説明

硬化性組成物及び光学部材

【課題】高屈折率の光学部材を容易に形成できる室温で液体の硬化性組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)又は(2)で示される硫黄含有ラジカル重合性化合物を含有する光学部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材、及び光学部材を製造するための硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、ガラス等の無機材料からなるレンズに比べて、軽量で割れ難い等の特長を有するため、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の用途に広く用いられている。
近年、眼鏡レンズの中心厚が小さくなる傾向がある等の事情の下、プラスチックレンズの材料として、より高い屈折率を有する光学用樹脂が望まれている。
また、UV硬化材料は、無溶剤、低粘度のフォーミュレーションが可能なことから、高い生産性で複雑な形状を有する製品を製造する方法に用いるための材料として有用であり、近年、パソコン、液晶テレビ、携帯電話等のディスプレイ関連材料としても幅広く利用されている。プラスチック光学材料の需要が高まるにつれ、UV硬化樹脂には、従来の速硬化、高硬度、接着性等といった機能のほかに、硬化物の屈折率制御が求められてきている。
このような高い屈折率を有する光学用樹脂(重合体)を得るために、硫黄原子を含有する化合物を単量体として用いることが知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−211021号公報
【特許文献2】特開平8−325337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、高い屈折率を得られる(メタ)アクリレート化合物は常温で固体又は高粘度であり、光学用樹脂調製時には多量の希釈モノマーが必要であり、希釈モノマーの屈折率が低いため、得られた硬化性組成物の屈折率は低くなるという問題があった。
本発明は、高い屈折率を有しながら室温では液体であるため、容易に光学部材を形成することのできる硬化性組成物、及びその硬化体から得られる光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明者らは、高い屈折率を有する重合体(硬化体)を形成することができるという特性を有しながら室温では液体である化合物を鋭意探索し、特定の構造を有する硫黄含有ラジカル重合性化合物を含有する硬化性組成物を見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は下記の光学部材、及び該光学部材を得るための硬化性組成物を提供する。
1.下記一般式(1)及び下記一般式(2)で示される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種を有する樹脂を含有する光学部材。
【化1】

[式(1)中、R及びRは水素原子又はメチル基を示し、m及びnは1〜4の整数を示す。]
【化2】

[式(2)中、R及びRは水素原子又はメチル基を示し、p及びqは1〜4の整数を示す。]
2.さらに、周期律表第4族元素の酸化物を主成分とする、数平均粒子径が1〜100nmの粒子を含有する上記1に記載の光学部材。
3.前記粒子が、酸化チタン又は酸化ジルコニウムを主成分とする粒子である上記2に記載の光学部材。
4.固体画像素子の集光材用である上記1〜3のいずれかに記載の光学部材。
5.ディスク集光材用である上記1〜3のいずれかに記載の光学部材。
6.下記一般式(3)及び下記一般式(4)で示される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有する硬化性組成物。
【化3】

[式(3)中、R及びRは水素原子又はメチル基を示し、m及びnは1〜4の整数を示す。]
【化4】

[式(4)中、R及びRは水素原子又はメチル基を示し、p及びqは1〜4の整数を示す。]
7.ラジカル重合開始剤を含有する上記6に記載の硬化性組成物。
8.さらに、周期律表第4族元素の酸化物を主成分とする、数平均粒子径が1〜100nmの粒子を含有する上記6又は7に記載の硬化性組成物。
9.前記粒子が、酸化チタン又は酸化ジルコニウムを主成分とする粒子である上記8に記載の硬化性組成物。
10.さらに、界面活性剤を含有する上記6〜9のいずれかに記載の硬化性組成物。
11.さらに、有機溶剤を含有する上記6〜10のいずれかに記載の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光学部材は、高い屈折率を有するため、レンズ(例えば、眼鏡レンズ、カメラレンズ等)の材料、ナノインプリント用材料、光学接着剤等の用途、導波路、記録材料に好適に使用される。
本発明の硬化性組成物は、高い屈折率を有する硬化体を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の硬化性組成物、及び光学部材について具体的に説明する。
I.硬化性組成物
本発明の硬化性組成物は、下記成分を含み得る。
(A)下記式(3)及び(4)で示される化合物からなる群から選択される少なくとも1種(以下、硫黄含有ラジカル重合性化合物という)
【化5】

[式(3)中、R及びRは水素原子又はメチル基を示し、m及びnは1〜4の整数を示す。]
【化6】

[式(4)中、R及びRは水素原子又はメチル基を示し、p及びqは1〜4の整数を示す。]
(B)ラジカル重合性化合物
(C)無機粒子
(D)光ラジカル重合開始剤
(E)界面活性剤
(F)有機溶剤
(G)その他添加剤
以下、上記各成分について説明する。
【0009】
(A)硫黄含有ラジカル重合性化合物
本実施形態の硬化性組成物は、下記式(3)及び(4)で示される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の硫黄含有ラジカル重合性化合物を含有する。
【0010】
【化7】

[式(3)中、R及びRは水素原子又はメチル基を示し、m及びnは1〜4の整数を示す。]
【0011】
【化8】

[式(4)中、R及びRは水素原子又はメチル基を示し、p及びqは1〜4の整数を示す。]
【0012】
上記式(3)及び式(4)で示される硫黄含有ラジカル重合性化合物は、2個の芳香環が硫黄原子を介して結合した構造を有するため、これらを重合させてなる重合体は高屈折率となる。
上記式(3)及び式(4)中、m、n、p及びqはそれぞれ1〜4の数である。m、n、p及びqが5以上になると、得られる重合体の屈折率が低下するため好ましくない。
上記式(3)及び式(4)で示される硫黄含有ラジカル重合性化合物は、常温で液体であり、光学用樹脂調製時に希釈モノマーや溶剤を用いる必要が無いため、これを重合して得られる硬化体の屈折率を高く保持することができる。
【0013】
上記式(3)及び式(4)で示される硫黄含有ラジカル重合性化合物は、合成例に記載の方法で製造することができる。
【0014】
本実施形態の硬化性組成物における硫黄含有ラジカル重合性化合物の含有量は、有機溶剤を除く硬化性組成物の成分全量を100質量%として、5質量%以上100質量%以下であることが好ましく、10質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。5質量%未満であると、硫黄含有ラジカル重合性化合物の有する高屈折率化の効果が十分に得られないおそれがある。
【0015】
(B)ラジカル重合性化合物
本発明の硬化性組成物には、上記の硫黄含有ラジカル重合性化合物の他に、任意成分として硫黄を含有しないラジカル重合性化合物を配合することもできる。ラジカル重合性化合物の機能の一つとしては、硬化性組成物に光が照射された際に、重合して高分子量化することや架橋構造を形成することが挙げられる。これにより、硬化物の硬度を向上させることができる。尚、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基又はメタアクリロイル基を指し、「分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する」とは、該分子内に存在するアクリロイル基及びメタアクリロイル基の合計が2以上であることを指す。
【0016】
分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物としては、以下のものを例示することができる。
分子内に2つの(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物としては、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フルオレンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
分子内に3つの(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等が挙げられる。
【0018】
分子内に4つの(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
分子内に5つの(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物としては、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
分子内に6つの(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
本実施形態で用いるラジカル重合性化合物は、さらに7つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であってもよい。また、本実施形態で用いるラジカル重合性化合物は、上記ラジカル重合性化合物のうち、水酸基を有する(メタ)アクリレート類、及びこれらの水酸基へのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物のポリ(メタ)アクリレート類であってもよい。さらに、本実施形態で用いるラジカル重合性化合物としては、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば、オリゴエステル(メタ)アクリレート類、オリゴエーテル(メタ)アクリレート類、及びオリゴエポキシ(メタ)アクリレート類等を用いることができる。
本実施形態で用いるラジカル重合性化合物としては、これらの中では、(p−フェニレンスルファニル)エチルアクリレートが、屈折率に優れる点でより好ましい。
【0020】
以上例示したラジカル重合性化合物の市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製アロニックスM−400、M−404、M−408、M−450、M−305、M−309、M−310、M−315、M−320、M−350、M−360、M−208、M−210、M−215、M−220、M−225、M−233、M−240、M−245、M−260、M−270、M−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−221、M−203、TO−924、TO−1270、TO−1231、TO−595、TO−756、TO−1343、TO−902、TO−904、TO−905、TO−1330、日本化薬株式会社製KAYARAD D−310、D−330、DPHA、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、SR−295、SR−355、SR−399E、SR−494、SR−9041、SR−368、SR−415、SR−444、SR−454、SR−492、SR−499、SR−502、SR−9020、SR−9035、SR−111、SR−212、SR−213、SR−230、SR−259、SR−268、SR−272、SR−344、SR−349、SR−601、SR−602、SR−610、SR−9003、PET−30、T−1420、GPO−303、TC−120S、HDDA、NPGDA、TPGDA、PEG400DA、MANDA、HX−220、HX−620、R−551、R−712、R−167、R−526、R−551、R−712、R−604、R−684、TMPTA、THE−330、TPA−320、TPA−330、KS−HDDA、KS−TPGDA、KS−TMPTA、共栄社化学株式会社製ライトアクリレート PE−4A、DPE−6A、DTMP−4A、大阪有機化学工業株式会社製PhSEA、ビスコート#802;トリペンタエリスリトールオクタアクリレート及びトリペンタエリスリトールヘプタアクリレートの混合物等を挙げることができる。
【0021】
本実施形態の硬化性組成物におけるラジカル重合性化合物の配合量は、有機溶剤を除く硬化性組成物の成分全量を100質量%として、20質量%以下が好ましい。ラジカル重合性化合物が上記範囲で配合されることで、高硬度な硬化膜又は硬化体を得ることが可能となるが、20質量%を超えて配合すると得られる硬化膜又は硬化体の屈折率が低くなるため好ましくない。
【0022】
(C)無機粒子
本実施形態の硬化性組成物は、任意成分として金属酸化物を主成分とする無機粒子を含むことができる。無機粒子の機能の一つとしては、硬化性組成物が硬化された場合に、硬化された硬化性組成物(以下、これを硬化体ということがある。)の屈折率を高くすることが挙げられる。
【0023】
本実施形態で用いる無機粒子は、金属酸化物が主成分として構成される範囲で、例えば表面修飾等が施されていてもよい。表面修飾としては、例えば、酸化ケイ素による被覆や、各種の有機化合物による被覆が挙げられる。このような表面修飾は、例えば、硬化性組成物中における無機粒子の分散性の向上等を目的として行われることができる。
ここで、「金属酸化物を主成分として構成される」とは、金属酸化物以外に上記のような表面修飾に用いられる化合物や、アルカリ金属塩等の微量の成分を含んでいてもよいことを意味する。尚、粒子中の金属酸化物の割合は80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0024】
本実施形態で用いる無機粒子の主成分となる金属酸化物としては、屈折率が2以上である金属酸化物、例えば、酸化チタン(屈折率2.2〜2.7)、酸化ジルコニウム(屈折率2.1)、酸化ハフニウム(屈折率2.0)、酸化ニオブ(屈折率2.1〜2.3)、酸化タンタル(屈折率2.0〜2.3)、酸化タングステン(屈折率2.2)、酸化セリウム(屈折率2.2)、酸化亜鉛(屈折率1.9〜2.0)、酸化インジウム(屈折率2.0)、及び酸化スズ(屈折率2.0)等を挙げることができる。これらの金属酸化物は、二種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
本実施形態で用いる無機粒子の主成分である金属酸化物は、屈折率のより高いものが好ましく、また、微粒子化(製造)が比較的容易なものとして、上記例示したもののうち、周期律表第4族の元素の酸化物、即ち、酸化チタン、酸化ジルコニウム、及び酸化ハフニウムが好ましい。さらに、これらのうち本実施形態の無機粒子の主成分である金属酸化物として、特に好ましくは、特に屈折率が大きく、市販品の種類が多いために、入手がしやすいという点で酸化チタンが挙げられる。
無機粒子が酸化チタンを主成分として形成される場合は、アナターゼ型の結晶構造有する二酸化チタンを含むことがさらに好ましい。このような無機粒子は、高い屈折率と、硬化性組成物中において分散性をより良好にすることができるため、例えば、無機粒子の硬化性組成物に対する含有量を低減することができ、また例えば、硬化体の屈折率を効率的に高めることができる。
【0026】
尚、金属酸化物の金属元素の価数は、化学量論の価数であってもよく、また、化学量論の価数からずれていてもよい。例えば、本明細書では、酸化チタンという表現は、二酸化チタン(TiO)を指すだけでなく、TiO(xは2の近傍の値)を包含する概念である。また、本明細書では、酸化チタンという表現は、酸化チタンの水和物も含む。
また、本明細書において、屈折率とは、波長633nm、23℃で測定した屈折率を指すものとする。尚、本明細書において「高屈折率」とは、1.8以上の屈折率を指す。
【0027】
本実施形態で用いる無機粒子の大きさは、数平均粒子径として、1nm以上100nm以下であることが好ましい。無機粒子の数平均粒子径が100nm以下であると、硬化性組成物の硬化体における屈折率を高めるとともに、透明性を高めることができる。また、無機粒子の数平均粒子径が1nm未満になると、量子的な効果が発現する場合があるため、硬化体を形成した場合の特性に影響を及ぼす場合がある。また、無機粒子のさらに好ましい大きさは、数平均粒子径において5nm以上50nm以下の範囲である。
無機粒子の数平均粒子径は、粒度分布計による粒径頻度分布から測定することができる。粒度分布計による方法では、無機粒子が分散されている溶液を、レーザ回折法や散乱法を用いて測定して、粒径頻度分布を求めることができる。本発明で、「数平均粒子径として1nm以上100nm以下である」とは、粒径頻度分布において、累積頻度が50%となる中心粒径(体積基準のメジアン径:d50)が1nm以上100nm以下の範囲にあることを意味する。
【0028】
無機粒子の形状は、特に限定されないが、球状、回転楕円体状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、不定形状であってよく、好ましくは、球状である。これらいずれの形状であっても上述の方法によって数平均粒子径を測定することができる。
【0029】
無機粒子としては、例えば、酸化チタン粒子(例えば、シーアイ化成株式会社から商品名「Nanotek」として入手可能)を、ボールミル等の装置によって粉砕又は分散させた粉体又は分散体として製造することができる。また、無機粒子は、分散体の市販品として調達することができる。無機粒子として用いることができる粒子の市販品の例としては、例えば、酸化ケイ素被覆アナターゼ型酸化チタン−メタノール分散ゾル(触媒化成工業株式会社製、オプトレイクシリーズ)、酸化ケイ素被覆−酸化スズ含有ルチル型酸化チタン−メタノール分散ゾル(テイカ株式会社製、TSシリーズ)、酸化ジルコニウム−メチルエチルケトン分散ゾル(住友大阪セメント株式会社製、HXU−120JC)、n−Sol−101−20PM(米国NanaoGram社製)、NOD−742GTF(ナガセケミテック社製)等が挙げられる。
【0030】
本実施形態の硬化性組成物における無機粒子の含有量は、有機溶剤を除く硬化性組成物の成分全量を100質量%として、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。無機粒子の含有量が前記範囲内になることで、高硬度かつ高屈折率な硬化体を得ることができる。
【0031】
本実施形態の硬化性組成物は、上述の無機粒子を含む、そのため、硬化性組成物が硬化された硬化体は、屈折率が高く、良好な透明性を有することができる。ここで、硬化体の透明性とは、赤外線、近赤外線、可視光線、紫外線等の電磁波を透過する性質のことを指し、例えば、目視により評価され、定量的には、分光光度計等によって測定することができる。
【0032】
(D)ラジカル重合開始剤
本発明の硬化性組成物は、任意成分としてラジカル重合開始剤を含有することもできる。ラジカル重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤を用いることができる。光ラジカル重合開始剤を用いる場合には、必要に応じて、光増感剤を併用することもできる。
【0033】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォフフィンオキシド;IRUGACURE184、369、651、500、907、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61(以上、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製);LucirinLR8728(BASF製);Darocure1116、1173(以上、メルク製);ユベクリルP36(UCB製)等が挙げられる。これらの中では、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が好ましい。また、光増感剤としては、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル;ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB製)等が挙げられる。
【0034】
熱ラジカル重合開始剤としては、加熱により分解してラジカルを発生して重合を開始するものであれば特に制限はなく、例えば、過酸化物、アゾ化合物を挙げることができ、具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。
【0035】
本発明の硬化性組成物に含まれるラジカル重合開始剤の量は、溶剤を除いた成分全体を100質量%として10質量%以下であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましい。ラジカル重合開始剤の配合量が10質量%を超えると硬化物が着色したり、強度が低下するおそれがある。
【0036】
(E)界面活性剤
本実施形態の硬化性組成物は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、例えば、シリコーン系、オルガノポリシロキサン系等のケイ素系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウリレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤、アクリル系又はメタクリル系の重合物からなる界面活性剤等が挙げられる。
【0037】
好ましい界面活性剤としては、ケイ素系界面活性剤を挙げることができる。ケイ素系界面活性剤としては、シロキサン構造を有するケイ素系界面活性剤、例えば、オルガノポリシロキサン系界面活性剤、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体構造を有するケイ素系界面活性剤を挙げることができる。ポリジメチルシロキサンを基本骨格とし、ポリオキシアルキレン基が付加された、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体は、例えば、東レダウコーニング株式会社から、商品名:SH190、SH28PA、ペインタッド19、54、SF8428等として入手することができる。
【0038】
また、好ましいフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロエチレンオキシド系界面活性剤又はフッ素原子含有エチレン性不飽和単量体を主成分として共重合したパーフルオロアルキル基含有オリゴマー系界面活性剤を挙げることができる。
【0039】
また、フッ素原子含有エチレン性不飽和単量体を主成分として共重合したパーフルオロアルキル基含有オリゴマー系界面活性剤として、特に好ましいのはフッ素原子含有エチレン性不飽和単量体とはしご状構造を含有するエチレン性不飽和単量体と、必要に応じて架橋性エチレン性不飽和単量体とポリオルガノシロキシル基含有エチレン性不飽和単量体と、を共重合したパーフルオロアルキル基含有オリゴマー系界面活性剤も本実施形態の硬化性組成物に好適に用いることができる。
【0040】
フッ素系の界面活性剤の例としては、たとえば、メガファックF−114、F410、F411、F450、F493、F494、F443、F444、F445、F446、F470、F471、F472SF、F474、F475、R30、F477、F478、F479、F480SF、F482、F483、F484、F486、F487、F553、F172D、F178K、F178RM、ESM−1、MCF350SF、BL20、R08、R61、R90(大日本インキ化学工業社製)が挙げられる。
【0041】
本実施形態の硬化性組成物に界面活性剤を配合する場合には、上述した界面活性剤を1種単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の硬化性組成物に界面活性剤を配合する場合には、界面活性剤の好ましい含有量は、有機溶剤を除く硬化性組成物の成分全量を100質量%として、5質量%以下、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。界面活性剤の配合量が上記好ましい配合量未満であると、例えば、硬化性組成物に、塗布性や濡れ性といった機能を十分に発現させることができない場合がある。また、界面活性剤の配合量が上記好ましい配合量を超えると、硬化性組成物の非架橋成分が増加することにより硬化体の強度が低下するおそれがある。
【0042】
(F)有機溶剤
本実施形態の硬化性組成物は、用途に応じて有機溶剤を含むことができる。有機溶剤の幾つかの機能としては、硬化前の硬化性組成物の粘度等を調節して、例えば、基材等への塗布性を向上させたり、操作性、成形性を向上させることが挙げられる。例えば、硬化性組成物の硬化体を光機能膜として使用する場合には、硬化前の硬化性組成物を成膜する基材等に塗布する場合があるが、このような場合の硬化性組成物の粘度としては、例えば、0.1mPa・s以上50,000mPa・s以下(25℃)が好ましく、より好ましくは、0.5mPa・s以上10,000mPa・s(25℃)である。
【0043】
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられる。
【0044】
また、本実施形態の硬化性組成物には、上記有機溶剤を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本実施形態の硬化性組成物において用いられる有機溶剤の配合量は、硬化性組成物の粘度等を考慮して適宜決めることができる。尚、無機粒子を分散液として取り扱う場合には、当該分散液中の分散媒を含んで本実施形態の有機溶剤とすることができる。
【0045】
(G)その他添加剤
本発明の硬化性組成物には、上記成分の他、求められる特性、性能に応じて下記の各種の添加剤を配合することができる。添加剤の例としては、酸化防止剤、増感剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0046】
本実施形態の硬化性組成物は、粘度が低く、容易に所望の形状を有する硬化体を製造することができる。得られる硬化体は、高屈折率及び高透過率を有する。
【0047】
II.光学部材
本発明の光学部材は、上記本発明の硬化性組成物を硬化させることにより得ることができる。上記硬化性組成物を硬化させることにより、上記硫黄含有ラジカル重合性化合物が重合し、下記一般式(1)及び下記一般式(2)で示される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種を有する樹脂が形成される。本発明の光学部材はこの樹脂を含有することを特徴とする。
【0048】
【化9】

[式(1)中、R及びRは水素原子又はメチル基を示し、m及びnは1〜4の整数を示す。]
【0049】
【化10】

[式(2)中、R及びRは水素原子又はメチル基を示し、p及びqは1〜4の整数を示す。]
【0050】
上記式(1)及び式(2)中、m、n、p及びqはそれぞれ1〜4の数である。m、n、p及びqが5以上になると、得られる重合体の屈折率が低下するため好ましくない。
【0051】
本発明の光学部材は、上記硬化性組成物を、スピンコート、バーコート、ダイコート、グラビアコート、インクジェット等の公知の方法で基材に塗布し、又は、型に流し込み、光照射又は加熱することで形成することができる。
光照射で硬化する条件は、塗布した硬化性組成物の厚さにも依るが、例えば、1μmの厚さに塗布した場合、紫外線を0.1〜10J/cm照射すればよい。
加熱により硬化する条件は、熱ラジカル重合開始剤が分解してラジカルを発生する温度であれば硬化させることができるが、短時間で硬化させるために60〜120℃に加熱することも好ましい。加熱時間は、加熱温度や硬化物の厚さ、大きさにも依るが、数μm厚のフィルム状である場合は1分〜1時間、1cm角の立方体程度の大きさの場合、30分〜3時間程度加熱することが好ましい。
【0052】
上記のようにしてラジカル重合によって得られる樹脂は、波長633nmにおける屈折率が高く、波長400nmにおける透過率が高いため、それを含有してなる本発明の光学部材は、固体画像素子の集光材料やディスク集光材料として特に有用である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0054】
[合成例1]2,7−ジフルオロチアントレンの合成
【化11】

【0055】
攪拌機及び窒素導入管を備えた反応容器に、4−フルオロベンゼンチオール(25.16g、0.196mol)に発煙硫酸290〜350mLを加え、室温で12〜24時間反応させた。反応液を500mLの冷水に注ぎ、析出物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾別後、ジクロロメタンを減圧留去し、得られた固体を500mLの熱酢酸に溶解させた。この溶液に亜鉛粉末(11.5g)を加え18時間加熱還流した。亜鉛粉末を濾別し、溶液に500mLの水を添加し固体を析出させた。得られた白色の固体はエタノールを用いて再結晶し精製した。
融点:156.2℃(DSC)
FT−IR(KBr、cm−1):1592.9、1454.1、1253.5、1207.2、894.8、856.2、802.2
H−NMR(300MHz、DMSO−d、ppm):6.96−7.03(m、2H)、7.22−7.25(m、2H)、7.41−7.45(m、2H)
【0056】
[合成例2]2,7−ビス[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]チアントレンの合成
【化12】

【0057】
攪拌機、還流冷却器、及び窒素導入管を備えた反応容器にメルカプトエタノール(4.25g,54.5mmol)、t−ブトキシドカリウム(6.12g、54.5mmol)、DMF(50mL)を加え、室温で1時間攪拌した。その後、合成例1で合成した2,7−ジフルオロチアントレン(5.5g、21.8mmol)を加え、120℃で12時間加熱攪拌した。反応後、溶液を冷水に注ぎ、析出した固体を濾取、水洗した。得られた固体はトルエンで再結晶し精製した。
収量6.0g
収率74.6%
H−NMR(300MHz、DMSO−d、ppm):7.40(s、2H)、7.36(d、2H)、7.17(d、2H)、3.44(m、4H)、2.96(t、4H)
【0058】
[合成例3]2,7−ビス[(2−アクリロイルオキシエチル)スルファニル]チアントレンの合成
【化13】

【0059】
攪拌機、還流冷却器、及び窒素導入管を備えた反応容器に合成例2で合成した2,7−ビス[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]チアントレン(1.84g、5.0mmol)、乾燥THF(30mL)、N,N−ジメチルアニリン(1.82g、15.0mmol)を加え、0℃まで冷却した。この溶液にTHF(10mL)で希釈したアクリル酸クロライド(1.81g、20.0mmol)を滴下した。滴下後、室温で24時間攪拌し反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え反応を停止させた。反応液を水で希釈し、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、淡黄色の油状物質を得た。
収量1.56g
収率65.5%
H−NMR(300MHz、DMSO−d、ppm):7.59(s,2H)、7.48(d、2H)、7.35(d、2H)、6.25(d、2H)、6.08(m、2H)、5.87(d、2H)、4.28(t、4H)、3.32(t、4H)
【0060】
[合成例4]3,6−ビス[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]チアントレンの合成
【化14】

【0061】
合成例2で用いた2,7−ジフルオロチアンスレンの代わりに、3,6−ジフルオロチアンスレンを用いた他は、合成例2と同様の方法で合成を行い、3,6−ビス[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]チアントレンを得た。
収量:5.50g
収率:68.4%
H−NMR(300MHz、DMSO−d、ppm):7.45(s、2H)、7.30(d、2H)、7.10(d、2H)、3.43(m、4H)、2.92(t、4H)
【0062】
[合成例5]3,6−ビス[(2−アクリロイルオキシエチル)スルファニル]チアントレンの合成
【化15】

【0063】
合成例3で用いた2,7−ビス[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]チアントレンの代わりに、3,6−ビス[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]チアントレンを用いた他は、合成例3と同様の方法で合成を行い、3,6−ビス[(2−アクリロイルオキシエチル)スルファニル]チアントレンを得た。
収量1.28g
収率53.7%
H−NMR(300MHz、DMSO−d、ppm):7.50(s,2H)、7.47(d、2H)、7.30(d、2H)、6.24(d、2H)、6.10(m、2H)、5.85(d、2H)、4.27(t、4H)、3.30(t、4H)
【0064】
[合成例6]2,7−ビス[(2−メタクリロイルオキシエチル)スルファニル]チアントレンの合成
【化16】

【0065】
合成例3で用いたアクリル酸クロライドの代わりに、メタクリル酸クロライドを用いた他は、合成例3と同様の方法で合成を行い、2,7−ビス[(2−メタクリロイルオキシエチル)スルファニル]チアントレンを得た。
収量1.32g
H−NMR(300MHz、DMSO−d、ppm):7.50(s,2H)、7.47(d、2H)、7.30(d、2H)、6.25(s、2H)、5.30(s、2H)、4.27(t、4H)、3.30(t、4H)、1.96(s、6H)
【0066】
[合成例7]3,6−ビス[(2−メタクリロイルオキシエチル)スルファニル]チアントレンの合成
【化17】

【0067】
合成例5で用いたアクリル酸クロライドの代わりに、メタクリル酸クロライドを用いた他は、合成例5と同様の方法で合成を行い、3,6−ビス[(2−メタクリロイルオキシエチル)スルファニル]チアントレンを得た。
収量1.30g
H−NMR(300MHz、DMSO−d、ppm):7.48(s,2H)、7.40(d、2H)、7.28(d、2H)、6.24(s、2H)、5.31(s、2H)、4.28(t、4H)、3.25(t、4H)、1.95(s、6H)
【0068】
[合成例8]4,4’−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)ジフェニルスルフィドの合成
【化18】

【0069】
4,4’−チオビスベンゼンチオールに水酸化ナトリウム水溶液(32g、200mL)を加え、60℃で2時間攪拌した。その後、2−クロロエタノール(70g)を滴下し、60℃で2時間攪拌した。室温まで冷却し、析出した白色固体を濾収し、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)ジフェニルスルフィドを得た。
収量121g
収率90%
H−NMR(300MHz、CDCl、ppm):7.32(d、4H)、7.25(d、4H)、3.78(t、4H)、3.13(t、4H)、1.78(br、2H)
【0070】
[合成例9]4,4’−ビス(アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルフィドの合成
【化19】

【0071】
合成例3で用いた2,7−ビス[(2−ヒドロキシエチル)スルファニル]チアントレンの代わりに、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)ジフェニルスルフィドを用いた他は、合成例3と同様の方法で合成を行い、4,4’−ビス(アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルフィドを得た。
収量1.56g
収率65.5%
H−NMR(300MHz、DMSO−d、ppm):7.26(d、4H)、7.17(d、4H)、6.15(d、2H)、5.99(m、2H)、5.81(d、2H)、4.15(t、4H)、3.16(t、4H)
【0072】
[合成例10]4,4’−ビス(メタクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルフィドの合成
【化20】

【0073】
合成例9で用いたアクリル酸クロライドの代わりに、メタクリル酸クロライドを用いた他は、合成例9と同様の方法で合成を行い、4,4’−ビス(メタクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルフィドを得た。
収量1.43g
H−NMR(300MHz、DMSO−d、ppm):7.26(d、4H)、7.17(d、4H)、6.24(s、2H)、5.31(s、2H)、4.15(t、4H)、3.16(t、4H)、1.95(s、6H)
【0074】
[実施例及び比較例]
硬化性組成物の調製
表1−1〜1−3(以下、まとめて表1という)に示す配合の実施例1〜実施例14及び比較例1〜比較例5の硬化性組成物を調製し、下記の評価を行った。
【0075】
[評価方法]
各実施例及び各比較例の組成物を用いて、評価試料を作成した。評価試料としては、シリコンウエハー上に各組成物を塗布したものと、ガラスウエハー上に各組成物を塗布したものを作成した。各ウエハーへの組成物の塗布は、ミカサ株式会社製のスピンコーターを用いて行った。各試料はプリベーク(120℃/60秒)を行い、UV照射(1.0mJ/cm2、窒素雰囲気下)にて硬化させた。シリコンウエハー上に形成したものは屈折率の評価に用い、ガラスウエハー上に形成したものは透過率の評価に用いた。
【0076】
(1)屈折率の測定
各実施例及び各比較例の屈折率は、シリコンウエハー上に成膜した各試料において、硬化後、シリコンウエハーから剥離していない部分について測定した。屈折率測定は、Metricon社製、プリズムカラーModel 2010を用い、波長633nmの光を用いて行った。各試料の屈折率の測定結果は、表1に併記した。
【0077】
(2)透過率
各実施例及び各比較例の透明性は、各試料の光透過率を測定して行った。光透過率は、ガラスウエハー上に成膜した各試料において、硬化後、シリコンウエハーから剥離していない部分について測定した。透過率測定は、日本分光株式会社製の分光光度計を用いて行った。光透過率の測定は、波長400nmの光によって行い、結果を表1に記載した。
【0078】
(3)粘度
各実施例及び各比較例の組成物の粘度測定は、E型粘度計を用いて行い、結果を表1に記載した。
【0079】
【表1−1】

【0080】
【表1−2】

【0081】
【表1−3】

【0082】
表1−1〜1−3中の各成分は下記のものを表す。
2,7−ビス[(2−アクリロイルオキシエチル)スルファニル]チアントレン:合成例3で製造
3,6−ビス[(2−アクリロイルオキシエチル)スルファニル]チアントレン:合成例5で製造
2,7−ビス[(2−メタクリロイルオキシエチル)スルファニル]チアントレン:合成例6で製造
3,6−ビス[(2−メタクリロイルオキシエチル)スルファニル]チアントレン:合成例7で製造
4,4’−ビス(アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルフィド:合成例9で製造
4,4’−ビス(メタクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルフィド:合成例10で製造
(p−フェニレンスルファニル)エチルアクリレート:大阪有機化学工業社製
フルオレンジアクリレート:A−BPEF、新中村化学社製
ルチル型チタニアゾル:TS−149、テイカ社製、プロピレングリコールモノメチルエーテル分散、固形分濃度20wt%
アナターゼ型チタニアゾル:NOD−742GTF、ナガセケミテック社製、プロピレングリコールモノメチルエーテル分散、固形分濃度20wt%
ジルコニアゾル:OZ−S30K、日産化学社製、MEK分散、固形分濃度20wt%
ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド:(商品名)LucirinTPO、BASF社製
2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン:(商品名)IRGACURE907、チバ・ジャパン社製
ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体:(商品名)DC−190、東レ・ダウコーニング社製
【0083】
表1の結果から、特定の硫黄含有ラジカル重合性化合物を用いた硬化性組成物は、有機溶剤を配合しない場合(実施例1〜8)であっても粘度が低く、屈折率が高く、透過率も高いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明で用いる硫黄含有ラジカル重合性化合物は常温で液体であり、これを配合した組成物も粘度が低く、所望の形状の重合体(硬化体)が容易に得られる。また、本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる重合体(所望の形状を有する硬化体)は高い屈折率及び高い透過性を有することができる。
特定の硫黄含有ラジカル重合性化合物を含有する本発明の硬化性組成物を重合させて得られる重合体(硬化体)は、高屈折率であると同時に透過性が高いため、光学用部材の製造材料として好適である。具体的には、レンズ(例えば、眼鏡レンズ、カメラレンズ等)の材料、ナノインプリント用材料、光学接着剤等の用途、導波路、記録材料等の光学部材の材料として有用である。
本発明の光学部材は、特に固体画像素子の集光材及びディスク集光材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)及び下記一般式(2)で示される構造単位からなる群から選択される少なくとも1種を有する樹脂を含有する光学部材。
【化21】

[式(1)中、R及びRは水素原子又はメチル基を示し、m及びnは1〜4の整数を示す。]
【化22】

[式(2)中、R及びRは水素原子又はメチル基を示し、p及びqは1〜4の整数を示す。]
【請求項2】
さらに、周期律表第4族元素の酸化物を主成分とする、数平均粒子径が1〜100nmの粒子を含有する請求項1に記載の光学部材。
【請求項3】
前記粒子が、酸化チタン又は酸化ジルコニウムを主成分とする粒子である請求項2に記載の光学部材。
【請求項4】
固体画像素子の集光材用である請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学部材。
【請求項5】
ディスク集光材用である請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学部材。
【請求項6】
下記一般式(3)及び下記一般式(4)で示される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有する硬化性組成物。
【化23】

[式(3)中、R及びRは水素原子又はメチル基を示し、m及びnは1〜4の整数を示す。]
【化24】

[式(4)中、R及びRは水素原子又はメチル基を示し、p及びqは1〜4の整数を示す。]
【請求項7】
ラジカル重合開始剤を含有する請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
さらに、周期律表第4族元素の酸化物を主成分とする、数平均粒子径が1〜100nmの粒子を含有する請求項6又は7に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記粒子が、酸化チタン又は酸化ジルコニウムを主成分とする粒子である請求項8に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
さらに、界面活性剤を含有する請求項6〜9のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
さらに、有機溶剤を含有する請求項6〜10のいずれか1項に記載の硬化性組成物。


【公開番号】特開2011−170073(P2011−170073A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33335(P2010−33335)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】