説明

研磨方法、圧電振動片の製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計

【課題】ウエハの研磨を適切に行なうことで圧電振動片の信頼性を向上させる。
【解決手段】研磨装置150を、水晶ウエハ155に接触する上定盤151の表面状態と、水晶ウエハ155に接触する下定盤152の表面状態とが異なるように、かつ、下定盤152による水晶ウエハ155の研磨量が上定盤151による水晶ウエハ151の研磨量よりも大きくなるように構成する。上定盤151の表面を研磨布158により覆い、該研磨布158を介して上定盤151を水晶ウエハ155に接触させ、下定盤152を砥石により構成される砥石定盤とする。研磨時に、上定盤151および下定盤52と、水晶ウエハ155との間に、水(研削水)のみを供給し、研磨剤の供給を禁止している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、研磨方法、圧電振動片の製造方法、この圧電振動片の製造方法により製造された圧電振動片を有する圧電振動子、該圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、互いが積層状態で陽極接合されることによって両者間にキャビティが形成されるベース基板およびリッド基板と、ベース基板においてキャビティ内に位置する部分にマウントされた作動片と、を備えるパッケージ製品が広く用いられている。
この種のパッケージ製品として、例えば、携帯電話や携帯情報端末機器に装着され、時刻源や制御信号などのタイミング源、リファレンス信号源などとして水晶などを利用した圧電振動子が知られている。
【0003】
そして、このような圧電振動子を製造する際に、圧電振動片用のウエハを片面研磨装置を用いて片面研磨する方法として、例えば、加工ヘッドの円形板状のプレートにウエハを接着し、この加工ヘッドを回転定盤に向かい押圧した状態で回転定盤によってウエハを研磨する方法が知られている。
しかしながら、片面研磨装置を用いた研磨時には、ウエハがプレートに吸着及び貼付け固定されているため、ウエハは自転せず、内周と外周との周速差が発生することから、ウエハの平行度を向上させることが困難であるという問題が生じる。
【0004】
このような問題が生じることに対して、従来、例えば、2枚のウエハを貼り合せた状態で両面研磨装置を用いて各ウエハの片面を研磨する研磨方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記従来技術に係る研磨方法では、貼り合せた2枚のウエハ間に研磨材が入り込むことによって、ウエハが損傷してしまう虞がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ウエハの研磨を適切に行なうことで圧電振動片の信頼性を向上させることができる研磨方法、圧電振動片の製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の請求項1に係る研磨方法は、上定盤(例えば、実施の形態での上定盤151)と下定盤(例えば、実施の形態での下定盤152)とによってウエハ(例えば、実施の形態での水晶ウエハ155)を厚さ方向の両側から挟み込んで、前記ウエハを研磨する研磨方法であって、前記下定盤の中心部に回転可能に設けられるサンギヤ(例えば、実施の形態でのサンギヤ153)と、前記下定盤の外周部に設けられるインターナルギヤ(例えば、実施の形態でのインターナルギヤ154)と、前記サンギヤと前記インターナルギヤとの間に噛合され、前記サンギヤと前記インターナルギヤとの協働により自転および公転するとともに前記ウエハを保持可能なキャリア(例えば、実施の形態でのキャリア157)とを用いて、前記ウエハに接触する前記上定盤の表面状態と前記ウエハに接触する前記下定盤の表面状態とが異なるように、かつ、前記下定盤による前記ウエハの研磨量が前記上定盤による前記ウエハの研磨量よりも大きくなるように前記ウエハを研磨する。
【0009】
さらに、本発明の請求項2に係る研磨方法は、前記上定盤の表面を研磨布(例えば、実施の形態での研磨布158)により覆い、該研磨布を介して前記上定盤を前記ウエハに接触させ、前記下定盤を砥石により構成される砥石定盤とする。
【0010】
さらに、本発明の請求項3に係る研磨方法は、前記上定盤および前記下定盤と、前記ウエハとの間に、水のみを供給する。
【0011】
また、本発明の請求項4に係る圧電振動片の製造方法は、フォトリソグラフィ技術を用いて、圧電振動片(例えば、実施の形態での圧電振動片5)の外形が形成された圧電板の表面に電極を形成するための圧電振動片の製造方法であって、請求項1から請求項3の何れか1つに記載の研磨方法によって前記圧電板を研磨する工程を含む。
【0012】
また、本発明の請求項5に係る圧電振動子(例えば、実施の形態での圧電振動子1)は、請求項4に記載の圧電振動片の製造方法により製造された圧電振動片を備えている。
【0013】
また、本発明の請求項6に係る発振器(例えば、実施の形態での発振器100)は、請求項5に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されている。
【0014】
また、本発明の請求項7に係る電子機器(例えば、実施の形態での携帯情報機器110)は、請求項5に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されている。
【0015】
また、本発明の請求項8に係る電波時計(例えば、実施の形態での電波時計130)は、請求項5に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に係る研磨方法によれば、主に下定盤によってウエハを、いわば片面研磨することができ、しかも、ウエハは自転および公転することから、ウエハの平行度を向上させ、ウエハの研磨を適切に行なうことができる。
【0017】
本発明の請求項2および請求項3に係る研磨方法によれば、上定盤は、主にウエハを下定盤に向かい押圧するだけであって、上定盤によるウエハの研磨を抑制しつつ下定盤によるウエハの研磨を促進し、いわば片面研磨を適切に行なうことができる。
【0018】
本発明の請求項4に係る圧電振動片の製造方法によれば、圧電板の厚さ精度および平行度を向上させることができ、圧電振動片の作動信頼性を向上させることができる。
【0019】
本発明の圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計によれば、作動信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態における圧電振動子の外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1に示す圧電振動子を製造する際に用いる金属ピンの斜視図である。
【図6】図1に示す圧電振動子を製造する流れを示すフローチャートである。
【図7】圧電振動片の製造工程のフローチャートである。
【図8】水晶ウエハの研磨装置の概略を示す図である。
【図9】圧電振動子の製造方法を説明するための工程図であって、ウエハ接合体の分解斜視図である。
【図10】(a)〜(f)は図2(a)、(b)に示す圧電振動子に備える貫通電極を形成する工程を示す図である。
【図11】(a)は図2(a)、(b)に示す貫通電極を形成する工程において、金属ピンを研磨する片面研磨装置の概略を示す側面図であり、(b)は下定盤側から上定盤側を見た図である。
【図12】(a)は図2(a)、(b)に示す圧電振動子に備える貫通電極を形成する工程において、ベース基板用ウエハを研磨する両面研磨装置の概略を示す側面図であり、(b)は(a)のD−D線断面図である。
【図13】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図14】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図15】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る研磨方法、圧電振動片の製造方法および該圧電振動片の製造方法により製造された圧電振動片を備える圧電振動子および該圧電振動子を備える発振器および電子機器および電波時計について説明する。
【0022】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
(圧電振動子)
図1は、本実施形態における圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。
また、図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。
また、図3は図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図であり、図4は圧電振動子の分解斜視図である。
【0023】
図1〜図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板(第1基板)2及びリッド基板3が接合材23を介して陽極接合された箱状のパッケージ10と、パッケージ10のキャビティC内に収納された圧電振動片(電子部品)5とを備えた表面実装型の圧電振動子1である。
そして、圧電振動片5と、ベース基板2の裏面2a(図3中下面:第1面)に設置された外部電極6,7と、がベース基板2を貫通する一対の貫通電極8,9によって電気的に接続されている。
【0024】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板で板状に形成されている。
ベース基板2には、一対の貫通電極8,9が形成される一対の貫通孔(凹部)21,22が形成されている。
貫通孔21,22は、ベース基板2の裏面2aから表面2b(図3中上面)に向かって漸次径が縮径した断面テーパ形状をなしている。
【0025】
リッド基板3は、ベース基板2と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、ベース基板2に重ね合わせ可能な大きさの板状に形成されている。
そして、リッド基板3の内面3b(図3中下面)側には、圧電振動片5が収容される矩形状の凹部3aが形成されている。
この凹部3aは、ベース基板2及びリッド基板3が重ね合わされたときに、圧電振動片5を収容するキャビティCを形成する。
【0026】
そして、リッド基板3は、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して接合材23を介して陽極接合されている。
すなわち、リッド基板3の内面3b側は、中央部に形成された凹部3aと、凹部3aの周囲に形成され、ベース基板2との接合面となる額縁領域3cとを構成している。
【0027】
圧電振動片5は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片5は、平行に配置された一対の振動腕部24,25と、一対の振動腕部24,25の基端側を一体的に固定する基部26とからなる音叉型である。
【0028】
そして、一対の振動腕部24,25の外表面上には、振動腕部24,25を振動させる図示しない一対の第1の励振電極と第2の励振電極とからなる励振電極と、第1の励振電極及び第2の励振電極と後述する引き回し電極27,28とを電気的に接続する一対のマウント電極とを有している(何れも不図示)。
【0029】
このように構成された圧電振動片5は、図2,図3に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の表面2bに形成された引き回し電極27,28上にバンプ接合されている。
【0030】
より具体的には、圧電振動片5の第1の励振電極が、一方のマウント電極及びバンプBを介して一方の引き回し電極27上にバンプ接合され、第2の励振電極が他方のマウント電極及びバンプBを介して他方の引き回し電極28上にバンプ接合されている。
これにより、圧電振動片5は、ベース基板2の表面2bから浮いた状態で支持されるとともに、各マウント電極と引き回し電極27,28とがそれぞれ電気的に接続された状態となる。
【0031】
外部電極6,7は、ベース基板2の裏面2aにおける長手方向の両側に設置されており、各貫通電極8,9及び各引き回し電極27,28を介して圧電振動片5に電気的に接続されている。
【0032】
より具体的には、一方の外部電極6は、一方の貫通電極8及び一方の引き回し電極27を介して圧電振動片5の一方のマウント電極に電気的に接続されている。
また、他方の外部電極7は、他方の貫通電極9及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片5の他方のマウント電極に電気的に接続されている。
【0033】
貫通電極8,9は、貫通孔21,22内に配設された芯材部31と、芯材部31と貫通孔21,22との間に充填されたガラスフリットが焼成されて形成された筒体32とから構成されている。
貫通電極8,9は、貫通孔21,22を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、外部電極6,7と引き回し電極27,28とを導通させる役割を担っている。
【0034】
具体的に、一方の貫通電極8は、外部電極6と基部26との間で引き回し電極27の下方に位置しており、他方の貫通電極9は、外部電極7と振動腕部25との間で引き回し電極28の下方に位置している。
【0035】
筒体32は、両端が平坦で且つベース基板2と略同じ厚みに形成されるとともに、貫通孔21,22の形状に合わせて、筒体32の外形が円錐台状(断面テーパ状)となるように形成されている。
また、本実施形態における筒体32は、ガラス体32aで構成されている。
【0036】
ガラス体32aは、ペースト状のガラスフリットが貫通孔21,22と芯材部31との間に埋め込まれた状態で焼成されたものであって、これら貫通孔21,22に対して強固に固着されている。
具体的に、ガラス体32aは、ベース基板2の厚さ方向において、ほぼ全域に亘って貫通孔21,22を埋めるように形成されている。
【0037】
この場合、ガラス体32aにおける厚さ方向の一端側の端面が、ベース基板2の表面2bと面一に形成されて、芯材部31とともにキャビティC内に露出している。
一方、ガラス体32aにおける厚さ方向の他端側の端面は、ベース基板2の裏面2aと面一に形成されて、芯材部31とともに外部に露出している。
そして、筒体32(ガラス体32a)の中心には、芯材部31が筒体32の中心孔を貫通するように配されている。
【0038】
上述した芯材部31は、例えば、Fe−Ni合金(42アロイ)などの、熱膨張係数αがガラスフリットよりも小さい金属材料(α=6〜7ppm)により円柱状に形成された導電性の芯材であり、筒体32と同様に両端が平坦で、かつベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。
【0039】
なお、貫通電極8,9が完成品として形成された場合には、上述したように芯材部31は、円柱状でベース基板2の厚さと同じ厚さとなるように形成されているが、製造過程では、例えば図5に示すように、芯材部31の一方の端部に連結された平板状の土台部36とともに鋲体型の金属ピン37を形成している。
また、この土台部36は製造過程において、研磨されて除去されている(後に製造方法で説明する)。
貫通電極8、9は、導電性の芯材部31を通して電気導通性が確保されている。
【0040】
リッド基板3の内面3b全体には、陽極接合用の接合材23が形成されている。
具体的に、接合材23は、額縁領域3c及び凹部3aの内面全体に亘って形成されている。
本実施形態の接合材23はSi膜で形成されているが、接合材23をAlで形成することも可能である。
なお接合材23として、ドーピング等により低抵抗化したSiバルク材を可能することも可能である。
そして後述するように、この接合材23とベース基板2とが陽極接合され、キャビティCが真空封止されている。
【0041】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極6,7に対して、所定の駆動電圧を印加する。
これにより、圧電振動片5の各励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部24,25を接近または離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。
そして、この一対の振動腕部24,25の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0042】
(パッケージの製造方法)
次に上述した圧電振動片を収容したパッケージ(圧電振動子)の製造方法について図6,7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
図6,7は、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。図8は圧電振動子基板の研磨装置を示す図である。
図9は、ウエハ接合体の分解斜視図である。
【0043】
以下には、複数のベース基板2が連なるベース基板用ウエハ40と、複数のリッド基板3が連なるリッド基板用ウエハ50との間に複数の圧電振動片5を封入してウエハ接合体60を形成し、ウエハ接合体60を切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。
なお、図9に示す破線Mは、切断工程で切断する切断線を図示したものである。
【0044】
図6に示すように、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S01)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S30)と、組立工程(S50以下)とを有している。
これらのうち、圧電振動片作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S30)及びベース基板用ウエハ作製工程(S10)は、並行して実施することが可能である。
【0045】
(圧電振動片の製造方法)
初めに、圧電振動片作製工程を行って圧電振動片5を作製する(S01)。
また、圧電振動片5を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。
なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0046】
本実施形態の圧電振動片5の製造工程は、主に水晶ウエハ(圧電板)に圧電振動片5の外形形状を複数形成する外形形成工程S210と、各電極を水晶ウエハに形成する電極形成工程S220と、共振周波数を調整する周波数調整工程S230と、1枚の水晶ウエハから複数の圧電振動片を切り離す小片化工程S240とを備えている。
以下に各工程の詳細を説明する。
【0047】
(外形形成工程S210)
まず、水晶ウエハに圧電振動片5の外形形状を複数形成する外形形成工程S210を行う。
具体的には、ポリッシングが終了し、所定の厚みに高精度に仕上げられた水晶ウエハを準備する。
次いで、この水晶ウエハをフォトリソグラフィ技術によってエッチングして、水晶ウエハに圧電振動片5の外形形状を複数形成する。
以上で、外形形成工程S210が終了する。
【0048】
なお、水晶ウエハを所定の厚みに高精度に仕上げる研磨装置150は、例えば図8に示すように、平面視円形状の上定盤151と、上定盤151と同じ平面視円形状であって砥石により構成される砥石定盤を成す下定盤152と、下定盤152の中心部に回転可能に設けられたサンギヤ153と、下定盤152の外周を取り囲むインターナルギヤ154と、上定盤151と下定盤152との間で、サンギヤ153とインターナルギヤ154との間に噛合され、サンギヤ153とインターナルギヤ154との協働により自転および公転するとともに水晶ウエハ155を保持する複数のキャリア157と、上定盤151に設けられた研磨布158と、上定盤151、下定盤152およびサンギヤ153、インターナルギヤ154をそれぞれ回転させる回転手段(例えば、上定盤151を回転させるドライバーヘッド160など)と、から概略構成されている。
【0049】
上定盤151と下定盤152は、同芯で水平方向に回転する構造である。
サンギヤ153の外周およびインターナルギヤ154の内周には、歯が一定のピッチで鉛直且つ円環状に配設されている。
サンギヤ153およびインターナルギヤ154は上定盤151および下定盤152と同芯で水平方向に回転する。
本実施の形態では、インターナルギヤ154が独自に回転する両面研磨装置を使用しているが、インターナルギヤ154が独自に回転せず、例えば下定盤152に固定され、下定盤152と共に回転する構造の両面研磨装置を使用してもよい。
【0050】
キャリア157は、円盤形状をなし、内方に水晶ウエハ155がはめ込まれて保持される複数の水晶ウエハ保持孔を備えている。
キャリア157は、その厚さが水晶ウエハ155の厚さよりも薄く、キャリア157の上下から水晶ウエハ155が突出するように水晶ウエハ155の側面を保持する。
【0051】
また、キャリア157の外周には、歯が一定のピッチで鉛直且つ円環状に配設されている。
そして、キャリア157は固定されず、キャリア157の歯が、回転するサンギヤ153およびインターナルギヤ154の歯とかみ合うことでキャリア157は自転および公転する構成である。
【0052】
そして、水晶ウエハ155に接触する上定盤151の表面状態と、水晶ウエハ155に接触する下定盤152の表面状態とが異なるように、かつ、下定盤152による水晶ウエハ155の研磨量が上定盤151による水晶ウエハ151の研磨量よりも大きくなるように構成されている。
つまり、上定盤151の表面を、例えばスエード系などの研磨布158により覆い、該研磨布158を介して上定盤151を水晶ウエハ155に接触させ、下定盤152を砥石(例えば、番定600〜1000のダイヤモンドなど)により構成される砥石定盤とする。
【0053】
そして、研磨時に、上定盤151および下定盤52と、水晶ウエハ155との間に、水(研削水)のみを供給し、研磨剤の供給を禁止している。
【0054】
水晶ウエハ155の研磨方法では、まず、水晶ウエハ155をキャリア157の水晶ウエハ保持孔に設置する。
そして、水晶ウエハ155の上下面に水(研削水)のみを供給させながら、上定盤151、下定盤152およびサンギヤ153、インターナルギヤ154をそれぞれ回転させ、水晶ウエハ155を保持したキャリア157も自転および公転させる。
【0055】
そして、キャリア157に保持された水晶ウエハ155を、上定盤151によって下定盤152に向かい所定圧力で押圧し、研磨布158において滑らせつつ、下定盤152によって片面研磨する。
このようにして、所定の厚みの水晶ウエハの作成工程が終了する。
【0056】
(電極形成工程S220)
次に、圧電振動片5の外形が形成された水晶ウエハの表面に、励振電極、引き出し電極およびマウント電極(いずれも図示略)の各電極を形成する電極形成工程S220を行う。
電極形成工程S220は、水晶ウエハの表面に金属膜を成膜する金属膜成膜工程S221と、金属膜に重ねてフォトレジスト(マスク材)を塗布するフォトレジスト塗布工程S223(マスク材塗布工程)と、フォトレジストを露光する露光工程S225と、フォトレジストを選択的に除去してマスクパターンを形成する現像工程S227と、マスクパターンを介して金属膜のエッチングを行い、各電極を形成するエッチング工程S229と、を有している。
【0057】
(金属膜成膜工程S221)
電極形成工程S220では、最初に、のちの励振電極となる金属膜を水晶ウエハに成膜する金属膜成膜工程S221を行う。
本実施形態では、水晶ウエハの表面に、水晶と密着性の良いクロムをスパッタ法や真空蒸着法等により数μm程度成膜している。
さらに、クロム膜の上から仕上層として金の薄膜を施して形成される。
なお、励振電極および引き出し電極はクロムのみの単層膜で形成され、マウント電極は、クロムと金との積層膜で形成される。
【0058】
(フォトレジスト塗布工程S223)
続いて、金属膜に重ねてフォトレジストを塗布するフォトレジスト塗布工程S223を行なう。
なお、前述のとおりフォトレジストには、露光された部分が軟化して除去されるポジ型レジストと、露光された部分が残存するネガ型レジストとがあるが、本実施形態では、ポジ型レジストを塗布している。
フォトレジストは、スプレーコート法やスピンコート法等により、金属膜に重ねて、水晶ウエハの表面全体に塗布される。
【0059】
(露光工程S225)
露光工程S225では、開口部を有するフォトマスクをフォトレジストに向けた状態でセットし、開口部を介してフォトレジストに紫外線を照射する。
フォトマスクの開口部は、フォトレジストを除去したい領域であって、後述のエッチング工程S229で電極膜を除去したい領域に対応して形成されている。換言すれば、フォトマスクの開口部は、励振電極、引き出し電極およびマウント電極(いずれも図示略)の各電極を形成しない領域に対応して形成される。
露光が終了したら、フォトマスクを取り除く。
【0060】
露光工程S225の後に、フォトレジストを選択的に除去してマスクパターンを形成する現像工程S227を行う。
現像工程S227は、不図示の水槽に貯留された現像液中にフォトレジストが塗布された水晶ウエハを浸漬してフォトレジストを選択的に除去し、レジストパターン(マスクパターン)を形成する。
【0061】
具体的には、現像工程S227では、フォトマスクの開口部を介して紫外線が露光された領域、すなわち、励振電極、引き出し電極およびマウント電極の各電極を形成しない領域に対応したフォトレジストを除去している。
【0062】
(洗浄工程S228)
続いて、現像工程S227で水晶ウエハに残存している現像液を洗い流す洗浄工程S228を行う。
洗浄工程S228では、不図示の水槽に貯留された純水内に水晶ウエハを浸漬し、純水内で水晶ウエハを揺動することで、水晶ウエハの表面に残存した現像液を洗い流している。
【0063】
(エッチング工程S229)
次に、レジストパターンをマスクとしてエッチングを行い、各電極を形成するエッチング工程S229を行う。
本工程では、レジストパターンによりマスクされている金属膜を残し、レジストパターンによりマスクされていない金属膜を選択的に除去する。
エッチング工程S229により、圧電振動片5の励振電極、引き出し電極およびマウント電極が形成される。
【0064】
(周波数調整工程S230)
次に、図1に示すように、一対の振動腕部24,25の先端に周波数調整用の粗調膜及び微調膜からなる重り金属膜(例えば、銀や金等)を形成する。
そして、水晶ウエハに形成された全ての振動腕部24,25に対して、共振周波数を粗く調整する周波数調整工程S230を行う。
重り金属膜の粗調膜にレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。
なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、圧電振動子1の状態で行う。
以上で、周波数調整工程S230が終了する。
【0065】
(小片化工程S240)
最後に水晶ウエハと圧電振動片5とを連結していた連結部を切断して、複数の圧電振動片5を水晶ウエハから切り離して小片化する小片化工程S240を行う。
これにより、1枚の水晶ウエハから、音叉型の圧電振動片5を一度に複数製造することができる。
この時点で、圧電振動片5の製造工程が終了し、圧電振動片5を複数得ることができる。
【0066】
(ベース基板用ウエハ作成工程)
以下に、ベース基板2となるベース基板用ウエハ40を製作する工程について説明する。
先ず、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を製作する工程を行う(S10)。
まず、図9に示すような、円板状のベース基板用ウエハ40を形成する。
具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去する(S11)。
また、図9中の点線Mは、後の切断工程においてベース基板用ウエハ40を切断する切断線を図示している。
【0067】
(貫通電極形成工程)
続いて、ベース基板用ウエハ40に貫通電極8、9を形成する貫通電極形成工程を行う(S10A)。
以下に、この貫通電極形成工程について詳細を説明する。
【0068】
まず、図10(a)に示すような、ベース基板用ウエハ40を貫通する一対の貫通孔21、22を複数形成する(S12)。
貫通孔21、22の形成は、例えばサンドブラスト法やプレス加工等で行う。サンドブラスト法やプレス加工では、貫通孔21、22をテーパー状に形成することができる。
このとき、貫通孔21、22のテーパーは、ベース基板用ウエハ40の下面(ベース基板2の外側)から上面(キャビティC側)に向かって漸次径が縮径するテーパーとする。
【0069】
続いて、貫通孔21、22内に中心軸を合わせて金属ピン37の芯材部31を上側から挿入し、この金属ピン37の土台部36とベース基板用ウエハ40とを接触させて上下反転させる(S13)。
このとき、図10(b)に示すように、貫通孔21、22はそのテーパー形状が下方に向かって漸次径が縮径する向きで、金属ピン37は土台部36の上側に芯材部31が位置する向きで配置される。
このとき土台部36の平面形状は貫通孔21、22の小径側21a、22aの開口よりも大きく、この小径側21a、22aの開口を塞ぐことができる形状とする。
【0070】
そして、図10(c)に示すように、貫通孔21、22と芯材部31との隙間にガラス体32aを成すペースト状のガラスフリットを充填し(S14)、所定の温度で焼成しガラスフリットを固化させて、ガラス体32aを形成する(S15)。
【0071】
このように、土台部36をベース基板用ウエハ40の表面に接触させることで、ペースト状のガラスフリットを確実に貫通孔21、22内に充填させることができる。
また、土台部36は、平板状に形成されているため、金属ピン37および、金属ピン37の設置されたベース基板用ウエハ40は、がたつき等がなく安定するので、作業性の向上を図ることができる。
そして、ガラスフリットは焼成されて固化し、ガラス体32aとなって、金属ピン37を密着状態で固定すると共に、貫通孔21、22に固着して貫通孔21、22を封止することができる。
【0072】
続いて、金属ピン37の土台部36を研磨して除去する(S16)。
土台部36の研磨は、図11(a),(b)に示すような、片面研磨装置51を使用して行う。
【0073】
片面研磨装置51は、平面視円形状の上定盤52と、上定盤52と同じ平面視円形状の下定盤53と、上定盤52の下側に複数配置されて、ベース基板用ウエハ40を吸着固定する平面視円形状のキャリア54と、上定盤52と下定盤53との間に研磨剤56を流入する研磨剤流入手段55と、上定盤52、下定盤53およびキャリア54をそれぞれ回転させる図示しない回転手段と、から概略構成されている。
【0074】
下定盤53は、溝の形成されていないソリッド定盤で構成され、図中の矢印A1の方向に水平方向に回転する構造である。
キャリア54は、上定盤52に水平方向に回転自在に保持されて図中の矢印A2の方向に自転する構造である。このように下定盤53が回転すると共に、キャリア54が回転する構造により、研磨面の片減りを無くし表面を平坦に研磨することができる。
土台部36を研磨する工程では、下定盤53の回転数は15rpmとし、キャリア54の回転数は45rpmとする。
【0075】
研磨剤流入手段55は、研磨剤56を収容し攪拌するモーターを備える収容部と、収容部内の研磨剤56を搬送し、上定盤52に6〜8ヶ所ほど設けられた流入口55aから下定盤53上に流入させるポンプと、研磨剤56のPHを測定するPH測定器とを備えている。
片面研磨装置51では、研磨剤56を供給しながら研磨を行い、研磨剤56が流入口55aから下定盤53に流入する流量は所定流量に設定されている。
【0076】
金属ピン37の土台部36の研磨方法は、まず、ベース基板用ウエハ40から突出した土台部36が下側となるように、ベース基板用ウエハ40をキャリア54に吸着固定させて片面研磨装置51に設置する。
このとき、上定盤52若しくはキャリア54の下側には、例えばガラスエポキシ樹脂(FR4)で形成された平板形状のダミー基板57を設置する。
ダミー基板57はその下端部が土台部36の下端部よりも下方に位置する厚みとする。
【0077】
そして、研磨剤56を供給しながら、下定盤53およびキャリア54をそれぞれ回転手段により回転させて研磨を行う。このとき、上定盤52から下定盤53の方向に15〜50g/cm2 の圧力をかけて研磨を行う。
そして、土台部36よりも先にダミー基板57が下定盤53に接触し、ダミー基板57が研磨され、この後に、土台部36が下定盤53に接触してダミー基板57と共に研磨される。
【0078】
このように、土台部36よりも先にダミー基板57が研磨され、その後に土台部36がダミー基板57と共に研磨されることにより、下定盤53からベース基板用ウエハ40に対して徐々に圧力を負荷することが可能になり、ベース基板用ウエハ40の損傷を防止することができる。
このようにして土台部36を撤去し、図10(d)に示すように、芯材部31のみを筒体32の内部に残す。
【0079】
続いて、土台部36が撤去されたベース基板用ウエハ40のガラス面40aを研磨する工程を行う(S17)。
ガラス面40aの研磨する工程は、主に焼成によりくぼみが生じたフリットガラスを平坦にするためのもので、例えば、ガラス製やセラミック製などの薄板状をしたウエハの表裏両面を研磨する両面研磨装置を使用して行う。
【0080】
図12(a)、(b)に示すように、両面研磨装置71は、平面視円形状の上定盤72と、上定盤72と同じ平面視円形状の下定盤73と、下定盤73の中央に位置するサンギヤ74と、下定盤73の外周を取り囲むインターナルギヤ75と、上定盤72と下定盤73との間で、サンギヤ74とインターナルギヤ75との間に設置され、ベース基板用ウエハ40を保持する複数のキャリア76と、ベース基板用ウエハ40の両面に研磨剤77を流入する研磨剤流入手段78と、上定盤72、下定盤73およびサンギヤ74、インターナルギヤ75をそれぞれ回転させる図示しない回転手段と、から概略構成されている。
【0081】
上定盤72と下定盤73とは、同芯で水平方向に回転する構造である。このベース基板用ウエハ40のガラス面40aを研磨する工程では、上定盤72の回転数は45rpmとし、下定盤73の回転数は15rpmとする。
上定盤72と下定盤73との研磨側の表面には、研磨パッド79、80が貼着されている。この研磨パッドは、例えば酸化セリウムで形成されているものを使用する。
【0082】
サンギヤ74の外周およびインターナルギヤ75の内周には、歯74a、75aが一定のピッチで鉛直且つ円環状に配設されている。サンギヤ74およびインターナルギヤ75は上定盤72および下定盤73と同芯で水平方向に回転する。
本実施の形態では、インターナルギヤ75が独自に回転する両面研磨装置71を使用しているが、インターナルギヤが独自に回転せず、例えば下定盤に固定され、下定盤と共に回転する構造の両面研磨装置を使用してもよい。
【0083】
キャリア76は、円盤形状をなし、内方にベース基板用ウエハ40がはめ込まれて保持される複数のベース基板用ウエハ保持孔76bを備えている。
キャリア76は、その厚さがベース基板用ウエハ40の厚さよりも薄く、キャリア76の上下からベース基板用ウエハ40が突出するようにベース基板用ウエハ40の側面を保持する。
【0084】
また、キャリア76の外周には、歯76aが一定のピッチで鉛直且つ円環状に配設されている。
そして、キャリア46は固定されず、キャリア76の歯76aが、回転するサンギヤ74およびインターナルギヤ75の歯74a、75aとかみ合うことでキャリア76は自転および公転する構成である
【0085】
研磨剤流入手段78は、研磨剤77を収容し攪拌するモーターを備える図示しない収容部と、収容部内の研磨剤77を搬送し、上定盤52に8ヶ所ほど設けられた流入口78aからベース基板用ウエハ40の上下面に研磨剤77を流入させる図示しないポンプと、を備えている。
【0086】
また、研磨剤流入手段78は、下定盤73から外部へ流出した研磨剤77を回収する研磨剤回収部81を備え、回収された研磨剤77は再度流入口78aへ搬送できる仕組みとなっている。
ベース基板用ウエハ40のガラス面40aを研磨する工程では、研磨剤77が流入口78aからベース基板用ウエハ40上下面に流入する流量は10L/min程に設定されている。
研磨剤77には、一般的にガラス面の研磨に使用される酸化セリウムなどを使用する。
【0087】
ベース基板用ウエハ40のガラス面40aの研磨方法では、まず、土台部36が除去されたベース基板用ウエハ40をキャリア76のベース基板用ウエハ保持孔76bに設置する。
そして、ベース基板用ウエハ40の上下面に研磨剤77を供給させながら、上定盤72、下定盤73およびサンギヤ74、インターナルギヤ75をそれぞれ回転させ、ベース基板用ウエハ40を保持したキャリア76も自転および公転させる。
【0088】
そして、キャリア76に保持されたベース基板用ウエハ40のガラス面40aを上定盤72および下定盤73に貼着された研磨パッド79、80によって研磨する。
このとき、上定盤72から下定盤73の方向に100〜500g/cm2 の圧力をかけて研磨を行う。
【0089】
続いて、ベース基板用ウエハ40から突出した芯材部31を研磨する工程を行う(S18)。
この芯材部31の研磨は、上述した金属ピン37の土台部36の研磨方法と同様に片面研磨装置51で片面ずつ研磨する。
このとき、土台部36の研磨で使用したダミー基板57を使用せずに芯材部31と下定盤53接触させて研磨を行う。
このように、片面ずつ芯材部31の研磨を行うことによって、上下の研磨量を均等にすることができる。
【0090】
また、芯材部31の研磨は両面行わずに、後にキャビティC側となる面のみとしてもよい。
そして、芯材部31の突出した部分を研磨した後には、図10(e)から図10(f)に示すように、ベース基板用ウエハ40のガラス面40aと貫通電極8、9の表面とが、略面一な状態となる。
このようにして、ベース基板用ウエハ40に貫通電極8、9が形成される。
【0091】
次に、ベース基板用ウエハ40の上面に導電性材料をパターニングして、接合膜を形成する接合膜形成工程を行う(S19)と共に、引き回し電極形成工程を行う(S20)。
このようにして、ベース基板用ウエハ40の製作工程が終了する。
【0092】
(リッド基板用ウエハ作成工程)
次に、ベース基板2の製作と同時または前後のタイミングで、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するリッド基板用ウエハ作製工程を行う(S30)。
リッド基板3を製作する工程では、まず、のちにリッド基板3となる円板状のリッド基板用ウエハを形成する。
【0093】
具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去する(S31)。
次いで、リッド基板用ウエハにエッチングやプレス加工などによりキャビティC用の凹部3aを形成する(S32)。
【0094】
次に、後述するベース基板用ウエハ40との間の気密性を確保するために、ベース基板用ウエハ40との接合面となるリッド基板用ウエハ50の第1面50a側を少なくとも研磨する研磨工程(S33)を行い、第1面50aを鏡面加工する。
【0095】
次に、リッド基板用ウエハ50の第1面50a全体(ベース基板用ウエハ40との接合面及び凹部3aの内面)に接合材23を形成する接合材形成工程(S34)を行う。
このように、接合材23をリッド基板用ウエハ50の第1面50a全体に形成することで、接合材23のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。
【0096】
なお、接合材23の形成は、スパッタやCVD等の成膜方法によって行うことができる。
また、接合材形成工程(S34)の前に接合面を研磨しているので、接合材23の表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。
以上により、リッド基板用ウエハ作成工程(S30)が終了する。
【0097】
(組立工程)
次に、ベース基板用ウエハ作成工程(S10)で作成されたベース基板用ウエハ40の引き回し電極27上に、圧電振動片作成工程(S01)で作成された圧電振動片5を、金等のバンプBを介してマウントする(S50)。
そして、上述した各ウエハ作成工程で作成されたベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる、重ね合わせ工程を行う(S60)。
【0098】
具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、ベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を正しい位置にアライメントする。
これにより、マウントされた圧電振動片5が、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0099】
重ね合わせ工程(S60)後、重ね合わせた2枚のベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構によりウエハの外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S70)。
【0100】
具体的には、接合材23とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。
すると、接合材23とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。
これにより、圧電振動片5をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合されたウエハ接合体60を得ることができる。
【0101】
そして、本実施形態のようにリッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40同士を陽極接合することで、接着剤等でリッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40を接合した場合に比べて、経時劣化や衝撃等によるずれ、ウエハ接合体60の反り等を防ぎ、リッド基板用ウエハ50およびベース基板用ウエハ40をより強固に接合することができる。
【0102】
この後、一対の貫通電極8,9にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極6,7を形成し(S80)、圧電振動子1の周波数を微調整する(S90)。
そして、接合されたウエハ接合体60を切断線Mに沿って切断し、小片化する切断工程(S100)を行う。
【0103】
そして、電気特性検査工程(S110)では、圧電振動子1の共振周波数や共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等も併せてチェックする。
最後に、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。
以上により、圧電振動子1が完成する。
【0104】
上述した本実施の形態による研磨方法によれば、研磨装置150の上定盤151は、主に水晶ウエハ155を下定盤152に向かい押圧するだけであって、上定盤151による水晶ウエハ155の研磨を抑制しつつ下定盤152による水晶ウエハ155の研磨を促進し、いわば片面研磨を適切に行なうことができる。
しかも、水晶ウエハ155は自転および公転することから、水晶ウエハ155の平行度を向上させ、水晶ウエハ155の研磨を適切に行なうことができ、水晶ウエハ155にクラックや欠けが生じることを防ぎ、水晶ウエハ155を平坦にすることができ、水晶ウエハ155を所定の厚みに高精度に仕上げることができる。
【0105】
さらに、上述した本実施の形態による圧電振動片の製造方法によれば、水晶ウエハ155の厚さ精度および平行度を向上させることができ、圧電振動片5の作動信頼性を向上させることができる。
【0106】
さらに、上述した本実施の形態による圧電振動子1によれば、作動信頼性を向上させることができる。
【0107】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図13を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図13に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。
この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。
基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。
これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。
なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0108】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、該圧電振動子1内の圧電振動片5が振動する。
この振動は、圧電振動片5が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。
入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0109】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、圧電振動片5は、厚さ精度および平行度が向上されている水晶ウエハ155から作成されていることから、圧電振動片5の作動信頼性を向上させることができ、作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。
【0110】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図14を参照して説明する。
なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。
外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。
また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。
しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0111】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。
この携帯情報機器110は、図14に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。
電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。
この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。
そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0112】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。
また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0113】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。
圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片5が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。
発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。
そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0114】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。
【0115】
音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。
増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0116】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
【0117】
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。
また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0118】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。
このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。
【0119】
電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。
特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。
更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0120】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。
この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0121】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、作動の信頼性が向上した高品質な圧電振動子1を備えているため、携帯情報機器自体も同様に導通性が安定して確保され、作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。
【0122】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図15を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。
40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0123】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。
長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。
受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0124】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。
続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。
CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0125】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。
例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。
従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0126】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、作動の信頼性が向上した高品質な圧電振動子1を備えているため、電波時計自体も同様に導通性が安定して確保され、作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。
【0127】
以上、本発明による研磨方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
上述した実施の形態では、上定盤151の表面を研磨布158により覆い、該研磨布158を介して上定盤151を水晶ウエハ155に接触させ、下定盤152を砥石により構成される砥石定盤としたが、これに限定されない。
つまり、水晶ウエハ155に接触する上定盤151の表面状態と、水晶ウエハ155に接触する下定盤152の表面状態とが異なるように、かつ、下定盤152による水晶ウエハ155の研磨量が上定盤151による水晶ウエハ151の研磨量よりも大きくなるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0128】
1 圧電振動子
5 圧電振動片
100 発振器
110 携帯情報機器
130 電波時計
150 研磨装置
151 上定盤
152 下定盤
153 サンギヤ
154 インターナルギヤ
155 水晶ウエハ
157 キャリア
158 研磨布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上定盤と下定盤とによってウエハを厚さ方向の両側から挟み込んで、前記ウエハを研磨する研磨方法であって、
前記下定盤の中心部に回転可能に設けられるサンギヤと、前記下定盤の外周部に設けられるインターナルギヤと、
前記サンギヤと前記インターナルギヤとの間に噛合され、前記サンギヤと前記インターナルギヤとの協働により自転および公転するとともに前記ウエハを保持可能なキャリアとを用いて、
前記ウエハに接触する前記上定盤の表面状態と前記ウエハに接触する前記下定盤の表面状態とが異なるように、かつ、前記下定盤による前記ウエハの研磨量が前記上定盤による前記ウエハの研磨量よりも大きくなるように前記ウエハを研磨する研磨方法。
【請求項2】
前記上定盤の表面を研磨布により覆い、該研磨布を介して前記上定盤を前記ウエハに接触させ、
前記下定盤を砥石により構成される砥石定盤とすることを特徴とする請求項1に記載の研磨方法。
【請求項3】
前記上定盤および前記下定盤と、前記ウエハとの間に、水のみを供給することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の研磨方法。
【請求項4】
フォトリソグラフィ技術を用いて、圧電振動片の外形が形成された圧電板の表面に電極を形成するための圧電振動片の製造方法であって、
請求項1から請求項3の何れか1つに記載の研磨方法によって前記圧電板を研磨する工程を含むことを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電振動片の製造方法により製造された圧電振動片を備えていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項7】
請求項5に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項5に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−200853(P2012−200853A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70540(P2011−70540)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】