説明

硬化性樹脂組成物およびフィルム

【課題】指紋が付着しても目立ちにくく、容易に拭き取りが可能であり、クリアタイプフィルムに適用可能な硬化性樹脂組成物およびフィルムを提供する。
【解決手段】多官能(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して、0.1〜50重量部の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(ただし、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートを除く)が配合され、さらに有機微粒子を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。また、該硬化性樹脂組成物をプラスチックフィルムに塗布し、硬化したことを特徴とするフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性樹脂組成物およびフィルムにおける、指紋等の付着による汚れの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックはその加工性、透明性等に加えて、軽量、安価といった特長を有することから、自動車業界、家電業界を始めとして種々の産業で使用されており、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイやタッチパネル、パーソナルコンピュータなどのディスプレイ用としても広く用いられている。しかし、ガラスと比較して柔らかく、表面が傷つきやすい等の欠点を有している。
【0003】
この欠点を改良するために、シリコーン系、またはアクリル系の樹脂バインダー中に、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、シリカなどの金属酸化物微粒子を配合したコート剤が用いられている。このコート剤はフィルムの表面に塗工して乾燥させた後に加熱、または紫外線にて硬化することにより、表面に傷が付きにくい硬化物を作製できる。
【0004】
一方、このようなコート層を設けたフィルムは指紋等の油分が付着しやすく、例えばディスプレイの表面保護フィルム等として用いた場合は指紋汚れが目立ち、ディスプレイの視認性を低下させる問題があった。そこで、コート層を撥油性にすることによって指紋等を付着しにくくし、付着した際にも容易に拭き取れるようにする試みがなされている。しかしながら、コート層を撥油性にしても完全に指紋の付着を防止することは困難であり、付着した指紋がコート層表面で油滴状となるため、かえって視認性が低下する問題が生じていた。つまり、汚れを拭き取りやすいが、汚れが目立つため拭き取りは頻繁に行う必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1〜3には、指紋等の油分とのなじみを向上させることで指紋等が付着しても目立ちにくく、拭き取りが容易なフィルムが開示されている。ただし、これらのフィルムはいわゆる防眩タイプであるため、フィルム自体に若干の曇り(ヘーズ)があり、指紋等をフィルムの曇りと区別できない程度に目立たなくすれば目的を達成できた。
【特許文献1】特開2008−285686号公報
【特許文献2】WO2004/046230号公報
【特許文献3】特開2007−58162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ディスプレイの保護フィルムとしては防眩タイプの他、画像の鮮鋭性を重視したクリアタイプが存在する。クリアタイプのフィルムはヘーズが小さいため、指紋等が僅かに付着しただけでも目立ってしまい、指紋を拭き取る際にも完全に拭き取らないと跡が目立ってしまう。特許文献1〜3に開示された方法では、クリアタイプフィルムでは十分な性能が得られないため、クリアタイプフィルムに適用可能なコート剤が求められている。
【0007】
本発明の課題は、表面硬度に優れ、指紋が付着しても目立ちにくく、クリアタイプフィルムに適用可能な硬化性樹脂組成物およびフィルムを提供することである。本発明の更なる課題は、指紋が付着しても容易に拭き取りが可能であり、クリアタイプフィルムに適用可能な硬化性樹脂組成物およびフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、多官能(メタ)アクリレート化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(ただし、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートを除く)を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物である。本発明の別の形態は、前記硬化性樹脂組成物をプラスチックフィルムに塗布し、硬化させたことを特徴とするフィルムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化性樹脂組成物を用いて形成したコート層は、指紋が付着しても目立ちにくいため、頻繁に拭き取りを行う必要がない。また、指紋等が目立つようになった場合であっても、容易に拭き取ることができる。コート層はクリアであるため、指紋汚れに強いクリアコート層を形成できる。さらに、本発明の硬化性樹脂組成物を塗布、硬化したフィルムは表面硬度にも優れるため、指紋汚れに強いクリアコートフィルムとなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の硬化性樹脂組成物は、多官能(メタ)アクリレート化合物を含有する。多官能(メタ)アクリレート化合物は(メタ)アクリレート基を複数有する化合物であり、具体的にはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、多官能ウレタンアクリレートのような変性化合物であっても良い。中でも、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートはコート層の耐擦傷性、透明性に優れることから好ましい。
【0011】
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物を前記多官能(メタ)アクリレート化合物とともに用いることにより、防指紋性を向上できる。水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの単量体や、水酸基を有する(メタ)アクリレート系オリゴマー、水酸基を有する(メタ)アクリレート系ポリマーなどが挙げられる。なお、本願においてジペンタエリスリトールペンタアクリレートは、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物から除く。水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の配合量は、前記多官能(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して、0.1〜50重量部とすることが好ましい。配合量を0.1重量部以上とすることで防指紋性が顕著に向上し、50重量部以下とすることでコート層の表面硬度の低下等の弊害を抑えることができる。
【0012】
硬化性樹脂組成物には、さらに有機微粒子を配合することが好ましい。有機微粒子の配合により、指紋等が付着した際に、さらに目立ちにくくすることができる。本発明に係る有機微粒子としては、スチレン系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などの有機微粒子が挙げられる。有機微粒子を合成する際は、単量体に対して多官能架橋剤を5重量%以上配合することが好ましい。5重量%以上とすることにより、微粒子が多官能重合性モノマー中に溶解しにくくなる。
【0013】
有機微粒子の平均一次粒子径は80〜500nmであることが好ましい。80nm以上であることにより、少量の添加でも指紋等を目立ちにくくする効果が発現しやすいため、ハードコート性能を維持することができる。500nm以下であることにより、ヘーズが上昇にくいため、視認性を維持することができる。有機微粒子の形状は、球状、数珠状が好ましく用いられるが、特にこれらに限定されない。尚、平均一次粒子径とは凝集を起こしていない単一の粒子の径であり、球状のものについてはその直径を、球状以外のものについては長軸径、短軸径の算術平均値を示し、電子顕微鏡により測定される値である。
【0014】
有機微粒子の合成方法は特に限定されないものの、前記条件を満たすためには乳化重合によって合成することが好ましい。乳化重合により合成された有機微粒子の表面は、重合開始剤やイオン性界面活性剤の吸着により親水性になっているため、疎水化処理を施さないと多官能重合性モノマー中に混合させることができない。有機微粒子表面の疎水化処理としては、半透析膜または適切な細孔をもつ膜を使用し水溶解性成分を膜外の水中へ溶出させる方法、イオン交換樹脂層を通して親水イオン性物質を除去させる方法、電気泳動の原理を応用した電気的な方法により脱着する方法、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の水可溶性塩類により塩析して非イオン性吸着層を脱着し、その後適切な細孔を有する膜等で親水性物質を粒子分散体から分離させる方法などが挙げられる。
【0015】
さらに、有機微粒子の疎水化処理だけではイオン性不純物を十分に除去することが難しいため、乳化重合時に媒体として使用した水を除去する方が好ましい。水を除去する方法としては、疎水化処理後の水容液中に非水系有機溶媒を添加していき、上部または下部に発生する透明な水の相を除去できる相分離法が好ましい。相分離に用いられる非水系有機溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、低分子流動パラフィン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット、ケロシン等の炭化水素、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、メチルエチルケトン、イソブチルケトンなどのケトン類が挙げられる。
【0016】
多官能(メタ)アクリレート化合物の樹脂固形分100重量部に対して、有機微粒子を1〜30重量部添加することが好ましく、5〜15重量部添加することがより好ましい。有機微粒子の添加量を1重量部以上とすることにより、指紋等が付着した際に目立ちにくくなる効果が顕著に発現する。また、有機微粒子の添加量が30重量部以下であれば、コート層の表面硬度の低下等の弊害を抑えることができる。
【0017】
本発明の硬化性樹脂組成物をクリアタイプフィルムに適用するため、プラスチックフィルムに塗布、硬化させた際にフィルム全体のヘーズが1以下であることが好ましい。具体的には、フィルムとして厚み100μmの易接着処理PETフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名A4300)を用い、硬化後の樹脂膜厚が5μmとなるように硬化性樹脂組成物を塗布、硬化させ、フィルム全体のヘーズが1以下となればよい。
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物には前記特性を損なわない範囲において、前記配合成分の他に、帯電防止剤、屈折率調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、光増感剤、レベリング剤、消泡剤、充填材、カップリング剤、防腐剤、可塑剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤、分散剤等の各種添加剤を配合できる。
【0019】
本発明の硬化性樹脂組成物を基材に塗布、硬化することにより、基材にクリアコート層を形成できる。基材としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、アクリル樹脂等、いずれも公知のものを用いることができる。形状としては、フィルムでも板でもよい。
【0020】
本発明の硬化性樹脂組成物のフィルムへの塗布方法、塗布厚みについては特に制限はなく、公知の方法、例えばグラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などを用いることができ乾燥後塗膜の厚みを20μm以下となるように塗布する。より好ましくは、2〜8μmである。
【0021】
本発明の硬化性樹脂組成物は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射したり、加熱することによって硬化させることができる。紫外線を照射する場合は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等を用い、100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域で、100〜800mJ/cmのエネルギーを有する紫外線を照射する。電子線を照射する場合は、走査型あるいはカーテン型の電子線加速器を用い、加速電圧1000keV以下、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線を照射する。
【0022】
紫外線硬化を行う場合には、各種重合開始剤を使用してもよい。具体的には、ラジカル型重合開始剤としてベンゾフェノン及び他のアセトフェノン、ベンジル、ベンズアルデヒド及びo−クロロベンズアルデヒド、キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、9,10−フェナントレンキノン、9,10−アントラキノン、メチルベンゾインエーテル、エチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、α,α−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシアセトフェノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオール−2−o−ベンゾイルオキシム及びα,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン等が挙げられる。市販品としては、イルガキュア−184、イルガキュア−651(チバ・ジャパン株式会社製、商品名)、ダロキュア−1173(メルク社製、商品名)などの光重合開始剤が挙げられる。添加量は多官能(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して1〜10重量部が好ましい。
【0023】
熱硬化を行なう場合には、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル、ジアセチルパーオキサイド、ジプロピルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ジカプリルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、p,p’−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジメトキシベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジメチルベンゾイルパーオキサイドなどの熱重合開始剤が挙げられる。添加量は多官能(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して1〜10重量部が好ましい。
【0024】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0025】
実施例1
多官能(メタ)アクリレート化合物としてKAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、商品名)100重量部に対し、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としてライトエステルHOA(共栄社化学株式会社製、2−ヒドロキシエチルアクリレート、商品名)10重量部配合し、有機微粒子スラリーとしてスタフィロイドEA−1135(ガンツ化成株式会社製、平均一次粒子径130nm、固形分19%、商品名)を固形分で10重量部配合し、重合開始剤としてイルガキュア184(チバ・ジャパン株式会社製、商品名)をKAYARAD DPHA100重量部に対して5重量配合し、さらに希釈溶媒としてメチルエチルケトンを配合することにより、固形分30%である実施例1の硬化性樹脂組成物を得た。
【0026】
実施例2
実施例1において、ライトエステルHOAの代わりに、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としてライトエステルHO(共栄社化学株式会社製、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、商品名)10重量部配合した他は実施例1と同様に行い、さらに希釈溶媒としてメチルエチルケトンを配合することにより、固形分30%である実施例2の硬化性樹脂組成物を得た。
【0027】
実施例3
実施例1において、ライトエステルHOAの代わりに、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としてPET−30(日本化薬株式会社製、商品名)を10重量部配合した他は実施例1と同様に行い、さらに希釈溶媒としてメチルエチルケトンを配合することにより、固形分30%である実施例3の硬化性樹脂組成物を得た。
【0028】
実施例4
実施例3において、PET−30の配合量を30重量部とした他は実施例3と同様に行い、さらに希釈溶媒としてメチルエチルケトンを配合することにより、固形分30%である実施例4の硬化性樹脂組成物を得た。
【0029】
実施例5
実施例3において、PET−30の配合量を50重量部とした他は実施例3と同様に行い、さらに希釈溶媒としてメチルエチルケトンを配合することにより、固形分30%である実施例5の硬化性樹脂組成物を得た。
【0030】
実施例6
実施例1において、ライトエステルHOAの代わりに、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としてMA−05X−P1(ハリマ化成株式会社製、商品名)を0.1重量部配合した他は実施例1と同様に行い、さらに希釈溶媒としてメチルエチルケトンを配合することにより、固形分30%である実施例6の硬化性樹脂組成物を得た。
【0031】
実施例7
実施例6において、MA−05X−P1の配合量を1重量部とした他は実施例6と同様に行い、さらに希釈溶媒としてメチルエチルケトンを配合することにより、固形分30%である実施例7の硬化性樹脂組成物を得た。
【0032】
実施例8
実施例6において、MA−05X−P1の配合量を5重量部とした他は実施例6と同様に行い、さらに希釈溶媒としてメチルエチルケトンを配合することにより、固形分30%である実施例8の硬化性樹脂組成物を得た。
【0033】
実施例9
実施例6において、MA−05X−P1の配合量を10重量部とした他は実施例6と同様に行い、さらに希釈溶媒としてメチルエチルケトンを配合することにより、固形分30%である実施例9の硬化性樹脂組成物を得た。
【0034】
実施例10
実施例2において、スタフィロイドEA−1135を配合しなかった他は実施例2と同様に行い、さらに希釈溶媒としてメチルエチルケトンを配合することにより、固形分30%である実施例10の硬化性樹脂組成物を得た。
【0035】
比較例1
実施例10において、ライトエステルHOを配合しなかった他は実施例10と同様に行い、さらに希釈溶媒としてメチルエチルケトンを配合することにより、固形分30%である実施例10の硬化性樹脂組成物を得た。
【0036】
比較例2
ライトエステルHOA 100重量部に対し、重合開始剤としてイルガキュア184を5重量配合し、さらに希釈溶媒としてメチルエチルケトンを配合することにより、固形分30%である比較例2の硬化性樹脂組成物を得た。
【0037】
試験評価方法
実施例1〜10、比較例1、2の各硬化性樹脂組成物を厚み100μmの易接着処理PETフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名A4300)に硬化後の樹脂膜厚が5μmとなるように塗布し、乾燥することによって溶剤を揮発させた後、紫外線照射機を用いて1500mW/cmの照射強度で仕事量が300mJ/cmの紫外線処理を行うことによりコートフィルムを作成し、以下の方法で試験評価を行った結果を表1に記載した。
(1)フィルム全体のヘーズ値(Hz)
JIS K 7136(2000年版)の規定に基づき、ヘーズメータ(株式会社東洋精機製作所製、ヘーズガードII)を用いて測定した。
(2)全光線透過率(Tt)
JIS K 7361−1(1997年版)の規定に基づき、ヘーズメータ(株式会社東洋精機製作所製、ヘーズガードII)を用いて測定した。
(3)指紋汚れの目立ちにくさ
オリーブオイル20%、ココナッツオイル20%、バルチミン酸10%、ステアリン酸5%、オレイン酸15%、パラフィンワックス10%、スクアレン5%、脂肪酸セチル15%、コレステロール5%からなる人工皮脂を調製し、さらにトルエンで人工皮脂を50%に希釈することにより、人工皮脂溶液を調製した(割合は重量基準)。#4バーコーター(塗布厚約9μm)を用いて人工皮脂溶液をPETフィルム上に塗布し、110℃で10分間乾燥させることによってPETフィルム上に人工皮脂層を形成した。直径1.5cmのシリコン栓を2kgfの荷重で10秒間人工皮脂層に押し付け、シリコン栓に人工皮脂を付着させた。人工皮脂を付着させたシリコン栓を2kgfの荷重で10秒間コートフィルムに押し付けることにより、人工皮脂を付着させた。前記作業を繰り返して各コートフィルムに人工指紋を3ヵ所ずつ付着させた。各付着部位毎に2ヶ所、計6ヶ所について前記方法でヘーズ値を測定することによって人工指紋付着によるヘーズ値の差を算出し、最大値と最小値を除いた値の平均値を以下のように3段階で評価した。
◎:目立たない(ヘーズ差 1.5%以下)
○:ほとんど目立たない(ヘーズ差 1.6〜2.5%以下)
×:目立つ(ヘーズ差 2.6%以上)
(4)接触角
表面接触角測定装置(協和界面科学株式会社製、CA−X型接触角計)を用いて、オレイン酸の接触角及び水の接触角を測定した。
(5)指紋拭き取り性
ワイピングクロス(日本製紙クレシア株式会社製、商品名キムワイプ)を用いて指紋付着部を500g荷重でラビングし、指紋が目視にて確認できなくなる回数を測定し、以下のように指紋の拭き取り性を判定した。
◎:5往復以内
○:6〜10往復
×:11往復以上
(6)鉛筆硬度
JIS K 5600の規定に基づき、斜め45度に固定した鉛筆の真上から荷重をかけて引っ掻き試験を行い、傷の付かない鉛筆硬度を表示した。
(7)耐スチールウール性(耐SW性)
#0000スチールウールを用いて荷重2kgfでコートフィルム表面を10往復し、傷の本数を確認して以下のように評価した。
○:傷なし
×:傷あり
【0038】
【表1】

【0039】
表1に記載のように、実施例1〜10はいずれも指紋汚れが目立ちにくく、特に有機微粒子を配合した実施例1〜9は指紋汚れの目立ちにくさに優れていた。また、実施例1〜10はいずれも光学特性、表面硬度とも良好であり、クリアタイプフィルムとして適している。比較例1は指紋の目立ちにくさ、拭き取り性とも劣っており、比較例2については粘着状の皮膜が形成され、表面硬度が全く適さないものであった。なお、表1記載の配合はDPHA、各水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、EA−1135のみ記載しており、固形分を基準としている。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の硬化性樹脂組成物及び該硬化性樹脂組成物をプラスチックフィルムに塗布し、硬化したフィルムは、指紋が付着しても目立ちにくく表面硬度にも優れるため、指紋汚れに強いクリアコートフィルムとなる。このクリアコートフィルムは、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイやタッチパネル、パーソナルコンピュータなどのディスプレイ用途に好適である。また、実施例1〜9に示されるように、有機微粒子を含有することによって、指紋汚れの目立ちにくさをさらに向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能(メタ)アクリレート化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(ただし、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートを除く)を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記多官能(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して、前記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(ただし、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートを除く)が0.1〜50重量部配合されていることを特徴とする請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、有機微粒子を含有することを特徴とする請求項1または2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載に硬化性樹脂組成物をプラスチックフィルムに塗布し、硬化させたことを特徴とするフィルム。

【公開番号】特開2010−229287(P2010−229287A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78320(P2009−78320)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】