説明

硫黄変性クロロプレン重合体の製造方法

【課題】 トルエン不溶分の抑制及び従来の解膠同時重合法では達成できないスコーチタイムの調整を行なうことのできる硫黄変性クロロプレン重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】 クロロプレン、又はクロロプレン及びこれと共重合可能な単量体との混合物を、硫黄及びジチオカルバミン酸塩の存在下で乳化重合を行ない、クロロプレン重合体の製造と併行してこれの解膠を行なうことにより得られる重合体に対し、テトラアルキルチウラムジスルフィド及び下記一般式(1)で表されるジチオカルバミン酸塩を重合後に加えてさらに解膠を行なうことを特徴とする硫黄変性クロロプレン重合体の製造方法。
【化1】


(式中、R及びRは炭素数4以下のアルキル鎖を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄変性クロロプレン重合体の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、テトラアルキルチウラムジスルフィド及びジチオカルバミン酸塩を用いて、解膠を行うことを特徴とする硫黄変性クロロプレン重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硫黄変性クロロプレン重合体はクロロプレンを硫黄の存在下、乳化剤および開始剤を含有する水性乳濁液中で重合して得られることが知られている。
【0003】
一般にこの重合反応は60%以上の重合転化率で行われ、得られた重合体は加工性の劣るトルエン不溶の高粘度重合体(ゲル分)となるので、これをテトラエチルジスルフィドのような含硫黄化合物によって解膠し、重合体が加工しやすい粘度を有するまで重合体中のポリサルファイド結合を切断することが行われている。
【0004】
これに対し、解膠同時重合法ではジチオカルバミン酸塩の存在下で重合と解膠を併行して行なうことにより、解膠工程を除している(特許文献1及び特許文献2参照)。解膠された重合体ラテックスは常法により凍結凝固し重合体の分離が行われ、ついで乾燥し、硫黄変性クロロプレン重合体が製造される。
【0005】
しかしながら、この従来の解膠同時重合法では、トルエン不溶の高粘度重合体の抑制が可能となるが、得られる重合体のスコーチタイムが長期化する傾向が見られ、その調整を行なうことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−207415号公報
【特許文献2】特開平1−204907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、トルエン不溶分の抑制及び従来の解膠同時重合法では達成できないスコーチタイムの調整を行なうことのできる硫黄変性クロロプレン重合体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、クロロプレン、又はクロロプレン及びこれと共重合可能な単量体との混合物を、硫黄及びジチオカルバミン酸塩の存在下で乳化重合を行ない、クロロプレン重合体の製造と併行してこれの解膠を行なうことにより得られる重合体に対し、テトラアルキルチウラムジスルフィド及び所定のジチオカルバミン酸塩を重合後に加えてさらに追加解膠を行なうことを特徴とする硫黄変性クロロプレン重合体の製造方法である。
【0009】
以下本発明を更に詳細に説明する。
【0010】
本発明の硫黄変性クロロプレン重合体の製造方法は、クロロプレン、又はクロロプレン及びこれと共重合可能な単量体との混合物を、硫黄及びジチオカルバミン酸塩の存在下で乳化重合を行なうものである。
【0011】
乳化重合においては、原料としてクロロプレン単独、又はクロロプレン及びこれと共重合可能な単量体との混合物が用いられる。
【0012】
クロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられ、このうち単独でまたは2種類以上を併用して用いる。これらの単量体を含む量は特に限定するものではないが、クロロプレン重合体の性質を損なわない程度で、0重量部を超えて30重量部以下が好ましい。
【0013】
クロロプレン重合体の製造は、クロロプレンに硫黄を溶解させたものと、乳化剤を含有する水性乳化液を混合、懸濁させ、ジチオカルバミン酸塩を加えて乳化重合反応を行う。硫黄とジチオカルバミン酸塩を添加することにより、乳化重合反応中に重合体の解膠反応が同時に行われる。硫黄の使用量は特に限定するものではないが、得られる重合体の安定性のため、クロロプレン100重量部に対して、0.1〜2.0重量部が好ましい。ジチオカルバミン酸塩の使用量も特に限定するものではないが、粘度調整のため、クロロプレン100重量部に対して、0.1〜2.0重量部が好ましい。
【0014】
乳化重合は、混合攪拌しながら0〜60℃の温度、重合系のpH7〜13において触媒液を添加して行われることが望ましい。
【0015】
ジチオカルバミン酸塩としては、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸ジメチルアンモニウム、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジヘキシルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジオクチルジチオカルバミン酸ナトリウム等があげられる。これらのうち、スコーチタイムの良好な調整のために、ジメチルジチオカルバミン酸ジメチルアンモニウム、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(以下の一般式(1)で表されるジチオカルバミン酸塩)が好ましい。
【0016】
また、重合系のpHを調節するために、水性乳化液はpH調節剤を含有することが好ましい。pH調節剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、アンモニア等の塩基性化合物のうち、いずれか1種類以上を単独または併用して用いる。
【0017】
乳化剤としては、例えば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤等があげられる。アニオン性乳化剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルケニルコハク酸塩、ロジン酸塩、アルキル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸エステルナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩、高級脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、アルキルスルホベタイン等があげられ、ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、高級脂肪酸アルカノールアミド、ポリビニルアルコール等があげられ、カチオン性乳化剤としては、例えば、アルキルアミン塩、四級アンモニウム塩、アルキルエーテル型四級アンモニウム塩等があげられ、両性乳化剤としては、例えば、アルキルベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルアミンオキサイド等があげられる。以上に挙げた乳化剤の内、いずれか1種以上を単独または併用して用いる。
【0018】
重合を開始させるための触媒としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が用いられる。
【0019】
重合は、重合転化率50〜90%程度まで行なわれ、次いで重合禁止剤を少量添加して停止させる。
【0020】
重合禁止剤としては、例えば、チオジフェニルアミン、4−t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ハイドロキノン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン等が挙げられ、このうち1種類以上を単独または併用して用いる。
【0021】
本発明の硫黄変性クロロプレン重合体の製造方法は、乳化重合により得られた硫黄変性クロロプレン重合体(ラテックス)に対し、テトラアルキルチウラムジスルフィド及び下記一般式(1)で表されるジチオカルバミン酸塩を重合後に加えてさらに解膠を行なうものである。
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、R及びRは炭素数4以下のアルキル鎖を表す)
テトラアルキルチウラムジスルフィドとしては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等があげられ、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドが好ましい。
【0024】
一般式(1)で表されるジチオカルバミン酸塩としては、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸ジメチルアンモニウム、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム等があげられる。
【0025】
これらの使用量は特に限定するものではないが、得られる重合体の安定性のために、それぞれクロロプレン重合体100重量部に対し、好ましくは0.01〜4.0重量部、さらに好ましくは0.1〜2.0重量部の範囲である。
【0026】
解膠は重合体が所定の粘度範囲に達するまで行われる。解膠の温度は特に限定するものではないが、重合体の劣化防止のため、5〜60℃が好ましく、15〜40℃がさらに好ましい。
【0027】
さらに解膠された重合体(ラテックス)は、未反応単量体を減圧スチームストリッピング法により除去、回収した後、常法に従って凍結、凝固し、重合体の分離、乾燥を行なうことで、目的とする硫黄変性クロロプレン重合体を得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の硫黄変性クロロプレン重合体の製造方法は、トルエン不溶分の抑制効果による反応器の汚れを防ぐことによって、作業効率、生産性の向上を達成し、かつ、従来の解膠同時重合法で問題となっていたスコーチタイムの長期化を改良し、通常の製造法による硫黄変性クロロプレン重合体と同等のコンパウンド物性を有する硫黄変性クロロプレン重合体を得ることが可能となる。
【実施例】
【0029】
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
実施例1
単量体混合物としてクロロプレン100重量部に対して硫黄0.3重量部を加え、ロジン酸のカリウム塩4.0重量部、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物のナトリウム塩0.5重量部、水酸化ナトリウム0.05重量部及び正燐酸ナトリウム1.0重量部、水100重量部を含む乳化水溶液と混合攪拌し乳化させ、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.3重量部を加えた。これに過硫酸カリウム1.0重量部、アントラキノン−β−スルホン酸ナトリウム0.01重量部、水30重量部からなる重合触媒をポンプにより一定速度で添加し重合を行なった。重合は重合転化率70%になるまで重合触媒を添加して行ない、ここにチオジフェニルアミン0.01重量部、4−t−ブチルカテコール、2,2’−メチレンビス−4−メチル−6−t−ブチルフェノール0.05重量部、ジエチルヒドロキシルアミン0.1重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.05重量部、クロロプレン5.0重量部、水1.0重量部からなる重合停止剤を添加して重合を停止させた。この時、重合停止時の重合体(ラテックス)を一部抜き出し、減圧下スチームストリッピングにより未反応のクロロプレンを除去回収した後、酢酸を用いてpHを6.0に調整し、重合体(ラテックス)の凍結凝固によりポリマーを析出させ、次いでこれを乾燥させた後、以下の方法でゲル分測定を行なった。次いで重合停止後の重合体(ラテックス)に対しテトラエチルチウラムジスルフィド2.0重量部、ジメチルジチオカルバミン酸ジメチルアンモニウムを0.2重量部添加し23℃で15時間解膠した。解膠終了後の重合体(ラテックス)は減圧下スチームストリッピングにより未反応のクロロプレンを除去回収した後、酢酸を用いてpHを6.0に調整し、重合体(ラテックス)の凍結凝固によりポリマーを析出させ、次いでこれを乾燥させ硫黄変性クロロプレン重合体を得た。重合条件と解膠条件とムーニー粘度を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
<ゲル分測定>
重合停止剤添加後のラテックスより得られた重合体を重量換算で1.0%の濃度となるようにトルエンに浸漬、マグネットスターラにて遮光状態で20時間混合・溶解した後、100メッシュの金網にてろ過、トルエンにて洗浄後、残渣を110℃で1時間乾燥し、その重量と溶解前の重合体の重量の比をゲル分とした。
【0033】
得られた硫黄変性クロロプレン重合体について、以下の方法でスコーチ測定を行なった。
【0034】
<スコーチ測定>
JIS K 6388(2001年版)に準じ、重合体100重量部、カーボンブラック25重量部、酸化マグネシウム4重量部、酸化亜鉛5重量部、ステアリン酸0.5重量部をロール上で配合し、このコンパウンドについて、JIS K 6300−1(2001年版)に準じてスコーチ測定を行なった。
【0035】
ゲル分測定とスコーチ測定の結果を表2に示す。重合終了時にゲルを含まず、スコーチタイムの調整を行なうことができた。
【0036】
【表2】

【0037】
実施例2
重合終了後に添加するジメチルジチオカルバミン酸ジメチルアンモニウムの代わりにジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムを用いた以外は実施例1と同様に処理し、硫黄変性クロロプレン重合体を得て、実施例1と同様の方法で評価を行なった。重合条件と解膠条件とムーニー粘度を表1に合わせて示し、ゲル分測定とスコーチ測定の結果を表2に合わせて示す。重合終了時にゲルを含まず、スコーチタイムの調整を行なうことができた。
【0038】
実施例3
重合終了後に添加するジメチルジチオカルバミン酸ジメチルアンモニウムの代わりにジブチルジチオカルバミン酸ナトリウムを用いた以外は実施例1と同様に処理し、硫黄変性クロロプレン重合体を得て、実施例1と同様の方法で評価を行なった。重合条件と解膠条件とムーニー粘度を表1に合わせて示し、ゲル分測定とスコーチ測定の結果を表2に合わせて示す。重合終了時にゲルを含まず、スコーチタイムの調整を行なうことができた。
【0039】
実施例4
重合終了後に添加するテトラエチルチウラムジスルフィドの代わりにテトラブチルチウラムジスルフィドを用いた以外は実施例1と同様に処理し、硫黄変性クロロプレン重合体を得て、実施例1と同様の方法で評価を行なった。重合条件と解膠条件とムーニー粘度を表1に合わせて示し、ゲル分測定とスコーチ測定の結果を表2に合わせて示す。重合終了時にゲルを含まず、スコーチタイムの調整を行なうことができた。
【0040】
実施例5
重合開始前に使用するジブチルジチオカルバミン酸ナトリウムの代わりにジメチルジチオカルバミン酸ジメチルアンモニウムを用いた以外は実施例1と同様に処理し、硫黄変性クロロプレン重合体を得て、実施例1と同様の方法で評価を行なった。重合条件と解膠条件とムーニー粘度を表1に合わせて示し、ゲル分測定とスコーチ測定の結果を表2に合わせて示す。重合終了時にゲルを含まず、スコーチタイムの調整を行なうことができた。
【0041】
実施例6
重合終了後に添加するテトラエチルチウラムジスルフィドを1.5重量部に変更し、解膠時間を24時間とした以外は実施例1と同様に処理し、硫黄変性クロロプレン重合体を得て、実施例1と同様の方法で評価を行なった。重合条件と解膠条件とムーニー粘度を表1に合わせて示し、ゲル分測定とスコーチ測定の結果を表2に合わせて示す。重合終了時にゲルを含まず、スコーチタイムの調整を行なうことができた。
【0042】
実施例7
重合終了後に添加するジメチルジチオカルバミン酸ジメチルアンモニウムを0.1重量部に変更し、解膠時間を20時間とした以外は実施例1と同様に処理し、硫黄変性クロロプレン重合体を得て、実施例1と同様の方法で評価を行なった。重合条件と解膠条件とムーニー粘度を表1に合わせて示し、ゲル分測定とスコーチ測定の結果を表2に合わせて示す。重合終了時にゲルを含まず、スコーチタイムの調整を行なうことができた。
【0043】
比較例1
単量体混合物としてクロロプレン100重量部に対して硫黄0.3重量部、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム1.0重量部を加え、ロジン酸のカリウム塩4.0重量部、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物のナトリウム塩0.5重量部、水酸化ナトリウム0.05重量部及び正燐酸ナトリウム1重量部、水100重量部からなる乳化水溶液と混合攪拌し、乳化させた。これに過硫酸カリウム1.0重量部、アントラキノン−β−スルホン酸ナトリウム0.01重量部、水30重量部からなる重合触媒をポンプにより一定速度で添加し重合を行なった。ここにチオジフェニルアミン0.01重量部、4−t−ブチルカテコール、2,2’−メチレンビス−4−メチル−6−t−ブチルフェノール0.05重量部、ジエチルヒドロキシルアミン0.1重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.05重量部、クロロプレン5.0重量部、水1.0重量部からなる重合停止剤を添加して重合を停止させた。この点での重合転化率は70%であった。さらに重合終了後のラテックスにテトラエチルチウラムジスルフィドを2.0重量部添加した後、減圧下スチームストリッピングにより未反応のクロロプレンを除去回収した後、酢酸を用いてpHを6.0に調整し、ラテックスの凍結凝固によりポリマーを析出させ、次いで重合体を乾燥させ硫黄変性クロロプレンを得た。得られた硫黄変性クロロプレンについて、実施例1と同様の方法で評価を行なった。重合条件と解膠条件とムーニー粘度を表3に示し、ゲル分測定とスコーチ測定の結果を表2に合わせて示す。重合終了時のゲル分は含まないものの、実施例1〜3と比較してスコーチタイムが長期化し、調整を行なうことができなかった。
【0044】
【表3】

【0045】
比較例2
重合終了後に添加するテトラエチルチウラムジスルフィドの代わりにテトラブチルチウラムジスルフィドを用いた以外は比較例1と同様に処理し、硫黄変性クロロプレン重合体を得て、実施例1と同様の方法で評価を行なった。重合条件と解膠条件とムーニー粘度を表3に合わせて示し、ゲル分測定とスコーチ測定の結果を表2に合わせて示す。重合終了時のゲル分は含まないものの、実施例4と比較してスコーチタイムが長期化し、調整を行なうことができなかった。
【0046】
比較例3
重合開始前に使用するジブチルジチオカルバミン酸ナトリウムの代わりにジメチルジチオカルバミン酸ジメチルアンモニウムを用いた以外は比較例1と同様に処理し、硫黄変性クロロプレン重合体を得て、実施例1と同様の方法で評価を行なった。重合条件と解膠条件とムーニー粘度を表3に合わせて示し、ゲル分測定とスコーチ測定の結果を表2に合わせて示す。重合終了時のゲル分は含まないものの、実施例5と比較してスコーチタイムが長期化し、調整を行なうことができなかった。
【0047】
比較例4
単量体混合物からジブチルジチオカルバミン酸ナトリウムを除き、重合終了後に添加するジメチルジチオカルバミン酸ジメチルアンモニウムを0.5重量部に変更した以外は実施例1と同様に処理し、硫黄変性クロロプレン重合体を得て、実施例1と同様の方法で評価を行なった。重合条件と解膠条件とムーニー粘度を表3に合わせて示し、ゲル分測定とスコーチ測定の結果を表2に合わせて示す。得られた重合体は、ゲル分測定において劣っており、重合終了時にゲル分を含まない重合体とすることができなかった。
【0048】
比較例5
重合終了後に添加するジメチルジチオカルバミン酸ジメチルアンモニウムをジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムに変更した以外は比較例4と同様に処理し、硫黄変性クロロプレン重合体を得て、実施例1と同様の方法で評価を行なった。重合条件と解膠条件とムーニー粘度を表3に合わせて示し、ゲル分測定とスコーチ測定の結果を表2に合わせて示す。得られた重合体は、ゲル分測定において劣っており、重合終了時にゲル分を含まない重合体とすることができなかった。
【0049】
比較例6
重合終了後に添加するジメチルジチオカルバミン酸ジメチルアンモニウムをジブチルジチオカルバミン酸ナトリウムに変更した以外は比較例4と同様に処理し、硫黄変性クロロプレン重合体を得て、実施例1と同様の方法で評価を行なった。重合条件と解膠条件とムーニー粘度を表3に合わせて示し、ゲル分測定とスコーチ測定の結果を表2に合わせて示す。得られた重合体は、ゲル分測定において劣っており、重合終了時にゲル分を含まない重合体とすることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明による硫黄変性クロロプレン重合体の製造方法は、トルエン不溶分の抑制効果による反応器の汚れを防ぐことによって、作業効率、生産性の向上を達成しかつ、従来の解膠同時重合法で問題となっていたスコーチタイムの悪化を改良し、通常の製造法による硫黄変性クロロプレン重合体と同等のコンパウンド物性を有する硫黄変性クロロプレン重合体を提供することが可能となるために、硫黄変性クロロプレン製造法の改良プロセスとして利用される可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレン、又はクロロプレン及びこれと共重合可能な単量体との混合物を、硫黄及びジチオカルバミン酸塩の存在下で乳化重合を行ない、クロロプレン重合体の製造と併行してこれの解膠を行なうことにより得られる硫黄変性クロロプレン重合体に対し、テトラアルキルチウラムジスルフィド及び下記一般式(1)で表されるジチオカルバミン酸塩を重合後に加えてさらに解膠を行なうことを特徴とする硫黄変性クロロプレン重合体の製造方法。
【化1】

(式中、R及びRは炭素数4以下のアルキル鎖を表す)

【公開番号】特開2012−172105(P2012−172105A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37051(P2011−37051)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】