説明

硝フッ酸廃液からの酸の回収方法

【課題】少ない工程数で且つ高純度の酸を硝フッ酸廃液から回収する方法を提供する。
【解決手段】陽極及び陰極の間に、1対のアニオン交換膜Aを配置し、一対のアニオン交換膜Aの間に陽極側から順にカチオン交換膜Cと一価選択性カチオン交換膜CIMSを配置し、アニオン交換膜Aとカチオン交換膜Cとの間に形成されている脱塩脱酸室5に、硝フッ酸廃液を供給するとともに、脱塩脱酸室5に隣接し且つカチオン交換膜Cと一価選択性カチオン交換膜SCとの間に形成されている排液室7に酸水溶液を供給しながら電気透析を行ない、脱塩脱酸室5に隣接し且つ一価選択性カチオン交換膜SCとアニオン交換膜Aとの間に形成されている酸室9から、硝酸及び/又はフッ酸を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硝酸及び/またはフッ酸を含む硝フッ酸廃液から酸を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレスの酸洗工程などからは硝酸やフッ酸を含む所謂硝フッ酸廃液が排出される。また、エッチングなどが行われるLSI工場等からも、このような硝フッ酸廃液は多量に排出される。このような硝フッ酸廃液には、鉄、クロム、ニッケルなどの有価金属を多く含んでいるため、省資源や環境汚染などの観点から、該廃液から酸や有価金属を回収しての再利用が図れている。
【0003】
上記の硝フッ酸廃液から硝酸やフッ酸を回収するには、一般に、これをろ過した後、アニオン交換膜を用いての拡散透析により有価金属成分を除去して酸を回収する方法が知られているが、この方法では、回収される酸に有価金属成分がかなり含まれており、純度の高い酸を回収することが困難である。従って、高純度の酸を回収するために種々の方法が提案されている。
【0004】
その代表的な方法として、例えば特許文献1,2には、酸廃液を拡散透析により脱酸した後、KOH等のアルカリ金属の水溶液を添加して中和を行った後、ろ過を行い、金属成分を沈殿分離し、ろ液(硝酸乃至フッ酸のアルカリ塩水溶液)を、バイポーラ膜を備えた電気透析装置を用いて処理する酸の回収方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−887号公報
【特許文献2】特開平9−10557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の方法によれば、有価金属成分を有効に除去し、高純度の酸を回収することができる。しかしながら、バイポーラ膜を用いての電解透析に先立って、中和及びろ過が必要であり、工程数が多く、未だ改善の余地がある。
また、硝フッ酸廃液中の硝酸イオンは沈殿物として分離することが難しく、硝酸イオンを効率よく回収することは難しい。近年、廃水中に含まれる窒素による環境への悪影響が指摘されるとともに、窒素の排出規制が厳しくなる状況下、廃水中の硝酸イオンを回収する技術が重要性を増している。
【0007】
従って、本発明の目的は、少ない工程数で且つ高純度の酸を硝フッ酸廃液から回収する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、陽極及び陰極の間に、少なくとも1対のアニオン交換膜を配置し、該一対のアニオン交換膜の間に陽極側から順にカチオン交換膜と一価選択性カチオン交換膜を配置し、
前記アニオン交換膜とカチオン交換膜との間に形成されている脱塩脱酸室に、硝酸金属塩及び/又はフッ酸金属塩を含む硝フッ酸廃液を供給するとともに、該脱塩脱酸室に隣接し且つカチオン交換膜と一価選択性カチオン交換膜との間に形成されている排液室に酸水溶液を供給しながら電気透析を行ない、
前記脱塩脱酸室に隣接し且つ一価選択性カチオン交換膜とアニオン交換膜との間に形成されている酸室から、硝酸及び/又はフッ酸を回収することを特徴とする硝フッ酸廃液からの酸の回収方法が提供される。
【0009】
本発明においては、前記脱塩脱酸室から硝フッ酸廃液の脱塩液を回収し、該脱塩液に前記酸水溶液を添加し、前記排液室に供給して電気透析を行うが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アルカリによる中和や中和により生成した沈殿のろ過分離(金属成分の除去)などの工程を行うことなく、硝フッ酸廃液を直接電気透析することにより、効率よく、高純度の酸を回収することができる。即ち、少ない工程数で硝フッ酸廃液から酸を回収できるのが本発明の最大の利点である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において、酸の回収のための電気透析の実施に使用される電気透析装置の代表的な構造を示す図1において、かかる装置では、一対のアニオン交換膜A、Aが配置されており、さらに、この一対のアニオン交換膜A、Aの間には、陽極1側から順にカチオン交換膜Cと一価選択性カチオン交換膜SCが配置されており、アニオン交換膜Aとカチオン交換膜Cとの間に脱塩脱酸室5が形成され、これに隣接しているカチオン交換膜Cと一価選択性カチオン交換膜SCとの間には排液室7が形成されており、さらに、排液室7の陰極3側に隣接している一価選択性カチオン交換膜SCとアニオン交換膜Aとの間には酸室9が形成されている。
【0012】
また、図1の装置では、上記の陽極1側のアニオン交換膜Aの外側(陽極側)には、さらに一価選択性カチオン交換膜SCが設けられ、上記の原液室5に隣接するように酸室9が形成されており、また、陰極3側のアニオン交換膜Aの外側(陰極側)には、さらにカチオン交換膜C及び一価選択性カチオン交換膜SC設けられており、酸室9に隣接するアニオン交換膜Aとカチオン交換膜Cの間にも原液室5が形成され、また、この原液室5に隣接するカチオン交換膜Cと一価選択性カチオン交換膜SCとの間にも排液室7が形成されている。
【0013】
従って、陽極1及び陰極3は、一価選択性カチオン交換膜SCで区画された陽極室10或いは陰極室11内に収容されている。
【0014】
上記のような構造の電気透析装置において、アニオン交換膜A及びカチオン交換膜Cとしては、それ自体公知の膜が使用される。例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、フッ素系樹脂などからなる織布、不織布、多孔性フィルム等を基材とし、この基材にイオン交換樹脂が充填された構造を有するものである。
【0015】
上記のイオン交換樹脂は、炭化水素系或いはフッ素系等の基材樹脂にイオン交換基(アニオン交換膜ではアニオン交換基、カチオン交換膜ではカチオン交換基)が導入されたものであり、イオン交換基は、水溶液中で負又は正の電荷となり得る官能基なら特に制限されるものではない。例えばアニオン交換基としては、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基等が挙げられ、一般的に、強塩基性基である4級アンモニウム基や4級ピリジニウム基が好適である。また、カチオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、一般的に、強酸性基であるスルホン酸基が好適である。
【0016】
このようなアニオン交換膜A及びカチオン交換膜Cのイオン交換容量は、一般に、0.1乃至3.0meq/g、好ましくは0.5乃至2.5 meq/gであるのがよく、膜厚は、10乃至500μm、特に30乃至300μm程度である。
なお、アニオン交換膜は、回収酸側から原液側へのプロトンリークが生じ易く、酸回収効率を向上させるために、プロトンリークの低いアニオン交換膜が好適に用いられる。
【0017】
また、一価選択性カチオン交換膜SCは、H、Na、Kなどの一価のカチオンは選択的に透過するが、アニオンは勿論のこと、多価金属イオンなどの多価カチオンを遮断する性質のカチオン交換膜である。1価カチオン選択透過性は、例えば 下記式(1)で示される2価カチオンのマグネシウムイオンに対する1価カチオンのプロトンの相対輸率(イオン選択透過係数:PMg)が、10以上、好ましくは、100以上であることが重要である。
Mg=(t/tMg)/(C/CMg) (1)
:膜中のプロトンの輸率
Mg:膜中のマグネシウムイオンの輸率
:処理液中のプロトンの規定濃度
Mg:処理液中のマグネシウムイオンの規定濃度
このような一価選択性カチオン交換膜SCもそれ自体公知であり、具体的には、前述したカチオン交換膜の少なくとも一方の面にアニオン交換体層が形成された構造を有する複合カチオン交換膜である。
【0018】
上記のような一価選択性カチオン交換膜SCとして使用される複合カチオン交換膜としては、例えば特開昭62−205135号公報に開示されているもの、例えばカチオン交換膜の少なくとも一方の表面に、第4級アンモニウム塩基類と3個以上のビニルベンジル基とを有するビニル系化合物を重合させることにより形成された重合体層(アニオン交換体層)を有しているものが、一価イオンを選択的に透過し、後述する廃液中に存在する多価金属イオンを遮断するという観点から特に好適である。
【0019】
上記の複合カチオン交換膜において、ビニル系化合物が有している第4級アンモニウム塩基類としては、第4級アンモニウム塩基のみならず、第4級ピリジニウム塩基、スルホニウム塩基、ホスホニウム塩基等のいわゆるオニウム塩基であってもよい。ビニル化合物の有する第4級アンモニウム塩基類の数は、1個以上が有効であるが、必要以上に多すぎると一価選択性が低下するため、一般に1〜1000個、特に3〜50個が好ましい。また、ビニル系化合物が有するビニルベンジル基は、3個以上であれば制限されないが、このビニルベンジル基が多いほど、より緻密な重合体層がカチオン交換膜の表面に形成されるため、改質カチオン交換膜として所望の効果を発揮する。しかしながら、このようなビニル化合物のビニルベンジル基が多すぎる場合には、ビニル化合物の分子間、分子内で重合が起り易く取り扱いが難しいため、該ビニル化合物が有するビニルベンジル基の数は、一般に3〜1000個、特に3〜100個が好ましい。
【0020】
上記のような第4級アンモニウム塩基と3個以上のビニルベンジル基を有するビニル系化合物は、一般的には例えば次の方法により合成される。
【0021】
(1)メチルアミン、エチルアミンなどの一級アミンを3個のビニルベンジルクロライドでアルキル化する。
(2)エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの二価の一級アミンを3個以上のビニルベンジルクロライドと反応させ、必要によりヨウ化メチル、ジメチル硫酸のようなアルキル化剤にて第4級アンモニウム塩基とする。
(3)3価以上の三級アミノ化合物に少なくとも3個以上のビニルベンジルクロライドを反応させる。さらに必要なら、他のアルキル化剤にて未反応の第三級アミノ基を第4級アミノ基に変換してもよい。
上記の3価以上の三級アミノ化合物としては、例えば下記式;
H−(CHCHX)n−H、
(式中、Xは、p−ピリジル基、m−ピリジル基、3−メチルピリジン−4イル基、ジメチルアミノメチル基、o−,m−またはp−(ジメチルアミノメチル)フェニル基、o−,m−またはp−(ジメチルアミノエチル)フェニル基、o−,m−またはp−(ジエチルアミノメチル)フェニル基、o−,m−またはp−(ジエチルアミノエチル)フェニル基であり、nは、3以上の整数である)、
(CHN(CH−N(CH)−(CHN(CH
(CHN(CH−N(CH)−(CHN(CH
(CHN(CH−N(CH)−(CHN(CH
【化1】

(式中、Xは、式;(CHN(CH−で表される基である)、
で表される化合物などを例示することができる。
(4)同一分子中に3個以上のハロゲン原子を有する化合物、例えば下記式;
H−(CHCHX)n−H
(式中、Xは、o−,m−またはp−クロロメチルフェニル基である)、
で表される化合物に、ビニルフェニルアルキルN,N−ジアルキルアミンを反応させる。
【0022】
このような一価選択性カチオン交換膜SCにおいて、一般に、カチオン交換膜の表面に形成されているアニオン交換体の重合体層の厚みは、0.01乃至50μm 程度の範囲にあるのがよく、且つそのアニオン交換容量は0.1乃至3 meq/g程度の範囲にあることが、適度な一価選択性を確保する上で好ましい。また、かかるアニオン交換体の重合体層は、カチオン交換膜の一方の表面に設けられていればよいが、両面に設けることも可能である。
【0023】
尚、図1の装置において、一価選択性カチオン交換膜SCは、そのアニオン交換体の重合体層側の面が陽極1側を指向するように配置される。
【0024】
本発明においては、上述した電気透析装置の脱塩脱酸室5に、硝フッ酸廃液を供給して電気透析を行うことにより、硝フッ酸廃液からの酸の回収が行われる。
【0025】
この硝フッ酸廃液は、既に述べたように、ステンレスの酸洗工程から排出され、或いはLSI工場など、エッチングやメッキなどの処理を行うところからも多量に排出されるものであり、ろ過などの廃水処理工程を経て固形分が除去されており、フッ酸及び硝酸を含み、さらに鉄、クロム、ニッケル等の多価金属イオンを含んでいる。勿論、この硝フッ酸廃液は、硝酸或いはフッ酸の一方のみを含有するものであってもよい。また、公知の拡散透析などの処理によって、多価金属イオン濃度が低減されているものであってもよい。
【0026】
本発明においては、上記の硝フッ酸廃液を原液として脱塩脱酸室5に供給すると同時に、陽極室10及び陰極室11には、極液として希薄な酸水溶液が供給し、酸室9には、希薄な酸水溶液若しくはイオン交換水を供給し、さらには排液室7にはプロトン補給源として酸水溶液を供給し、この状態で陽極1及び陰極3の間に所定の電圧が印加され、所定の電流密度で電気透析が実行される。
【0027】
上記のプロトン供給源として用いる酸としては、特に制限されるものではないが、本発明が硝フッ酸廃液からフッ酸や硝酸を回収するものであるため、これを同種の酸を使用するのでは意味がなく、また、塩酸は装置腐食などの問題があるため適当でなく、従って、一般的には硫酸あるいはリン酸が使用され、特にコストの点で硫酸が好適に使用される。また、陽極室10、陰極室11或いは酸室9に供給する希薄な酸としては、回収すべき酸と同じ酸、即ち、硝酸或いはフッ酸が好適である。
【0028】
上記のように電気透析を行うと、図1に示されているように、脱塩脱酸室5に供給された原液(硝フッ酸廃液)からは、NO、Fがアニオン交換膜Aを通って酸室9に移動する。一方、Fe2+、Cr3+、Ni2+等の金属多価イオン及びHがカチオン交換膜を通って排液室7に移動する。また、排液室7内のHは、一価選択性のカチオン交換膜SCを通って酸室9内に流入することとなる。この場合、金属多価イオンの酸室5内への流入は、一価選択性カチオン交換膜SCによって遮断される。
【0029】
従って、上記のようにして電気透析を続行していくと、酸室9内のフッ酸及び硝酸濃度が増大していき、適度な濃度に達した段階で、酸室9から、これら酸の混合液を回収する。また、排液室7からは、Fe2+、Cr3+、Ni2+等の金属多価イオンを含む酸水溶液が排出されることとなる。
【0030】
上述した本発明において、排液室7に酸水溶液を供給することが極めて重要である。即ち、上記のようにして電気透析を行うと、硝フッ酸廃液(原液)中に含まれている多価金属と塩を形成している酸根も、アニオン交換膜Aを通って酸室9に移行する。従って、酸室9の液中にはプロトンが不足することとなり、このまま酸室9の液を回収した場合には、プロトン不足のために酸の回収効率が低下してしまう。このため、本発明では、プロトン不足を補うため、排液室7に硫酸等の酸の水溶液を供給し、プロトン不足を補っているのである。即ち、排液室9に供給した酸に由来するHは、一価選択性カチオン交換膜SCを通って酸室9に移行し、プロトン不足を補い、これにより、高効率で酸を回収することができる。
尚、上記の場合において、プロトン補給源として供給された酸に由来するアニオン(例えばSO2−)は、そのまま排液室7に留まることとなる。
【0031】
上記のように、排液室9に供給する酸は、Fe(NOやFeF等の酸の多価金属塩に由来するプロトン不足を補うものであるから、その供給量は、脱塩脱酸室5に供給される硝フッ酸廃液(原液)中に含まれる多価金属イオンと同当量であればよい。
【0032】
本発明において、プロトン補給源として供給される酸水溶液は、単独で排液室7に供給することもできるが、一般的には、図1に示されているように、脱塩脱酸室5に供給され、電気透析によって脱塩脱酸された希釈液に、上記の酸を添加して排液室7に循環させることが、Fe等の多価金属が効率よく回収されるという点で好適である。
尚、図1の例では、1対(2枚)のアニオン交換膜Aを使用し、その間にカチオン交換膜Cと一価選択性カチオン交換膜SCが配置された構造を有する電気透析装置が示されているが、本発明で用いる電気透析装置は、このような構造に限定されるものではなく、例えば、さらに多数枚のアニオン交換膜Aが使用され、それぞれのアニオン交換膜Aの対の間にカチオン交換膜Cと一価選択性カチオン交換膜SCが配置された構造の電気透析装置を使用することも、当然可能である。
【0033】
上記のような電気透析終了後は、酸室9から硝酸及びフッ酸の混合水溶液或いは硝酸水溶液若しくはフッ酸水溶液が、多価金属が除去され、高純度で回収される。また、排液室7からは、プロトン補給源として供給された酸及び多価金属を含む液が廃液として取り出される。
【0034】
本発明において、上記のようにして回収された酸は、ステンレス洗浄工程などに再利用される。また、排液室7から排出される廃液は、必要により多価金属を回収してステンレスの製造などに再利用される。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
以下の実験に際して、図1に示す構造を有し、下記のイオン交換膜を備えた電気透析装置(処理能力9L/Hr・m)を用いた。
なお、用いたカチオン交換膜のイオン選択透過係数(PMg)は、次の方法で測定した。イオン交換膜を2室アクリルセルに挟み、両室に、0.25N−HClと0.25N−MgCl2を含む混合水溶液を満たし、25℃で攪拌しながら、10mA/cm2の電流密度で60分間にわたって電気透析を行い、電気透析後、両室のプロトンとマグネシウムイオン量を測定して、式1からPMgを算出した。
カチオン交換膜C;ネオセプタCMX
厚み:180μm
カチオン交換容量:1.6meq/g
Mg:2
アニオン交換膜A;ネオセプタAMX
厚み:140μm
アニオン交換容量:1.5meq/g
一価選択性カチオン交換膜SC;ネオセプタCIMS
厚み:140μm
Mg:210
【0037】
<実施例1>
仮想酸廃液として、下記の組成の原液を用意した。
原液組成;
NO濃度:20.4g/L
SO濃度: 0
Fe濃度:3.9g/L
濃度:0.12N
【0038】
また、極液用の酸及びプロトン補給源として、以下の酸水溶液を用意した。
極液用酸水溶液;硝酸水溶液
NO濃度:7.6g/L
濃度:0.13N
プロトン補給用酸水溶液;硫酸水溶液
SO濃度:22.7g/L
濃度:0.51N
【0039】
電気透析装置の脱塩脱酸室に、上記の原液1リットルを供給し、陽極室、陰極室、酸室に極液用の硝酸200ccを供給し、さらに、排液室にプロトン補給用硫酸水溶液1リットルを供給し、下記の条件で120分間、2.5A/dm2を通電して電気透析を行った。
【0040】
電気透析後、酸室から回収した回収酸、脱塩脱酸室から回収した脱塩液及び排液室から回収した廃液の組成を、イオンクロマトグラフィ、原子吸光或いは滴定により分析し、その結果は以下の通りであった。鉄イオンが十分除去された硝酸を回収することができた。
【0041】
回収酸(280ml);
NO濃度:63.2g/L
SO濃度:3.12g/L
Fe濃度:0.19g/L
濃度:1.15N
脱塩液(910ml);
NO濃度:1.22g/L
SO濃度:0.17g/L
Fe濃度:0.03g/L
濃度:0.025N
廃液(1000ml);
NO濃度:1.04g/L
SO濃度:21.4g/L
Fe濃度:3.2g/L
濃度:0.49N
【0042】
<比較例1>
電気透析装置の排液室に、プロトン補給用硫酸水溶液の代わりにイオン交換水1リットルを供給した以外は、実施例1と全く同じ条件で電気透析を行った。しかし、排液室の液の電気伝導度が低く、十分な電気が流れず、電気透析が実施できなかった。
【0043】
<比較例2>
電気透析装置中のカチオン交換膜ネオセプタCMXを除き、ネオセプタAMXとネオセプタCIMSに挟まれた室を脱塩脱酸室として原液を供給し、プロトン補給用硫酸水溶液を供給する排液室を除いた以外は、実施例1と全く同じ条件で電気透析を行い、電気透析後、酸室から回収した回収酸、脱塩脱酸室から回収した脱塩液の組成を分析した。その結果は以下の通りであった。通電した電気量に対して原液中のプロトン量が少なく、1価カチオン選択透過性膜を用いても鉄イオンが透過することになり、その結果、回収酸中の鉄イオン濃度が増し、純度の高い酸を得ることができなかった。
【0044】
回収酸(280ml);
NO濃度: 54.6g/L
SO濃度: 0g/L
Fe濃度: 14.9g/L
濃度: 0.35N
脱塩液(920ml);
NO濃度: 3.6g/L
SO濃度: 0g/L
Fe濃度: 1.0g/L
濃度: 0.02N
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に用いる電気透析装置の代表的な構造を示す図。
【符号の説明】
【0046】
A:アニオン交換膜
C:カチオン交換膜
CS:一価選択性カチオン交換膜
1:陽極
3:陰極
5:脱塩脱酸室
7:排液室
9:酸室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極及び陰極の間に、少なくとも1対のアニオン交換膜を配置し、該一対のアニオン交換膜の間に陽極側から順にカチオン交換膜と一価選択性カチオン交換膜を配置し、
前記アニオン交換膜とカチオン交換膜との間に形成されている脱塩脱酸室に、硝酸金属塩及び/又はフッ酸金属塩を含む硝フッ酸廃液を供給するとともに、該脱塩脱酸室に隣接し且つカチオン交換膜と一価選択性カチオン交換膜との間に形成されている排液室に酸水溶液を供給しながら電気透析を行ない、
前記脱塩脱酸室に隣接し且つ一価選択性カチオン交換膜とアニオン交換膜との間に形成されている酸室から、硝酸及び/又はフッ酸を回収することを特徴とする硝フッ酸廃液からの酸の回収方法。
【請求項2】
前記脱塩脱酸室から硝フッ酸廃液の脱塩液を回収し、該脱塩液に前記酸水溶液を添加し、前記排液室に供給して電気透析を行う請求項1に記載の酸の回収方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−39672(P2009−39672A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208825(P2007−208825)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(503361709)株式会社アストム (46)
【Fターム(参考)】