説明

研磨加工方法

【課題】被研磨物の平坦性を向上させることができる研磨加工方法を提供する。
【解決手段】研磨パッド20はポリウレタン樹脂を主成分とし被研磨物を研磨加工するための研磨面Pを有する研磨シート1を備えている。研磨シート1の内部には多数の発泡2が形成されている。発泡2を除く研磨シート1にはアセチルセルロースが含有されている。研磨加工時には、研磨パッド20を研磨機の研磨定盤に装着し、アセチルセルロースを脱アセチル化可能なアルカリ性のスラリを供給しながら、被研磨物を研磨加工する。研磨加工中に、研磨シート1に含有されたアセチルセルロースのうち少なくとも研磨面P側のアセチルセルロースの一部がスラリにより脱アセチル化され表面層1aが形成される。表面層1aでは研磨シート1の内部層1bに比べて親水性および膨潤性が高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨加工方法に係り、特に、被研磨物を研磨加工するための研磨面を有し内部にセルが形成された発泡構造の研磨層を備えた研磨パッドを研磨機の定盤に装着し、研磨液を供給しながら研磨パッドで被研磨物を研磨加工する研磨加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶ディスプレイ用ガラス基板等の材料(被研磨物)では、表面の平坦性が求められるため、研磨パッドを使用した研磨加工が行われている。半導体デバイスでは、半導体回路の集積度が急激に増大するにつれて高密度化を目的とした微細化や多層配線化が進み、表面を一層高度に平坦化する技術が重要となっている。一方、液晶ディスプレイ用ガラス基板では、液晶ディスプレイの大型化に伴い、表面のより高度な平坦性が要求されている。
【0003】
半導体デバイスの表面を平坦化する方法としては、一般的に化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing、以下、CMPと略記する。)法が用いられている。CMP法では、通常、研磨加工時に、砥粒(研磨粒子)をアルカリ溶液または酸溶液に分散させたスラリ(研磨液)を供給する、いわゆる遊離砥粒方式が採用されている。すなわち、被研磨物の被研磨面(以下、加工面という。)は、スラリ中の砥粒による機械的作用と、アルカリ溶液または酸溶液による化学的作用とで研磨される。加工面に要求される平坦性の高度化に伴い、CMP法に求められる研磨精度や研磨効率等の研磨特性、換言すれば、研磨パッドに要求される性能も高まっている。CMP法では、アルカリ溶液または酸溶液で劣化しにくいポリウレタン樹脂を主成分とする研磨層を備えた研磨パッドが広く使用されている。研磨加工時には、研磨機に研磨パッドを装着し、スラリを供給しながら、加工面にスラリを介して研磨層の表面(研磨面)を当接させて研磨加工を行う。
【0004】
研磨加工時に研磨パッドとスラリとの馴染みが悪い場合には、スラリが研磨パッドに保持されにくくなり、スラリが加工面全面に十分に行き渡らないため、研磨レートが向上しにくくなるとともに、スクラッチを招きやすくなる。このため、従来研磨パッドとスラリとの馴染みをよくするために慣らし運転を行っていたが、この慣らし運転には時間が掛かり研磨効率の低下を招く。そこで、研磨層の親水性(濡れ性)を向上させることで、スラリとの馴染みをよくする提案がなされている。具体的には、親水性ポリオール成分を含むポリウレタンで研磨層を形成した技術(特許文献1、特許文献2参照)、親水性高分子固形物を研磨層成分に内添させて成形した技術(特許文献3、特許文献4参照)がそれぞれ開示されている。ところが、これらの研磨パッドでは、研磨層全体が親水性を有するため、研磨加工時にスラリ等の水分により研磨層全体が膨潤してしまい、研磨層の硬度等の物性が変化しやすいので、被研磨物の平坦性を十分に向上させることが難しくなる。そこで、研磨層の研磨面側のみをプラズマ処理で親水化する技術が開示されている(特許文献5参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−42250号公報
【特許文献2】特開2004−167680号公報
【特許文献3】特開2001−47355号公報
【特許文献4】特開2001−179608号公報
【特許文献5】特開2005−342881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献5の研磨パッドでは、数十kVといった大きな電力で発生させたプラズマで研磨層の研磨面側に水酸基などの親水基を導入することで親水化している。このときに、研磨層を構成する高分子材料(樹脂)の主鎖の一部が切断される可能性があるため、樹脂が部分的に劣化する等の物性斑を招き、劣化した樹脂が研磨加工時に異物として加工面を傷つける可能性があるので、被研磨物の平坦性を十分に向上させることが難しくなる。
【0007】
本発明は上記事案に鑑み、被研磨物の平坦性を向上させることができる研磨加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、被研磨物を研磨加工するための研磨面を有し内部にセルが形成された発泡構造の研磨層を備え、前記セルを除く研磨層に少なくとも一部がアシル化された多糖類成分が含有された研磨パッドを研磨機の定盤に装着する装着工程と、前記多糖類成分を脱アシル化可能なアルカリ性の研磨液を供給しながら、前記装着工程で装着された研磨パッドで被研磨物を研磨加工する研磨工程と、を含み、前記研磨工程において、前記研磨液が前記装着工程で装着された研磨パッドの研磨面側に浸潤することにより、前記研磨層に含有された前記多糖類成分のうち少なくとも前記研磨面側の多糖類成分の一部が脱アシル化されることを特徴とする。
【0009】
本発明では、少なくとも一部がアシル化された多糖類成分が含有された研磨層を備え装着工程で装着された研磨パッドが研磨工程で供給された研磨液により、少なくとも研磨面側の多糖類成分の一部が脱アシル化されるため、研磨層の研磨面側で研磨層の研磨面側を除く部分に比べて大きい親水性および膨潤性が発現されると共に、研磨層全体厚さに亘る膨潤性が抑制されることから、研磨面側での研磨液との馴染みがよくなりスラリの保持性が確保されるので、被研磨物の平坦性を向上させることができる。
【0010】
この場合において、研磨工程で供給する研磨液をpH10以上とすることが好ましい。研磨液に研磨粒子が含有されていてもよい。装着工程で装着する研磨パッドの研磨層をポリウレタン樹脂を主成分とすることができる。また、セルを除く研磨層に少なくとも一部がアシル化された多糖類成分が5重量%〜40重量%の割合で含有されていてもよい。装着工程で装着する研磨パッドに含有された少なくとも一部がアシル化された多糖類成分をセルロース、キトサンまたはデキストリンとカルボン酸誘導体との反応生成物から選択される少なくとも1種とすることができる。このとき、多糖類成分をアセチルセルロースとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、少なくとも一部がアシル化された多糖類成分が含有された研磨層を備え装着工程で装着された研磨パッドが研磨工程で供給された研磨液により、少なくとも研磨面側の多糖類成分の一部が脱アシル化されるため、研磨層の研磨面側で研磨層の研磨面側を除く部分に比べて大きい親水性および膨潤性が発現されると共に、研磨層全体厚さに亘る膨潤性が抑制されることから、研磨面側での研磨液との馴染みがよくなりスラリの保持性が確保されるので、被研磨物の平坦性を向上させることができる、という効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る研磨加工方法の実施の形態について説明する。
【0013】
(研磨パッド)
図1に示すように、本実施形態の研磨加工方法で用いる研磨パッド20は、ポリウレタン樹脂を主成分とし、被研磨物を研磨加工するための研磨面Pを有する研磨シート(研磨層)1を備えている。研磨シート1は、水系凝固液(水を主成分とする凝固液)により脱溶媒されシート状に形成(湿式成膜)されている。研磨シート1はセル(発泡)が形成された発泡構造を有している。研磨シート1の研磨面P側には、図示を省略した微多孔が厚み数μm程度に亘り緻密に形成されたスキン層(不図示)が形成されている。研磨シート1のスキン層より内側には、研磨シート1の厚み方向に沿って丸みを帯びた断面略三角状の多数の発泡2が略均等に分散した状態で形成されている。発泡2は研磨面P側(図1の上側)の孔径が研磨面Pと反対の面側(図1の下側)の孔径より小さく形成されている。研磨シート1の内部の発泡2同士の間には、発泡2より小さい孔径の図示しない発泡が形成されている。発泡2および図示しない発泡は、不図示の連通孔で立体網目状に連通されている。
【0014】
発泡2、図示しない発泡および不図示の連通孔を除く研磨シート1の内部には、少なくとも一部がアシル化された多糖類成分としての部分アシル化多糖類成分が含有されている。すなわち、部分アシル化多糖類成分は、研磨シート1を形成するポリウレタン樹脂中に含有されている。部分アシル化多糖類成分は、多糖類成分の少なくとも一部の水酸基やアミノ基にアシル基が導入されたものである。本例では、部分アシル化多糖類成分として、酢化度54.3%、重合度270のアセチルセルロースが用いられており、研磨シート1に5〜40重量%の割合で含有されている。なお、酢化度は、セルロース単位重量当りの結合酢酸の重量百分率を表すものであり、本例では、ASTM:D−817−91「セルロースアセテート等の試験方法」のアセチル化度の測定法に準じて測定される。
【0015】
また、研磨シート1の研磨面Pと反対側には、研磨機の研磨定盤に研磨パッド20を装着するための両面テープ7が貼り合わされている。両面テープ7は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)製フィルム等の可撓性フィルムの基材7aを有しており、基材7aの両面にアクリル系接着剤等の図示しない接着剤層が形成されている。両面テープ7は、基材7aの一面側の接着剤層で研磨シート1に貼り合わされており、他面側(研磨シート1と反対側)の接着剤層が剥離紙7bで覆われている。
【0016】
(製造方法)
本実施形態の研磨加工方法で用いる研磨パッド20は、ポリウレタン樹脂およびアセチルセルロースが有機溶媒に略均一に溶解された溶液(以下、混合液という。)を調製する準備工程、準備工程で調製された混合液をシート状に展延し、水系凝固液中で混合液から有機溶媒を脱溶媒させてアセチルセルロースが含有されたポリウレタン体を凝固再生させる凝固再生工程(再生工程)、凝固再生工程で凝固再生されたポリウレタン体を洗浄・乾燥して研磨シート1を形成する洗浄・乾燥工程および研磨シート1に両面テープ7を貼付するラミネート工程の各工程を経て製造されるが、以下、工程順に説明する。
【0017】
準備工程では、ポリウレタン樹脂およびアセチルセルロースを同じ有機溶媒にそれぞれ溶解させポリウレタン樹脂溶液およびアセチルセルロース溶液を調製する。ポリウレタン樹脂溶液は、ポリウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒にポリウレタン樹脂および添加剤を略均一に溶解させ、濾過により凝集塊等を除去した後、真空下で脱泡することで調製される。アセチルセルロース溶液は、ポリウレタン樹脂溶液と同じ有機溶媒にアセチルセルロースを略均一に溶解させ、真空下で脱泡することで調製される。ポリウレタン樹脂溶液およびアセチルセルロース溶液を混合して混合液を調製する。本例では、発泡を除く研磨シート1にアセチルセルロースが5〜40重量%の割合で含有されるように混合液を調製する。有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)、ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略記する。)等のポリウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒を用いることができる。本例では、有機溶媒にDMFを用いる。ポリウレタン樹脂には、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等の樹脂から選択して用いる。添加剤としては、カーボンブラック等の顔料、発泡を促進させる親水性活性剤およびポリウレタン樹脂の凝固再生を安定化させる疎水性活性剤等を用いることができる。
【0018】
部分アシル化多糖類成分として用いるアセチルセルロースは、本例では、酢化度54.3%、重合度270のため、DMFに溶解させることができる。換言すれば、用いるアセチルセルロースは、DMFに溶解可能となるように酢化度が調整される。酢化度は、アセチル化条件により調整することができる。本例では、アセチルセルロースは、α−セルロース含有量が90〜97%のリンターパルプを酢酸法で処理したものを用いる。
【0019】
凝固再生工程では、準備工程で調製された混合液を成膜基材に連続的に塗布し(シート状に展延し)、水系凝固液に浸漬することでポリウレタン体をシート状に凝固再生させる。すなわち、湿式で混合液から有機溶媒を脱溶媒させる。準備工程で調製された混合液を常温下でナイフコータ等の塗布機により帯状の成膜基材に略均一に塗布する。このとき、塗布機と成膜基材との間隙(クリアランス)を調整することで、混合液の塗布厚さ(塗布量)を調整する。成膜基材には、可撓性フィルム、不織布、織布等を用いることができる。不織布、織布を用いる場合は、混合液の塗布時に成膜基材内部への混合液の浸透を抑制するため、予め水またはDMF水溶液(DMFと水との混合液)等に浸漬する前処理(目止め)が行われる。成膜基材としてPET製等の可撓性フィルムを用いる場合は、液体の浸透性を有していないため、前処理が不要となる。本例では、成膜基材にPET製フィルムを用いる。
【0020】
混合液が塗布された成膜基材は、ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分とする水系凝固液に浸漬される。水系凝固液中では、まず、塗布された混合液の表面にスキン層を構成する微多孔が厚み数μm程度にわたって形成される。その後、混合液中のDMFと水系凝固液との置換の進行によりポリウレタン体が成膜基材の片面にシート状に凝固再生されるとともに、アセチルセルロースが固化する。すなわち、内部にアセチルセルロースが略均一に分散されたポリウレタン体が形成される。DMFが混合液から脱溶媒され、DMFと水系凝固液とが置換されることにより、スキン層より内側のポリウレタン体中に多数の発泡2および図示しない発泡が形成され、発泡2および図示しない発泡を立体網目状に連通する不図示の連通孔が形成される。このとき、成膜基材のPET製フィルムが水を浸透させないため、混合液の表面側(スキン層側)で脱溶媒が生じて、表面側に開孔が形成され、成膜基材側が表面側より大きな孔径の発泡2が形成される。
【0021】
洗浄・乾燥工程では、凝固再生工程で凝固再生された帯状(長尺状)のポリウレタン体を洗浄した後乾燥させ、研磨シート1を形成する。すなわち、ポリウレタン体が成膜基材から剥離され、水等の洗浄液中で洗浄されポリウレタン体中に残留するDMFが除去される。洗浄後、ポリウレタン体をシリンダ乾燥機で乾燥させる。シリンダ乾燥機は内部に熱源を有するシリンダを備えている。ポリウレタン体がシリンダの周面に沿って通過することで乾燥され、研磨シート1が形成される。
【0022】
ラミネート工程では、洗浄・乾燥工程で形成された研磨シート1のスキン層と反対の面側に、一面側を剥離紙7bで覆われた両面テープ7の他面側を接着剤層で貼付する。所望のサイズ、形状に裁断した後、汚れや異物等の付着がないことを確認する等の検査を行い、研磨パッド20を完成させる。
【0023】
(研磨加工方法)
本実施形態の研磨加工方法は、図3に示すように、研磨機の研磨定盤に研磨パッド20を装着する装着工程と、アルカリ性の研磨液を供給しながら、装着工程で装着された研磨パッド20で被研磨物を研磨加工する研磨工程の各工程を経て実施されるが、以下、工程順に説明する。
【0024】
ここで、研磨機について説明する。研磨機としては、被研磨物の片面を研磨する片面研磨機と、被研磨物の両面を研磨する両面研磨機とが挙げられる。片面研磨機では、被研磨物を研磨加工するための研磨パッドを装着する研磨定盤と、被研磨物を保持するための保持定盤とが対向配置されている。研磨加工時には、研磨定盤に研磨パッドを装着し、保持定盤に被研磨物を保持させる。保持定盤に保持させた被研磨物を研磨パッド側へ押圧すると共に、外部から研磨液を供給しながら研磨定盤ないし保持定盤を回転させることで、被研磨物の片面(加工面)側を研磨加工する。一方、両面研磨機では、2つの研磨定盤が対向配置されている。研磨加工時には、研磨定盤に研磨パッドをそれぞれ装着し、研磨パッドで被研磨物を挟み込むように押圧すると共に、外部から研磨液を供給しながら少なくとも研磨定盤の一方を回転させることで、被研磨物の両面側を研磨加工する。本例では、研磨機に片面研磨機を用いる。
【0025】
(装着工程)
装着工程では、片面研磨機の研磨定盤に研磨パッド20を装着する。研磨定盤に研磨パッド20を装着するときには、両面テープ7の剥離紙7bを取り除き、露出した接着剤層で研磨定盤に接着固定する。一方、保持定盤には、被研磨物を保持するための保持具を装着する。保持具として、本例では、湿式成膜されたポリウレタンシートが用いられる。
【0026】
(研磨工程)
研磨工程では、発泡を除く研磨シート1に含有されたアセチルセルロースを脱アセチル化(脱アシル化)可能なアルカリ性の研磨液を供給しながら、装着工程で装着された研磨パッド20で被研磨物を研磨加工する。本例では、アセチルセルロースを脱アセチル化可能なアルカリ性の研磨液として、水酸化カリウムを含有するアルカリ溶液に、粒径75nmのコロイダルシリカ(研磨粒子)を略均一に分散させたpH10のコロイダルシリカスラリを用いる。被研磨物は、コロイダルシリカによる機械的作用と、アルカリ性としたことによる化学的作用と、で加工面が研磨加工される。
【0027】
ここで、研磨工程における研磨シート1の親水化および膨潤化について説明する。研磨シート1の研磨面Pには脱溶媒に伴うスキン層の微多孔が形成されており、研磨シート1の内部には立体網目状に連通した発泡が形成されている。このため、研磨シート1の研磨面P側に研磨工程で供給されたスラリのアルカリ溶液が略均等に浸潤する。また、研磨工程において、研磨パッド20の研磨面Pと被研磨物の加工面とをスラリを介して圧接させながら、研磨定盤ないし保持定盤を回転させ研磨加工するため、摩擦熱で温度がおよそ30〜40℃に上昇する。
【0028】
図2に示すように、研磨シート1に浸潤したアルカリ溶液および摩擦熱による温度上昇で、研磨シート1の研磨面P側で少なくともアセチルセルロースの一部の脱アセチル化が進行し、研磨面Pの全面に亘りほぼ一様な厚さの表面層1aが形成される。一方、表面層1aを除く研磨シート1(以下、内部層1bという。)には、アルカリ溶液が浸潤しにくく、含有されたアセチルセルロースが脱アセチル化されにくい。このため、表面層1aに含有されたアセチルセルロースでは、内部層1bに含有されたアセチルセルロースと比較して、水酸基の割合が大きくなっており、表面層1aの酢化度が35%以下となっている。アセチルセルロースに導入されたアセチル基の割合、すなわち、酢化度が減少するほど、水酸基の割合が増加し、親水性(濡れ性)および膨潤性が向上する。このため、表面層1aは内部層1bに比べて親水性および膨潤性が高い。換言すると、研磨工程において被研磨物を研磨加工しているときに、装着工程で装着された研磨パッド20の研磨シート1の研磨面P側が親水化および膨潤化される。
【0029】
(作用等)
次に、本実施形態の研磨加工方法の作用等について説明する。
【0030】
本実施形態では、装着工程でアセチルセルロースが含有されたポリウレタン樹脂製の研磨シート1を備えた研磨パッド20を研磨機の研磨定盤に装着し、研磨工程でアセチルセルロースを脱アセチル化可能なアルカリ性のコロイダルシリカスラリを供給しながら、装着工程で装着された研磨パッド20で被研磨物を研磨加工する。このため、研磨シート1の研磨面P側(表面側)に含有されたアセチルセルロースの少なくとも一部が脱アセチル化され、研磨面Pの全面に亘り、内部層1bに比べて親水性および膨潤性が高い表面層1aが形成される。また、表面層1aの膨潤性が向上しても内部層1bの膨潤性が抑制されているため、研磨シート1全体厚さに亘る膨潤性が抑制される。さらに、研磨シート1を構成するポリウレタン樹脂は、アルカリ性のスラリに耐性を有する。従って、研磨シート1を構成するポリウレタン樹脂を劣化させることなく、研磨シート1の表面側を全面に亘り親水化および膨潤化させるとともに、研磨シート1全体として膨潤性を抑えながら被研磨物を研磨加工することができる。
【0031】
また、本実施形態では、研磨工程において、上述したように、研磨シート1の研磨面P側に全面に亘り表面層1aが形成され、表面層1aは内部層1bに比べて親水性および膨潤性が高くなる。また、研磨加工に伴い表面層1aの摩耗が進行しても、アセチルセルロースを脱アセチル化可能なスラリが供給されているため、研磨シート1の研磨面P側ではアセチルセルロースの少なくとも一部が脱アセチル化され、研磨面Pの全面に亘り表面層1aが形成され続ける。このとき、アセチルセルロースが脱アセチル化されることで、酸成分が生じるが、pH10以上のアルカリ性のスラリが供給されているため、研磨加工に影響するものではない。このため、研磨加工時にスラリとの馴染みがよい状態が維持され、スラリの保持性が確保されるので、スラリを被研磨物の加工面全面に十分に行き渡らせることで研磨レートを向上させるとともに、被研磨物の加工面をソフトに研磨加工することでスクラッチの発生を抑制し、被研磨物の平坦性を向上させることができる。
【0032】
さらに、本実施形態では、研磨工程において、アルカリ性のコロイダルシリカスラリが用いられている。従来微細化や多層配線化が進められている半導体デバイスの研磨加工には、CMP法が用いられている。CMP法では、アルカリ溶液または酸溶液に研磨粒子を分散させたアルカリ性または酸性のスラリを用いて被研磨物の加工面を、スラリ中の研磨粒子による機械的作用と、アルカリ溶液または酸溶液による化学的作用とで研磨加工する。一般に、アルカリ溶液の方が酸溶液に比べて、溶液内の研磨粒子の分散安定性が高いことが知られており、酸溶液中では研磨粒子が凝集して、研磨加工時に凝集物で加工面にスクラッチが生じる可能性がある。本実施形態の研磨加工方法では、アセチルセルロースを脱アセチル化可能で、かつ、アルカリ性のスラリを用いるので、半導体デバイスの研磨加工に好適に使用することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、装着工程において、研磨パッド20が両面テープ7を有しており、両面テープ7の接着剤層で研磨機の研磨定盤に研磨パッド20を接着固定(装着)する例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、研磨パッド20が両面テープ7を有しておらず、研磨シート1の研磨面Pと反対側に接着剤を塗布して、研磨機の研磨定盤に研磨パッド20を装着するようにしてもよい。また、研磨シート1に両面テープ7を貼り合わせ、両面テープ7の基材7aが研磨パッド20を支持するための支持層を兼ねる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、研磨シート1と両面テープ7との間にPETフィルム等の別の支持層を貼り合わせるようにしてもよい。さらに、本実施形態では、研磨機として片面研磨機を用いる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
また、本実施形態では、部分アシル化多糖類成分を脱アシル化可能なアルカリ性の研磨液として、水酸化カリウムを含有するアルカリ溶液に、粒径75nmのコロイダルシリカを略均一に分散させたpH10のコロイダルシリカスラリを用いる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。pH10未満のアルカリ性のスラリでは研磨シート1に含有されたアセチルセルロースの脱アセチル化が進行しにくいため、pH10以上のアルカリ性のスラリを用いることが好ましい。また、研磨粒子による研磨作用を考慮すると、研磨粒子が含有されていることが好ましい。アルカリ性の研磨液に用いられるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物やアンモニア等が挙げられるが、研磨シート1に含有された部分アシル化多糖類成分を脱アシル化可能であればよく、特に制限されるものではない。研磨粒子としては、アルミナ等が挙げられるが、通常用いられるものであればよい。
【0035】
さらに、本実施形態では、研磨パッド20を研磨機に装着した後、直ちに研磨加工を行う例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、研磨工程の研磨加工を行う前に、装着工程で装着された研磨パッド20にアセチルセルロースを脱アセチル化可能なアルカリ性の溶液を供給することで、予め研磨パッド20の研磨面P側に表面層1aを形成させておくようにしてもよい。従来研磨加工前に、研磨パッドとスラリとの馴染みをよくするために慣らし運転が行われているが、この慣らし運転には時間が掛かり研磨効率の低下を招いていた。本実施形態では、研磨加工中に研磨面P側に形成される表面層1aが、スラリとの馴染み(スラリに対する濡れ性)がよいため、慣らし運転をしなくても、研磨効率を向上させることができる。
【0036】
またさらに、本実施形態では、少なくとも一部がアセチル化された多糖類(部分アセチル化多糖類)成分として、α−セルロース含有量が90〜97%のリンターパルプを酢酸法で処理した、酢化度54.3%、重合度270のアセチルセルロースを用いる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。アセチルセルロースとしては、例えばα−セルロース含有量が90〜97%の木材パルプやリンターパルプを、硫酸触媒法やメチレンクロライド法等の慣用の方法で処理して得られるものであれば特に限定されないが、酢化度30〜62.5%、重合度200〜4000のジアセチルセルロースないしトリアセチルセルロースであればよい。製造時の準備工程で用いる有機溶媒(DMF、DMAcなど)への溶解性を考慮すれば、酢化度45〜62%、重合度200〜350のアセチルセルロースを用いることが好ましい。また、部分アセチル化多糖類成分以外に、部分アシル化多糖類成分を用いてもよい。例えば、部分アシル化多糖類成分として、セルロース、キトサンまたはデキストリンとカルボン酸誘導体との反応生成物から選択して用いてもよく、具体的にはブチリルキトサン等を挙げることができるが、アルカリ性のスラリで脱アシル化され、研磨シート1の表面側を全面に亘り親水化および膨潤化可能であれば、特に制限されるものではない。
【0037】
さらにまた、本実施形態では、発泡を除く研磨シート1にアセチルセルロースが5〜40重量%の範囲で含有されている例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。アセチルセルロースの含有量が5重量%より少ない場合には、脱アセチル化され親水性を向上させるためのアセチルセルロースの量が少なくなり、研磨シート1の表面側で親水性を向上させることが難しくなる。反対に、アセチルセルロースの含有量が40重量%より多い場合には、研磨シート1全体の硬度等の物性が変化してしまうため、被研磨物の平坦性を向上させることが難しくなる。従って、発泡を除く研磨シート1にアセチルセルロース等の部分アシル化多糖類成分が5〜40重量%の範囲で含有されることが好ましい。
【0038】
また、本実施形態では、研磨シート1がポリウレタン樹脂を主成分とする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。アルカリ溶液に耐性があり、通常研磨パッドに用いられる樹脂を用いることができる。部分アシル化多糖類成分を含有させることを考慮すれば、ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。この場合、ポリウレタン樹脂と部分アシル化多糖類成分とを同じ有機溶媒に溶解させることができる。
【0039】
さらに、本実施形態では、研磨パッド20の製造時の凝固再生工程において、水系凝固液に浸漬することでポリウレタン体を凝固再生させる湿式成膜を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、別の方法でポリウレタン体を再生させてもよい。例えば、熱風雰囲気中にて混合液から有機溶媒を脱溶媒させポリウレタン体を再生させる乾式成膜を用いてもよい。また、本実施形態では、研磨シート1の製造時に有機溶媒としてDMFを用いる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ポリウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒を用いることができる。例えば、DMF以外にDMAc等の有機溶媒を用いてもよく、DMFに他の有機溶媒を混合して研磨シート1を形成するようにしてもよい。さらに、本実施形態では、アセチルセルロースをポリウレタン樹脂と同じ有機溶媒に溶解させる例を示したが、本発明はこれに制限されるものではないことは論を俟たない。
【0040】
またさらに、本実施形態では、特に言及していないが、研磨パッド20の研磨面Pに研磨屑の排出や研磨液の移動を促すための溝加工やエンボス加工を施すようにしてもよい。溝の形状については、放射状、螺旋状等のいずれでもよく、断面形状についてもU字状、V字状、半円状のいずれでもよい。溝のピッチ、幅、深さについては、研磨屑の排出や研磨液の移動が可能であればよく、特に制限されるものではない。また、研磨パッド20の平坦性を向上させるために、研磨パッド20の研磨面P側ないし研磨面Pと反対の面側にバフ処理などの表面研削処理を施してもよい。
【実施例】
【0041】
以下、本実施形態に従い研磨パッド20を製造し研磨加工に用いた実施例について説明する。なお、比較のために製造した比較例の研磨パッドを用いた研磨加工についても併記する。
【0042】
(実施例1)
実施例1では、ポリウレタン樹脂として、ポリエステルMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)ポリウレタン樹脂を用いた。このポリウレタン樹脂のDMF溶液100部に対して、顔料のカーボンブラックを30重量%含むDMF分散液の40部、疎水性活性剤の2部を混合してポリウレタン樹脂溶液を調製した。部分アシル化多糖類成分として、酢化度54.3%、重合度270のアセチルセルロースを用い、アセチルセルロース溶液を調製した。発泡を除く研磨シート1にアセチルセルロースが10重量%含有されるように、ポリウレタン樹脂溶液にアセチルセルロース溶液を混合して混合液を調製した。混合液をPET製の成膜基材に塗布した後、凝固再生により形成されたポリウレタン体を洗浄・乾燥させて研磨シート1を形成し研磨パッド20を製造した。
【0043】
(比較例1)
比較例1では、アセチルセルロースを含有しないこと以外は実施例1と同様にして研磨パッドを製造した。すなわち、アセチルセルロースを含有しない(ポリウレタン樹脂溶液にアセチルセルロース溶液を混合していない)ポリウレタン樹脂溶液をPET製の成膜基材に塗布した後、凝固再生により形成されたポリウレタン体を洗浄・乾燥させて研磨シートを形成し研磨パッドを製造した。なお、比較例1では、アセチルセルロースを含有させていないため、研磨加工時に研磨パッド20のような表面層1a、内部層1bが形成されないが、実施例1と同様にアルカリ性のスラリを用いて研磨加工することから、表面側の部分を表面層、それ以外を内部層として以下説明する。
【0044】
(研磨性能)
次に、実施例1および比較例1の研磨パッドを研磨機の研磨定盤に装着し、アセチルセルロースを脱アセチル化可能なアルカリ性のスラリを供給しながら、以下の研磨条件で20分間ハードディスク用のアルミニウム基板の研磨加工を行い、研磨レートを測定した。研磨レートは、1分間当たりの研磨量を厚さで表したものであり、研磨加工前後のアルミニウム基板の重量減少から求めた研磨量、アルミニウム基板の研磨面積および比重から算出した。また、研磨加工後のアルミニウム基板の加工面のうねりおよびスクラッチの有無を測定した。うねりは、ディスク基板、シリコンウエハなどに対する表面精度(平坦性)を評価するための測定項目の一つであり、光学式非接触表面粗さ計で観察した単位面積当たりの表面像のうねり量(Wa)を、オングストローム(Å)単位で表したものである。試験評価機として、オプチフラットを用いて評価した。スクラッチの有無は、研磨加工によるアルミニウム基板上のスクラッチの有無を目視にて判定した。研磨レート、加工面のうねりおよびスクラッチの有無の測定結果を下表1に示す。
(研磨条件)
使用研磨機:スピードファム社製、9B−5Pポリッシングマシン
研磨速度(回転数):30rpm
加工圧力:100g/cm
スラリ:コロイダルシリカスラリ(pH:10)
スラリ供給量:100cc/min
被研磨物:ハードディスク用アルミニウム基板
(外径95mmφ、内径25mm、厚さ1.27mm)
【0045】
【表1】

【0046】
表1に示すように、比較例1の研磨パッドでは、研磨レートが0.188μm/minを示し、研磨加工した加工面にスクラッチが発生した。これに対して、実施例1の研磨パッド20では、研磨レートが0.198μm/minを示し、研磨加工した加工面にスクラッチが発生しなかった。実施例1の研磨パッド20はアセチルセルロースを含有しており、アセチルセルロースを脱アセチル化可能なスラリを供給しながら研磨加工したため、研磨面P側に表面層1aが形成されたと考えられる。このため、比較例1の研磨パッドに比べて表面側の親水性および膨潤性が高くなるので、研磨加工時に研磨面Pとスラリとの馴染みがよくなり、スラリを被研磨物の加工面全面に十分に行き渡らせることで研磨レートが向上されるとともに、加工面をソフトに研磨加工することでスクラッチの発生が抑制されたと考えられる。また、比較例1の研磨パッドでは、うねりが10Åを示した。これに対して、実施例1の研磨パッド20では、うねりが6Åを示した。実施例1の研磨パッド20では、研磨加工時に研磨面Pとスラリとの馴染みがよくなり、スラリの保持性が確保されるので、被研磨物の平坦性が向上したと考えられる。
【0047】
(物性評価)
次に、上述した研磨性能測定後の実施例1、比較例1の各研磨パッドを研磨機の研磨定盤から取り外し、蒸留水でスラリを洗い流してから1度乾燥させた後、表面での水の接触角をそれぞれ測定した。また、実施例1、比較例1の研磨シートおよび表面層の膨潤度をそれぞれ測定した。水の接触角は、自動接触角計(協和界面科学株式会社製 DropMaster500)による液滴法にて測定した。すなわち、自動接触角計の注射器に蒸留水を入れ、温度20℃、湿度60%の条件の下に、注射針から水滴1滴を研磨シート表面に滴下し、滴下してから10秒後の接触角を読み取った。膨潤度は、研磨シートを4cm×4cmの正方形に切り抜いてサンプルとし、温度20℃、湿度60%の条件の下に12時間置いた後、元の重量Aを精密天秤にて測定した。次にこのサンプルを蒸留水中に浸漬し、24時間水に浸漬した後、サンプルを取り出し、表面の水分のみを拭き取り、サンプルの水浸漬後の重量Bを精密天秤にて測定した。これらの重量の値を用い、以下の式にて膨潤度を算出した。すなわち、膨潤度(%)={(B−A)/A}×100。同様に、研磨シートの表面層を100±10μm研削除去した内部層を、4cm×4cmの正方形に切り抜いてサンプルとし、温度20℃、湿度60%の条件の下に12時間置いた後、元の重量aを精密天秤にて測定した。次にこのサンプルを蒸留水中に浸漬し、24時間水に浸漬した後、サンプルを取り出し、表面の水分のみを拭き取り、サンプルの水浸漬後の重量bを精密天秤にて測定した。これらの重量の値を用い、以下の式にて研磨シートの表面層の膨潤度を算出した。膨潤度(%)=〔{(B−b)−(A−a)}/(A−a)〕×100。実施例1、比較例1の水の接触角の測定結果を下表2に示す。また、実施例1、比較例1の研磨シートおよび表面層の膨潤度の測定結果を下表2に合わせて示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表2に示すように、比較例1の研磨パッドでは、水の接触角が61.4°、表面層の膨潤度が1.5%を示した。これに対して、実施例1の研磨パッド20では、水の接触角が10.3°、表面層1aの膨潤度が13.0%を示した。実施例1の研磨パッド20では、比較例1の研磨パッドに比べて、水の接触角が小さく、表面層の膨潤度が大きくなっていることが分かった。実施例1では、アルカリ性のスラリにより研磨パッド20の研磨面P側に含有されたアセチルセルロースの少なくとも一部が脱アセチル化され表面層1aが形成されたため、表面の親水性および膨潤性が向上したことが確認された。一方、比較例1の研磨シート全体では、膨潤度が1.5%を示した。これに対して、実施例1の研磨シート1全体では、膨潤度が3.5%を示した。実施例1の研磨シート1には表面層1aが形成されているため、比較例1の研磨シートに比べて、膨潤性が高くなっているが、5%以下に抑えられていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、被研磨物の平坦性を向上させることができる研磨加工方法を提供するものであるため、研磨パッドの製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明を適用した実施形態の研磨パッドを模式的に示す断面図である。
【図2】研磨加工時の実施形態の研磨パッドを模式的に示す断面図である。
【図3】実施形態の研磨加工方法の要部を示す工程図である。
【符号の説明】
【0052】
1 研磨シート(研磨層)
1a 表面層(研磨層の一部)
1b 内部層(研磨層の一部)
2 発泡(セル)
20 研磨パッド
P 研磨面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨物を研磨加工するための研磨面を有し内部にセルが形成された発泡構造の研磨層を備え、前記セルを除く研磨層に少なくとも一部がアシル化された多糖類成分が含有された研磨パッドを研磨機の定盤に装着する装着工程と、
前記多糖類成分を脱アシル化可能なアルカリ性の研磨液を供給しながら、前記装着工程で装着された研磨パッドで被研磨物を研磨加工する研磨工程と、
を含み、
前記研磨工程において、前記研磨液が前記装着工程で装着された研磨パッドの研磨面側に浸潤することにより、前記研磨層に含有された前記多糖類成分のうち少なくとも前記研磨面側の多糖類成分の一部が脱アシル化されることを特徴とする被研磨物の研磨加工方法。
【請求項2】
前記研磨工程で供給する研磨液は、pH10以上であることを特徴とする請求項1に記載の研磨加工方法。
【請求項3】
前記研磨工程で供給する研磨液には、研磨粒子が含有されていることを特徴とする請求項2に記載の研磨加工方法。
【請求項4】
前記装着工程で装着する研磨パッドは、前記研磨層がポリウレタン樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の研磨加工方法。
【請求項5】
前記装着工程で装着する研磨パッドは、前記セルを除く研磨層に前記多糖類成分が5重量%〜40重量%の割合で含有されていることを特徴とする請求項1に記載の研磨加工方法。
【請求項6】
前記装着工程で装着する研磨パッドに含有された多糖類成分は、セルロース、キトサンまたはデキストリンとカルボン酸誘導体との反応生成物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の研磨加工方法。
【請求項7】
前記多糖類成分は、アセチルセルロースであることを特徴とする請求項6に記載の研磨加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−58231(P2010−58231A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227403(P2008−227403)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000005359)富士紡ホールディングス株式会社 (180)
【Fターム(参考)】