説明

研磨パッド及びその製造方法

【課題】研磨速度安定性に優れる研磨パッド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】機械的発泡法により得られるポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を有する研磨パッドであって、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、イソシアネート成分、高分子量ポリオール、及び下記一般式(1)で表されるポリシロキサン基含有ジオールを含有してなるイソシアネート末端プレポリマーと、鎖延長剤とを含むポリウレタン原料組成物の反応硬化体であり、前記ポリシロキサン基含有ジオールの含有量は、ポリウレタン原料組成物中に1〜5重量%である。


(式中、Rは炭素数が1〜12のアルキル基であり、nは10〜380の整数であり、mは1〜12の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ、反射ミラー等の光学材料やシリコンウエハ、ハードディスク用のガラス基板、アルミ基板、及び一般的な金属研磨加工等の高度の表面平坦性を要求される材料の平坦化加工を安定、かつ高い研磨効率で行うことが可能な研磨パッドに関するものである。本発明の研磨パッドは、ウエハ上にCu膜(Cu合金膜を含む)が形成された半導体デバイスを平坦化してCu配線パターンを形成する工程において好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
高度の表面平坦性を要求される材料の代表的なものとしては、半導体集積回路(IC、LSI)を製造するシリコンウエハと呼ばれる単結晶シリコンの円盤があげられる。シリコンウエハは、IC、LSI等の製造工程において、回路形成に使用する各種薄膜の信頼できる半導体接合を形成するために、酸化物層や金属層を積層・形成する各工程において、表面を高精度に平坦に仕上げることが要求される。このような研磨仕上げ工程においては、一般的に研磨パッドはプラテンと呼ばれる回転可能な支持円盤に固着され、半導体ウエハ等の加工物は研磨ヘッドに固着される。そして双方の運動により、プラテンと研磨ヘッドとの間に相対速度を発生させ、さらに砥粒を含む研磨スラリーを研磨パッド上に連続供給することにより、研磨操作が実行される。
【0003】
研磨パッドの研磨特性としては、研磨対象物の平坦性(プラナリティ)及び面内均一性に優れ、研磨速度が大きいことが要求される。研磨対象物の平坦性、面内均一性については研磨層を高弾性率化することによりある程度は改善できる。また、研磨速度については、気泡を含有する発泡体にしてスラリーの保持量を多くすることにより向上できる。
【0004】
また、スラリーの保持量をより多くする方法としては、研磨パッド自体を親水性にする方法が挙げられ、具体的には(1)水酸基等の親水性基をマトリクス材料に導入する方法、(2)マトリクス材料と親水性物質とを混合するする方法が挙げられる。例えば、(A)架橋エラストマーと、(B)ヒドロキシル基等の官能基を有する物質とを含有する研磨パッド用組成物が開示されている(特許文献1)。また、研磨工具を構成する材料に、更に親水性物質を加えたり、親水性基を付加(変性)した研磨工具が開示されている(特許文献2)。また、親水性であって、かつ実質的に水に不溶のシート状物を含有する熱硬化性高分子マトリクス樹脂からなる研磨パッドが開示されている(特許文献3)。さらに、親水性基を有する化合物が共重合されたウレタン樹脂を含有し、かつ親水剤を含有するポリウレタン組成物よりなる研磨パッドが開示されている(特許文献4)。
【0005】
しかし、研磨パッド自体を親水性にすると、研磨屑を含むスラリーの排出性が悪くなり、研磨速度が次第に低下するという問題がある。
【0006】
一方、熱硬化性ウレタン樹脂に優れた脱型性、表面平滑性、及び塗装における密着性を付与するために、片末端ジオールポリシロキサンをNCO末端プレポリマーの原料として用いる技術が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−134445号公報
【特許文献2】特開2003−11066号公報
【特許文献3】特開2002−59358号公報
【特許文献4】特開2003−128910号公報
【特許文献5】特開平7−133337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、研磨速度安定性に優れる研磨パッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記の研磨パッドにより前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、機械的発泡法により得られるポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を有する研磨パッドにおいて、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、イソシアネート成分、高分子量ポリオール、及び下記一般式(1)で表されるポリシロキサン基含有ジオールを含有してなるイソシアネート末端プレポリマーと、鎖延長剤とを含むポリウレタン原料組成物の反応硬化体であり、
前記ポリシロキサン基含有ジオールの含有量は、ポリウレタン原料組成物中に1〜5重量%であることを特徴とする研磨パッド、に関する。


(式中、Rは炭素数が1〜12のアルキル基であり、nは10〜380の整数であり、mは1〜12の整数である。)
【0011】
イソシアネート末端プレポリマーの原料として上記一般式(1)で表されるポリシロキサン基含有ジオールを用いることにより、ポリウレタン樹脂発泡体を疎水化させることができる。その結果、研磨層のスラリー排出性が向上すると伴に、研磨層の吸水性及び膨潤性が低下するため、長時間研磨操作を行った場合であっても研磨速度の低下を抑制することができる。
【0012】
また、化学的研磨作用の強いCu膜の研磨においては、研磨層が親水性である場合には、化学反応済みのスラリーが研磨層上に残留しやすいため、初期研磨速度が低くなったり、研磨速度が次第に低下する傾向にある。疎水化したポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を用いることにより、化学反応済みのスラリーを研磨層上に残留させることなく素早く排出し、新しいスラリーを素早く供給することができるため、初期研磨速度が高くなり、かつ研磨速度を高く維持することができる。
【0013】
ポリシロキサン基含有ジオールは、予めイソシアネート末端プレポリマー中に導入しておくことが必要である。ポリシロキサン基含有ジオールをポリウレタン原料組成物中に単独で添加すると、機械発泡時にシリコン系界面活性剤(整泡剤)を添加しても気泡が破泡し、微細気泡のポリウレタン樹脂発泡体を作製し難くなる。
【0014】
ポリシロキサン基含有ジオールの含有量は、ポリウレタン原料組成物中に1〜5重量%である。ポリシロキサン基含有ジオールの含有量が1重量%未満の場合には、ポリウレタン樹脂発泡体を十分に疎水化させることができないため、研磨速度の低下を抑制し難くなる。一方、5重量%を超える場合には、機械発泡時にシリコン系界面活性剤(整泡剤)を添加しても気泡が破泡し、微細気泡のポリウレタン樹脂発泡体を作製し難くなる。
【0015】
ポリシロキサン基含有ジオールの水酸基価は、7〜120mgKOH/gであることが好ましい。水酸基価が7mgKOH/g未満の場合には、ポリウレタン樹脂発泡体の疎水性が不十分であるため目的とする効果が得難い傾向にある。一方、120mgKOH/gを超える場合には、他の原料との相溶性が悪くなって機械的特性が低下したり、ポリウレタン樹脂発泡体の疎水性が強くなりすぎて研磨速度が低下する傾向にある。
【0016】
また本発明は、イソシアネート末端プレポリマーを含む第1成分と鎖延長剤を含む第2成分とを混合し、硬化してポリウレタン樹脂発泡体を作製する工程を含む研磨パッドの製造方法において、
前記工程は、イソシアネート成分、高分子量ポリオール、及び下記一般式(1)で表されるポリシロキサン基含有ジオールを含有してなるイソシアネート末端プレポリマーを含む第1成分にシリコン系界面活性剤を第1成分及び第2成分の合計重量に対して0.05〜10重量%になるように添加し、さらに前記第1成分を非反応性気体と撹拌して前記非反応性気体を微細気泡として分散させた気泡分散液を調製した後、前記気泡分散液に鎖延長剤を含む第2成分を混合し、硬化してポリウレタン樹脂発泡体を作製する工程であり、
前記ポリシロキサン基含有ジオールの含有量は、第1成分及び第2成分の合計重量に対して1〜5重量%であることを特徴とする研磨パッドの製造方法、に関する。


(式中、Rは炭素数が1〜12のアルキル基であり、nは10〜380の整数であり、mは1〜12の整数である。)
【0017】
該製造方法によると、均一な微細気泡構造を有するポリウレタン樹脂発泡体を得ることができる。
【0018】
前記シリコン系界面活性剤は、第1成分及び第2成分の合計重量に対して0.05〜10重量%になるように添加することが必要である。シリコン系界面活性剤の量が0.05重量%未満の場合には、微細気泡の発泡体が得られない傾向にある。一方、10重量%を超える場合には発泡体中の気泡数が多くなりすぎ、高硬度のポリウレタン樹脂発泡体を得にくい傾向にある。
【0019】
また本発明は、前記研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を含む半導体デバイスの製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の研磨パッドは、従来の研磨パッドに比べて疎水性が高く、研磨層のスラリー排出性が向上すると伴に、研磨層の吸水性及び膨潤性が低下するため、長時間研磨操作を行った場合であっても研磨速度の低下を抑制することができる。また、本発明の研磨パッドをCu膜研磨に用いた場合には、化学反応済みのスラリーを研磨層上に残留させることなく素早く排出し、新しいスラリーを素早く供給することができるため、初期研磨速度が高くなり、かつ研磨速度を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】CMP研磨で使用する研磨装置の一例を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層のみであってもよく、研磨層と他の層(例えばクッション層など)との積層体であってもよい。
【0023】
本発明で使用するイソシアネート末端プレポリマーは、少なくともイソシアネート成分、高分子量ポリオール、及び下記一般式(1)で表されるポリシロキサン基含有ジオールを原料成分として含有してなるものである。



(式中、Rは炭素数が1〜12のアルキル基であり、nは10〜380の整数であり、mは1〜12の整数である。)
【0024】
イソシアネート成分としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を特に限定なく使用できる。イソシアネート成分としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種で用いても、2種以上を混合しても差し支えない。
【0025】
イソシアネート成分としては、上記ジイソシアネート化合物の他に、3官能以上の多官能ポリイソシアネート化合物も使用可能である。多官能のイソシアネート化合物としては、デスモジュール−N(バイエル社製)や商品名デュラネート(旭化成工業社製)として一連のジイソシアネートアダクト体化合物が市販されている。
【0026】
高分子量ポリオールとしては、ポリウレタンの技術分野において、通常用いられるものを挙げることができる。例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール等に代表されるポリエーテルポリオール、ポリブチレンアジペートに代表されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応物などで例示されるポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させ、次いでえられた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させたポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシル化合物とアリールカーボネートとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかで、研磨層の機械的特性及び研磨層の疎水性を高める観点から、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを用いることが好ましい。
【0027】
高分子量ポリオールの重量平均分子量は特に限定されないが、得られるポリウレタン樹脂の弾性特性等の観点から、500〜3000であることが好ましい。重量平均分子量が500未満であると、これを用いて得られるポリウレタン樹脂は十分な弾性特性を有さず、脆いポリマーとなり易く、このポリウレタン樹脂からなる研磨パッドが硬くなりすぎ、研磨対象物表面のスクラッチの発生原因となる場合がある。また、摩耗しやすくなるため、研磨パッドの寿命の観点からも好ましくない。一方、重量平均分子量が3000を超えると、これを用いて得られるポリウレタン樹脂からなる研磨パッドが軟らかくなり、十分に満足できるプラナリティを得難くなる。
【0028】
また、上述した高分子量ポリオールの他に、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等の低分子量ポリオールを併用することができる。また、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、及びジエチレントリアミン等の低分子量ポリアミンを併用することもできる。また、モノエタノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、及びモノプロパノールアミン等のアルコールアミンを併用することもできる。これら低分子量ポリオール、低分子量ポリアミン等は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これら低分子量ポリオール、低分子量ポリアミン等の配合量は特に限定されず、研磨パッドに要求される特性により適宜決定されるが、全ポリオール成分の20〜70モル%であることが好ましい。
【0029】
前記一般式(1)で表されるポリシロキサン基含有ジオールは、イソシアネート成分との反応によりイソシアネート末端プレポリマー中に導入される。当該プレポリマーは、側鎖にポリシロキサン基を有しているため、ポリウレタン樹脂に疎水性を付与することができる。前記一般式(1)において、Rはブチル基であることが好ましく、mは3であることが好ましい。
【0030】
また、前記ポリシロキサン基含有ジオールは、水酸基価が7〜120mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは20〜120mgKOH/gである。
【0031】
前記ポリシロキサン基含有ジオールは、例えば、水酸基を有するポリシロキサンとトリメチロールプロパンとを脱水縮合させることにより合成することができる。また、前記ポリシロキサン基含有ジオールの市販品としては、例えば、FM−DA11(チッソ株式会社、R:ブチル基、m:3、重量平均分子量:1000、水酸基価:112.2mgKOH/g)、FM−DA21(チッソ株式会社、R:ブチル基、m:3、重量平均分子量:5000、水酸基価:22.4mgKOH/g)、FM−DA26(チッソ株式会社、R:ブチル基、m:3、重量平均分子量:15000、水酸基価:7.5mgKOH/g)などが挙げられる。
【0032】
前記ポリシロキサン基含有ジオールは、ポリウレタン原料組成物中に1〜5重量%になるように配合することが必要であり、好ましくは1〜3重量%である。
【0033】
前記イソシアネート末端プレポリマーは、前記ポリオールとポリシロキサン基含有ジオールとイソシアネート成分とを用い、イソシアネート基(NCO)と活性水素(H)の当量比(NCO/H)が1.2〜5.0、好ましくは1.6〜2.6となる範囲で加熱反応して製造される。1.2未満の場合には、合成時にプレポリマーが高分子量化して固化又はゲル化する傾向にある。一方、5.0を超える場合には、未反応のイソシアネートが多く残存するため鎖延長剤との反応が速くなり、ポリウレタン樹脂発泡体の成型加工性が悪くなる傾向にある。
【0034】
イソシアネート末端プレポリマーの硬化には鎖延長剤を使用する。鎖延長剤は、少なくとも2個以上の活性水素基を有する有機化合物であり、活性水素基としては、水酸基、第1級もしくは第2級アミノ基、チオール基(SH)等が例示できる。具体的には、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)(MOCA)、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2,3−ジクロロアニリン)、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゾエート、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、N,N’−ジ−sec−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、m−キシリレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等に例示されるポリアミン類、あるいは、上述した低分子量ポリオールや低分子量ポリアミンを挙げることができる。これらは1種で用いても、2種以上を混合しても差し支えない。
【0035】
ポリウレタン樹脂発泡体は、溶融法、溶液法など公知のウレタン化技術を応用して製造することができるが、コスト、作業環境などを考慮した場合、溶融法で製造することが好ましい。
【0036】
ポリウレタン樹脂発泡体の製造は、イソシアネート末端プレポリマーを含む第1成分と、鎖延長剤を含む第2成分を混合して硬化させるものである。
【0037】
ポリウレタン樹脂発泡体の製造方法としては、機械的発泡法(メカニカルフロス法を含む)を用いる。
【0038】
特にポリアルキルシロキサンとポリエーテルとの共重合体であるシリコン系界面活性剤を使用した機械的発泡法が好ましい。シリコン系界面活性剤としては、SH−192及びL−5340(東レダウコーニングシリコーン社製)、B8443、B8465(ゴールドシュミット社製)等が好適な化合物として例示される。シリコン系界面活性剤は、第1成分及び第2成分の合計重量に対して0.05〜10重量%になるように添加することが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0039】
必要に応じて、ポリウレタン樹脂発泡体中には、酸化防止剤等の安定剤、滑剤、顔料、充填剤、帯電防止剤、その他の添加剤を加えてもよい。
【0040】
研磨パッド(研磨層)を構成する微細気泡タイプのポリウレタン樹脂発泡体を製造する方法の例について以下に説明する。かかるポリウレタン樹脂発泡体の製造方法は、以下の工程を有する。
1)イソシアネート末端プレポリマーの気泡分散液を作製する発泡工程
イソシアネート末端プレポリマー(第1成分)にシリコン系界面活性剤を添加し、非反応性気体の存在下で撹拌し、非反応性気体を微細気泡として分散させて気泡分散液とする。前記プレポリマーが常温で固体の場合には適宜の温度に予熱し、溶融して使用する。
2)硬化剤(鎖延長剤)混合工程
上記の気泡分散液に鎖延長剤(第2成分)を添加、混合、撹拌して発泡反応液とする。 3)注型工程
上記の発泡反応液を金型に流し込む。
4)硬化工程
金型に流し込まれた発泡反応液を加熱し、反応硬化させる。
【0041】
前記微細気泡を形成するために使用される非反応性気体としては、可燃性でないものが好ましく、具体的には窒素、酸素、炭酸ガス、ヘリウムやアルゴン等の希ガスやこれらの混合気体が例示され、乾燥して水分を除去した空気の使用がコスト的にも最も好ましい。
【0042】
非反応性気体を微細気泡状にしてシリコン系界面活性剤を含む第1成分に分散させる撹拌装置としては、公知の撹拌装置は特に限定なく使用可能であり、具体的にはホモジナイザー、ディゾルバー、2軸遊星型ミキサー(プラネタリーミキサー)等が例示される。撹拌装置の撹拌翼の形状も特に限定されないが、ホイッパー型の撹拌翼の使用にて微細気泡が得られ好ましい。
【0043】
なお、発泡工程において気泡分散液を作成する撹拌と、混合工程における鎖延長剤を添加して混合する撹拌は、異なる撹拌装置を使用することも好ましい態様である。特に混合工程における撹拌は気泡を形成する撹拌でなくてもよく、大きな気泡を巻き込まない撹拌装置の使用が好ましい。このような撹拌装置としては、遊星型ミキサーが好適である。発泡工程と混合工程の撹拌装置を同一の撹拌装置を使用しても支障はなく、必要に応じて撹拌翼の回転速度を調整する等の撹拌条件の調整を行って使用することも好適である。
【0044】
ポリウレタン樹脂発泡体の製造方法においては、発泡反応液を型に流し込んで流動しなくなるまで反応した発泡体を、加熱、ポストキュアすることは、発泡体の物理的特性を向上させる効果があり、極めて好適である。金型に発泡反応液を流し込んで直ちに加熱オーブン中に入れてポストキュアを行う条件としてもよく、そのような条件下でもすぐに反応成分に熱が伝達されないので、気泡径が大きくなることはない。硬化反応は、常圧で行うことが気泡形状が安定するために好ましい。
【0045】
ポリウレタン樹脂発泡体において、第3級アミン系等の公知のポリウレタン反応を促進する触媒を使用してもかまわない。触媒の種類、添加量は、混合工程後、所定形状の型に流し込む流動時間を考慮して選択する。
【0046】
ポリウレタン樹脂発泡体の製造は、各成分を計量して容器に投入し、撹拌するバッチ方式であっても、また撹拌装置に各成分と非反応性気体を連続して供給して撹拌し、気泡分散液を送り出して成形品を製造する連続生産方式であってもよい。
【0047】
また、ポリウレタン樹脂発泡体の原料となるプレポリマーを反応容器に入れ、その後鎖延長剤を投入、撹拌後、所定の大きさの注型に流し込みブロックを作製し、そのブロックを鉋状、あるいはバンドソー状のスライサーを用いてスライスする方法、又は前述の注型の段階で、薄いシート状にしても良い。
【0048】
前記ポリウレタン樹脂発泡体の平均気泡径は、30〜200μmであることが好ましい。この範囲から逸脱する場合は、研磨後の研磨対象物のプラナリティ(平坦性)が低下する傾向にある。
【0049】
前記ポリウレタン樹脂発泡体の硬度は、アスカーD硬度計にて、40〜70度であることが好ましい。アスカーD硬度が40度未満の場合には、研磨対象物のプラナリティが低下し、一方、70度を超える場合は、プラナリティは良好であるが、研磨対象物のユニフォーミティ(均一性)が低下する傾向にある。
【0050】
前記ポリウレタン樹脂発泡体の比重は、0.5〜1.3であることが好ましい。比重が0.5未満の場合、研磨層の表面強度が低下し、研磨対象物のプラナリティが低下する傾向にある。また、1.3より大きい場合は、研磨層表面の気泡数が少なくなり、プラナリティは良好であるが、研磨速度が低下する傾向にある。
【0051】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、吸水率が3.8%以下であることが好ましく、より好ましくは3.5%以下である。また、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、曲げ弾性変化率(wet/dry)が40%以下であることが好ましく、より好ましくは35%以下である。なお、前記各物性の測定方法は実施例の記載による。
【0052】
本発明の研磨パッド(研磨層)の研磨対象物と接触する研磨表面には、スラリーを保持・更新する表面形状を有することが好ましい。発泡体からなる研磨層は、研磨表面に多くの開口を有し、スラリーを保持・更新する働きを持っているが、更なるスラリーの保持性とスラリーの更新を効率よく行うため、また研磨対象物との吸着による研磨対象物の破壊を防ぐためにも、研磨表面に凹凸構造を有することが好ましい。凹凸構造は、スラリーを保持・更新する形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、XY格子溝、同心円状溝、貫通孔、貫通していない穴、多角柱、円柱、螺旋状溝、偏心円状溝、放射状溝、及びこれらの溝を組み合わせたものが挙げられる。また、これらの凹凸構造は規則性のあるものが一般的であるが、スラリーの保持・更新性を望ましいものにするため、ある範囲ごとに溝ピッチ、溝幅、溝深さ等を変化させることも可能である。
【0053】
前記凹凸構造の作製方法は特に限定されるものではないが、例えば、所定サイズのバイトのような治具を用い機械切削する方法、所定の表面形状を有した金型に樹脂を流しこみ、硬化させることにより作製する方法、所定の表面形状を有したプレス板で樹脂をプレスし作製する方法、フォトリソグラフィを用いて作製する方法、印刷手法を用いて作製する方法、炭酸ガスレーザーなどを用いたレーザー光による作製方法などが挙げられる。
【0054】
本発明の研磨パッドは、前記研磨層とクッションシートとを貼り合わせたものであってもよい。
【0055】
前記クッションシート(クッション層)は、研磨層の特性を補うものである。クッションシートは、CMPにおいて、トレードオフの関係にあるプラナリティとユニフォーミティの両者を両立させるために必要なものである。プラナリティとは、パターン形成時に発生する微小凹凸のある研磨対象物を研磨した時のパターン部の平坦性をいい、ユニフォーミティとは、研磨対象物全体の均一性をいう。研磨層の特性によって、プラナリティを改善し、クッションシートの特性によってユニフォーミティを改善する。本発明の研磨パッドにおいては、クッションシートは研磨層より柔らかいものを用いることが好ましい。
【0056】
前記クッションシートとしては、例えば、ポリエステル不織布、ナイロン不織布、アクリル不織布などの繊維不織布やポリウレタンを含浸したポリエステル不織布のような樹脂含浸不織布、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォームなどの高分子樹脂発泡体、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどのゴム性樹脂、感光性樹脂などが挙げられる。
【0057】
研磨層とクッションシートとを貼り合わせる手段としては、例えば、研磨層とクッションシートとを両面テープで挟みプレスする方法が挙げられる。
【0058】
前記両面テープは、不織布やフィルム等の基材の両面に接着層を設けた一般的な構成を有するものである。クッションシートへのスラリーの浸透等を防ぐことを考慮すると、基材にフィルムを用いることが好ましい。また、接着層の組成としては、例えば、ゴム系接着剤やアクリル系接着剤等が挙げられる。金属イオンの含有量を考慮すると、アクリル系接着剤は、金属イオン含有量が少ないため好ましい。また、研磨層とクッションシートは組成が異なることもあるため、両面テープの各接着層の組成を異なるものとし、各層の接着力を適正化することも可能である。
【0059】
本発明の研磨パッドは、プラテンと接着する面に両面テープが設けられていてもよい。該両面テープとしては、上述と同様に基材の両面に接着層を設けた一般的な構成を有するものを用いることができる。基材としては、例えば不織布やフィルム等が挙げられる。研磨パッドの使用後のプラテンからの剥離を考慮すれば、基材にフィルムを用いることが好ましい。また、接着層の組成としては、例えば、ゴム系接着剤やアクリル系接着剤等が挙げられる。金属イオンの含有量を考慮すると、アクリル系接着剤は、金属イオン含有量が少ないため好ましい。
【0060】
半導体デバイスは、前記研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を経て製造される。半導体ウエハとは、一般にシリコンウエハ上に配線金属及び酸化膜を積層したものである。半導体ウエハの研磨方法、研磨装置は特に制限されず、例えば、図1に示すように研磨パッド(研磨層)1を支持する研磨定盤2と、半導体ウエハ4を支持する支持台(ポリシングヘッド)5とウエハへの均一加圧を行うためのバッキング材と、研磨剤3の供給機構を備えた研磨装置などを用いて行われる。研磨パッド1は、例えば、両面テープで貼り付けることにより、研磨定盤2に装着される。研磨定盤2と支持台5とは、それぞれに支持された研磨パッド1と半導体ウエハ4が対向するように配置され、それぞれに回転軸6、7を備えている。また、支持台5側には、半導体ウエハ4を研磨パッド1に押し付けるための加圧機構が設けてある。研磨に際しては、研磨定盤2と支持台5とを回転させつつ半導体ウエハ4を研磨パッド1に押し付け、スラリーを供給しながら研磨を行う。スラリーの流量、研磨荷重、研磨定盤回転数、及びウエハ回転数は特に制限されず、適宜調整して行う。
【0061】
これにより半導体ウエハ4の表面の突出した部分が除去されて平坦状に研磨される。その後、ダイシング、ボンディング、パッケージング等することにより半導体デバイスが製造される。半導体デバイスは、演算処理装置やメモリー等に用いられる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0063】
[測定、評価方法]
(ポリオール成分の重量平均分子量の測定)
ポリオール成分の重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)にて測定し、標準ポリスチレンにより換算した。
GPC装置:島津製作所製、LC−10A
カラム:Polymer Laboratories社製、(PLgel、5μm、500Å)、(PLgel、5μm、100Å)、及び(PLgel、5μm、50Å)の3つのカラムを連結して使用
流量:1.0ml/min
濃度:1.0g/l
注入量:40μl
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
【0064】
(平均気泡径の測定)
作製したポリウレタン樹脂発泡体を厚み1mm以下になるべく薄くミクロトームカッターで平行に切り出したものを測定用試料とした。試料表面を走査型電子顕微鏡(日立サイエンスシステムズ社製、S−3500N)で100倍にて撮影した。そして、画像解析ソフト(MITANIコーポレーション社製、WIN−ROOF)を用いて、任意範囲の全気泡の円相当径を測定し、その測定値から平均気泡径を算出した。
【0065】
(比重の測定)
JIS Z8807−1976に準拠して行った。作製したポリウレタン樹脂発泡体を4cm×8.5cmの短冊状(厚み:任意)に切り出したものを比重測定用試料とし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定には比重計(ザルトリウス社製)を用い、比重を測定した。
【0066】
(硬度の測定)
JIS K6253−1997に準拠して行った。作製したポリウレタン樹脂発泡体を2cm×2cm(厚み:任意)の大きさに切り出したものを硬度測定用試料とし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定時には、試料を重ね合わせ、厚み6mm以上とした。硬度計(高分子計器社製、アスカーD型硬度計)を用い、硬度を測定した。
【0067】
(吸水率の測定)
JIS K7312に準拠して測定した。作製したポリウレタン樹脂発泡体を幅20mm×長さ50mm×厚み1.27mmの大きさに切り出したものをサンプルとした。該サンプルを25℃の蒸留水中に48時間浸漬し、浸漬前後の重さを下記式に代入して吸水率を算出した。
吸水率(%)=[(浸漬後の重さ−浸漬前の重さ)/浸漬前の重さ]×100
【0068】
(曲げ弾性変化率の測定)
作製したポリウレタン樹脂発泡体を幅1cm、長さ3cm、厚み2mmの大きさに切り出したものをサンプルとした。測定装置としてインストロン社製の5864卓上試験システムを用い、曲げ強度測定用治具の交点間距離22mm、クロスヘッド速度0.6mm/min、移動変位量6.0mmの条件でサンプルの応力及び歪を測定し、下記式により曲げ弾性率を算出した。
曲げ弾性率=(直線部分の2点間の応力差)/(同じ2点間の歪の差)
また、サンプルを23℃±2℃の蒸留水に48時間浸漬し、その後、前記と同様の方法で曲げ弾性率を算出した。
曲げ弾性変化率は下記式により算出した。
曲げ弾性変化率(%)=(浸漬前の曲げ弾性率−浸漬後の曲げ弾性率)/(浸漬前の曲げ弾性率)×100
【0069】
(研磨速度の測定)
研磨装置としてSPP600S(岡本工作機械社製)を用い、作製した研磨パッドを用いて、研磨速度の測定を行った。研磨速度は、8インチのシリコンウエハ上に熱酸化膜2000Å、Ta100Å、TaN100Å、及びCu−seed800Åをこの順で堆積させ、その上にCuメッキ25000Åを製膜したものを1枚につき60秒研磨し、このときの研磨量から算出した。初期研磨速度は4枚目の研磨速度とした。後期研磨速度は12枚目の研磨速度とした。そして、研磨速度維持率は下記式により算出した。
研磨速度維持率(%)=[1−{(初期研磨速度−後期研磨速度)/初期研磨速度}]×100
Cu膜の膜厚測定には、非接触抵抗測定システム(ナプソン社製、Model−NC−80M)を用いた。研磨条件としては、スラリーとして、Cu用中性スラリー(フジミインコーポレット社製、PL7101)に過酸化水素を1重量%添加したものを研磨中に流量200ml/minにて添加した。研磨荷重としては2psi、研磨定盤回転数70rpm、ウエハ回転数70rpmとした。なお、作製した研磨パッドをプラテンに貼付後に、ダイヤモンド砥粒ディスク(旭ダイヤ社製、M#100)を用いて研磨パッド表面を30分間ドレス処理した。ドレス処理条件は、ディスク荷重0.6psi、研磨定盤回転数30rpm、ディスク回転数15rpmとした。
【0070】
実施例1
容器にトルエンジイソシアネート(2,4−体/2,6−体=80/20の混合物)1173重量部、イソホロンジイソシアネート264重量部、一般式(1)で表されるポリシロキサン基含有ジオールA(チッソ株式会社、FM−DA11、R:ブチル基、m:3、重量平均分子量:1000、水酸基価:112.2mgKOH/g)48重量部、重量平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール1638重量部、重量平均分子量650のポリテトラメチレンエーテルグリコール283重量部、及びジエチレングリコール195重量部を入れ、70℃で4時間反応させてイソシアネート末端プレポリマーA(NCOwt%:9.25wt%)を得た。
前記プレポリマー100重量部、及びシリコン系界面活性剤(ゴールドシュミット社製、B8465)3重量部を重合容器内に加えて混合し、70℃に調整して減圧脱泡した。その後、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように激しく約4分間撹拌を行った。そこへ予め120℃に溶融した4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)26.4重量部を添加した(NCO Index:1.1)。該混合液を約70秒間撹拌した後、パン型のオープンモールド(注型容器)へ流し込んだ。この混合液の流動性がなくなった時点でオーブン内に入れ、100℃で16時間ポストキュアを行い、ポリウレタン発泡体ブロックを得た。
約80℃に加熱した前記ポリウレタン発泡体ブロックをスライサー(アミテック社製、VGW−125)を使用してスライスし、ポリウレタン発泡体シートを得た。次に、バフ機(アミテック社製)を使用して、厚さ1.27mmになるまで該シートの表面バフ処理をし、厚み精度を整えたシートとした。このバフ処理をしたシートを直径61cmの大きさで打ち抜き、溝加工機(テクノ社製)を用いて表面に溝幅0.25mm、溝ピッチ1.50mm、溝深さ0.40mmの同心円状の溝加工を行い、研磨層を得た。この研磨層の溝加工面と反対側の面にラミ機を使用して、両面テープ(積水化学工業社製、ダブルタックテープ)を貼りつけた。更に、コロナ処理をしたクッションシート(東レ社製、ポリエチレンフォーム、トーレペフ、厚み0.8mm)の表面をバフ処理し、それを前記両面テープにラミ機を使用して貼り合わせた。さらに、クッションシートの他面にラミ機を使用して両面テープを貼り合わせて研磨パッドを作製した。
【0071】
実施例2〜5、比較例1〜4
表1に記載の配合を採用した以外は実施例1と同様の方法で研磨パッドを作製した。ただし、比較例2においては、ポリシロキサン基含有ジオールをイソシアネート末端プレポリマーに導入せずに、硬化時に4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)と共に添加した。表1中のポリシロキサン基含有ジオールB及びCは以下のとおりである。
一般式(1)で表されるポリシロキサン基含有ジオールB(チッソ株式会社、FM−DA21、R:ブチル基、m:3、重量平均分子量:5000、水酸基価:22.4mgKOH/g)
一般式(1)で表されるポリシロキサン基含有ジオールC(チッソ株式会社、FM−DA26、R:ブチル基、m:3、重量平均分子量:15000、水酸基価:7.5mgKOH/g)
【0072】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の研磨パッドは、レンズ、反射ミラー等の光学材料やシリコンウエハ、ハードディスク用のガラス基板、アルミ基板、及び一般的な金属研磨加工等の高度の表面平坦性を要求される材料の平坦化加工に用いられる。特に本発明の研磨パッドは、ウエハ上にCu膜(Cu合金膜を含む)が形成された半導体デバイスを平坦化してCu配線パターンを形成する工程において好適に用いられる。
【符号の説明】
【0074】
1:研磨パッド(研磨層)
2:研磨定盤
3:研磨剤(スラリー)
4:研磨対象物(半導体ウエハ)
5:支持台(ポリシングヘッド)
6、7:回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的発泡法により得られるポリウレタン樹脂発泡体からなる研磨層を有する研磨パッドにおいて、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、イソシアネート成分、高分子量ポリオール、及び下記一般式(1)で表されるポリシロキサン基含有ジオールを含有してなるイソシアネート末端プレポリマーと、鎖延長剤とを含むポリウレタン原料組成物の反応硬化体であり、
前記ポリシロキサン基含有ジオールの含有量は、ポリウレタン原料組成物中に1〜5重量%であることを特徴とする研磨パッド。


(式中、Rは炭素数が1〜12のアルキル基であり、nは10〜380の整数であり、mは1〜12の整数である。)
【請求項2】
ポリシロキサン基含有ジオールの水酸基価が、7〜120mgKOH/gである請求項1記載の研磨パッド。
【請求項3】
イソシアネート末端プレポリマーを含む第1成分と鎖延長剤を含む第2成分とを混合し、硬化してポリウレタン樹脂発泡体を作製する工程を含む研磨パッドの製造方法において、
前記工程は、イソシアネート成分、高分子量ポリオール、及び下記一般式(1)で表されるポリシロキサン基含有ジオールを含有してなるイソシアネート末端プレポリマーを含む第1成分にシリコン系界面活性剤を第1成分及び第2成分の合計重量に対して0.05〜10重量%になるように添加し、さらに前記第1成分を非反応性気体と撹拌して前記非反応性気体を微細気泡として分散させた気泡分散液を調製した後、前記気泡分散液に鎖延長剤を含む第2成分を混合し、硬化してポリウレタン樹脂発泡体を作製する工程であり、
前記ポリシロキサン基含有ジオールの含有量は、第1成分及び第2成分の合計重量に対して1〜5重量%であることを特徴とする研磨パッドの製造方法。


(式中、Rは炭素数が1〜12のアルキル基であり、nは10〜380の整数であり、mは1〜12の整数である。)
【請求項4】
請求項1又は2記載の研磨パッドを用いて半導体ウエハの表面を研磨する工程を含む半導体デバイスの製造方法。



【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−52492(P2013−52492A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193970(P2011−193970)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】