説明

研磨装置

【課題】スラリーの供給不足をより確実に検出できる研磨装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る研磨装置は、ウェハWを保持する保持機構10と、保持機構10に保持されたウェハWを研磨する研磨パッド21とを備え、保持機構10に保持されたウェハWの被研磨面Waに研磨パッド21を当接させながら相対移動させてウェハWの研磨加工を行うように構成された研磨装置1において、被研磨面Waと研磨パッド21との当接部にスラリー31を供給するスラリー供給機構30と、被研磨面Waにプローブ光を照射する光源41と、プローブ光が照射された被研磨面Waからの反射光を検出する光検出器43と、光検出器43に検出された反射光の情報に基づいて研磨加工の終点を検出するとともに当該反射光の情報に基づいてスラリー31の供給状態を判定する制御装置50とを有して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ等の被研磨物を研磨する研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハの表面を研磨する研磨装置としてCMP装置が例示される。CMP装置は、化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)によりウェハの表面を超精密に研磨加工する研磨装置として広く利用されている。このような研磨装置では、チャックに保持されたウェハと研磨ヘッドに装着された研磨パッドとを相対回転させて押接し、ウェハと研磨パッドとの当接部に研磨内容に応じたスラリー(Slurry)を供給して化学的・機械的な研磨作用を生じさせ、ウェハ表面を平坦に研磨加工する。
【0003】
なお、研磨加工中には、その研磨状態をいわゆるin-situ(その場)計測して研磨終点を検出する終点検出が行われる。従来から行われている終点検出方法として、ウェハの表面状態を光学的に計測して終点検出を行う方法が知られている。この方法では、ウェハの被研磨面にプローブ光を照射するとともに、プローブ光が照射されたウェハからの反射光を検出し、その強度変化やスペクトル分布に基づいて終点検出を行うようになっている(例えば、特許文献1を参照)。このように終点検出を行う場合、例えば図4に示すように、スラリー供給開始直後の擾乱が治まってから、反射光量(光強度)をサンプリングして検出光量が適正光量となるように光量調整を行い、さらに、スラリーの流れが落ち着いて検出光量が安定してから終点判定を開始していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−032764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような研磨装置においては、流量計を用いてスラリーの供給量を監視していたが、流量計よりも下流側の部分で配管亀裂等によりスラリーが漏れ出し、ウェハと研磨パッドとの当接部に十分なスラリーが供給されなくなると、流量計でスラリーの供給不足を検出できずに、スラリーの供給が不足した状態で研磨加工が行われてしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、研磨液(スラリー)の供給不足をより確実に検出できる研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的達成のため、本発明に係る研磨装置は、被研磨物を保持する保持機構と、前記保持機構に保持された前記被研磨物を研磨する研磨部材とを備え、前記保持機構に保持された前記被研磨物の被研磨面に前記研磨部材を当接させながら相対移動させて前記被研磨物の研磨加工を行うように構成された研磨装置において、前記被研磨面と前記研磨部材との当接部に研磨液を供給する研磨液供給機構と、前記被研磨面にプローブ光を照射する照明部と、前記プローブ光が照射された前記被研磨面からの反射光を検出する光検出部と、前記光検出部に検出された前記反射光の情報に基づいて前記研磨加工の終点を検出する終点検出部と、前記光検出部に検出された前記反射光の情報に基づいて前記当接部に対する前記研磨液の供給状態を判定する供給判定部とを有して構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、研磨液の供給不足をより確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る研磨装置の概略図である。
【図2】EPD部における下端部近傍の概略を示す拡大図である。
【図3】プローブ光に対する反射光量(光強度)の時間変化を示す図である。
【図4】従来のプローブ光に対する反射光量(光強度)の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明を適用した研磨装置1の概略構成を図1に示す。研磨装置1は、上面側において半導体ウェハWを回転可能に保持する保持機構10と、保持機構10の上方に対向して設けられ下面側において研磨パッド21が装着される研磨ヘッド20と、研磨パッド21の中心部からスラリー(研磨液)31を供給するスラリー供給機構30と、終点検出を行うEPD部40と、これらの作動を制御する制御装置50とを主体に構成される。
【0011】
保持機構10は、円盤状のチャック11と、このチャック11を支持して鉛直下方に延びるスピンドル12とを有して構成され、図示しない回転駆動機構によりチャック11上面と直交する回転中心軸O1を中心にチャック11が水平面内で回転駆動される。チャック11は、ウェハWを吸着保持する。チャック11の内部には、ウェハWの下面を真空吸着する真空チャック構造が設けられてウェハWを着脱可能に構成されおり、チャック11に吸着保持されたウェハWの研磨対象面(すなわち被研磨面Wa)が上向きの水平姿勢で保持される。
【0012】
研磨ヘッド20は、下面に研磨パッド21が取り付けられるヘッド部材22と、このヘッド部材22を支持して鉛直上方に延びるスピンドル23とを備え、図示しない回転駆動機構によりヘッド部材22下面と直交する回転中心軸O2を中心に研磨パッド21が水平面内で回転駆動される。研磨パッド21は、外径が研磨対象であるウェハWの外径よりも小さい円環状に形成されており、例えば、独立発泡構造を有する硬質ポリウレタンのシートを用いて構成され、ヘッド部材22の下面に貼り付けられて研磨面が下向きの水平姿勢で保持される。なお、研磨ヘッド20は、図示しないヘッド移動機構を用いて、チャック11に対し水平揺動および垂直昇降可能に構成される。
【0013】
スラリー供給機構30は、配管33を通じて、研磨パッド21およびヘッド部材22の中央部に上下に貫通して形成された孔部21a,22aから研磨パッド21とウェハWとの当接部にスラリー31を供給する。配管33には、配管33を流れるスラリー31の流量を計測する流量計34が配設され、その計測信号が制御装置50に出力される。
【0014】
EPD部40は、キセノンランプやLEDランプ等の光源41と、ビームスプリッタ42と、光検出器43と、図示しないレンズ光学系等を有して構成される。なお、EPD部40は、ウェハWの上方に対向して配置されるため、研磨加工の際に飛散するスラリーから機器を保護するためカバー45内に収容されている。また、カバー45内に収容されたEPD部40は、図示しないEPD揺動機構を用いて、ウェハW(チャック11)の上方に位置する計測位置と、ウェハW(チャック11)の上方から退避した退避位置との間で往復揺動可能に構成されている。
【0015】
また、図2に示すように、カバー45の下側に延びて形成された鏡筒部46の下部に、前述のレンズ光学系を構成する対物レンズ44が取り付けられているが、この鏡筒部46における対物レンズ44の取り付け部分に、カバー45(鏡筒部46)の内部と外部とを連通させる溝部47が形成されている。そして、図示しないエアー供給装置によりカバー45の内部から鏡筒部46内へ空気を送り込むことで、鏡筒部46の溝部47から外部下方に向けて空気流Fを生じさせ、当該空気流Fを鏡筒部46(すなわち、EPD部40)の下方に位置するスラリー31に衝突させることにより、ウェハWの被研磨面Wa上に供給されたスラリー31の一部に薄膜部32を形成することができるようになっている。これにより、終点検出を行う箇所においてスラリー31を薄くすることができるため、プローブ光および反射光の減衰が低減されることから、光検出器43における検出光量の低下を抑えることができる。
【0016】
そして、図1に示す制御装置50は、研磨装置1に予め設定記憶された制御プログラム、および研磨対象に応じて読み込まれた加工プログラムに基づいて、保持機構10、研磨ヘッド20、スラリー供給機構30、およびEPD部40等の作動を制御する。
【0017】
以上のように構成された研磨装置1において、ウェハWの研磨加工を行うには、チャック11およびヘッド部材22を同一方向もしくは反対方向にそれぞれ回転させ、スラリー供給機構30により研磨パッド21の中心(孔部21a)からスラリー31を供給しながら、研磨ヘッド20を下降させて研磨パッド21をウェハWの被研磨面Waに当接させ、この状態で研磨ヘッド20をウェハWの中心部と外周部との間で半径方向に往復(水平)揺動させる。これにより、ウェハWの被研磨面Waが研磨パッド21との間に介在するスラリー31の機械的および化学的研磨作用を受けて、平坦に研磨加工される。
【0018】
研磨加工の際、EPD部40を用いて終点検出が行われるが、このとき、EPD部40の光源41から射出されたプローブ光は、ビームスプリッタ42を透過してウェハWの被研磨面Waに照射され、ウェハWの被研磨面Waで反射した反射光がビームスプリッタ42で反射されるとともに光検出器43で受光される。そして、光検出器43で検出された光検出信号が制御装置50に出力され、制御装置50は、光検出器43で検出された反射光の光量(光強度)変化に基づいて、研磨加工の終点を判定する。
【0019】
ここで、EPD部40を用いた終点検出の手順について図3を参照しながら説明する。まず、図示しない搬送装置によりウェハWをチャック11上に搬送した後、研磨加工の開始前に、制御装置50は、図示しないEPD揺動機構を用いて、EPD部40を前述の退避位置からウェハW上方の計測位置に移動させる。このとき、研磨加工の開始前から、図示しないエアー供給装置によりカバー45の内部から鏡筒部46内へ空気を送り込むことで、鏡筒部46の下方に空気流Fを生じさせる(図2を参照)。なお、研磨加工の開始前は、対物レンズ44等に水滴が付着するのを防止するために流れの比較的弱い空気流Fを生じさせ、研磨加工の開始後は、スラリー31を薄くするために流れの比較的強い空気流Fを生じさせるようにすることが好ましい。
【0020】
次に、制御装置50は、スラリー供給機構30を作動させてスラリー31の供給を開始して研磨加工を始めるとともに、これとほぼ同時に、EPD部40の光源41よりプローブ光を照射させて光検出器43による反射光の計測(すなわち、EPD部40による計測)を開始する。以後、光検出器43で検出された光検出信号が制御装置50に出力され、検出された反射光の光量(光強度)が図示しないメモリに記録されることになる。なお、このようなEPD部40による計測は、スラリー31の供給開始前から開始することが好ましい。
【0021】
スラリー31の供給開始後、スラリー供給機構30から配管33を流れてきたスラリー31が研磨パッド21の孔部21aより放出されてウェハWの被研磨面Waに達するまでの間、EPD部40の光検出器43はスラリー31が供給されていない状態のウェハWからの反射光を検出するため、反射光の光量(光強度)がほぼ最大となる。そして、スラリー31がウェハWの被研磨面Wa上に到達するスラリー到達時間t1(例えば、スラリー供給開始から2秒程度)になると、ウェハWの被研磨面Waがスラリー31で覆われるために光検出器43で検出される反射光の光量は激減する。
【0022】
このとき、制御装置50は、スラリー31の供給開始から反射光量が激減するまでの時間、すなわちスラリー到達時間t1をメモリに記録し、このスラリー到達時間t1が所定の設定時間よりも長い場合、スラリー31が到達するまでの時間が長いと判定して研磨加工を中止する制御を行う。またこのとき、制御装置50は、反射光量が激減する際の減少量をメモリに記録し、この反射光の減少量が所定の設定量よりも小さい場合、ウェハWの被研磨面Wa上に供給されるスラリー31が薄いか、もしくはウェハWの外周側に行き渡っていないと判定し、研磨加工を中止する制御を行う。
【0023】
スラリー供給開始直後の擾乱が治まると(時間t2になると)、制御装置50は、光検出器43で検出される反射光量(光強度)をサンプリングして検出光量が適正光量となるように光量調整を行う。そして、制御装置50は、光量調整を行った後、スラリーの流れが落ち着いて検出光量が安定してから(時間t3になってから)終点判定を開始する。なお、光量調整を開始する時間t2(例えば、スラリー供給開始から5秒程度)および終点判定を開始する時間t3(例えば、スラリー供給開始から10秒程度)は、経験的に設定される。
【0024】
終点判定の開始後、制御装置50は、光検出器43で検出された反射光の光量(光強度)変化に基づいて、研磨加工の終点を判定する。例えば、ダマシンプロセス(Damascene process)において埋め込んだ金属膜をメタルCMPで平坦化する工程の場合には、光検出器43で検出される反射光量(反射率)が所定の値まで低下したときに研磨加工の終点であると判定し、当該研磨加工を終了する制御を行う。また例えば、シリコン酸化膜を研磨するCMP工程(シャロートレンチアイソレーション(STI)工程や層間絶縁膜(ILD)工程)の場合には、光検出器43で検出される反射光量(反射率)の時間変化において極大点が所定回数現れたときに研磨加工の終点であると判定し、当該研磨加工を終了する制御を行う。
【0025】
また、終点判定の開始後、制御装置50は、光検出器43で検出される反射光量(光強度)が所定の閾値(基準光量)を超えた場合に、スラリー31の供給量が不足であると判定し、研磨加工を中止する制御を行う。なお、スラリー供給機構30によるスラリー31の供給開始から、流量計34は、配管33を流れるスラリー31の流量を計測し、その計測信号を制御装置50に出力している。そして、制御装置50は、流量計34に計測されるスラリー31の流量がスラリー供給機構30に指示した流量よりも大幅に大きいか、もしくは小さい場合に、スラリー31の供給量が異常であると判定し、研磨加工を中止する制御を行う。これにより、流量計34およびEPD部40を利用して、スラリー31の供給量が二重にチェックされることになる。
【0026】
このように、本実施形態の研磨装置1によれば、制御装置50が、光検出器43に検出された反射光の情報に基づいて、ウェハWと研磨パッド21との当接部に供給されるスラリー31の供給状態を判定するため、流量計34よりも下流側の部分で配管亀裂等によりスラリーが漏れ出し、ウェハWと研磨パッド21との当接部に十分なスラリーが供給されなくなったとしても、EPD部40の光検出器43を利用してスラリーの供給不足を検出できることから、スラリーの供給不足をより確実に検出することができる。
【0027】
またこのとき、光検出器43で検出される反射光量(光強度)が所定の閾値(基準光量)を超えた場合に、スラリー31の供給量が不足であると判定するようにすれば、他のパラメータを考慮することなく、簡便にスラリーの供給不足を検出することができる。
【0028】
なお、上述の実施形態において、図1に示すように、ウェハWを上向きの水平姿勢で保持する保持機構10と、当該保持機構10の上方に対向して設けられ下面側において研磨パッド21が下向きに装着される研磨ヘッド20とを備える研磨装置1について説明したが、これに限られるものではなく、本発明は、ウェハを下向きの水平姿勢で保持する保持機構と、当該保持機構の下方に対向して設けられ上面側において研磨パッドが上向きに装着される研磨部材とを備える(いわゆるコンベンショナルタイプの)研磨装置にも用いることができる。
【0029】
また、上述の実施形態において、被研磨物はウェハWに限られるものではなく、例えばガラス基板等の場合であっても、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
W ウェハ(被研磨物) Wa 被研磨面
1 研磨装置 10 保持機構
20 研磨ヘッド 21 研磨パッド(研磨部材)
30 スラリー供給機構(研磨液供給機構)
31 スラリー(研磨液)
40 EPD部
41 光源(照明部) 43 光検出器(光検出部)
50 制御装置(終点検出部および供給判定部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨物を保持する保持機構と、前記保持機構に保持された前記被研磨物を研磨する研磨部材とを備え、前記保持機構に保持された前記被研磨物の被研磨面に前記研磨部材を当接させながら相対移動させて前記被研磨物の研磨加工を行うように構成された研磨装置において、
前記被研磨面と前記研磨部材との当接部に研磨液を供給する研磨液供給機構と、
前記被研磨面にプローブ光を照射する照明部と、
前記プローブ光が照射された前記被研磨面からの反射光を検出する光検出部と、
前記光検出部に検出された前記反射光の情報に基づいて前記研磨加工の終点を検出する終点検出部と、
前記光検出部に検出された前記反射光の情報に基づいて前記当接部に対する前記研磨液の供給状態を判定する供給判定部とを有して構成されることを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記供給判定部は、前記光検出部に検出された前記反射光の光量が所定の基準光量を超えた場合に、前記当接部に対する前記研磨液の供給量が不足であると判定することを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−107203(P2013−107203A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−48170(P2013−48170)
【出願日】平成25年3月11日(2013.3.11)
【分割の表示】特願2008−37252(P2008−37252)の分割
【原出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】