硬化樹脂含浸基板及びその製造方法
【課題】プレプレグおよび硬化製品での空隙の数を減少させる加工工程または複数工程を含む、樹脂含浸基板を製造する方法を提供する。
【解決手段】基板を、硬化性樹脂を含有する溶媒を含む含浸ゾーン(38)に入れて、樹脂含浸基板を作製することを含む硬化樹脂含浸基板(106)を製造する方法であって、前記硬化樹脂含浸基板中の空隙の数が、前記硬化樹脂含浸基板製品中の空隙の数を減少させる少なくとも1つの加工工程で前記基板を加工することによって減少される方法。
【解決手段】基板を、硬化性樹脂を含有する溶媒を含む含浸ゾーン(38)に入れて、樹脂含浸基板を作製することを含む硬化樹脂含浸基板(106)を製造する方法であって、前記硬化樹脂含浸基板中の空隙の数が、前記硬化樹脂含浸基板製品中の空隙の数を減少させる少なくとも1つの加工工程で前記基板を加工することによって減少される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
樹脂またはその組み合わせを、硬化樹脂充填基板中の空隙数を減少させる1つまたはそれ以上の加工工程にかけることによって、減少した空隙積層体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(2)技術の説明
強化繊維およびマトリックス樹脂を含む高度複合材料は、印刷回路板および他の電気的構成要素のために使用される積層体等の異質な構造での非分散性構成要素になった。1つの特に有用なクラスの高度複合体は、樹脂強化繊維を使用して製造される積層体である。典型的には、組合せを硬化させて、積層材料を形成させた後に、繊維材料が硬化性樹脂化合物に含浸される。
【0003】
積層体製造手段、並びに積層体に使用される樹脂および強化材料での向上は、迅速に、そして効果的になされ、そして高度の強度および信頼性を備えた積層製品を生じた。しかし、積層体は、典型的に、液体樹脂化合物を備えた繊維強化材料を高速で含浸させることによって製造されるので、硬化積層体が、繊維束に、そして繊維束の間の隙間の空間にある小さなエアーポケット等の空隙を含むことは典型的である。したがって、基本的に空隙のない高品質の樹脂を含浸させた繊維積層体を作製するために高生産での操作を可能にする新たな積層体製造手段の必要性が残る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、プレプレグおよび硬化製品での空隙の数を減少させる加工工程または複数工程を含む、樹脂含浸基板を製造する方法を提供することである。
【0005】
本発明の別の目的は、基本的に空隙を含まない硬化樹脂含浸基板を含むプレプレグおよび/または積層体製品を製造する方法を提供することである。
【0006】
本発明のさらなる別の目的は、高生産で、そして低費用で、基本的に空隙を含まないプレプレグおよび/または積層体を製造する方法を含む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施形態では、本発明は、硬化樹脂含浸基板を製造する方法を含む。前記方法は、基板を硬化性樹脂を含有する溶媒を含む浸漬パンに入れて、樹脂含浸基板を得ること、そして樹脂含浸基板を少なくとも部分的に硬化して、硬化樹脂含浸基板を得ることからなる。硬化樹脂含浸基板での空隙の数は、(1)比較的低い固形分含有量を有する硬化性樹脂を含有する溶媒を使用する工程、(2)樹脂含浸基板を、比較的高い固形分含有量を有する硬化性樹脂を含有する溶媒を含む第2の含浸ゾーンに浸漬させる工程、(3)含浸の前、第1の浸漬パンの後、および第1/第2の浸漬パン中で基板を機械的に操作する工程、(4)第1の含浸ゾーンに基板を入れる前に、基板を加熱する工程、(5)樹脂を含有する溶媒を加熱する工程、(6)2つの浸漬パンの間で含浸した湿潤ウェブを加熱する工程、および(7)樹脂を用いたガラスの真空含浸から選択される少なくとも1つの加工工程によって、基板を加工することにより減少される。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、基板を硬化性樹脂を含有する溶媒を含む含浸ゾーンに入れて、硬化性樹脂含浸基板を得、そしてその後、樹脂含浸基板を少なくとも部分的に硬化させて、硬化樹脂を含浸させた基板を得ることによって、硬化樹脂含浸基板を製造する方法を含む。前記方法のさらなる工程は、含浸ゾーンで部分的真空を形成することである。
【0009】
さらに別の実施形態では、本発明は、基本的に空隙のない、そして好ましくは空隙のない硬化性樹脂含浸基板を包含するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プレプレグおよび硬化製品での空隙の数を減少させる加工工程または複数工程を含む、樹脂含浸基板を製造する方法が提供される。
【0011】
本発明によれば、基本的に空隙を含まない硬化樹脂含浸基板を含むプレプレグおよび/または積層体製品を製造する方法が提供される。
【0012】
本発明には、高生産で、そして低費用で、基本的に空隙を含まないプレプレグおよび/または積層体を製造する方法が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本実施形態の説明
本発明は、硬化製品での空隙の数を減少させる少なくとも1つの加工工程を含む強化樹脂含浸プレプレグおよび積層体を製造する方法に関する。さらに詳細には、最終製品での空隙の数を減少させるために選択され得る加工工程としては、(1)比較的低い固形分含有量を有する硬化性樹脂を含有する溶媒を使用する工程、(2)比較的高い固形分含有量を有する硬化性樹脂を含有する溶媒を含む第2の含浸ゾーンに樹脂含浸基板を浸漬させる工程、(3)含浸の前、第1の浸漬パンの後、および第1/第2の浸漬パン中で基板を機械的に操作する工程、(4)第1の含浸ゾーンに入れる前に基板を加熱する工程、(5)樹脂を含有する溶媒を加熱する工程、(6)2つの浸漬パンの間で含浸した湿潤ウェブを加熱する工程、および(7)樹脂を用いたガラスの真空含浸が挙げられる。本発明はまた、基本的に空隙がなく、そして1つまたはそれ以上の加工工程を組込む工程、および/または本発明の工程修飾によって製造される硬化樹脂含浸プレプレグおよび積層体材料を包含するものである。
【0014】
本発明の目的のために、用語「繊維性基板」および「基板」は、回路板に有用な積層体を製造するのに一般に使用される種類の繊維強化材料に該当して相互交換で使用され、それに限定されないが、ガラス繊維、E−ガラス、石英、紙、アラミド、PTFE、S−ガラス、D−ガラス、または類似の強化材料等の織布または非織布または繊維が挙げられる。好ましい繊維基板は、E−ガラスである。
【0015】
本発明の目的のために、用語「樹脂」は、硬化性重合体、溶媒、並びに一般に硬化性重合体に添加して、プレプレグおよび積層体に対する強度、耐久性、耐熱性、耐水性等を提供する任意の他の材料および添加剤を含む1つまたはそれ以上の重合体系に関する。樹脂系に有用な成分のある種の例としては、溶媒、鎖伸長剤、硬化剤、触媒、反応性制御剤等が挙げられる。本発明の過程に関して有用な樹脂系の例としては、米国特許第5,508,328号、第5,620,789号、第5,534,565号および米国仮特許出願第60/019,853号に記載され、そしてその各々は、参照してここに組込まれる。本発明の過程にしたがって製造された樹脂含浸基板は、金属クラッド積層体、ハウジングおよび電気回路、集積回路ハウジング、回路板等を製造する上で有用な他の物体を製造する上で有用である。
【0016】
プレプレグおよび/または積層体としても知られる硬化樹脂を含浸した基板は、処理装置と呼ばれる機械で最も頻繁に作製される。処理装置は、一般に、繊維性基板供給ローラ、樹脂含浸タンク、処理装置または硬化炉、および硬化基板受取りローラを含む。ガラス繊維等の強化繊維材料は、通常、大型スプールの形態で供給される。スプールを、ゆっくりと回転する供給ローラの上に載せて、ロールからガラス繊維の連続ウェブを巻き取る。ガラス繊維ウェブは、樹脂含浸タンク中の樹脂を通って移動する。タンクから現れた後、樹脂含浸ガラスは、約200−300°Fで典型的に操作する処理装置に、分当たり10から100フィートまでの範囲内の速度で上向きに移動する。処理炉の底に、含浸ガラスがその間を通過する1組のローラがある。2つのローラ間のギャップ環境は、ガラスに被覆される樹脂の量を決定する。処理装置で、樹脂は、ガラスを湿らせ、そして樹脂中の溶媒は、樹脂が重合し始める時点で煮沸して飛ばされる。材料が、塔から現れたときに、湿ったり、または粘着性であったりしない範囲まで、それは、少なくとも部分的に硬化される。しかし、硬化過程は、一般に、完了に達せずに停止し、その結果、最終積層体が作製されたときに、追加の硬化が起こり得る。その後、積層体は、導電性金属の1つまたはそれ以上のシートに結合されて、金属クラッド積層体を得ることができる。好ましい金属クラッドは、銅である。その後、金属クラッド積層体は、積層体表面に回路トレースを施す従来の回路板加工技術を用いて加工し得る。さらに、多レベルの回路板を形成することが望ましい場合、回路板層は、積層され得る。
【0017】
上述された標準の強化樹脂積層体製造方法は、一般に、各繊維束に基板繊維フィラメントの間の空隙、並びに繊維束間の隙間空間に配置される空隙を有する積層体材料を作製する。本発明の1つの態様は、減少した空隙積層体製品を生じる上述された積層体製造方法に対する1つまたはそれ以上の加工の改善を提供することである。本発明の加工の改善は、一般に、3つのカテゴリー、(1)繊維基板を樹脂で含浸させる前に行われる加工工程、(2)樹脂での基板の含浸の間に行われる加工工程、および(3)基板が、樹脂で含浸された後に行われる加工工程に分け得る。
【0018】
I.基板の前処理工程
A.基板乾燥
積層体の空隙を減少させる前処理加工工程は、1つまたはそれ以上の樹脂配合物を基板に含浸させる前に、繊維基板を乾燥させることである。基板乾燥温度および時間は、使用される基板によって変化する。好ましい基板材料は、ガラス織布である。ガラス織布は、一般にロール状態で供給される。ロールの全体は使用の前に乾燥されるか、またはガラス織布が樹脂含浸前に巻き戻されるときに乾燥され得る。好ましいガラス織布基板は、150から約500°Fまでの温度で乾燥され得る。ロールから巻き戻されて乾燥されるとき、乾燥時間は、約1分から約10分またはそれ以上の範囲である。巻き戻されたガラス織布基板は、約200から約350°Fまでの温度で、約1分から約5分までの範囲の時間、乾燥されるのが最も好ましい。この乾燥が、ロール形態で行われる場合、そのロールから湿気を除去するために1時間までまたはそれ以上かかる。樹脂含浸の前に基板を乾燥させると、基板の吸湿能力を改善し、それにより、最終積層体製品中の空隙の数が減少する。
【0019】
B.基板の機械的操作
最終積層体製品中の空隙の数を減少させる二次基板処理工程は、基板の機械的操作である。基板操作、そして特にガラス繊維基板の操作の1つの目的は、繊維束を作製するフィラメントの中のあらゆる封入、結合または封印を干渉、そして好ましくは破壊することである。封入されたフィラメント束を破壊することで、ガラス織布基板の全体を通して樹脂の浸透が促進される。
【0020】
基板は、繊維フィラメントまたは繊維フィラメント束の封入を干渉することのできる任意の方法を用いて、機械的に、または化学的に操作され得る。有用な操作法の例としては、基板をエアナイフの前に通過させること、基板を超音波で処理すること、2つのローラ間に基板を通過させること、および基板をメイアーロッドのような不均質表面上に通過させることが挙げられる。フィラメントまたは繊維束封入を中断するための好ましい方法としては、基板を、メイアーロッド等の不均質表面上を通過させること、または基板をローラ間に通過させることが挙
げられる。
【0021】
メイアーロッドは、ワイヤー材料で密接に巻き取られて、ロッドを横切るようにして不均質な表面が形成されたロッドである。図1Aおよび1Bは、繊維基板に結合したメイアーロッドのそれぞれ、正面および側面の断面図である。メイアーロッドには、ワイヤー巻取り102によって囲まれる中心ロッド100が含まれる。ワイヤ巻取りは、ロッド表面上に不均質性またはギャップ104を形成する。基板106が、メイアーロッド上を通過するときに、小型アーク108が、基板106に形成される。アーク108が形成されると、繊維基板106に伸縮および圧迫が引き起こされ、そしてそれは、封入されたフィラメントと機械的に干渉することとなる。図1Bに示されるとおり、基板106を、ある角度でメイアーロッド上を通過させることが好ましい。ある角度で基板106をメイヤー上に通過させると、基板106が、確実に、メイアーロッドに対して密接に引きつけられるようになり、アーク108の形成が促進される。
【0022】
メイアーロッドを用いて、基板を機械的に圧迫することが好ましい一方で、基板を任意の不均質表面上を通過させて、繊維基板にアーク、ピーク、バレー、または封入フィラメントを圧迫する任意の他の表面変形を形成させてもよい。ある角度で、ある角度に向けられた表面を通過させると、不均質な表面が得られる。
【0023】
基板を機械的に操作する別の方法は、図2に示されるように、基板を、2つのローラ間に通過させる方法である。第1のローラ120は、典型的には、硬質の平滑表面121を有する。第2のローラ122は、典型的には、ゴム引きした表面124等の第1のローラ表面121より柔らかい表面を有する。基板106は、その基板を第1のローラ120と第2のローラ122の間に通過させることによって、ローラによって機械的に操作される。ローラ間のギャップを、第2のローラ122のゴム引きされた表面124が、基板106を第1のローラ129の表面121に対して押し付ける程度の幅に設定すると、それにより、第1のローラ120の非平面状表面121に順応するようにに、基板106に僅かなアークが形成される。アークに基板シート106を押し込めると、封入したフィラメントが圧迫され、そしてそれにより、基板がよりいっそう空隙を残すことなく樹脂を含浸しやすくなる。
【0024】
基板は、樹脂含浸前、樹脂含浸工程の間中、および樹脂含浸が完了した後を含めた、基板操作過程の間のいずれかの時点で上記の機械的方法を用いて、機械的に操作され得る。基板が、樹脂で湿らされるときに、機械的または化学的操作が、基板に行われることが好ましく、最も好ましくは、基板は、第1の樹脂含浸工程の後、そして第2の樹脂含浸工程の前に機械的に操作される。
【0025】
II.含浸ゾーン修飾
我々は、積層体空隙を減少させる樹脂含浸工程に組込まれ得る数種の加工修飾を知見した。加工修飾のうちの1つに、樹脂溶液配合物を改善することが含まれる。他の有用な加工修飾に、樹脂溶液を加熱すること、含浸の間に乾燥させながら、基板に複数の樹脂溶液を通過させること、樹脂含浸ガラス基板を機械的に操作すること、および樹脂溶液中の基板滞留時間を増加させることが含まれる。
【0026】
A.低固形分樹脂溶液
我々は、樹脂溶液の固形分含有量が、積層体空隙を減少させる上で非常に重要であることを知見した。さらに詳細には、我々は、約80重量%未満の固形分、さらに好ましくは約50重量%未満の固形分、そして最も好ましくは10から30重量%までの固形分を含有する樹脂溶液が、積層体空隙を減少させる上で非常に有用であることを見出した。用語「固形分」または「固形分含有量」は、基板が浸漬される樹脂含有溶液中の材料の非溶媒重量部分に該当するとしてここに使用される。樹脂溶液の固形分含有量を低下させることで、同じ溶液の溶媒含有量を有効に増加させ、そして基板中の樹脂の浸透が改善される。基板への樹脂浸透での改善は、積層体の空隙を減少させる帰結効果を示す。
【0027】
積層体製造効率を改善するために、基板を、1つ以上の含浸工程にかけることは有用であり得る。2つまたはそれ以上の含浸工程が使用される場合、含浸工程で使用される樹脂溶液は、同じ固形分含有量を有しても、または異なる固形分含有量を有してもよい。さらに、2つまたはそれ以上の含浸工程が使用される場合、第1の含浸工程は、基板を溶媒溶液に浸漬することから構成され得て、基板が樹脂を含有する含浸溶液に入れられる第2の含浸工程に続く。2つまたはそれ以上の含浸工程が使用されるときに、樹脂溶液の固形分含有量は、各含浸ゾーンで順次増加されることが好ましい。基板を複数の樹脂含浸にかけることによって、当初の樹脂含浸が、低い固形分含有量の樹脂溶液で行われて、優れた湿潤性の繊維基板を達成することができる。第1の含浸工程に続いて、基板が、第1の含浸
溶液中でより高い樹脂の固形分含有量を含む第2の含浸溶液に入れた後に、溶媒は、基板から除去されることが好ましい。第2の含浸溶液中の樹脂固形分含有量が高いほど、繊維基板に所望の量の樹脂が含浸しやすくなる。複数の含浸工程が使用される場合、第1の含浸ゾーンは、第2の含浸ゾーン中の樹脂溶液の固形分含有量より少ない固形分含有量を有する樹脂を含むべきである。いずれの含浸ゾーン中の樹脂溶液の固形分含有量は、約1から約90重量%までの範囲にあり得る。しかし、複数の含浸工程が使用される場合、第1の含浸ゾーンは、約5から80重量%まで、さらに好ましくは約5から約50重量%まで、そして最も好ましくは約10から約30重量%の樹脂固形分含有量を有することが好ましい。
【0028】
B.樹脂溶媒
樹脂溶媒の選択は、積層体空隙を減少させる上で重要であり得る。積層体空隙を減少させるために、溶媒は、含浸した基板から容易に除去されるべきである。さらに、使用される溶媒は、基板への樹脂浸透および基板浸潤時間を促進するべきである。樹脂と共に、積層体空隙を減少させる樹脂溶液と合わせ得る溶媒の例は、アセトン、N−メチルピリロドン、PM(プロピルモノメチルエーテル)、PMアセテート(プロピルモノメチルエーテルアセテート)、DMF(ジメチルホルムアミド)、アセトン、メタノール、MEKおよびそれらの組合せである。好ましい樹脂溶液は、DMFとアセトンとの組合せである。DMF/アセトン混合液は、約1部のDMF対3部のアセトンから、3部DMF対1部アセトンまでの範囲にあるのが好ましい。最も好ましい溶媒は、およそ、DMFとアセトンとの混合物の1対1重量比の混合物である。
【0029】
C.樹脂溶媒加熱
数種の樹脂含浸加工工程を改善することにより、基板空隙を減らすことができる。1つの加工改善は、基板含浸の間1つまたはそれ以上の樹脂溶液を加熱することである。樹脂溶液を加熱することは、基板の浸潤を増強し、そしてそれは、基板への樹脂浸透をも改善する。樹脂溶液が加熱される温度は、選択される樹脂によって、そして使用される溶媒または溶媒の組合せによって変化する。樹脂溶液が、80°から140°Fまで、そして好ましくは約100から約120°Fまでに加熱されることが好ましい。典型的には、樹脂溶液は、約150°Fより高い温度まで加熱されるべきではない。
【0030】
D.中間体基板の加熱
積層体空隙を減少させるために熱を使用する別の方法には、樹脂含浸工程の間に樹脂含浸基板を加熱することが含まれる。樹脂含浸基板を加熱することにより、基板浸潤時間および透過性が増強する。樹脂含浸基板は、それが樹脂溶液から捨てられた後に加熱されるべきである。樹脂含浸基板は、複数の含浸工程が使用される場合、含浸の間に加熱でき、そして最終含浸工程に続いて加熱されなければならない。樹脂含浸基板が加熱される温度は、使用される樹脂および溶媒系によって変化する。樹脂含浸基板は、室温(約100°F)より上の温度から約400°Fまで加熱され得る。しかし、樹脂含浸基板は、約150から約375°Fまでの温度に、そして最も好ましくは約200から約350°Fまでの温度に加熱されることが好ましい。
【0031】
樹脂を飽和した繊維性基板は、2つまたはそれ以上の樹脂含浸工程を受けることが好ましい。含浸工程の間で樹脂を含浸した基板を加熱することで、樹脂を含有する繊維性基板を飽和するために要求される樹脂の量が増加し、そしてそれにより、第2および続く含浸工程での樹脂含浸基板によって許容され得る樹脂の量を増加する。
【0032】
E.滞留時間を最大限にすること
滞留時間は、樹脂含浸基板が第1の樹脂含浸容器に入るときに始まり、そして樹脂含浸基板が炉に入るときに終わる時間である。滞留時間を最大限にすることは、追加の樹脂および溶媒を受容する樹脂含浸繊維基板の能力を促進する。樹脂含浸基板の滞留時間が、約30秒から約10分またはそれ以上の範囲にあることが好ましい。滞留時間が、約1から約4分までの範囲にあることが最も好ましい。
【0033】
III.真空含浸
積層体空隙を完全に減少させ、そして排除する上で有用な加工方法は、真空含浸である。本発明の真空含浸過程の重要な特徴は、基板が、真空下で少なくとも1つの含浸溶液に入ること、およびそれが含浸溶液入口圧力より高い圧力で含浸溶液を出ることを保証することである。したがって、含浸溶液の出口圧力は、周囲圧力であり得る含浸溶液の入口圧力より高い(気圧に近い)真空圧であり得るか、または含浸ゾーンの出口圧力は、周囲圧力を越えている可能性がある。含浸ゾーンを超える正の差圧を維持することは、基板滞留および溶媒および/または樹脂での基板の含浸を促進する。最終結果は、生じた積層体で空隙が少なく、そして好ましくは基本的に空隙のない積層体である。
【0034】
真空含浸ゾーンにわたる差圧は、少なくとも5in/Hgであるべきである。真空含浸ゾーンにわたる差圧が、少なくとも15in/Hgであることがより好ましく、そして真空含浸ゾーンにわたる差圧は、少なくとも20in/Hgであることが最も好ましい。
【0035】
図3および4は、含浸ゾーンにわたる差圧で操作される単独および複数の含浸ゾーンを含む本発明の過程を示している。過程間の第一の差異は、図3が単独の樹脂含浸ゾーンを含む過程を示している一方で、図4は、少なくとも2つの別々の含浸ゾーンを含む過程を示している点である。
【0036】
図3によると、基板のロール10は、真空チャンバー16に配置される。真空は、真空ポンプ18を用いた真空チャンバーで引き起こされる。基板のロールを巻き戻し、そして繊維基板ウェブは、真空圧下で含浸ゾーン20に入る。含浸ゾーン20は、一般に、10から90重量%までの溶媒含有量を示し、そして好ましくは減少した固形分含有量を有する樹脂/溶媒溶液を含む。一旦繊維性基板10に樹脂溶液を含浸させたら、含浸ゾーン20の外にローラ22によって向けられる。含浸ゾーン20中の部分的真空の使用は、繊維基板の繊維から空気を除去して、改善された溶媒および樹脂浸透を促進する。
【0037】
図4は、図4の過程で少なくとも2つの含浸ゾーンがある以外は、図3に示されるものに類似する真空含浸過程を示している。図4によると、繊維性基板10は、第1の含浸ゾーン30に入り、そしてローラ32によってローラ34に向けられる。ローラ32は、第1の含浸ゾーンに配置される一方で、ローラ34は、真空チャンバー16に配置される。図3と同様に、空気は、真空チャンバー16中の繊維基板10から除去されて、基板10への改善された樹脂浸透を可能にできる。しかし、真空チャンバー16での減圧は、繊維基板中の溶媒に、基板が圧力の増加に直面するときに、少なくとも部分的に蒸発を引き起こさせる。蒸発溶媒は、少なくとも部分的に液化し、それにより、繊維基板の繊維に樹脂を引き込む。ローラ34は、第2の含浸ゾーン38に配置されるローラ35に基板を向けさせる。ローラ35も、第2の含浸ゾーン38の出口40の外に基板を向けさせる。
【0038】
2つまたはそれ以上の含浸ゾーンが使用される場合、第1の含浸ゾーンは、全体的に溶媒からなる溶液を含み得るか、または溶媒/樹脂の組合せ溶液を含み得る。第2の含浸ゾーン中の溶液は、一般に、溶媒/樹脂の組合せ溶液を含む。第1および第2の含浸ゾーンの両方が、第1の含浸ゾーン中の溶液の固形分含有量が、第2の含浸ゾーン中の溶液の固形分含有量より低い溶媒/樹脂の組合せ溶液を含む場合が好ましい。上述されるように、2つの含浸ゾーンが使用される場合、基板中の溶媒は、含浸ゾーンの間で少なくとも部分的に蒸発する。基板上の圧力が、第2の含浸ゾーンで増加する場合、溶媒は、少なくとも部分的に液化して、基板繊維に樹脂が引き込まれる。
【0039】
積層体空隙を減少させる上記のさらなる加工工程も、付随の明細書中で図1および2に規定される真空含浸工程に組込まれ得る。例えば、第1および第2の含浸ゾーン中の溶液を加熱でき、繊維基板は含浸工程の間に加熱でき、繊維基板は任意の含浸ゾーンに入るか、または最終含浸ゾーンを出る等の前に機械的に操作され得る。
【0040】
実施例1
本実施例は、繊維基板に真空の樹脂溶液を含浸させることから生じる積層体空隙の減少を評価した。7628と称され、そしてClark Schweibeiによって製造されたガラスサンプルを、真空チャンバーに入れ、そして所望のレベルの真空に至らせた。真空下で、ガラスサンプルを、約5秒間、アセトンに浸漬し、取出し、そして約30秒から1分まで、70°Fで乾燥させた。乾燥に続いて、乾燥したガラスサンプルを、真空条件下で樹脂溶液に入れた。全ての実験に使用された樹脂溶液は、AlliedSignal Laminate Systems Inc.によって製造されるグレード406(Grade 406)であった。真空が、その系から解放され、そして圧力が、周囲まで戻った後に、ガラスサンプルを、約15から約30秒間、樹脂溶液中に放置した。周囲圧力が達成された後に、樹脂含浸ガラスサンプルを、樹脂から取出し、そして350°Fに設定された炉で、約2−3分の範囲内の時間、硬化させた。
【0041】
ガラスサンプルを、0、−5、−10、−15、−20および−25in/Hgの圧力で試験した。生じた硬化樹脂含浸ガラスサンプルを写真撮影した。写真は、図5A−5Fとしてここに確認される。図5Aは、−25in/Hgで含浸されたサンプルを表し、図5Bは−20in/Hgでの、図5Cは−15in/Hgでの、図5Dは−10in/Hgでの、図5Eは−5in/Hgでの、そして図5Fは周囲圧力でのサンプルを表す。図は、樹脂含浸中にガラスサンプルが受ける圧力差を増加させることにより、積層体の空隙が顕著に減少したことを示すものであって、ここで、図5Bは製品が基本的に空隙を含まず、また図5Aは製品が空隙を含まないといえる程度にまで顕著な改善がみられたことを示している。
【0042】
実施例2
本実施例は、積層体の空隙を減少する本発明の種々の加工工程の能力を評価した。各試験のために使用されたガラス織布は、7628 CS347と称され、そしてClark Schwebelによって製造される。対照の積層体は、浸潤の程度を評価するための基本線として使用された。浸潤は、繊維基板中の蒸気を交換する溶液の能力の測定値である。大きな浸潤数は、基板繊維中のより多くの蒸気が、液体に交換されようとしていることを意味する。高い浸潤数は、低い硬化基板空隙に相互に関係する。
【0043】
以下の表1は、30重量%の固形分を含む第1の樹脂溶液のための、そして78重量%の固形分を含む第2の樹脂溶液のための処方箋を記載する。基板は、第1の、そして使用できる場合には、第2の樹脂溶液に3−5秒間残した。含浸基板を、330°Fで、3分間硬化させた。全ての試験についての湿気の滞留時間は、2分であった。
【0044】
【表1】
各サンプルを製造するために使用される樹脂は、いくつかの場合を除いて、樹脂を希釈するために使用される特定の溶媒と同一であった。第1および第2の浸漬樹脂溶液の固形分含有量は、特に明記されない限り一定に保持された。対照について、およびサンプルについての含浸ガラス布の硬化条件は同一であった。加工は可変で、各サンプルについての浸潤率は以下の表2に列記される。対照サンプルを、第2の浸漬溶液中に一旦浸漬し、そして他のサンプルと同様に硬化させた。サンプルEで、メイアーロッドを、基板にS−型通路で各ロッドを順次通過させるように配置した。サンプルH中の基板に、乳鉢と乳棒で手動で動かした。
【0045】
【表2】
対照(サンプルA)に比べて、積層体空隙を減少させるための各々の方法は、基板浸潤を改善した。最良の浸潤は、二重浸漬した基板を、浸漬の間で2分間200°Fまで加熱したサンプルFで100%であった。基板浸潤での他の明らかな改善は、第1の浸漬樹脂を、110°Fに加熱し、浸漬の間で一連で2つのマイヤーロッドを越えて基板を通過させること、そして特定の溶媒組合せを、そして好ましくは1:1容積比のアセトン対NMPを使用することによって得られた。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1A】本発明の1つの実施形態に使用するための基板に関連したメイアーロッドの、それぞれ正面および側面の断面図である。
【図1B】本発明の1つの実施形態に使用するための基板に関連したメイアーロッドの、それぞれ正面および側面の断面図である。
【図2】基板を機械的に操作するための、本発明の別の実施形態で使用するための方法を示す側面図である。
【図3】単独の含浸ゾーンを含む本発明のさらに別の実施形態に関連した樹脂含浸基板を製造する方法の略図である。
【図4】第1の含浸ゾーンおよび第2の含浸ゾーンを含む本発明のさらに別の実施形態に関連した樹脂含浸基板を製造する方法の略図である。
【図5A】0、5、10、15および25in/Hgでの実施例1によって製造された積層体の横断面の写真である。
【図5B】0、5、10、15および25in/Hgでの実施例1によって製造された積層体の横断面の写真である。
【図5C】0、5、10、15および25in/Hgでの実施例1によって製造された積層体の横断面の写真である。
【図5D】0、5、10、15および25in/Hgでの実施例1によって製造された積層体の横断面の写真である。
【図5E】0、5、10、15および25in/Hgでの実施例1によって製造された積層体の横断面の写真である。
【図5F】0、5、10、15および25in/Hgでの実施例1によって製造された積層体の横断面の写真である。
【技術分野】
【0001】
樹脂またはその組み合わせを、硬化樹脂充填基板中の空隙数を減少させる1つまたはそれ以上の加工工程にかけることによって、減少した空隙積層体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(2)技術の説明
強化繊維およびマトリックス樹脂を含む高度複合材料は、印刷回路板および他の電気的構成要素のために使用される積層体等の異質な構造での非分散性構成要素になった。1つの特に有用なクラスの高度複合体は、樹脂強化繊維を使用して製造される積層体である。典型的には、組合せを硬化させて、積層材料を形成させた後に、繊維材料が硬化性樹脂化合物に含浸される。
【0003】
積層体製造手段、並びに積層体に使用される樹脂および強化材料での向上は、迅速に、そして効果的になされ、そして高度の強度および信頼性を備えた積層製品を生じた。しかし、積層体は、典型的に、液体樹脂化合物を備えた繊維強化材料を高速で含浸させることによって製造されるので、硬化積層体が、繊維束に、そして繊維束の間の隙間の空間にある小さなエアーポケット等の空隙を含むことは典型的である。したがって、基本的に空隙のない高品質の樹脂を含浸させた繊維積層体を作製するために高生産での操作を可能にする新たな積層体製造手段の必要性が残る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、プレプレグおよび硬化製品での空隙の数を減少させる加工工程または複数工程を含む、樹脂含浸基板を製造する方法を提供することである。
【0005】
本発明の別の目的は、基本的に空隙を含まない硬化樹脂含浸基板を含むプレプレグおよび/または積層体製品を製造する方法を提供することである。
【0006】
本発明のさらなる別の目的は、高生産で、そして低費用で、基本的に空隙を含まないプレプレグおよび/または積層体を製造する方法を含む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施形態では、本発明は、硬化樹脂含浸基板を製造する方法を含む。前記方法は、基板を硬化性樹脂を含有する溶媒を含む浸漬パンに入れて、樹脂含浸基板を得ること、そして樹脂含浸基板を少なくとも部分的に硬化して、硬化樹脂含浸基板を得ることからなる。硬化樹脂含浸基板での空隙の数は、(1)比較的低い固形分含有量を有する硬化性樹脂を含有する溶媒を使用する工程、(2)樹脂含浸基板を、比較的高い固形分含有量を有する硬化性樹脂を含有する溶媒を含む第2の含浸ゾーンに浸漬させる工程、(3)含浸の前、第1の浸漬パンの後、および第1/第2の浸漬パン中で基板を機械的に操作する工程、(4)第1の含浸ゾーンに基板を入れる前に、基板を加熱する工程、(5)樹脂を含有する溶媒を加熱する工程、(6)2つの浸漬パンの間で含浸した湿潤ウェブを加熱する工程、および(7)樹脂を用いたガラスの真空含浸から選択される少なくとも1つの加工工程によって、基板を加工することにより減少される。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、基板を硬化性樹脂を含有する溶媒を含む含浸ゾーンに入れて、硬化性樹脂含浸基板を得、そしてその後、樹脂含浸基板を少なくとも部分的に硬化させて、硬化樹脂を含浸させた基板を得ることによって、硬化樹脂含浸基板を製造する方法を含む。前記方法のさらなる工程は、含浸ゾーンで部分的真空を形成することである。
【0009】
さらに別の実施形態では、本発明は、基本的に空隙のない、そして好ましくは空隙のない硬化性樹脂含浸基板を包含するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プレプレグおよび硬化製品での空隙の数を減少させる加工工程または複数工程を含む、樹脂含浸基板を製造する方法が提供される。
【0011】
本発明によれば、基本的に空隙を含まない硬化樹脂含浸基板を含むプレプレグおよび/または積層体製品を製造する方法が提供される。
【0012】
本発明には、高生産で、そして低費用で、基本的に空隙を含まないプレプレグおよび/または積層体を製造する方法が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本実施形態の説明
本発明は、硬化製品での空隙の数を減少させる少なくとも1つの加工工程を含む強化樹脂含浸プレプレグおよび積層体を製造する方法に関する。さらに詳細には、最終製品での空隙の数を減少させるために選択され得る加工工程としては、(1)比較的低い固形分含有量を有する硬化性樹脂を含有する溶媒を使用する工程、(2)比較的高い固形分含有量を有する硬化性樹脂を含有する溶媒を含む第2の含浸ゾーンに樹脂含浸基板を浸漬させる工程、(3)含浸の前、第1の浸漬パンの後、および第1/第2の浸漬パン中で基板を機械的に操作する工程、(4)第1の含浸ゾーンに入れる前に基板を加熱する工程、(5)樹脂を含有する溶媒を加熱する工程、(6)2つの浸漬パンの間で含浸した湿潤ウェブを加熱する工程、および(7)樹脂を用いたガラスの真空含浸が挙げられる。本発明はまた、基本的に空隙がなく、そして1つまたはそれ以上の加工工程を組込む工程、および/または本発明の工程修飾によって製造される硬化樹脂含浸プレプレグおよび積層体材料を包含するものである。
【0014】
本発明の目的のために、用語「繊維性基板」および「基板」は、回路板に有用な積層体を製造するのに一般に使用される種類の繊維強化材料に該当して相互交換で使用され、それに限定されないが、ガラス繊維、E−ガラス、石英、紙、アラミド、PTFE、S−ガラス、D−ガラス、または類似の強化材料等の織布または非織布または繊維が挙げられる。好ましい繊維基板は、E−ガラスである。
【0015】
本発明の目的のために、用語「樹脂」は、硬化性重合体、溶媒、並びに一般に硬化性重合体に添加して、プレプレグおよび積層体に対する強度、耐久性、耐熱性、耐水性等を提供する任意の他の材料および添加剤を含む1つまたはそれ以上の重合体系に関する。樹脂系に有用な成分のある種の例としては、溶媒、鎖伸長剤、硬化剤、触媒、反応性制御剤等が挙げられる。本発明の過程に関して有用な樹脂系の例としては、米国特許第5,508,328号、第5,620,789号、第5,534,565号および米国仮特許出願第60/019,853号に記載され、そしてその各々は、参照してここに組込まれる。本発明の過程にしたがって製造された樹脂含浸基板は、金属クラッド積層体、ハウジングおよび電気回路、集積回路ハウジング、回路板等を製造する上で有用な他の物体を製造する上で有用である。
【0016】
プレプレグおよび/または積層体としても知られる硬化樹脂を含浸した基板は、処理装置と呼ばれる機械で最も頻繁に作製される。処理装置は、一般に、繊維性基板供給ローラ、樹脂含浸タンク、処理装置または硬化炉、および硬化基板受取りローラを含む。ガラス繊維等の強化繊維材料は、通常、大型スプールの形態で供給される。スプールを、ゆっくりと回転する供給ローラの上に載せて、ロールからガラス繊維の連続ウェブを巻き取る。ガラス繊維ウェブは、樹脂含浸タンク中の樹脂を通って移動する。タンクから現れた後、樹脂含浸ガラスは、約200−300°Fで典型的に操作する処理装置に、分当たり10から100フィートまでの範囲内の速度で上向きに移動する。処理炉の底に、含浸ガラスがその間を通過する1組のローラがある。2つのローラ間のギャップ環境は、ガラスに被覆される樹脂の量を決定する。処理装置で、樹脂は、ガラスを湿らせ、そして樹脂中の溶媒は、樹脂が重合し始める時点で煮沸して飛ばされる。材料が、塔から現れたときに、湿ったり、または粘着性であったりしない範囲まで、それは、少なくとも部分的に硬化される。しかし、硬化過程は、一般に、完了に達せずに停止し、その結果、最終積層体が作製されたときに、追加の硬化が起こり得る。その後、積層体は、導電性金属の1つまたはそれ以上のシートに結合されて、金属クラッド積層体を得ることができる。好ましい金属クラッドは、銅である。その後、金属クラッド積層体は、積層体表面に回路トレースを施す従来の回路板加工技術を用いて加工し得る。さらに、多レベルの回路板を形成することが望ましい場合、回路板層は、積層され得る。
【0017】
上述された標準の強化樹脂積層体製造方法は、一般に、各繊維束に基板繊維フィラメントの間の空隙、並びに繊維束間の隙間空間に配置される空隙を有する積層体材料を作製する。本発明の1つの態様は、減少した空隙積層体製品を生じる上述された積層体製造方法に対する1つまたはそれ以上の加工の改善を提供することである。本発明の加工の改善は、一般に、3つのカテゴリー、(1)繊維基板を樹脂で含浸させる前に行われる加工工程、(2)樹脂での基板の含浸の間に行われる加工工程、および(3)基板が、樹脂で含浸された後に行われる加工工程に分け得る。
【0018】
I.基板の前処理工程
A.基板乾燥
積層体の空隙を減少させる前処理加工工程は、1つまたはそれ以上の樹脂配合物を基板に含浸させる前に、繊維基板を乾燥させることである。基板乾燥温度および時間は、使用される基板によって変化する。好ましい基板材料は、ガラス織布である。ガラス織布は、一般にロール状態で供給される。ロールの全体は使用の前に乾燥されるか、またはガラス織布が樹脂含浸前に巻き戻されるときに乾燥され得る。好ましいガラス織布基板は、150から約500°Fまでの温度で乾燥され得る。ロールから巻き戻されて乾燥されるとき、乾燥時間は、約1分から約10分またはそれ以上の範囲である。巻き戻されたガラス織布基板は、約200から約350°Fまでの温度で、約1分から約5分までの範囲の時間、乾燥されるのが最も好ましい。この乾燥が、ロール形態で行われる場合、そのロールから湿気を除去するために1時間までまたはそれ以上かかる。樹脂含浸の前に基板を乾燥させると、基板の吸湿能力を改善し、それにより、最終積層体製品中の空隙の数が減少する。
【0019】
B.基板の機械的操作
最終積層体製品中の空隙の数を減少させる二次基板処理工程は、基板の機械的操作である。基板操作、そして特にガラス繊維基板の操作の1つの目的は、繊維束を作製するフィラメントの中のあらゆる封入、結合または封印を干渉、そして好ましくは破壊することである。封入されたフィラメント束を破壊することで、ガラス織布基板の全体を通して樹脂の浸透が促進される。
【0020】
基板は、繊維フィラメントまたは繊維フィラメント束の封入を干渉することのできる任意の方法を用いて、機械的に、または化学的に操作され得る。有用な操作法の例としては、基板をエアナイフの前に通過させること、基板を超音波で処理すること、2つのローラ間に基板を通過させること、および基板をメイアーロッドのような不均質表面上に通過させることが挙げられる。フィラメントまたは繊維束封入を中断するための好ましい方法としては、基板を、メイアーロッド等の不均質表面上を通過させること、または基板をローラ間に通過させることが挙
げられる。
【0021】
メイアーロッドは、ワイヤー材料で密接に巻き取られて、ロッドを横切るようにして不均質な表面が形成されたロッドである。図1Aおよび1Bは、繊維基板に結合したメイアーロッドのそれぞれ、正面および側面の断面図である。メイアーロッドには、ワイヤー巻取り102によって囲まれる中心ロッド100が含まれる。ワイヤ巻取りは、ロッド表面上に不均質性またはギャップ104を形成する。基板106が、メイアーロッド上を通過するときに、小型アーク108が、基板106に形成される。アーク108が形成されると、繊維基板106に伸縮および圧迫が引き起こされ、そしてそれは、封入されたフィラメントと機械的に干渉することとなる。図1Bに示されるとおり、基板106を、ある角度でメイアーロッド上を通過させることが好ましい。ある角度で基板106をメイヤー上に通過させると、基板106が、確実に、メイアーロッドに対して密接に引きつけられるようになり、アーク108の形成が促進される。
【0022】
メイアーロッドを用いて、基板を機械的に圧迫することが好ましい一方で、基板を任意の不均質表面上を通過させて、繊維基板にアーク、ピーク、バレー、または封入フィラメントを圧迫する任意の他の表面変形を形成させてもよい。ある角度で、ある角度に向けられた表面を通過させると、不均質な表面が得られる。
【0023】
基板を機械的に操作する別の方法は、図2に示されるように、基板を、2つのローラ間に通過させる方法である。第1のローラ120は、典型的には、硬質の平滑表面121を有する。第2のローラ122は、典型的には、ゴム引きした表面124等の第1のローラ表面121より柔らかい表面を有する。基板106は、その基板を第1のローラ120と第2のローラ122の間に通過させることによって、ローラによって機械的に操作される。ローラ間のギャップを、第2のローラ122のゴム引きされた表面124が、基板106を第1のローラ129の表面121に対して押し付ける程度の幅に設定すると、それにより、第1のローラ120の非平面状表面121に順応するようにに、基板106に僅かなアークが形成される。アークに基板シート106を押し込めると、封入したフィラメントが圧迫され、そしてそれにより、基板がよりいっそう空隙を残すことなく樹脂を含浸しやすくなる。
【0024】
基板は、樹脂含浸前、樹脂含浸工程の間中、および樹脂含浸が完了した後を含めた、基板操作過程の間のいずれかの時点で上記の機械的方法を用いて、機械的に操作され得る。基板が、樹脂で湿らされるときに、機械的または化学的操作が、基板に行われることが好ましく、最も好ましくは、基板は、第1の樹脂含浸工程の後、そして第2の樹脂含浸工程の前に機械的に操作される。
【0025】
II.含浸ゾーン修飾
我々は、積層体空隙を減少させる樹脂含浸工程に組込まれ得る数種の加工修飾を知見した。加工修飾のうちの1つに、樹脂溶液配合物を改善することが含まれる。他の有用な加工修飾に、樹脂溶液を加熱すること、含浸の間に乾燥させながら、基板に複数の樹脂溶液を通過させること、樹脂含浸ガラス基板を機械的に操作すること、および樹脂溶液中の基板滞留時間を増加させることが含まれる。
【0026】
A.低固形分樹脂溶液
我々は、樹脂溶液の固形分含有量が、積層体空隙を減少させる上で非常に重要であることを知見した。さらに詳細には、我々は、約80重量%未満の固形分、さらに好ましくは約50重量%未満の固形分、そして最も好ましくは10から30重量%までの固形分を含有する樹脂溶液が、積層体空隙を減少させる上で非常に有用であることを見出した。用語「固形分」または「固形分含有量」は、基板が浸漬される樹脂含有溶液中の材料の非溶媒重量部分に該当するとしてここに使用される。樹脂溶液の固形分含有量を低下させることで、同じ溶液の溶媒含有量を有効に増加させ、そして基板中の樹脂の浸透が改善される。基板への樹脂浸透での改善は、積層体の空隙を減少させる帰結効果を示す。
【0027】
積層体製造効率を改善するために、基板を、1つ以上の含浸工程にかけることは有用であり得る。2つまたはそれ以上の含浸工程が使用される場合、含浸工程で使用される樹脂溶液は、同じ固形分含有量を有しても、または異なる固形分含有量を有してもよい。さらに、2つまたはそれ以上の含浸工程が使用される場合、第1の含浸工程は、基板を溶媒溶液に浸漬することから構成され得て、基板が樹脂を含有する含浸溶液に入れられる第2の含浸工程に続く。2つまたはそれ以上の含浸工程が使用されるときに、樹脂溶液の固形分含有量は、各含浸ゾーンで順次増加されることが好ましい。基板を複数の樹脂含浸にかけることによって、当初の樹脂含浸が、低い固形分含有量の樹脂溶液で行われて、優れた湿潤性の繊維基板を達成することができる。第1の含浸工程に続いて、基板が、第1の含浸
溶液中でより高い樹脂の固形分含有量を含む第2の含浸溶液に入れた後に、溶媒は、基板から除去されることが好ましい。第2の含浸溶液中の樹脂固形分含有量が高いほど、繊維基板に所望の量の樹脂が含浸しやすくなる。複数の含浸工程が使用される場合、第1の含浸ゾーンは、第2の含浸ゾーン中の樹脂溶液の固形分含有量より少ない固形分含有量を有する樹脂を含むべきである。いずれの含浸ゾーン中の樹脂溶液の固形分含有量は、約1から約90重量%までの範囲にあり得る。しかし、複数の含浸工程が使用される場合、第1の含浸ゾーンは、約5から80重量%まで、さらに好ましくは約5から約50重量%まで、そして最も好ましくは約10から約30重量%の樹脂固形分含有量を有することが好ましい。
【0028】
B.樹脂溶媒
樹脂溶媒の選択は、積層体空隙を減少させる上で重要であり得る。積層体空隙を減少させるために、溶媒は、含浸した基板から容易に除去されるべきである。さらに、使用される溶媒は、基板への樹脂浸透および基板浸潤時間を促進するべきである。樹脂と共に、積層体空隙を減少させる樹脂溶液と合わせ得る溶媒の例は、アセトン、N−メチルピリロドン、PM(プロピルモノメチルエーテル)、PMアセテート(プロピルモノメチルエーテルアセテート)、DMF(ジメチルホルムアミド)、アセトン、メタノール、MEKおよびそれらの組合せである。好ましい樹脂溶液は、DMFとアセトンとの組合せである。DMF/アセトン混合液は、約1部のDMF対3部のアセトンから、3部DMF対1部アセトンまでの範囲にあるのが好ましい。最も好ましい溶媒は、およそ、DMFとアセトンとの混合物の1対1重量比の混合物である。
【0029】
C.樹脂溶媒加熱
数種の樹脂含浸加工工程を改善することにより、基板空隙を減らすことができる。1つの加工改善は、基板含浸の間1つまたはそれ以上の樹脂溶液を加熱することである。樹脂溶液を加熱することは、基板の浸潤を増強し、そしてそれは、基板への樹脂浸透をも改善する。樹脂溶液が加熱される温度は、選択される樹脂によって、そして使用される溶媒または溶媒の組合せによって変化する。樹脂溶液が、80°から140°Fまで、そして好ましくは約100から約120°Fまでに加熱されることが好ましい。典型的には、樹脂溶液は、約150°Fより高い温度まで加熱されるべきではない。
【0030】
D.中間体基板の加熱
積層体空隙を減少させるために熱を使用する別の方法には、樹脂含浸工程の間に樹脂含浸基板を加熱することが含まれる。樹脂含浸基板を加熱することにより、基板浸潤時間および透過性が増強する。樹脂含浸基板は、それが樹脂溶液から捨てられた後に加熱されるべきである。樹脂含浸基板は、複数の含浸工程が使用される場合、含浸の間に加熱でき、そして最終含浸工程に続いて加熱されなければならない。樹脂含浸基板が加熱される温度は、使用される樹脂および溶媒系によって変化する。樹脂含浸基板は、室温(約100°F)より上の温度から約400°Fまで加熱され得る。しかし、樹脂含浸基板は、約150から約375°Fまでの温度に、そして最も好ましくは約200から約350°Fまでの温度に加熱されることが好ましい。
【0031】
樹脂を飽和した繊維性基板は、2つまたはそれ以上の樹脂含浸工程を受けることが好ましい。含浸工程の間で樹脂を含浸した基板を加熱することで、樹脂を含有する繊維性基板を飽和するために要求される樹脂の量が増加し、そしてそれにより、第2および続く含浸工程での樹脂含浸基板によって許容され得る樹脂の量を増加する。
【0032】
E.滞留時間を最大限にすること
滞留時間は、樹脂含浸基板が第1の樹脂含浸容器に入るときに始まり、そして樹脂含浸基板が炉に入るときに終わる時間である。滞留時間を最大限にすることは、追加の樹脂および溶媒を受容する樹脂含浸繊維基板の能力を促進する。樹脂含浸基板の滞留時間が、約30秒から約10分またはそれ以上の範囲にあることが好ましい。滞留時間が、約1から約4分までの範囲にあることが最も好ましい。
【0033】
III.真空含浸
積層体空隙を完全に減少させ、そして排除する上で有用な加工方法は、真空含浸である。本発明の真空含浸過程の重要な特徴は、基板が、真空下で少なくとも1つの含浸溶液に入ること、およびそれが含浸溶液入口圧力より高い圧力で含浸溶液を出ることを保証することである。したがって、含浸溶液の出口圧力は、周囲圧力であり得る含浸溶液の入口圧力より高い(気圧に近い)真空圧であり得るか、または含浸ゾーンの出口圧力は、周囲圧力を越えている可能性がある。含浸ゾーンを超える正の差圧を維持することは、基板滞留および溶媒および/または樹脂での基板の含浸を促進する。最終結果は、生じた積層体で空隙が少なく、そして好ましくは基本的に空隙のない積層体である。
【0034】
真空含浸ゾーンにわたる差圧は、少なくとも5in/Hgであるべきである。真空含浸ゾーンにわたる差圧が、少なくとも15in/Hgであることがより好ましく、そして真空含浸ゾーンにわたる差圧は、少なくとも20in/Hgであることが最も好ましい。
【0035】
図3および4は、含浸ゾーンにわたる差圧で操作される単独および複数の含浸ゾーンを含む本発明の過程を示している。過程間の第一の差異は、図3が単独の樹脂含浸ゾーンを含む過程を示している一方で、図4は、少なくとも2つの別々の含浸ゾーンを含む過程を示している点である。
【0036】
図3によると、基板のロール10は、真空チャンバー16に配置される。真空は、真空ポンプ18を用いた真空チャンバーで引き起こされる。基板のロールを巻き戻し、そして繊維基板ウェブは、真空圧下で含浸ゾーン20に入る。含浸ゾーン20は、一般に、10から90重量%までの溶媒含有量を示し、そして好ましくは減少した固形分含有量を有する樹脂/溶媒溶液を含む。一旦繊維性基板10に樹脂溶液を含浸させたら、含浸ゾーン20の外にローラ22によって向けられる。含浸ゾーン20中の部分的真空の使用は、繊維基板の繊維から空気を除去して、改善された溶媒および樹脂浸透を促進する。
【0037】
図4は、図4の過程で少なくとも2つの含浸ゾーンがある以外は、図3に示されるものに類似する真空含浸過程を示している。図4によると、繊維性基板10は、第1の含浸ゾーン30に入り、そしてローラ32によってローラ34に向けられる。ローラ32は、第1の含浸ゾーンに配置される一方で、ローラ34は、真空チャンバー16に配置される。図3と同様に、空気は、真空チャンバー16中の繊維基板10から除去されて、基板10への改善された樹脂浸透を可能にできる。しかし、真空チャンバー16での減圧は、繊維基板中の溶媒に、基板が圧力の増加に直面するときに、少なくとも部分的に蒸発を引き起こさせる。蒸発溶媒は、少なくとも部分的に液化し、それにより、繊維基板の繊維に樹脂を引き込む。ローラ34は、第2の含浸ゾーン38に配置されるローラ35に基板を向けさせる。ローラ35も、第2の含浸ゾーン38の出口40の外に基板を向けさせる。
【0038】
2つまたはそれ以上の含浸ゾーンが使用される場合、第1の含浸ゾーンは、全体的に溶媒からなる溶液を含み得るか、または溶媒/樹脂の組合せ溶液を含み得る。第2の含浸ゾーン中の溶液は、一般に、溶媒/樹脂の組合せ溶液を含む。第1および第2の含浸ゾーンの両方が、第1の含浸ゾーン中の溶液の固形分含有量が、第2の含浸ゾーン中の溶液の固形分含有量より低い溶媒/樹脂の組合せ溶液を含む場合が好ましい。上述されるように、2つの含浸ゾーンが使用される場合、基板中の溶媒は、含浸ゾーンの間で少なくとも部分的に蒸発する。基板上の圧力が、第2の含浸ゾーンで増加する場合、溶媒は、少なくとも部分的に液化して、基板繊維に樹脂が引き込まれる。
【0039】
積層体空隙を減少させる上記のさらなる加工工程も、付随の明細書中で図1および2に規定される真空含浸工程に組込まれ得る。例えば、第1および第2の含浸ゾーン中の溶液を加熱でき、繊維基板は含浸工程の間に加熱でき、繊維基板は任意の含浸ゾーンに入るか、または最終含浸ゾーンを出る等の前に機械的に操作され得る。
【0040】
実施例1
本実施例は、繊維基板に真空の樹脂溶液を含浸させることから生じる積層体空隙の減少を評価した。7628と称され、そしてClark Schweibeiによって製造されたガラスサンプルを、真空チャンバーに入れ、そして所望のレベルの真空に至らせた。真空下で、ガラスサンプルを、約5秒間、アセトンに浸漬し、取出し、そして約30秒から1分まで、70°Fで乾燥させた。乾燥に続いて、乾燥したガラスサンプルを、真空条件下で樹脂溶液に入れた。全ての実験に使用された樹脂溶液は、AlliedSignal Laminate Systems Inc.によって製造されるグレード406(Grade 406)であった。真空が、その系から解放され、そして圧力が、周囲まで戻った後に、ガラスサンプルを、約15から約30秒間、樹脂溶液中に放置した。周囲圧力が達成された後に、樹脂含浸ガラスサンプルを、樹脂から取出し、そして350°Fに設定された炉で、約2−3分の範囲内の時間、硬化させた。
【0041】
ガラスサンプルを、0、−5、−10、−15、−20および−25in/Hgの圧力で試験した。生じた硬化樹脂含浸ガラスサンプルを写真撮影した。写真は、図5A−5Fとしてここに確認される。図5Aは、−25in/Hgで含浸されたサンプルを表し、図5Bは−20in/Hgでの、図5Cは−15in/Hgでの、図5Dは−10in/Hgでの、図5Eは−5in/Hgでの、そして図5Fは周囲圧力でのサンプルを表す。図は、樹脂含浸中にガラスサンプルが受ける圧力差を増加させることにより、積層体の空隙が顕著に減少したことを示すものであって、ここで、図5Bは製品が基本的に空隙を含まず、また図5Aは製品が空隙を含まないといえる程度にまで顕著な改善がみられたことを示している。
【0042】
実施例2
本実施例は、積層体の空隙を減少する本発明の種々の加工工程の能力を評価した。各試験のために使用されたガラス織布は、7628 CS347と称され、そしてClark Schwebelによって製造される。対照の積層体は、浸潤の程度を評価するための基本線として使用された。浸潤は、繊維基板中の蒸気を交換する溶液の能力の測定値である。大きな浸潤数は、基板繊維中のより多くの蒸気が、液体に交換されようとしていることを意味する。高い浸潤数は、低い硬化基板空隙に相互に関係する。
【0043】
以下の表1は、30重量%の固形分を含む第1の樹脂溶液のための、そして78重量%の固形分を含む第2の樹脂溶液のための処方箋を記載する。基板は、第1の、そして使用できる場合には、第2の樹脂溶液に3−5秒間残した。含浸基板を、330°Fで、3分間硬化させた。全ての試験についての湿気の滞留時間は、2分であった。
【0044】
【表1】
各サンプルを製造するために使用される樹脂は、いくつかの場合を除いて、樹脂を希釈するために使用される特定の溶媒と同一であった。第1および第2の浸漬樹脂溶液の固形分含有量は、特に明記されない限り一定に保持された。対照について、およびサンプルについての含浸ガラス布の硬化条件は同一であった。加工は可変で、各サンプルについての浸潤率は以下の表2に列記される。対照サンプルを、第2の浸漬溶液中に一旦浸漬し、そして他のサンプルと同様に硬化させた。サンプルEで、メイアーロッドを、基板にS−型通路で各ロッドを順次通過させるように配置した。サンプルH中の基板に、乳鉢と乳棒で手動で動かした。
【0045】
【表2】
対照(サンプルA)に比べて、積層体空隙を減少させるための各々の方法は、基板浸潤を改善した。最良の浸潤は、二重浸漬した基板を、浸漬の間で2分間200°Fまで加熱したサンプルFで100%であった。基板浸潤での他の明らかな改善は、第1の浸漬樹脂を、110°Fに加熱し、浸漬の間で一連で2つのマイヤーロッドを越えて基板を通過させること、そして特定の溶媒組合せを、そして好ましくは1:1容積比のアセトン対NMPを使用することによって得られた。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1A】本発明の1つの実施形態に使用するための基板に関連したメイアーロッドの、それぞれ正面および側面の断面図である。
【図1B】本発明の1つの実施形態に使用するための基板に関連したメイアーロッドの、それぞれ正面および側面の断面図である。
【図2】基板を機械的に操作するための、本発明の別の実施形態で使用するための方法を示す側面図である。
【図3】単独の含浸ゾーンを含む本発明のさらに別の実施形態に関連した樹脂含浸基板を製造する方法の略図である。
【図4】第1の含浸ゾーンおよび第2の含浸ゾーンを含む本発明のさらに別の実施形態に関連した樹脂含浸基板を製造する方法の略図である。
【図5A】0、5、10、15および25in/Hgでの実施例1によって製造された積層体の横断面の写真である。
【図5B】0、5、10、15および25in/Hgでの実施例1によって製造された積層体の横断面の写真である。
【図5C】0、5、10、15および25in/Hgでの実施例1によって製造された積層体の横断面の写真である。
【図5D】0、5、10、15および25in/Hgでの実施例1によって製造された積層体の横断面の写真である。
【図5E】0、5、10、15および25in/Hgでの実施例1によって製造された積層体の横断面の写真である。
【図5F】0、5、10、15および25in/Hgでの実施例1によって製造された積層体の横断面の写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂を含有する溶媒を含む第1の含浸ゾーンに基板を入れて、樹脂含浸基板を作製し、前記樹脂含浸基板を少なくとも部分的に硬化させて、硬化樹脂含浸基板を作製することからなる硬化樹脂含浸基板を製造する方法であって、
前記硬化樹脂含浸基板中の空隙の数は、(1)比較的低い固形分含有量を有する硬化性樹脂を含有する溶媒を使用する工程、(2)樹脂含浸基板を、比較的高い固形分含有量を有する硬化性樹脂を含有する溶媒を含む第2の含浸ゾーンに浸漬する工程、(3)基板を機械的に操作する工程、(4)基板を、第1の含浸ゾーンに入れる前に、基板から湿気を除去する工程、(5)硬化性樹脂を含有する溶媒を加熱する工程、および(6)樹脂含浸基板を、第2の含浸工程に入れる前に、樹脂含浸基板を加熱する工程からなる加工工程、から選択される少なくとも1つの加工工程によって基板を加工することにより減少されるものである前記硬化樹脂含浸基板を製造する方法。
【請求項2】
選択された加工工程が、前記樹脂含浸基板を硬化させる前に硬化性樹脂を含有する溶媒を含む第2の含浸ゾーンに前記樹脂含浸基板を浸漬させている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の含浸ゾーン中の硬化性樹脂を含有する溶媒の固形分含有量が、第2の含浸ゾーン中に硬化性樹脂を含有する溶媒の固形分含有量より少ない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
硬化性樹脂を含有する前記第1の含浸ゾーンが、約5から約50重量%までの固形分含有量を有する請求項2に記載の方法。
【請求項5】
硬化性樹脂を含有する前記第1の含浸ゾーンが、約10から約30重量%までの固形分含有量を有する請求項2に記載の方法。
【請求項6】
第1の含浸ゾーンから除去される前記樹脂含浸基板が、(a)前記第1および第2の含浸ゾーンの間で、前記樹脂含浸基板から溶媒の少なくとも一部を除去する工程、および(b)前記第2の含浸ゾーンに浸漬される前に、前記樹脂含浸基板を加熱する工程からなる加工工程から選択される工程によって加工される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記樹脂含浸基板が、約100から約400°Fまでの温度に加熱される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記選択された加工工程が、前記基板を機械的に操作している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記基板が前記第1の含浸ゾーンに入れられる前、前記第1の含浸ゾーン内、前記第1の含浸ゾーンから前記基板を取除くことに続いて、前記第2の含浸ゾーン内およびそれらの組合せから選択される過程の間のある時点で、前記基板が操作される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
エアナイフ、超音波、基板に非均質表面上を通過させること、基板に2つのローラ間を通過させること、およびそのいずれかの組合せから選択される方法によって、基板を、機械的に操作する請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記基板が、メイアーロッド(Meir rod)を通過させることによって機械的に操作される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記基板が、メイアーロッドを通過するときに方向を変える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基板に、第1の表面を有する第1のローラと、前記第1のローラ表面より柔らかい第2の表面を有する第2のローラとを含む2つのローラ間を通過させることによって、前記基板が機械的に操作される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記選択された加工工程が、含浸の前に前記基板を加熱して、基本的に基板に湿気を含ませないことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記基板が、約150から約500°Fまでの温度に加熱される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記選択された加工工程が、少なくとも1つの含浸ゾーンで樹脂を含有する溶媒を加熱している、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の含浸ゾーン中に樹脂を含有する前記溶媒が、約80から約140°Fまでの温度に加熱される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
硬化性樹脂を含有する溶媒を含む少なくとも1つの含浸ゾーンに基板を入れて樹脂含浸基板を作製し、前記樹脂含浸基板を少なくとも部分的に硬化させて硬化樹脂含浸基板を作製し、さらに前記含浸ゾーン内に部分的真空を形成する工程からなる積層体を製造する方法。
【請求項19】
前記含浸ゾーンが、単独の含浸ゾーンを含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記含浸ゾーンが、少なくとも2つの含浸容器を含み、前記基板を第1の含浸容器を通して真空チャンバーへ通過させ、その後第2の含浸容器へ通過させる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の含浸容器が、溶媒溶液および硬化性樹脂溶液を含有する溶媒からなる群から選択される溶液を保持する請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の含浸ゾーンが、前記第1の含浸ゾーン中の溶液より大きな樹脂固形分含有量を有する溶液を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
請求項18に記載の方法によって製造された硬化樹脂含浸基板。
【請求項24】
基本的に空隙なしの樹脂含浸基板。
【請求項25】
空隙なしの樹脂含浸基板。
【請求項1】
硬化性樹脂を含有する溶媒を含む第1の含浸ゾーンに基板を入れて、樹脂含浸基板を作製し、前記樹脂含浸基板を少なくとも部分的に硬化させて、硬化樹脂含浸基板を作製することからなる硬化樹脂含浸基板を製造する方法であって、
前記硬化樹脂含浸基板中の空隙の数は、(1)比較的低い固形分含有量を有する硬化性樹脂を含有する溶媒を使用する工程、(2)樹脂含浸基板を、比較的高い固形分含有量を有する硬化性樹脂を含有する溶媒を含む第2の含浸ゾーンに浸漬する工程、(3)基板を機械的に操作する工程、(4)基板を、第1の含浸ゾーンに入れる前に、基板から湿気を除去する工程、(5)硬化性樹脂を含有する溶媒を加熱する工程、および(6)樹脂含浸基板を、第2の含浸工程に入れる前に、樹脂含浸基板を加熱する工程からなる加工工程、から選択される少なくとも1つの加工工程によって基板を加工することにより減少されるものである前記硬化樹脂含浸基板を製造する方法。
【請求項2】
選択された加工工程が、前記樹脂含浸基板を硬化させる前に硬化性樹脂を含有する溶媒を含む第2の含浸ゾーンに前記樹脂含浸基板を浸漬させている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の含浸ゾーン中の硬化性樹脂を含有する溶媒の固形分含有量が、第2の含浸ゾーン中に硬化性樹脂を含有する溶媒の固形分含有量より少ない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
硬化性樹脂を含有する前記第1の含浸ゾーンが、約5から約50重量%までの固形分含有量を有する請求項2に記載の方法。
【請求項5】
硬化性樹脂を含有する前記第1の含浸ゾーンが、約10から約30重量%までの固形分含有量を有する請求項2に記載の方法。
【請求項6】
第1の含浸ゾーンから除去される前記樹脂含浸基板が、(a)前記第1および第2の含浸ゾーンの間で、前記樹脂含浸基板から溶媒の少なくとも一部を除去する工程、および(b)前記第2の含浸ゾーンに浸漬される前に、前記樹脂含浸基板を加熱する工程からなる加工工程から選択される工程によって加工される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記樹脂含浸基板が、約100から約400°Fまでの温度に加熱される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記選択された加工工程が、前記基板を機械的に操作している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記基板が前記第1の含浸ゾーンに入れられる前、前記第1の含浸ゾーン内、前記第1の含浸ゾーンから前記基板を取除くことに続いて、前記第2の含浸ゾーン内およびそれらの組合せから選択される過程の間のある時点で、前記基板が操作される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
エアナイフ、超音波、基板に非均質表面上を通過させること、基板に2つのローラ間を通過させること、およびそのいずれかの組合せから選択される方法によって、基板を、機械的に操作する請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記基板が、メイアーロッド(Meir rod)を通過させることによって機械的に操作される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記基板が、メイアーロッドを通過するときに方向を変える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基板に、第1の表面を有する第1のローラと、前記第1のローラ表面より柔らかい第2の表面を有する第2のローラとを含む2つのローラ間を通過させることによって、前記基板が機械的に操作される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記選択された加工工程が、含浸の前に前記基板を加熱して、基本的に基板に湿気を含ませないことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記基板が、約150から約500°Fまでの温度に加熱される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記選択された加工工程が、少なくとも1つの含浸ゾーンで樹脂を含有する溶媒を加熱している、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の含浸ゾーン中に樹脂を含有する前記溶媒が、約80から約140°Fまでの温度に加熱される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
硬化性樹脂を含有する溶媒を含む少なくとも1つの含浸ゾーンに基板を入れて樹脂含浸基板を作製し、前記樹脂含浸基板を少なくとも部分的に硬化させて硬化樹脂含浸基板を作製し、さらに前記含浸ゾーン内に部分的真空を形成する工程からなる積層体を製造する方法。
【請求項19】
前記含浸ゾーンが、単独の含浸ゾーンを含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記含浸ゾーンが、少なくとも2つの含浸容器を含み、前記基板を第1の含浸容器を通して真空チャンバーへ通過させ、その後第2の含浸容器へ通過させる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の含浸容器が、溶媒溶液および硬化性樹脂溶液を含有する溶媒からなる群から選択される溶液を保持する請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の含浸ゾーンが、前記第1の含浸ゾーン中の溶液より大きな樹脂固形分含有量を有する溶液を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
請求項18に記載の方法によって製造された硬化樹脂含浸基板。
【請求項24】
基本的に空隙なしの樹脂含浸基板。
【請求項25】
空隙なしの樹脂含浸基板。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【公開番号】特開2009−79222(P2009−79222A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−267300(P2008−267300)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【分割の表示】特願2000−592086(P2000−592086)の分割
【原出願日】平成12年1月3日(2000.1.3)
【出願人】(507209399)イゾラ ユーエスエイ コーポレイション (2)
【氏名又は名称原語表記】ISOLA USA CORP.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267300(P2008−267300)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【分割の表示】特願2000−592086(P2000−592086)の分割
【原出願日】平成12年1月3日(2000.1.3)
【出願人】(507209399)イゾラ ユーエスエイ コーポレイション (2)
【氏名又は名称原語表記】ISOLA USA CORP.
【Fターム(参考)】
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