説明

研磨装置及び研磨パッド

【課題】簡単な構成で効率良く基板を研磨する。
【解決手段】CMP装置1は、プラテン2上に薄膜フィルム4が取り付けられ、薄膜フィルム4を覆うように研磨パッド5が固定されている。薄膜フィルム4の外径は研磨パッド5の外径より小さいので、プラテン2の上方には研磨パッド5の段差5Aが形成される。研磨パッド5の上方には、基板6を保持する研磨ヘッド10が回転及び往復移動可能に配置されている。基板6の研磨時に、基板6は段差5Aに押し当てられる。薄膜フィルム4によって、プラテン2から研磨パッド5の上面までの距離が調整されることで、研磨レートが制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置及び研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、絶縁膜や導電膜などの表面を化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)法によって研磨して表面を平坦化することがある。CMP法に用いられるCMP装置は、研磨プラテン(以下、プラテンという)と呼ばれる定盤上に、研磨パッドが取り付けられている。研磨パッドは1層又は2層構造を有する。2層構造の場合には、基板が押し当てられる上地層の下に弾性部材からなる下地層が貼り付けられる。さらに、プラテンの上方には、基板を保持する研磨ヘッドが設けられている。基板の研磨時には、スラリと呼ばれる研磨剤を研磨パッド上に滴下し、プラテンと研磨ヘッドのそれぞれを回転させながら基板上の膜を研磨する。
【0003】
CMP装置では、基板を研磨した後や、基板の研磨後に、コンディショニングと呼ばれる目立てが行われる。コンディショニングの目的は、大きく分けて2つある。
【0004】
コンディショニングの1つ目の目的は、研磨パッドの表面の状態維持及び回復である。研磨中には、研磨屑(膜、スラリ内の砥粒など)が発生する。研磨屑が研磨パッドの表面の微細な凹凸に詰まると研磨能率が低下するので、研磨中に詰まった屑をコンディショニングによって除去する。また、コンディショニングには、研磨パッドの表面を荒らして研磨効率を上げる効果や、研磨時にダメージを受けた研磨パッドの表面層を削り取る効果もある。このように、コンディショニングによって、研磨パッドの表面が研磨に最適な状態になる。
【0005】
さらに、コンディショニングの2つ目の目的は、所望する研磨分布を得るために、研磨パッド5の厚さ分布(以下、パッドプロファイルとする)として所望のプロファイルを形成することである。コンディショニング時には、コンディショニングディスクの移動速度、加圧力、回転数などの要素を任意に設定することで、研磨パッドのプロファイルを任意の形状にできる。研磨パッドのある特定部分を薄くしたいときは、その部分のコンディショニングディスクの滞在時間を長くし、逆に厚く残したいときは滞在時間を短くする。
【0006】
ここで、研磨パッドのプロファイルがCMP装置の研磨特性に与える影響について説明する。研磨時に、基板は、回転しながら研磨パッドの中心と外周の間を往復運動する。図18に研磨パッドの厚さのプロファイルを例示する。横軸は研磨パッド上の位置を示す。横軸の中央が研磨パッドの中央に相当し、横軸の中央から左右に離れるに従って研磨パッド上の位置も外周側に移動する。また、縦軸は研磨パッドの厚さを示す。基板やコンディショニングディスクは、矢印AW1に示すように研磨パッドの中央と外周の間で往復移動させられる。
【0007】
ラインL31に示す研磨パッドの厚さのプロファイルでは、中央と外周の間で研磨パッドの厚さのピークがある。従って、ラインL31の研磨パッドでは、基板の中心部が最も研磨パッドに接触する。これに対して、ラインL32に示す研磨パッドのプロファイルでは、研磨パッドの外周部分の厚さが大きい。従って、ラインL32の研磨パッドでは、基板の外周部が最も研磨パッドに接触し易くなる。
【0008】
例えば、基板の中心部の研磨レートを早くしたい場合(センタファスト)は、図18のラインL31に示すように研磨パッド5のプロファイルをコンディショニングによって調
整する。これに対して、基板の外周部の研磨レートを早くしたい場合(エッジファスト)は、ラインL32に示すように研磨パッドのプロファイルをコンディショニングによって調整する。研磨レートは、研磨に使用するスラリや研磨条件、例えば基板への圧力、プラテンや研磨ヘッドの回転数などの影響も大きく受けるため、必ずしもセンタファストやエッジファストになる訳ではないが、レートプロファイルを制御する一つの手法として用いられている。
【0009】
また、従来の研磨装置では、研磨パッド又はプラテンの圧縮性の違いを利用した研磨によって、基板の研磨量を均一化させている。この研磨装置では、研磨パッドの底部、又はプラテンの上面のいずれか一方に凹部を形成し、凹部にリング状のクッション部材を収容し、圧縮性の異なる第1の研磨領域と第2の研磨領域を形成している。ここで、第1の研磨領域の圧縮性は、第2の研磨領域の圧縮性より低くなっており、圧縮性の違いによって基板に研磨パッドが接触する圧力が均一になるようにコントロールされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−237205
【特許文献2】特表2002−524863
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
研磨パッドは、未使用の状態では図18のラインL33に示すように一定の膜厚を有する。このために、ラインL31やラインL32に示すようなプロファイルを得るためには、コンディショニングによって研磨パッドの表面を研磨する必要がある。コンディショニングを実施せずに研磨を開始すると、膜厚が不均一になる。しかしながら、コンディショニングによって膜厚が均一になるプロファイルを形成するには時間がかかる。さらに、新品の研磨パッドを削るので、研磨パッドの寿命が短くなる。
【0012】
また、クッション部材を収容する構成では、研磨パッド又はプラテンに溝を形成する必要があるために、装置構造が複雑になる。また、クッション部材を収容する構成では、研磨パッドの膜厚のプロファイルを容易に変更できない。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で効率良く基板を研磨できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態の一観点によれば、プラテンと、前記プラテン上に配置されるシート材と、前記シート材上に配置される第一の面と、基板が押し当てられる第二の面を有し、前記プラテンからの前記第二の面までの高さが、前記シート材の膜厚によって変化させられた研磨パッドと、を含むことを特徴とする研磨装置が提供される。
【0014】
また、実施形態の別の観点によれば、プラテン上に配置される下地層と、基板が押し付けられる上地層とを有し、前記下地層の一部が前記上地層側に突出していることを特徴とする研磨パッドが提供される。
【発明の効果】
【0015】
研磨パッドの場所ごとの研磨レートの分布を制御し易くなる。研磨パッドを研磨して膜厚分布を調整する作業を簡略化でき、作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る研磨装置の概略構成の一例を示す図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態に係る研磨装置において研磨パッドを取り付けたプラテンの一例を示す平面図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態に係る研磨装置において基板中心からの距離と研磨レートの関係の一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る研磨装置の概略構成の一例を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態に係る研磨パッドの一例を示し、(a)は一部断面図、(b)はプラテンに取り付けた状態を示す一部断面図、(b)は変形例の断面図である。
【図6】図6は、本発明の第3の実施の形態に係る研磨パッドの一例を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面であって研磨装置を側方からみた図、(b)は研磨装置の平面図である。
【図7】図7は、本発明の第3の実施の形態に係る研磨装置の研磨量と段差の関係の一例を示す図である。
【図8】図8は、本発明の第3の実施の形態において、図7のグラフ作成に用いたサンプルの断面図である。
【図9】図9は、本発明の第3の実施の形態の変形例に係る研磨パッドの一例を示す平面図である。
【図10】図10は、本発明の第3の実施の形態の変形例に係る研磨パッドの一例を示す平面図である。
【図11】図11は、本発明の第4の実施の形態に係る研磨パッドの一例を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線に沿った断面であって研磨装置を側方からみた図、(b)は研磨装置の平面図である。
【図12】図12は、本発明の第4の実施の形態の変形例に係る研磨パッドの一例を示す平面図である。
【図13】図13は、本発明の第4の実施の形態の変形例に係る研磨パッドの一例を示す平面図である。
【図14】図14は、本発明の第5の実施の形態に係る研磨パッドの一例を示す平面図である。
【図15】図15は、本発明の第5の実施の形態の変形例に係る研磨パッドの平面図である。(その1)
【図16】図16は、本発明の第5の実施の形態の変形例に係る研磨パッドの平面図である。(その2)
【図17】図17は、本発明の第5の実施の形態の変形例に係る研磨パッドの一部を拡大した平面図である。
【図18】図18は、従来の研磨パッド上の位置と研磨パッドの厚さの関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明の目的及び利点は、請求の範囲に具体的に記載された構成要素及び組み合わせによって実現され達成される。
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、典型例及び説明のためのものであって、本発明を限定するためのものではない。
【0018】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1にCMP装置の一例を示す。CMP装置1は、回転テーブルになるプラテン(定盤)2を有する。プラテン2は、回転軸3によって回転自在に支持されている。プラテン2の上面には、薄膜フィルム4(シート材)が貼り付けられている。図2に示すように、薄
膜フィルム4は、円形に形成されており、その外径はプラテン2の外径より小さい。薄膜フィルム4は、不図示の接着剤やテープによってプラテン2上に、中心位置がプラテン2と一致するように位置決めして固定されている。
【0019】
さらに、図1に示すように、薄膜フィルム4の上には、研磨パッド5が貼り付けられている。研磨パッド5は、薄膜フィルム4の外径より大きい。このために、研磨パッド5は、薄膜フィルム4を含むプラテン2の上面を覆う。薄膜フィルム4が所定の膜厚を有することから、研磨パッド5の上面には、段差5Aが形成される。段差5Aの内側の領域の研磨パッド5の高さは、段差5Aの外側の領域の研磨パッド5の高さより高くなる。即ち、プラテン2から研磨パッド5の上面までの高さは、中央部分が高く、段差5Aより外側が相対的に低くなっている。
【0020】
研磨パッド5は、下地層(サブパット)8と、上地層9を積層させた2層構造を有する。下地層8は、プラテン2の上方に配置される第一の面8Aを有する。第一の面8Aには、不図示の溝や凹凸が必要に応じて形成されている。下地層8には、ポリウレタン系の素材が多く用いられ、ポリウレタンや、ポリウレタンをスポンジ状にしたフォームや、ポリウレタンを含ませた不織布が使用される。上地層9は、基板6が押し当てられる第二の面9Aを有する。上地層9には、例えば発泡ウレタンが用いられる。下地層8と上地層9は、例えば、第一の面8Aが下向きに、第二の面9Aが上向きになるように、両面テープや接着剤で固定されている。研磨パッド5は、単層又は2層以上でも良い。
【0021】
プラテン2の上方には、研磨ヘッド10が配置されている。研磨ヘッド10は、半導体装置を製造する基板6を保持可能で、所定の圧力で基板6を研磨パッド5に押し当てる不図示の加圧機構、例えばマルチ・ゾーン型加圧室などが設けられている。研磨ヘッド10は、回転軸11によって回転可能に支持されている。研磨ヘッド10の回転軸11は、プラテン2の回転軸3と平行に配置されている。さらに、研磨ヘッド10は、プラテン2の上方で径方向の中心と径方向外側との間で往復移動可能に支持されている。図2に示すように、基板6が研磨パッド5に押し当てられる範囲の半径r2は、薄膜フィルム4の外径r1より大きい。このために、研磨時には、基板6が段差5Aに押し当てられる。
【0022】
また、プラテン2の上には、コンディショングディスク15が回転軸16によって回転可能に配置されている。コンディショニングディスク15には、研磨布1の目立てをするやすり部材が取り付けられている。パッドコンディショニングディスク15は、プラテン2上での回転と、プラテン2上の移動が可能である。さらに、プラテン2の上方には、研磨パッド5上にスラリを供給する2つのスラリ配管17と、洗浄等のために研磨パッド5上に純水(脱イオン水)を供給することのできる液体配菅18とが設けられている。
【0023】
次に、CMP装置1を用いて基板表面の研磨の概略について説明する。
最初に、プラテン2上に薄膜フィルム4を例えば接着材やテープを用いて固定する。さらに、薄膜フィルム4を覆うように研磨パッド5を取り付ける。研磨パッド5の第一の面8Aは、薄膜フィルム4の上面と、薄膜フィルム4から露出しているプラテン2上に密着させる。
【0024】
続いて、被加工物である基板6を保持した研磨ヘッド10を研磨パッド5上に配置し、スラリをスラリ配管17から供給しつつプラテン2、研磨ヘッド10を回転させる。さらに、研磨ヘッド10を研磨パッド5の中心と外周の間で往復運動させる。これによって、研磨パッド5と基板6とがスラリの砥粒を介して擦れて発熱する。その結果、基板6と研磨パッド5の界面の温度が上昇して化学機械研磨が進行する。化学反応が始まると、化学反応による発熱も重畳され、温度上昇の速度が促進される。やがて、定常状態に達し、一定速度の研磨が開始される。研磨が終了したら、最初に研磨ヘッド10を上方に引き上げ
て、純水で高圧洗浄を行なって基板6の表面の研磨の残渣を除去する。さらに、液体配管18から純水を供給しながらパッドコンディショニングディスク15を研磨パッド5に押しつけて、両者を回転させながらコンディショニングディスク15で研磨パッド5の目立てをする。このとき、コンディショニングディスク15を研磨パッドの中心と外周の間で往復運動させる。
【0025】
ここで、CMP装置1の研磨条件の一例について説明する。
研磨パッド5は、例えば、ニッタ・ハース社製IC−1400の積層タイプを用い、その直径は例えば775mmとした。研磨ヘッド10のリテーナリングの圧力は740g/cmとし、加圧室の第1のゾーンの圧力を740g/cm、第2のゾーンの圧力を240g/cm、第3のゾーンの圧力を240g/cmとした。スラリ流量は300ml/min、プラテン2の回転数は53rpm、研磨ヘッドの回転数は47rpmとした。
【0026】
コンディショニングディスク15には、粒度80/100メッシュのダイヤモンドをリング状に幅20mmの範囲に、6個/mm〜8個/mmの密度で配置した。また、目立てのコンディショニング条件は、コンディショニングディスク15の荷重を3kgf、基板研磨時のコンディショニング時間を17秒、プラテン2の回転数を93rpm、研磨ディスク15の回転数は108rpmとした。
【0027】
スラリには、例えば、リンゴ酸を0.07wt%〜0.2wt%、ベンゾトリアゾールを0.1wt%〜0.5wt%、ポリアクリル酸アンモニウムを固形分の濃度で0.01wt%〜0.08wt%となるように超純水で調整した溶液に、過酸化水素が6wt%になるように調合した。
【0028】
さらに、薄膜フィルム4には、直径600mm、厚さ0.2mmのPET製薄膜フィルムを用いた。研磨パッド5が積層タイプで下地層8がクッションの役割を果たすので、薄膜フィルム4は必要な段差5Aの高さよりも厚い膜が用いられる。
【0029】
図3にCMP装置1における研磨レートの測定結果を示す。横軸は、基板中心からの距離を示し、縦軸は研磨レートの測定結果を示す。ラインL1に、基板の研磨レートプロファイル(研磨レートの分布)を示す。研磨レートプロファイルは、薄膜フィルム4を研磨パッド5の下に貼り付けた後、コンディショニングせずにダミー基板を4枚流した後に測定した。このときの研磨時間の総計は、0.4時間程度であった。
【0030】
また、比較例として、ラインL2に平坦な研磨パッド5に対して0.4時間のコンディショニングしたときの研磨レートプロファイルを示す。同様に、ラインL3に平坦な研磨パッド5に対して2時間のコンディショニングしたときの研磨レートプロファイルを示す。
【0031】
ラインL2は、研磨パッド5をプラテン2に貼り付けた後、20分間(0.4時間)、コンディショニングした状態で研磨レートを測定した結果である。
ラインL3は、ラインL2に示す研磨を実施した後、Cuを1μm以上成膜したCu膜を連続して12枚、前記の研磨条件で60秒間研磨して研磨パッド5を立ち上げた。パッド立ち上げ後で、積算コンディショニング時間が約2時間になった時点で、Cu膜を1μm成膜した基板を60秒研磨して研磨レートを取得し、研磨レートプロファイルを算出した。
【0032】
ラインL2に示すように、積算コンディショニング時間が0.4時間のときの研磨レートは、基板の外周部の研磨レートが高くなっている。一方、ラインL3に示すように、積
算コンディショニング時間が約2時間になると、同じ研磨条件にも関わらず、基板の外周部で研磨レートが低下している。これは、研磨圧力も関係しているが、立ち上げ直後は、基板の外周部が研磨パッドにしっかり接触しているためであると考えられる。ところが、2時間程度コンディショニング及び研磨を実施すると、研磨パッドの外周部の残膜が薄くなる。この結果、研磨時に基板と研磨パッドが接触し難くなり、基板の外周部の研磨レートが低下すると考えられる。
【0033】
これに対し、ラインL1に示す本実施の形態のCMP装置1では、研磨パッド5は殆ど削っていないが、その研磨レートプロファイルは、ラインL3に示すコンディショニングを2時間した研磨レートプロファイルに非常に近い。即ち、従来であれば、時間をかけてコンディショニングしなければ得られなかった研磨レートプロファイルが、薄膜フィルム4を挿入することによって速やかに実現できる。
【0034】
以上、説明したように、この実施の形態では、薄膜フィルム4を用いることで、プラテン2から研磨パッド5の上面までの距離を簡単に調整することが可能になる。これによって、例えば、2時間程度のコンディショング及び研磨によって膜厚を減少させた研磨パッド5と同様の研磨レートプロファイルが得られる、このことから、研磨時間を短縮できる。さらに、研磨パッド5の表面を削り取る時間が少なくなるので、研磨パッド5の寿命を長くできる。薄膜フィルム4は、プラテン2と研磨パッド5の間に挿入すれば良いので、装置構成は簡略化である。このために、既存のCMP装置に簡単に適用できる。さらに、薄膜フィルム4は、プラテン2及び研磨パッド5から容易に取り外せるので、必要な研磨レートプロファイルに応じて薄膜フィルム4を容易に交換できる。
【0035】
ここで、この実施の形態の変形例について説明する。
図4(a)及び図4(b)に示すように、薄膜フィルム21(シート材)は、環状になっており、その外径r3は基板6が研磨パッド5に押し当てられる範囲の半径r2より小さい。薄膜フィルム21は、接着剤やテープによってプラテン2上に、中心位置がプラテン2と一致するように位置決めして固定されている。薄膜フィルム21の上には、研磨パッド5が貼り付けられている。研磨パッド5は、薄膜フィルム21の外径r3より大きく、薄膜フィルム21の全体と、薄膜フィルム21の内側で露出しているプラテン2の上面を覆っている。薄膜フィルム21が所定の膜厚を有するので、研磨パッド5の上面には、段差5Bが形成される。段差5Bの内側の領域の研磨パッド5の高さは、段差5Bの外側の領域の研磨パッド5の高さより低くなる。研磨パッド5の外周部分と基板6が接触し易くなるので、基板6の外周部の研磨レートを例えば高くできる。また、薄膜フィルム4の厚さや硬度を変えた場合にも、研磨レートプロファイルの制御が可能である。
【0036】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態について図面を参照して説明する。第1の実施の形態と同じ構成要素には同一の符号を付してある。また、第1の実施の形態と重複する説明は省略する。
図5(a)の側部断面図に示すように、積層タイプの研磨パッド5は、下地層45の厚さが場所ごとに異なる。下地層45は、上面に凸部45Aを有する。上地層5の厚さは、一定になっているが、下地層45の凸部45Aによって第二の面9Aの一部が凸部5Cを形成している。ここで、凸部45Aは、研磨パッド5の外周部分などに形成される。凸部45Aは、例えば環状に形成される。また、凸部45Aは、複数の円形や、ライン状、格子状に形成しても良い。
【0037】
図5(b)に示すように、研磨パッド5をプラテン2に貼り付けると、プラテン2から研磨パッド5の第二の面9Aまでの高さを場所ごとに変えることができる。これに対して、図示を省略するが、研磨パッド5の下地層45の膜厚を部分的に薄くすると、その上の上層9のパッド表面がプラテン2に貼り付けたときに他の領域に比べて相対的に下がる。
これらのケースでは、研磨パッド5とプラテン2の間に、薄膜フィルム4を挟み込んだ場合と同様の効果が得られる。
【0038】
また、図5(c)に示すように、研磨パッド5は、下地層8と、シート材46と、上地層9を積層して形成しても良い。シート材46は、例えば、下地層8と上地層9を接着する接着層でも良い。また、シート材46は、下地層8と上地層9のそれぞれに接着される薄膜でも良い。シート材46は、一部の膜厚が増加して凸部46Aを形成している。このために、上地層9の一部が凸部46Aによって押し上げて凸部5Cを形成する。凸部46Aは、例えば環状に形成される。また、凸部46Aは、複数の円形や、ライン状、格子状に形成しても良い。研磨パッド5とプラテン2の間に、薄膜フィルム4を挟み込んだ場合と同様の効果が得られる。
【0039】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態について図面を参照して説明する。前記の各実施の形態と同じ構成要素には同一の符号を付してある。また、前記の各実施の形態と重複する説明は省略する。
図6(a)の平面図に示すように、薄膜フィルム31は、リング形状を有し、中央に開口31Aを有する。さらに、薄膜フィルム31の内周部分には、複数の切り込みによって、凸部32が複数形成されている。凸部32は、径方向の中心に向かって延び、かつ周方向に沿って複数配置されている。各凸部32は、中心に向かうに従って幅が減少する。
【0040】
図6(b)の側部断面図、及び図6(c)の平面図に示すように、この薄膜フィルム31(シート材)は、プラテン2に貼り付けられる。さらに、薄膜フィルム31の上には、研磨パッド5が貼り付けられる。研磨パッド5の外周部分は、薄膜フィルム31が挿入されることによって、内周部分に比べて上方(基板6方向)に盛り上がり、段差5Dが形成される。薄膜フィルム31の凸部32が周方向に周期的に配列されていることから、研磨パッド5には上方に突出している領域34Aと、突出していない領域34Bとが交互に配置される。このために、段差5Dの形状は、薄膜フィルム31の形状に倣って、星型になる。各領域34A,34Bの外側は、薄膜フィルム31が環状に配置されているので、研磨パッド5は一様に上方に突出する。
【0041】
このCMP装置1では、凸部32の頂点を結ぶ仮想円の半径は、基板6が研磨パッド5に押し当てられる範囲の半径r2(図2参照)より小さい。従って、基板6の研磨時には、基板6に、突出する領域34Aと突出しない領域34Bとが交互に押し当てられる。この結果、基板6の表面のミクロな部分における平坦性が向上する。
【0042】
基板6の平坦性について調べた結果を図7に示す。また、平坦性の検査に使用したサンプルの概略図を図8に示す。図8に示すように、サンプル41は、シリコン基板6上に第1の酸化膜42を形成し、第1の酸化膜42の上にAlからなる導体層43を形成した。さらに、導体層43を覆うように第2の酸化膜44を形成した。導体層43の上には、第2の酸化膜44が突出している。ここで、第1及び第2の酸化膜42,44の合計の膜厚は2200nmとし、導体層43の上面は基板6から950nmまでの高さにある。導体層43の上方には、第2の酸化膜44が650nmの厚さで突出して段差44Aを形成している。第2の酸化膜44の突出量は、光学的に測定したデータに基づいて算出した。
【0043】
基板研磨時の研磨ヘッド10の研磨圧力は、インナーチューブの圧力を4.0psi、リテーナリングの圧力を6.0psi、メンブレンの圧力を4.0psiとした。また、プラテン2の回転数は103rpm、研磨ヘッド10の回転数は98rpmとした。スラリには、Cabot社製のSS−25を純水で2倍に希釈して使用し、流量は200ml/分とした。
【0044】
研磨後の段差44Aの厚さを測定した結果を示す図7において、横軸は研磨量を示し、縦軸は段差44Aの厚さを示す。ラインL21は、薄膜フィルム4を貼り付けたときの段差44Aの厚さの変化を示す。ラインL22は、薄膜フィルム4を貼り付けなかったときの段差44Aの厚さの変化を示す。研磨パッド5の下に薄膜フィルム4を貼り付けることによって、段差44Aが減少している。即ち、薄膜フィルム31に用いることで、研磨後の薄膜の平坦性が向上する。その他の効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0045】
ここで、図9に示す薄膜フィルム55(シート材)のように、凸部56の数を増加させても良い。薄膜フィルム55は、凸部56の数のみが薄膜フィルム51と異なる。凸部56の数を変化させることで、研磨後の薄膜の平坦性を制御し易くなる。
【0046】
また、図10に示す薄膜フィルム61(シート材)は、凸部62が内周に沿って複数形成されている。凸部62は、薄膜フィルム61の内周部分が略台形に切り欠かれることで形成されている。切り欠かれた部分63の周方向の長さが、図6(a)に示す薄膜フィルム31に比べて大きい。従って、薄膜フィルム61によって研磨パッド5が盛り上がる領域が、薄膜フィルム31に比べて少なくなる。
【0047】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態について図面を参照して説明する。前記の各実施の形態と同じ構成要素には同一の符号を付してある。また、前記の各実施の形態と重複する説明は省略する。
図11(a)に示すように、薄膜フィルム65(シート材)は、円形の外周部分に複数の切り込みが周方向に沿って形成されている。切り込みによって、径方向外側に向う凸部66が形成される。凸部66は、外側に向うに従って幅が減少する。
【0048】
図11(b)の側部断面図、及び図11(c)の平面図に示すように、薄膜フィルム65は、プラテン2に貼り付けられる。さらに、薄膜フィルム65の上には、研磨パッド5が貼り付けられる。研磨パッド5の内周部分は、薄膜フィルム65の厚さによって、内周部分に比べて相対的に盛り上がり、段差5Gが形成される。
【0049】
薄膜フィルム65は、凸部66が周方向に周期的に配列されていることから、プラテン2の中心からの距離が等しくても、上方(基板側)に突出している領域67Aと、突出していない領域67Bとが存在する。図11(c)に示すように、これら領域67A,67Bは、凸部66の配置に合わせて、周方向に交互に現れる。さらに、段差5Gの形状は、薄膜フィルム65の形状に倣って、星型になる。
【0050】
このCMP装置1では、研磨パッド5の外周部分において上方に突出する領域67Aと、突出しない領域67Bとが周方向に交互に配置される。凸部66の先端を結ぶ仮想円の半径は、基板6が研磨パッド5に押し当てられる範囲の半径r2(図2参照)より小さい。従って、基板6の研磨時には、基板6に、突出する領域67Aと突出しない領域67Bとが交互に押し当てられる。この結果、基板6の表面のミクロな部分における平坦性が向上する。段差5Gを形成することによる効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0051】
ここで、図12に示す薄膜フィルム71(シート材)のように、凸部72の数を増加させても良い。薄膜フィルム71は、凸部72の数のみが薄膜フィルム65と異なる。凸部72の数を変化させることで、研磨後の薄膜の平坦性を制御し易くなる。
また、図13に示す薄膜フィルム75(シート材)は、凸部76が内周に沿って複数形成されている。凸部76は、略台形に形成される。従って、薄膜フィルム75によって盛り上がる領域が、図11(a)に示す薄膜フィルム65に比べて多くなる。
【0052】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態について図面を参照して説明する。前記の各実施の形態と同じ構成要素には同一の符号を付してある。また、前記の各実施の形態と重複する説明は省略する。
図14に示すように、研磨パッド81の表面には、格子状の溝82が形成されている。溝82は、規則的に複数配列されている。このCMP装置1では、研磨パッド81の表面に格子状の溝82を有するので、スラリーの回り込み特性が良好になって、基板6の表面のミクロな部分における平坦性が向上する。
【0053】
ここで、溝82の深さは、場所によって変化させても良い。溝82が深い部分では、研磨パッド5の表面が研磨されても、溝82がなくならないので、基板6の表面のミクロな部分における平坦性を確保できる。深い溝82は、例えば、研磨パッド81の径方向の外側など、研磨時に圧力がかかり易い領域に形成することが好ましい。ここで、研磨パッド81には、溝82より浅い溝を形成しても良い。
【0054】
ここで、図15に示す研磨パッド85のように、丸い孔86を複数形成しても良い。この研磨パッド85においても、同様の効果が得られる。孔86の形状は、楕円形や多角形など、任意の形状にできる。また、孔86の深さは、場所によらず一定でも良いし、場所ごとに変化させても良い。さらに、孔86は、上地層9を貫通しても良いし、上地層9の厚さより浅く形成しても良い。
【0055】
また、図16に研磨パッド91は、同心円状の溝92が複数形成されている。溝92の深さは、場所によらず一定でも良いし、場所ごとに変化させても良い。
さらに、図17に示す研磨パッド95は、同心円状の複数の溝92と、格子状の溝82とを有する。これら研磨パッド91,95においても、前記と同様の効果が得られる。
【0056】
ここで、プラテン2上に前記の各実施の形態のいずれかの薄膜フィルム21,31,55,61,65,71を固定し、その上にいずれかの研磨パッド81,82,85,91,95を取り付けることで、前記の各実施の形態と同様の効果が得られる。
【0057】
ここで挙げた全ての例及び条件的表現は、発明者が技術促進に貢献した発明及び概念を読者が理解するのを助けるためのものであり、ここで具体的に挙げたそのような例及び条件に限定することなく解釈するものであり、また、明細書におけるそのような例の編成は本発明の優劣を示すこととは関係ない。本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、それに対して種々の変更、置換及び変形を施すことができる。
【0058】
以下に、前記の実施の形態の特徴を付記する。
(付記1) プラテンと、前記プラテン上に配置されるシート材と、前記シート材上に配置される第一の面と、基板が押し当てられる第二の面を有し、前記プラテンからの前記第二の面までの高さが、前記シート材の膜厚によって変化させられた研磨パッドと、を含むことを特徴とする研磨装置。
(付記2) 前記シート材は、円形状を有することを特徴とする付記1に記載の研磨装置。
(付記3)前記シート材の外径は、前記基板が押し当てられる範囲の半径より小さいことを特徴とする付記2に記載の研磨装置。
(付記4) 前記シート材の外周に沿って径方向外側に突出する凸部が複数形成されていることを特徴とする付記2に記載の研磨装置。
(付記5) 前記シート材は、リング形状を有することを特徴とする付記1に記載の研磨装置。
(付記6) 前記シート材の内径は、前記基板が押し当てられる範囲の半径より小さいことを特徴とする付記5に記載の研磨装置。
(付記7) 前記シート材の内周に沿って径方向内側に突出する凸部が複数形成されていることを特徴とする付記5に記載の研磨装置。
(付記8) 前記研磨パッドには、溝と孔の少なくとも一方が複数形成されていることを特徴とする付記1乃至付記7のいずれか一項に記載の研磨装置。
(付記9) 前記溝又は前記孔の深さが場所によって異なることを特徴とする付記7に記載の研磨装置
(付記10) プラテン上に配置される下地層と、基板が押し付けられる上地層とを有し、前記下地層の一部が前記上地層側に突出していることを特徴とする研磨パッド。
(付記11) 回転可能なプラテン上に配置される下地層と、基板が押し当てられる上地層とを有し、前記下地層と前記上地層とを固定するシート材の厚さが場所によって異なることを特徴とする研磨パッド。
【符号の説明】
【0059】
1 CMP装置
2 プラテン
4,21,31,55,61,65,71,81,84,91 薄膜フィルム(シート材)
5 研磨パッド
6 基板
8 下地層
8A 第一の面
9 上地層
9A 第二の面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテンと、
前記プラテン上に配置されるシート材と、
前記シート材上に配置される第一の面と、基板が押し当てられる第二の面を有し、前記プラテンからの前記第二の面までの高さが、前記シート材の膜厚によって変化させられた研磨パッドと、
を含むことを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記シート材は、リング形状を有することを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記シート材は、円形状を有することを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記研磨パッドには、溝と孔の少なくとも一方が複数形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項5】
プラテン上に配置される下地層と、基板が押し付けられる上地層とを有し、前記下地層の一部が前記上地層側に突出していることを特徴とする研磨パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−10169(P2013−10169A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145637(P2011−145637)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】