説明

研削加工装置

【課題】研削加工装置の搬送ロボットの電池の残量がなくなることによって搬送ロボットにおける各軸の位置の記憶が消えないようにする。
【解決手段】主電池部55aの残量がなくなった場合等に使用する予備電池部55bを電池部55に備え、主電池部55aの残量がなくなった場合でも予備電池部55bからの電力供給によって記憶部54の記憶内容を維持し、搬送ロボット5の軸部51a〜51dの位置に関する情報が記憶部54において保持されるようにする。また、記憶部54への電力の供給源が主電池部55aから予備電池部55bに切り替わった際に予備電池部55bが使用されていることをオペレータに知らせる警告部57を備え、主電池部55aの残量が少なくなった場合又はなくなった場合に主電池部55aを迅速に交換することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを研削加工する研削加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、IC・LSI等の回路が複数個形成された半導体ウェーハは、個々のチップに分割される前にその裏面が研削装置によって研削されて所定の厚さに形成されている。半導体ウェーハの裏面を研削する研削装置は、カセットからワークを搬出する搬送ロボットと、被加工物着脱域と研削域に沿って回転可能に配設されたターンテーブルと、ターンテーブルの回転によって順次研削域に移動する複数個のチャックテーブルと、研削域に配設され研削域に位置付けられたチャックテーブル上に保持された被加工物を研削する研削ホイールを備えた研削手段とを具備している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
搬送ロボットは、複数の軸を有しており、精密な位置制御によりワークを所望の位置に搬送するために、各軸について予め動作の原点を定めるいわゆる原点出しを行う必要がある。この原点出しは、ワークを保持した状態で行うと、ワークを装置に衝突させたりして破損させてしまうおそれがあるため、ワークを保持する前に各軸の位置を記憶しており、装置の電源を落とした際にも搬送ロボットが各軸の位置の記憶を維持できるように、電池を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−086048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、電池の残量がなくなると、搬送ロボットにおける各軸の位置の記憶が突然消えてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、これらの事実に鑑みてなされたものであって、その主な技術的課題は、搬送ロボットの電池の残量がなくなることによって搬送ロボットにおける各軸の位置の記憶が消えてしまうことのない研削加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ワークを保持する保持手段と、保持手段に保持されたワークに研削加工を施す研削加工手段と、保持手段にワークを搬入するためにワークを収容したカセットからワークを搬出する搬送ロボットとを含む研削加工装置に関するもので、搬送ロボットは、ワークを保持する保持部と、保持部を移動させる複数の軸部と、軸部の位置を記憶する記憶部と、電源が落ちた際にも記憶部の記憶を維持させるための電池部とを有し、電池部は、通常使用する主電池部と、主電池部の残量が少なくなった場合又はなくなった場合に使用する予備電池部とを有し、記憶部への電力の供給源が主電池部から予備電池部に切り替わった際には、予備電池部が使用されていることをオペレータに知らせる警告部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、主電池部の残量が少なくなった場合又はなくなった場合に使用する予備電池部を電池部に備えたため、主電池部の残量がなくなった場合でも、予備電池部からの電力供給によって記憶部の記憶内容を維持することができる。したがって、搬送ロボットの軸部の位置に関する情報が、記憶部において常時維持される。また、記憶部への電力の供給源が主電池部から予備電池部に切り替わった際に予備電池部が使用されていることをオペレータに知らせる警告部を備えたため、予備電池部の使用が開始された後に主電池部を迅速に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】研削加工装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のC部の搬送ロボットを拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示す研削加工装置1は、保持手段2において被加工物(ワーク)を保持し、保持手段2に保持されたワークの被研削面に対して研削加工手段3によって研削加工を施す装置である。
【0011】
装置前部には、ワークを収容するカセット40a、40bを支持する2つのカセット支持台4a、4bを備えている。カセット支持台4aには研削前のワークを収容するカセット40aが載置され、他方のカセット支持台4bには研削後のワークを収容するカセット40bが載置される。
【0012】
カセット支持台4a、4bの後方側には、保持手段2にワークを搬入するためのカセット40aからのワークの搬出及びカセット40bに対するワークの搬入を行う搬送ロボット5が配設されている。この搬送ロボット5は、ワークを吸引保持して移動可能な保持部50を備えている。
【0013】
図2に示すように、搬送ロボット5は、保持部50を移動させるための複数の軸部51a、51b、51c、51dを備えている。軸部51a、51b、51cは、鉛直方向の軸心を有している。一方、軸部51dは、水平方向の軸心を有している。
【0014】
軸部51aは、基部52に対して回動可能となっているとともに第1アーム53aに連結されており、軸部51aの回動によって第1アーム53aを回動させることができる。
【0015】
第1アーム53aの先端部には軸部51bを介して第2アーム53bが連結されている。第2アーム53bは、第1アーム53aに対して回動可能となっている。
【0016】
第2アーム53bの先端部には軸部51cが連結され、軸部51cの上部には、軸部51cに対して回動可能に軸支部51eが配設されている。軸支部51eは、軸部51cに対して水平方向に直交する方向の回転軸である軸部51dを回動可能に支持しており、軸部51dには平板上の保持部50が連結されている。保持部50は、軸部51dの回動により水平方向の回転軸を中心として回動して傾きを調整可能となっている。
【0017】
保持部50の水平方向の位置は、軸部51a、51b、51cの位置によって定まり、保持部50の傾きは、軸部51dの回転角度によって定まる。搬送ロボット5には、少なくとも軸部51a、51b、51c、51dの位置に関する情報を記憶するメモリ等の記憶素子からなる記憶部54を備えている。
【0018】
記憶部54は、装置の電源が投入されている間は、その電源からの電力によって記憶内容を保持する。また、装置の電源が落ちた場合においても、電池部55からの電力供給を受けて記憶部54の記憶内容が維持される。
【0019】
電池部55は、通常使用する主電池部55aと、主電池部55aの残量が少なくなった場合又はなくなった場合に使用する予備電池部55bとが並列に接続されて構成されている。主電池部55aの残量が所定基準量よりも多い場合は、主電池部55aから記憶部54に対して電力供給が行われる。
【0020】
記憶部54は、スイッチング素子等からなる切替部56を介して主電池部55a及び予備電池部55bに接続されている。主電池部55a及び予備電池部55bは、切替部56における切替えよって選択的に記憶部54に電力を供給する。切替部56は、通常は主電池部55aを記憶部54に接続しており、主電池部55aの残量が所定量より少なくなったりなくなったりしたときに予備電池部55bに接続を自動的に切り替える。
【0021】
予備電池部55bには、記憶部54への電力供給が主電池部55aから予備電池部55bに切り替わったことを検知し、予備電池部55bが使用されていることをオペレータに知らせる警告部57が接続されている。警告部57は、ランプの点灯によって警告を発する。また、警告部57は、ランプの点灯とともに、又はランプの点灯に代えて、警告音を発することによって警告を行うようにしてもよい。
【0022】
図1に示すように、主電池部55a及び予備電池部55bは、装置前面の収容部58a、58bにそれぞれ収容されている。また、装置前面には、ランプからなる警告部57が配設されている。主電池部55a及び予備電池部55bは、搬送ロボット5の内部ではなく、外部の収容部58a、58bに収容したことで、装置前面側から主電池部55aまたは予備電池部55bを容易に交換することができる。
【0023】
図1に示すように、保持部50の可動範囲には、搬送ロボット5がカセット40aから搬出したワークの中心位置を一定の位置に位置合わせする中心合わせ手段6が配設されている。中心合わせ手段6には、ワークが載置される載置台60と、載置台60から上方に突出した状態で円弧状に配置され互いに近づく方向に移動可能な複数の突起部61とを備えている。
【0024】
また、保持部50の可動範囲には、研削加工後のワークを洗浄する洗浄手段7が配設されている。洗浄手段7は、ワークを保持して回転する回転テーブル70と、回転テーブル70に保持されたワークに洗浄液を噴出するノズル(図示せず)とを備えている。
【0025】
中心合わせ手段6の近傍には、中心合わせ手段6から保持手段2へのワークの搬送を行う第一の搬送手段8aと、保持手段2から洗浄手段7へのワークの搬送を行う第二の搬送手段8bとが配設されている。第一の搬送手段8aは、旋回動及び昇降するアーム部80aと、ワークを吸着する吸着部81aとを備えている。第二の搬送手段8bも同様に、旋回動及び昇降するアーム部80bと、ワークを吸着する吸着部81bとを備えている。
【0026】
保持手段2は、回転可能であるとともに水平方向に移動可能となっており、保持手段2に対して第一の搬送手段8a及び第二の搬送手段8bによるワークの着脱が行われる領域である着脱域Aと、研削加工手段3によるワークの研削が行われる領域である研削域Bとの間を移動できる構成となっている。
【0027】
研削加工手段3は、鉛直方向の軸心を有する回転軸30と、回転軸30の下端に形成され回転可能なホイールマウント31と、回転軸30及びホイールマウント31を回転駆動するモータ32と、ホイールマウント31に装着された研削ホイール33とから構成され、研削ホイール33の下面には円環状に複数の研削砥石34が固着されている。
【0028】
研削加工手段4は、研削送り手段9によって駆動されて昇降可能となっている。研削送り手段9は、鉛直方向の軸心を有し回転可能なボールスクリュー90と、ボールスクリュー90と平行に配設された一対のガイドレール91と、ボールスクリュー90を正逆回転させるパルスモータ92と、ボールスクリュー90に螺合する図示しないナットを内部に有するとともに側部がガイドレール91に摺接する基台93と、基台93に固定され研削加工手段3を固定支持する支持部94とから構成されている。研削送り手段9は、パルスモータ92の駆動によってボールスクリュー90が回転することにより基台93がガイドレール91に案内されて昇降し、これに伴い研削加工手段3を昇降させる構成となっている。
【0029】
次に、図1に示した研削加工装置1においてワークの研削を行う際の研削加工装置1の動作について説明する。研削前のワークWはカセット40aに収容されカセット支持台4aに載置される。一方、研削後のワークが収容されるカセット40bは、カセット支持台4bに載置される。なお、ワークは特に限定はされないが、例えばシリコンウェーハ、ガリウム砒素、シリコンカーバイド等の半導体ウェーハや、チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、半導体製品のパッケージ、セラミックス、ガラス、サファイア系の無機材料基板、液晶ディスプレイドライバー等の各種電子部品、さらには、ミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料が挙げられる。
【0030】
カセット40a、40bがカセット支持台4a、4bにそれぞれ載置されると、搬送ロボット5の保持部50が各軸部51a〜51dの回動によりカセット40aに進入し、カセット40aに内部に収容された1枚のワークを吸着する。
【0031】
カセット40aからワークWを搬出するためには、保持部50の位置及び傾きを正確に制御する必要がある。そのため、ワークWの研削を行う前に、搬送ロボット5の軸部51a〜51dの原点の位置情報は、図2に示した記憶部54に予め記憶されており、かかる原点の位置情報を基準として動作が制御される。
【0032】
保持部50は、ワークを吸着すると、カセット40aから退避し、ワークを中心合わせ手段6に搬送し、載置台60にワークを載置して吸着を解除する。そして、複数の突起部61が近づく方向に移動することにより、ワークが一定の位置に位置合わせされる。
【0033】
次に、第一の搬送手段8aがワークWを吸着し、着脱域Aに位置する保持手段2にワークを搬送する。保持手段2は、載置されたワークを吸引保持した後、加工域Bに移動する。
【0034】
加工域Bにおいては、保持手段2に保持されたワークWが研削加工手段3の下方まで移動する。そして、保持手段2を回転させるとともに、研削ホイール33を回転させた状態で研削送り手段9が研削加工手段3を降下させ、回転する研削砥石34をワークWの上面に接触させて研削加工を行う。そして、ワークWが所望の厚さに形成されると、研削送り手段9が研削加工手段3を上昇させ、研削を終了する。
【0035】
研削終了後は、ワークを保持した保持手段3が着脱域Aに戻る。そして、第二の搬送手段8bによってワークが洗浄手段7の回転テーブル70に搬送されて保持され、回転テーブル70が回転しながら洗浄水がワークに噴出されることにより、ワークが洗浄され研削屑が除去される。洗浄後は、回転テーブル70が回転するとともにワークに対してエアーが噴出されワークが乾燥される。
【0036】
こうしてワークの洗浄及び乾燥が行われた後は、搬送ロボット5を構成する保持部50がワークを保持し、カセット40bの内部に搬送し収容する。
【0037】
以上のようにして、カセット40aに収容されたすべてのワークについて、上記と同様に、カセット40aからの搬出、研削、洗浄・乾燥及びカセット6bへの収納を行う。
【0038】
上記のようにして研削加工が終了し、装置の電源をオフにしても、記憶部54に記憶された情報の内容は、主電池部55aから供給される電力によって保持される。また、主電池部55aの残量が少なくなったりなくなったりした場合には、予備電池部55bから供給される電力によって記憶内容が保持される。したがって、軸部51a〜51dの原点の位置情報が失われるのを防止することができる。
【0039】
記憶部54への電力の供給源が主電池部55aから予備電池部55bに切り替わると、予備電池部55bが使用されていることをオペレータに知らせるために、警告部57のランプが点灯する。
【0040】
警告部57における警告を受けたオペレータは、図1に示した収容部58aを開けて、主電池部55aの交換を行う。そして、自動または手動により、記憶部54への電力供給源を予備電池部55bから主電池部55aに切り替える。かかる切替えの後、予備電池部55bも新しいものに交換することが望ましい。
【符号の説明】
【0041】
1:研削加工装置
A:着脱域 B:研削域
2:保持手段
3:研削加工手段
30:回転軸 31:ホイールマウント 32:モータ 33:ホイールマウント
34:研削砥石
4a、4b:カセット支持台 40a、40b:カセット
5:搬送ロボット 50:保持部
51a、51b、51c、51d:軸部 51e:軸支部
52:基部 53a:第1アーム 53b:第2アーム
54:記憶部
55:電池部 55a:主電池部 55b:予備電池部
56:切替部 57:警告部
58a、58b:収容部
6:中心合わせ手段 60:載置部 61:突起
7:洗浄手段 70:回転テーブル
8a:第一の搬送手段 80a:アーム部 81a:吸着部
8b:第二の搬送手段 80b:アーム部 81b:吸着部
9:研削送り手段
90:ボールスクリュー 91:ガイドレール 92:パルスモータ 93:基台
94:支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持手段と、
該保持手段に保持されたワークに研削加工を施す研削加工手段と、
該保持手段にワークを搬入するためにワークを収容したカセットからワークを搬出する搬送ロボットと、
を含む研削加工装置であって、
該搬送ロボットは、
ワークを保持する保持部と、
該保持部を移動させる複数の軸部と、
該軸部の位置を記憶する記憶部と、
電源が落ちた際にも該記憶部の記憶を維持させるための電池部とを有し、
該電池部は、
通常使用する主電池部と、該主電池部の残量が少なくなった場合又はなくなった場合に使用する予備電池部と、を有し
該記憶部への電力の供給源が該主電池部から該予備電池部に切り替わった際には、該予備電池部が使用されていることをオペレータに知らせる警告部を有する研削加工装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−106300(P2012−106300A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255688(P2010−255688)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】