説明

研磨パッド及び製造方法

【課題】研磨組成物を使用するCMP加工で基材を平坦化するのに有用な、ポリマーカプセルを埋め込まれた研磨パッドを製造する方法を提供する。
【解決手段】ポリマーよりなるマトリックス材料11中にポリマーシェル内に液状コアを封止したポリマーカプセル30を分散させる工程、それを用いて研磨パッド10を形成する工程とからなる。研磨面40に位置するポリマーシェルが破裂することで研磨に必要な表面凹凸35を研磨パッド表面に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ケミカルメカニカルプラナリゼーション(「CMP」)加工を使用して基材を研磨し、平坦化するのに有用な研磨パッドの製造方法に関する。特に、本発明の方法は、同一パッド内の均一さ及びパッド間の均一さを改善する。
【0002】
集積回路及び他の電子装置の作製においては、導体、半導体及び絶縁材料の多数の層を半導体ウェーハの表面に付着させたり、同表面から除去したりする。導体、半導体及び絶縁材料の薄い層は、多様な付着技術によって付着させることができる。最新の加工における一般的な付着技術としては、スパッタリングとしても知られる物理蒸着法、化学蒸着法、プラズマ増強化学蒸着法及び電気化学的めっき法がある。
【0003】
材料層が順次、付着され、除去されるにつれ、ウェーハの一番上の表面が平坦でなくなる。後続の半導体加工(たとえばメタライゼーション)はウェーハが平坦面を有することを要するため、ウェーハは平坦化されていなければならない。望ましくない表面トポグラフィー並びに表面欠陥、たとえば粗面、凝集した材料、結晶格子の損傷、スクラッチ及び汚染された層若しくは材料を除去するのにはプラナリゼーションが有用である。
【0004】
典型的なCMP加工では、円形の回転プレートを有する下部のプラテンが研磨パッドを保持し、研磨パッドは、その研磨面が上を向くように取り付けられる。基材と相互作用する薬品を通常は含有し、砥粒を含有することもできる研磨組成物が研磨パッドの表面に供給される。回転キャリヤを有する上部のプラテンが基材を保持し、基材は、平坦化される表面が下を向くように保持される。キャリヤは、その回転軸が研磨パッドの回転軸と平行であり、かつそれから外れるように配置される。さらには、キャリヤは、CMP加工に適切であるように、研磨パッドの表面を中心に振動又は他のやり方で動かされることができる。基材と研磨パッドとは、上部のプラテンによる下向き圧力によって接触させられ、押し合われ、それにより、研磨パッドの表面の研磨組成物が基材の表面(作用環境)と接触して所望の化学反応を生じさせ、メカニカル研磨が起こる。
【0005】
場合によっては、CMP加工は、所望の量の材料が基材の表面から除去された時点を決定するために、全体を通じて絶えずモニタリングされる。これは典型的には、レーザ光をプラテン側から研磨パッド中の開口又は窓に通して投射して、そのレーザ光が基材の被研磨面から反射し、検出器によって測定されるようにすることを含む、インサイチュ光学終点検出によって実施される。反射する光の量は、基材の表面から除去された材料の量に対応する。検出された光の量が所定の値に等しい場合、CMP加工は所望の終点に達しており、CMP加工を止める。
【0006】
研磨パッドは、多様な方法で、たとえばケークを流込み成形する方法又はシートを流込み成形する方法によって製造することができる。典型的な製造法では、一種以上のプレポリマー、架橋剤、硬化剤及び砥粒を含むことができるポリマーパッド材料成分を混合して樹脂を得る。この樹脂を、流込み、ポンプによって、又は射出などにより、型に移す。ポリマーは通常、速やかに硬化し、最終的にはオーブンに移して硬化工程を完了させることができる。そして、硬化したケーク又はシートを所望の厚さ及び形状にカットする。
【0007】
研磨パッド表面の凹凸がCMP加工中の研磨組成物の輸送を支援し、このような凹凸は、研磨パッドの研磨面上に多くの方法で形成することができる。米国特許第5,578,362号に開示されている一つの方法によると、表面の凹凸は、ポリマーマトリックスを含む研磨パッドに中空のポリマーカプセルを埋め込むことによって形成される。具体的には、表面の凹凸は、カプセルを破裂させ、その中に含まれる空隙を研磨パッドの表面上の作用環境にさらすことによって形成される。これは、研磨パッドをコンディショニングすることによって達成される。
【0008】
通常、コンディショニングは、コンディショニングパッドのコンディショニング面に埋め込まれたダイアモンドポイント(又は他の引っかき若しくは切削手段)を用いて研磨パッドの研磨面を摩耗させることからなる。コンディショニングされたパッドが使用されるにつれ、ポアは損耗し、CMP加工からの研磨くず(debris)で目詰まりする。この結果、使用とともに研磨パッドは表面の凹凸を失う。凹凸は、CMP加工中に研磨面が摩耗するとき、連続的又は完結的なコンディショニングによって再生することができる。凹凸はまた、研磨中に、埋め込まれたポリマーカプセルが露出し、破裂するときに、コンディショニングパッドなしで再生することもできる。便宜上、「コンディショニング」とは、新たな空洞を露出させるパッドの摩耗によるか、コンディショニングパッドの使用によるか、他の再生技術によるかにかかわらず、表面凹凸の再生をいう。
【0009】
溝の導入によって大規模テクスチャ(large-scale texture)が研磨パッドの研磨面に形成される。溝パターン設計及び溝寸法が、研磨パッド特性及びCMP加工特性に影響する。研磨パッドの溝付けは当該技術で周知であり、公知の溝設計としては、半径方向、円形、らせん、x−yなどがある。通常、溝は、研磨パッドの研磨面が形成されたのち、機械的手段によって、たとえば直線的なブレード(たとえばたがね)又は他の切削手段によって研磨パッドの研磨面に導入される。
【0010】
しかし、第5,578,362号特許にしたがって製造された研磨パッドは、カプセルが膨張する傾向を抱えている。ポリマーカプセルは、硬化過程で発熱硬化反応によって加熱されると、膨張する。膨張の量は二つの理由から制御しがたい。熱によるカプセルの膨張は、温度が高まるときの圧力増に耐えるシェルの能力によって大きく制御され、このシェルの能力は逆にとりわけシェルの厚さに依存する。シェルは通常、非常に薄く、そのため、シェル厚さにおける非常に小さな変化が、膨張における大きな割合の差及び大きな相対的差となって現れる。
【0011】
カプセル膨張を制御しがたくする他方の要因は示差加熱の影響である。示差加熱は、ポリマーカプセルが断熱材として作用して、温度が高めの区域から温度が低めの区域への熱の流れを減らすために起こる。表面に近いケーク又はシートの区域(空気又は型にさらされる区域)は、熱を周囲環境に伝え、冷める。しかし、ケーク又はシートの中心は断熱され、反応からの熱が蓄積する。結果として、空気又は型そのものにさらされる区域よりも型の中心でより大きなカプセル膨張が起こる。カプセルの不均一な膨張は、結果として、欠点であるところの不均一なパッド気孔率、ひいては不均一なパッド密度を生じさせる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、製品の均一さ及び加工の一貫性を改善する、研磨パッドを製造する方法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第一の態様は、研磨組成物を使用するケミカルメカニカルポリッシング加工で基材を研磨するのに有用な研磨パッドを製造する方法であって、ポリマーマトリックス材料を用意する工程、ポリマーシェル及び前記ポリマーシェル内に含まれる液状コアを含むポリマーカプセルをポリマーマトリックス材料に混入して、前記ポリマーカプセルを前記ポリマーマトリックス材料中に分散させる工程、並びに研磨パッドを形成する工程を含み、前記研磨パッドが、形成されたポリマーマトリックス材料中に分散した前記ポリマーカプセルを有し、前記ポリマーシェルが、形成中に前記液状コアを保持して前記ポリマーマトリックス材料との接触を防ぎ、基材を研磨するための表面凹凸を形成するために破裂する研磨面を有するものである方法を提供する。
【0014】
本発明の第二の態様は、研磨組成物を使用するケミカルメカニカルポリッシング加工で基材を研磨するのに有用な研磨パッドであって、ポリマーカプセルを含有するポリマーマトリックス材料を含み、前記ポリマーカプセルが、ポリマーシェル及び前記ポリマーシェル内に含まれる液状コアを含むものであり、前記ポリマーシェルが、形成中に前記液状コアが前記ポリマーマトリックス材料と接触することを防ぎ、コンディショニング中に破裂して表面凹凸を形成するためのものであり、さらに、前記ポリマーマトリックス材料及び埋め込まれたポリマーカプセルの露出した空洞によって画定される凹凸を含む研磨面を含む研磨パッドを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、容易さ及び効率を高めた、ケミカルメカニカルポリッシング加工で基材を平坦化するのに有用な研磨パッドの製造方法を提供する。
【0016】
図1を参照すると、本発明の研磨パッド10がプラテン50に取り付けられた状態で示されている。研磨パッド10は、基材20、たとえばパターン付けされたシリコンウェーハと接する研磨面40を有する。また、図2でさらに詳細に示す研磨パッドの領域12が示されている。
【0017】
次に図2を参照すると、方法は、ポリマーマトリックス材料11を用意し、ポリマーカプセル30をポリマーマトリックス材料11に混入し、研磨パッド10を形成することを含む。特に、ポリマーカプセル30は、ポリマーシェル31(図3)及び液状コア32を有する。ポリマーカプセル30は、増大した密度及び製造工程で熱にさらされたときの膨張に対する増大した耐性を有する。結果として、パッドが形成される前にポリマーカプセル30がポリマーマトリックス材料11中で浮遊したり沈降したりする傾向が減り、また、ポアサイズについてのパッド内のばらつきが小さくなる。これは、より遅い硬化反応及びそれに対応する、より少ない熱を発生させる、より長い硬化時間を使用して製造工程を実施することを可能にする。
【0018】
ポリマーマトリックス材料11は、熱可塑性材料、たとえば熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリブタジエン、エチレン−プロピレンターポリマー、ポリカーボネート及びポリエチレンテレフタレート並びにそれらの混合物を含むことができる。加えて、マトリックス材料11は、熱硬化性材料、たとえば架橋ポリウレタン、エポキシ、ポリエステル、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリブタジエン及びそれらの混合物を含むことができる。ポリマーマトリックス材料11は、好ましくはポリウレタンを含み、より好ましくは架橋ポリウレタンを含み、たとえばRohm and Haas Electronic Materials CMP Technologies製のIC1000(商標)及びVisionPad(商標)研磨パッドを含む。ポリマーマトリックス材料は、固相、たとえば成形、焼結又は接着のための粒子であってもよし、流動相、たとえば液状プレポリマーブレンドであってもよい。好ましくは、ポリマーマトリックス材料11は、ポリマーカプセル30との混合を促進するため、流動相である。
【0019】
ポリマーシェル31は、熱可塑性材料、たとえば熱可塑性ポリ(塩化ビニリデン)PDVC、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリブタジエン、エチレン−プロピレンターポリマー、ポリカーボネート及びポリエチレンテレフタレート並びにそれらの混合物を含むことができる。加えて、ポリマーシェル31は、熱硬化性材料、たとえば架橋ポリウレタン、エポキシ、ポリエステル、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリブタジエン及びそれらの混合物を含むことができる。好ましくは、ポリマーシェル31はPDVCを含む。形成の前に、ポリマーマトリックス材料11は水と反応して、望ましくない発泡を生じさせる。好ましくは、ポリマーシェル31は非孔質であり、パッドが形成又は硬化する前に液状コア32がポリマーマトリックス材料11と接することを防ぐ。しかし、形成後は、ポリマーマトリックス材料11は、好ましくは、液状コアとは反応せず、ポリマーシェル31は、液状コア32がポリマーマトリックス材料11と接することを防ぐ必要はない。液状コア32がポリマーシェル31中に浸透又は拡散し、ポリマーマトリックス材料11によって吸収されてもよいし、ポリマーシェル31が溶解してもよい。シェルは典型的には、厚さが10nm〜2μmである。好ましくは、シェルは、厚さが25nm〜1μmである。
【0020】
液状コア32は、水性又は非水性の液体、たとえばアルコールを含むことができる。好ましくは、液状コアは、水溶液、たとえば有機若しくは無機塩の水溶液、プレポリマー若しくはオリゴマーの水溶液又は水溶性ポリマーの水溶液を含む。場合によっては、液状コアはまた、CMP加工のための試薬を含有することもできる。もっとも好ましくは、液状コアは、不可避的な不純物しか含まない水、たとえば不可避的な溶存ガスを含む脱イオン水である。通常、研磨組成物(図示せず)は水性であり、CMP加工に望まれる薬品を含有する。研磨中に研磨パッドがコンディショニングされるか、溶解するか、又は損耗すると、ポリマーカプセルが破裂し、液状コアが脱出し、研磨組成物と混合することができる。液状コアが、薬品と反応したり、研磨組成物の研磨特性を他のやり方で変化させたりすることにより、研磨組成物に悪影響を及ぼすことは不都合である。好ましくは、液状コアは水性溶液である。液状コアは、より好ましくは不可避的な不純物しか含まない水であり、もっとも好ましくは脱イオン水である。理由は、脱イオン水は、研磨パッド、研磨組成物又は基材と相互作用するリスクが低いからである。好ましくは、ポリマーシェルは、研磨中に損耗してポリマーカプセルを破裂させ、かつ研磨加工に干渉又は悪影響を及ぼさないよう、ポリマーマトリックス材料よりも耐摩耗性が低い。
【0021】
ポリマーマトリックス材料とポリマーカプセルとは、従来の方法、たとえば攪拌又はドライフィード法によって混合することができる。ポリマーマトリックス材料が流動相にある間に混合が実施されるならば、ポリマーカプセルとポリマーマトリックス材料との密度における差がポリマーカプセルを浮遊させる。流動相におけるポリマーマトリックス材料の粘度及びポリマーマトリックスとポリマーカプセルとの密度における相対的差に依存して、混合物は分離しうる。分離を避けるために、混合物を攪拌又は再循環させてポリマーマトリックス中のポリマーカプセルの分散を維持してもよい。あるいはまた、ポリマーカプセルの密度を高めて浮遊効果を減らすこともできる。典型的には、ポリマーシェルとポリマーマトリックス材料とは近い密度を有し、ポリマーシェルは薄い。本発明のポリマーカプセルは、液状コアが大きめの密度を有するため、ポリマーマトリックス材料の密度により近い密度を有する。好ましくは、ポリマーカプセルは、ポリマーマトリックス材料の密度の50%以内の密度を有する。より好ましくは、ポリマーカプセルは、ポリマーマトリックス材料の密度の30%以内の密度を有する。もっとも好ましくは、ポリマーカプセルは、ポリマーマトリックス材料の密度の15%以内の密度を有する。本明細書に関して、以下が真であるならば、密度d1(シェル及び液状コアを含むカプセル)は、第二の密度d2(ポリマーマトリックス材料)の一定の%、すなわちx%以内である。
(d1(1−(x/100)))≦d2≦((1+(x/100))d1)
さらには、本発明に関して、密度は、ポリマーカプセルをポリマーマトリックス材料に混入する直前のポリマーマトリックス及びポリマーカプセルの密度を表す。たとえば、ポリマーカプセルを液状プレポリマーブレンドに加える場合には、プレポリマーへの導入の前に、ポリマーマトリックスへと硬化する液状プレポリマーの密度測定及びポリマーカプセルの密度測定を実施する。これらの流込み成形研磨パッドの場合、カプセルの密度を液状プレポリマーに合致させることは、不均一な研磨パッドにつながるおそれのあるカプセルの沈降又は浮遊を減らすことにより、長い硬化サイクルを要するポリマーを使いやすくする。場合によっては、成分のプレミックスがポリマーカプセルの分散を改善することもできる。
【0022】
浮遊による分離に加えて、ポリマーマトリックス材料中のポリマーカプセル分散の不均一さは、製造法における混合工程から生じることもある。一般的な方法では、ポリマーカプセルは、垂直タンク又はホッパに貯蔵され、たとえばマスフローフィード送出しシステムにおいて重力によって吐き出される。ポリマーカプセルが、たとえば従来技術のように中空のコアを有する場合、規則的又は均一には流れない。中空のカプセルは、重力の下で均一に流れるには質量が十分である。液状コアを有する本発明のポリマーカプセルは、中空のコアを有する同じサイズのカプセルよりも大きな密度、ひいては大きな質量を有する。このより大きな密度及び質量が、ポリマーカプセルが重力の下でより均一かつ規則的に流れることを許す。ポリマーカプセルがより均一に流れるならば、ポリマーカプセルがポリマーマトリックス材料の流れに供給されたとき、より均一な分散が達成される。
【0023】
ポリマーマトリックス材料へのポリマーカプセルの分散の不均一さを減らすもう一つの方法は、ポリマーカプセルの流動性が制御されるマスフローフィード送出しシステムの使用による方法である。ポリマーカプセルを、均一に流れさせることができ、それにより、ポリマーカプセルを流動化させることにより、ポリマーマトリックス材料中に均一に供給することができる。一つの方法によると、これは、ガスの流れを均一に供給してポリマーカプセルに通すことによって実施することができる。このガスの流れがポリマーカプセル間の間隔を増し、それがポリマーカプセルの流れに対する抵抗を減らす。ひとたびポリマーカプセルが流動化すると、それらを一定の速度でポリマーマトリックス材料の流れに送り込むことができる。これは、ポリマーカプセルをポリマーマトリックス材料中に高い均一度で分散させる効果を有する。
【0024】
研磨パッド10は、従来の方法、たとえば流込み成形、射出成形、同軸射出成形、押出成形、焼結、接着などによって形成することができる。好ましくは、研磨パッド10は、シート又はケークを流込み成形することによって形成される。研磨パッド10がそのように形成されると、混合物を、注型又は射出により、開放型でも密閉型でもよい型に移す。場合によっては、シートを連続的に流込み成形してロールにして生産速度を高める。そして、混合物を、好ましくは、光活性化、熱活性化、時間活性化又は化学活性化することができる硬化剤の使用によって硬化させる。ひとたび硬化したならば、バッチを型から取り出し、機械的手段、たとえばスカイビング若しくは打抜き又はレーザカットによって個々の研磨パッドに切断する。場合によっては、研磨パッドは、混合物を型に流し込み、硬化させ、スカイビングすることによって形成される。液状コアは、ポリマーケークの流込み成形から起こるおそれのあるパッド間のばらつきを抑制するのに特に有用である。たとえば、ケークの中心部及び頂部を加熱することができる発熱反応は、ガス充填カプセルの場合よりも液体充填カプセルの場合に少ない熱膨張を提供する。
【0025】
研磨パッドはまた、インサイチュ光学終点検出装置で使用するための開口又は窓を含むこともできる。開口は、たとえば成形によって形成工程で導入することもできるし、形成された研磨パッドの一部をたとえば切削によって除去することによって形成することもできる。同様に、窓は、成形によって1つの工程で含めることもできるし、研磨パッドが形成したのち接着によって加えることもできる。場合によっては、研磨パッドは、開口又は窓を有しなくてもよいし、研磨パッドの少なくとも一部で透明であってもよい。本発明にしたがって透明な窓を形成するためには、入射光がカプセル−コア界面に遭遇したときにも実質的に散乱又は屈折せず、研磨パッドを透過するような液状コアを選択することができる。透明な研磨パッドの場合、透明なサブパッド又は光学シグナルを自由に通過させる開口を有するサブパッドを使用することが好ましい。さらには、特定の領域でパッドを溝なしに残すことがシグナル強度を改善することができる。
【0026】
本発明のポリマーカプセルは、研磨パッドを形成したのち液状コアを有することができ、したがって、断熱材としては作用しない。これらのポリマーカプセルは、研磨パッド内の温度が高めの領域から温度が低めの領域へと熱をより効果的に伝達して、示差加熱を減らすことができる。さらには、ポリマーカプセルが液状コアを有するために、ポリマーカプセルは膨張に抵抗し、その結果、より予測可能かつ制御可能なポアサイズを完成品研磨パッドに与える。好ましくは、ポリマーカプセルの直径は、製造工程で20%未満しか拡大しない。より好ましくは、ポリマーカプセルの直径は、製造工程で15%未満しか拡大しない。もっとも好ましくは、ポリマーカプセルの直径は、製造工程で10%未満しか拡大しない。
【0027】
しかし、研磨パッドの温度が液状コアの沸点を超える場合、液体充填ポリマーカプセルは有意に膨張することがある。研磨パッドが達する温度は、ポリマーマトリックス材料の硬化工程に伴うポリマー化学反応によって決まる。所与のポリマーマトリックス材料の製造工程中に達する温度を超える沸点を有する液状コアを選択することにより、又は発熱エネルギーがより少ないプレポリマー、たとえば硬化サイクルが長いプレポリマーを使用することにより、ポリマーカプセルの膨張を回避又は減少することができる。さらには、ポリマーカプセルの液状コアは、研磨パッドのきれいな切断を容易にすることにより、円形の旋盤又は高速ビットによる溝付けのための機械加工時間を減らすことができる。最後に、液状コアは、溝及び穿孔の側壁の溶融を減らすことにより、レーザ溝付けを改善することができる。
【0028】
カプセル膨張及び密度不均一を減らすことに加え、熱を伝達する液状コアの能力は、溝付け工程中のポリマーマトリックス材料の溶融又は炭化を軽減又は解消するように働く。液状コアは、形成中に溝の周囲のポリマーマトリックス材料を、その領域から熱を引き離すことによって冷ますように働き、研磨パッドの熱質量を高めるように作用して、ポリマーマトリックス材料の温度上昇を下げる。したがって、本発明の研磨パッドは、空冷又は実質的な量の水の導入を要することなく、より少ない溶融又は炭化で溝付けすることができる。
【0029】
再び図2を参照すると、コンディショニング中に研磨面40又はその近くのポリマーカプセルが破裂すると、研磨面40にポア35が形成する。研磨組成物が液状コア32を押し退け、ポア35を埋める。すると、ポア35は、研磨組成物を輸送するように作用する。ポア35のサイズが研磨組成物の輸送に影響する。
【0030】
図3は、ポリマーカプセル30の拡大図を示す。ポリマーカプセル30は、ポリマーシェル31及び液状コア32を含み、直径Dを有する。ポリマーシェルは厚さTを有する。厚さTは、ポリマーカプセル30の直径Dと比べて相対的に小さく示されている。好ましくは、ポリマーカプセル30は、直径Dが1μm〜150μmである。より好ましくは、ポリマーカプセル30は、直径が2μm〜75μmである。好ましくは、ポリマーシェル31は、厚さTが0.01μm〜5μmである。より好ましくは、ポリマーシェル31は、厚さTが0.05μm〜2μmである。
【0031】
本発明の方法は、有利な研磨特性を、容易さの増大並びに製造費及び廃棄物の減少というさらなる利点とともに提供する、均一さが改善された一体化テクスチャを有する研磨パッドを提供する。特に、研磨パッドの液状コアは、流込み成形中の熱膨張を抑制して、研磨パッドの至る所で均一な気孔率を提供することができる。さらには、液状コアは、ポリマーケークを流込み成形することから生じるおそれのあるパッド間のばらつきを抑制するのに特に有用である。さらには、ポリマーカプセルへの液状コアの添加は、ケミカルメカニカルポリッシングには不適な光学的に不透明な研磨パッドを、光学シグナル、たとえばレーザによって発されるシグナルによる終点検出に適した光学的に透明な研磨パッドに変えることができる。加えて、液状コアはパッドの剛性を高め、それがパッドの平坦化能力を改善することができる。さらには、液状コアは、ガス充填ポリマーカプセルに比べてパッドの熱伝導率を改善する。最後に、液状コアは、溝を切るための、特に複雑な溝、たとえば変則的な半径方向溝を切る場合の研磨パッドの機械加工性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】CMP加工で使用される本発明の研磨パッドを示す部分平面図である。
【図2】図1の領域12を表す研磨パッドの断面図である。
【図3】図2の液体充填ポリマーカプセルの略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨組成物を使用するケミカルメカニカルポリッシング加工で基材を研磨するのに有用な研磨パッドの製造方法であって、
ポリマーマトリックス材料を用意する工程、
ポリマーシェル及び前記ポリマーシェル内に含まれる液状コアを含むポリマーカプセルを、ポリマーマトリックス材料に混入して、前記ポリマーカプセルを前記ポリマーマトリックス材料中に分散させる工程、及び
研磨パッドを形成する工程
を含み、前記研磨パッドが、形成されたポリマーマトリックス材料中に分散した前記ポリマーカプセルを有し、前記ポリマーシェルが、形成中に前記液状コアを保持して前記ポリマーマトリックス材料との接触を防ぎ、基材を研磨するための表面凹凸を形成するために破裂する研磨面を有するものである方法。
【請求項2】
前記研磨パッドを形成する工程が、前記ポリマーマトリックス材料を型に入れて硬化させる工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記研磨パッドを形成する工程が、ポリマーマトリックス材料のシートを流込み成形する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ポリマーカプセルを前記ポリマーマトリックス材料に混入する工程が、前記ポリマーカプセルを流動化する工程及び流動化したポリマーカプセルを前記ポリマーマトリックス材料に供給する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーマトリックス材料が、混入の前に測定される第一の密度を有し、前記ポリマーカプセルが、前記第一の密度の30%以内である、混入の前に測定される第二の密度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーマトリックス材料が液体である状態で混入を実施する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記液状コアが、不可避的な不純物を含む水である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
研磨組成物を使用するケミカルメカニカルポリッシング加工で基材を研磨するのに有用な研磨パッドであって、
ポリマーカプセルを含有するポリマーマトリックス材料を含み、
前記ポリマーカプセルが、ポリマーシェル及び前記ポリマーシェル内に含まれる液状コアを含むものであり、前記ポリマーシェルが、形成中に前記液状コアが前記ポリマーマトリックス材料と接触することを防ぎ、コンディショニング中に破裂して表面凹凸を形成するためのものであり、さらに、
前記ポリマーマトリックス材料及び埋め込まれたポリマーカプセルの露出した空洞によって画定される凹凸を含む研磨面を含む研磨パッド。
【請求項9】
前記液状コアが、不可避的な不純物を含む水である液体を含む、請求項8記載の研磨パッド。
【請求項10】
前記ポリマーシェルが、硬化したポリマーマトリックス材料よりも耐摩耗性が低い材料を含む。請求項8記載の研磨パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−53384(P2007−53384A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−222863(P2006−222863)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(504089426)ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】