説明

研削工具およびその製造方法

【課題】ラッピング面のために所望の表面テクスチャを有する研削工具を構築するための装置および関連の方法を提供する。
【解決手段】研削工具は、外表面およびその外表面と交差するキャビティを規定するプラテンを有する。接着剤がキャビティに配置される。研磨材をその近端においてプラテンに対してキャビティにおいて接着剤によって接着することにより、研磨材はその遠端において外表面を越えて延在しラッピング面を規定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は研削工具に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
概要
いくつかの実施例においては、ラッピング面のために所望の表面テクスチャを有する研削工具が提供される。この研削工具は、外表面およびその外表面と交差するキャビティを規定するプラテンを有する。接着剤がキャビティに配置される。研磨材を、その近端において、プラテンに対して、キャビティにおいて、接着剤によって接着することにより、研磨材は、その遠端において、外表面を越えて延在し、ラッピング面を規定する。
【0003】
いくつかの実施例では、ラッピング面のために所望の表面テクスチャを有するよう研削工具を製造する方法が提供される。この方法は、外表面およびその外表面と交差するキャビティを規定するプラテンを得るステップと、接着剤を、プラテンに対して、キャビティにおいて塗布するステップと、研磨材を、その近端において、プラテンに対して、接着剤によって接着することにより、研磨材の遠端が外表面を越えて延在し、ラッピング面を規定するステップとを含む。
【0004】
いくつかの実施例では、加工物をラッピングするための研削工具が提供される。この研削工具は、加工物に対して選択的に可動であるプラテンと、工具のラッピング面のために所望の表面テクスチャを規定するようプラテンから研磨材を支持するための手段とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】この発明の実施例に従って構成される研削工具の等尺図である。
【図2】関連技術の解決策に従って構成される別の研削工具におけるラッピングプレートの断面図である。
【図3】この発明の実施例に従って構成される図1の研削工具におけるラッピングプレートの断面図である。
【図4】図3のラッピングプレートの一部を示す、拡大部分破断断面図である。
【図5】図1の研削工具の一部を示す拡大断面図である。
【図6】この発明の実施例に従うラッピングプレートを構築するための方法におけるステップを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
説明
本実施例は、一般に、研削工具の製造に関する。この記載のため、限定的ではないが、データ記憶装置において用いられる磁気変換ヘッド(「ヘッド」と称される)の高精度ラッピングにおける研削工具の使用に言及する。そのようなヘッドは、回転可能な磁気記録ディスク上においてデータを保存および検索するよう動作可能に用いられるものであり、非常に精密な製造公差が求められる。そのようなヘッドは、典型的には、導電性材料からなる層および磁束伝導コアを、スライダと呼ばれる比較的大きな支持部材の一方側に沿って適用することにより形成される。回転する記録ディスクによって発生される空気の薄膜上においてスライダを空力的に支持する空気軸受面(「ABS」)が、スライダ内に精密に機械加工される。これにより、スライダと記録ディスクとの間において、ヘッドとディスクとの間における信頼性のあるデータ転送動作に好適な所望の空間的分離が維持される。一般的には「空気」軸受面と称されるが、当業者であれば、いくつかの例においては、この用語は、スライダがたとえば、不活性ガス環境などのような、しかしそれには限定されない、空気以外の(回転するディスクによって同様に発生される)流体上に、同様に空力的に支持されるときでさえ、一般的に用いられることを理解する。
【0007】
図1は、この発明の実施例に従ってABSを機械加工するために用いられる研削工具100を図示する。研削工具100は、研磨材(以下に示される)が埋込まれるラッピング面104を規定する、回転するラッピングプレート102を有する。研磨スラリーをラッピング面104に塗布することにより、ラッピング面104が、ラッピング面104に抗して押圧係合に保持される複数のスライダを含むスライダバー106に対して回転される中、研削動作を向上させる。
【0008】
材料をスライダから除去する研削動作は、ラッピング面テクスチャの継続的かつ急速な減少も引起し、それを経時的により効果的でなくし、最終的には非効果的にする。これが特に当てはまるのは、スライダバー106を通過する初期のラッピング動作の間であり、それはラッピングプロセスのうち「粗いラッピング」と称される部分であり、スライダバー106の寸法的な部分対部分の変動が最も大きい。
【0009】
図2は、これまでに試みられた関連技術解決策に従って構築される研削工具107の一部の断面図である。複数の研磨材108が、プラテン112に付着される付着材料110に埋込まれる。この構成では、研磨材108は、特に、粗いラッピングの最中において無理に移動させられやすく、なぜならば、スライダへの間欠的および/または深い切込み中における研磨材108に対する研削力は、プラテン112から付着材料110を剥がすことができる剪断力を越え得るからである。
【0010】
図3は、この発明の実施例に従って構成される研削工具114の一部の断面図である。研削工具114は、金属製材料から構成されるような、しかしそれには限定されない、非圧縮性材料から好ましくは構成されるプラテン116を有する。プラテン116は外表面118を規定し、金属製材料構成は、特に、プラテン116において、外表面118と交差する複数のキャビティ120を形成することに対して有利である。接着剤122をキャビティ120の各々に配置する。研磨材124を、その近端において、プラテン116に対して、キャビティ120の各々において、接着剤122により接着し、各研磨材124の遠端は、外表面118を越えて延在して、ラッピング面を規定する。
【0011】
図4は、図3の研削工具114の一部を示す部分破断断面図である。接着剤122の使用を低減するため、キャビティ120は、この例においては「V」形状キャビティ120を形成する、非平行の対向面により規定される。図4において、隣接するV形状キャビティ120は「W」形状の組合せを形成し、それらの間における外表面における頂部1182は、外表面の他の平面部1181、1183と共面である。図3に示されるように、隣接するV形状キャビティ120からなる他の対は、外表面の平面部1181、1183により分離される。
【0012】
接着剤122は複合エポキシから形成され得、複合エポキシの第1の部分126が、図4に示されるように、プラテン116に対して、キャビティ120において適用される。複合エポキシの第2の部分128が研磨材124に適用された後、複合エポキシの第1および第2の部分126、128が合せられて研磨材124をプラテン116に付着させることができる。第2の部分128をバインダとして用いて、研磨材124は、図2に示される関連技術の解決策におけるようにより大きなダイヤモンド粒子を用いるよりも、はるかに安価なダイヤモンド粉末から有利に形成され得る。
【0013】
特許請求される実施例の具体化中に、低粘性エポキシが、10部樹脂(第1の部分126など)対1部硬化剤(第2の部分128など)の比で成功裏に用いられた。さまざまなダイヤモンド粉末サイズ、たとえば0.1ミクロン、0.25ミクロン、0.5ミクロン、1.0ミクロン、2.0ミクロン、3.0ミクロンおよび6.0ミクロンなどのサイズであるが、それらに限定されないサイズが、適切に用いられた。より小さなダイヤモンド粉末サイズが用いられる場合、エポキシを薄くすることが好ましく、たとえば、エポキシを加熱するか、またはそれをイソプロパノールなどのような薄め剤で希釈するかされたりする。熱硬化エポキシの使用は、エポキシのコーティング厚みを有利に低減する傾向があるベーク時間および温度を必要とし、より堅牢で一様な研磨粒子露出を促進する。
【0014】
図5は、プラテン116が矢印130によって示されるように左に移動しているときにおける図3の研削工具114の拡大された一部を示す。研磨材124は、したがって、スライダバー106に向かって移動されており、スライダバー106と研削接触をまさになそうとしている図が示されている。研削接触は、矢印132に示される方向において、移動の経路と対向して研磨材124に抗して実質的に水平な力を発生させる。キャビティ120を規定するプラテン116の表面134は、矢印136に示される力の場で、(方向132に示される)水平力と反対に研磨材124を支持する。研磨材124をキャビティ120に根付かせることは、図2に示される関連技術の解決策の付着剪断強度と比較して、それが取付けられる接合強度を優位に増大させる。この実施例の増大された強度は、ラッピング面を規定するテクスチャ化に対して生ずる損傷を防ぎ、それによって、工具の寿命を延ばし、動作スループットを増大させる。
【0015】
図6は、この発明の実施例に従って研削工具114を構築するための方法200におけるステップを示す。この方法200は、ブロック202において、外表面およびその外表面に交差するキャビティを規定するプラテンを得ることから始まる。ブロック204において、接着剤を、プラテンに対して、キャビティ内において塗布する。記載されるように、いくつかの実施例では、このことは、複合エポキシの第1の部分をキャビティに適用した後に複合エポキシの複数の部分を合せることを必要とし得る。ブロック206において、研磨材を、その近端において、プラテンに対して、接着剤によって接着することにより、研磨材の遠端が外表面を越えて延在し、ラッピング面を規定する。記載されるように、いくつかの実施例においては、このことは、複合エポキシの第2の部分をダイヤモンドダストのような研磨材に適用した後に複合エポキシの複数の部分を合せることを必要とし得る。
【0016】
一般的に、前述の実施例は、加工物をラッピングするための研削工具に関連付けられる装置および方法に向けられ、加工物に対して選択的に可動であるプラテン、および工具のラッピング面に対して所望の表面テクスチャを規定するようプラテンから研磨材を支持するための手段を伴う。この記載および請求の範囲の意味のため、研磨材を「支持するための手段」は、研磨材をプラテンの外表面に交差するキャビティ内においてプラテンに根付かせ付着させる、開示される構造および構造上におけるその等価物を包含する。「支持するための手段」は特に、研磨材が単に外表面に付着され、それによって、その付着の剪断強度により適所に維持されるような、以前に試みられた解決策を含まず、研磨材が付着部材によってプラテンに付着されることもなくプラテンに単に埋込まれるような、他の以前に試みられた解決策を含まない。
【0017】
この発明のさまざまな実施例の数多くの特性および利点を、上述の記載において、この発明のさまざまな実施例の構造および機能の詳細と共に述べたが、この開示は例示的なものに過ぎず、特に、請求の範囲に示される用語の幅広い一般的な意味によって示される十分な範囲までのこの実施例の原理内において、構成、部材の配置、および記載された変数の値の事項において、さまざまな変更が細部においてなされてもよいことが理解される。
【符号の説明】
【0018】
100 研削工具、102 ラッピングプレート、104 ラッピング面、106 スライダバー、107 研削工具、108 研磨材、110 付着材料、112 プラテン、114 研削工具、116 プラテン、118 外表面、120 キャビティ、122 接着剤、124 研磨材、126 複合エポキシの第1の部分、128 複合エポキシの第2の部分、134 プラテンの表面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラッピング面のために所望の表面テクスチャを有する研削工具であって、
外表面および前記外表面と交差するキャビティを規定するプラテンと、
前記キャビティにおける接着剤と、
近端において前記プラテンに対して前記キャビティにおいて前記接着剤によって接着され、遠端において、前記外表面を越えて延在し、前記ラッピング面を規定する研磨材とを含む、研削工具。
【請求項2】
前記外表面は平面である、請求項1に記載の研削工具。
【請求項3】
前記キャビティを規定する対向する表面は非平行である、請求項2に記載の研削工具。
【請求項4】
前記キャビティはV形状である、請求項3に記載の研削工具。
【請求項5】
前記プラテンは複数の前記V形状キャビティを規定し、前記複数のV形状キャビティのうち隣接するV形状キャビティは、V形状キャビティのW形状対を規定し、それらの間の頂部は前記平面の外表面と共面である、請求項4に記載の研削工具。
【請求項6】
前記プラテンは複数の前記V形状キャビティを規定し、前記複数のV形状キャビティのうち隣接するV形状キャビティは、前記平面の外表面によって分離される、請求項4に記載の研削工具。
【請求項7】
前記プラテンは非圧縮性構成材料を含む、請求項1に記載の研削工具。
【請求項8】
前記プラテンは金属性構成材料を含む、請求項7に記載の研削工具。
【請求項9】
複合エポキシの第1の部分が前記プラテンに対して前記キャビティにおいて適用されており、前記複合エポキシの第2の部分が前記研磨材に対して適用された後、前記複合エポキシの前記第1の部分および前記第2の部分が合せられて前記研磨材を前記プラテンに付着させている、請求項1に記載の研削工具。
【請求項10】
前記複合エポキシの前記第2の部分が複数の研磨材に対して適用された後、前記複合エポキシの前記第1の部分および前記第2の部分が合せられて前記研磨材を前記プラテンに付着させている、請求項9に記載の研削工具。
【請求項11】
前記研磨材はダイヤモンド粉末を含む、請求項10に記載の研削工具。
【請求項12】
ラッピング面のために所望の表面テクスチャを有するよう研削工具を製造する方法であって、
外表面および前記外表面と交差するキャビティを規定するプラテンを得るステップと、
接着剤を前記プラテンに対して前記キャビティにおいて塗布するステップと、
研磨材をその近端において前記プラテンに対して前記接着剤によって接着することにより、前記研磨材の遠端が前記外表面を越えて延在し前記ラッピング面を規定するステップとを含む、方法。
【請求項13】
前記塗布するステップは、前記キャビティを前記接着剤で部分的に満たすことにより特徴付けられる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記プラテンを得るステップは、前記外表面が平面であることにより特徴付けられる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記プラテンを得るステップは、前記プラテンが非圧縮性材料から構成されることにより特徴付けられる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記プラテンを得るステップは、前記プラテンが金属性材料から構成されることにより特徴付けられる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記塗布するステップは、複合エポキシの第1の部分を、前記プラテンに対して、前記キャビティにおいて適用することにより特徴付けられる、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記接着するステップは、前記複合エポキシの第2の部分を前記研磨材に適用した後、前記複合エポキシの前記第1の部分および前記第2の部分を合せることにより特徴付けられる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記接着するステップは、前記複合エポキシの前記第2の部分を複数の研磨材に適用した後、前記複合エポキシの前記第1の部分および前記第2の部分を合せることにより特徴付けられる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記研磨材はダイヤモンド粉末であることにより特徴付けられる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
加工物をラッピングするための研削工具であって、
前記加工物に対して選択的に可動であるプラテンと、
前記工具のラッピング面のために所望の表面テクスチャを規定するよう前記プラテンから研磨材を支持するための手段とを含む、研削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−16815(P2012−16815A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147849(P2011−147849)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(500373758)シーゲイト テクノロジー エルエルシー (278)
【Fターム(参考)】