求項12に記載の石英ガラスルツボ。
【請求項18】
前記コート物質がハロゲンゲルマン、ゲルマンのアルコキシド、ゲルマンのアルキルおよびオルガノゲルマンハロゲンの一つを含有する、請求項12に記載の石英ガラスルツボ。
【請求項19】
前記コート物質がトリアルキルクロロゲルマン、ジアルキルジクロロゲルマン、アルキルトリクロロゲルマンおよびジアルキルジハロゲンゲルマンの少なくとも一つを含有する、請求項18に記載の石英ガラスルツボ。
【請求項20】
前記コート物質が、(アルキル)GeCl、(アルキル)GeBr、(アルキル)GeFもしくは(アリール)GeClもしくはそれらの混合物の少なくとも一つを含有する、請求項18に記載の石英ガラスルツボ。
【請求項21】
前記コート物質が、Ge(アルコキシ)、(アルキル)Ge(アルコキシ)、(アルキル)Ge(アルコキシ)、(アルキル)Ge(アルコキシ)およびそれらの混合物の少なくとも一つを含有する、請求項18に記載の石英ガラスルツボ。
【請求項22】
請求項12に記載の石英ガラスルツボの少なくとも表面を調製するためのプロセスであって、チョクラルスキー操作における単結晶ケイ素成長における融解ケイ素への暴露において、前記プロセスが、融解ケイ素へと暴露される表面の少なくとも75%を置換シラン、置換ゲルマン、ルイス酸およびそれらの混合物の少なくとも一つを含有するコート物質でコートし、ここで前記コート物質が少なくとも一つの水素化した基およびルツボのコートされる表面へと結合する金属をもたらし、石英ルツボの改変された表面が核生成し、石英ガラスルツボのコートされる表面の少なくとも30%を覆う結晶を形成し、前記ルツボがコート物質で処理されていないルツボよりも少なくも10%長い耐用年数を持つ、プロセス。
【請求項23】
前記コート物質をアルカン、水素化アルカン、アルコールおよびそれらの混合物からなる群より選択される溶媒に溶解するステップ、融解ケイ素へと暴露されるルツボ表面へと溶解されたコート物質を塗布することによってルツボの表面をコートするステップをさらに含有する、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
ガラス製品であって、
SiOの原子当たりの平均電子陰性度値よりも小さい原子当たりの平均電子陰性度値を持つ化学種を少なくとも一種を提供し、コートされる表面に還元された化学的性質をもたらすコート物質をその上にコートした表面を含有し、
ここで石英ガラス製品が少なくとも99.0パーセントのSiOを含有する、
ガラス製品。
【請求項25】
チョクラルスキー操作のケイ素単結晶の成長に用いるルツボの形状であって、融解ケイ素へと暴露され、融解ケイ素への暴露の際、還元された化学種が、石英ガラスルツボのコートされた表面の少なくとも30%を覆う複数のロゼットおよび/もしくは他の結晶形態構造を形成する、請求項24に記載の石英ガラス製品。
【請求項26】
前記化学種が、前記石英ガラスルツボのコートされた表面の少なくとも75%を覆う複数のロゼットおよび/もしくは他の結晶形態構造を形成する、請求項25に記載の石英ガラスルツボ。
【請求項27】
前記化学種が、約2.7よりも小さい原子当たりの平均電子陰性度値を持つ、請求項24に記載のガラス製品。
【請求項28】
前記化学種が、約2.5よりも小さい原子当たりの平均電子陰性度値を持つ、請求項24に記載のガラス製品。
【請求項29】
前記化学種が、約2.3よりも小さい原子当たりの平均電子陰性度値を持つ、請求項24に記載のガラス製品。
【請求項30】
前記ルツボの耐用年数が、コート物質で処理されていないルツボよりも少なくとも10%長い、請求項24に記載の石英ガラスルツボ。
【請求項31】
前記耐用年数が、コート物質で処理されていないルツボよりも少なくとも50%長い、請求項24に記載の石英ガラスルツボ。
【請求項32】
前記還元された化学種がルツボを少なくとも800℃へと加熱したときにコートされた表面に少なくともカバイドを形成する、請求項25に記載の石英ガラスルツボ。
【請求項33】
前記コート物質が、SiO、SiOH、Si(NH、Si(CHSH、Si(CHおよびSiからなる群より選択される置換基を持つ少なくとも一つの化合物の実質的に連続的な層を含有し、
ここで、前記コート物質がケイ素単結晶を提供する坩堝表面の少なくとも部分を覆う、請求項25に記載の石英ガラスルツボ。
【請求項34】
チョクラルスキー操作において用いるルツボの形状であって、融解ケイ素へと暴露される請求項25に記載の石英ガラス製品を含有するケイ素単結晶を作製するプロセスであって、
前記得られるケイ素単結晶が、前記コート物質のないときに得られるケイ素単結晶よりも少なくとも約10%多い、プロセス。
【請求項35】
前記得られるケイ素単結晶が、前記コート物質のないときに得られるケイ素単結晶よりも少なくとも約20%多い、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記還元された化学種が、石英ガラスルツボのコートされた表面の少なくとも30%を覆う複数のロゼットおよび/もしくは他の結晶形態構造を形成する、請求項34に記載のプロセス。
【請求項37】
前記還元された化学種が、石英ガラスルツボのコートされた表面の少なくとも75%を覆う複数のロゼットおよび/もしくは他の結晶形態構造を形成する、請求項34に記載のプロセス。
【請求項38】
前記コート物質が、コート物質のルツボへのスプレー、コート物質のルツボへのブラシ、コート物質へのルツボの浸漬、ルツボ表面のコート物質を成分を含有する蒸気への暴露およびそれらの組み合わせの一つによって塗布される、請求項34に記載のプロセス。
【請求項39】
100℃から150℃の範囲の温度で20から40分間ルツボを焼きなまして固めるステップをさらに含有する、請求項34に記載のプロセス。
【請求項40】
コート物質を、アルカン、ハロゲン化アルカンおよびそれらの混合物からなる群より選択される溶媒へと溶解し、そして溶解されたコート物質を融解ケイ素へと暴露するルツボ表面へと塗布することによってコートするステップをさらに含有する、請求項34に記載のプロセス。
【請求項41】
ルツボ表面へとコートされる前の前記コート物質がアルカン、ハロゲン化アルカンおよびそれらの混合物からなる群より選択される溶媒に最初に溶解される、請求項25に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−537945(P2010−537945A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524034(P2010−524034)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/010401
【国際公開番号】WO2009/035530
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(508229301)モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド (120)
【Fターム(参考)】