説明

砲身クリーニング方法及び砲身クリーニング装置

【課題】砲身を痛めることなく,確実に砲身内の煤を除去すると共に回収することのできる砲身のクリーニング方法を提供する。
【解決手段】集塵機10によって砲尾53より砲腔内を吸引しつつ,圧縮気体と共にメジアを噴射しながらブラストガン30を砲尾53側から砲口51側に移動させて煤を除去した後,メジアを含まない圧縮気体を噴射して砲口51側から砲尾53側にブラストガン30を押し込むことで,砲尾53よりメジア及び煤を押し出して集塵機10に回収させる。ブラストガン30の先端に設けた拡散器33は,噴射された噴射流体を360°全周方向に拡散し,これにより砲腔内壁に対するメジアの均一な衝突と,ブラストガン30の押し込みによるメジアと煤の回収を確実に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は砲身クリーニング方法及び砲身クリーニング装置に関し,より詳細には,戦車等の砲身内に形成された砲腔内面を,メジアを投射して行うクリーニング方法,及びクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陸上自衛隊が所有する90式戦車の砲身では,砲腔にライフリング(旋条)がない平滑な「滑腔砲」と呼ばれる砲身が採用されている。
【0003】
このような「滑腔砲」に使用される滑腔砲用砲弾には,焼尽薬莢と呼ばれる薬莢が備わっており,薬莢が底部を残して燃えて無くなる構造となっていることから,発射後に空薬莢を捨てる必要のないものとなっている。
【0004】
しかし,このような燃焼薬莢では,砲弾の発射後に薬莢の燃焼に伴う煤が砲腔内に付着し,この煤が付着したまま放置しておくと,砲身が腐蝕するおそれがあることから,発砲を行った場合には,訓練等の終了後に砲腔内に付着した煤等を除去するクリーニング作業が行われる。
【0005】
このような砲腔のクリーニングは,図6に示すように,通常,アルミ製のパイプ材101の先に布,その他の拭取材102を取り付けた「洗浄棹」と呼ばれる清掃器具を砲身150の砲口151より砲腔152内に差し込み,数人掛かりでこの洗浄棹100を砲腔152内で進退移動させることで,洗浄棹100に取り付けた拭取材102を砲腔152の内壁に擦り付けることにより行っている。
【0006】
しかし,この方法による場合,砲腔152内壁に対して拭取材102を強く押し付けることができるようにするためには,砲腔152の内径よりも大径に拭取材102が取り付けられた洗浄棹100を砲腔152内に押し込んで上記作業を行う必要があるために,この洗浄棹100を砲腔152内で進退移動させるには極めて大きな力が必要となり,1本の砲身150のクリーニングに数人の人員を要するものとなっている。
【0007】
このような砲身150のクリーニングを容易に行うために,図7に示すように砲身150外に配置された油圧ポンプ202と,砲身150内部に挿入される油圧モータ203と,上記油圧ポンプ202から上記油圧モータ203へ洗浄油を供給する洗浄油ホース204と,同洗浄油ホース204の巻取ドラム205と,上記油圧モータ203により回転するブラシ209と,上記油圧モータ203内に供給された洗浄油を砲身内へ撒布するスプリンクラー210と,砲身150内から砲身150外へ流出する洗浄油を貯える洗浄油タンク214と,同タンク214内からフィルタ218を介して上記油圧ポンプ202へ洗浄油を供給する洗浄油供給管217とを備えた砲身内部の手入れ装置200が提案されている(特許文献1)。
【0008】
なお,砲身のクリーニングに関するものではないが,既設埋設管の内面クリーニングに関する技術として,図8に示すように埋設管aの一端側に集塵機305を,他端側に送風器301をそれぞれ設けて管a内に通気流を発生させ,埋設管a内に配置した栓体302の外周面と埋設管aの内周面との間に形成された環状周隙321にこの管内流通気体を通過させてその流速を加速すると共に,この加速された管内流通気体内に上記栓体302に設けた噴口303より研磨材粒圧送装置304によって圧送された研磨材を噴出しながら上記栓体302を,管内流通気体を駆動源とし且つ管外操作をして制動を与えつつ管内前方に向けて徐々に移動させることにより埋設管a内をクリーニングする方法も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭64−31394号公報
【特許文献2】特公平3−4277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上で説明した従来技術のうち,特許文献1として紹介した砲身内部の手入れ装置200にあっては,これを使用して砲身150内のクリーニングを行うことにより作業員が負担する作業労力を大幅に軽減することができる。
【0011】
しかし,この装置は前述したような極めて大掛かりな装置構成となっていることから,その導入には多額の初期投資が必要であると共に,洗浄油を使用して砲身150内の洗浄を行うことから,消費する洗浄油のコストや,使用済みの洗浄油の廃棄コスト等のランニングコストが発生する。
【0012】
なお,砲身150のクリーニングに関する技術ではないが,砲身と同様に円筒体である既設埋設管aの内面をクリーニングする方法として,前掲の特許文献2として紹介したように管内を通過する気体流に研磨材を乗せて移動させることによりクリーニングを行う技術も提案されている。
【0013】
しかし,特許文献2において埋設管aに対して行っている「クリーニング」とは,スクレイパーやワイヤブラシ等による錆の掻き取り等に代えて行う作業(特許文献2の「従来技術とその問題点」欄),すなわち切削作業であり,このような切削を行うためのサンドブラストを,高精度に仕上げられた砲腔の内周面に対して適用しようという発想はない。
【0014】
また,埋設管等であれば内面の加工精度に若干の狂いが生じたとしても,必要な肉厚等が確保されていれば性能が大きく損なわれることも,また,大きな事故等に発展するおそれもなく,更に,埋設管内に若干の研磨材が回収しきれずに残留していたとしても,このことが性能や安全性に大きく影響することも無い。
【0015】
しかし,砲身のクリーニングでは,砲腔内の加工状態にムラが生じたり,回収できなかった研磨材等が砲腔内に残留する場合,性能や安全性に対して大きく影響する。
【0016】
この点を考慮して改めて特許文献2に記載の方法を見ると,特許文献2に記載の方法では,栓体302の外周と埋設管aの内周間の環状周隙321を通過する気流に対して,栓体302に設けた噴口303から研磨材を噴射して合流させる構成となっていることから,噴口303の通過線上にある埋設管aの内壁部分において最も加工が進行することとなり,埋設管の内周全周に亘って均一な処理を行うことができるものとはなっていない。
【0017】
そのため,このようなクリーニング方法を砲身のクリーニングに適用した場合,煤の一部が除去出来ずに残るか,若しくは完全に煤が除去される迄処理を行うと,砲腔内が部分的に摩耗するおそれがある。
【0018】
また,特許文献2に記載の構成において,噴射した研磨材を残すことなく回収しようとすれば,研磨材粒圧送装置304の他,送風器301を使用する必要があり,その結果,集塵機305も,研磨材粒圧送装置304によって管a内に導入される気体の容量と,送風器301によって管a内に導入される気体の容量との総和に対応した吸引容量を備えた大型の集塵機305を使用する必要があり,装置構成が大型化すると共に,高価なものとなる。
【0019】
そこで,本発明は,戦車等の砲身内面に付着した煤等を除去するクリーニングを,前述した洗浄棹によるクリーニングに代えて,粒体であるメジアの噴射・衝突によって比較的簡単に行うことができるようにすると共に,砲身内面の全周に亘り均一な処理を行うことができ,且つ,砲身内に噴射された粒体や除去された煤を残すことなく回収することのできる,砲身のクリーニング方法及びクリーニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の特許請求の範囲の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0021】
上記目的を達成するために,本発明の砲身のクリーニング方法は,噴射口32より噴射した流体を外周方向に360°全方向に拡散可能としたブラストガン30を,クリーニング対象とする砲身50の砲口51より砲尾53に向かって砲腔52内に挿入し,
砲尾53に連通された集塵機10によって前記砲腔52内を吸引した状態で前記ブラストガン30より圧縮気体とメジアとの混合流体を噴射しながら前記ブラストガン30を前記砲口51迄移動させ,
前記ブラストガン30の前記砲口51への移動が終了した後,前記ブラストガン30より圧縮気体のみを噴射した状態で,前記ブラストガン30を再度,砲尾53側に向かって砲腔52内を移動させることにより,砲腔52内のメジア及び煤を砲尾53より押し出すことを特徴とする(請求項1)。
【0022】
なお,本明細書において「メジア」とは,砲腔52内壁と衝突した際の衝撃によって煤を除去し得る各種の粒体を含み,一例として研磨材,ショット等がこれに該当する。
【0023】
上記クリーニング方法は,前記砲身50を,砲口51側を上向きとして10〜20°に傾斜させた状態で行うことが好ましい(請求項2)。
【0024】
また,上記クリーニング方法において,前記メジアが球状の粒体,例えばスチールやセラミックのショット,或いはガラスや樹脂のビーズ等,好ましくはガラスビーズとすることができる(請求項3)。
【0025】
更に,前記メジアの噴射圧力を0.3MPa〜0.5MPa(ゲージ圧)とすることができる(請求項4)。
【0026】
また,本発明の砲身のクリーニング装置は,砲口51より砲腔52内に挿入されて該砲腔52内を移動するブラストガン30と,砲尾53に連通して砲腔52内を吸引する集塵機10と,前記ブラストガン30に圧縮気体とメジアの混合流体,又は圧縮気体を導入する圧送装置20を備え,
略裁頭円錐形状に形成された大径部33bと,前記大径部33bの細径側に連続して形成された円柱状の細径部33aとを備えた拡散器33の前記細径部33aを前記ブラストガンの噴射口内に同心状に挿入することにより,前記ブラストガンの前記噴射口32前方に前記拡散器33の前記大径部33bが取り付けられており,前記噴射口32より噴射された流体を前記拡散器33の前記大径部33bに設けた傾斜面33cで誘導して外周方向に360°全方向に拡散可能としたことを特徴とする(請求項5)。
【0027】
前記構成のクリーニング装置において,前記砲身50が滑腔砲であり,前記ブラストガン30を中心として外周方向に突出する脚部34と,前記脚部34の先端に取り付けた,前記砲腔52内壁と接触するローラ35を設け,前記ブラストガン30が砲腔52の中心を移動可能とすることができる(請求項6)。
【発明の効果】
【0028】
以上説明した本発明の構成により,本発明の砲身のクリーニング方法によれば,ブラストガン30の噴射口32より噴射された圧縮気体とメジアとの混合流体を,外周方向の360°全方向に亘り隙間無く拡散させていることから,ブラストガン30より噴射されたメジアを,全周方向に亘り均一に砲腔52の内壁に衝突させることができた。
【0029】
その結果,メジアの偏在に伴う加工ムラを防止でき,砲腔52内が部分的に摩耗する等といった弊害の発生を防止しつつ,砲腔52内に付着した煤を全周に亘り完全に除去することができた。
【0030】
しかも,前述したブラストガン30により,メジアの噴射後にブラストガン30に対し圧縮気体のみを導入すると,ブラストガン30より噴射された圧縮気体によってブラストガン30と砲腔52内壁間の間隔には図5に示すように圧縮気体流によるエアカーテンが形成される。
【0031】
その結果,このようなエアカーテンが形成された状態でブラストガン30を砲口51側から砲尾53側に向かって押し込むと,砲腔52内に残留しているメジアやメジアの衝突によって砲腔52内壁より剥離した煤を,確実に砲尾53側に押し込むことができ,その結果,砲尾53に連通した集塵機10によって,砲腔52内のメジア及び除去された煤を確実に回収することができた。
【0032】
なお,砲身50の砲口51側を上向きとして10〜20°に傾斜した状態で前述した処理を行う場合には,噴射されたメジアや,メジアの衝突によって剥離した煤等をより確実に集塵機10に回収することができた。
【0033】
更に,噴射するメジアをショットやビーズ等の球体,好ましくはガラスビーズとした場合には,砲腔内壁に付着した煤を効率よく除去できる一方,砲腔内壁に対する切削力の発生を可及的に減少させて砲腔52内に摩耗が発生することを防止することができた。
【0034】
また,ブラストガン30に対する供給圧力を0.3MPa〜0.5MPaとした構成にあっては,砲腔52内壁に対する衝突時に煤の除去に必要な衝撃力を発揮させることができる一方,砲腔52内壁が切削等されることを好適に防止することができた。
【0035】
更に,前述した構成のブラストガン30備えた本発明の砲身のクリーニング装置によれば,前述した砲身のクリーニング方法を好適に実現することができた。
【0036】
なお,ブラストガン30に脚部34及びローラ35を設けた構成にあっては,このブラストガン30を,内部に凹凸の無い滑腔砲内に挿入すると共に移動させた際,確実に砲腔52の中心を移動させることができ,砲腔52内壁に360°前周方向に亘って均一にメジアを衝突させることができると共に,エアブロー時においても360°切れ間の無いエアカーテンを形成することができた。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本明細書中で使用する砲身各部の名称を示した説明図。
【図2】本発明の砲身のクリーニング方法の説明図。
【図3】ブラストガンの構成例を示す概略断面図。
【図4】図3のIV-IV線断面図。
【図5】ブラストガンによるエアカーテンの形成状態の説明図。
【図6】洗浄棹を使用した従来の砲身クリーニング方法の説明図。
【図7】従来の砲身内部の手入れ装置の説明図(特許文献1の第1図に対応)。
【図8】従来の管内クリーニング装置の説明図(特許文献2の第1図に対応)。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に,本発明の実施形態につき添付図面を参照しながら以下説明する。
【0039】
なお,本明細書中で使用する砲身各部の名称は,図1に示した名称に従う。
【0040】
装置構成
図2は,本発明のクリーニング装置を使用した戦車砲身のクリーニングの説明図であり,符号1は本発明のクリーニング装置を示す。
【0041】
このクリーニング装置1は,図2に示すように戦車5に設けた砲身50に対し,開閉器54を開放した砲尾53に連通される集塵機10と,砲腔52内に挿入されるブラストガン30と,前記ブラストガン30に対して圧縮気体とメジアの混合流体,又は圧縮気体を導入するメジア圧送装置20とを備えている。
【0042】
前述の集塵機10は,前記メジア圧送装置20の上部に載置されたサイクロン11及びメジア回収管12を介して前述した砲尾53に連通されており,集塵機10に設けられたブロワ13を作動させることにより,サイクロン11内を吸引してサイクロン11内に負圧を発生させると共に,この負圧によって,砲尾53よりメジア回収管12を介して砲腔52内を吸引することができるように構成されている。
【0043】
このように構成したことにより,砲尾53を介して吸引された砲腔52内のメジアや,砲腔52の内壁より剥離した煤は,サイクロン11内に導入されて旋回し,このうち,比較的重量物である再使用可能なメジアがサイクロン11の底部に溜まって回収されると共に,煤や破砕したメジアが空気流と共に集塵機10内に導入されて,図示せざるフィルタに回収されると共に,清浄な空気がブロワ13を介して機外に排出できるように構成されている。
【0044】
このようにして回収された,再使用可能なメジアは,前述したサイクロン11の底部から,その下方に配置されたメジア圧送装置20のタンク21内に導入することができるように構成されている。
【0045】
前述したメジア圧送装置20は,前述したサイクロン11の下方に配置した前述のタンク(加圧タンク)21と図示せざる圧縮気体供給源,例えばエアコンプレッサを備えると共に,ブラストガン30に対する圧縮流体の導入,停止及び,導入する圧縮流体を,メジアと圧縮気体との混合流体と,メジアを含まない圧縮気体のみの導入とに切り換えるスイッチ,本実施形態にあってはフットスイッチ22を備えている。
【0046】
サイクロン11に回収されたメジアは,サイクロン11の下端とタンク21間に設けられた図示せざるダンプバルブを開放すると,サイクロン11内に回収されたメジアは,加圧タンク21内に落下する。
【0047】
このようにして加圧タンク21内にメジアを落下させた後,前述のダンプバルブを閉じて加圧タンク21内にエアコンプレッサからの圧縮空気を導入して,加圧タンク内を所定の圧力(0.3〜0.4MPa:ゲージ圧)に上昇させた状態で,ブラストガン30と加圧タンク21間に設けたバルブをフットスイッチ22の操作によって開くと,加圧タンク21内のメジアが圧縮気体と共にブラストガン30に導入されて,ブラストガン30より噴射することができるようになっている。
【0048】
なお,メジア圧送装置20に設けられた前述のフットスイッチ22には,複数(図示の例では2つ)のスイッチが設けられており,このスイッチの一方を踏むと前述したようにメジアと圧縮気体の混合流体がブラストガン30に導入される一方,前記一方のスイッチを離すと共に他方のスイッチを踏むことで,前述したブラストガン30に対して導入する圧縮流体を,メジアを含まない圧縮流体,すなわち,圧縮気体のみとすることができるように構成されている。
【0049】
このようにして,メジア圧送装置20より導入された圧縮流体を噴射するブラストガン30は,一例として図3に示すようにメジア圧送装置20にホース23を介して連通された略円筒状に形成されたブラストガン本体31に,拡散器33を取り付けた構造を備えている。
【0050】
この拡散器33は,略裁頭円錐状に形成された大径部33bと,この大径部33bの細径側に連続して形成された円柱状の細径部33aを備えており,この拡散器33の細径部33aの少なくとも一部をブラストガン本体31の噴射口32内に同心状に挿入することにより,噴射口32の前方に前述の大径部33bが配置されるように構成されている。
【0051】
この拡散器33の存在により,ブラストガン本体31の噴射口32より噴射された流体は,拡散器33の大径部33bに設けた傾斜面33cに案内されて外周方向に360°全周方向に均一に拡散させることができるように構成されている。
【0052】
このブラストガン本体31には,例えば図4に示すように,ブラストガン本体31を中心として周方向に等角度で複数の脚部34を突出し,この脚部34の先端にローラ35を取り付けることで,砲身50の砲腔52内に挿入した際に,ブラストガン30が確実に砲腔52内の中心に位置すると共に,ローラ35によって円滑に移動することかできるように構成されている。
【0053】
この脚部34及びローラ35は,図3に示すようにブラストガン本体31の長手方向における少なくとも2箇所以上の位置に,各位置毎に脚部を3本以上設け,砲腔52内に挿入した際にブラストガン30が正確に砲腔52内の中心に配置できるように構成することが好ましい。
【0054】
クリーニング方法
以上のように構成されたクリーニング装置1を使用した砲身の洗浄は,以下のようにして行われる。
【0055】
クリーニングに先立ち,砲腔52内に潤滑油や水分の付着がある場合,煤汚れの除去の妨げとなるともにメジアが砲腔52内壁に付着し易くなり排出が困難となることから,砲腔52内部に潤滑油や水分が残留している場合には,予めこれをウエス等によって拭き取って砲腔52内を乾いた状態としておく。
【0056】
また,砲身50に設けられている排煙器55は,これを予め取り外しておくと共に,排煙器55と砲腔52内とを連通している開孔(図示せず)は,これを予め外側より当て板をする等して塞いでおく。
【0057】
更に,メジアや煤の回収を容易に行うことができるようにするために,砲口51側を上向きにして砲身50を10〜20°,一例として15°の傾斜角で傾斜させておくことが好ましい。
【0058】
この状態で,砲身50の砲尾53を塞ぐ開閉器54を開放して,砲尾53に前述したサイクロン11を介して集塵機10を連通すると共に,砲口51よりブラストガン30を砲腔52内に挿入する。
【0059】
砲腔52に対するブラストガンの挿入は,砲腔52内のクリーニングが必要となる部分に対して迄行い,例えばブラストガン30に取り付けられたホース23に,予め挿入長さを示す目印を付けておき,この位置迄ブラストガン30を挿入するように構成すれば便利である。
【0060】
以上のようにして,各部の設置が完了した後,集塵機10のブロワ13を始動させて砲腔52内を吸引した状態で,前述したフットスイッチ22を操作してブラストガン30より圧縮気体とメジアの混合流体を噴射する。
【0061】
噴射開始直後は,メジアの噴射が安定しないことから,フットスイッチ22を操作してから数秒(例えば5秒)程待ってから,ブラストガン30に連通されているホース23を砲口51より引き出す等してブラストガン30を移動させる。
【0062】
ブラストガン30の移動速度は,使用するメジア,噴射圧力,砲腔52内の汚れの程度等に応じて調整するが,一例として10秒間に30cm程度を標準とする。
【0063】
途中,加圧タンク21内の研磨材量が減少した場合には,サイクロン11内に研磨材が回収される迄,一旦メジアの噴射を停止しても良く,この間,フットスイッチ22の切り換えによって圧縮気体のみを例えば数秒(一例として10秒)程,ブラストガン30より噴射しても良い。
【0064】
メジアが必要量回収され,再噴射が可能となったら再度,フットスイッチ22を操作してメジアと圧縮気体の混合流体を噴射しながら,ブラストガン30を砲口51側に移動させ,この操作を繰り返して砲口51の位置迄ブラストガン30を移動させる。
【0065】
このようにして,メジアと圧縮気体との混合流体の噴射によって,砲腔52内の煤の除去が完了したら,一旦,フットスイッチ22を放して混合流体の噴射を停止すると共に,フットスイッチ22に設けた他方のスイッチを踏み,ブラストガン30よりメジアを含まない圧縮気体のみを噴射させる。
【0066】
集塵機10による砲腔52内の吸引を継続した状態で,かつ,ブラストガン30より圧縮気体を噴射した状態で,再度,ブラストガン30を砲尾53側に向かって徐々に,一例として10秒間に30cm程度の速度で移動させ,砲尾53側の所定の位置迄,ブラストガン30を押し込む。
【0067】
このとき,ブラストガン30と砲腔52内壁間の間隔には,ブラストガン30より噴射された圧縮気体によって,360°全周に亘ってエアカーテンが形成されることから(図5参照),この状態でブラストガン30を砲尾53側に押し込むに従い,砲腔52内壁に付着していたメジアや,砲腔内壁より浮き上がった煤も,砲尾53側に押し込まれて,開閉器54の開放によって開放された砲尾53より押し出され,メジア回収管12を介してサイクロン11に導入され,砲腔52内のメジアや煤が完全に除去される。
【0068】
このようにして作業が完了したら,フットスイッチ22を放し,ブラストガン30による圧縮気体の噴射を停止した後,ブラストガン30を砲口51より抜き取り,また,集塵機10のブロワ13を停止して,砲腔52内の吸引を停止する。
【0069】
その後,砲尾53に連結していたメジア回収管12を外し,砲身50のクリーニングが完了する。
【0070】
クリーニングが完了した砲身50の砲腔52内を目視によって確認し,汚れ等が残っている場合には必要に応じてウエス等によって拭き取ると共に,排煙器55の取付位置において孔を塞いでいた当て板等を除去した後,砲身に排煙器55を取り付けて,作業が完了する。
【0071】
このように,本発明による砲身のクリーニングによれば,ブラストガン30より噴射されたメジアは,ブラストガン30を中心に360°前方向に均一に噴射されることから,砲腔52内壁の全周に亘って均一に処理を行うことができる。
【0072】
また,メジアの噴射により煤を除去乃至は浮かせた後のエアブローによって,ブラストガン30の外周と砲腔52内壁間に形成されたエアカーテンによって,確実に砲腔52内に残るメジアや煤を砲尾53より押し出すことが可能であることから,クリーニング後の砲腔52内に,メジアや煤の残留が生じないものとなっている。
【符号の説明】
【0073】
1 クリーニング装置
5 戦車
10 集塵機
11 サイクロン
12 メジア回収管
13 ブロワ
20 メジア圧送装置
21 タンク(加圧タンク)
22 フットスイッチ
23 ホース
30 ブラストガン
31 ブラストガン本体
32 噴射口
33 拡散器
33a 細径部
33b 大径部
33c 傾斜面
34 脚部
35 ローラ
50 砲身
51 砲口
52 砲腔
53 砲尾
54 開閉器
55 排煙器
56 薬室
100 洗浄棹
101 パイプ材
102 拭取材
150 砲身
151 砲口
152 砲腔
200 砲身手入れ装置
202 油圧ポンプ
203 油圧モータ
204 洗浄油ホース
205 巻取ドラム
209 ブラシ
210 スプリンクラー
214 洗浄油タンク
217 洗浄油供給管
218 フィルタ
300 管内クリーニング装置
301 送風器
302 栓体
303 噴口
304 研磨材粒圧送装置
305 集塵機
321 環状周隙
a 埋設管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射口より噴射した流体を外周方向に360°全方向に拡散可能としたブラストガンを,クリーニング対象とする砲身の砲口より砲尾に向かって砲腔内に挿入し,
砲尾に連通された集塵機によって前記砲腔内を吸引した状態で前記ブラストガンより圧縮気体とメジアとの混合流体を噴射しながら前記ブラストガンを前記砲口迄移動させ,
前記ブラストガンの前記砲口への移動が終了した後,前記ブラストガンより圧縮気体のみを噴射した状態で,前記ブラストガンを再度,砲尾側に向かって砲腔内を移動させることにより,砲腔内のメジア及び煤を砲尾より押し出すことを特徴とする砲身のクリーニング方法。
【請求項2】
前記砲身を,砲口側を上向きとして10〜15°に傾斜させたことを特徴とする請求項1記載の砲身のクリーニング方法。
【請求項3】
前記メジアが球状の粒体である請求項1又は2記載の砲身のクリーニング方法。
【請求項4】
前記メジアの噴射圧力を0.3MPa〜0.5MPaとしたことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の砲身のクリーニング方法。
【請求項5】
砲口より砲腔内に挿入されて該砲腔内を移動するブラストガンと,砲尾に連通して砲腔内を吸引する集塵機と,前記ブラストガンに圧縮気体とメジアの混合流体,又は圧縮気体を導入するメジア圧送装置を備え,
略裁頭円錐形状に形成された大径部と,前記大径部の細径側に連続して形成された円柱状の細径部とを備えた拡散器の前記細径部を前記ブラストガンの噴射口内に同心状に挿入することにより,前記ブラストガンの前記噴射口前方に前記拡散器の前記大径部が取り付けられており,前記噴射口より噴射された流体を前記拡散器の前記大径部に設けた傾斜面で誘導して外周方向に360°全方向に拡散可能としたことを特徴とする砲身のクリーニング装置。
【請求項6】
前記砲身が滑腔砲であり,前記ブラストガンを中心として外周方向に突出する脚部と,前記脚部の先端に取り付けた,前記砲腔内壁と接触するローラを設け,前記ブラストガンが砲腔の中心を移動可能としたことを特徴とする請求項5記載の砲身のクリーニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−21667(P2012−21667A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158303(P2010−158303)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000154129)株式会社不二製作所 (46)
【Fターム(参考)】