説明

硬化性組成物

【課題】保存安定性に優れ、且つ短時間での硬化が可能な硬化性組成物の提供。
【解決手段】水素結合形成能を有する樹脂からなり、且つアミン系硬化剤を内包したマイクロカプセルと、エポキシ樹脂と、多価アルコールと、を含有し、前記多価アルコールが、下記一般式(1)で表されることを特徴とする硬化性組成物(式中、Xは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は水酸基であり;Rは炭素数1〜3のアルキレン基であり; nは0又は1である。)。
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性に優れ、短時間での硬化が可能な硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性組成物は、接着剤やシーリング剤等、広範な分野において種々の用途で使用されている。例えば、1液型接着剤として使用されている、エポキシ樹脂を含有する硬化性組成物では、その保存安定性を向上させるため、樹脂製の膜で構成されたマイクロカプセル中に硬化剤を内包させ、硬化成分であるエポキシ樹脂から硬化剤を隔離することで、保存中にエポキシ樹脂の硬化が進行しないように設計されている。このような1液型接着剤では、ひとたび温度を上昇させると、マイクロカプセルを構成する樹脂の間隙部が広がることで、内包された硬化剤がマイクロカプセルを通過して外側に移動し、エポキシ樹脂を硬化させ、硬化物を形成する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−319620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されているものをはじめ、硬化剤を内包したマイクロカプセルを含有する従来の硬化性組成物は、保存安定性は良好であるものの、マイクロカプセル外への硬化剤の移動を伴うために、所望の時期に短時間で硬化させることが困難であるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、保存安定性に優れ、且つ短時間での硬化が可能な硬化性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、
本発明は水素結合形成能を有する樹脂からなり、且つアミン系硬化剤を内包したマイクロカプセルと、エポキシ樹脂と、多価アルコールと、を含有し、前記多価アルコールが、下記一般式(1)で表されることを特徴とする硬化性組成物を提供する。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Xは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は水酸基であり;Rは炭素数1〜3のアルキレン基であり; nは0又は1である。)
【0009】
本発明の硬化性組成物は、前記樹脂、アミン系硬化剤及びエポキシ樹脂の総量100質量部に対して、前記多価アルコールを0.1〜1質量部含有することが好ましい。
本発明の硬化性組成物は、さらに、導電性微粒子を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保存安定性に優れ、且つ短時間での硬化が可能な硬化性組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の硬化性組成物は、水素結合形成能を有する樹脂からなり、且つアミン系硬化剤を内包したマイクロカプセルと、エポキシ樹脂と、多価アルコールと、を含有し、前記多価アルコールが、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。なお、以下、本明細書において、「樹脂」とは特に断りが無い限り「水素結合形成能を有する樹脂」を指すものとし、「エポキシ樹脂」と区別する。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Xは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は水酸基であり;Rは炭素数1〜3のアルキレン基であり; nは0又は1である。)
【0014】
本発明においては、エポキシ樹脂が硬化成分であり、保存時にアミン系硬化剤が硬化反応を促進しないよう、マイクロカプセルがアミン系硬化剤を内包している。そして、前記一般式(1)で表される多価アルコール(以下、多価アルコール(1)と略記する)が、所望の硬化時に、マイクロカプセルを構成している前記樹脂に作用することで、マイクロカプセル外にアミン系硬化剤が移動し、エポキシ樹脂が硬化されると考えられる。
より具体的には、前記樹脂同士が水素結合を形成することでマイクロカプセルを構成しているのに対し、多価アルコール(1)が、所定の温度以上での加熱時に、その水酸基が前記樹脂の水素結合形成部位と相互作用すると考えられる。これにより、樹脂間の水素結合が弱まるか又は解消され、樹脂の間隙部が広がることで、マイクロカプセルに内包されている前記アミン系硬化剤の、マイクロカプセル外への移動が促進されると考えられる。
【0015】
まず、多価アルコール(1)について説明する。
式中、Xは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は水酸基である。
における炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が例示できる。
は水素原子、メチル基、エチル基又は水酸基であることが好ましい。
【0016】
は炭素数1〜3のアルキレン基であり、Xにおけるアルキル基から、一つの水素原子を除いた基が挙げられ、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が例示できる。
は、メチレン基又はエチレン基であることが好ましい。
【0017】
nは0又は1であり、nが1である場合には、Xは水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0018】
多価アルコール(1)の好ましいものとして、下記一般式(1−1)で表されるもの(以下、多価アルコール(1−1)と略記する)が例示できる。
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、Xは水素原子、メチル基又は水酸基である。)
【0021】
また、多価アルコール(1)の好ましいものとして、下記一般式(1−2)で表されるもの(以下、多価アルコール(1−2)と略記する)も例示できる。
【0022】
【化4】

【0023】
(式中、Xは水素原子又はメチル基であり;Rはメチレン基又はエチレン基である。)
【0024】
式中、Xは水素原子又はメチル基であり、メチル基であることが好ましい。
はメチレン基又はエチレン基であり、エチレン基であることが好ましい。
【0025】
多価アルコール(1)は、前記エポキシ樹脂の硬化温度よりも低い温度で固体であるものが好ましく、常温で固体であるものがより好ましい。ここで、常温とは、15〜30℃程度の温度範囲であることを指す。このような多価アルコール(1)を使用することで、保存時にマイクロカプセルを構成する前記樹脂との反応が抑制され、アミン系硬化剤をマイクロカプセルに一層安定して継続的に内包させることができるので、硬化性組成物の保存安定性を一層向上させることができる。
【0026】
また、多価アルコール(1)は、前記エポキシ樹脂の硬化温度よりも高い沸点を有するものが好ましい。このような多価アルコール(1)を使用することで、一層短時間での硬化が可能となる。
【0027】
多価アルコール(1)の好ましいものとしては、多価アルコール(1−1)に該当する、下記式(101)で表されるトリメチロールエタン(以下、TMEと略記する)、下記式(102)で表されるトリメチロールプロパン(以下、TMPと略記する)、及び下記式(103)で表されるペンタエリスリトール、並びに多価アルコール(1−2)に該当する、下記式(104)で表されるジトリメチロールプロパン(以下、DTMPと略記する)が例示できる。これらは、いずれも常温で固体である。
【0028】
【化5】

【0029】
硬化性組成物における多価アルコール(1)の含有量は、その種類や後述するマイクロカプセルの膜厚等を考慮して、目的に応じて適宜調整すれば良く、一概には言えない。例えば、マイクロカプセルの膜厚が薄いほど、多価アルコール(1)の含有量が少なくても、マイクロカプセル内部から外部への前記アミン系硬化剤の移動を促進して、短時間で硬化性組成物を硬化させる効果が得られる。
【0030】
このような観点から通常は、水素結合形成能を有する樹脂、アミン系硬化剤及びエポキシ樹脂の総量100質量部に対する、多価アルコール(1)の含有量は、マイクロカプセルの膜厚が100Å(オングストローム)(1×10−8m)以上400Å未満である場合には、0.1〜1.2質量部であることが好ましく、0.1〜1質量部であることがより好ましい。また、マイクロカプセルの膜厚が400Å以上800Å未満である場合には、0.1〜1.5質量部であることが好ましく、0.1〜1質量部であることがより好ましい。また、マイクロカプセルの膜厚が800Å以上1300Å未満である場合には、0.1〜3質量部であることが好ましく、0.1〜2質量部であることがより好まく、0.1〜1質量部であることが特に好ましい。
上記範囲の下限値以上とすることで、短時間で硬化性組成物を硬化させる一層優れた効果が得られ、上限値以下とすることで硬化性組成物の保存安定性や、硬化性組成物の硬化物の安定性を向上させる一層優れた効果が得られる。特に、多価アルコール(1)の前記含有量が、0.1〜1質量部である場合、通常100Å以上であれば、種々の膜厚のマイクロカプセルに対して、本発明の一層優れた効果が得られる。
【0031】
多価アルコール(1)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
【0032】
エポキシ樹脂は、一分子中に二つ以上のエポキシ基を有するものであれば特に限定されないが、液状のものが好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。ここで、ビスフェノール型エポキシ樹脂とは、ビスフェノール又はその誘導体とエポキシド誘導体とを反応させて得られるものであり、前記エポキシド誘導体としては、エピクロルヒドリンが例示できる。ビスフェノール型エポキシ樹脂の好ましいものとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が例示でき、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0033】
硬化性組成物におけるエポキシ樹脂の含有量は、硬化性組成物の硬化物に必要とされるサイズ等に応じて、適宜調節すれば良い。ただし、後述するように、水素結合形成能を有する樹脂及びアミン系硬化剤の含有量も考慮して調整することが好ましい。
【0034】
エポキシ樹脂は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
【0035】
水素結合形成能を有する樹脂は、アミン系硬化剤を内包させるためのマイクロカプセルを構成するものである。
前記樹脂は、目的に応じて適宜選択すれば良いが、ウレタン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリイミド等が例示でき、ウレタン樹脂、尿素樹脂又はポリアミドであることが好ましい。
【0036】
硬化性組成物における前記樹脂の分子長や、その含有量を調節することで、マイクロカプセルの膜厚を調節できる。具体的には、通常、前記樹脂の分子長が長いほど、またその含有量が多いほど、マイクロカプセルの膜厚が厚くなる。
マイクロカプセルの膜厚は、100Å以上であることが好ましい。このようにすることで、硬化性組成物の保存安定性を向上させる一層優れた効果が得られる。
【0037】
本発明においては、水素結合形成能を有する樹脂、アミン系硬化剤及びエポキシ樹脂の総量100質量部に占める、水素結合形成能を有する樹脂及びアミン系硬化剤の合計の含有量は、20〜50質量部であることが好ましく、30〜40質量部であることがより好ましい。このような範囲とすることで、エポキシ樹脂が一層良好に且つ短時間で硬化される。
【0038】
前記樹脂は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。ただし、通常は、一種を単独で使用することが好ましい。
【0039】
アミン系硬化剤は、イミダゾール系硬化剤、イミダゾリン系硬化剤、トリアジン系硬化剤等、エポキシ樹脂の硬化に使用できる公知のもので良く、特に限定されない。
イミダゾール系硬化剤としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等が例示できる。
イミダゾリン系硬化剤としては、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−フェニルイミダゾリン、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾリン、2−メチルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、2−ベンジルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−(o−トリル)−イミダゾリン、テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,2−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,3−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−4−メチルイミダゾリン等が例示できる。
トリアジン系硬化剤としては、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が例示できる。
【0040】
硬化性組成物におけるアミン系硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂の含有量等に応じて適宜調整すれば良いが、上記のように、水素結合形成能を有する樹脂の含有量も考慮して調整することが好ましい。
【0041】
アミン系硬化剤は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。ただし、通常は、一種を単独で使用することが好ましい。
【0042】
硬化性組成物は、本発明の効果を妨げない範囲内において、前記多価アルコール(1)、エポキシ樹脂、水素結合形成能を有する樹脂及びアミン系硬化剤以外に、その他の成分を含有していても良い。
前記その他の成分は、硬化性組成物の用途や目的に応じて任意に選択できる。例えば、硬化性組成物に導電性を付与する場合には、その他の成分の好ましいものとして、導電性微粒子が例示できる。また、硬化性組成物の粘度を調節する場合には、その他の成分の好ましいものとして各種有機溶媒が例示できる。
【0043】
前記導電性微粒子としては、導電性の材質のみからなるもの、非導電性の基材を導電性の材質で被覆したもの等が例示できる。
導電性の材質としては、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム等の各種金属、合金類が例示できる。
また、導電性の材質で被覆される前記基材の材質としては、各種樹脂類、ガラス類等が例示できる。
前記導電性微粒子の平均粒子径は、目的に応じて適宜調節すれば良い。例えば、硬化性組成物を導電性接着剤等の用途に適用する場合であれば、1〜10μm程度のものが好ましいものとして例示できる。
【0044】
導電性微粒子の含有量は、水素結合形成能を有する樹脂、アミン系硬化剤及びエポキシ樹脂の総量100質量部に対して、1〜40質量部であることが好ましく、3〜30質量部であることがより好ましい。このような範囲とすることで、本発明の効果を損なうことなく、硬化性組成物に十分な導電性を付与できる。
【0045】
本発明の硬化性組成物は、例えば、多価アルコール(1)、水素結合形成能を有する樹脂、アミン系硬化剤、エポキシ樹脂、及び必要に応じてその他の成分を所定量配合し、これを撹拌して分散物を調製することで製造できる。また、水素結合形成能を有する樹脂の代わりに、その原料となるモノマーを配合し、分散物の調製過程でこれを反応させて、水素結合形成能を有する樹脂としても良い。
また、アミン系硬化剤を内包した前記樹脂製のマイクロカプセルなど、硬化性組成物中の二種以上の含有成分が混合されたもの等で市販品があれば、これを使用しても良い。
【0046】
撹拌時の温度は20〜35℃程度であることが好ましく、時間は12〜36時間程度であることが好ましい。
撹拌は、撹拌子、撹拌翼又はスパチラ等を使用して行う方法や、超音波を利用する方法、遠心分離機を利用する方法等、公知の方法から適宜選択すれば良い。特に、一回あたりの硬化性組成物の製造量が多い場合には、プラネタリーミキサー等の各種ミキサー、三本ロールミル等の各種ミル等、公知の分散機を使用することが好ましい。ミキサーとしては、自転ミキサー及び公転ミキサーのいずれも好適である。
分散物は、分散状態の均一性が高いものほど好ましく、分散状態は、例えば、顕微鏡等の光学的手段を利用して確認できる。
【0047】
本発明の硬化性組成物は、保存安定性に優れ、且つ短時間で硬化できるものであるが、これは、前記各成分を配合成分として含有し、特に多価アルコールとして、特定の構造を有する多価アルコール(1)を選択したことによるものである。
本発明の硬化性組成物は、保存安定性に優れるので、所望の時期に安定してその性能を発揮させることができる。また、短時間で硬化できるので、該組成物の硬化を伴う工程を迅速に行うことができる。例えば、通信分野においては、ICチップのボンディングを行う時に、熱硬化性接着剤を使用するが、本発明の硬化性組成物を接着剤として使用することにより、製造工程の所要時間を大幅に短縮できる。
【実施例】
【0048】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0049】
[実施例1〜16]
<硬化性組成物の製造>
アミン系硬化剤としてイミダゾールを内包したウレタン樹脂からなるマイクロカプセルと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、表1に示す各種多価アルコール(1)と、導電性微粒子としてニッケル製微粒子(平均粒子径5μm)とを配合して、硬化性組成物を製造した。この時、ウレタン樹脂、イミダゾール及びビスフェノールA型エポキシ樹脂の総量100質量部に対する、多価アルコール(1)の含有量(質量部)を、表1に示す値となるように調節した。また、ウレタン樹脂、イミダゾール及びビスフェノールA型エポキシ樹脂の総量100質量部に占める、ウレタン樹脂及びイミダゾールの合計の含有量を、35質量部とした。また、ウレタン樹脂、イミダゾール及びビスフェノールA型エポキシ樹脂の総量100質量部に対するニッケル製微粒子の含有量を、5〜20質量部とした。ウレタン樹脂の含有量は、イミダゾール100質量部に対して6〜8質量部であった。そして、各成分を配合した後、この混合物を25〜30℃で24時間、撹拌翼を使用して100rpmで撹拌し、均一な分散物を調製することにより、硬化性組成物を製造した。硬化性組成物が均一な分散物であることは、顕微鏡を使用して凝集物がないことにより確認した。
そして、該硬化性組成物の保存安定性及び硬化度、並びに硬化性組成物の硬化物の安定性について、下記評価基準にしたがって評価した。評価結果を表1に示す。
【0050】
<硬化性組成物の評価>
(硬化度(1))
硬化性組成物の示差走査熱量測定(DSC)を行い、硬化度(硬化速度)を確認した。具体的には、硬化性組成物を160℃で10秒間加熱し、この時の発熱量の、160℃における総発熱量に対する比率(%)を算出した。
(硬化度(2))
アルミエッチングを施したアンテナの所定箇所に、得られた硬化性組成物を塗布し、これを150〜160℃で10〜20秒間加熱することで硬化させ、前記アンテナ上に硬化物を積層した。アンテナとしては、硬化性組成物の塗布面が400μm×400μm〜1000μm×1000μm程度のものを使用し、ここに硬化性組成物を点状に60箇所程度塗布し、塗布量が合計で3〜10mg程度となるようにした。
硬化反応終了後、室温まで冷却した後、直ちに前記アンテナの硬化物の積層面にメンディングテープMP−18(住友スリーエム社製)を貼付した。次いで、前記メンディングテープを引き剥がし、前記硬化物のアンテナからの剥離が無く、通信不良が10%未満であるものを「○」とし、少なくとも前記硬化物のアンテナからの剥離があるか又は通信不良が10%以上であるものを「×」とした。「○」と評価されたものは、硬化物の硬化度が十分に高く(硬化速度が十分に速く)、アンテナに対する接着力が高いものである。
(保存安定性)
硬化性組成物を40℃で一週間保存し、保存後の粘度が保存前の粘度の二倍未満であるものを「○」とし、二倍以上のものを「×」とした。
【0051】
<硬化物の評価>
アルミエッチングを施したアンテナの所定箇所に、得られた硬化性組成物を塗布し、これを150〜160℃で10〜20秒間加熱することで硬化させ、前記アンテナ上に硬化物を積層した。使用したアンテナと、硬化性組成物の塗布方法は、上記と同様である。この硬化物が積層されたアンテナを、以下の評価に供した。
(安定性(1))
硬化物が積層された前記アンテナを、温度85℃、湿度85%の条件で一週間保存し、室温で約1時間静置した後、アンテナの通信距離を測定した。保存後の通信距離が保存前の通信距離よりも10%未満だけ減少したものを「○」とし、10%以上20%未満減少したものを「△」とし、20%以上減少したものを「×」とした。
(安定性(2))
硬化物が積層された前記アンテナを使用して、−55℃から125℃に昇温する温度サイクルを50回繰り返す温度試験を行った。そして、室温で約1時間静置した後、アンテナの通信距離を測定した。温度試験後の通信距離が温度試験前の通信距離よりも10%未満だけ減少したものを「○」とし、10%以上20%未満減少したものを「△」とし、20%以上減少したものを「×」とした。
【0052】
[比較例1〜17]
多価アルコール(1)に代わり、多価アルコール(1)に該当しないその他のアルコールを所定量配合したこと(比較例2〜17)、あるいは多価アルコール(1)及びその他のアルコールのいずれも配合しなかったこと(比較例1)以外は、実施例1〜16と同様に組成物を製造した。そして、該組成物の保存安定性及び硬化度、並びに組成物の硬化物の安定性について、実施例1〜16と同様に評価した。評価結果を表2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
表1及び2から明らかなように、本発明の硬化性組成物は、保存安定性に優れ、短時間で硬化できるため硬化度にも優れており、さらにこれを硬化してなる硬化物も安定性に優れていた。一方、比較例2〜17の組成物は、いずれも保存安定性が不十分であった。これは、多価アルコール(1)に該当しないその他のアルコールを使用したため、保存中にこれらアルコールがマイクロカプセルに作用して、硬化剤がマイクロカプセルからその外部に移行し、エポキシ樹脂の硬化が一部で進行してしまったことが原因であると考えられる。例えば、比較例2では、硬化度(1)は実施例と同様の水準であり、組成物が容易に硬化することか確認され、さらに、保存安定性が不十分で一部で硬化が進行していたために、硬化物のアンテナに対する接着力が低いことが確認された。一方、多価アルコール(1)及びその他のアルコールのいずれも使用していない比較例1の組成物では、マイクロカプセルに好適に作用する成分がないので、保存安定性は高いが、硬化度が不十分であった。
【0056】
[実施例17]
ニッケル製微粒子を配合せず、ウレタン樹脂、イミダゾール及びビスフェノールA型エポキシ樹脂の総量100質量部に対するTMPの含有量を、0.01質量部としたこと以外は、実施例1と同様に硬化性組成物を製造し、その保存安定性及び硬化度を評価した。
その結果、硬化度(1)の値は96.6%で良好であった。また、保存安定性も他の実施例と同等であった。
【0057】
[実施例18]
ニッケル製微粒子を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様に硬化性組成物を製造し、その保存安定性及び硬化度を評価した。
その結果、硬化度(1)の値は95.9%で良好であった。また、保存安定性も他の実施例と同等であった。
【0058】
[実施例19]
ニッケル製微粒子を配合しなかったこと以外は、実施例5と同様に硬化性組成物を製造し、その保存安定性及び硬化度を評価した。
その結果、硬化度(1)の値は95.8%で良好であった。また、保存安定性も他の実施例と同等であった。
【0059】
[実施例20]
ニッケル製微粒子を配合しなかったこと以外は、実施例9と同様に硬化性組成物を製造し、その保存安定性及び硬化度を評価した。
その結果、硬化度(1)の値は95.7%で良好であった。また、保存安定性も他の実施例と同等であった。
【0060】
[実施例21]
ニッケル製微粒子を配合しなかったこと以外は、実施例13と同様に硬化性組成物を製造し、その保存安定性及び硬化度を評価した。
その結果、硬化度(1)の値は95.7%で良好であった。また、保存安定性も他の実施例と同等であった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、接着剤、シーリング剤等、各種硬化物を使用する分野全般に利用可能である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素結合形成能を有する樹脂からなり、且つアミン系硬化剤を内包したマイクロカプセルと、エポキシ樹脂と、多価アルコールと、を含有し、
前記多価アルコールが、下記一般式(1)で表されることを特徴とする硬化性組成物。
【化1】

(式中、Xは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は水酸基であり;Rは炭素数1〜3のアルキレン基であり; nは0又は1である。)
【請求項2】
前記水素結合形成能を有する樹脂、アミン系硬化剤及びエポキシ樹脂の総量100質量部に対して、前記多価アルコールを0.1〜1質量部含有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
さらに、導電性微粒子を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性組成物。

【公開番号】特開2011−32387(P2011−32387A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180784(P2009−180784)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】