説明

硬化性シリコーン樹脂組成物

【課題】密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスに優れる硬化性シリコーン樹脂組成物の提供。
【解決手段】重量平均分子量20,000〜200,000の、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンAを100質量部と、重量平均分子量1,000以上20,000未満の、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンBを10質量部以上と、重量平均分子量300以上1,000未満であり、(メタ)アクリル当量が450g/mol未満であり、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンCを2質量部以上と、ラジカル開始剤とを含有する硬化性シリコーン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性シリコーン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、(メタ)アクリル変性オルガノポリシロキサン、およびシリコーンオイルなどを含有する硬化性シリコーン樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−51774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者は、シラノール基とアルコキシ基との縮合による硬化を密閉系内で行う場合、縮合反応の副生成物であるアルコールが系内から抜けず組成物が未硬化になることを見出した。
また、本発明者は、(メタ)アクリル変性オルガノポリシロキサンなどを含有する組成物は被着体(例えば、ガラス)に対する接着性が低いこと、さらに(メタ)アクリル変性オルガノポリシロキサンおよびフィラーなどを含有する組成物は接着強度には優れるものの透明性に劣ることを見出した。
そこで、本発明は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスに優れる硬化性シリコーン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、
重量平均分子量20,000〜200,000の、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンAを100質量部と、
重量平均分子量1,000以上20,000未満の、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンBを10質量部以上と、
重量平均分子量300以上1,000未満であり、(メタ)アクリル当量が450g/mol未満であり、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンCを2質量部以上と、
ラジカル開始剤とを含有する組成物が、密閉系内において硬化阻害がなく硬化性に優れ、ガラス等に対する接着性、経時での耐熱着色安定性、および透明性と接着強度(せん断強度が高く破壊モードが良好である。)とのバランスに優れる、つまり、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスに優れることを見出し、本発明を完成させた。
また、本願発明者は、硬化系としてラジカル発生のみによる硬化を利用する接着剤は、酸素阻害によって接着剤が外気に直接露出した部分(はみ出し部分)の表面硬化性が不十分であることを見出した。
このような問題に対して、本願発明者は上記の組成物に縮合触媒を添加することによって表面硬化性が向上することを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記1〜8を提供する。
1. 重量平均分子量20,000〜200,000の、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンAを100質量部と、
重量平均分子量1,000以上20,000未満の、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンBを10質量部以上と、
重量平均分子量300以上1,000未満であり、(メタ)アクリル当量が450g/mol未満であり、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンCを2質量部以上と、
ラジカル開始剤とを含有する硬化性シリコーン樹脂組成物。
2. 前記シリコーンAが下記式(A1)で表され、前記シリコーンBが下記式(B1)で表される上記1に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1はそれぞれ水素原子またはメチル基であり、R2はそれぞれ炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、R3はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜18の炭化水素基であり、R4はそれぞれ炭素原子数1〜8の2価の炭化水素基であり、nはそれぞれ1または2であり、mは270〜2,700の整数である。)
【化2】

(式中、R1はそれぞれ水素原子またはメチル基であり、R2はそれぞれ炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、R3はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜18の炭化水素基であり、R4はそれぞれ炭素原子数1〜8の2価の炭化水素基であり、nはそれぞれ1または2であり、mは14〜269の整数である。)
3. 前記シリコーンCが、下記式(3)、下記式(4)および下記式(5)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記1または2に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【化3】

[式(3)中、Rはそれぞれアルキル基であり、X1、X2はそれぞれ下記式(6)で表される基であり、aは0〜13の整数である。
式(4)中、Rはそれぞれアルキル基であり、X3は下記式(6)で表される基であり、aは0〜13の整数であり、bは1〜13の整数であり、a+bは1〜13である。
式(5)中、Rはそれぞれアルキル基であり、X1、X2、X3はそれぞれ下記式(6)で表される基であり、aは0〜13の整数であり、bは1〜13の整数であり、a+bは1〜13である。]
【化4】

[式(6)中、R1は水素基またはメチル基であり、R4は2価の炭化水素基である。]
4. 前記シリコーンA、前記シリコーンBおよび前記シリコーンCからなる群から選ばれる少なくとも1種が、1分子中に加水分解性基を含むシリル基および/またはシラノール基を1個以上有し、
さらに、縮合触媒を含有する上記1〜3のいずれかに記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
5. 前記縮合触媒の量が、前記シリコーンA、前記シリコーンBおよび前記シリコーンCの合計100質量部に対して、0.01〜10質量部である上記4に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
6. さらに、ビス(アルコキシシリル)アルカンを含有する上記1〜5のいずれかに記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
7. 前記ビス(アルコキシシリル)アルカンが、ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリメトキシシリル)ノナンおよび1,10−ビス(トリメトキシシリル)デカンからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記6に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
8. 前記ビス(アルコキシシリル)アルカンの量が、前記シリコーンA:100質量部に対して、0.01〜10質量部である上記6または7に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスに優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施例において本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させるために使用した型を模式的に表す断面図である。
【図2】図2は、実施例において本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させるために使用した型8を部分的に分けて模式的に表す上面図である。
【図3】図3は、本発明において、せん断接着力および破壊モードの評価に使用したせん断試験用試験片を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明において、せん断接着力および破壊モードの評価に使用したせん断試験用試験片を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、
重量平均分子量20,000〜200,000の、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンAを100質量部と、
重量平均分子量1,000以上20,000未満の、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンBを10質量部以上と、
重量平均分子量300以上1,000未満であり、(メタ)アクリル当量が450g/mol未満であり、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンCを2質量部以上と、
ラジカル開始剤とを含有する組成物である。
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物を以下「本発明の組成物」ということがある。
【0010】
シリコーンAについて以下に説明する。
本発明の組成物に含有されるシリコーンAは、主鎖がポリシロキサン骨格であり、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し、重量平均分子量が20,000〜200,000である、(メタ)アクリル変性されたポリシロキサンである。
なお、本発明において(メタ)アクリルは、アクリルおよびメタクリルのうちの一方または両方を意味する。
【0011】
主鎖としてのポリシロキサンは、特に制限されない。例えば、オルガノポリシロキサンが挙げられ、具体的には例えば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサンが挙げられる。主鎖としてのポリシロキサンは、直鎖状および分岐状のうちのいずれであってもよい。
本発明において、シリコーンAが有する(メタ)アクリロイル基は1分子中2個以上であり、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れるという観点から、(メタ)アクリロイル基の数は2〜6個であるのが好ましい。
【0012】
シリコーンAは、(メタ)アクリロイル基以外に加水分解性基を含むシリル基および/またはシラノール基を有することができる。シリコーンAは、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、耐湿熱接着性に優れ、表面硬化性に優れるという観点から、さらに、1分子中に加水分解性基を含むシリル基および/またはシラノール基を1個以上有するのが好ましい。加水分解性基を含むシリル基は、シリル基1個中に加水分解性基を1個以上含むものであればよい。シラノール基は、1つのケイ素原子に1つ以上のヒドロキシ基が結合するものであればよい。
加水分解性基を含むシリル基は特に制限されない。例えば、アルコキシシリル基が挙げられる。
シリコーンAは、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、耐湿熱接着性に優れ、表面硬化性に優れるという観点から、さらに、アルコキシシリル基を有するのが好ましい。
アルコキシシリル基としては、例えば、トリアルコキシシリル基、ジアルコキシ基を有する2価のシリル基、モノアルコキシ基およびモノアルキル基を有する2価のシリル基が挙げられる。アルコキシシリル基中のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。アルコキシシリル基が有することができるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
シラノール基としては、例えば、トリヒドロキシシリル基、ジヒドロキシ基を有する2価のシリル基、モノヒドロキシ基およびモノアルキル基を有する2価のシリル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0013】
(メタ)アクリロイル基は主鎖としてのポリシロキサンの側鎖および/または末端に結合することができる。(メタ)アクリロイル基は主鎖としてのポリシロキサンの両末端に結合することができる。
アルコキシシリル基は主鎖としてのポリシロキサンの側鎖および/または末端に結合することができる。アルコキシシリル基は主鎖としてのポリシロキサンの両末端に結合することができる。
【0014】
本発明において、(メタ)アクリロイル基は2価の炭化水素基を介してアルコキシシリル基と結合することができる。(メタ)アクリロイル基が2価の炭化水素基を介してアルコキシシリル基と結合する基として、例えば、下記式(1)で表されるものが挙げられる。
【化5】

(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2はそれぞれ炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、R3はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜18の炭化水素基であり、R4は炭素原子数1〜8の2価の炭化水素基であり、nは1または2である。)
(メタ)アクリロイル基は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れるという観点から、式(1)で表されるものが好ましい。
【0015】
式(1)で示される基は主鎖としての例えばオルガノポリシロキサンの側鎖および/または末端に結合することができる。式(1)で示される基は主鎖としての例えばオルガノポリシロキサンの両末端に結合することができる。
【0016】
式(1)で示される基において、R2としての炭素原子数1〜6の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基;シクロヘキシル基のような脂環式炭化水素基;フェニル基のような芳香族炭化水素基が挙げられる。R3としての炭素原子数1〜18の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基のようなアルキル基;シクロヘキシル基のような脂環式炭化水素基;フェニル基のような芳香族炭化水素基が挙げられる。
また、式(1)中、R4としての炭素原子数1〜8の2価の炭化水素基は特に制限されない。例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンチレン基が挙げられる。
nは、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、耐湿熱接着性に優れるという観点から、2であるのが好ましい。
【0017】
シリコーンAとしては、例えば、下記式(A1)で表されるものが挙げられる。
【化6】

(式中、R1はそれぞれ水素原子またはメチル基であり、R2はそれぞれ炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、R3はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜18の炭化水素基であり、R4はそれぞれ炭素原子数1〜8の2価の炭化水素基であり、nはそれぞれ1または2であり、mは270〜2,700の整数である。)
【0018】
1〜R4、nは式(1)と同義である。
mは、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、作業性に優れるという観点から、270〜1,350の整数であるのが好ましい。
【0019】
シリコーンAは、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、耐湿熱接着性に優れるという観点から、式(A1)で表されるものが好ましい。
【0020】
本発明において、シリコーンAの重量平均分子量は20,000〜200,000である。
シリコーンAの重量平均分子量は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、作業性に優れるという観点から、20,000〜100,000が好ましい。
なお本発明において、シリコーンAの重量平均分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で表わされるものとする。
シリコーンAはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
シリコーンAはその製造について特に制限されない。例えば、両末端にヒドロキシ基を有するオルガノポリシロキサン[例えば、式(IV)で表されるオルガノポリシロキサン]と、式(V)で表される化合物またはその縮合物とを脱アルコール縮合させることによって製造することができる。
【化7】

[式(V)中、R1はそれぞれ水素原子またはメチル基であり、R2はそれぞれ炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、R3はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜18の炭化水素基であり、R4はそれぞれ炭素原子数1〜8の2価の炭化水素基であり、nは2または3である。式(IV)中、mは270〜2,700の整数である。]
1〜R4は式(1)と同義である。mは式(A1)と同義である。
密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、加熱減量の抑制に優れるという観点から、両末端にヒドロキシ基を有するオルガノポリシロキサン1モルに対して、式(V)で表される化合物を2モルを超える量で反応させるのが好ましい。
【0022】
シリコーンBについて以下に説明する。
本発明の組成物に含有されるシリコーンBは、主鎖がポリシロキサン骨格であり、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し、重量平均分子量が1,000以上20,000未満である、(メタ)アクリル変性されたポリシロキサンである。
シリコーンBは、シリコーンAとシリコーンCとの相溶化剤、接着付与剤として機能することができ、得られる硬化物に柔軟性を与えることができる。したがって、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物はシリコーンBを含有することによって、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスに優れ、相溶性に優れる。
【0023】
主鎖としてのポリシロキサンは、特に制限されない。例えば、シリコーンAと同様のものが挙げられる。主鎖としてのポリシロキサンは、直鎖状および分岐状のうちのいずれであってもよい。
本発明において、シリコーンBが有する(メタ)アクリロイル基は1分子中2個以上であり、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、耐湿熱接着性に優れるという観点から、(メタ)アクリロイル基の数は2〜6個であるのが好ましい。
【0024】
シリコーンBは、(メタ)アクリロイル基以外に加水分解性基を含むシリル基および/またはシラノール基を有することができる。シリコーンBは、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、耐湿熱接着性に優れ、表面硬化性に優れるという観点から、さらに、1分子中に加水分解性基を含むシリル基および/またはシラノール基を1個以上有するのが好ましい。加水分解性基を含むシリル基、シラノール基は特に制限されない。加水分解性基を含むシリル基としては例えばアルコキシシリル基が挙げられる。
シリコーンBは、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、耐湿熱接着性に優れ、表面硬化性に優れるという観点から、さらにアルコキシシリル基を有するのが好ましい。アルコキシシリル基としては、例えば、シリコーンAと同様のものが挙げられる。アルコキシシリル基中のアルコキシ基としては、例えば、シリコーンAと同様のものが挙げられる。
【0025】
(メタ)アクリロイル基は主鎖としてのポリシロキサンの側鎖および/または末端に結合することができる。(メタ)アクリロイル基は主鎖としてのポリシロキサンの両末端に結合することができる。
アルコキシシリル基は主鎖としてのポリシロキサンの側鎖および/または末端に結合することができる。アルコキシシリル基は主鎖としてのポリシロキサンの両末端に結合することができる。
【0026】
本発明において、(メタ)アクリロイル基は2価の炭化水素基を介してアルコキシシリル基と結合することができる。(メタ)アクリロイル基が2価の炭化水素基を介してアルコキシシリル基と結合する基として、例えば、下記式(1)で表されるものが挙げられる。
【化8】

(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2はそれぞれ炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、R3はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜18の炭化水素基であり、R4は炭素原子数1〜8の2価の炭化水素基であり、nは1または2である。)
(メタ)アクリロイル基は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れるという観点から、式(1)で表されるものが好ましい。シリコーンBにおける式(1)で表される、(メタ)アクリロイル基が2価の炭化水素基を介してアルコキシシリル基と結合する基は、シリコーンAにおける式(1)と同様である。
【0027】
式(1)で示される基は主鎖としての例えばオルガノポリシロキサンの側鎖および/または末端に結合することができる。式(1)で示される基は主鎖としての例えばオルガノポリシロキサンの両末端に結合することができる。
【0028】
シリコーンBとしては、例えば、下記式(B1)で表されるものが挙げられる。
【化9】

(式中、R1はそれぞれ水素原子またはメチル基であり、R2はそれぞれ炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、R3はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜18の炭化水素基であり、R4はそれぞれ炭素原子数1〜8の2価の炭化水素基であり、nはそれぞれ1または2であり、mは14〜269の整数である。)
【0029】
1〜R4、nは式(1)と同義である。
mは、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、作業性に優れるという観点から、80〜250の整数であるのが好ましい。
【0030】
シリコーンBは、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、耐湿熱接着性に優れるという観点から、式(B1)で表されるものが好ましい。
【0031】
本発明において、シリコーンBの重量平均分子量は1,000以上20,000未満である。
シリコーンBの重量平均分子量は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、相溶性、耐湿熱接着性に優れるという観点から、6,000以上20,000未満であるのが好ましい。
なお本発明において、シリコーンBの重量平均分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で表わされるものとする。
シリコーンBはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
シリコーンBはその製造について特に制限されない。例えば、両末端にヒドロキシ基を有するオルガノポリシロキサン[例えば、式(IV)で表されるオルガノポリシロキサン]と、式(V)で表される化合物またはその縮合物とを脱アルコール縮合させることによって製造することができる。
【化10】

[式(V)中、R1はそれぞれ水素原子またはメチル基であり、R2はそれぞれ炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、R3はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜18の炭化水素基であり、R4はそれぞれ炭素原子数1〜8の2価の炭化水素基であり、nは2または3である。式(IV)中、mは14〜269の整数である。]
1〜R4は式(1)と同義である。mは式(B1)と同義である。
密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、加熱減量の抑制に優れるという観点から、両末端にヒドロキシ基を有するオルガノポリシロキサン1モルに対して、式(V)で表される化合物を2モルを超える量で反応させるのが好ましい。
【0033】
本発明において、シリコーンBの量は、シリコーンA100質量部に対して、10質量部以上である。
シリコーンBの量は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、相溶性に優れるという観点から、シリコーンA100質量部に対して、10〜200質量部であるが好ましく、100〜200質量部であるのがより好ましい。
【0034】
シリコーンCについて以下に説明する。
本発明の組成物に含有されるシリコーンCは、主鎖がポリシロキサン骨格であり、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し、(メタ)アクリル当量が450g/mol未満であり、重量平均分子量が300以上1,000未満ある、(メタ)アクリル変性されたポリシロキサンである。
本発明の組成物はシリコーンCを含有することによって、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスに優れ、得られる硬化物の強度を高くすることができる。
【0035】
主鎖としてのポリシロキサンは特に制限されない。例えばオルガノポリシロキサンが挙げられ、具体的には例えば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサンが挙げられる。主鎖としてのポリシロキサンは、直鎖状および分岐状のうちのいずれであってもよい。
【0036】
本発明において、シリコーンCが有する(メタ)アクリロイル基は1分子中2個以上であり、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れるという観点から、(メタ)アクリロイル基の数は2〜6個であるのが好ましい。
【0037】
(メタ)アクリロイル基としては、例えば、下記式(6)で表されるものが挙げられる。
【化11】

(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R4は2価の炭化水素基である。)
4としての2価の炭化水素基はその炭素原子数が、1〜8であるのが好ましい。炭素原子数1〜8の2価の炭化水素基は式(1)と同義である。
(メタ)アクリロイル基は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れるという観点から、式(6)で表されるものが好ましい。
【0038】
(メタ)アクリロイル基は主鎖としてのポリシロキサンの側鎖および/または末端に結合することができる。(メタ)アクリロイル基は主鎖としてのポリシロキサンの両末端に結合することができる。
シリコーンCは加水分解性基を含むシリル基および/またはシラノール基を有してもよい。加水分解性基を含むシリル基、シラノール基は上記と同様のものが挙げられる。
【0039】
シリコーンCとしては、例えば、下記式(3)、下記式(4)、下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
【化12】

[式(3)中、Rはそれぞれアルキル基であり、X1、X2はそれぞれ上記式(6)で表される基であり、aは0〜13の整数である。
式(4)中、Rはそれぞれアルキル基であり、X3は上記式(6)で表される基であり、aは0〜13の整数であり、bは1(または2)〜13の整数であり、a+bは1(または2)〜13である。式(4)中、片方の末端において少なくとも1つのRをX3とすることができ、X3は上記式(6)で表される基である。
式(5)中、Rはそれぞれアルキル基であり、X1、X2、X3はそれぞれ上記式(6)で表される基であり、aは0〜13の整数であり、bは1〜13の整数であり、a+bは1〜13である。]
【0040】
式(3)〜式(5)におけるRとしてのアルキル基は特に制限されない。例えば、上記式(1)におけるR2(炭素原子数1〜6の炭化水素基)と同様のものが挙げられる。
式(3)におけるaは、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れるという観点から0〜5の整数であるのが好ましい。
式(4)中、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れるという観点から、aは0〜5の整数であるのが好ましく、bは1(または2)〜5の整数であるのが好ましく、a+bは1(または2)〜10であるのが好ましい。式(4)中、片方の末端において少なくとも1つのRをX3とすることができ、X3は上記式(6)で表される基である。
式(5)中、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れるという観点から、aは0〜5の整数であるのが好ましく、bは1〜5の整数であるのが好ましく、a+bは1〜10であるのが好ましい。
【0041】
シリコーンCは、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れるという観点から、式(3)、式(4)および式(5)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
【0042】
本発明において、シリコーンCの重量平均分子量は300以上1,000未満である。
シリコーンCの重量平均分子量は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れるという観点から、300〜500が好ましい。
なお本発明において、シリコーンCの重量平均分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で表わされるものとする。
【0043】
本発明において、シリコーンCの(メタ)アクリル当量は、450g/mol未満である。
シリコーンCの(メタ)アクリル当量は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れるという観点から、100〜200g/molが好ましい。
シリコーンCはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
シリコーンCはその製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0044】
本発明において、シリコーンCの量は、シリコーンA100質量部に対して、2質量部以上である。
シリコーンCの量は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れるという観点から、シリコーンA100質量部に対して、2〜100質量部であるが好ましく、5〜50質量部であるのがより好ましく、20〜50質量部であるのがより好ましい。
なお、本発明の組成物はシリコーンA〜C以外に、上記式(3)で表されX2がR:アルキル基である化合物を含有することができる。R、X1、aは上記と同義である。
【0045】
ラジカル開始剤について以下に説明する。
本発明の組成物に含有されるラジカル開始剤は、熱および/または光によって(メタ)アクリロイル基をラジカル重合させるものであれば特に制限されない。
ラジカル開始剤は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れるという観点から、窒素原子または硫黄原子を含まないものが好ましく、炭素原子、水素原子および酸素原子からなるものがより好ましい。
【0046】
熱によるラジカル開始剤(熱ラジカル開始剤)としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、t−アミルパーオキシブタンのような脂肪族炭化水素のパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドのような芳香族パーオキサイド;アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物が挙げられる。
【0047】
光によるラジカル開始剤(光ラジカル開始剤)としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンゾフェノン系化合物のようなカルボニル化合物、硫黄化合物、アゾ化合物、パーオキサイド化合物、ホスフィンオキサイド系化合物などが挙げられる。
【0048】
具体的には例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4′−ビス(ジメチルアミノベンゾフェノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロ等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物が挙げられる。
【0049】
ラジカル開始剤の量は、シリコーンA100質量部に対して、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れるという観点から、0.1〜5質量部が好ましい。
【0050】
本発明の組成物は、さらに、縮合触媒を含有することができる。本発明の組成物がさらに縮合触媒を含有する場合、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、接着剤として用いた場合は空気中に直接露出した部分、はみ出し部分の表面硬化性に優れ、接着性、せん断接着力にはほぼ影響が無いものとすることができる。本発明の組成物において、シリコーンA、シリコーンBおよびシリコーンCからなる群から選ばれる少なくとも1種が、1分子中に加水分解性基を含むシリル基および/またはシラノール基を1個以上有する場合、さらに縮合触媒を含有するのが表面硬化性に優れるという観点から有用である。なかでも、シリコーンAおよび/またはシリコーンBが1分子中に加水分解性基を含むシリル基および/またはシラノール基を1個以上有するのが好ましい。
【0051】
本発明の組成物がさらに含有することができる縮合触媒は、加水分解性基含有シリル基やシラノール基を加水分解、縮合させることができるものであれば特に制限されない。例えば、スズ、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、カルシウム、バリウム等の金属を含む有機金属化合物やホウ素化合物が挙げられる。なかでも、表面硬化性に優れるという観点から、有機スズ化合物が好ましい。また有機金属化合物としては例えば、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属アルキル化合物が挙げられる。
【0052】
有機スズ化合物は、スズ原子と有機基とを有する化合物であれば特に制限されない。例えば、下記式(I)〜(V)で表されるスズ化合物[具体的には例えばジオクチル錫化合物(例えばジオクチルスズ塩)と正珪酸化合物(例えば正珪酸エチル)との混合物または反応物(例えば、商品名U−780、S−1、いずれも日東化成株式会社製)]が挙げられる。
【0053】
【化13】

【0054】
式(I)中、R1は炭素数1〜10の炭化水素基を示し、R2は炭素原子数1〜4の炭化水素基を示し、pは1〜10、qは1〜4、rは1〜5の整数を示す。
【0055】
【化14】

【0056】
【化15】

【0057】
【化16】

【0058】
【化17】

【0059】
式(II)〜(V)中、R1は炭素原子数1〜10の炭化水素基(例えばオクチル基のような脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基)を示し、R2は炭素原子数1〜4の炭化水素基(例えばエチル基のような脂肪族炭化水素基)を示す。また、式(V)中のnは1以上の整数である。
縮合触媒はその製造について特に制限されない。縮合触媒はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
縮合触媒の量は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、表面硬化性に優れるという観点から、シリコーンA、シリコーンBおよびシリコーンCの合計100質量部に対して、0.01〜10質量部であるのが好ましく、0.01〜1質量部であるのがより好ましい。
【0061】
本発明の組成物は、さらに、ビス(アルコキシシリル)アルカンを含有することができる。本発明の組成物がビス(アルコキシシリル)アルカンを含有する場合、ビス(アルコキシシリル)アルカンは接着付与剤として機能することができる。接着付与剤として本発明の組成物は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れるという観点から、さらにビス(アルコキシシリル)アルカンを含有するのが好ましい。
本発明の組成物が含有することができるビス(アルコキシシリル)アルカンは、1分子中にアルコキシシリル基を2個有する2価のアルカンである。
アルコキシシリル基におけるアルコキシ基は特に制限されない。例えば、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。
1つのアルコキシシリル基は、アルコキシ基を1〜3個有することができる。アルコキシシリル基に結合することができる、アルコキシ基以外の基としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基が挙げられる。
2価のアルカン(アルキレン基)は特に制限されない。2価のアルカンは例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。2価のアルカンの炭素原子数は特に制限されない。密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、耐湿熱接着性、相溶性に優れるという観点から、2価のアルカンの炭素原子数は2〜10個が好ましい。
【0062】
ビス(アルコキシシリル)アルカンとしては、例えば、下記式(VII)で表されるものが挙げられる。
【化18】

式中、R7〜R8はそれぞれアルキル基であり、R9は2価のアルカンであり、aはそれぞれ1〜3の整数である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。R9としての2価のアルカンは上記の2価のアルカンと同義である。
【0063】
ビス(アルコキシシリル)アルカンとしては、例えば、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ブタン、1−メチルジメトキシシリル−4−トリメトキシシリルブタン、1,4−ビス(メチルジメトキシシリル)ブタン、1,5−ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1−メチルジメトキシシリル−5−トリメトキシシリルペンタン、1,5−ビス(メチルジメトキシシリル)ペンタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、2,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、2,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、2,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、2,5−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、2,7−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリメトキシシリル)ノナン、2,7−ビス(トリメトキシシリル)ノナン、1,10−ビス(トリメトキシシリル)デカン、3,8−ビス(トリメトキシシリル)デカン;ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミンのような窒素原子を有するものが挙げられる。
【0064】
ビス(アルコキシシリル)アルカンは、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、耐湿熱接着性に優れるという観点から、式(VII)で表されるものが好ましく、ビス(トリアルコキシシリル)アルカンがより好ましく、ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリメトキシシリル)ノナンおよび1,10−ビス(トリメトキシシリル)デカンからなる群から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましく、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミンが特に好ましい。
ビス(アルコキシシリル)アルカンはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0065】
ビス(アルコキシシリル)アルカンの量は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、耐湿熱接着性に優れるという観点から、シリコーンA100質量部に対して、0.01〜10質量部であるのが好ましく、0.1〜3質量部であるのがより好ましい。
【0066】
本発明の組成物は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、耐湿熱接着性に優れるという観点から、シリコーンAと、シリコーンBと、シリコーンCと、ラジカル開始剤とからなる組成物(以上の4つの成分のみを含有する組成物)とすることができる。
また、本発明の組成物は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、耐湿熱接着性に優れるという観点から、シリコーンAと、シリコーンBと、シリコーンCと、ラジカル開始剤と、ビス(アルコキシシリル)アルカンとからなる組成物(以上の5つの成分のみを含有する組成物)とすることができる。
また、本発明の組成物は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、耐湿熱接着性、表面硬化性に優れるという観点から、シリコーンAと、シリコーンBと、シリコーンCと、ラジカル開始剤と、縮合触媒とからなる組成物(以上の5つの成分のみを含有する組成物)とすることができる。
また、本発明の組成物は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、耐湿熱接着性、表面硬化性に優れるという観点から、シリコーンAと、シリコーンBと、シリコーンCと、ラジカル開始剤と、縮合触媒と、ビス(アルコキシシリル)アルカンとからなる組成物(以上の6つの成分のみを含有する組成物)とすることができる。
【0067】
本発明の組成物は、シリコーンA、シリコーンB、シリコーンC、ラジカル開始剤、ビス(アルコキシシリル)アルカン、縮合触媒以外に、本発明の目的や効果を損なわない範囲で必要に応じてさらに添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、無機フィラー、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、熱光安定剤、分散剤、帯電防止剤、重合禁止剤、消泡剤、硬化促進剤、溶剤、無機蛍光体、老化防止剤、ラジカル禁止剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン老化防止剤、増粘剤、可塑剤、放射線遮断剤、核剤、カップリング剤、導電性付与剤、リン系過酸化物分解剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤が挙げられる。各種添加剤は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0068】
本発明の組成物は、貯蔵安定性に優れるという観点から、実質的に水を含まないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。本発明において実質的に水を含まないとは、本発明の組成物中における水の量が0.1質量%以下であることをいう。
また、本発明の組成物は、作業環境性に優れるという観点から、実質的に溶媒を含まないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。本発明において実質的に溶媒を含まないとは、本発明の組成物中における溶媒の量が1質量%以下であることをいう。
【0069】
本発明の組成物は、その製造について特に制限されない。例えば、シリコーンAと、シリコーンBと、シリコーンCと、ラジカル開始剤と、必要に応じて使用することができる、ビス(アルコキシシリル)アルカンと縮合触媒と添加剤とを混合することによって製造することができる。
本発明の組成物は、1液型または2液型として製造することが可能である。
【0070】
本発明の組成物は、例えば、接着剤、プライマー、封止材(例えば、光半導体用)として使用することができる。
本発明の組成物を適用することができる被着体としては、例えば、ガラス、プラスチック、ゴムが挙げられる。
本発明の組成物を適用することができる光半導体は特に制限されない。例えば、発光ダイオード(LED、例えば、白色LED)、有機電界発光素子(有機EL)、レーザーダイオード、LEDアレイが挙げられる。
【0071】
本発明の組成物の使用方法としては、例えば、被着体(例えば、ガラス、プラスチック、ゴム、光半導体など)に本発明の組成物を付与し、本発明の組成物が付与された被着体を加熱、および/または本発明の組成物が付与された被着体に光照射をして本発明の組成物を硬化させることが挙げられる。
例えば、複数のガラスの間に本発明の組成物を付与して硬化させて本発明の組成物を介して複数のガラスを接着させることによって、ガラスの積層体を得ることができる。
また、複数のガラスの間に光半導体を配置し、ガラスの間に本発明の組成物を付与し硬化させて本発明の組成物を介して複数のガラスを接着させ光半導体を封止することができる。
【0072】
本発明の組成物を被着体に付与する方法は特に制限されない。例えば、ディスペンサーを使用する方法、ポッティング法、スクリーン印刷、トランスファー成形、インジェクション成形が挙げられる。
【0073】
本発明の組成物を加熱する際の温度は、密閉系内における硬化性、接着性、耐熱着色安定性、および透明性と接着強度とのバランスにより優れ、硬化時間、可使時間を適切な長さとすることができ、縮合反応による副生成物であるアルコールが発泡するのをより抑制でき、硬化物のクラックを抑制でき、硬化物の平滑性、成形性、物性に優れるという観点から、80℃〜150℃付近で硬化させるのが好ましく、150℃付近がより好ましい。
【0074】
本発明の組成物を光照射で硬化させる場合、例えば、紫外線、電子線を用いることができる。
硬化は、硬化性、透明性に優れるという観点から、実質的に無水の条件下で行うことができる。本発明において、硬化が実質的に無水の条件下でなされるとは、加熱および/または光照射における環境の大気中の湿度が10%RH以下であることをいう。
【0075】
本発明の組成物を用いて得られる硬化物(硬化物の厚さが2mmである場合)は、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所社製、以下同様。)を用いて波長400nmにおいて測定された透過率が、80%以上であるのが好ましく、85%以上であるのがより好ましい。
【0076】
また、本発明の組成物を用いて得られる硬化物は、初期硬化の後耐熱試験[初期硬化後の硬化物(厚さ:2mm)を100℃の条件下に500時間置く試験]を行いその後の硬化物について、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視スペクトル測定装置を用いて波長400nmにおいて測定された透過率が、80%以上であるのが好ましく、85%以上であるのがより好ましい。
【0077】
本発明の組成物を用いて得られる硬化物は、その透過性保持率(耐熱試験後の透過率/初期硬化の際の透過率×100)が、70〜100%であるのが好ましく、80〜100%であるのがより好ましい。
【0078】
本発明の組成物は、光半導体以外にも、例えば、ディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料等の用途に用いることができる。
【実施例】
【0079】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
1.変性オルガノポリシロキサンの製造
(1)変性オルガノポリシロキサン1
両端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサン(重量平均分子量28,000、商品名ss70、信越化学工業社製)100質量部、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM503、信越化学工業社製)4質量部、および触媒として2−エチルへキサン酸スズ(関東化学社製)0.01質量部を反応容器に入れ、圧力を10mmHg、温度を80℃に保ちながら6時間反応させた。
得られた反応物について1H−NMR分析を行い、ポリジメチルシロキサンの両末端がメタクリルオキシプロピルジメトキシシリル基であることを確認した。
得られたポリジメチルシロキサンを変性オルガノポリシロキサン1とする。
変性オルガノポリシロキサン1の重量平均分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算(以下同様)で、35,000であった。
【0080】
(2)変性オルガノポリシロキサン2
原料としてのポリジメチルシロキサンを、両端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサン(重量平均分子量6,000、商品名PRX−413、東レ・ダウコーニング社製)100質量部に代えたほかは、変性オルガノポリシロキサン1と同様にして両端にメタクリルオキシプロピルジメトキシシリル基を有するポリジメチルシロキサンを製造した。
得られた反応物について1H−NMR分析を行い、ポリジメチルシロキサンの両末端がメタクリルオキシプロピルジメトキシシリル基であることを確認した。
得られたポリジメチルシロキサンを変性オルガノポリシロキサン2とする。
変性オルガノポリシロキサン2の重量平均分子量は15,000であった。
【0081】
(3)変性オルガノポリシロキサン3
原料としてポリジメチルシロキサンを両端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサン(重量平均分子量=60,000、商品名x−21−5848、信越化学工業社製)に代えたほかは変性オルガノポリシロキサン1と同様にして両端にメタクリルオキシプロピルジメトキシシリル基を有するポリジメチルシロキサンを製造した。
得られた反応物について1H−NMR分析を行い、ポリジメチルシロキサンの両末端がメタクリルオキシプロピルジメトキシシリル基であることを確認した。
得られたポリジメチルシロキサンを変性オルガノポリシロキサン3とする。
変性オルガノポリシロキサン3の重量平均分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算(以下同様)で、63,000であった。
【0082】
(4)変性オルガノポリシロキサン4
両端にヒドロキシ基を有するポリジメチルシロキサン(ss70)を、両端にヒドロキシ基を有するポリジメチルシロキサン(重量平均分子量=3,000、商品名KF−9701、信越化学工業社製)に代えた他は変性オルガノポリシロキサン1と同様にして両端にメタクリルオキシプロピルジメトキシシリル基を有するポリジメチルシロキサンを製造した。
得られた反応物について1H−NMR分析を行い、ポリジメチルシロキサンの両末端がメタクリルオキシプロピルジメトキシシリル基であることを確認した。
得られたポリジメチルシロキサンを変性オルガノポリシロキサン4とする。
変性オルガノポリシロキサン4の重量平均分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算(以下同様)で、6,000であった。
【0083】
2.硬化性シリコーン樹脂組成物の製造
下記第1表に示す成分を同表に示す量(質量部)で用いてそれらを真空機付攪拌機で均一に混合し、硬化性シリコーン樹脂組成物を製造した。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
第1表に示されている各成分は、以下のとおりである。
・シリコーンA−1:上記のようにして製造した変性オルガノポリシロキサン1
・シリコーンB−1:上記のようにして製造した変性オルガノポリシロキサン2
・シリコーンC−1:商品名x−22−164、信越化学工業社製、分子中にアルコキシシリル基がない、メタクリル変性ジメチルポリシロキサン、Mw=380、アクリル当量190g/mol
・シリコーンA−2:上記のようにして製造した変性オルガノポリシロキサン3
・シリコーンB−2:上記のようにして製造した変性オルガノポリシロキサン4
・シリコーンF−1:商品名x−22−164AS(信越化学工業社製)、分子量=900、アクリル当量450g/mol、構造式は下記式で表される。
【化19】

式中、a=10である。
・(D)ラジカル開始剤1:熱ラジカル開始剤、化合物名1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、商品名パーオクタO(日本油脂社製)
・(D)ラジカル開始剤2:光ラジカル開始剤、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)とベンゾフェノンとの共融混合物。商品名イルガキュア500(チバ社)
・縮合触媒1:ジオクチル錫化合物と正珪酸化合物とを混合した触媒(商品名U−780、日東化成社製)
・縮合触媒2:ジオクチル錫化合物と正珪酸化合物とを混合した触媒(商品名S−1、日東化成社製)
・縮合触媒3:化合物名モノブチルスズトリス(2−エチルヘキサノエート)(商品名SCAT−24、日東化成社製)
・(E)ビス(アルコキシシリル)アルカン:下記式で表されるビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン(商品名KBM666P、信越化学工業社製)
【化20】

・(F)ジメチルポリシロキサン:下記式で表される化合物(商品名ss−10、信越化学工業社製、Mw=42,000)
【化21】

・(G)アルコキシオリゴマー:商品名x−40−9246、信越化学工業社製、(Mw=6,000)
・(H)ナフテン酸ジルコニル:日本化学産業社製
・(I)エポキシシリコーン:エポキシ変性ポリシロキサン(商品名:KF101、信越化学工業社製)
・(J)カチオン重合触媒:BF3・Et2O(BF3エチルエテラート錯体、東京化成工業社製)
・(K)フィラー:ヒュームドシリカ、商品名アエロジル300、日本アエロジル社製
【0087】
3.評価
上記のようにして得た硬化性シリコーン樹脂組成物について、以下の方法で、密閉系初期硬化状態、透過率、透過率保持率、耐熱着色安定性、せん断接着力および破壊モード、せん断接着力評価を評価した。結果を第1表に示す。
<サンプルの作製>
サンプルの作製について添付の図面を用いて以下に説明する。
図1は、実施例において本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させるために使用した型を模式的に表す断面図である。
図1において、型8は、ガラス1(縦5cm、横5cm、厚さ4mm)と、ガラス1の上の離型紙3[離型紙としてポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルムを使用。以下同様。]と、離型紙3の上のシリコーン製のスペーサー5(正方形の外枠の形状を有する。高さ2mm)と、スペーサー5の上の離型紙4と、離型紙4の上のガラス2とを有する。型8の内部6は組成物6で満たされている。組成物6は硬化後硬化物6となる。型8はジグで固定されている(図示せず。)。
図2は、実施例において本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させるために使用した型8を部分的に分けて模式的に表す上面図である。
型8は、図2(A)に示すようにまずガラス1と離型紙3とスペーサー5とを重ね、内部6に組成物を流し、その後図2(B)に示す、離型紙4とガラス2とを、図2(A)のスペーサー5の上に重ねることによって得られる。
【0088】
<硬化条件>
(1)組成物が熱ラジカル開始剤を含有する場合
型8を電気オーブンに入れて、150℃で3時間加熱して硬化物を得た。
【0089】
(2)組成物が光ラジカル開始剤を含有する場合
型8に光照射装置(商品名:GS UVSYSTEM TYPE S250―01、ジーエス・ユアサ ライティング社製。光源としてメタルハイドロランプを使用し、積算光量1,800mJ/cm2で照射した。)で波長250〜380nmの紫外線を光量120mW/cmで40秒間照射し、積算光量1800mJ/cm2として、硬化物を得た。
【0090】
(3)組成物がカチオン重合触媒を含有する場合
型8を電気オーブンに入れて、80℃で1時間、さらにその後150℃で1時間加熱して硬化物を得た。
【0091】
<評価条件>
(1)密閉系初期硬化状態
型8を用いて組成物を上記の条件で硬化させ、初期の硬化状態を評価した。
評価基準は、表面が未硬化またはゲル状の場合を「×」、タックが無くなった場合を「○」とした。
【0092】
(2)透過率、透過率保持率
透過率評価試験において、型8を用いて組成物を上記の条件で硬化させて得られた初期硬化物、および耐熱試験(初期硬化物をさらに100℃の条件下で500時間加熱する試験)後の硬化物についてそれぞれ、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所社製)を用いて波長400nmにおける透過率を測定した。また、耐熱試験後の透過率の初期の透過率に対する保持率を下記計算式によって求めた。
透過率保持率(%)=(耐熱試験後の透過率)/(初期の透過率)×100
【0093】
(3)耐熱着色安定性
型8を用いて組成物を上記の条件で硬化させて得られた初期硬化物、および耐熱試験(初期硬化物を100℃の条件下で500時間加熱する試験)後の硬化物について、耐熱試験後の硬化物が、初期硬化物と比較して黄変したかどうかを目視で観察した。
【0094】
(4)せん断接着力および破壊モード
せん断接着力および破壊モードの評価に使用したせん断試験用試験片について添付の図面を用いて以下に説明する。
図3は、本発明において、せん断接着力および破壊モードの評価に使用したせん断試験用試験片を模式的に示す断面図である。
図3において、せん断試験用試験片20は、ガラス12(縦12cm、横2.5cm、厚さ4mm)とガラス14(大きさはガラス12と同じ。)との間に、スペーサー18(厚さが0.3mmであり、塗布面積が25mm×10mmとなるように内部が切り抜かれている。)を有し、内部16に組成物16が満たされている。組成物16は硬化後硬化物16となる。
図4は、本発明において、せん断接着力および破壊モードの評価に使用したせん断試験用試験片を模式的に示す上面図である。
せん断試験用試験片20は、図4(A)に示すようにまずスペーサー18をガラス12の上に置き、スペーサー18の枠内の内部16に組成物16を流し込み、次いで図4(B)に示すガラス14を図4(C)に示すようにスペーサー18の上に重ね、その後図4(C)に示すせん断試験用試験片20を熱硬化または光硬化させることによって得られる。
【0095】
このようにして得られたせん断試験用試験片を用いて、せん断引張試験(条件:23℃、RH55%)を行い、引張試験機を用いてせん断接着力を測定した。また、試験後の硬化物の破壊形態によって、ガラス間における接着性を評価した。
せん断接着力の評価基準は、せん断接着力が1.5MPa以上の場合を「○」、1.5MPa未満の場合を「×」とした。
また、破壊モードが凝集破壊である場合を「CF」、破壊モードが界面破壊である場合を「AF」とした。
【0096】
第1表に示す結果から明らかなように、シリコーンA〜C、ラジカル開始剤、ビス(アルコキシシリル)アルカンを含有しない比較例1(シラノール基とアルコキシ基との縮合のみによる硬化)は密閉系内で硬化させると縮合反応の副生成物であるアルコールが系内から抜けないため未硬化となった。シリコーンBおよびシリコーンCを含有しない比較例2、シリコーンAおよびシリコーンCを含有しない比較例3、シリコーンAおよびシリコーンBを含有しない比較例4、シリコーンCを含有しない比較例5、シリコーンAを含有しない比較例6、シリコーンBを含有しない比較例7は、接着性が低かった。エポキシシリコーンを含有する比較例8は耐熱着色安定性に劣った。ポリシロキサンAとフィラーとを含有する比較例9は透明性に劣った。ポリシロキサンCを含有しない比較例10、ポリシロキサンCの量が2質量部未満である比較例11、ポリシロキサンBの量が10質量部未満である比較例12は、接着性が低かった。シリコーンBを含有せず、シリコーンCの量が比較例7より多い比較例13は、初期硬化状態が白濁となり、透明性に劣った。
これに対して、実施例1〜13は、密閉系内において硬化阻害がなく硬化性に優れ、ガラスに対する接着性、経時での耐熱着色安定性、および透明性と接着強度(せん断強度1.5MPa以上)とのバランスに優れる。
【符号の説明】
【0097】
1、2、12、14 ガラス
3、4 離型紙
5、18 スペーサー
6、16 内部(組成物、硬化物)
8 型
20 せん断試験用試験片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量20,000〜200,000の、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンAを100質量部と、
重量平均分子量1,000以上20,000未満の、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンBを10質量部以上と、
重量平均分子量300以上1,000未満であり、(メタ)アクリル当量が450g/mol未満であり、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンCを2質量部以上と、
ラジカル開始剤とを含有する硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
前記シリコーンAが下記式(A1)で表され、前記シリコーンBが下記式(B1)で表される請求項1に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【化1】


(式中、R1はそれぞれ水素原子またはメチル基であり、R2はそれぞれ炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、R3はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜18の炭化水素基であり、R4はそれぞれ炭素原子数1〜8の2価の炭化水素基であり、nはそれぞれ1または2であり、mは270〜2,700の整数である。)
【化2】


(式中、R1はそれぞれ水素原子またはメチル基であり、R2はそれぞれ炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、R3はそれぞれ水素原子、炭素原子数1〜18の炭化水素基であり、R4はそれぞれ炭素原子数1〜8の2価の炭化水素基であり、nはそれぞれ1または2であり、mは14〜269の整数である。)
【請求項3】
前記シリコーンCが、下記式(3)、下記式(4)および下記式(5)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【化3】


[式(3)中、Rはそれぞれアルキル基であり、X1、X2はそれぞれ下記式(6)で表される基であり、aは0〜13の整数である。
式(4)中、Rはそれぞれアルキル基であり、X3は下記式(6)で表される基であり、aは0〜13の整数であり、bは1〜13の整数であり、a+bは1〜13である。
式(5)中、Rはそれぞれアルキル基であり、X1、X2、X3はそれぞれ下記式(6)で表される基であり、aは0〜13の整数であり、bは1〜13の整数であり、a+bは1〜13である。]
【化4】


[式(6)中、R1は水素基またはメチル基であり、R4は2価の炭化水素基である。]
【請求項4】
前記シリコーンA、前記シリコーンBおよび前記シリコーンCからなる群から選ばれる少なくとも1種が、1分子中に加水分解性基を含むシリル基および/またはシラノール基を1個以上有し、
さらに、縮合触媒を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
前記縮合触媒の量が、前記シリコーンA、前記シリコーンBおよび前記シリコーンCの合計100質量部に対して、0.01〜10質量部である請求項4に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、ビス(アルコキシシリル)アルカンを含有する請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項7】
前記ビス(アルコキシシリル)アルカンが、ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリメトキシシリル)ノナンおよび1,10−ビス(トリメトキシシリル)デカンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項8】
前記ビス(アルコキシシリル)アルカンの量が、前記シリコーンA:100質量部に対して、0.01〜10質量部である請求項6または7に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−21175(P2011−21175A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96325(P2010−96325)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】