説明

硬化性組成物

【課題】 金型離型性のよい透明樹脂硬化物を提供する。
【解決手段】 (A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、を必須成分とする硬化性組成物であって、(D)SiH基を1個或いはSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個含有し、(D)が、ポリエーテル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアクリル酸エステル系重合体、ポリメタクリル酸エステル系重合体、ポリアリレート系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、飽和炭化水素系重合体、不飽和炭化水素系重合体、フェノール樹脂系重合体であることを特徴とする硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、耐熱耐久性、耐光耐久性に優れた樹脂の金型離型性の改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラや携帯電話に付属のカメラ用のレンズユニットなどの光学材料用高分子材料には、高い透明性と硬度が要求されており、アクリル樹脂、ポリ−カーボネート樹脂、シクロオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂が使用されてきた。近年、小型化や安価製造を目的とし、レンズユニットと受光センサーユニットを一括で製造する方法が考案され、実用化されつつあるが、この一括での製造方法は受光センサーユニットだけでなくレンズを含めたすべての部品がはんだリフロー条件に晒されるため、使用される材料には高い耐熱耐久性が求められる。その結果、これまで使用されてきた熱可塑性樹脂では限界が生じている。
【0003】
このため、耐熱耐久性に優れた樹脂を用いることが提案されている。例えば、特許文献1では、イソシアヌレート骨格を有する化合物及びシロキサン骨格を有する化合物からなる硬化性樹脂をレンズ用材料に用いることが提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂を用いて金型成型を行った場合、金型表面に対する樹脂の離型性が十分でないため、成型体を取り出す際に金型表面に樹脂カスが付着したままとなり、成型ごとに付着カスを取り除く必要があったり、又は成型体の取り出しが困難な場合があった。
【0004】
金型に対する離型性の改善に関してはこれまで、幾つかの改善方法が提案されている。例えば、特許文献2では、アルケニル基を有する含フッ素アミド化合物と含フッ素オルガノ水素シロキサンを樹脂主骨格とした硬化性組成物が提案されている。樹脂主骨格に離型性を持つ含フッ素フラグメントを導入することで金型に対する離型性を改善しているが、樹脂骨格が限定されてしまうため、種々の硬化性樹脂に対する汎用性に欠けるという問題があった。
【0005】
また、特許文献3では、ウレタン変性アクリル樹脂と反応性離型剤から成る光硬化性樹脂組成物を、特許文献4ではポリアルキレン(アリーレン)オキシ骨格を有する光硬化性樹脂組成物を、特許文献5重合性官能基構造と直鎖状ポリシロキサン構造とを有する化合物と(メタ)アクリル酸エステルモノマーと光ラジカル発生剤とを含む硬化性組成物がそれぞれ提案されているが、硬化形式が光硬化性であり、なおかつ樹脂骨格が限定されている。また、熱硬化性樹脂組成物への適応性についての記載が無いことから、種々の硬化性樹脂に対する汎用性に欠けるという問題があった。
【0006】
特許文献6では、硬化性有機樹脂と分子中にポリエーテル基、長鎖アルキル或いはアラルキル基を含有するシリコーンオイルを含有する水中生物付着防止塗料組成物が提案されているが、樹脂に対する防汚性に関する改善であり離型性に関する改善方法ではないこと、また、樹脂骨格が限定されてしまうため種々の硬化性樹脂に対する汎用性に欠けるという問題があった。
【0007】
そのため、耐熱耐久性に優れ、かつ、金型離型性のよい透明樹脂の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−84437号公報
【特許文献2】特開平08−67819号公報
【特許文献3】特開2000−63460号公報
【特許文献4】特開平05−262812号公報
【特許文献5】特開2010−6870号公報
【特許文献6】特開2010−13591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、耐熱耐久性に優れ、かつ、金型離型性のよい透明樹脂を提供することにある。さらに詳しくは、耐熱耐久性に優れ、かつ、金型離型性のよい透明樹脂硬化物を得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意検討した結果、特定のSiH基或いはSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する化合物を硬化性樹脂に添加することで、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の構成をなす。
【0012】
1). (A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、を必須成分とする硬化性組成物であって、(D)SiH基を1個或いはSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個含有し、(D)が、ポリエーテル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアクリル酸エステル系重合体、ポリメタクリル酸エステル系重合体、ポリアリレート系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、飽和炭化水素系重合体、不飽和炭化水素系重合体、フェノール樹脂系重合体であることを特徴とする硬化性組成物。
【0013】
2). 化合物(A)が、下記一般式(I)
【0014】
【化1】

【0015】
で表されるいずれかの構造を含む炭素数2以上の有機基を同一分子内に有する化合物である、1)に記載の硬化性組成物。
【0016】
3). 化合物(A)が、イソシアヌル環骨格を有する化合物である1)又は2)に記載の硬化性組成物。
【0017】
4). 化合物(A)が、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジメチルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、ジシクロペンタジエン、トリビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネンである、1)〜3)に記載の硬化性組成物。
【0018】
5). 化合物(B)が、環状或いは非環状のポリオルガノシロキサンである1)〜4)に記載の硬化性組成物。
【0019】
6). 化合物(B)が、下記一般式(II)
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、Rは置換基を有しても良い炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20の置換基を有しても良いアリール基或いは置換基を有しても良い炭素数7〜20のアラルキル基を表し、mは0〜20の整数であり、nは2〜20の整数であり、mとnの合計が3〜40である)で表される化合物である1)〜5)に記載の硬化性組成物。
【0022】
7). 化合物(B)が、下記一般式(II)
【0023】
【化3】

【0024】
(式中、Rは置換基を有しても良い炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20の置換基を有しても良いアリール基或いは置換基を有しても良い炭素数7〜20のアラルキル基を表し、mは0〜20の整数であり、nは2〜20の整数であり、mとnの合計が3〜40である)で表される化合物と化合物(A)をヒドロシリル化反応することにより得られ、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物である1)〜5)に記載の硬化性組成物。
【0025】
8).化合物(D)の分子量が500〜100000である1)〜7)に記載の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、離型を目的とした添加剤のブリードアウトを起こすこと無く金型離型性のよい硬化物を得られうる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明を実施するにあたって好ましい形態について説明する。
【0028】
まず、化合物(A)について説明する。
化合物(A)は1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する有機化合物であれば特に限定されない。
有機化合物としてはポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素としてC、H、N、O、S、ハロゲンのみを含むものであることが好ましい。シロキサン単位を含むものの場合は、靭性等の機械的強度に問題がある。
【0029】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。
【0030】
化合物(A)の有機化合物は、有機重合体系の化合物と有機単量体系化合物に分類できる。
【0031】
有機重合体系化合物としては例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の化合物を用いることができる。
【0032】
また有機単量体系化合物としては例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系:直鎖系、脂環系等の脂肪族炭化水素系:複素環系の化合物およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0033】
化合物(A)のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、下記一般式(III)
【0034】
【化4】

【0035】
(式中、Rは水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される基が反応性の点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、
【0036】
【化5】

【0037】
で示される基が特に好ましい。
【0038】
化合物(A)のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、下記一般式(IV)で表される部分構造を環内に有する脂環式の基が、硬化物の耐熱性が高いという点から好適である。
【0039】
【化6】

【0040】
(式中Rは水素原子あるいはメチル基を表す。)また、原料の入手の容易さからは、下記式で表される部分構造を環内に有する脂環式の基が好適である。
【0041】
【化7】

【0042】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合は化合物(A)の骨格部分に直接結合していてもよく、2価以上の置換基を介して共有結合していても良い。2価以上の置換基としては炭素数0〜10の置換基であれば特に限定されないが、構成元素としてC、H、N、O、S、およびハロゲンのみを含むものが好ましい。これらの置換基の例としては、
【0043】
【化8】

【0044】
【化9】

【0045】
が挙げられる。またこれらの2価以上の置換基の2つ以上が共有結合によりつながって1つの2価以上の置換基を構成していてもよい。
【0046】
以上のような骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、ビニルエーテル基、
【0047】
【化10】

【0048】
が挙げられる。
【0049】
化合物(A)の具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロへキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ビスフェノールSのジアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3−ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(ビニルオキシ)アダマンタン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ビニルシクロへキセン、1,5−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、テトラアリルビスフェノールA、2,5−ジアリルフェノールアリルエーテル、およびそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、
【0050】
【化11】

【0051】
【化12】

【0052】
その他、従来公知のエポキシ樹脂のグリシジル基の一部あるいは全部をアリル基に置き換えたもの等が挙げられる。
【0053】
化合物(A)としては、上記のように骨格部分とアルケニル基(SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合)とに分けて表現しがたい、低分子量化合物も用いることができる。これらの低分子量化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエン等の脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等の置換脂肪族環状オレフィン化合物系等が挙げられる。
【0054】
化合物(A)としては、特に、耐熱性、耐光性が高いという観点から下記一般式(V)で表されるトリアリルイソシアヌレート及びその誘導体が特に好ましい。
【0055】
【化13】

【0056】
(式中Rは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよく、少なくとも2個のRはSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含む)で表される化合物が好ましい。
【0057】
上記一般式(V)のRとしては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜4の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいRの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、
【0058】
【化14】

【0059】
等が挙げられる。
【0060】
上記一般式(V)のRとしては、得られる硬化物の化学的な熱安定性が良好になりうるという観点からは、2個以下の酸素原子を含みかつ構成元素としてC、H、Oのみを含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜50の一価の炭化水素基であることがより好ましい。これらの好ましいRの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、
【0061】
【化15】

【0062】
等が挙げられる。
【0063】
上記一般式(V)のRとしては、反応性が良好になるという観点からは、3つのRのうち少なくとも1つが
【0064】
【化16】

【0065】
で表される基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、下記一般式(VI)
【0066】
【化17】

【0067】
(式中、Rは水素原子あるいはメチル基を表す。)で表される基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましく、
3つのRのうち少なくとも2つが下記一般式(VII)
【0068】
【化18】

【0069】
(式中、Rは直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の有機基を表し、Rは水素原子あるいはメチル基を表す。)で表される有機化合物(複数のRおよびRはそれぞれ異なっていても同一であってもよい。)であることがさらに好ましい。
【0070】
上記一般式(VII)のRは、直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の有機基であるが、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、直接結合あるいは炭素数1〜20の二価の有機基であることが好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜10の二価の有機基であることがより好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜4の二価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいRの例としては、
【0071】
【化19】

【0072】
等が挙げられる。
【0073】
上記一般式(VII)のRとしては、得られる硬化物の化学的な熱安定性が良好になりうるという観点からは、直接結合あるいは2つ以下の酸素原子を含みかつ構成元素としてC、H、Oのみを含む炭素数1〜48の二価の有機基であることが好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の炭化水素基であることがより好ましい。これらの好ましいRの例としては、
【0074】
【化20】

【0075】
が挙げられる。
【0076】
上記一般式(VI)のRは、水素原子あるいはメチル基であるが、反応性が良好であるという観点からは、水素原子が好ましい。
【0077】
ただし、上記のような一般式(V)で表される有機化合物の好ましい例においても、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2〜6個含有することは必要である。耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に3個以上含有する有機化合物であることがより好ましい。
【0078】
以上のような一般式(V)で表される有機化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、
【0079】
【化21】

【0080】
等が挙げられる。
なお、化合物(A)は、単独又は2種以上のものを用いることが可能である。
【0081】

次に、化合物(B)について説明する。
化合物(B)については1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノポリシロキサン化合物であれば特に限定されず、例えば国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。
【0082】
これらのうち、硬化物に柔軟性が付与されるという観点より、
【0083】
【化22】

【0084】
(式中、R、Rは炭素数1〜6の有機基を表し同一であっても異なっても良く、lは、0〜50、nは1〜50、mは0〜10の数を表す。)
で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状オルガノポリシロキサンが好ましい。またR、Rは入手性、耐熱性の観点より特にメチル基であるものが好ましく、硬化物の強度が高くなるという観点より、特にフェニル基であるものが好ましい。
これらのうち、硬化物の耐熱性が高いという観点より、
【0085】
【化23】

【0086】
(式中、R10は炭素数1〜6の有機基を表し、nは0〜50の数を表す。)
で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有し、分子中にTまたはQ構造を有するオルガノポリシロキサンが好ましく、R10は入手性、耐熱性の観点より特にメチル基であるものが好ましい。
【0087】
これらのうち、入手性および化合物(A)との反応性が良いという観点からは、さらに、下記一般式(II)
【0088】
【化24】

【0089】
(式中、Rは炭素数1〜6の有機基を表し同一であっても異なっても良く、nは1〜10、mは0〜10の数を表す)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状オルガノポリシロキサンが好ましい。
【0090】
一般式(II)で表される化合物中の置換基Rは、C、H、Oから構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0091】
一般式(II)で表される化合物としては、入手容易性及び反応性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
上記した各種化合物(B)は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0092】
また、前記化合物(A)と良好な相溶性を有するという観点からは、鎖状又は環状ポリオルガノシロキサンと、一種以上の化合物(A)との反応物も好適に使用できる。この場合、反応物と化合物(A)との相溶性をより高めるために、反応物から未反応のシロキサン類を脱揮などにより除去したものをもちいることもできる。
化合物(B)の化合物(A)に対する相溶性を高くし得るという観点からは、化合物(A)の好ましい具体例として、ノボラックフェノールのアリルエーテル及びビスフェノールAジアリルエーテル、2,2’−ジアリルビスフェノールA、ジアリルフタレート、フタル酸のビス(2−アリルオキシエチル)エステル、スチレン、α−メチルスチレン、アリル末端プリプロピレンオキシド及びポリエチレンオキシド、トリアリルイソシアヌレートなどが挙げられる。化合物(A)の有機化合物は、単独もしくは2種類以上のものを混合して用いることが可能である。
【0093】
化合物(B)の分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、より流動性を発現しやすいという観点からは低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、好ましい分子量の下限は50であり、好ましい分子量の上限は100,000、より好ましくは50,000、さらに好ましくは10,000である。
【0094】
上記したような各種化合物(B)は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
反応時の触媒混合方法としては、各種方法をとることができるが、化合物(A)にヒドロシリル化触媒を混合したものを、化合物(B)に混合する方法が好ましい。化合物(A)と化合物(B)との混合物にヒドロシリル化触媒を混合する方法では反応の制御が困難な場合がある。また、化合物(B)とヒドロシリル化触媒を混合したものに化合物(A)を混合する方法では、ヒドロシリル化触媒の存在下、化合物(B)が混入している水分と反応性を有するため、変質することがある。
【0095】
反応温度としては種々設定できるが、好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる傾向があり、反応温度が高いと工業的に不利な場合がある。反応は一定の温度で行ってもよく、また必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。反応時間については特に限定されない。経済的な面からは、好ましくは20時間以内、さらに好ましくは10時間以内である。圧力も特に限定されないが、特殊な装置が必要になったり、操作が煩雑になったりする、という面から、好ましくは大気圧〜5MPa、さらに好ましくは大気圧〜2MPaである。
【0096】
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
【0097】
溶媒の使用量は、特に限定されないが、反応を均一、かつ、促進させるためには、化合物(A)を完全に溶解できる量が好ましい。化合物(A)100重量部に対して20重量部以上500重量部以下が好ましく、50重量部以上300重量部以下がより好ましい。
その他、反応性を制御する目的等のために種々の添加剤を用いてもよい。
ヒドロシリル化反応後に、溶媒並びに/または未反応のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機系化合物(A)と1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するポリオルガノシロキサン(B)を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる硬化剤が揮発分を有さないため、硬化の場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては例えば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲル等による処理等が挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は120℃であり、より好ましくは100℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
【0098】
以上のような、硬化剤の例としては、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物や、ビス〔4−(2−アリルオキシ)フェニル〕スルホンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物がより好ましい。
【0099】
本発明では、化合物(B)は単独又は2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0100】
化合物(A)と化合物(B)の混合比率は、化合物(A)のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合と化合物(B)のSiH基のモル比率が、(A):(B)=1:0.5〜1:2であることが好ましい。(A):(B)は、1:0.8〜1:1.5であることがより好ましく、1:0.9〜1:1.2であることがさらに好ましい。比の値〔(A)/(B)〕が1/2よりも小さい或いは2よりも大きい場合は、充分な強度が得られない場合があり、耐熱性も低くなりうる。
【0101】
次に、(C)ヒドロシリル化触媒について説明する。
ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl);白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO));白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh4、Pt(PBu);白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu))(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、a、bは、整数を示す。);ジカルボニルジクロロ白金;カールシュテト(Karstedt)触媒;アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び第3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体;ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒等が挙げられる。さらに、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0102】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)、RhCl、RhAl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl等が挙げられる。
【0103】
これらの中では、触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0104】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能である。助触媒の例としては、トリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物、水等が挙げられる。
【0105】
助触媒の添加量は特に限定されないが、上記ヒドロシリル化触媒1モルに対して、下限1×10−5モル、上限1×10モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限1×10−3モル、上限10モルの範囲である。上記触媒には助触媒を併用することができる。
ヒドロシリル化触媒の添加量は特に限定されないが、十分な反応性を有し、かつ一般式(9)で表される化合物の製造コストを比較的低く抑えるために、SiH基1モルに対して、10−1〜10−8モルの範囲が好ましく、より好ましくは、10−2〜10−6モルの範囲である。
【0106】
一般式(7)で表される化合物の使用量は一般式(7)で表される化合物の種類や溶媒の種類、反応の条件によって異なるが、トリアリルイソシアヌレートに対して、0.01〜3倍モル量、好ましくは0.1〜2.5倍モル量である。
【0107】
反応温度としては種々設定できるが、好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる傾向があり、反応温度が高いと工業的に不利な場合がある。反応は一定の温度で行ってもよく、また必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
【0108】
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。反応時間については特に限定されない。経済的な面からは、好ましくは20時間以内、さらに好ましくは10時間以内である。圧力も特に限定されないが、特殊な装置が必要になったり、操作が煩雑になったりする、という面から、好ましくは大気圧〜5MPa、さらに好ましくは大気圧〜2MPaである。
【0109】
また、反応は無溶媒下、溶媒中のいずれにおいても実施可能であり、溶媒を用いて反応を行う場合、使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されない。具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。上記溶媒は単独で用いてもよいし、混合して用いてもよく、この場合、その混合比率に特に制限はない。
【0110】
溶媒の使用量は、特に限定されないが、反応を均一、かつ、促進させるためには、反応原料を完全に溶解できる量が好ましい。反応原料100重量部に対して20重量部以上1000重量部以下が好ましく、50重量部以上500重量部以下がより好ましい。
その他、反応性を制御する目的等のために種々の添加剤を用いてもよい。
【0111】
反応終了後は、必要に応じて溶媒を留去することにより目的の化合物を取得することができる。取得した化合物はカラムクロマトグラフィや蒸留によって分離、精製を行ってもよい。
【0112】
次に、化合物(D)について説明する。
化合物(D)はSiH基を1個或いはSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個含有するポリエーテル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアクリル酸エステル系重合体、ポリメタクリル酸エステル系重合体、ポリアリレート系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、飽和炭化水素系重合体、不飽和炭化水素系重合体、フェノール樹脂系重合体であれば特に限定されない。
【0113】
化合物(D)に含有するSiH基或いはSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。
【0114】
SiH基としては特に限定されないが、下記一般式(VIII)
【0115】
【化25】

【0116】
(式中、R11は、炭素数1〜10の有機基或いはポリオルガノシロキシ基を表し、同一であっても異なっても良い。)で表される基が反応性の観点から好適である。また、上記炭素数1〜10の有機基中の水素原子が1部或いはすべてフッ素原子に置換されたものも金型に対する離型性という観点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、
【0117】
【化26】

【0118】
で示される基が好ましい。
SiH基は化合物(D)の骨格部分に直接結合しても良く、2価以上の置換基を介して共有結合していても良い。2価以上の置換基としては特に限定されないが、例えば、
【0119】
【化27】

【0120】
(式中、Rは炭素数1〜10の有機基を表し、同一でも異なっても良い。)が挙げられる。また、これらの2価以上の置換基の2つ以上が共有結合によりつながって1つの2価以上の置換基を構成してもよい。
以上のような骨格部分に共有結合する基の例としては、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、フェニルメチルシリル基、ジフェニルシリル基、ビストリメチルシロキシシリル基、
【0121】
【化28】

【0122】
が挙げられる。
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、下記一般式(III)
【0123】
【化29】

【0124】
(式中、Rは水素原子或いはメチル基を表す。)で示される基が反応性の点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、
【0125】
【化30】

【0126】
で示される基が特に好ましい。
【0127】
化合物(D)のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、下記一般式(IV)
【0128】
【化31】

【0129】
(式中、Rは水素原子或いはメチル基を表す。)で表される部分構造を環内に有する脂環式の基が、硬化物の耐熱性が高まるという点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、下記式
【0130】
【化32】

【0131】
で表される部分構造を環内に有する脂環式の基が好適である。
【0132】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合は化合物(D)の骨格部分に直接結合していてもよく、2価以上の置換基を介して共有結合していても良い。2価以上の置換基としては炭素数0〜10の置換基であれば特に限定されないが、構成元素としてC,H,N,O,S,及びハロゲンのみを含むものが好ましい。これらの置換基の例としては、
【0133】
【化33】

【0134】
【化34】

【0135】
が挙げられる。
【0136】
化合物(D)の例としては、SiH基或いはSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を一分子中に一つ有するポリエチレングリコール系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアクリル酸エステル系重合体、ポリメタクリル酸エステル系重合体、ポリアリレート系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、飽和炭化水素系重合体、フェノール樹脂系重合体やこれら重合体がシリコーン変性された例えば下記式、
【0137】
【化35】

【0138】
(式中、R12は同一でも異なっても良い置換基を有しても良い炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20の置換基を有しても良いアリール基或いは置換基を有しても良い炭素数7〜20のアラルキル基を表し、R13は同一でも異なっても良い水素原子或いは置換基を有しても良い炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20の置換基を有しても良いアリール基或いは置換基を有しても良い炭素数7〜20のアラルキル基を表し、Xはジメチルシリル基、ジエチルシリル基、フェニルメチルシリル基、ジフェニルシリル基、ジメチルビニルシリル基、ジエチルビニルシリル基、フェニルメチルビニルシリル基、ジフェニルビニルシリル基、アリルジメチルシリル基、アリルジフェニルシリル基、ビニル基、アリル、アクリロイル基或いはメタクリロイル基を表し、n及びmは0〜200の整数である)などが挙げられる。
【0139】
なお、上記一般式中、R12及びR13において、炭素数1〜20のアルキル基として例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル、n−ノナデシル基、n−イコシル基、アルキル基の水素原子の一部或いは全部をフッ素原子に置換した基などが挙げられる。炭素数6〜20のアリール基としては例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−エチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−フェニルオキシフェニル基、p−クロロフェニル基、p−ブチルフェニル基、p−オクチルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、アリール基の水素原子の一部或いは全部をフッ素原子に置換した基などが挙げられる。また、炭素数7〜20のアラルキル基としては例えば、ベンジル基、フェネチル基、p−メチルベンジル基、p−メトキシベンジル基、p−クロロベンジル基、p−フェニルオキシフェニル基、フルオレニル基、アラルキル基の水素原子の一部或いは全部をフッ素原子に置換した基などが挙げられる。原料の入手の容易さからは、メチル基、フェニル基が好ましく、金型に対する離型性の点からはアルキル基、アリール基、アラルキル基の水素原子の一部或いは全部をフッ素原子に置換したものが好適である。
【0140】
上記化合物(D)の分子量に関して、配合する樹脂との相溶性の観点から500〜100000の範囲であることが好ましく、入手の容易性の観点からは1000〜50000の範囲であることが好ましい。
【0141】
上記化合物(D)を配合する場合、化合物(D)を配合する樹脂の物性を大きく損なわない範囲であれば配合量は特に限定されないが、通常、全配合物重量に対し、0.5〜50質量%、好ましくは1〜20質量%の量を配合するのが望ましい。0.5質量%を下回ると十分な離型性が得られない場合がある。
【0142】
なお、上記化合物(D)は単独或いは複数種類の化合物(D)を使用してもよい。
【0143】
また、硬化性組成物には必要に応じて充填材を添加してもよい。
【0144】
充填材としては各種のものが用いられるが、例えば、石英、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系充填材、窒化ケイ素、銀粉、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、カーボンブラック、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、無機バルーン等の無機充填材をはじめとして、エポキシ系等の従来の封止材の充填材として一般に使用或いは/及び提案されている充填材等を挙げることができる。
【0145】
また、本発明で得られる硬化性組成物には老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系等一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
【0146】
ヒンダートフェノール系老化防止剤としては、チバスペシャリティーケミカルズ社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
【0147】
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。 これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0148】
また、本発明で得られる硬化性組成物にはラジカル禁止剤を添加してもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤や、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。
【0149】
また、これらのラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0150】
また、本発明で得られる硬化性組成物には紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート等が挙げられる。 これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0151】
また、得られる反応物が高粘度である場合、溶剤に溶解して用いることも可能である。使用できる溶剤は特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)、エチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。
【0152】
溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、クロロホルムが好ましい。
【0153】
使用する溶媒量は適宜設定できるが、用いる硬化性組成物1gに対しての好ましい使用量の下限は0.1mLであり、好ましい使用量の上限は10mLである。使用量が少ないと、低粘度化等の溶媒を用いることの効果が得られにくく、また、使用量が多いと、材料に溶剤が残留して熱クラック等の問題となり易く、またコスト的にも不利になり工業的利用価値が低下する。
これらの、溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0154】
さらに、本発明の硬化性組成物には、その他、着色剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、染料、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤、物性調整剤等を本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【実施例】
【0155】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0156】
(合成例1)
2Lオートクレーブにトルエン696g、1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン556gを加えて、内温が104℃になるように加熱した。そこに、トリアリルイソシアヌレート80g、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金3重量%含有)0.05g、トルエン60gの混合物を滴下し、7時間加熱撹拌させた。未反応の1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したもの(反応物Aと称す、SiH価:9.2mmol/g)であることがわかった。
【0157】
(実施例1、2及び比較例の配合)
各種添加剤(添加剤A、B)と合成例1で得られた反応物A、トリアリルイソシアヌレート、硬化触媒として白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金3重量%含有)、硬化遅延剤として1−エチニルシクロヘキサノールを用い、下記表1に従い配合した。なお、比較例として添加剤を付与しないものを別途配合した。
【0158】
【表1】

【0159】
添加剤A 片末端ビニル基含有ポリブチルアクリレート(分子量 約12000)
添加剤B 片末端ビニル基含有ポリブチルアクリレート(分子量 約25000)
(金型離型性評価方法及び評価結果)
ホットプレート上に表面をニッケル−リンメッキ処理を施したSUS製平板(50×50×0.5mm)を置いて150℃で加熱し、円柱型(Φ10mm、10mm)の分銅にフックを取り付けたもの(材質:大同特殊鋼株式会社製NAK80)の底面に上記で配合した配合物を付着させたものを乗せて5分間放置して配合物を硬化させた。分銅のフックを引っ張ってSUS製平板から分銅を剥がした時に要した強さ(N)を測定した。
【0160】
上記の条件で作製し、測定したデータを表2に示す。
【0161】
【表2】

【0162】
表2に示した結果のとおり、添加剤A、Bを添加した配合物はより弱い力で剥がすことができた。
【0163】
上述のとおり、本発明により見出された化合物を硬化性樹脂に添加して金型成型を行った場合、金型に対する離型性が改善されることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、を必須成分とする硬化性組成物であって、(D)SiH基を1個或いはSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個含有し、(D)が、ポリエーテル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアクリル酸エステル系重合体、ポリメタクリル酸エステル系重合体、ポリアリレート系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、飽和炭化水素系重合体、不飽和炭化水素系重合体、フェノール樹脂系重合体であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
化合物(A)が、下記一般式(I)
【化1】


で表されるいずれかの構造を含む炭素数2以上の有機基を同一分子内に有する化合物である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
化合物(A)が、イソシアヌル環骨格を有する化合物である請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
化合物(A)が、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジメチルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、ジシクロペンタジエン、トリビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネンである、請求項1〜3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
化合物(B)が、環状或いは非環状のポリオルガノシロキサンである請求項1〜4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
化合物(B)が、下記一般式(II)
【化2】


(式中、R1は置換基を有しても良い炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20の置換基を有しても良いアリール基或いは置換基を有しても良い炭素数7〜20のアラルキル基を表し、mは0〜20の整数であり、nは2〜20の整数であり、mとnの合計が3〜40である)で表される化合物である請求項1〜5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
化合物(B)が、下記一般式(II)
【化3】


(式中、R1は置換基を有しても良い炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20の置換基を有しても良いアリール基或いは置換基を有しても良い炭素数7〜20のアラルキル基を表し、mは0〜20の整数であり、nは2〜20の整数であり、mとnの合計が3〜40である)で表される化合物と化合物(A)をヒドロシリル化反応することにより得られ、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物である請求項1〜5に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
化合物(D)の分子量が500〜100000の範囲である請求項1〜7に記載の硬化性組成物。

【公開番号】特開2012−121976(P2012−121976A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272949(P2010−272949)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】