説明

研磨剤及び研磨方法

【課題】SiO層に対しては高い研磨速度で、SiN層に対しては低い研磨速度となり、SiO層に対して高い研磨選択性を有する研磨剤を提供する。
【解決手段】可溶性マンガン化合物の対イオンからなる不純物濃度が0.5重量%以下のマンガン酸化物を砥粒とする研磨剤であり、特に金属マンガンの加水分解反応により生成する水酸化マンガンを酸化して得た四三酸化マンガンを焼成した酸化マンガンを砥粒とする研磨剤を用いる。得られた酸化マンガンは粉砕、解砕することが好ましい。これらの研磨剤を用いた研磨方法では、SiOに対して高い研磨選択性(対SiN)を有するため、半導体基板上の層間絶縁膜の研磨に優れる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は酸化マンガンを砥粒とする研磨剤及びそれを用いた研磨方法に関するものであり、特にSi4+とO2−を主成分とする物質(以後、SiO層とする)の表面層を研磨するのに優れた研磨剤及び研磨方法に関するものである。更に詳しくは、半導体集積化における多層配線工程の層間絶縁膜及び素子分離形成の平坦化に適用される化学的機械的研磨技術(CMP)に用いられる研磨剤及びそれを用いた研磨方法に関するものである。
【0002】
近年の情報化技術の急速な発展により、デジタル家電製品、モバイルパソコン、携帯機器等の小型化要求に対応し、半導体デバイス(LSI、ULSI、VLSI等)の高集積化が不可欠となり、配線の高密度化及び多層配線化が行われている。
【0003】
高密度化及び多層配線化においては、積層するAl及びCu等の配線層、及びTEOS等の有機シランを原料とした酸化シリコン膜及び低誘電率膜(Low−k)である絶縁層の高平坦化が非常に重要となる。この高精度の平坦化を行う技術としてはCMP(Chemical Mechanical Polishing)が必要不可欠とされている。また、半導体デバイスの高集積化に伴い個々のメモリセルを小さくすることも不可欠であり、隣接する素子間を電気的に絶縁分離する微細な素子分離技術が重要となる。この素子分離はシャロートレンチアイソレーション(STI)と称する浅溝方式が主流であり、この平坦化にもCMPが適用されている。
【0004】
CMPは、通常、除去したい配線層及び絶縁層と化学的に反応する化学種及び機械的に作用する研磨砥粒を含むスラリーを、スラリー供給ノズルからポリシングパッドを貼付した定盤に一定供給し、被研磨体を装着したワークプレートと修正リングを有する研磨ヘッドを一定荷重でパッドに押圧し、定盤と研磨ヘッドの回転相対運動により目的とする配線層及び絶縁層を研磨、除去して平坦化する方法である。図1に研磨装置の概要を示す。
【0005】
CMPを用いて平坦化を行う場合、研磨除去する目的材料に適応した研磨用スラリーが用いられる。例えば、被研磨体が配線材料であるAl或はCu等の金属層の場合、金属と化学的に作用する酸、酸化剤並びに腐食抑制剤及び機械的に作用するシリカ、アルミナ等の砥粒を含有するスラリーが適用される。一方、SiO層の研磨用スラリーとしては、機械的な研磨作用を有するコロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、アルミナ及び酸化セリウム等の砥粒をSiO層が研磨されやすい中性からアルカリ性の水溶媒中に添加したものが一般的に用いられている。特に、酸化セリウムは、機械的研磨作用ばかりでなく化学的研磨作用も発現するため加工速度が大きく、STI加工研磨に要求されるSiO層の研磨選択性(SiO層の加工速度が高く、下地にあるSiN層に対する加工速度が低いこと)に比較的優れるため、近年、SiO層研磨に用いる砥粒の主流となりつつある。しかし、酸化セリウム砥粒は半導体用研磨剤として用いるには高純度化が必要であり、価格が高く、必ずしも当該用途において要求を十分に満足するものではなかった。
【0006】
一方、酸化セリウムと同様な効果を発現する砥粒として、酸化マンガンを砥粒とする研磨剤が知られている。酸化マンガンを研磨用砥粒とするスラリーとしては、例えば、Mnイオンを含む電解質溶液を電気分解して陽極上に析出したMnOの塊を500℃〜900℃で加熱し、形成されたMnを粉砕し、その粒子を研磨剤とする方法が開示されている(特許文献1参照)。また、Mn、Mn、およびその混合物より選ばれる砥粒を含む研磨剤及び、MnOよりなる砥粒の表面にMn或いはMnを形成する酸化還元電位及びpHを有する溶剤とを含む研磨剤が開示されている(特許文献2参照)。
【0007】
しかし、電気分解により得られたMnOの塊を焼成、粉砕して得たMnを砥粒とした場合、SiO層に対する加工性は出現するものの、酸化セリウムに比較してまだ十分な加工速度、加工特性とは言えなかった。さらに、塊状のMnOの焼成により粒子間の結合が生じ、粒度の均一性が損なわれることがあった。
【0008】
従って、SiO層とSiNの研磨に対し、より優れた研磨特性が得られる研磨剤の開発が切望されていた。
【0009】
【特許文献1】特開平10−60415号公報(請求項1〜請求項3)
【特許文献2】特開平10−72578号公報(請求項1、請求項2及び8頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、SiO層とSiN層の研磨加工において、SiO層の高速研磨及び選択研磨性に優れ、なおかつ経済的な研磨剤及びそれを用いた研磨方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意検討を行なった結果、マンガン酸化物の研磨剤の研磨特性において、研磨剤の純度が影響することを見出し、可溶性マンガン化合物の対イオン濃度からなる不純物が0.5重量%以下のマンガン酸化物、特に金属マンガンの加水分解反応で生成する水酸化マンガンを酸化して得られるMnを焼成して得られるマンガン酸化物を砥粒とする研磨剤では、SiO層に対して高い研磨加工性を有し、SiN層に対しては低研磨加工性となり、結果的にSiO層の高い研磨選択性(SiO層研磨速度/SiN層研磨速度)が得られることを見出し、本発明を解決するに至ったものである。
【0012】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
【0013】
本発明は、可溶性マンガン化合物の対イオンからなる不純物が0.5重量%以下のマンガン酸化物を、焼成して得られる純度の高いマンガン酸化物を砥粒として含んでなる研磨剤である。
【0014】
本発明に用いられる可溶性マンガン化合物には、一般的な水溶性のマンガン塩を示すものが使用でき、例えば、硫酸マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン及び蓚酸マンガン等を挙げる事ができる。
【0015】
ここで、本発明でいう対イオンからなる不純物(即ち、原料として用いるマンガン塩のマンガンの対イオンに起因する不純物)とは、硫酸イオン、塩素イオン、硝酸イオン、酢酸イオン及び蓚酸イオン等が例示できる。
【0016】
本発明のマンガン酸化物の対イオンからなる不純物は、マンガン酸化物中に0.5重量%以下、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下である。対イオンは、イオン化の状態で存在する場合もあれば、塩の形態で存在する場合もある。
【0017】
本発明のマンガン酸化物としては、金属マンガンの加水分解反応で生成する水酸化マンガンを酸化して得られるMnを焼成して得られるマンガン酸化物であることが好ましい。
【0018】
本発明に用いる金属マンガンには、如何なる製法によるものも適用できるが、マンガン化合物の対イオン及びその他の不純物元素を含有しない電解金属マンガンを用いることが好ましい。例えば、電解金属マンガンで、マンガン含有率99.9%以上のものでは、得られるMn中の対イオン濃度が極めて低く制御できる。また、その様な電解金属マンガンでは、その他の不純物も著しく低減できるため特に好ましい。
【0019】
また、本発明で用いる金属マンガンの形状は特に限定されず、例えば板状、塊状及び粉末状の如何なるものも適用できる。なかでも加水分解の反応速度の面より微細粒子であることが好ましく、特に、100メッシュ(0.15mm)以下であることが好ましい。
【0020】
金属マンガンの加水分解反応は、金属マンガンと水を接触させることによって反応させることができる。使用する水としては、不純物含有量の低い純水、超純水、イオン交換水或いは蒸留水を用いることが好ましい。
【0021】
金属マンガンの加水分解反応は、常温でも行うことができるが、加水分解反応を促進するためには80℃以上、好ましくは95℃以上に加熱することが好ましい。また、金属マンガンの加水分解反応の進行により水素ガスが発生し還元雰囲気となるため水酸化マンガンは安定に存在するが、より安定化させるため窒素ガスを導入してもよい。
【0022】
金属マンガンの加水分解反応により水酸化マンガンが得られるが、本発明では当該水酸化マンガンを酸化することで高純度の四三酸化マンガン(Mn)として用いる。水酸化マンガンの酸化反応は、常温の大気中でも進行するが、反応速度の面で、加熱或いは加温して酸化を促進することが好ましい。酸化雰囲気としては大気中、酸素ガス中が適用でき、また、過酸化水素等の酸化剤添加により酸化することもできる。
【0023】
従来のMnの一般的な合成法は、二酸化マンガン等の酸化マンガンを950℃以上の高温で焼成する方法、或いは、硫酸マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガン、蓚酸マンガン等の無機及び有機マンガン塩を、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、過塩素酸塩等の塩基性を有する水溶液で中和、酸化させる方法がある。しかしこれらの方法で得たMnは、原料中の対イオンに起因する不純物濃度が高いため、得られた酸化マンガン中の残存対イオン濃度が高くなることにより、本発明の研磨特性が発現できない。また比較的高純度の電解二酸化マンガンを用いた場合にも、電解液中の硫酸根の混入が避けられず、本発明の範囲の高純度のものを得ることは難しい。
【0024】
本発明では四三酸化マンガン(Mn)を焼成してマンガン酸化物砥粒とする。焼成の温度は、特に限定されるものではないが、例えば300℃から1200℃、さらには450℃から750℃で焼成することが好ましい。焼成は、二段或いは多段で焼成することも出来るが、最も簡便な一段での焼成が経済的にも好ましい。また、焼成する雰囲気は、還元性雰囲気とならない限り、特に制限されるものではないが、例えば大気中或いは空気流通雰囲気、酸素ガス流通雰囲気での焼成が例示できる。
【0025】
本発明では、上述の焼成されたマンガン酸化物をさらに粉砕及び/又は解砕して砥粒とすることが好ましい。
【0026】
粉砕及び/又は解砕の方法としては、乾式法、湿式法のいずれを適用することができるが、凝集が抑制でき微粒子化が進行しやすい湿式法を適用することが特に好ましい。湿式法による分散媒としては特に限定されるものではないが、イオン交換水、蒸留水、超純水等が例示できる。さらに、分散効率をあげるためpH調整剤、分散剤、界面活性剤等を添加することもできる。また、粉砕メディアとしては、ガラス、アルミナ、樹脂、ジルコニア等、如何なるものも適用できるが、粉砕及び/又は解砕効率が高く不純物が混入し難いジルコニア素材のメディアを適用することが好ましい。
【0027】
粉砕及び/又は解砕したマンガン酸化物の粒径としては、平均粒径で5μm以下、特に3μm以下であることが好ましい。平均粒径の測定は一般的な粒度分布の測定方法が適用でき、例えばマイクロトラック(日機装製)等を用いることができる。
【0028】
更には、本発明の研磨砥粒粒子は、ビーズ成型し、メディアとして用いても良い。
【0029】
本発明の研磨砥粒は、任意に調合した研磨剤組成物の一成分として用いることにより、特に湿式粉砕及び/又は解砕処理した後に、所望の砥粒濃度に設定して使用することができる。
【0030】
本発明の研磨剤は、ガラス質、結晶質のSiO層、或いは半導体基板上に形成された層間絶縁膜及び/又は層間絶縁膜を含む面の研磨において、特に優れた特性を示す。本発明の研磨方法では、上記の研磨剤を用いる限り、他の条件について特に限定するものではないが、例えば、通常適用されるCMP用研磨機器の付帯設備であるプラテンに貼付するパッド上或いはウエハ上に研磨剤を任意の速度で滴下し研磨することができる。
【発明の効果】
【0031】
可溶性マンガン化合物の対イオンからなる不純物濃度が0.5重量%以下のマンガン酸化物を砥粒とする研磨剤、特に金属マンガンの加水分解反応により生成する水酸化マンガンの酸化で得た四三酸化マンガンを焼成した酸化マンガンを砥粒とする研磨剤では、SiO層に対しては高い研磨速度が得られ、SiN層に対しては低い研磨速度となる高選択性を有するため、半導体デバイス上に施した層間絶縁膜等のSiO層を研磨加工に優れる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
(Mnの合成)
容量が1、000cmのセパラブルフラスコにイオン交換した蒸留水を300cm入れ、恒温槽で95℃に保持させた。この中にマンガン純度99.9%で平均粒径が100μmの金属マンガン粉体を110g添加し、攪拌を行った後、24時間放置し加水分解反応を進行させた。
【0033】
反応終了後、生成した白色の水酸化マンガンをシャーレに移し、50℃で乾燥、酸化した。得られた茶褐色の粉体のX線解析を行った結果、JCPDS24−0734と一致し、Mnであった。また、Mn中の硫酸根(SO)をICP発光分析法で定量したところ、0.06重量%であり、硫酸根以外の元素も0.01%以下であった。
【0034】
実施例1
上記の加水分解反応によって得られたMnを、マッフル炉に入れ、焼温速度を200℃/hr、降温速度を自然炉冷として350℃から1150℃で1時間焼成した。焼成で得られたMn酸化物のX線解析を行ったところ、350℃ではMnとMnの複合体、450℃ではMnとMnの複合体、550℃から950℃の温度範囲ではMn、そして1150℃ではMnが生成した。
【0035】
各焼成温度で得られた酸化マンガンを、三井鉱山製のSCミルを用い、1mmφのジルコニアビーズを粉砕メディアとして用い湿式粉砕し、砥粒濃度が10wt%のスラリーを得た。粉砕後のマイクロトラックによる平均粒子径(D50)は、約2μmであった。
【0036】
各焼成温度による粉砕スラリーの砥粒濃度が1.5wt%となるようイオン交換した蒸留水で希釈して研磨用スラリーとした。
【0037】
次に、Siウエハ上にそれぞれテトラエトキシシラン(TEOS)によってSiOを1μm或いはSiNを500nmの厚みに成膜した各ウエハを15mm角にダイシングし、図1に示すワークプレート1に装着し、修正リング2に挿入した。上述の研磨用スラリーを図1のスラリー供給ノズル4より80cm/分の滴下速度で供給し、定盤3の回転速度を50rpmとして1分間研磨を行った。荷重量は250g/cmとし、パッドはロデール・ニッタ社製、商品名「IC1000/SUBA400」を用いた。
【0038】
加工速度は、光干渉式膜厚測定装置を用いて評価した。結果を表1に示す。いずれの研磨用スラリーも、SiOの研磨速度は大きく、SiNの研磨速度は小さく、SiOに対して高い研磨選択比を示した。
【0039】
実施例2
実施例1の1150℃焼成で得た酸化マンガン粉末を550℃で再焼成し、X線解析を実施した結果、結晶構造はMnであった。
【0040】
当該酸化物粉体を実施例1と同様の条件で粉砕後、研磨用スラリーとし、実施例1と同様の研磨条件で評価した。その結果、実施例1の550℃の1段焼成の場合とほぼ同等の研磨速度を示した。
【0041】
実施例3
硫酸マンガン及び塩化マンガンの特級試薬を用い、先に合成した硫酸根0.06%を含有するMn中の対イオン濃度が所望の濃度となるよう秤量し、既定量のイオン交換した蒸留水にそれぞれ溶解させた。この溶液中にMnを入れ含浸させた後に乾燥させ、550℃で1時間の焼成を行った。焼成して得られた酸化マンガンはMnであり、Mn中の硫酸根濃度(SO)及び塩素濃度(Cl)は、0.3重量%及び0.45重量%であった。
【0042】
当該酸化物粉体を実施例1と同様の条件で粉砕した後、研磨用スラリーとし、実施例1と同様の研磨条件で評価した。結果を表1に示すが、いずれも高加工特性を示した。
【0043】
実施例4
実施例1の各焼成温度で得た酸化マンガンを、イオン交換した蒸留水中の砥粒濃度が実施例1より高い5wt%となるようにし、研磨用スラリーとした。当該研磨用スラリーを用い、定盤3の回転速度を30rpm、研磨時間を10分とした以外は実施例1と同一の研磨条件で石英ガラス板の研磨を行った。
【0044】
焼成温度が550℃〜750℃の範囲の砥粒において、石英ガラスの研磨速度は200nm/分であり、100nm/分以上の研磨速度であった。
【0045】
比較例1
金属マンガンの加水分解反応で得たMnを焼成することなしに、実施例1と同一の条件でTEOSで成膜したSiO膜の研磨を行った。
【0046】
結果を表1に示したが、研磨は殆ど発現しなかった。
【0047】
比較例2
イオウ(S)として0.35重量%含有する平均粒度が約10μmの電解MnOの粉体を大気中、550℃で1時間焼成した。得られた粉体のX線解析は、Mnであった。また、硫酸根濃度は1.0重量%であった。この粉体を実施例1と同様、湿式法により粉砕し、イオン交換した蒸留水を用いて砥粒濃度1.5wt%の研磨用スラリーとした。この砥粒の平均粒子径は、実施例と同一の方法で測定したところ約2μmであったが粒度分布が幾分広かった。当該研磨用スラリーを用いて、実施例1と同一の条件で研磨評価を行った。
【0048】
結果を表1に示す。SiNに対する研磨特性は実施例1と同程度であったが、TEOSを用いたSiO膜の研磨性は低いものであった。
【0049】
比較例3
比較例2の電解MnOを用いて実施例2と同一条件で再焼成を行った。電解二酸化マンガンでは残存硫酸根が1.0重量%で高いものであった。
【0050】
1150℃焼成後の結晶構造はMnであり、550℃再焼成後の結晶構造もMnであった。この粉体を用いて、実施例1と同一の条件で研磨特性を評価した。
【0051】
結果を表1に示したが、研磨特性は比較例2と同様であり、TEOSを用いたSiO膜の研磨性も低いものであった。
【0052】
比較例4
実施例3で用いた硫酸マンガンの濃度を上昇させて、同様の処理及び研磨条件で研磨評価を行った。得られたMn中の硫酸根濃度は、0.7重量%及び1重量%であった。結果を表1に示す。SiNに対する研磨速度は、実施例と変らなかったが、TEOSを用いたSiO膜の研磨速度は低い特性を示した。
【0053】
比較例5
室温で1.5molの硫酸マンガン水溶液に2mol/L濃度のアンモニア水を30cm/分の速度で滴下しpHを10〜10.5とし、滴下後2時間放置した。その後、生成した白色の沈殿物を含むスラリー中に5%濃度の過酸化水素を滴下し茶褐色の沈殿物スラリーとした。
【0054】
一方、同様の出発原料を温度60℃で中和し、生成した白色沈殿物を含有するスラリー中に空気を送入し、空気酸化によって茶褐色スラリーとした。
【0055】
両者のスラリーをろ過、乾燥した後、X線解析を行った結果、過酸化水素で酸化して得た粉体はMnに帰属するピークパターンを示し、空気酸化した粉体は、Mnに類似したピークパターンを示した。
【0056】
両者の酸化マンガン粉体を、焼温速度を200℃/hr、降温を自然炉冷として550℃で1時間の焼成を行った。
【0057】
得られた粉体は、X線解析でいずれもMnと同定されたが、硫酸根濃度は10重量%と高濃度であった。これらのMnを実施例1と同様の方法で粉砕し、1.5wt%の研磨スラリーとし、同様の条件で研磨評価を行った。
【0058】
その結果、加工特性はいずれも数nm/分の低い研磨速度であった。
【0059】
比較例6
比較例2の研磨用スラリーを用いて、実施例4と同一の評価を行った。
【0060】
その結果、石英ガラスの加工速度は、80nm/分と低いものであった。
【0061】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】研磨装置の概略図。
【符号の説明】
【0063】
1 ワークプレート
2 修正リング
3 定盤
4 スラリー供給ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性マンガン化合物の対イオンからなる不純物濃度が0.5重量%以下のマンガン酸化物を砥粒として含んでなる研磨剤。
【請求項2】
マンガン酸化物が、金属マンガンの加水分解反応による四三酸化マンガン(Mn)を焼成したものである請求項1に記載の研磨剤。
【請求項3】
粉砕及び/又は解砕された請求項1〜請求項2に記載の研磨剤。
【請求項4】
SiOを含むガラス質層及び/又は結晶質層の表面を請求項1〜請求項3に記載の研磨剤を用いて研磨し平坦化する研磨方法。
【請求項5】
半導体基板上に形成された層間絶縁膜及び/又は層間絶縁膜を含む面を請求項1〜請求項3に記載の研磨剤を用いて研磨し平坦化する研磨方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−128395(P2006−128395A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314367(P2004−314367)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】