説明

硬化性組成物及び接続構造体

【課題】速やかに硬化させることができ、更に硬化物の接続対象部材に対する接着力を高くすることができる硬化性組成物、及び該硬化性組成物を用いた接続構造体を提供する。
【解決手段】本発明に係る硬化性組成物は、チイラン基を有する硬化性化合物と、熱硬化剤と、重量平均分子量が5000以上であるフェノキシ樹脂とを含む。本発明に係る接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、該第1,第2の接続対象部材2,4を接続している接続部3とを備える。接続部3は、上記硬化性組成物により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関し、より詳細には、熱硬化性化合物として、チイラン基を有する硬化性化合物を含む硬化性組成物、並びに該硬化性組成物を用いた接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂組成物は、硬化後の硬化物の接着力が高く、硬化物の耐水性及び耐熱性にも優れている。このため、エポキシ樹脂組成物は、電気、電子、建築及び車両等の各種用途に広く用いられている。
【0003】
また、様々な接続対象部材を電気的に接続するために、上記エポキシ樹脂組成物に、導電性粒子が配合されることがある。導電性粒子を含むエポキシ樹脂組成物は、異方性導電材料と呼ばれている。
【0004】
上記異方性導電材料は、具体的には、ICチップとフレキシブルプリント回路基板との接続、及びICチップとITO電極を有する回路基板との接続等に使用されている。例えば、ICチップの電極と回路基板の電極との間に異方性導電材料を配置した後、加熱及び加圧することにより、これらの電極同士を接続できる。
【0005】
上記異方性導電材料の一例として、下記の特許文献1には、加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤と、分子量10000以上の水酸基含有樹脂と、リン酸エステルと、ラジカル重合性物質と、導電性粒子とを含む異方性導電材料が開示されている。上記水酸基含有樹脂としては、具体的には、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂などのポリマーが挙げられている。
【0006】
また、下記の特許文献2には、硬化性成分と、シラン化合物と、導電性粒子とを含む異方性導電材料が開示されている。ここでは、硬化性成分とシラン化合物との併用により、充分な接着強度が得られるとともに、高温高湿環境下でも安定した接着強度が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−314696号公報
【特許文献2】特開2006−16580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、精密電子機器の分野では、回路の高密度化が進んでおり、電極幅及び電極間隔が極めて狭くなっている。このため、特許文献1,2に記載のような従来の異方性導電材料では、硬化が速やかに進行せずに、配線の脱落、剥離及び位置ずれが生じることがある。
【0009】
また、特許文献2では、充分な接着強度が得られることが記載されているものの、各種の基板などの接着対象部材に対する異方性導電材料の硬化物の接着強度が必ずしも充分に高くならないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、速やかに硬化させることができ、更に硬化物の接続対象部材に対する接着力を高くすることができる硬化性組成物、及び該硬化性組成物を用いた接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広い局面によれば、チイラン基を有する硬化性化合物と、熱硬化剤と、重量平均分子量が5000以上であるフェノキシ樹脂とを含む、硬化性組成物が提供される。
【0012】
本発明に係る硬化性組成物の他の特定の局面では、導電性粒子がさらに含まれており、硬化性組成物は異方性導電材料である。
【0013】
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備えており、該接続部が、本発明に従って構成された硬化性組成物により形成されている。
【0014】
本発明に係る接続構造体のある特定の局面では、上記硬化性組成物は、導電性粒子を含む異方性導電材料であり、上記第1,第2の接続対象部材は、上記導電性粒子により電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る硬化性組成物は、チイラン基を有する硬化性化合物と、熱硬化剤と、フェノキシ樹脂とを含むので、速やかに硬化させることができる。さらに、本発明に係る硬化性組成物を硬化させた硬化物は、接続対象部材に対する接着力が高い。従って、本発明に係る硬化性組成物の使用により、接続信頼性に優れた接続構造体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物を用いた接続構造体を模式的に示す部分切欠断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
(硬化性組成物)
本発明に係る硬化性組成物は、チイラン基を有する硬化性化合物と、熱硬化剤と、重量平均分子量が5000以上であるフェノキシ樹脂とを含む。この組成の採用により、硬化性組成物を低温で速やかに硬化させることができ、更に硬化物の接続対象部材に対する接着力を高くすることができる。また、上記組成を有する硬化性組成物の使用により、金属配線又は導電性粒子などの金属に対して、硬化性組成物の樹脂成分を硬化させた硬化物の接着力が高くなる。これは、チイラン基を有する硬化性化合物のチイラン基の硫黄原子が、金属と配位結合するためであると考えられる。
【0019】
また、従来、低温硬化特性と接着力とを高いレベルで両立することは困難であった。上記組成の採用により、低温硬化特性と接着力とを高いレベルで両立できることを、本発明者は初めて見出した。
【0020】
また、近年、精密電子機器の分野では、回路の高密度化が進んでおり、電極幅及び電極間隔が極めて狭くなっている。このため、配線の脱落、剥離及び位置ずれが生じる傾向が高くなっている。本発明に係る硬化性組成物が導電性粒子を含む異方性導電材料である場合に、硬化性組成物を低温で速やかに硬化させることができ、かつ硬化物の接着力が高いので、配線の脱落、剥離及び位置ずれを効果的に抑制できる。従って、本発明に係る硬化性組成物は、導電性粒子を含む異方性導電材料である場合に特に有利である。
【0021】
以下、先ず、本発明に係る硬化性組成物に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0022】
〔熱硬化性化合物〕
本発明に係る硬化性組成物は、熱硬化性化合物として、チイラン基を有する硬化性化合物を含む。チイラン基を有する硬化性化合物は、熱硬化性化合物である。チイラン基を有する硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0023】
チイラン基を有する硬化性化合物は、エポキシ基を有していてもよい。すなわち、チイラン基を有する硬化性化合物は、チイラン基とエポキシ基とを有する硬化性化合物であってもよい。
【0024】
本発明に係る硬化性組成物は、チイラン基を有する硬化性化合物に加えて、該チイラン基を有する硬化性化合物とは異なるエポキシ基を有する硬化性化合物を含んでいてもよい。すなわち、本発明に係る硬化性組成物は、チイラン基を有する硬化性化合物に加えて、チイラン基を有さず、かつエポキシ基を有する硬化性化合物を含んでいてもよい。エポキシ基を有する硬化性化合物は、熱硬化性化合物である。エポキシ基を有する硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0025】
チイラン基を有する硬化性化合物がチイラン基とエポキシ基とを有する硬化性化合物である場合には、本発明に係る硬化性組成物は、チイラン基とエポキシ基とを有する硬化性化合物に加えて、該チイラン基とエポキシ基とを有する硬化性化合物とは異なるエポキシ基を有する硬化性化合物を含んでいてもよく、すなわちチイラン基を有さず、かつエポキシ基を有する硬化性化合物を含んでいてもよい。
【0026】
上記チイラン基を有する硬化性化合物は、エピスルフィド化合物である。上記エポキシ基を有する硬化性化合物は、エポキシ化合物である。上記エポキシ基及びチイラン基を有する硬化性化合物は、チイラン基含有エポキシ化合物である。
【0027】
チイラン基を有する硬化性化合物の使用により、硬化性組成物を低温で速やかに硬化させることが可能になる。硬化性組成物の保存安定性及び取扱い性を高める観点からは、硬化性組成物は、チイラン基を有する硬化性化合物と、エポキシ基を有する硬化性化合物とを含むことが好ましい。
【0028】
熱硬化性化合物100重量%中、チイラン基を有する硬化性化合物の含有量は0.1〜100重量%の範囲内であることが好ましい。熱硬化性化合物100重量%中、上記チイラン基を有する硬化性化合物の含有量は、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、特に好ましくは50重量%以上である。チイラン基を有する硬化性化合物はチイラン基を有するので、エポキシ基を有する硬化性化合物と比べて、反応性が高い。従って、チイラン基を有する硬化性化合物の含有量が多いほど、硬化性組成物を低温でより一層速やかに硬化させることができる。
【0029】
なお、上記熱硬化性化合物としてチイラン基を有する硬化性化合物のみを用いる場合には、上記「熱硬化性化合物100重量%」は、チイラン基を有する硬化性化合物100重量%を示す。上記熱硬化性化合物としてチイラン基を有する硬化性化合物とエポキシ基を有する硬化性化合物とを併用する場合には、上記「熱硬化性化合物100重量%」は、チイラン基を有する硬化性化合物とエポキシ基を有する硬化性化合物との合計100重量%を示す。
【0030】
低温でより一層速やかに硬化させる観点からは、チイラン基を有する硬化性化合物は、下記式(1−1)、(2−1)、(3)、(7)又は(8)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であることが好ましく、下記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であることがより好ましい。
【0031】
下記式(1−1)において、ベンゼン環に結合している6つの基の結合部位は特に限定されない。下記式(2−1)において、ナフタレン環に結合している8つの基の結合部位は特に限定されない。
【0032】
【化1】

【0033】
上記式(1−1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表す。R3、R4、R5及びR6の内の水素ではない基は下記式(4)で表される基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の全てが水素であってもよい。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の1個又は2個が下記式(4)で表される基であり、かつR3、R4、R5及びR6の4個の基の内の下記式(4)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0034】
【化2】

【0035】
上記式(4)中、R7は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0036】
【化3】

【0037】
上記式(2−1)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の水素ではない基は、下記式(5)で表される基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の全てが水素であってもよい。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の1個又は2個が下記式(5)で表される基であり、かつR53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の下記式(5)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0038】
【化4】

【0039】
上記式(5)中、R59は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0040】
【化5】

【0041】
上記式(3)中、R101及びR102はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の6〜8個の基は水素を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の水素ではない基は、下記式(6)で表される基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の全てが水素であってもよい。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の1個又は2個が下記式(6)で表される基であり、かつR103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の下記式(6)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0042】
【化6】

【0043】
上記式(6)中、R111は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0044】
【化7】

【0045】
上記式(7)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0046】
【化8】

【0047】
上記式(8)中、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0048】
上記エポキシ基を有する硬化性化合物は特に限定されない。エポキシ基を有する硬化性化合物として、従来公知のエポキシ化合物を使用できる。上記エポキシ基を有する硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
上記エポキシ基を有する硬化性化合物としては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0050】
さらに、上記エポキシ基を有する硬化性化合物として、例えば、上記式(1−1)、(2−1)、(3)、(7)又は(8)中のチイラン基をエポキシ基に変換したエポキシ化合物を用いることができる。
【0051】
さらに、本発明に係る硬化性組成物は、上記エポキシ基を有する硬化性化合物として、下記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物の単量体、該エポキシ化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物を含んでいてもよい。
【0052】
【化9】

【0053】
上記式(21)中、R1は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(22)で表される構造を表し、R4は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(23)で表される構造を表す。
【0054】
【化10】

【0055】
上記式(22)中、R5は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0056】
【化11】

【0057】
上記式(23)中、R6は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0058】
上記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物は、不飽和二重結合と、少なくとも2個のエポキシ基とを有することを特徴とする。上記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物の使用により、硬化性組成物を低温で速やかに硬化させることができる。
【0059】
本発明に係る硬化性組成物は、上記チイラン基を有する硬化性化合物又は上記エポキシ基を有する硬化性化合物として、下記式(31)で表される構造を有する化合物の単量体、該化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物を含んでいてもよい。
【0060】
【化12】

【0061】
上記式(31)中、R1は水素原子もしくは炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(32)で表される構造を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、X1は酸素原子又は硫黄原子を表し、X2は酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0062】
【化13】

【0063】
上記式(32)中、R4は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、X3は酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0064】
本発明に係る硬化性組成物は、上記エポキシ基を有する硬化性化合物として、窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物を含んでいてもよい。上記窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物は、下記式(41)で表されるエポキシ化合物、又は下記式(42)で表されるエポキシ化合物であることが好ましい。このような化合物の使用により、硬化性組成物の硬化速度をより一層速くし、硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
【0065】
【化14】

【0066】
上記式(41)中、R1〜R3はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、Zはエポキシ基又はヒドロキシメチル基を表す。R1〜R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0067】
【化15】

【0068】
上記式(42)中、R1〜R3はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を示し、p、q及びrはそれぞれ1〜5の整数を表し、R4〜R6はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R1〜R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。p、q及びrは同一であってもよく、異なっていてもよい。R4〜6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0069】
上記窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物は、トリグリシジルイソシアヌレート、又はトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリグリシジルエーテルであることが好ましい。これらの化合物の使用により、硬化性組成物の硬化速度をさらに一層速くすることができる。
【0070】
本発明に係る硬化性組成物は、上記エポキシ基を有する硬化性化合物として、芳香族環を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。芳香族環を有するエポキシ化合物の使用により、硬化性組成物の硬化速度をより一層速くし、硬化性組成物を塗布しやすくすることができる。硬化性組成物の塗布性をより一層高める観点からは、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましい。上記芳香族環を有するエポキシ化合物としては、レゾルシノールジグリシジルエーテル及び1,6−ナフタレンジグリシジルエーテルが挙げられる。なかでも、レゾルシノールジグリシジルエーテルが特に好ましい。レゾルシノールジグリシジルエーテルの使用により、硬化性組成物の硬化速度を速くし、硬化性組成物を塗布しやすくすることができる。
【0071】
〔フェノキシ樹脂〕
本発明に係る硬化性組成物に含まれているフェノキシ樹脂は特に限定されない。該フェノキシ樹脂として、従来公知のフェノキシ樹脂を用いることができる。フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0072】
上記フェノキシ樹脂は、具体的には、例えばエピハロヒドリンと2価フェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
【0073】
また、フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、一般的に5000以上である。また、本発明に係る硬化性組成物に含まれているフェノキシ樹脂の重量平均分子量は、5000以上である。フェノキシ樹脂は、一般的なエポキシ樹脂と比べて、他の成分との相溶性に優れている。また、フェノキシ樹脂を用いた硬化性組成物の硬化物の接着性は、比較的高い。また、フェノキシ樹脂の重量平均分子量が大きいほど、硬化性組成物をフィルム状にすることが容易になり、更に硬化性組成物の流動性に影響する溶融粘度を広範囲に制御できる。従って、フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、10000以上であることが好ましい。フェノキシ樹脂の重量平均分子量の上限は、特に限定されない。フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1000000以下、より好ましくは250000以下である。
【0074】
フェノキシ樹脂がヒドロキシ基又はカルボキシル基などの極性基を有すると、他の成分、特にエポキシ基を有する硬化性化合物との相溶性が高くなる。このため、硬化物の外観を均一にすることができ、更に硬化性組成物の硬化速度を速くすることができる。
【0075】
上記チイラン基を有する硬化性化合物100重量部に対して、上記フェノキシ樹脂の含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、好ましくは1000重量部以下、より好ましくは800重量部以下である。フェノキシ樹脂の含有量が上記下限以上であると、硬化物の接続対象部材に対する接着力がより一層高くなる。フェノキシ樹脂の含有量が上記上限以下であると、チイラン基を有する硬化性化合物の含有量が相対的に多くなり、硬化性組成物を低温で効果的に硬化させることができる。
【0076】
〔熱硬化剤〕
本発明に係る硬化性組成物に含まれている熱硬化剤は特に限定されない。該熱硬化剤は、上記熱硬化性化合物を硬化させる。該熱硬化剤として、従来公知の熱硬化剤を用いることができる。該熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0077】
上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤又は酸無水物等が挙げられる。なかでも、硬化性組成物を低温でより一層速やかに硬化させることができるので、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤又はアミン硬化剤が好ましい。また、上記熱硬化性化合物と上記熱硬化剤とを混合したときに保存安定性を高めることができるので、潜在性の硬化剤が好ましい。潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。これらの熱硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
【0078】
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されないが、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0079】
上記ポリチオール硬化剤としては、特に限定されないが、トリメチロールプロパン トリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトール ヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0080】
上記アミン硬化剤としては、特に限定されないが、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0081】
上記熱硬化剤の中でもポリチオール化合物又は酸無水物等が好ましく用いられる。硬化性組成物の硬化速度をより一層速くできるので、ポリチオール化合物がより好ましく用いられる。
【0082】
上記ポリチオール化合物の中でもペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネートがより好ましい。このポリチオール化合物の使用により、硬化性組成物の硬化速度をより一層速くできる。
【0083】
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは30重量部以上、更に好ましくは45重量部以上、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、更に好ましくは75重量部以下である。熱硬化剤の含有量が上記下限以上であると、硬化性組成物を充分に硬化させることが容易である。熱硬化剤の含有量が上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の熱硬化剤が残存し難くなり、かつ硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
【0084】
なお、上記熱硬化剤がイミダゾール硬化剤又はフェノール硬化剤である場合、熱硬化性化合物100重量部に対して、イミダゾール硬化剤又はフェノール硬化剤の含有量は、好ましくは1重量部以上、好ましくは15重量部以下である。また、上記熱硬化剤がアミン硬化剤、ポリチオール硬化剤又は酸無水物である場合、熱硬化性化合物100重量部に対して、アミン硬化剤、ポリチオール硬化剤又は酸無水物の含有量は、好ましくは15重量部以上、好ましくは40重量部以下である。
【0085】
〔他の成分〕
本発明に係る硬化性組成物は、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。硬化促進剤の使用により、硬化性組成物の硬化速度をより一層速くすることができる。硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0086】
上記硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール硬化促進剤が好ましい。なお、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤は、イミダゾール硬化剤又はアミン硬化剤としても用いることができる。
【0087】
上記イミダゾール硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0088】
熱硬化性化合物100重量部に対して、上記硬化促進剤の含有量は、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは6重量部以下、より好ましくは4重量部以下である。硬化促進剤の含有量が上記下限以上であると、硬化性組成物を充分に硬化させることが容易である。硬化促進剤の含有量が上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の硬化促進剤が残存し難くなる。
【0089】
本発明に係る硬化性組成物は、光照射によっても硬化するように、光硬化性化合物をさらに含んでいてもよい。また、光硬化性化合物が含まれる場合に、本発明に係る硬化性組成物は、光重合開始剤をさらに含んでいてもよい。ただし、本発明に係る硬化性組成物を使用する際に、該硬化性組成物に光重合開始剤を添加してもよい。上記光硬化性化合物と上記光重合開始剤との使用により、光の照射により硬化性組成物を硬化させることができる。さらに、硬化性組成物を半硬化させ、硬化性組成物の流動性を低下させることができる。
【0090】
上記光硬化性化合物は特に限定されない。該光硬化性化合物として、(メタ)アクリル樹脂又は環状エーテル基含有樹脂等が好適に用いられ、(メタ)アクリル樹脂がより好適に用いられる。上記(メタ)アクリル樹脂は、メタクリル樹脂とアクリル樹脂とを示す。上記(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する。上記(メタ)アクリロイル基は、メタクリロイル基とアクリロイル基とを示す。
【0091】
上記熱硬化性化合物と(メタ)アクリル樹脂とを含む組成物では、上記熱硬化性化合物のエポキシ基又はチイラン基が開環してラジカルが発生したときに、該ラジカルの作用によって(メタ)アクリル樹脂の重合が進行しやすい。しかしながら、上記熱硬化性化合物に対して、上記フェノール性化合物と貯蔵安定剤を組み合わせて配合することにより、硬化性組成物の保管時にエポキシ基又はチイラン基が開環し難くなる。この結果、硬化性組成物の保管時に、(メタ)アクリル樹脂の重合が進行し難くなる。
【0092】
上記(メタ)アクリル樹脂として、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、又はイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。
【0093】
上記(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物は特に限定されない。該エステル化合物として、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物のいずれも用いることができる。
【0094】
上記光硬化性化合物は、エポキシ基の少なくとも一種の基と、(メタ)アクリル基とを有する光及び熱硬化性化合物(以下、部分(メタ)アクリレート化エポキシ樹脂ともいう)を含むことが好ましい。
【0095】
上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ樹脂は、例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。エポキシ基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換され(転化率)、部分(メタ)アクリル化されていることが好ましい。エポキシ基の50%が(メタ)アクリロイル基に変換されていることがより好ましい。
【0096】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0097】
上述した光硬化性化合物以外の光硬化性化合物が含まれる場合には、該光硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
【0098】
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0099】
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0100】
上記硬化性組成物を効率的に光硬化させる観点からは、熱硬化性化合物100重量部に対して、上記光硬化性化合物(上記光硬化性化合物が(メタ)アクリル樹脂である場合には(メタ)アクリル樹脂)の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、更に好ましくは10重量部以上、特に好ましくは50重量部以上、好ましくは10000重量部以下、より好ましくは1000重量部以下、さらに好ましくは500重量部以下である。
【0101】
上記光重合開始剤は特に限定されない。上記光重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0102】
上記光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン光重合開始剤、ベンゾフェノン光重合開始剤、チオキサントン、ケタール光重合開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
【0103】
上記アセトフェノン光重合開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光重合開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0104】
上記光重合開始剤の含有量は特に限定されない。上記光硬化性化合物100重量部に対して、上記光重合開始剤の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、更に好ましくは2重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。光重合開始剤の含有量が上記下限以上であると、光重合開始剤を添加した効果を充分に得ることが容易である。光重合開始剤の含有量が上記上限以下であると、硬化性組成物の硬化物の接着力が充分に高くなる。
【0105】
本発明に係る硬化性組成物は、フェノール性化合物をさらに含むことが好ましい。チイラン基を有する硬化性化合物と、熱硬化剤と、フェノキシ樹脂と、フェノール性化合物との併用により、電極間に導電性粒子を含む硬化性組成物を配置して導電性粒子を適度に圧縮したときに、電極に適度な圧痕を形成できる。従って、電極間の接続抵抗を低くすることができる。
【0106】
上記フェノール性化合物は、ベンゼン環に水酸基が結合したフェノール性水酸基を有する。上記フェノール性化合物としては、ポリフェノール、トリオール、ハイドロキノン、及びトコフェロール(ビタミンE)等が挙げられる。上記フェノール性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0107】
本発明に係る硬化性組成物は、フィラーをさらに含むことが好ましい。フィラーの使用により、硬化性組成物の硬化物の潜熱膨張を抑制できる。フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0108】
上記フィラーの具体例としては、シリカ、窒化アルミニウム及びアルミナ等が挙げられる。上記フィラーはフィラー粒子であることが好ましい。
【0109】
本発明に係る硬化性組成物は、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、硬化性組成物の粘度を容易に調整できる。さらに、例えば、上記熱硬化性化合物が固形である場合に、固形の上記熱硬化性化合物に溶剤を添加し、溶解させることにより、上記熱硬化性化合物の分散性を高めることができる。
【0110】
上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
【0111】
本発明に係る硬化性組成物は、貯蔵安定剤をさらに含むことが好ましい。本発明に係る硬化性組成物は、上記貯蔵安定剤として、リン酸エステル、亜リン酸エステル及びホウ酸エステルからなる群から選択された少なくとも一種を含むことが好ましく、リン酸エステル及び亜リン酸エステルの内の少なくとも一種を含むことがより好ましく、亜リン酸エステルを含むことが更に好ましい。これらの貯蔵安定剤の使用により、特に亜リン酸エステルの使用により、上記チイラン基を有する硬化性化合物の貯蔵安定性をより一層高めることができる。上記貯蔵安定剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0112】
上記リン酸エステルとしては、ジエチルベンジルホスフェート等が挙げられる。上記亜リン酸エステルとしては、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト又はジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイトが好ましく、ジフェニルモノデシルホスファイト及びジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト等が挙げられる。
【0113】
本発明に係る硬化性組成物は、アスコルビン酸、アスコルビン酸の誘導体、アスコルビン酸の塩、イソアスコルビン酸、イソアスコルビン酸の誘導体及びイソアスコルビン酸の塩からなる群から選択された少なくとも1種の成分を含んでいてもよい。これらの成分の配合により、硬化性組成物の保存安定性が高くなる。
【0114】
本発明に係る硬化性組成物は、必要に応じて、イオン捕捉剤又はシランカップリング剤をさらに含んでいてもよい。
【0115】
〔導電性粒子を含む硬化性組成物〕
本発明に係る硬化性組成物が導電性粒子をさらに含む場合、硬化性組成物を異方性導電材料として用いることができる。本発明に係る硬化性組成物は、チイラン基を有する硬化性化合物と熱硬化剤とフェノキシ樹脂とを含むので、硬化性組成物の樹脂成分の硬化物と導電性粒子との接着力を高くすることができる。
【0116】
上記導電性粒子は、例えば回路基板と半導体チップとの電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、少なくとも表面が導電性を有する粒子であれば特に限定されない。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、又は実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層又は錫を含有する金属層等が挙げられる。上記導電性粒子は、基材粒子の表面がはんだにより被覆された導電性粒子であってもよい。
【0117】
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。硬化性組成物100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡を防止できる。
【0118】
(硬化性組成物の用途)
本発明に係る硬化性組成物は、様々な接続対象部材を接着するのに使用できる。
【0119】
本発明に係る硬化性組成物が、導電性粒子を含む異方性導電材料である場合、該異方性導電材料は、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、又は異方性導電シート等として使用され得る。異方性導電材料が、異方性導電フィルムや異方性導電シート等のフィルム状の接着剤として使用される場合、該導電性粒子を含有するフィルム状の接着剤に、導電性粒子を含まないフィルム状の接着剤が積層されていてもよい。
【0120】
上記異方性導電材料は、第1,第2の接続対象部材が電気的に接続されている接続構造体を得るために好適に用いられる。
【0121】
図1に、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物を用いた接続構造体の一例を模式的に断面図で示す。
【0122】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4を接続している接続部3とを備える。接続部3は、導電性粒子5を含む硬化性組成物、すなわち異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。
【0123】
第1の接続対象部材2の上面2aには、複数の電極2bが設けられている。第2の接続対象部材4の下面4aには、複数の電極4bが設けられている。電極2bと電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材2,4が導電性粒子5により電気的に接続されている。
【0124】
上記接続構造体としては、具体的には、回路基板上に、半導体チップ、コンデンサチップ又はダイオードチップ等の電子部品チップが搭載されており、該電子部品チップの電極が、回路基板上の電極と電気的に接続されている接続構造体等が挙げられる。回路基板としては、フレキシブルプリント基板等の様々なプリント基板、ガラス基板、又は金属箔が積層された基板等の様々な回路基板が挙げられる。第1,第2の接続対象部材は、電子部品又は回路基板であることが好ましい。
【0125】
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例として、電子部品又は回路基板等の第1の接続対象部材と、電子部品又は回路基板等の第2の接続対象部材との間に上記異方性導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。
【0126】
なお、上記硬化性組成物は、導電性粒子を含んでいなくてもよい。この場合には、第1,第2の接続対象部材を電気的に接続することなく、第1,第2の接続対象部材を接着して接続するために、上記硬化性組成物が用いられる。
【0127】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0128】
実施例及び比較例の異方性導電材料を得るために、下記の材料を用いた。
【0129】
(1)チイラン基を有する化合物の調製
攪拌機、冷却機及び温度計を備えた2Lの容器内に、エタノール250mLと、純水250mLと、チオシアン酸カリウム20gとを加え、チオシアン酸カリウムを溶解させ、第1の溶液を調製した。その後、容器内の温度を20〜25℃の範囲内に保持した。次に、20〜25℃に保持された容器内の第1の溶液を攪拌しながら、該第1の溶液中に、レゾルシノールジグリシジルエーテル160gを5mL/分の速度で滴下した。滴下後、30分間さらに攪拌し、エポキシ化合物含有混合液を得た。
【0130】
次に、純水100mLと、エタノール100mLとを含む溶液に、チオシアン酸カリウム20gを溶解させた第2の溶液を用意した。得られたエポキシ基含有混合液に、得られた第2の溶液を5mL/分の速度で添加した後、30分攪拌した。攪拌後、純水100mLとエタノール100mLとを含む溶液に、チオシアン酸カリウム20gを溶解させた第2の溶液をさらに用意し、該第2の溶液を5mL/分の速度で容器内にさらに添加し、30分間攪拌した。その後、容器内の温度を10℃に冷却し、2時間攪拌し、反応させた。
【0131】
次に、容器内に飽和食塩水100mLを加え、10分間攪拌した。攪拌後、容器内にトルエン300mLをさらに加え、10分間攪拌した。その後、容器内の溶液を分液ロートに移し、2時間静置し、溶液を分離させた。分液ロート内の下方の溶液を排出し、上澄み液を取り出した。取り出された上澄み液にトルエン100mLを加え、攪拌し、2時間静置した。更に、トルエン100mLをさらに加え、攪拌し、2時間静置した。
【0132】
次に、トルエンが加えられた上澄み液に、硫酸マグネシウム50gを加え、5分間攪拌した。攪拌後、ろ紙により硫酸マグネシウムを取り除いて、溶液を分離した。真空乾燥機を用いて、分離された溶液を80℃で減圧乾燥することにより、残存している溶剤を除去した。このようにして、チイラン基を有する化合物(混合物)1を得た。
【0133】
(2)チイラン基を有さない化合物
エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製「EX−201P」)
フェノキシ樹脂(新日鐵化学社製「YP−50S」、Mw=55000)
ウレタン樹脂(DIC社製「T−5201H」、MEK(メチルエチルケトン)20重量%溶液)
アクリル樹脂(日油社製「G−2050M」)
【0134】
(3)熱硬化剤
熱硬化剤(味の素ファインテクノ社製「PN−23J)
【0135】
(4)導電性粒子
導電性粒子(ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子)
【0136】
(実施例1〜2及び比較例1〜4)
下記の表1に示す成分を固形分換算にて下記の表1に示す割合で均一に混合し、混合物を得た。
【0137】
得られた混合物が無溶剤液状組成物である場合には、混合物をペースト(異方性導電ペースト)としてそのまま用いた。
【0138】
得られた混合物が含溶剤組成物又は固形状組成物である場合には、混合物を溶剤で希釈し、フッ素系のフィルム上に塗工装置を用いて塗布した後、溶剤を除去するために乾燥を行って、フィルム(異方性導電フィルム)とした。
【0139】
(評価)
(1)低温硬化特性
ライン幅50μm、ピッチ100μmの銅配線パターンを500本有するフレキシブル回路基板(FPC)と、ITOの薄層を形成したガラス基板とを用意した。このガラス基板上に、得られたペーストを塗布し、又は得られたフィルムをフッ素系のフィルムから剥離して積層し、硬化性組成物層を形成した。次に、硬化性組成物層上に、フレキシブル回路基板を積層した。
【0140】
その後、硬化性組成物層の温度が185℃となるように加熱ヘッドの温度を調整しながら、フレキシブル回路基板の上面に加熱ヘッドを載せ、3MPaの圧力をかけて硬化性組成物層を185℃で硬化させ、接続構造体を得た。この接続構造体を得る際に、加熱により硬化性組成物層が硬化するまでの時間を測定した。低温硬化特性を下記の判定基準で判定した。
【0141】
〔低温硬化特性の判定基準〕
○○:硬化時間が5秒以下
○:硬化時間が5秒を超え、10秒以下
×:硬化時間が10秒以上
【0142】
(2)リーク評価
上記(1)低温硬化特性の評価で得られた接続構造体を用いて、隣り合う電極間においてリークが生じているか否かを、テスターで測定し、下記の判定基準で判定した。
【0143】
[リーク評価の判定基準]
○:リーク無し
×:リーク発生
−:評価せず
【0144】
(3)接着力
上記(1)低温硬化特性の評価で得られた接続構造体において、接着強度を90度剥離法で測定し、評価した。接着強度(接着力)を下記の判定基準で判定した。
【0145】
〔接着力の評価基準〕
○:接着力が100N/m以上
×:接着力が100N/m未満
−:評価せず
【0146】
結果を下記の表1に示す。
【0147】
【表1】

【符号の説明】
【0148】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…上面
2b…電極
3…接続部
4…第2の接続対象部材
4a…下面
4b…電極
5…導電性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チイラン基を有する硬化性化合物と、熱硬化剤と、重量平均分子量が5000以上であるフェノキシ樹脂とを含む、硬化性組成物。
【請求項2】
導電性粒子をさらに含み、
異方性導電材料である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項1又は2に記載の硬化性組成物により形成されている、接続構造体。
【請求項4】
前記硬化性組成物が、導電性粒子を含む異方性導電材料であり、
前記第1,第2の接続対象部材が、前記導電性粒子により電気的に接続されている、請求項3に記載の接続構造体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−21114(P2012−21114A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161619(P2010−161619)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】