説明

硫黄含有量を削減された香味油及び口腔ケア組成物中での使用

本発明は、低分子量硫黄化合物を、特に、硫化ジメチル及びメチルメルカプタンなどの悪臭を放つ種の主要な前駆体であるジメチルスルホキシド(DMSO)を、実質的に除去するために特別に加工された、ミント−、フルーツ−、及びスパイス−タイプの香味を含む、香味油に関する。これらの悪臭を放つ種は、香味油に存在するこのような硫黄含有化合物の関与する酸化−還元反応を介して作られる。より好ましい加工方法は水性洗浄法であり、この方法は行うのに単純で低コストで容易である一方で、重要なことに、望ましい構成成分を非選択的に除去すること、並びに、香味油を他の構成成分を破壊して香味又はにおい特性に望ましくない変化を引き起こす可能性のある過激な条件に供することを含む、典型的な加工方法が有する問題を回避するという利点を有している。望ましくない構成成分を選択的に除去する他の加工方法としては、(1)極性低沸点構成成分を除去するための蒸留、(2)硫黄化合物に選択的な吸着剤による濾過、(3)向流抽出、及び(4)カラムクロマトグラフィー、が挙げられる。この加工方法に続いて所望により、この加工の間に除去又は交換されてしまった可能性のある望ましい構成成分を添加しなおすリエンジニアリングが行われてよい。特別に加工された香味油は、硫黄含有化合物と反応して悪臭を放つ生成物を形成するスズイオンなどの化学的還元能力を有する構成成分を含む口腔ケア組成物において、特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオール又はメルカプタンなどの硫黄含有種(sulfur-containing species)に主に由来する、劣化、並びに、悪臭及び嫌味(off-taste)の生成に対して、安定である香味油を含む香味系を含有する口腔ケア組成物に関する。これらの悪臭を放つ種は、香味油及び組成物の他の構成成分に存在する硫黄含有化合物の関与する酸化−還元反応を介して作られる。香味油は、低分子量硫黄化合物の、特に、硫化ジメチル及びメチルメルカプタンなどの悪臭を放つ種の主要な前駆体であると分かっているジメチルスルホキシド(DMSO)の、分量を削減するために特別に加工される。したがって本発明は、DMSO及び他の硫黄含有種を実質的に含まないミント−、フルーツ−、及びスパイス−タイプの香味を含む、香味油の製造方法、並びに、味及びにおい特性の点で改善された安定性のために、このような特別に加工された香味油を組み込んでいる口腔ケア組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
歯磨剤及び口内洗浄剤などの口腔ケア製品は、口腔ケア衛生レジメンの一部として、消費者により日常的に使用される。口腔ケア製品が消費者に、治療上及び美容上両方の健康法の利益を提供できることは周知である。治療上の利益としては、典型的には様々なフッ化物塩の使用により実現される虫歯予防;トリクロサン、フッ化第一スズ、若しくは精油などの抗微生物剤の使用による歯肉炎予防;又は塩化ストロンチウム又は硝酸カリウムなどの成分の使用による過敏症の抑制が挙げられる。口腔ケア製品により提供される美容上の利益としては、歯垢及び結石形成の抑制、歯の着色汚れの除去及び予防、歯のホワイトニング、吐く息をきれいにすること、及び口内感触感覚として広く特徴付けられ得る口の感触についての印象を全体的に改善することが挙げられる。結石及び歯垢は、行動要因及び環境要因とともに、歯の審美的外観に著しく影響を与える歯の着色汚れの形成に繋がる。歯の着色汚れの傾向の一因となる行動要因及び環境要因としては、コーヒー、紅茶、コーラ又はタバコ製品の常用、並びに、カチオン性抗微生物剤及び金属塩などの、着色汚れを促進する成分を含有する特定の口腔用製品の使用もまた挙げられる。
【0003】
したがって、家庭における毎日の口腔ケアは、異なる機構により機能する複数の成分を含み、抗カリエス、抗微生物、抗歯肉炎、抗歯垢及び抗結石、並びに、抗臭、口内清涼、着色汚れ除去、着色汚れ制御及び歯のホワイトニングを含む治療的及び審美的効果の全種類を提供する製品を必要としている。歯磨剤及び口内洗浄剤などの毎日使用するための口腔ケア製品により完全な口腔ケアを提供するために、活性物質と添加剤とを組み合わせることが必要であり、これらの多くは使用中、負の感覚、具体的には不快な味及び感覚並びに着色汚れ促進の原因となるという不利点を有する。不快な味及び口内感覚は、1種以上の苦み、金属感、渋み、塩気、しびれ、刺痛、熱感、穿痛、及びさらに刺激性局面を有すると記載されている。これらの感覚的欠点に関連する口腔ケア用途のための典型的な成分としては、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、スズ塩、銅塩及び亜鉛塩などの抗微生物剤;過酸化物などの歯の漂白剤;ピロホスフェート、トリポリホスフェート及びヘキサメタホスフェートなどの抗歯石剤;並びに重曹及び界面活性剤などの賦形剤が挙げられる。これらの成分由来の感覚的欠点を軽減するために、口腔ケア製品は典型的には香味剤及び甘味剤を配合し、味をできる限り良好にするとともに消費者に許容可能にする。
【0004】
口腔に対する多くの証明された効果のために、スズイオンは口腔ケア組成物に組み込まれるのが望ましい。スズイオンは、典型的には口腔ケア組成物中のフッ化第一スズから供給されて、抗微生物、抗結石、抗歯肉炎及び抗過敏症といった効果を提供し、並びに口臭を予防するのに使用される。しかしながら、スズイオンを含有する配合は感覚的に喜ばしいものではないことが既知であるため、スズイオンを伴う配合は挑戦的であると分かっている。加えて、特定の香味油、特にミント−タイプの油は、スズイオンと組み合わせて使用される時、不安定性及び悪臭生成を呈する可能性があることが分かっている。
【0005】
植物又は植物性材料からの抽出に続く、品質及び安定性を改善するための香味油の精製又はさらなる加工が、当該技術分野において説明されてきている。一般的にこれらの加工方法は、不安定性に又は望ましくない味若しくはにおい特性に関与していると信じられている、構成成分の油中の分量を除去すること又は減らすことを目的としている。例えば、香味油は、テルペン、メントフラン、プレゴン、及び硫化ジメチルを除去するか又は削減するように処理されてきている。このような処理方法は例えば、米国特許第3,867,262号、同第4,440,790号、同第4,613,513号、同第4,708,880号、同第4,844,883号、同第4,816,616号、同第4,948,595号、同第5,116,625号、同第5,128,154号、同第5,204,128号、同第5,298,238号、同第5,425,962号、及び同第6,479,088号に記載され、蒸留、窒素散布、及びこのような望ましくない構成成分を酸化又は不活性化するための化学処理が挙げられる。
【0006】
例えば、ペパーミント油は、望ましくない緑草悪臭(green weedy note)を提供することが報告されている硫化ジメチルの濃度を除去するため又は削減するために蒸留されてよい。蒸気蒸留又は真空蒸留が、ペパーミント油を精製するために行われてきている。しかしながら、このような蒸留方法は全体として満足のいくものではない。典型的な蒸気蒸留方法は、硫化ジメチルの除去に加えて、他の低沸点ペパーミント油構成成分も除去する。したがって、ペパーミント油の精製時には、望ましい低沸点構成成分を留出物から分離して香味に対して少なくとも部分的に添加しなおすことが必要である。このことは蒸留方法のコスト及び時間を増すことになる。ペパーミント油の精製に現在使用されている方法についてのさらなる問題は、これらの方法が過剰な熱などの過激な条件にペパーミント油を供する可能性があるということである。これは香味に望ましくない変化を生む可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最適な味及びにおい特性並びに安定性を提供するための、特に悪臭を形成する構成成分、具体的には、香味油における悪臭−前駆体硫黄種の主要な形態であると現在分かっているジメチルスルホキシドを、除去するための、香味油の改善された加工方法に対する必要性が存在し続けている。したがって、本発明は、出発香味油(1種又は複数種)からこのような前もっては認識されない望ましくないにおいを形成する構成成分を除去するとともに、このような悪臭を形成する構成成分の望ましくない分量を実質的に含まず、それゆえに口腔ケア組成物中のスズなどの還元剤との反応により悪臭を形成する傾向又は香味を汚染する傾向をもまた持たない安定な香味を生産することに、関与する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、香味油をさらに加工又は精製してジメチルスルホキシドなどの硫黄含有化合物の分量を削減することを目的とする。より好ましい加工方法は水性洗浄法であり、この方法は行うのが単純で低コスト、容易である一方、重要なことには、望ましい構成成分を非選択的に除去すること、並びに、他の構成成分を破壊して香味及びにおい特性に望ましくない変化を引き起こす可能性のある過激な条件に香味油を供することを含む、典型的な加工方法が有する問題を回避するという利点を有している。望ましくない構成成分を選択的に除去する他の加工方法としては、(1)極性低沸点構成成分を除去するための蒸留、(2)硫黄化合物に選択的な吸着剤による濾過、(3)向流抽出、及び(4)カラムクロマトグラフィー、が挙げられる。この加工方法に続いて所望により、この加工の間に除去又は交換されてしまった可能性のある望ましい構成成分を添加しなおすリエンジニアリングが行われてよい。
【0009】
さらなる1つの態様において、本発明は、
(a)化学的還元能力を有する口腔ケア剤と、
(b)組成物中で悪臭及び嫌味の生成に関与している、ジメチルスルホキシド、硫化ジメチル、二硫化ジメチル、及びジメチルスルホンを含む硫黄含有種を実質的に含まない香味油(1種又は複数種)又は抽出物(1種又は複数種)を含む香味系と、
(c)経口で受容可能なキャリアと、を含む、口腔ケア組成物を提供する。
【0010】
化学的還元能力を有する口腔ケア剤は、スズイオン源、並びに茶、クランベリー、ザクロ、オーク樹皮などの供給源からのフェノール樹脂から選択される。組成物は安定で、豊かな香味特性を有し、味及び爽快感が良好であり、それによりユーザーの服薬遵守及び頻繁な使用を奨励する。
【0011】
本発明のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、次の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書は、本発明を具体的に指摘し且つ明確に請求する特許請求の範囲をもって結論とするが、本発明は、以下の説明からよりよく理解されるものと考えられる。
【0013】
本明細書で以後使用される全ての百分率及び比率は、特に指示がない限り、組成物全体の重量を基準とする。本明細書において参照される成分の全ての百分率、比率、及び濃度は、成分の実量に基づいており、且つ特段の指示がない限り、市販の製品として成分がそれらと組み合わされる溶媒、充填剤、又はその他の物質を含まない。
【0014】
本明細書において参照される全ての測定は、特に指示がない限り25℃にて行われる。
【0015】
本明細書中で、「含む」とは、最終結果に影響を及ぼさない他の工程及び他の構成成分を追加し得ることを意味する。この用語は、「からなる」及び「から本質的になる」という用語を包含する。
【0016】
本明細書で使用する時、単語「含む」及びその変形は非限定的であることを意図し、列挙した品目の詳細説明は、本発明の物質、組成物、装置、及び方法でも有用である可能性のある他のものを除外しない。
【0017】
本明細書で使用する時、単語「好ましい」、「好ましくは」及びその変形は、特定の条件下において特定の効果をもたらす本発明の実施形態を指す。しかし、同様又は他の環境において、他の実施形態が好ましい可能性もある。さらに、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを示すものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を除外することを意図するものではない。
【0018】
「口腔ケア組成物」とは、通常の使用過程において、特定の治療剤を全身投与する目的で意図的に嚥下されるものではなく、経口作用を目的として実質的に全ての歯の表面及び/又は口腔組織と接触させるのに十分な時間、口腔内に保持されてよい製品を意味する。口腔ケア組成物は、練り歯みがき、歯磨剤、歯用ゲル、歯肉縁下用ゲル、口内洗浄剤、ムース、泡、義歯ケア製品、マウススプレー、口内錠、咀しゃく錠又はチューインガムを含む様々な形態であってよい。口腔ケア組成物はまた、口腔表面へ直接適用する又は付着させるためのストリップ又はフィルム上に組み込まれてもよい。
【0019】
本明細書で使用する時、用語「歯磨剤」とは、特に指定がない限り、ペースト、ゲル、又は液体製剤を意味する。歯磨剤組成物は、単一相組成物であってもよく、又は2種以上の別々の歯磨剤組成物の組み合わせであってよい。歯磨剤組成物は、深い縞状、表面的な縞状、ペーストを囲むゲルを有する多層状、又はこれらの任意の組み合わせのような、任意の所望の形態であってよい。2種以上の別個の歯磨剤組成物を含む歯磨剤中の各歯磨剤組成物は、ディスペンサーの物理的に分離された区画内に収容され、同時も分配される場合がある。
【0020】
本明細書で使用する時、用語「ディスペンサー」とは、歯磨剤のような組成物を分配するのに好適なあらゆるポンプ、チューブ、又は容器を意味する。
【0021】
本明細書で使用する時、用語「歯」とは、天然歯、並びに人工歯又は歯科補綴物を指す。
【0022】
用語「香味油」とは、香味剤として使用される精油を指し、植物から蒸留又は搾出された揮発油、及びこれらの揮発油の構成成分である。用語「香味油」とは本明細書で使用される時、ミント油及びミント−タイプ油を指す際には、典型的には最上天然(prime natural)又は無添加(unfolded)(植物源から新たに抽出された)として示され、精製又は精留されて油を規格化して不必要な香味/におい特性を除去する(例えば、分別蒸留による)様々な等級の油を含む。精留等級は一般的にはエンドユーザーに供給される商業的等級であり、香味及び香料として使用される。典型的な精油及びこれらの主要な構成成分は、例えば、タイム(チモール、カルバクロール)、オレガノ(カルバクロール、テルペン)、レモン(リモネン、テルピネン、フェランドレン、ピネン、シトラール)、レモングラス(シトラール、メチルヘプテノン、シトロネラール、ゲラニオール)、オレンジフラワー(リナロール、β−ピネン、リモネン)、オレンジ(リモネン、シトラール)、アニス(アネトール、サフロール)、クローブ(オイゲノール、オイゲニルアセテート、カリオフィレン)、ローズ(ゲラニオール、シトロネロール)、ローズマリー(ボルネオール、ボルニルエステル、カンファー)、ゼラニウム(ゲラニオール、シトロネロール、リナロール)、ラベンダー(リナリルアセテート、リナロール)、シトロネラ(ゲラニオール、シトロネロール、シトロネラール、カンフェン)、ユーカリ(ユーカリプトール)、ペパーミント(メントール、メンチルエステル)、スペアミント(カルボン、リモネン、ピネン)、冬緑(サリチル酸メチル)、カンファー(サフロール、アセトアルデヒド、カンファー)、ベイ(オイゲノール、ミルセン、カビコール)、シナモン(シンナムアルデヒド、シンナミルアセテート、オイゲノール)、茶木(テルピネン−4−オル、シネオール)、及びシダーリーフ(α−ツジョン、β−ツジョン、フェンコン)から得られるものである。精油、これらの組成物及び製造は、カーク・オスマー「工業化学百科事典(Encyclopedia of Chemical Technology)」第4版及び「メルク・インデックス(The Merck Index)」第13版に詳細に記載されている。
【0023】
用語「口腔に許容可能なキャリア」とは、フッ化物イオン源、抗結石又は抗歯石剤、緩衝剤、シリカなどの研磨剤、アルカリ金属重炭酸塩、増粘物質、保湿剤、水、界面活性剤、二酸化チタン、香味剤、甘味剤、キシリトール、着色剤、及びこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない、口腔ケア組成物に使用される安全で有効な物質、賦形剤又は添加剤を包含する。
【0024】
本明細書に有用な活性物質及び他の成分は、美容上及び/若しくは治療上の利益、又はそれらが要求される作用様式若しくは機能によって、本明細書中で分類又は記述することができる。しかしながら、本明細書に有用な活性物質及び他の成分が、場合によっては、1を超える美容上及び/若しくは治療上の利益を提供する、又は1を超える作用様式で機能若しくは作用する可能性があることを理解すべきである。したがって、本明細書での分類は便宜上実施されるものであって、成分を具体的に規定した用途又は列挙した用途に制限しようとするものではない。
【0025】
本明細書において、用語「歯石」及び「結石」とは、互換的に用いられ、石化した歯垢バイオフィルムを指す。
【0026】
本組成物の必須及び任意構成成分を、以下の項に記載する。
【0027】
香味系
本組成物は、チオール又はメルカプタンなどの硫黄含有種に主に由来する、劣化、並びに、嫌味及び悪臭の生成に対して、安定である香味油を含む香味系を含む。これらの悪臭を放つ種は、香味油の構成成分及び組成物の他の構成成分の関与する酸化−還元反応を介して作られる。より具体的には、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの低分子量硫黄化合物が特定の天然香味油中にかなり強い還元能力を有する物質と反応するのに十分な量で存在し、すなわち、容易に酸化され結果として硫化ジメチル及びメチルメルカプタンを含む悪臭を放つ種を生ずることが現在では分かっている。したがって本発明は、DMSO及び他の硫黄含有種の分量を削減するために特別に加工されたミント−、フルーツ−、及びスパイス−タイプの香味を含む、香味油と、改善された味及び安定性のために、このような加工された香味油を組み込んでいる口腔ケア組成物とを提供する。好ましくは、加工された香味油は、還元されると悪臭を放つ種になる可能性のあるような、ジメチルスルホキシド、硫化ジメチル、二硫化ジメチル、及びジメチルスルホンを含む、望ましくない硫黄含有種を実質的に含まない。悪臭の生成に関して問題とならないようであれば、他の硫黄含有化合物は加工された油に依然として存在していてよい。本明細書において「本質的に含まない」とは、香味油が悪臭前駆体である硫黄含有種を約20ppm未満でしか含まないことを意味する。このような硫黄含有種を約20ppm超含有する香味油をスズなどの物質と配合すると、「スカンクのような」と記載されてきた悪臭の生成が起きることが分かっている。さらには、悪臭を引き起こすこのような酸化還元反応は、組成物中の活性スズの濃度を減らし、それゆえに有効性を潜在的に減らすという点で不利である。水洗浄によるなどの加工後の香味油中の悪臭前駆体硫黄含有種の濃度は、好ましくは約10ppm未満、より好ましくは約1ppm未満、さらに好ましくは約0.5ppm未満又は0である。
【0028】
本発明は、香味油に存在する主要な悪臭前駆体硫黄含有種がDMSOであるという発見を、300ppm以上程度の濃度を有する試料を用いて、取り扱う。以下の表は、スペアミント及びペパーミント試料中のDMSO及び硫化ジメチル(DMS)の濃度を示す。以下に示されるように、主要な種はDMSOであり、香油中でDMSが有意により低分量であることが分かる。
【表1】

【0029】
ペパーミント油供給元I.P.カリソン(I.P. Callison)、スペアミント油供給元ラビーミント(Labbeemint)
自然界でのDMSOの発生が報告されている。例えば、選択された果物、野菜、穀物、及び飲料におけるDMSOの自然発生濃度が「ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フードケミストリー(J. Agric.Food Chem)」(1981年、29巻、1089〜91頁)に報告されている。報告された最高濃度は紅茶飲料中で、16ppmであった。ほとんどの試料で見られた濃度は1ppm未満で、トマトペーストなどの濃縮された又は加工された試料ではより高い濃度が見られた。DMSO濃度の増加は、商業加工中の硫化ジメチル(DMS)の酸化によるものであろうと考えられた。DMSは自然界に広く見られ、多くの食物の特徴的なにおいに関与している。DMSOもまたスペアミント油中で発生することが報告されており[ブラジル自然科学アカデミー紀要(Anais de Academia Brasileira de Ciencias)(1972年、44巻(付録)、273〜7)]、及びペパーミント油中で発生することも報告されている[「アグリカルチュラル・バイオロジカル・ケミストリー(Agric. Biol. Chem.)」(1980年、44巻(7)、1535〜43)]。本明細書のミント香味油中で見られる濃度については報告はこれまでない。
【0030】
ミント油中のジメチルスルホキシド(DMSO)及び硫化ジメチル(DMS)の濃度測定は、試料希釈に続くGC−MSシステムに液体注入を介して行われた。簡潔には、DMSO及びDMSの既知量をスパイクすることで、予め水洗浄してこれらの構成成分を定量化の下限未満に除去されたペパーミント油中に較正標準が調製された。水洗浄技術は本発明に従い、詳細が後述される。各標準及び試料は分析用に、200μLアリコートをDMSO用(13)及びDMS用()の内部標準で標識された安定同位体を含有する酢酸エチル800μLで希釈することにより調製された。調製された標準及び試料は、1μLアリコートをアジレント(Agilent)6890GCのスプリット/スプリットレス注入口(split/splitless inlet)に注入することにより分析された。カラム溶出液はアジレント5973シングルクォドルプル(single quadrupole)質量分析計に移され、この質量分析計は選択イオンモニタリング(SIM)モードで操作された。各検体に対して、較正標準についてのピーク面積比(検体/内部標準)がスパイク検体濃度に対比してプロットされた。それぞれの未知の試料濃度は、内部標準ピーク面積比に対して測定された検体に基づく相当する較正曲線から補間された。これらのアッセイ条件を使用して、DMSO及びDMS双方についての定量化の名目下限は1ppm(重量/体積)、DMSO及びDMSについての定量化に対する定量化上限はそれぞれ500ppmと100ppmであった。
【0031】
本発明の香味油は一般的に口腔ケア組成物中で、該組成物の約0.001重量%〜約5重量%の濃度で使用される。好ましくは、香味油は約0.01%〜約4%、より好ましくは約0.05%〜約3%、最も好ましくは約0.1%〜約2%で、存在する。香味油は経口製剤の全香味組成物として存在することができ、又は他の選択された香味成分と組み合わせることもできる。口腔ケア組成物に用いられる好ましい香味油としては、M.ピペリタ(M. piperita)(ペパーミント)、M.アルベンシス(M. arvensis)(コーンミント)、M.スピカタ(M. spicata)(米国原産スペアミント)、M.カーディアカ(M. cardiaca)(スコッチ種スペアミント)及びM.ヴィリディス・クリスパ(M. viridis Crispa)(中国産スペアミント(spearmint form China))などのメンタ種由来のものが挙げられる。ミントが口腔ケア組成物において最も支配的な香味であることから、口腔ケア組成物は一般的なミント味を有することが望ましい。
【0032】
上記の選択ミント香味油に加えて、香味系は、冬緑油、クローブ芽油、カッシア、セージ、パセリ油、マジョラム、レモン、オレンジ、シス−ジャスモン、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、5−エチル−3−ヒドロキシ−4−メチル−2(5H)−フラノン、バニリン、エチルバニリン、アニスアルデヒド、3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド、3,4−ジメトキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2−メトキシベンズアルデヒド、ベンズアルデヒド;シンナムアルデヒド、ヘキシルシンナムアルデヒド、α−メチルシンナムアルデヒド、オルト−メトキシシンナムアルデヒド、α−アミルシンナムアルデヒドプロペニルグエトール、ヘリオトロピン、4−シス−ヘプテナール、ジアセチル、メチル−ρ−tert−ブチルフェニルアセテート、メントール、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、1−メンチルアセテート、オキサノン、α−イリソン、メチルシンナメート、エチルシンナメート、ブチルシンナメート、エチルブチレート、エチルアセテート、メチルアントラニレート、イソ−アミルアセテート、イソ−アミルブチラート、アリルカプロエート、オイゲノール、ユーカリプトール、チモール、シンナミックアルコール、オクタノール、オクタナール、デカノール、デカナール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、α−テルピネオール、リナロール、リモネン、シトラール、マルトール、エチルマルトール、アネトール、ジヒドロアネトール、カルボン、メントン、β−ダマセノン、イオノン、γーデカラクトン、γ−ノナラクトン、及びγ−ウンデカラクトン、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない追加の香味成分を含んでよい。一般的に好適な香味成分は、酸化還元反応を起こしにくい構造的特徴及び官能基を含有するものである。これらのものとしては、飽和した香味化学物質の誘導体、又は安定な芳香環若しくはエステル基を含有する香味化学物質の誘導体が挙げられる。多少の酸化又は劣化を受ける場合があっても香味の特徴又は特性に著しい変化を生じない香味化学物質もまた好適である。香味成分は単一の又は精製された化学物質として提供されてもよく、或いは、好ましくは本発明の水洗浄処理又は他の精製処理を経て、比較的不安定で所望の香味特性を変性して感覚刺激の見地から受容性に劣る製品を生ずる可能性がある構成成分を除去した天然油又は抽出物の添加により組成物中に供給されてよい。
【0033】
香味系は、名称「口腔用組成物のための香味(FLAVORS FOR ORAL COMPOSITIONS)」の共同出願した同時継続出願に記載されるような、組成物中で嫌なにおい及び嫌味が発生するのを防止する保護剤構成成分をさらに含んでもよい。このような保護剤としては、アスコルビン酸などのカルボニル化合物;シス−ジャスモン;2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン;5−エチル−3−ヒドロキシ−4−メチル−2(5H)−フラノン;バニリン;エチルバニリン;アニスアルデヒド;3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド;3,4−ジメトキシベンズアルデヒド;4−ヒドロキシベンズアルデヒド;2−メトキシベンズアルデヒド(2-methyoxybenzaldehyde);4−メトキシベンズアルデヒド;ベンズアルデヒド;シンナムアルデヒド;ヘキシルシンナムアルデヒド;α−メチルシンナムアルデヒド;オルト−メトキシシンナムアルデヒド;α−アミルシンナムアルデヒド;及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの保護剤の多くは香味成分である。
【0034】
香味系は、メントール、メンチルエステル、カルボキサミド、ケタール、ジオール、及びこれらの混合物などの冷却剤又はクーラント(coolant)をさらに含んでよい。本組成物に有用な好適なクーラントの例は、「WS−3」として商業的に既知である、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド;「WS−23」として既知であるN,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタナミド;N−ρ−ベンゼンアセトニトリル−メンタンカルボキサミド;並びにWS−5、WS−11、WS−14及びWS−30などの、このシリーズの他のもののようなパラメンタンカルボキサミド剤である。さらなる好適なクーラントとしては、高砂(Takasago)により製造されるTK−10として既知の3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール;メントングリセロールアセタール(フレスコラット(Frescolat)(登録商標)MGA);酢酸メンチル、メンチルアセトアセテート、乳酸メンチルなどのメンチルエステル(ハールマン・アンド・ライマー(Haarmann and Reimer)により供給されるフレスコラット(登録商標)ML)、及びコハク酸モノメンチル(V.マネ(V. Mane)製の商標フィスクール(Physcool))が挙げられる。本明細書で使用する時、用語「メントール」及び「メンチル」としては、これらの化合物の右旋性−及び左旋性の異性体、並びにこれらのラセミ混合物が挙げられる。TK−10は、米国特許番号第4,459,425号(アマノ(Amano)ら、1984年7月10日発行)に記載されている。WS−3及び他の薬剤が、米国特許番号第4,136,163号(ワトソン(Watson)ら、1979年1月23日発行)に記載されている。
【0035】
香味系は、典型的には、甘味剤を含む。好適な甘味剤としては、天然甘味剤及び人工甘味剤の両方が含まれる、当該技術分野において周知のものが挙げられる。いくつかの好適な水溶性甘味剤としては、キシロース、リボース、グルコース(ブドウ糖)、マンノース、ガラクトース、フルクトース(果糖)、ショ糖(砂糖)、マルトース、転化糖(フルクトースとショ糖由来のグルコースとの混合物)、部分的に加水分解したデンプン、固形コーンシロップ、ジヒドロカルコン、モネリン、ステビオシド、グリチルリチン、キシリトール、及びエリスリトールなどの、単糖、二糖、多糖、及び誘導体が挙げられる。好適な水溶性人工甘味剤としては、可溶性サッカリン塩、すなわち、サッカリンナトリウム又はカルシウム塩、シクラメート塩、3,4−ジヒドロ−6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキシドのナトリウム塩、アンモニウム塩、又はカルシウム塩、3,4−ジヒドロ−6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキシドのカリウム塩(アセスルファム−K)、サッカリンの遊離酸型などが挙げられる。他の好適な甘味剤としては、L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル(アスパルテーム)及び米国特許番号第3,492,131号に記載された物質のようなL−アスパラギン酸由来の甘味剤、L−α−アスパルチル−N−(2,2,4,4−テトラメチル−3−チエタニル)−D−アラニンアミド水和物、L−アスパルチル−L−フェニルグリセリン及びL−アスパルチル−L−2,5,ジヒドロフェニル−グリシンのメチルエステル、L−アスパルチル−2,5−ジヒドロ−L−フェニルアラニン、L−アスパルチル−L−(1−シクロヘキシエン)−アラニンなどのようなジペプチド系甘味剤が挙げられる。例えば、スクラロースの製品銘柄で既知である通常の砂糖(スクロース)の塩素化誘導体などの、天然素材の水溶性甘味剤由来の水溶性甘味剤、並びに、タウマトコッカス・ダニエリ(thaumatococus danielli)(タウマチンI及びII)のようなタンパク質系甘味剤を使用することができる。組成物は好ましくは、約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約1重量%の、甘味剤を含有する。
【0036】
香味系に加えて、唾液分泌剤、加温剤、及び麻酔剤を含んでよい。これらの剤は組成物中に、該組成物の約0.001重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約1重量%の濃度で存在する。好適な唾液分泌剤としては、高砂製のジャンブ(Jambu)(登録商標)が挙げられる。加温剤の例は、トウガラシ、及びベンジルニコチン酸などのニコチン酸エステルである。好適な麻酔剤としては、ベンゾカイン、リドカイン、クローブ芽油、及びエタノールが挙げられる。
【0037】
化学的還元剤
本発明の特別に加工された香味油及び抽出物を含む香味系は、化学的還元能力を有する物質(特に、その広範囲の利点から上述したように口腔ケア組成物中で好ましい活性物質であるスズイオン、並びに、有用な抗微生物、抗炎症、及び酸化防止活性を有する植物源由来のフェノール樹脂及び誘導体)を含む組成物において特に有用である。これらのフェノール樹脂及び誘導体の多くは、香味剤としても有用である。
【0038】
スズイオンはかなり強力な還元性を有し、酸化されてスズ構造になり、DMSOと反応すると今度は還元されて悪臭を放つ種DMSになり、さらにはメチルメルカプタン(CHSH)になる。スズがDMSOなどの物質と反応することは、悪臭を放つ種の生成だけでなく、スズの濃度を減らし、それゆえに組成物の有効性も減らすことからも、望ましくない。口腔ケア組成物中で活性物質又は香味剤として使用されるフェノール樹脂の多くは酸化されやすく、すなわち、還元能力を有しており、それゆえにスズと同様にDMSOと反応することができる。
【0039】
本組成物は好ましくは、フッ化第一スズ及び/又は他のスズ塩などのスズイオン源を含む。フッ化第一スズは、虫歯、歯肉炎、歯垢、過敏症の低減、及び改善された息効果に役立つことが分かっている。他のスズ塩としては、塩化第一スズ二水和物、酢酸スズ、グルコン酸スズ、シュウ酸スズ、硫酸第一スズ、乳酸スズ、酒石酸スズが挙げられる。好ましいスズイオン源は、フッ化第一スズ及び塩化第一スズ二水和物である。スズ塩(1種又は複数)は、組成物全体の約0.1重量%〜約11重量%の量で存在する。好ましくは、スズ塩は、組成物全体の約0.4重量%〜約7重量%、より好ましくは約0.45重量%〜約5重量%、最も好ましくは約0.45重量%〜約3重量%、の量で存在する。有効性をもたらす製剤は、典型的には、フッ化第一スズ及び他のスズ塩により提供され、組成物全体の約3,000ppm〜約15,000ppmのスズイオンの範囲である、スズ濃度を含む。
【0040】
スズ塩、特にフッ化第一スズ及び塩化第一スズを含有する歯磨剤については、マジェティ(Majeti)らへの米国特許第5,004,597号に記載されている。スズ塩のその他の記述は、米国特許第5,578,293号(プリンシペ(Prencipe)らに発行)、及び同第5,281,410号(ルカコヴィク(Lukacovic)らに発行)に見出される。スズイオン供給源に加えて、マジェティら及びプリンシペらに記載されている成分のような、スズを安定化するために必要な他の成分が含まれてよい。
【0041】
茶、クランベリー、ザクロ及びオーク樹皮などの植物源からのフェノール樹脂も本組成物に組み込まれてよい。このようなフェノール樹脂としては、カテキン、没食子酸ガロカテキン、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)、没食子酸エピカテキン(ECG)、テアフラビン、テアルビジン、アントシアニジン/プロアントジアニジン及びアントシアニン(例えば、シアニジン、デルフィニジン、ペラルゴニジン、ペオニジン、マルビジン及びペツニジン);タンニン酸;没食子酸;エラグ酸;エラジタンニン;クルクミンが挙げられる。フェノール樹脂は精製化合物として又は植物抽出物として供給されてよい。口腔ケア活性物質として有用なフェノール樹脂は、米国特許第2007/0053849A1号として公開された、同一出願人による米国特許出願第11/595,530号に開示されている。
【0042】
上述した成分に加え、本組成物は、以下の項で記載する、経口で許容可能なキャリア材料と集合的に呼ばれる追加の任意成分を含んでよい。
【0043】
経口で許容可能なキャリア材料
経口で許容可能なキャリアは、局所的経口投与に好適な1種以上の混和性のある固体若しくは液体賦形剤、又は希釈剤を含む。本明細書で使用する時、「混和性のある」とは、組成物の成分が、実質的に組成物の安定性及び/又は有効性を低下させるような方法で相互作用することなく混合し得ることを意味する。
【0044】
本発明のキャリア又は賦形剤は、以下でより詳細に記載するように、歯磨剤、非研磨剤ゲル、歯肉縁下用ゲル、うがい薬又は口内洗浄剤、口内スプレー、チューインガム、薬用キャンディー、及び口臭予防用ミントの通常及び従来の構成成分を含むことができる。
【0045】
使用されるキャリアの選択は、基本的に、組成物が口腔内に導入される方法によって決定される。練り歯磨き、歯用ゲルなどのキャリア材料としては、米国特許第3,988,433号(ベネディクト(Benedict))で開示されるような、研磨材料、起泡剤、結合剤、保湿剤、香味剤及び甘味剤などが挙げられる。二相性歯磨剤配合用のキャリア材料は、ルカコビッチ(Lukacovic)らによる米国特許番号第5,213,790号(1993年5月23日発行)、同第5,145,666号(1992年9月8日発行)、及び同第5,281,410号(1994年1月25日発行)、並びにシェファー(Schaeffer)による米国特許第4,849,213号及び同第4,528,180号に開示されている。うがい薬、口内洗浄剤、又は口内スプレーキャリア材料としては典型的に、例えば米国特許第3,988,433号(ベネディクト)に開示されているように、水、香味剤及び甘味剤などが挙げられる。薬用キャンディーのキャリア材料としては、典型的にはキャンディーベースが挙げられ、チューインガムのキャリア材料としては、例えば米国特許第4,083,955号(グレーベンシュテッター(Grabenstetter)ら)に開示されるような、ガムベース、香味剤、及び甘味剤が挙げられる。香粉(Sachet)のキャリア材料としては、典型的には、匂い袋、香味剤、及び甘味剤が挙げられる。活性物質の歯周ポケット内又は歯周ポケットの周りへの送達のために使用される歯肉縁下用ゲルのためには、米国特許番号第5,198,220号及び同第5,242,910号(ともにダマニ(Damani)、それぞれ1993年3月30日及び1993年9月7日発行)に開示されているような「歯肉縁下用ゲルキャリア」が選択される。本発明の組成物の調製に好適なキャリアは、当該技術分野において周知である。それらの選択は、味、価格、及び貯蔵安定性などのような二次的考察による。
【0046】
本発明の組成物はまた、非研磨剤ゲル及び歯肉縁下用ゲルの形態であってもよく、これは水性であっても非水性であってもよい。さらに別の態様では、本発明は、本組成物を含浸させた歯科用器具を提供する。歯科用器具は、歯及び口腔内の他の組織に接触するための器具を含み、該器具には、本組成物が含浸されている。歯科用器具は、デンタルフロス又はテープ、チップ、ストリップ、フィルム及びポリマー繊維を含む、含浸された繊維であることができる。
【0047】
1つの実施形態では、本発明の組成物は、練り歯磨き、歯用ゲル及び歯用粉末のような歯磨剤の形態である。こうした練り歯磨き及び歯用ゲルの構成成分は一般に、歯の研磨剤(約6%〜約50%)、界面活性剤(約0.5%〜約10%)、増粘剤(約0.1%〜約5%)、保湿剤(約10%〜約55%)、香味剤(約0.04%〜約2%)、甘味剤(約0.1%〜約3%)、着色剤(約0.01%〜約0.5%)、及び水(約2%〜約45%)を1つ以上を含む。このような練り歯磨き又は歯用ゲルはまた、抗カリエス剤(フッ化物イオンとして約0.05%〜約0.3%)、及び抗結石剤(約0.1%〜約13%)の1つ以上を包含してもよい。歯用粉末はもちろん、実質的に全ての非液体の成分を含有する。
【0048】
本発明の他の実施形態は液体製品であり、うがい薬又は口内洗浄剤、口腔スプレー、歯科用溶液及び洗浄液が挙げられる。そのようなうがい薬及び口内スプレーの構成成分は、典型的には、水(約45%〜約95%)、エタノール(約0%〜約25%)、保湿剤(約0%〜約50%)、界面活性剤(約0.01%〜約7%)、香味剤(約0.04%〜約2%)、甘味剤(約0.1%〜約3%)、及び着色剤(約0.001%〜約0.5%)の1つ以上を含む。このようなうがい薬及び口内スプレーはまた、抗カリエス剤(フッ化物イオンとして約0.05%〜約0.3%)、及び抗結石剤(約0.1%〜約3%)の1つ以上も含む。歯科用溶液の構成成分は一般的に、水(約90%〜約99%)、防腐剤(約0.01%〜約0.5%)、増粘剤(約0%〜約5%)、香味剤(約0.04%〜約2%)、甘味剤(約0.1%〜約3%)、及び界面活性剤(0%〜約5%)の1つ以上を含む。
【0049】
本発明の組成物に含まれてよい経口で許容可能なキャリア又は賦形剤の種類については、特定の非限定的な例とともに、次の項で論じる。
【0050】
歯直接剤(Tooth Substantive Agent)
本発明は、高分子界面活性剤(PMSA)のような歯直接剤を含んでよく、これは高分子電解質であり、より具体的にはアニオン性ポリマーである。PMSAは、アニオン基、例えば、リン酸、ホスホン酸、カルボキシ、又はこれらの混合物を含有し、したがって、カチオン性又は正に荷電した実体と相互作用する能力を有する。「無機質」記述子は、ポリマーの界面活性又は直接性がリン酸カルシウム無機質又は歯のような無機質表面に向かうことを伝えることを意図する。
【0051】
着色汚れ予防効果のために、PMSAは本組成物で有用である。PMSAは、その反応性又は直接性により、無機質表面に着色汚れ予防効果を提供し、望ましくない吸着外被タンパク質、具体的には、歯を着色する色素体(color body)の結合、結石の発達、及び望ましくない微生物種の誘引と関連するものの一部を脱離させると考えられる。これらのPMSAの歯上への定着はまた、歯の表面上の色素体の結合部位を壊すため、着色汚れの発生を防止することもできる。
【0052】
PMSAの、スズイオン及びカチオン性抗微生物剤のような口腔ケア製品の着色汚れ促進成分に結合する能力もまた、有用であると考えられる。PMSAはまた、表面熱力学特性及び表面フィルム特性に望ましい影響を与える歯表面調節効果も提供し、これは口内洗浄又はブラッシング中、及び最も重要なことに口内洗浄又はブラッシング後の両方に、改善された清浄な感触感覚を付与する。これらの高分子剤の多くもまた、口腔組成物に適用される際、歯石制御効果を提供する、したがって消費者に歯の外観及びそれらの触感の改善を提供することが既知であり又期待されている。
【0053】
望ましい表面効果としては、1)処理直後、親水性歯表面を形成すること、並びに、2)ブラッシング後又は口内洗浄後及びより長い期間を含む、製品の使用後の長期間にわたって、表面調節効果及び外被フィルムの制御を維持することが挙げられる。親水性の増大した表面を形成することによる効果は、水の接触角の相対的な減少の点で測定できる。親水性表面は、重要なことに、製品使用後の長期間にわたって、歯の表面に保持される。
【0054】
ポリマー無機質界面活性剤としては、歯表面に強い親和性を有し、ポリマー層又はコーティングを歯表面に沈着させ、所望の表面改質効果を生み出す任意の物質が挙げられる。かかるポリマーの好適な例は、縮合リン酸化ポリマーなどの高分子電解質;ポリホスホネート;ホスフェート若しくはホスホネート含有モノマー若しくはポリマーと、エチレン性不飽和モノマー及びアミノ酸のような他のモノマーとのコポリマー、又はタンパク質、ポリペプチド、多糖、ポリ(アクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(エタクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリ(マレエート)、ポリ(アミド)、ポリ(エチレンアミン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアセテート)、及びポリ(ビニルベンジルクロライド)のような他のポリマーとのコポリマー;ポリカルボキシレート及びカルボキシ置換ポリマー;並びにこれらの混合物である。好適なポリマー無機質界面活性剤としては、米国特許番号第5,292,501号、同第5,213,789号、同第5,093,170号、同第5,009,882号、及び同第4,939,284号(全てデーゲンハート(Degenhardt)ら)に記載されるカルボキシ置換アルコールポリマー、並びに、米国特許第5,011,913号(ベネディクトら)のジホスホネート誘導体化されたポリマー;例えば米国特許第4,627,977号(ガファル(Gaffar)ら)に記載されるような、ポリアクリレート及び無水マレイン酸又はマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマーを含む合成アニオン性ポリマー(例えば、ガントレッツ(Gantrez))が挙げられる。好ましいポリマーは、ジホスホネート修飾ポリアクリル酸である。活性を有するポリマーは、薄膜タンパク質を脱着し且つエナメル質表面に結合したままにするのに十分な表面結合性を有しなければならない。歯の表面では、末端又は側鎖にホスフェート又はホスホネート官能基を有するポリマーが好ましいが、無機質結合活性を有する他のポリマーも吸着親和性に依存して有効であることを示す場合がある。
【0055】
ポリマー無機質界面活性剤を含有する好適なホスホネートの追加的な例としては、米国特許第4,877,603号(デーゲンハート(Degenhardt)ら)に抗結石剤として開示されたジェム状ジホスホネートポリマー;同第4,749,758号(ダーシュ(Dursch)ら)及び英国特許第1,290,724号(両特許ともヘキスト社(Hoechst)に譲渡)に開示されている、洗剤及び洗浄組成物に用いられるのに好適なコポリマー含有ホスホン酸基;並びに、米国特許第5,980,776号(ザキクハニ(Zakikhani)ら)及び同第6,071,434号(デイヴィス(Davis)ら)におけるスケール及び腐食抑制、コーティング、セメント、イオン交換樹脂を含む応用に有用であるとして開示されたコポリマー及びコテロマーが挙げられる。追加的なポリマーとしては、英国特許第1,290,724号に開示されているビニルホスホン酸、アクリル酸及びこれらの塩の水溶性コポリマーが挙げられ、これらのコポリマーは約10重量%〜約90重量%のビニルホスホン酸及び約90重量%〜約10重量%のアクリル酸を含有し、より具体的にはこれらのコポリマーは、70%のビニルホスホン酸対30%のアクリル酸;50%のビニルホスホン酸対50%のアクリル酸;又は30%のビニルホスホン酸対70%のアクリル酸、のビニルホスホン酸対アクリル酸の重量比を有する。他の好適なポリマーとしては、1個以上の不飽和C=C結合を有するジホスホネート又はポリホスホネートモノマー(例えば、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸及び2−(ヒドロキシホスフィノ)エチリデン−1,1−ジホスホン酸)と、不飽和C=C結合を有する少なくとも1種のさらなる化合物(例えば、アクリレート及びメタクリレートモノマー)と、を共重合することにより調製される、ザキクハニ及びデイヴィスにより開示された水溶性ポリマーが挙げられ、これらは以下の構造を有するものなどである。
【0056】
1.以下の構造を有する、アクリル酸と2−(ヒドロキシホスフィニル)エチリデン−1,1−ジホスホン酸とのコテロマー:
【化1】

【0057】
2.以下の構造を有する、アクリル酸とビニルジホスホン酸とのコポリマー:
【化2】

【0058】
好適なポリマーとしては、ロディア(Rhodia)から表記ITC1087(平均分子量3,000〜60,000)及びポリマー1154(平均分子量6,000〜55,000)として供給されているジホスホネート/アクリレートポリマーが挙げられる。
【0059】
好ましいPMSAは、イオン性フッ化物及び金属イオンのような口腔ケア組成物の他の成分に対して安定である。高含水製剤において加水分解が制限され、したがって単純な単一相歯磨剤又は口内洗浄剤製剤を可能にするポリマーもまた好ましい。PMSAがこれらの安定特性を有しない場合、1つの選択肢は、フッ化物又は他の不混和性成分から分離されたポリマー無機質界面活性剤を含む二相製剤である。別の選択肢は、非水性、実質的に非水性又は限定的な水分の組成物を配合し、PMSAと他の成分との間の反応を最低限に抑えることである。
【0060】
好ましいPMSAは、ポリホスフェートである。ポリホスフェートは一般に、主に直鎖構造に配置された2つ以上のホスフェート分子からなると理解されているが、幾つかの環状誘導体が存在する場合がある。ピロホスフェート(n=2)は理論的にはポリホスフェートであるが、所望のポリホスフェートは、有効濃度での表面吸着により十分な非結合のホスフェート官能基を生成し、これがアニオン性表面電荷及び表面の親水性特徴を強化するように、およそ3以上のホスフェート基を有するものである。所望の無機ポリホスフェート塩としては、特に、トリポリホスフェート、テトラポリホスフェート、及びヘキサメタホスフェートが挙げられる。テトラポリホスフェートよりも大きいポリホスフェートは、通常は無定形のガラス状物質として生じる。以下の式を有する直鎖ポリホスフェートが、本発明で好ましい。
【0061】
XO(XPO
式中、Xはナトリウム、カリウム、又はアンモニウムであり、nの平均は約3〜約125である。好ましいポリホスフェートは、ソーダフォス(Sodaphos)(n≒6)、ヘキサフォス(n≒13)、及びグラスH(Glass H)(n≒21)として商業的に既知であり、FMCコーポレーション(FMC Corporation)及びアスタリス(Astaris)により製造されるような、平均約6〜約21のnを有するものである。これらのポリホスフェートは単独で又は組み合わせて用いてよい。ポリホスフェートは、酸性pH、具体的にはpH5未満で、高含水製剤中の加水分解の影響を受けやすい。したがって、長鎖ポリホスフェート、具体的には、平均鎖長約21のグラスHを使用することが好ましい。かかる長鎖ポリホスフェートは、加水分解を受けている際、依然として歯上に沈着し、着色汚れ予防効果を提供するのに有効な短鎖ポリホスフェートを生成すると考えられている。
【0062】
他のポリリン酸化化合物を、ポリホスフェート、具体的には、フィチン酸、ミオ−イノシトールペンタキス(二水素リン酸);ミオ−イノシトールテトラキス(二水素リン酸)、ミオ−イノシトールトリキス(二水素リン酸)、及びこれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム塩のような、ポリリン酸化イノシトール化合物に加えて又はその代わりに用いてよい。本明細書では、ミオ−イノシトール1,2,3,4,5,6−ヘキサキス(二水素リン酸)としても既知であるフィチン酸又はイノシトール六リン酸、及びそのアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム塩が好ましい。本明細書では、用語「フィチン酸塩」とは、フィチン酸及びその塩、並びにその他のポリリン酸化イノシトール化合物を含む。
【0063】
歯直接剤の量は、典型的には、総口腔用組成物の約0.1重量%〜約35重量%である。歯磨剤製剤では、この量は好ましくは約2%〜約30%、より好ましくは約5%〜約25%、最も好ましくは約6%〜約20%である。口内洗浄剤組成物では、歯直接剤の量は好ましくは約0.1%〜5%、より好ましくは約0.5%〜約3%である。
【0064】
表面改質効果の作製に加えて、歯直接剤はまた不溶性塩を可溶化する機能も有する場合がある。例えば、グラスHポリホスフェートは不溶性スズ塩を可溶化することが分かっている。したがって、スズ塩を含有する組成物で、例えばグラスHはスズの着色汚れ促進効果を低下させるのに寄与する。
【0065】
フッ化物源
組成物中にフッ化物イオン濃度をもたらすのに十分な量で、水溶性フッ化物化合物を歯磨剤及び他の口腔用組成物中に存在させることは一般的であり、及び/又はそれが約0.0025重量%〜約5.0重量%、好ましくは0.005重量%〜約2.0重量%で用いられた場合に、抗カリエス効果を提供する。広範なフッ化物イオン生成物質を、本組成物中の可溶性フッ化物の供給源として使用することができる。好適なフッ化物イオン生成物質の例が、米国特許番号第3,535,421号(ブライナー(Briner)ら、1970年10月20日発行)及び同第3,678,154号(ウィダー(Widder)ら、1972年7月18日発行)に見られる。代表的なフッ化物イオン源としては、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化インジウム及び他の多くのものが挙げられる。フッ化第一スズ及びフッ化ナトリウムは、これらの混合物と同様に好ましい。
【0066】
研磨剤
本発明の組成物において有用な歯科用研磨剤には、多くの様々な物質が含まれる。選択される物質は、関心組成物中で混和性があり、象牙質を過度に削らないものでなければならない。好適な研磨剤としては、例えば、ゲル及び沈殿物を含むシリカ、不溶性ポリメタリン酸ナトリウム、水和アルミナ、炭酸カルシウム、オルトリン酸二カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ポリメタリン酸カルシウム、及び尿素とホルムアルデヒドとの粒子状縮合生成物のような樹脂性研磨剤物質が挙げられる。
【0067】
本組成物に用いられる別の部類の研磨剤は、米国特許番号第3,070,510号(クーリー(Cooley)及びグレーベンシュテッター(Grabenstetter)、1962年12月25日発行)に記載されている粒子状熱硬化性重合樹脂である。好適な樹脂としては、例えば、メラミン、フェノール樹脂、尿素、メラミン−尿素、メラミン−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド、メラミン−尿素−ホルムアルデヒド、架橋エポキシド、及び架橋ポリエステルが挙げられる。
【0068】
様々な種類のシリカ歯科用研磨剤は、歯のエナメル質又は象牙質を過度に削らない、優れた歯の清浄及び研磨性能という独特の効果があるため好ましい。他の研磨剤と同様に、本明細書のシリカ砥粒研磨物質は、一般に、約0.1ミクロン〜約30ミクロン、好ましくは約5ミクロン〜約15ミクロンの間の範囲の平均粒径を有する。研磨剤は、沈殿シリカ、又はシリカキセロゲルなどのシリカゲルであることができ、米国特許第3,538,230号(ペイダー(Pader)ら、1970年3月2日発行)及び米国特許第3,862,307号(ディギュリオ(DiGiulio)、1975年1月21日発行)に記載されている。例えば、商標名「シロイド(Syloid)」としてW.R.グレース・アンド・カンパニー、デイビソン・ケミカル・ディビジョン(W.R. Grace & Company Davison Chemical Division)から市販されているシリカキセロゲル、及びJ.M.フーバーコーポレーション(J. M. Huber Corporation)から商標名ゼオデント(Zeodent)(登録商標)で市販されるもの、特に、ゼオデント(Zeodent)(登録商標)119、ゼオデント(Zeodent)(登録商標)118、ゼオデント(Zeodent)(登録商標)109、及びゼオデント(Zeodent)(登録商標)129という名称の沈殿シリカ物質が挙げられる。本発明の練り歯磨きに有用なシリカの歯の研磨剤の種類については、ウェイソン(Wason)の米国特許第4,340,583号(1982年7月29日発行);及び本発明の譲受人にともに譲渡された米国特許第5,603,920号(1997年2月18日発行);同第5,589,160号(1996年12月31日発行);同第5,658,553号(1997年8月19日発行);同第5,651,958号(1997年7月29日発行)、及び同第6,740,311号(2004年5月25日発行)により詳細に記載されている。
【0069】
研磨剤の混合物は、上に列挙された様々な等級のゼオデント(Zeodent)(登録商標)シリカ研磨剤の混合物のように、用いることができる。本発明の歯磨組成物中の研磨剤の合計量は、典型的には約6重量%〜約70重量%であり、練り歯磨きは、好ましくは組成物の約10重量%〜約50重量%の研磨剤を含有する。本発明の歯科用溶液、口腔スプレー、うがい薬、及び非研磨剤ゲル組成物は、典型的には、少量の研磨剤しか含有しないか又は研磨剤を全く含有しない。
【0070】
抗結石剤
本組成物は所望により、ピロリン酸イオン源としてのピロホスフェート塩のような、追加の抗結石剤を含んでよい。本組成物に有用なピロリン酸塩としては、ピロリン酸二アルカリ金属塩、ピロリン酸四アルカリ金属塩、及びこれらの混合物が挙げられる。無水和物並びに水和物の形の、二水素ピロリン酸二ナトリウム(Na)、ピロリン酸四ナトリウム(Na)、及びピロリン酸四カリウム(K)が好ましい種である。本発明の組成物では、ピロリン酸塩は、主に溶解した形態、主に溶解していない形態、又は溶解した形態と溶解していない形態のピロリン酸塩の混合物のうちの1つの形態で存在し得る。
【0071】
主に溶解したピロホスフェートを含む組成物とは、少なくとも1つのピロホスフェートイオン供給源が、少なくとも約1.0%の遊離ピロホスフェートイオンを提供するのに十分な量である組成物を指す。遊離ピロホスフェートイオンの量は、約1%〜約15%、1つの実施形態においては約1.5%〜約10%、及び別の実施形態では約2%〜約6%であってよい。遊離ピロリン酸イオンは、組成物のpHに依存して多様なプロトン化状態で存在し得る。
【0072】
主に溶解していないピロホスフェート塩を含む組成物とは、組成物中に溶解している約20%以下の合計ピロホスフェート塩、好ましくは組成物中に溶解している約10%未満の合計ピロホスフェートを含有する組成物を指す。ピロリン酸四ナトリウム塩は、これらの組成物中の好ましいピロリン酸塩である。ピロリン酸四ナトリウムは、無水塩型若しくは十水和物型、又は歯磨剤組成物中において固形で安定な他の任意の種であってよい。塩はその固体粒子状形態であり、その結晶性及び/又は非晶性状態であってよく、塩の粒径は、好ましくは、感覚的に許容可能であり、且つ使用中容易に溶解するのに十分に小さい。これらの組成物の製造に有用なピロホスフェート塩の量は、歯石抑制に有効な任意の量であり、一般に、歯磨剤組成物の約1.5重量%〜約15重量%、好ましくは約2重量%〜約10重量%、最も好ましくは約3重量%〜約8重量%である。
【0073】
組成物はまた、溶解したピロリン酸塩と溶解していないピロリン酸塩との混合物を含んでもよい。前述のピロリン酸塩のいずれを用いてもよい。
【0074】
ピロリン酸塩は、「カーク−オスマー(Kirk-Othmer)工業化学百科事典(Encyclopedia of Chemical Technology)」(第3版、第17巻、ワイリー−インターサイエンス・パブリッシャーズ(Wiley-Interscience Publishers)(1982年))に、より詳細に記載されている。
【0075】
ピロリン酸塩の代わりに又はピロリン酸塩と組み合わせて用いられる任意の剤としては、合成アニオン性ポリマーとして既知の物質などが挙げられ、それには例えば米国特許第4,627,977号(ガファルら)に記載されている、ポリアクリレート及び無水マレイン酸又はマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー(例えば、ガントレッツ)、並びに、例えばポリアミノプロパンスルホン酸(AMPS)、ジホスホネート(例えば、EHDP;AHP)、ポリペプチド(ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸など)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0076】
キレート剤
別の任意の物質は、グルコン酸、酒石酸、クエン酸、及びこれらの薬剤的に許容可能な塩のような、隔離剤とも呼ばれるキレート剤である。キレート剤は、細菌の細胞壁に見出されるカルシウムを錯化することができる。キレート剤はまた、このバイオマスが損なわれないように保持するのに役立つカルシウムの架橋からカルシウムを取り除くことにより歯垢を崩壊させることができる。しかしながら、カルシウムに対する親和性が高すぎるキレート剤を用いることは、結果として歯の脱ミネラル化(demineralization)をもたらす可能性があり、これは本発明の目的及び意図に反するために、望ましくない。好適なキレート剤は、通常はカルシウム結合定数が約10〜10であり、洗浄を改善し、歯垢及び結石の形成を減少させる。キレート剤はまた、金属イオンと錯体を形成する能力を有し、したがって、製品の安定性又は外観に対する悪影響を予防するのに役立つ。鉄又は銅のようなイオンのキレート化は、最終製品の酸化による変質の抑制に役立つ。
【0077】
好適なキレート剤の例は、グルコン酸ナトリウム又はグルコン酸カリウム及びクエン酸ナトリウム又はクエン酸カリウム;クエン酸/クエン酸アルカリ金属塩混合物;酒石酸二ナトリウム;酒石酸二カリウム;酒石酸ナトリウムカリウム;酒石酸水素ナトリウム;酒石酸水素カリウム;ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、又はポリリン酸アンモニウム、及びこれらの混合物である。本発明に用いられるのに好適なキレート剤の量は、約0.1%〜約2.5%、好ましくは約0.5%〜約2.5%、より好ましくは約1.0%〜約2.5%である。
【0078】
本発明に用いられるのに好適な、さらに他のキレート剤は、アニオン性高分子ポリカルボキシレートである。かかる物質は当該技術分野において周知であり、その遊離酸又は部分的に若しくは好ましくは完全に中和された水溶性アルカリ金属塩(例えばカリウム、好ましくはナトリウム)若しくはアンモニウム塩の形態で使用される。例としては、無水マレイン酸又はマレイン酸と、別の重合可能なエチレン性不飽和モノマー、好ましくは約30,000〜約1,000,000の分子量(M.W.)を有するメチルビニルエーテル(メトキシエチレン)との1:4〜4:1のコポリマーである。これらのコポリマーは、例えば、GAFケミカルズ・コーポレーション(GAF Chemicals Corporation)のガントレッツAN139(分子量500,000)、AN119(分子量250,000)、及びS−97医薬品等級(分子量70,000)として入手可能である。
【0079】
他の有効な高分子ポリカルボキシレートとしては、無水マレイン酸とエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、又はエチレンとの1:1コポリマーであって、後者は、例えばモンサント(Monsanto)EMA NO.1103、分子量10,000及びEMA等級61として入手可能であるもの、及びアクリル酸とメチル若しくはヒドロキシエチルメタクリレート、メチル若しくはエチルアクリレート、イソブチルビニルエーテル又はN−ビニル−2−ピロリドンとの1:1コポリマーが挙げられる。
【0080】
追加的な有効な高分子ポリカルボキシレートは、米国特許第4,138,477号(ガファル(Gaffar)、1979年2月6日)、及び同第4,183,914号(ガファルら、1980年1月15日)に開示されているが、無水マレイン酸とスチレン、イソブチレン又はエチルビニルエーテルとのコポリマー;ポリアクリル酸、ポリイタコン酸及びポリマレイン酸;並びにユニロイヤル(Uniroyal)ND−2として入手可能な、分子量が1,000ほどに低いスルホアクリルオリゴマー(sulfoacrylic oligomer)が挙げられる。
【0081】
他の活性剤
本発明は所望により、抗微生物剤のような他の剤を含んでよい。かかる剤に含まれるのは、ハロゲン化ジフェニルエーテル、フェノール及びその同族体を含むフェノール化合物、モノアルキル及びポリアルキル並びに芳香族ハロフェノール、レゾルシノール及びその誘導体、ビスフェノール化合物及びハロゲン化サリチルアニリド、安息香酸エステル及びハロゲン化カルバニリドのような非水溶性非カチオン性抗微生物剤である。水溶性抗微生物剤としては、四級アンモニウム塩及びビス−ビクアニド塩、並びにトリクロサンモノホスフェートが挙げられる。四級アンモニウム剤としては、四級窒素上の置換基のうちの1つ又は2つが炭素原子約8〜約20個、典型的には約10〜約18個の炭素鎖長(典型的にはアルキル基)を有する一方、残りの置換基(典型的にはアルキル基又はベンジル基)は、炭素原子約1〜約7個などの、より少ない炭素原子数、典型的にはメチル基又はエチル基を有するものが挙げられる。臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルピリジニウム、臭化ドミフェン、塩化N−テトラデシル−4−エチルピリジニウム、臭化ドデシルジメチル(2−フェノキシエチル)アンモニウム、塩化ベンジルジメチルステアリルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、四級化5−アミノ−1,3−ビス(2−エチル−ヘキシル)−5−メチルヘキサヒドロピリミジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム及び塩化メチルベンゼトニウムは、典型的な四級アンモニウム抗細菌剤の代表例である。その他の化合物は、米国特許第4,206,215号(ベイリー(Bailey)、1980年6月3日発行)に開示されているようなビス[4−(R−アミノ)−1−ピリジニウム]アルカンである。銅塩、亜鉛塩、及びスズ塩のような他の抗微生物剤もまた含んでよい。エンドグリコシダーゼ、パパイン、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、及びこれらの混合物を含む酵素もまた有用である。こうした剤は、米国特許第2,946,725号(ノリス(Norris)ら、1960年7月26日)、及び同第4,051,234号(ギースキー(Gieske)ら、1977年9月27日)に開示されている。好ましい抗微生物剤としては、亜鉛塩、スズ塩、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、トリクロサン、トリクロサン一リン酸、及びチモールのような香味油が挙げられる。トリクロサン及びこの種類の他の剤は、米国特許第5,015,466号(パラン,Jr.(Parran, Jr.)ら、1991年5月14日発行)、及び同第4,894,220号(ナビ(Nabi)ら、1990年1月16日)に開示されている。これらの物質は抗歯垢の効果を提供し、本組成物の約0.01重量%〜約5.0重量%の濃度で典型的には存在する。
【0082】
本組成物に添加してよい別の任意の活性剤は、硝酸塩、塩化物、フッ化物、リン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩及び硫酸塩を含む、カリウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、及びスズ塩のような過敏性を制御する象牙質減感剤である。
【0083】
過酸化物源
本組成物は、口腔に対する多くの利益ゆえに過酸化物源を含有してよい。過酸化水素及び他の過酸素含有剤は、虫歯、歯垢、歯肉炎、歯周炎、口臭、歯の着色汚れ、再発性アフター性潰瘍、義歯の炎症、歯列矯正装置の損傷、抜歯後及び歯根膜手術後、外傷性口腔病変、並びに粘膜感染症、ヘルペス口内炎などに対する治療及び/又は予防的処理に有効であると長い間認められてきた。口腔内で過酸化物含有剤は、組織と唾液酵素との相互作用により生成される、何千もの小さな酸素の気泡を発生させる化学機械的作用を及ぼす。口内洗浄剤を口の中でガラガラする動作により、この特有の化学機械的作用が増強される。かかる動作は、感染した歯肉溝に他の剤を送達するために推奨されている。過酸化物口内洗浄剤は、歯周病に関連していることが既知である嫌気性細菌の定着及び増殖を防ぐ。
【0084】
過酸化物源としては、過酸化物化合物、過ホウ酸塩、過炭酸塩、ペルオキシ酸、過硫酸塩、及びこれらの混合物が挙げられる。好適な過酸化物化合物としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウム、過酸化ナトリウム、過酸化亜鉛及びこれらの混合物が挙げられる。好ましい過炭酸塩は、過炭酸ナトリウムである。好ましい過硫酸塩はオキソンである。歯磨剤製剤に用いられる好ましい過酸化物源としては、過酸化カルシウム及び過酸化尿素が挙げられる。過酸化水素及び過酸化尿素は、口内洗浄剤製剤に用いられるのに好ましい。以下の量は過酸化物原料物質の量を示すが、過酸化物源は過酸化物原料物質以外の成分を含有してよい。本組成物は、組成物の約0.01重量%〜約30重量%、好ましくは約0.1重量%〜約10重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約5重量%の過酸化物源を含有してよい。
【0085】
界面活性剤
本組成物はまた、一般的に起泡剤とも呼ばれる界面活性剤を含んでもよい。好適な界面活性剤は、広いpH範囲にわたって適度に安定且つ発泡性であるものである。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、両性、双性イオン性、カチオン性、又はこれらの混合物であってよい。
【0086】
本明細書で有用なアニオン性界面活性剤としては、アルキルラジカルに8個〜20個の炭素原子を有するアルキルサルフェートの水溶性塩(例えば、アルキル硫酸ナトリウム)、及び8個〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のスルホン化モノグリセリドの水溶性塩が挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)及びココナツモノグリセリドスルホン酸ナトリウムは、この種類のアニオン性界面活性剤の例である。他の好適なアニオン性界面活性剤は、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、タウレート、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなサルコシネートである。アニオン性界面活性剤の混合物を使用することもできる。多数の好適なアニオン性界面活性剤が、米国特許第3,959,458号(アグリコーラ(Agricola)ら、1976年5月25日発行)に開示されている。本組成物は、通常、約0.025%〜約9%、ある実施形態では約0.05%〜約5%、他の実施形態では約0.1%〜約1%の濃度でアニオン性界面活性剤を含む。
【0087】
別の好適な界面活性剤は、サルコシネート界面活性剤、イセチオネート界面活性剤及びタウレート界面活性剤からなる群から選択されるものである。本明細書で用いるのに好ましいのは、サルコシン酸ラウロイル、サルコシン酸ミリストイル、サルコシン酸パルミトイル、サルコシン酸ステアロイル、及びサルコシン酸オレオイルの、ナトリウム塩及びカリウム塩のような、これらの界面活性剤のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩である。サルコシン酸界面活性剤は、本発明の組成物中に、総組成物の約0.1重量%〜約2.5重量%、好ましくは約0.5重量%〜約2.0重量%で存在してよい。
【0088】
本発明に有用なカチオン性界面活性剤としては、約8個〜18個の炭素原子を含有する1つのアルキル長鎖を有する脂肪族四級アンモニウム化合物の誘導体、例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ジ−イソブチルフェノキシエチル−ジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ココナツアルキルトリメチルアンモニウムナイトライト、セチルピリジニウムフルオリドなどが挙げられる。好ましい化合物は四級アンモニウムフッ化物であり、米国特許第3,535,421号(ブライナー(Briner)ら、1970年10月20日)に記載されているが、ここで該四級アンモニウムフッ化物は、洗剤の特性を有する。特定のカチオン性界面活性剤はまた、本明細書に開示された組成物中で殺菌剤として作用することもできる。クロルヘキシジンのようなカチオン性界面活性剤は、本発明に用いられるのに好適であるが、口腔の硬組織を着色する可能性があるために好ましくない。当業者はこの可能性について承知しており、この制限を念頭においてカチオン性界面活性剤を組み込むべきである。
【0089】
本発明の組成物に用いることができる非イオン性界面活性剤としては、アルキレンオキシド基(本質的に親水性)と、本質的に脂肪族又はアルキル芳香族であってよい有機疎水性化合物との縮合によって生成される化合物が挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤の例としては、プルロニック、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、エチレンオキシドとプロピレンオキシド及びエチレンジアミンの反応生成物との縮合から得られる生成物、脂肪族アルコールのエチレンオキシド縮合物、長鎖三級アミンオキシド、長鎖三級ホスフィンオキシド、長鎖ジアルキルスルホキシド、及びかかる物質の混合物が挙げられる。
【0090】
本発明で有用な双性イオン性合成界面活性剤としては、脂肪族四級アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウム化合物の誘導体が挙げられ、その脂肪族ラジカルは直鎖又は分枝鎖であることができ、その際脂肪族置換基の1つは約8個〜約18個の炭素原子を含有し、1つは例えばカルボキシ、スルホネート、硫酸塩、ホスフェート又はホスホネートなどのアニオン性水溶性基を含有する。
【0091】
好適なベタイン界面活性剤は、米国特許第5,180,577号(ポールフカ(Polefka)ら、1993年1月19日発行)に開示されている。典型的なアルキルジメチルベタインとしては、デシルベタイン又は2−(N−デシル−N,N−ジメチルアンモニオ)アセテート、ココベタイン又は2−(N−ココ(coc)−N,N−ジメチルアンモニオ)アセテート、ミリスチルベタイン、パルミチルベタイン、ラウリルベタイン、セチルベタイン、セチルベタイン、ステアリルベタインなどが挙げられる。アミドベタインは、ココアミドエチルベタイン、ココアミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタインなどにより例示される。最適なベタインとしては、ココアミドプロピルベタイン、及び好ましくはラウラミドプロピルベタインが挙げられる。
【0092】
増粘剤
練り歯磨き又はゲルの調製では、組成物に望ましい稠度を提供する、使用時に望ましい能動的な放出特性を提供する、貯蔵安定性を提供する、及び組成物の安定性を提供するなどのために、増粘剤を添加する。好適な増粘剤としては、カルボキシビニルポリマーの1種又は組み合わせ、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、天然及び合成粘土(例えば、ビーガム及びラポナイト)、並びに、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)及びカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウムのようなセルロースエーテルの水溶性塩が挙げられる。カラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム、及びトラガカントゴムのような天然ゴムを使用することができる。さらに質感を改善するために、コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウム又は超微粒子状シリカを増粘剤の一部として使用することができる。
【0093】
増粘剤又はゲル化剤として有用な、好適なカルボキシビニルポリマーとしては、ペンタエリスリトールのアルキルエーテル若しくはスクロースのアルキルエーテルで架橋されたアクリル酸のホモポリマーである、カルボマーが挙げられる。カルボマーは、B.F.グッドリッチ(B.F. Goodrich)からカーボポール(Carbopol)(登録商標)シリーズとして市販されており、カーボポール934、940、941、956、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0094】
全練り歯磨き又はゲル組成物の約0.1重量%〜約15重量%、好ましくは約2重量%〜約10重量%、より好ましくは約4重量%〜約8重量%の量で典型的に存在する増粘剤を使用することができる。チューインガム、薬用キャンディー及び口臭予防用ミント、香粉、非研磨ゲル及び歯肉縁下用ゲルには、より高濃度で使用してよい。
【0095】
保湿剤
本組成物の別の任意のキャリア材料は、保湿剤である。保湿剤は、練り歯磨き組成物が空気への曝露時に硬化するのを防ぎ、組成物に口への潤い感を付与し、特定の保湿剤では、練り歯磨き組成物に望ましい甘味を付与する役目を果たす。保湿剤は、純保湿剤を基準にすると、一般に本明細書の組成物の約0重量%〜約70重量%、好ましくは約5重量%〜約25重量%含まれる。本発明の組成物に用いられる好適な保湿剤としては、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びトリメチルグリシンのような食用多価アルコールが挙げられる。
【0096】
種々なキャリア材料
商業的に好適な口腔用組成物の調製に用いる水は、好ましくは、イオン含量が少なく、有機不純物を含まないでおくべきである。水は本明細書の水性組成物の約99重量%まで含まれてよい。この水の量は、添加される遊離水に加えて、ソルビトールのような他の物質とともに導入される水を含む。
【0097】
本発明はまた、アルカリ金属重炭酸塩を含んでもよく、研磨、脱臭、緩衝及びpH調節を含む多くの機能を提供し得る。アルカリ金属重炭酸塩は水に可溶性であり、安定化されていない限り、水性系で二酸化炭素を放出する傾向がある。重炭酸ナトリウムは重曹としても知られ、一般に使用されるアルカリ金属重炭酸塩である。本組成物は、約0.5%〜約30%、好ましくは約0.5%〜約15%、最も好ましくは約0.5%〜約5%のアルカリ金属重炭酸塩を含有してよい。
【0098】
本組成物のpHを、緩衝剤を用いることにより調整してよい。緩衝剤とは、本明細書で使用する時、過酸化物の安定性のために、口内洗浄剤及び歯科用溶液のような水性組成物のpHを、好ましくは約pH4.0〜約pH6.0の範囲に調整するために用いることができる剤を指す。緩衝剤としては、重炭酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、クエン酸、及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。緩衝剤は典型的に、本組成物の約0.5重量%〜約10重量%の濃度で含まれる。
【0099】
ポロキサマーを本組成物に使用してよい。ポロキサマーは、非イオン性界面活性剤に分類され、乳化剤、結合剤、安定剤、及び他の関連する機能性剤としても機能し得る。ポロキサマーは、分子量が1,000〜15,000超の範囲である、一級ヒドロキシル基で終端をなす二官能性ブロックポリマーである。ポロキサマーは、BASFによりプルロニクス(Pluronics)及びプルラフロ(Pluraflo)の商標名で販売されている。本発明に好適なポロキサマーは、ポロキサマー407及びプルラフロL4370である。
【0100】
本組成物に使用してよい他の乳化剤としては、B.F.グッドリッチから入手可能なペミュレン(Pemulen)(登録商標)シリーズのような高分子乳化剤が挙げられ、これは、主に、疎水性物質用の乳化剤として有用な高分子量のポリアクリル酸ポリマーである。
【0101】
二酸化チタンをまた本組成物に添加してもよい。二酸化チタンは、組成物に不透明感を加える白色粉末である。二酸化チタンは、一般的に、歯磨剤組成物の約0.25重量%〜約5重量%を成す。
【0102】
本組成物中に用いられてよい他の任意の物質としては、アルキル及びアルコキシ−ジメチコンコポリオールから選択されるジメチコンコポリオール、例えばC12〜C20アルキルジメチコンコポリオール及びこれらの混合物が挙げられる。きわめて好ましいのは、アビル(Abil)EM90の商標名で市販されているセチルジメチコンコポリオールである。ジメチコンコポリオールは一般に、約0.01重量%〜約25重量%、好ましくは約0.1重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約1.5重量%の濃度で存在する。ジメチコンコポリオールは、歯の良い感触効果を提供するのに役立つ。
【0103】
香味油の悪臭形成構成成分の除去
本発明のさらなる態様は、香味油中、及び本明細書において「選択」香味油として示されるものを調製するための抽出物中にある、望ましくない硫黄含有種の濃度を除去するか又は有意に削減するための精製又は洗浄処理である。
【0104】
水性洗浄方法
好ましい洗浄処理は水性洗浄方法であり、これは単純で低コストであり、大きな規模でも容易に実行可能である。水性媒質は、全て水であっても、溶媒を約20%以下含む水−溶媒混合液であってよい。望ましくない構成成分を除去するための方法は一般的に、こうした構成成分の香味油から水相への抽出を含む。DMSO及びジメチルスルホンはきわめて極性に富み、水中及びアルコールなどの他の溶媒中では無制限に可溶性である。これらの化合物は淡水又は水−アルコール混合液を用いて油から容易に抽出することができる。アルコールなどの共溶媒の使用は、DMSなどのより極性の低い種の除去を促進する可能性がある。共溶媒は、エタノール、イソプロパノール、グリセリン及びプロピレングリコールなどの任意の食品等級の水混和性溶媒であってよく、これらは油から所望の構成成分を有意に抽出することなくDMSなどの望ましくない種を抽出する。水性媒質のpHは一般的に約3〜約12の範囲であることができ、好ましくは約7すなわち中性である。pHにおける正確な選好は、加工されている香味油のpH安定性に依存する。水性媒質は所望により塩を含有してもよく、これらは水相から香味構成成分のほとんどを「塩析」して香味油自体の中にとどめておくのに役立つ可能性がある。香味油試料は水性媒質と、水:油の体積比が約90:10〜約10:90、好ましくは約70:30〜約30:70の範囲で、混合される。一般的には、水が多いほど、DMSOの除去速度も増すが、過剰な水は乳化を引き起こして水相からの油相の最終分離を難しくする可能性がある。通常の水が使用されてよいが、USP等級の水が好ましい。加工は典型的には室温条件で行われる。ただし、温度条件の選択は香味油の温度安定性による。
【0105】
水相及び油相は、水と油をよく接触させるために攪拌又は激しい混合条件に供されて不透明な混合を形成する。油相と水相の混合は30分から3時間まで、又はそれ以上にわたって続けられる。混合条件及びバッチサイズによるが、十分な洗浄又は抽出を約30分で達成することができ、すなわち、油中にとどまる硫黄化合物濃度は目標の濃度まで減らされている。混合が終了された後、両相は分離され、油相は続いて水相から分離される。次に、分離された油相は、毎回新しい水を用いる追加の水洗浄に供されて、及び/又は、親水性/疎水性吸着剤材料による濾過に供されて、油中に残留するあらゆる濁りを除去されてよい。洗浄された油はまた遠心分離又は冷却に供されて、洗浄された油に残った水の分離を達成されてもよい。油相中のDMSO及び他の硫黄含有化合物の濃度は特定のインターバル毎に定量化されて、追加の攪拌/混合又は洗浄工程が必要かどうかを決定される。
【0106】
香味油と水の改善された混合及び接触は、高せん断ミキサーを使用することで達成することができ、より短い時間でDMSOの除去を達成することができる。使用することができるミキサーとしては、バッチ混合又はオンライン混合用のロスミキサー(Ross Mixer)などの高せん断ミキサーが挙げられる。好適なバッチミキサーの例としては、垂直シャフト及び高せん断ディスクタイプブレードから構成されるハイスピードディスパーサー(High speed Disperser)(典型的には、3.8L(1ガロン)〜3,785L(1,000ガロン)バッチに使用される)が挙げられる。ブレードは約10,000RPMまで回転し、静止混合容器内で流れパターンを形成する。ブレードは、容器の内容物をブレードに対して鋭角に引きずり込む渦を形成する。次に、ブレードは油相を機械的に破断して水槽に分散させる。別のバッチミキサーモデルは、静止ステーター(stator)内で高速で回転する一段ローターから構成される高せん断ローターステーターミキサーデザイン(High Shear Rotor-Stator mixer design)である。回転しているブレードがステーターを通過する時、このブレードは機械的に油水相をせん断する。小さな実験室規模のミキサーは、500〜10,000RPMの混合速度を有する(0.3〜15L液体容量)。より大きな商業規模のミキサーは、15L〜22,710L液体容量で、3,600〜1,200RPMの速度(64mm〜330mmのローター直径)を有する。超高せん断オンラインミキサー(Ultra High Shear Online mixer)の1つの例は、静止ステーター内で毎分4572メートル(毎分15,000フィート)の速度で回転する4段以上のローターを有するロスモデル(Ross model)である。回転しているブレードがステーターを通過する時、このブレードは機械的に内容物をせん断する。
【0107】
1つの例において、250mLのペパーミント油が2Lガラスビーカーに採取された。これに150mLのUSP水が加えられ、油と水が不透明な混合を形成するまで電磁攪拌器で激しく攪拌された。攪拌は室温で続けられた。約0.5時間、1時間及び2時間のインターバルで、攪拌は停止されて両層は分離された。数分間以内に両層は分離し、油の1mL試料が分析のために採取された。2時間の混合後、両層は分離され、上部の油相はデカントされてガラスビン内に24〜48時間にわたって放置され、油中に残存する少量の濁りをさらに浄化する。次に、油は、油を浄化するための0.45μm親水性PVDFフィルター(ミリポール社(Millipore)製)により濾過され、使用されるまでガラス製広口瓶に貯蔵される。
【0108】
上記の処理がアンフォールディッド(unfolded)ペパーミント油原料(供給元I.P.カリソン)に適用され、油相中のDMSO濃度は以下のようになる。DMSOは、GC−MSDを使用して定量化された。結果が示すように、水洗浄の約半時間後、95%超のDMSOが油から除去されて、2時間後には1ppm未満しか残存しなかった。
【表2】

【0109】
DMSOに加えて、水性洗浄処理は低分子量アルコール及びアルデヒドなどの油中の他の水溶性化合物、並びに、硫化ジメチル(DMS)などの水溶性のより低い化合物を除去する。しかしながら、DMSの除去はDMSOに比較して、いくらか遅く進行する。水相がDMSO及び他の有機化合物を可溶化する時、水相は極性が低くなり、DMS並びに同様の極性及び溶解度特性を有する他の化合物を除去するのにより良好な媒質を形成すると考えられる。
【0110】
別の例では、本発明の水洗浄方法に供された試料ミント油から除去された化合物が測定された。I.P.カリソンから供給された精留ペパーミント油試料は水洗浄に5時間にわたって供され、これに続き、新しい水を用いて追加的な7時間の洗浄工程に供された。各洗浄工程は、水と油の1:1混合液に対して穏やかに攪拌しながら行われた。この洗浄処理の前後両方でミント油はSPME GC−MSにより分析され、各構成成分のおおよその減少は、結果として出たクロマトグラムを比較することにより推計された。濃度が洗浄処理により減少された化合物の部分的なリストは、下の表2に与えられている。減少した化合物の百分率とLogP(オクタノールを水で除した分配係数)との間にはかなり高い相関が存在する。この相関は、各化合物の分子量を考慮する時、さらに高くなる。重要なことに、ペパーミント油中の比較的無極性である主要構成成分の濃度は、水洗浄処理によって有意に変化しない。これらの主要構成成分としては、メントール、メントン、α−及びβ−ピネン、リモネンなどが挙げられる。
【表3】

【0111】
洗浄されたペパーミント油又は選択ペパーミント油は従来型の精留油とにおい特性の点で比較された。洗浄されたペパーミント油及び洗浄されていない精留ペパーミント油は、0〜100の尺度(「0」は質の悪い油であり、「100」は優良な品質の油である)を用いて、訓練されたフレーバリストの集団によりにおい評価された。平均評価は、洗浄されていない油については33、洗浄された油については67であり、洗浄された油の方が洗浄されていない精留油よりも優れていることが示された。
【0112】
精留ペパーミント油又は洗浄されたペパーミント油のどちらかの62%を含有する、歯磨剤用に典型的なペパーミント優勢仕上げ香味油(peppermint predominant finished flavor oil)が同一の尺度を用いて、同じ専門家フレーバリスト集団によって評価された。洗浄されていない精留油に対する平均品質等級は58であり、また、洗浄された油に対しては75であって、洗浄された油の方がより優れた品質を有することが示された。
【0113】
0.454%のフッ化第一スズを含有する歯磨剤は、精留ペパーミント油又は洗浄されたペパーミント油のどちらかで調製及び香味付けされた。歯磨剤は40Cで3ヶ月の期間にわたって貯蔵された。この期間中、洗浄された油を有する歯磨剤がいかなる嫌なにおいも顕現しなかったのに対し、洗浄されていない精留油は嫌なにおいを顕現した。評価は、訓練されたフレーバリストにより、貯蔵期間中の悪臭の存在及び強度のための尺度0(嫌なにおいが存在しない)〜10(強烈な嫌なにおい)を用いて行われた。歯磨剤試料に与えられたスコアは下記の通りである。これらの評価は、スズなどの還元剤の存在における、水洗浄された油の安定性を示している。
【表4】

【0114】
これらの一連の実験は、水洗浄方法が、精留香味油だけでなく、精製又は精留処理を経ていない最上天然すなわち自然のままの香味油をも安定化させるのに使用できることを示している。有利なことに、水洗浄処理は、単純で、効率的で、経済的であり、香味油の熱による劣化(thermal abuse)を回避する。この方法は、より複雑な精留方法を必要としない商業等級香味油を調製するのに十分であり得る。
【0115】
濾過方法
DMSO及びその他の硫黄化合物を香味油から除去するのに使用されてよい別の方法は、硫黄化合物に対して選択的な材料を使用する濾過である。このような濾過材料としては、吸着剤及びモレキュラーシーブとして有用な市販の材料が挙げられる。例としては、エンゲルハード社(Engelhard Corporation)及びジョンソン・マッセイ社(Johnson Matthey Catalysts)により供給される以下の材料が挙げられる。
【0116】
a)セレックスソルブ(SELEXSORB)CDX−酸化アルミニウム水和物(60〜85%、質量/質量%)とアルミノケイ酸塩(15〜40%、質量/質量%)の組成物、密度−1.2kL(42.2立法フィート)、表面積431平方M/g、寸法7×14メッシュ。
【0117】
b)セレックスソルブCOS−酸化アルミニウム水和物(88〜99%、質量/質量%)とアルカリ金属酸化物(1〜5%、質量/質量%)の組成物、密度−1.4kL(49.8立法フィート)、表面積255平方M/g、寸法7×14メッシュ。
【0118】
c)触媒CP367−不活性支持体上のニッケル/酸化ニッケル。
【0119】
d)触媒CP366−塩基性炭酸銅と塩基性炭酸亜鉛と酸化アルミニウムとの混合物。
【0120】
1つの例において、I.P.カリソンから供給される精留ペパーミント油は上記の材料を吸着剤として用いて濾過に供された。吸着剤材料(60g)が、カラムの底にフィルターパッド(イソポール膜フィルター(Isopore membrane filter)、ミリポール社製、2umTTTPフィルター)を装着したステンレス鋼カラム(ミリポール製、直径3.5cm×長さ30cm)に充填された。150mLのペパーミント油がカラムベッドの頂上に注がれ、重力供給によりカラムを通過した油は底で収集された。最初の75mLの油は収集され(第1留分と表す)、続いて2番目の75mL(第2留分と表す)も収集された。濾過された油は上述した方法によりDMSOについて分析された。結果は以下に要約されている。
【表5】

【0121】
向流抽出(CCE)
向流抽出(CCE)の技術もまた香味油から所望のものではない構成成分を除去するのに使用されてもよい。この技術は脱テルペン化油を製造するのに香味産業で使用されてきている。元々特許承認された方法においては、精油は、極性溶媒と無極性溶媒を使用する二溶媒抽出法(double solvent extraction process)により脱テルペン化される。精油は混合チャンバを通過して2種の溶媒の向流とともに攪拌され、結果としてテルペンから極性溶媒への連続的な抽出が生じる。元々のCCE法の変型において、柑橘油は、反対方向にポンプで圧送されているヒドロアルコール性溶媒の流れに対してこの柑橘油をポンプで圧送することにより、分離される。テルペンは柑橘油からヒドロアルコール性溶媒によって抽出される。同様に、CCE技術は、水を抽出剤として用いて、DMSO及び他の硫黄化合物を抽出するのに使用されてよい。CCE技術は、マガ(Maga)及びトゥ(Tu)編「食品添加物の毒物学(Food Additive Toxicology)」(1995)中のR.L.スワイン(R. L. Swaine)「香味剤(Flavoring Agents)」で論じられている。
【0122】
蒸留
香味油はまた、望ましいものではない構成成分を除去するのに、標準的な蒸留及び/又は抽出技術を使用して分留されてもよい。これは、真空蒸留装置又は回転バンドカラム(spinning band column)の使用などの標準的な蒸留処理を通じても実行可能である。最終香味油は、どの構成成分が望ましいかを選択すること及び構成成分を組み合わせることにより、リエンジニアリング又は製造することができる。例えば、ミント油では、特にメンタ又はペパーミント油などのメンタ様供給源に由来するものだが、225を超える揮発性化合物がこれまでに特定されている。しかしながら、揮発性構成成分のプールの中でも非常に限られた数だけが製品の全体のにおいに実質的な貢献をなすこともまた分かっている。したがって、においをほとんど顕示しない又は全く顕示しない大半の揮発性化合物から最もにおい活性の大きい化合物を分離するのに効果的なスクリーニング方法が必要とされる。いかなる嫌味又は悪臭も有さない、十分で、よくバランスの取れたミント味を提供するために、天然ミント油に一般に見られる構成成分を可能な限り多く含むことが好ましい。より少ないミント油の選択分留又は精製が行われ、なお且つ、より多くの構成成分が除去されて添加しなおされないと、結果として生じるミント油香味組成物は所望のものではなくなる場合がある。したがって、最も感覚的に好ましいミント香味を提供するために、ミント油を選択的に分留することが望ましい。
【0123】
ペパーミント、スペアミント、及びコーンミントとして一般に知られるものを含むミント油は、望ましくない揮発性(低沸点)極性化合物を、特にDMSO並びに硫化物及び二硫化物などの他の硫黄含有化合物を、除去するために、蒸留によって分留されてよい。極性低沸点構成成分は、約120C未満、約140C未満、約160C未満、さらには180C未満の沸点を有してよい。蒸留方法はC3〜C9のアルデヒド及びアルコールなどの他の低分子量化合物も除去する可能性がある。
【0124】
分留されたミント油又は選択ミント油は、DMSO及び硫化ジメチルを含む低沸点極性化合物を本質的に含まない可能性がある。除去されるか又は有意に削減される他の構成成分としては、2−メチルプロパナール、2−メチルブタナール、及び3−メチルブタナールなどの分枝状アルカナール;2−メチルプロパノール、2−メチルブタノール、及び3−メチルブタノールなどの分枝状アルカノール;Z−3−ヘキセノールなどのアルケノール;E−2−ヘキセナールなどのアルケナール;3−メチルシクロヘキサノン、ベンズアルデヒド、1−オクテン−3−オル、3−オクタノン、及び2,3−デヒドロ−1,8−シネオールなどの他のアルデヒド、アルコール及びケトンが挙げられる。選択ミント油が含んでよい特定の構成成分は、α−ピネン、β−ピネン、サビネン、ミルセン(mycrene)、α−フェランドレン、α−テルピネン、リモネン、シス−オシメン(cis-ocimeme)、ユーカリプトール、トランス−オシメン、γ−テルピエン(terpiene)、3−オクタノール、テルピノレン(terpineolene)、サビネン水和物、リナロール、メントフラン、イソプレゴール、メントン、ネオメントール、テルピネン−4−オル、イソメントン、メントール、ネオイソメントール、イソメントール、α−テルピネオール、プレゴン、メンチルアセテート、カルボン、ネオイソメンチルアセテート、ピペリトン、β−ブルボネン(b-bourbonene)、β−カリオフィレン、チモール、トランス−β−ファルネセン、α−フムレン、ゲルマクレンB、エレモール、ビリジフロロール、ユーカリプトール、γ−テルピネン、1−オクタノール、イソ吉草酸n−アミル(n-amyl isovalerate)、1−メチル−4−(1−メチルエチル)−トランス−2−シクロヘキセン−1−オル、1−テルピネオール、α−テルピネオール、4,7−ジメチル−ベンゾフラン、シトロネロール、ネオメンチルアセテート、オイゲノール、イランゲン、α−コパエン、ロンギホレン、α−グルジュネン、カリオフィレン、(+)−エピ−ビシクロセスキフェランドレン((+)-epi-bicylosesquiphellendrene)、トランス−β−ファルネセン、β−カリオフィレン、アロアロマデンドレン、γ−ムウロレン(murrolene)、ゲルマクレンD、ビシクロゲルマクレン、8−カジネン(8-cadiene)、及びテルピノレンである。
【0125】
使用方法
本発明はまた、歯の洗浄並びに虫歯、微生物感染、歯垢、結石、着色汚れ及び口腔内の悪臭、及び歯牙侵食を含む望ましくない口腔内状態の予防方法にも関する。
【0126】
本明細書の使用方法は、被験体の歯のエナメル質表面及び口腔粘膜に、本発明による口腔用組成物を接触させることを含む。使用方法は、歯磨剤を用いるブラッシング、歯磨剤スラリー若しくは口内洗浄剤を用いる口内洗浄、又はガム製品の咀嚼によってよい。他の方法には、局所用口腔ゲル、口内スプレー、又は他の形態を被験体の歯及び口腔粘膜に接触させることが挙げられる。被験体は、その歯の表面が口腔用組成物に接触する、任意のヒト又は動物であってよい。「動物」とは、家庭用ペット若しくは他の家畜、又は捕獲されている動物を含むことを意味する。
【0127】
例えば処理方法としては、歯磨剤組成物の1種を用いてヒトがイヌの歯をブラッシングすることを挙げてよい。別の例としては、効果を確認するのに十分な時間、ネコの口を口腔用組成物で口内洗浄することが挙げられる。チュー(chew)及びおもちゃのようなペットケア製品は、本口腔用組成物を含有するように配合されてよい。組成物は、生皮、天然繊維又は合成繊維製のロープ、及びナイロン、ポリエステル又は熱可塑性ポリウレタン製の高分子物品のような、比較的柔軟であるが強くて丈夫な材料に組み込まれる。動物が製品を噛む、なめる又はかじる時に、組み込まれた活性要素が動物の口腔の唾液媒体中に放出され、これは効果的なブラッシング又は口内洗浄に匹敵する。
【実施例】
【0128】
以下の実施例は、本発明の範囲内にある実施形態をさらに説明及び実証する。これらの実施例は単に例示することが目的であり、これらの多くの変更が発明の精神及び範囲から逸脱することなく可能であるので、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0129】
本発明の選択ミント油の主要な構成成分は以下に示される。
【0130】
(実施例I)
【表6】

【0131】
本発明によって加工された選択ミント油を含有する香味組成物は以下に示される。選択ミント油は、DMSO及び他の悪臭前駆体硫黄化合物を本質的に含まない。本発明のミント油を含有する香味組成物は、感覚刺激試験において感覚的に喜ばしいものであるかを判断され、スズ及び茶ポリフェノールなどの還元剤を含有する口腔ケア組成物に嫌なにおいや味を顕示することなく組み込むことができる。
【0132】
(実施例II)
【表7】

【0133】
(実施例III)
【表8】

【0134】
スズイオン、香味組成物中の選択ミント油、及び口腔に受容可能なキャリアを含有する口腔用組成物は、成分分量を重量%で以下に示される。これらの組成物は従来の方法を用いて作製する。実施例IVは、二相歯磨剤組成物を示し、第1及び第2相を、ディスペンサーの物理的に分離された区画内に収容し、典型的には50:50の比で同時に分配してよい。実施例Vは、単層歯磨剤組成物を示す。
【0135】
(実施例IV)
【表9】

【0136】
(実施例V)
【表10】

ブリュッゲマンケミカル(Bruggemann Chemical):米国ペンシルバニア州ニュータウンスクエア(Newtown Square)により供給される、炭酸亜鉛AC
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳しく制限されるものとして理解されるべきではない。それよりむしろ、特に規定がない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示された寸法は、「約40mm」を意味することを意図される。
【0137】
「発明を実施するための最良の形態」で引用した全ての文献は、関連部分において本明細書に参照により組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを容認するものと解釈されるべきではない。この文書における用語のいずれかの意味又は定義が、参照により組み込まれる文献における用語のいずれかの意味又は定義と対立する範囲については、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義を適用するものとする。
【0138】
本発明の特定の諸実施形態を図示され、記載されてきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが当業者には自明である。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
悪臭及び嫌味の生成に関与する硫黄含有種を実質的に除去するための香味油又は香味抽出物を加工する方法であって、
(a)香味油相又は香味抽出物相と、好ましくは主として水を含む水相とを組み合わせる工程と、
(b)前記水相と前記油相とを、好ましくは少なくとも30分間にわたって、混合条件に供する工程と、
(c)前記相を分離させる工程と、
(d)洗浄された油相を収集する工程と、
を含み、
洗浄された油又は抽出物が、ジメチルスルホキシド、硫化ジメチル、二硫化ジメチル、及びジメチルスルホンを含む悪臭前駆体種を、油の体積当たり20重量ppm以下、好ましくは10重量ppm未満、より好ましくは1重量ppm未満でしか含まない、方法。
【請求項2】
前記洗浄された油に残存する水の分離を達成するために、親水性/疎水性吸着剤材料に通過させる濾過、遠心分離、又は冷却によって、前記洗浄された油を浄化する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記油と前記水相との混合が、30分〜6時間にわたって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記水相が、エタノール、イソプロパノール、グリセリン及びプロピレングリコールから選択される溶媒を20%以下でしか含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記相が、高せん断下で混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記香味油又は香味抽出物が、ペパーミント、コーンミント、又はスペアミントに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
悪臭及び嫌味の生成に関与する硫黄含有種を実質的に除去するための香味油又は香味抽出物を加工する方法であって、金属酸化物を含む吸着剤材料に香味油を通過させて濾過する工程を含み、該濾過された油が、ジメチルスルホキシド、硫化ジメチル、二硫化ジメチル、及びジメチルスルホンを含む悪臭前駆体種を、油の体積当たり20重量ppm以下、好ましくは10重量ppm未満、より好ましくは1重量ppm未満でしか含まず、好ましくは、香味油又は香味抽出物が、ペパーミント、コーンミント、又はスペアミントに由来する、方法。
【請求項8】
組成物又は製品における悪臭又は嫌味の生成に関与する前駆体である硫黄含有種を本質的に含まない1種以上の香味油又は香味抽出物を含む口腔ケア用製品に用いられる香味組成物であって、
前記香味油又は香味抽出物が、
(a)香味油相又は香味抽出物相を水相とを組み合わせる工程と、
(b)前記水相と前記油相とを、好ましくは少なくとも30分間にわたって、混合条件に供する工程と、
(c)前記相を分離させる工程と、
(d)洗浄された油相を収集する工程と、
を含む水洗浄方法に供され、該洗浄された香味油又は香味抽出物が、ジメチルスルホキシド、硫化ジメチル、二硫化ジメチル、及びジメチルスルホンを含む悪臭前駆体種を、油の体積当たり20重量ppm以下、好ましくは10重量ppm未満、より好ましくは1重量ppm未満でしか含まず、好ましくは、前記香味油又は香味抽出物が、ペパーミント、コーンミント、又はスペアミントに由来する、香味組成物。
【請求項9】
組成物又は製品中における悪臭又は嫌味の生成に関与する前駆体である硫黄含有種を本質的に含まない1種以上の香味油又は香味抽出物を含む口腔ケア用製品に用いられる香味組成物であって、前記香味油又は香味抽出物が、金属酸化物を含む吸着剤材料を通過して濾過され、該濾過された香味油又は香味抽出物が、ジメチルスルホキシド、硫化ジメチル、二硫化ジメチル、及びジメチルスルホンを含む悪臭前駆体種を、油の体積当たり20重量ppm以下、好ましくは10重量ppm未満、より好ましくは1重量ppm未満でしか含まず、前記香味油又は香味抽出物がペパーミント、コーンミント、又はスペアミントに由来する、香味組成物。

【公表番号】特表2009−541578(P2009−541578A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518392(P2009−518392)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/015603
【国際公開番号】WO2008/005550
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】