磁場の変化を利用した温度測定装置
【課題】 ウェーハの熱処理工程で、磁場の変化を利用してウェーハの温度をリアルタイムで測定する装置を提供する。
【解決手段】 ウェーハの一側表面に配置され、温度によって電気伝導度が変化する少なくとも1つの導電体構造物と、ウェーハを中心に、導電体構造物と対向して設置された磁場生成部と、導電体構造物の上方に設置される磁場測定センサーとを備えることを特徴とするウェーハ温度測定装置。
【解決手段】 ウェーハの一側表面に配置され、温度によって電気伝導度が変化する少なくとも1つの導電体構造物と、ウェーハを中心に、導電体構造物と対向して設置された磁場生成部と、導電体構造物の上方に設置される磁場測定センサーとを備えることを特徴とするウェーハ温度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場の変化を利用した温度測定装置に係り、より詳細には、半導体製造工程中にウェーハの熱処理装置で、磁場の変化を利用してウェーハの温度をリアルタイムで測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハ上に積層された半導体材料をパターニングするフォトリソグラフィ工程では、大きく3回の熱処理工程を経る。第1熱処理工程は、ウェーハの全面にフォトレジストを塗布した後に行うソフトベーク工程である。ソフトベークは、ウェーハ上に塗布されたフォトレジストの均一度を維持するためのものであり、約80〜110℃のホットプレートからウェーハに熱を加えて、フォトレジストのソルベントを除去する。ソフトベーク工程が行われた後には、投影露光装置などを利用してウェーハに紫外線を露光し、フォトレジスト上に所定のパターンを形成する工程が行われる。この露光工程以後に、第2熱処理工程であるPEB(Post Exposure Bake)工程が行われる。PEBは、露光時に紫外線光の散乱による露光境界部位の不要な露光現象を防止するためのものであり、約150℃のホットプレートでウェーハを焼く工程である。次いで、露光が終わったウェーハに現像溶液を噴射して、現像方式により、露光時に光を受けた部分または光を受けていない部分のいずれか一方を化学作用により除去する工程が行われる。このような現像工程後、約150℃程度のホットプレート上でウェーハを加熱することによってフォトレジストからソルベントを除去し、かつフォトレジストを硬化させる第3熱処理工程であるハードベーク工程が行われる。
【0003】
このような熱処理工程で、ウェーハの温度分布及び温度均一度は、半導体回路線幅の品質及び散布に最も大きい影響を及ぼす重要な工程変数である。なぜなら、温度が微細な誤差を持つだけでフォトレジストの溶解度の差が変わって、パターンの線幅の差を誘発するためである。一般的に良好な品質を得るためには、ホットプレート上で加熱されるウェーハの全体領域での温度偏差が±0.1℃範囲以内でなければならない。したがって、ウェーハが均一に加熱されているかどうかを判断するために、熱処理工程中にウェーハの温度を測定する必要がある。
【0004】
従来のウェーハ温度測定方法には、接触式温度測定方法と非接触式温度測定方法とがある。
接触式温度測定方法は、実際にウェーハの熱処理工程を始める前に、テストのためのセンサーウェーハをホットプレート上で加熱して、ウェーハが均一に加熱されるかどうかを検査する方法である。図1A及び図1Bは、このようなセンサーウェーハ110を図示している。図1Aに図示された方法は、センサーウェーハ110上に複数の温度センサー120を均一に設置し、温度センサー120にそれぞれ接続されたワイヤー125を通じて、センサーウェーハ110上の温度変化を測定する方法である。そして、図1Bに図示された方法は、ワイヤーを複雑に接続する代わりに、センサーウェーハ110上に複数の温度センサー120及びメモリ130を設置し、センサーウェーハ110上の温度変化をメモリ130に記録する方法である。ここで使用する接触式温度センサーとしては、電気抵抗を利用するRTD(Resistance Thermal Detector)、熱起電力を利用するTC(Thermo Couple)、熱膨張を利用する金属またはガラス温度計、シリコントランジスターの温度特性を利用するIC温度センサーなど、多様な温度センサーを利用できる。このような方法を通じて、それぞれの温度センサーで測定された温度が均一になるまで、ホットプレートの加熱条件を調節する。このようにして、センサーウェーハ110の全体領域が均一に加熱されることを確認した後、実際にウェーハを投入してウェーハの熱処理工程を行う。
【0005】
このような接触式温度測定方法では、温度センサーをウェーハに直接接触させねばならないが、温度センサーを測定対象に正確に接触させ難い。また、従来の接触式温度測定方法は、センサーウェーハを利用してあらかじめ適切な加熱条件を設定するためのものであり、実際ウェーハの熱処理工程が行われる間にはウェーハの温度を測定できない。すなわち、熱処理工程中にリアルタイムでウェーハの温度を測定することが不可能である。したがって、熱処理工程を行う途中に外部環境が変わる場合、外部環境の変化に即刻に対応できない。その結果、ウェーハの熱処理工程で不良率が増加する。また、複雑な半導体製造過程で不良が発生する場合、熱処理工程に問題があるか、または他の工程に問題があるかさえ確認不可能である。それを確認するためには、工程を中止し、センサーウェーハを利用して温度測定を再び行うしかない。これによって、半導体製造工程全体が遅延し、製造コストが上昇する。
【0006】
このような問題を改善して、熱処理工程中にウェーハの温度をリアルタイムで測定し、熱処理工程中に経時的な温度変化を記録した温度履歴情報を得るための非接触式温度測定方法が提案されている。非接触式温度測定方法は、黒体輻射の原理を利用するものであり、加熱される物体から輻射される赤外線を検出して温度を測定する方式である。図2は、非接触式温度測定方法を説明するための概略的な断面図である。図2に示すように、ホットプレート140上でウェーハ110を加熱している間、熱処理装置のキャップ150の下部に複数の温度センサー160を設置して、ウェーハ110の温度をリアルタイムで測定する。ここで、温度センサー160としては、一般的に赤外線センサーを利用する。赤外線センサーとしては、半導体の内部光電效果を利用する量子型赤外線センサーと、材料温度の上昇による物性定数の変化を利用する熱型赤外線センサーを主に使用する。また、熱型赤外線センサーとしては、赤外線を受けた強誘電体で電気が発生する焦電効果を利用した焦電赤外線センサーが主に使われる。
【0007】
しかし、前述のような従来の非接触式温度測定方法の場合、測定対象で発生した輻射エネルギーがセンサーに十分に到達せねばならず、測定対象物の実効放射率が明確に知られているか、または再現が可能でなければならないという問題がある。また、非接触式温度測定方法で使用する赤外線センサーは、高温(一般的に1000℃以上)では比較的正確度が高いが、ウェーハの熱処理が起きる低温(数百℃)では正確度が比較的低いという問題がある。さらに、前述したように、ウェーハの全体領域で温度偏差は±0.1℃範囲以内でなければならないが、赤外線センサーの解像度は約1℃程度であるために、ウェーハの熱処理工程に赤外線センサーを使用することは適していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述した従来技術の問題点を改善するためのものである。したがって、本発明の目的は、ウェーハの熱処理工程を行う間にウェーハの温度分布をリアルタイムで精密に測定できる温度測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、ウェーハの熱処理工程でウェーハの温度を測定する装置は、前記ウェーハの一側表面に配置され、温度によって電気伝導度が変化する少なくとも1つの導電体構造物と、前記ウェーハを中心に、前記導電体構造物と対向して設置された磁場生成部と、前記導電体構造物の上方に設置される磁場測定センサーとを備えることを特徴とする。
【0010】
前記ウェーハ温度測定装置は、前記磁場生成部に交流電流を供給する交流電源と、前記磁場測定センサーで測定された磁場の強度からウェーハの温度を計算する信号処理部と、前記計算されたウェーハの温度をディスプレイする端末器とをさらに備える。この時、前記交流電源は、所定の順序によって、所定の時間間隔で、それぞれの磁場生成部に順次に交流電流を供給することを特徴とする。
【0011】
一方、前記導電体構造物は、螺旋形に少なくとも1回巻線された誘導コイルであることを特徴とする。
また、本発明の他の実施形態によれば、上部面に置かれたウェーハを均一に加熱するホットプレート及び前記ホットプレートを密閉するように覆うカバーを備えるウェーハの熱処理装置は、前記加熱されるウェーハの上面に配置され、温度によって電気伝導度が変化する少なくとも1つの導電体構造物と、前記ウェーハを中心に前記導電体構造物と対向して設置された磁場生成部と、前記導電体構造物の上方に設置される磁場測定センサーと、を備えるウェーハ温度測定装置をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
この時、前記磁場生成部は、前記ホットプレートの内部に設置され、前記磁場測定センサーは、前記カバーの内面から下方に突設される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温度センサーの代りに誘導磁場を発生させうる素子を測定対象に取り付けることによって、温度センサーの不完全接触問題を解決できる。また、ウェーハの熱処理工程中に経時的なウェーハの温度変化をリアルタイムで正確に測定できる。そして、既存の非接触式温度測定方法とは違って、測定対象物の表面状態と関係なく正確な温度測定が可能である。すなわち、赤外線センサーを利用する従来の非接触式温度測定方法では、測定対象の実効放射率が明確に分かって初めて温度測定が可能であるが、本発明では、このような条件が不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態によるウェーハの温度測定装置の構造及び動作について詳細に説明する。
図3Aは、本発明による磁場の変化を利用した温度測定装置の概略的な構造を例示的に示す斜視図である。そして、図3Bは、図3Aに図示されたウェーハの中心を基準にした断面図である。図3A及び図3Bに示すように、本発明による温度測定装置は、ウェーハ10の一側表面に配置される導電体構造物15、ウェーハ10を中心に導電体構造物15と対向して設置された磁場生成部12、及び前記導電体構造物15の上方に設置される磁場測定センサー18を備える。
【0015】
ここで、導電体構造物15は、電磁気誘導による磁場変化を起こすためのものであり、例えば、螺旋形に少なくとも1回以上巻線された誘導コイルでありうる。このような導電体構造物15は、一般的に常温で高い電気伝導度を持ち、温度の変化によって電気伝導度の変化が大きい材料を使用することが望ましい。また、磁場生成部12は、電流が印加された時に磁場を発生させるためのものであり、例えば、交流電源により駆動される交流駆動電磁石でありうる。
【0016】
このような構造の本発明による動作原理を説明すれば、次の通りである。電磁石のような磁場生成部12に交流電圧が印加されると、磁場生成部12は経時的に変化する磁場を生成する。それにより、レンツの法則及びファラデーの誘導法則によって、誘導コイルのような導電体構造物15では、磁場の変化を妨害しようとする方向へ誘導磁場を発生する。すなわち、ウェーハ10に設置された導電体構造物15で発生する誘導磁場は、磁場生成部12により発生する磁場を減少させる。したがって、経時的に変化する磁場の大きさは、ウェーハ10上の導電体構造物15により減少する。この時、導電体構造物15により誘導される誘導磁場の大きさは、導電体構造物15の電気伝導度に比例する。
【0017】
ところが、一般的に金属のような大部分の伝導性物質は、温度の増加によって、図4に示すように、電気伝導度が減少する。
誘導磁場の大きさが電気伝導度に比例するので、金属材料を利用して導電体構造物15を形成する場合、導電体構造物15で発生する誘導磁場の大きさは、図5に示すように、温度の上昇によって減少する。その結果、温度が上昇するほど、磁場生成部12により発生する磁場の減少量は少なくなる。したがって、温度が上昇すれば、磁場測定センサー18で測定される全体的な磁場の大きさは増加する。
【0018】
このような原理によって、ウェーハ10の温度測定が可能になる。すなわち、ウェーハ10上の導電体構造物15で発生する誘導磁場の大きさを測定すれば、ウェーハ10の温度を計算することが可能である。ここで、導電体構造物15で発生する誘導磁場の大きさは、磁場生成部12で発生する磁場の大きさと、磁場測定センサー18で測定される全体的な磁場の大きさとの差によって知ることができる。また、磁場生成部12で発生する磁場の大きさは、磁場生成部12に印加される交流電圧の大きさ及び周波数を通じて制御が可能である。この時、温度測定装置の解像度を高めるためには、温度による電気伝導度の変化が大きいほど有利である。
【0019】
磁場生成部12及び導電体構造物15による磁場分布を確認するために、図6の左側に示すように、巻線数が少なくても1回である導電体構造物15をウェーハ10の中心に配置し、ウェーハ10下に磁場生成部12を配置した。図6の右側は、左側の四角形ボックス部分を示す断面図である。ここで、12aは、磁場生成部12のコア部分であり、12bは、磁場生成部12のコイル部分を表す。図7A及び図7Bは、図6の構造で巻線数が1回である場合についての磁場分布を、それぞれ磁場ベクトル及び等磁力線で図示するシミュレーション結果を示す。図7A及び図7Bに示すように、導電体構造物15の存在によって磁場生成部12で発生する磁場の大きさが減少する。
【0020】
この時、温度測定装置の解像度は、温度による導電体構造物15の電気伝導度の変化量以外に、導電体構造物15により発生する誘導磁場の大きさにも比例する。すなわち、誘導磁場の大きさが大きいほど温度測定装置の解像度をより高めることができる。誘導磁場の大きさが大きくなれば、温度の変化による誘導磁場の絶対的な変化幅がそれにつれて大きくなるからである。一般的に誘導磁場の大きさは、コイルの巻線数、電気伝導度、磁場の変化量に依存する。
【0021】
まず、図8は、平面形誘導コイル形態を持つ導電体構造物15の巻線数による誘導磁場の大きさを示すグラフである。図8に示すように、巻線数がそれぞれ1回、5回、10回である時、導電体構造物15で発生する誘導磁場の大きさが益々増加することが分かる。したがって、コイルの巻線数を増加させることにより、温度による磁場の変化量を増幅することができる。
【0022】
図9は、電気伝導度による誘導磁場の大きさを示すグラフである。図9を通じて分かるように、銅の電気伝導度を1xという時、導電体構造物15の電気伝導度が減少するほど(0.5xから0.1xへ行くほど)誘導磁場の大きさが減少する。
また、図10は、磁場生成部12に印加される交流電圧の周波数による誘導磁場の大きさを示すグラフである。図10に示すように、交流電圧の周波数が100Hzから10000Hzに増加する時、導電体構造物15で誘導される誘導磁場の大きさも大きく増加する。前述したように、導電体構造物15で発生する誘導磁場は、導電体構造物15周囲の磁場の変化に比例して発生するからである。
【0023】
したがって、導電体構造物15の巻線数が増加するほど、導電体構造物15の電気伝導度が大きいほど、磁場生成部12に印加される交流電圧の周波数が高いほど、本発明による温度測定装置の解像度が高くなる。
図11A及び図11Bは、複数の導電体構造物15を備える温度測定装置の構造を示すものであり、図11Aは、ウェーハ10の上側から見た平面図であり、図11Bは、側面図である。ベーク装置のような熱処理装置内で熱処理されているウェーハ10の温度偏差を正確に測定するためには、なるべくウェーハ10のいろいろな領域で温度を測定する必要がある。したがって、図11Aと同じく、ウェーハ10の上面に複数の導電体構造物15を均一に設置して、ウェーハ10の各部分での温度を測定する。この時、ウェーハの表面に積層されている半導体チップ(または、半導体チップを形成するための構造物)が損傷しないように、前記導電体構造物15は、ウェーハの表面のうち半導体チップが形成されていない空いている空間に配置されることが望ましい。
【0024】
また、図11Bに示すように、複数の導電体構造物15のそれぞれに対応する位置に、複数の磁場生成部12及び磁場測定センサー18がそれぞれ配置される。これを通じて、複数の導電体構造物15それぞれに変化する磁場を印加し、また、それぞれの導電体構造物15で発生する誘導磁場の大きさを、導電体構造物15の上方にある磁場測定センサー18が測定する。この時、複数の磁場生成部12でそれぞれ発生する磁場により干渉現象が起きることもある。このような干渉現象は、正確な温度測定を妨害する。したがって、それぞれの磁場生成部12に交流電圧を交互に1つずつ印加することが望ましい。例えば、第1の磁場生成部に交流電圧を印加する間、他の磁場生成部はOFF状態にする。そして、所定の時間が過ぎれば、第2の磁場生成部に交流電圧を印加し、他の磁場生成部はOFFとする。この時、各磁場生成部に交流電圧が印加される時間間隔は、交流電圧の周波数によって適切に定められうる。例えば、交流電圧の周波数が100Hzであれば、少なくとも1/100秒以上の時間の間に磁場生成部に電圧が印加されねばならない。
【0025】
図12は、図11A及び図11Bに図示された本発明による温度測定装置で測定したウェーハの温度偏差を例示的に示すグラフである。ウェーハ10が加熱される直前には、ウェーハ10の全体表面が大気の温度と同じ状態にある。ウェーハ10が、例えば、ベーク装置のホットプレート上で加熱されれば、ウェーハ10の表面温度が徐々に上がり始める。この時、ホットプレート及びウェーハ10の状態によって、ウェーハ10の表面温度の上昇速度は差がありうるために、熱処理途中にも△T1の温度偏差がありうる。また、ウェーハ10の熱処理が完了した後にも、△T2の温度偏差がありうる。本発明による温度測定装置は、ウェーハ10の表面に複数設置された磁場生成部12、導電体構造物15、磁場測定センサー18を通じて、このような温度偏差をリアルタイムで観測できる。したがって、温度偏差の大きさ△T1または△T2が、例えば、0.1℃以上に大きくなる場合、熱処理過程で問題が発生したことがすぐ分かる。
【0026】
図14は、本発明による温度測定装置の概略的な回路構成を図示する。図14に示すように、交流発生装置(または交流電源)60は、磁場生成部12に交流電圧を供給する。この時、ユーザは、磁場生成部12に供給される交流電圧の特性(例えば、周波数、波形、振幅など)を適切に調節できる。また、複数の磁場生成部12が存在する場合、前記交流発生装置60は、複数の磁場生成部12に一つずつ交互に電圧を印加できる。それにより、前述したように、磁場生成部12で磁場が発生する。前記磁場生成部12で発生した磁場の大きさは、誘導コイルのような導電体構造物15により減少し、磁場測定センサー18がこのような磁場の大きさを測定する。
【0027】
磁場測定センサー18は、磁場の大きさによる信号を発生させるが、この信号は信号処理部70に伝えられる。信号処理部70は、磁場測定センサー18で測定された磁場の強度から温度を計算する役割を行う。さらに具体的に、信号処理部70は、磁場測定センサー18から受けた信号を増幅する信号増幅器72、増幅された信号から磁場の大きさを計算する磁場計算部74、磁場生成部12で発生した磁場の大きさと、磁場計算部74で計算された磁場の大きさとを比較して、導電体構造物15で誘導された磁場の大きさを計算する誘導磁場計算部76、及び計算された誘導磁場の大きさからウェーハ10の温度を計算する温度計算部78を含む構成とすることができる。ここで、磁場生成部12で発生した磁場の大きさは、磁場生成部12に印加される交流電圧から知ることができる。一方、温度計算部78は、導電体構造物15で発生する誘導磁場の大きさとウェーハ10の温度との関係についてあらかじめ測定されたデータを、ルックアップテーブルの形態にメモリ(図示せず)に記録しておくことができる。この場合、温度計算部78は、別途の計算過程なしにルックアップテーブルを検索して、誘導磁場の大きさからウェーハ10の温度を速い速度で求めことができる。
【0028】
このようにして得たウェーハ10の温度は端末器80に伝えられて、ユーザが容易に識別できるようにディスプレイされる。例えば、温度は、図12のグラフのような形で表示されることもできる。
図13は、本発明による温度測定装置を含む熱処理装置の構造を概略的に示す断面図である。ウェーハ10を均一に加熱するためのベーク装置のような熱処理装置で、ウェーハ10はホットプレート40の上面に置かれる。ホットプレート40の内部には、熱を発生させるための熱線が内蔵されている。ここで、図13に示すように、このようなホットプレート40の内部に、本発明による複数の磁場生成部12を設置できる。しかし、これはあくまでも1つの例であるだけで、ホットプレート40の下部に磁場生成部12を複数設置することもできる。したがって、ホットプレート40は、磁場に影響を与えない材料を使用することが望ましい。
【0029】
一方、図13に示すように、磁場の強度を測定するための磁場測定センサー18は、ホットプレートを覆うカバー50に設置することができる。カバー50は、熱処理されるウェーハ10が外部の環境により影響されないように内部を密閉する役割を行う。磁場測定センサー18は、このようなカバー50の内面から下方に突出して、導電体構造物15と対向して設置されうる。このような構造を通じて、本発明による温度測定装置は、ウェーハ熱処理装置に適切に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、磁場の変化を利用した温度測定装置の関連技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】従来の接触式温度測定方法を説明するための概略的な図面である。
【図1B】従来の接触式温度測定方法を説明するための概略的な図面である。
【図2】従来の非接触式温度測定方法を説明するための概略的な断面図である。
【図3A】本発明による磁場の変化を利用した温度測定装置の概略的な構造を例示的に示す斜視図である。
【図3B】本発明による磁場の変化を利用した温度測定装置の概略的な構造を例示的に示す断面図である。
【図4】一般的な導体の電気伝導度と温度との関係を示すグラフである。
【図5】導電体構造物の誘導磁場と温度との関係を示すグラフである。
【図6】導電体構造物による磁場分布の変化をテストするための温度測定装置の構造を示す図面である。
【図7A】図6に図示された構造での磁場分布を磁場ベクトルで示す図面である。
【図7B】図6に図示された構造での磁場分布を等磁力線で示す図面である。
【図8】導電体構造物の巻線数と誘導磁場との関係を示すグラフである。
【図9】導電体構造物の電気伝導度と誘導磁場との関係を示すグラフである。
【図10】電磁石に印加される電流の周波数と、導電体構造物で発生する誘導磁場との関係を示すグラフである。
【図11A】複数の導電体構造物を備える温度測定装置の構造を示す図面である。
【図11B】複数の導電体構造物を備える温度測定装置の構造を示す図面である。
【図12】本発明による温度測定装置で測定したウェーハの温度偏差を例示的に示す図面である。
【図13】本発明による温度測定装置を備える熱処理装置の構造を概略的に示す断面図である。
【図14】本発明による温度測定装置の概略的な回路構成を示す図面である。
【符号の説明】
【0032】
10 ウェーハ
12 磁場生成部
15 導電体構造物
18 磁場測定センサー
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場の変化を利用した温度測定装置に係り、より詳細には、半導体製造工程中にウェーハの熱処理装置で、磁場の変化を利用してウェーハの温度をリアルタイムで測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハ上に積層された半導体材料をパターニングするフォトリソグラフィ工程では、大きく3回の熱処理工程を経る。第1熱処理工程は、ウェーハの全面にフォトレジストを塗布した後に行うソフトベーク工程である。ソフトベークは、ウェーハ上に塗布されたフォトレジストの均一度を維持するためのものであり、約80〜110℃のホットプレートからウェーハに熱を加えて、フォトレジストのソルベントを除去する。ソフトベーク工程が行われた後には、投影露光装置などを利用してウェーハに紫外線を露光し、フォトレジスト上に所定のパターンを形成する工程が行われる。この露光工程以後に、第2熱処理工程であるPEB(Post Exposure Bake)工程が行われる。PEBは、露光時に紫外線光の散乱による露光境界部位の不要な露光現象を防止するためのものであり、約150℃のホットプレートでウェーハを焼く工程である。次いで、露光が終わったウェーハに現像溶液を噴射して、現像方式により、露光時に光を受けた部分または光を受けていない部分のいずれか一方を化学作用により除去する工程が行われる。このような現像工程後、約150℃程度のホットプレート上でウェーハを加熱することによってフォトレジストからソルベントを除去し、かつフォトレジストを硬化させる第3熱処理工程であるハードベーク工程が行われる。
【0003】
このような熱処理工程で、ウェーハの温度分布及び温度均一度は、半導体回路線幅の品質及び散布に最も大きい影響を及ぼす重要な工程変数である。なぜなら、温度が微細な誤差を持つだけでフォトレジストの溶解度の差が変わって、パターンの線幅の差を誘発するためである。一般的に良好な品質を得るためには、ホットプレート上で加熱されるウェーハの全体領域での温度偏差が±0.1℃範囲以内でなければならない。したがって、ウェーハが均一に加熱されているかどうかを判断するために、熱処理工程中にウェーハの温度を測定する必要がある。
【0004】
従来のウェーハ温度測定方法には、接触式温度測定方法と非接触式温度測定方法とがある。
接触式温度測定方法は、実際にウェーハの熱処理工程を始める前に、テストのためのセンサーウェーハをホットプレート上で加熱して、ウェーハが均一に加熱されるかどうかを検査する方法である。図1A及び図1Bは、このようなセンサーウェーハ110を図示している。図1Aに図示された方法は、センサーウェーハ110上に複数の温度センサー120を均一に設置し、温度センサー120にそれぞれ接続されたワイヤー125を通じて、センサーウェーハ110上の温度変化を測定する方法である。そして、図1Bに図示された方法は、ワイヤーを複雑に接続する代わりに、センサーウェーハ110上に複数の温度センサー120及びメモリ130を設置し、センサーウェーハ110上の温度変化をメモリ130に記録する方法である。ここで使用する接触式温度センサーとしては、電気抵抗を利用するRTD(Resistance Thermal Detector)、熱起電力を利用するTC(Thermo Couple)、熱膨張を利用する金属またはガラス温度計、シリコントランジスターの温度特性を利用するIC温度センサーなど、多様な温度センサーを利用できる。このような方法を通じて、それぞれの温度センサーで測定された温度が均一になるまで、ホットプレートの加熱条件を調節する。このようにして、センサーウェーハ110の全体領域が均一に加熱されることを確認した後、実際にウェーハを投入してウェーハの熱処理工程を行う。
【0005】
このような接触式温度測定方法では、温度センサーをウェーハに直接接触させねばならないが、温度センサーを測定対象に正確に接触させ難い。また、従来の接触式温度測定方法は、センサーウェーハを利用してあらかじめ適切な加熱条件を設定するためのものであり、実際ウェーハの熱処理工程が行われる間にはウェーハの温度を測定できない。すなわち、熱処理工程中にリアルタイムでウェーハの温度を測定することが不可能である。したがって、熱処理工程を行う途中に外部環境が変わる場合、外部環境の変化に即刻に対応できない。その結果、ウェーハの熱処理工程で不良率が増加する。また、複雑な半導体製造過程で不良が発生する場合、熱処理工程に問題があるか、または他の工程に問題があるかさえ確認不可能である。それを確認するためには、工程を中止し、センサーウェーハを利用して温度測定を再び行うしかない。これによって、半導体製造工程全体が遅延し、製造コストが上昇する。
【0006】
このような問題を改善して、熱処理工程中にウェーハの温度をリアルタイムで測定し、熱処理工程中に経時的な温度変化を記録した温度履歴情報を得るための非接触式温度測定方法が提案されている。非接触式温度測定方法は、黒体輻射の原理を利用するものであり、加熱される物体から輻射される赤外線を検出して温度を測定する方式である。図2は、非接触式温度測定方法を説明するための概略的な断面図である。図2に示すように、ホットプレート140上でウェーハ110を加熱している間、熱処理装置のキャップ150の下部に複数の温度センサー160を設置して、ウェーハ110の温度をリアルタイムで測定する。ここで、温度センサー160としては、一般的に赤外線センサーを利用する。赤外線センサーとしては、半導体の内部光電效果を利用する量子型赤外線センサーと、材料温度の上昇による物性定数の変化を利用する熱型赤外線センサーを主に使用する。また、熱型赤外線センサーとしては、赤外線を受けた強誘電体で電気が発生する焦電効果を利用した焦電赤外線センサーが主に使われる。
【0007】
しかし、前述のような従来の非接触式温度測定方法の場合、測定対象で発生した輻射エネルギーがセンサーに十分に到達せねばならず、測定対象物の実効放射率が明確に知られているか、または再現が可能でなければならないという問題がある。また、非接触式温度測定方法で使用する赤外線センサーは、高温(一般的に1000℃以上)では比較的正確度が高いが、ウェーハの熱処理が起きる低温(数百℃)では正確度が比較的低いという問題がある。さらに、前述したように、ウェーハの全体領域で温度偏差は±0.1℃範囲以内でなければならないが、赤外線センサーの解像度は約1℃程度であるために、ウェーハの熱処理工程に赤外線センサーを使用することは適していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述した従来技術の問題点を改善するためのものである。したがって、本発明の目的は、ウェーハの熱処理工程を行う間にウェーハの温度分布をリアルタイムで精密に測定できる温度測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、ウェーハの熱処理工程でウェーハの温度を測定する装置は、前記ウェーハの一側表面に配置され、温度によって電気伝導度が変化する少なくとも1つの導電体構造物と、前記ウェーハを中心に、前記導電体構造物と対向して設置された磁場生成部と、前記導電体構造物の上方に設置される磁場測定センサーとを備えることを特徴とする。
【0010】
前記ウェーハ温度測定装置は、前記磁場生成部に交流電流を供給する交流電源と、前記磁場測定センサーで測定された磁場の強度からウェーハの温度を計算する信号処理部と、前記計算されたウェーハの温度をディスプレイする端末器とをさらに備える。この時、前記交流電源は、所定の順序によって、所定の時間間隔で、それぞれの磁場生成部に順次に交流電流を供給することを特徴とする。
【0011】
一方、前記導電体構造物は、螺旋形に少なくとも1回巻線された誘導コイルであることを特徴とする。
また、本発明の他の実施形態によれば、上部面に置かれたウェーハを均一に加熱するホットプレート及び前記ホットプレートを密閉するように覆うカバーを備えるウェーハの熱処理装置は、前記加熱されるウェーハの上面に配置され、温度によって電気伝導度が変化する少なくとも1つの導電体構造物と、前記ウェーハを中心に前記導電体構造物と対向して設置された磁場生成部と、前記導電体構造物の上方に設置される磁場測定センサーと、を備えるウェーハ温度測定装置をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
この時、前記磁場生成部は、前記ホットプレートの内部に設置され、前記磁場測定センサーは、前記カバーの内面から下方に突設される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温度センサーの代りに誘導磁場を発生させうる素子を測定対象に取り付けることによって、温度センサーの不完全接触問題を解決できる。また、ウェーハの熱処理工程中に経時的なウェーハの温度変化をリアルタイムで正確に測定できる。そして、既存の非接触式温度測定方法とは違って、測定対象物の表面状態と関係なく正確な温度測定が可能である。すなわち、赤外線センサーを利用する従来の非接触式温度測定方法では、測定対象の実効放射率が明確に分かって初めて温度測定が可能であるが、本発明では、このような条件が不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態によるウェーハの温度測定装置の構造及び動作について詳細に説明する。
図3Aは、本発明による磁場の変化を利用した温度測定装置の概略的な構造を例示的に示す斜視図である。そして、図3Bは、図3Aに図示されたウェーハの中心を基準にした断面図である。図3A及び図3Bに示すように、本発明による温度測定装置は、ウェーハ10の一側表面に配置される導電体構造物15、ウェーハ10を中心に導電体構造物15と対向して設置された磁場生成部12、及び前記導電体構造物15の上方に設置される磁場測定センサー18を備える。
【0015】
ここで、導電体構造物15は、電磁気誘導による磁場変化を起こすためのものであり、例えば、螺旋形に少なくとも1回以上巻線された誘導コイルでありうる。このような導電体構造物15は、一般的に常温で高い電気伝導度を持ち、温度の変化によって電気伝導度の変化が大きい材料を使用することが望ましい。また、磁場生成部12は、電流が印加された時に磁場を発生させるためのものであり、例えば、交流電源により駆動される交流駆動電磁石でありうる。
【0016】
このような構造の本発明による動作原理を説明すれば、次の通りである。電磁石のような磁場生成部12に交流電圧が印加されると、磁場生成部12は経時的に変化する磁場を生成する。それにより、レンツの法則及びファラデーの誘導法則によって、誘導コイルのような導電体構造物15では、磁場の変化を妨害しようとする方向へ誘導磁場を発生する。すなわち、ウェーハ10に設置された導電体構造物15で発生する誘導磁場は、磁場生成部12により発生する磁場を減少させる。したがって、経時的に変化する磁場の大きさは、ウェーハ10上の導電体構造物15により減少する。この時、導電体構造物15により誘導される誘導磁場の大きさは、導電体構造物15の電気伝導度に比例する。
【0017】
ところが、一般的に金属のような大部分の伝導性物質は、温度の増加によって、図4に示すように、電気伝導度が減少する。
誘導磁場の大きさが電気伝導度に比例するので、金属材料を利用して導電体構造物15を形成する場合、導電体構造物15で発生する誘導磁場の大きさは、図5に示すように、温度の上昇によって減少する。その結果、温度が上昇するほど、磁場生成部12により発生する磁場の減少量は少なくなる。したがって、温度が上昇すれば、磁場測定センサー18で測定される全体的な磁場の大きさは増加する。
【0018】
このような原理によって、ウェーハ10の温度測定が可能になる。すなわち、ウェーハ10上の導電体構造物15で発生する誘導磁場の大きさを測定すれば、ウェーハ10の温度を計算することが可能である。ここで、導電体構造物15で発生する誘導磁場の大きさは、磁場生成部12で発生する磁場の大きさと、磁場測定センサー18で測定される全体的な磁場の大きさとの差によって知ることができる。また、磁場生成部12で発生する磁場の大きさは、磁場生成部12に印加される交流電圧の大きさ及び周波数を通じて制御が可能である。この時、温度測定装置の解像度を高めるためには、温度による電気伝導度の変化が大きいほど有利である。
【0019】
磁場生成部12及び導電体構造物15による磁場分布を確認するために、図6の左側に示すように、巻線数が少なくても1回である導電体構造物15をウェーハ10の中心に配置し、ウェーハ10下に磁場生成部12を配置した。図6の右側は、左側の四角形ボックス部分を示す断面図である。ここで、12aは、磁場生成部12のコア部分であり、12bは、磁場生成部12のコイル部分を表す。図7A及び図7Bは、図6の構造で巻線数が1回である場合についての磁場分布を、それぞれ磁場ベクトル及び等磁力線で図示するシミュレーション結果を示す。図7A及び図7Bに示すように、導電体構造物15の存在によって磁場生成部12で発生する磁場の大きさが減少する。
【0020】
この時、温度測定装置の解像度は、温度による導電体構造物15の電気伝導度の変化量以外に、導電体構造物15により発生する誘導磁場の大きさにも比例する。すなわち、誘導磁場の大きさが大きいほど温度測定装置の解像度をより高めることができる。誘導磁場の大きさが大きくなれば、温度の変化による誘導磁場の絶対的な変化幅がそれにつれて大きくなるからである。一般的に誘導磁場の大きさは、コイルの巻線数、電気伝導度、磁場の変化量に依存する。
【0021】
まず、図8は、平面形誘導コイル形態を持つ導電体構造物15の巻線数による誘導磁場の大きさを示すグラフである。図8に示すように、巻線数がそれぞれ1回、5回、10回である時、導電体構造物15で発生する誘導磁場の大きさが益々増加することが分かる。したがって、コイルの巻線数を増加させることにより、温度による磁場の変化量を増幅することができる。
【0022】
図9は、電気伝導度による誘導磁場の大きさを示すグラフである。図9を通じて分かるように、銅の電気伝導度を1xという時、導電体構造物15の電気伝導度が減少するほど(0.5xから0.1xへ行くほど)誘導磁場の大きさが減少する。
また、図10は、磁場生成部12に印加される交流電圧の周波数による誘導磁場の大きさを示すグラフである。図10に示すように、交流電圧の周波数が100Hzから10000Hzに増加する時、導電体構造物15で誘導される誘導磁場の大きさも大きく増加する。前述したように、導電体構造物15で発生する誘導磁場は、導電体構造物15周囲の磁場の変化に比例して発生するからである。
【0023】
したがって、導電体構造物15の巻線数が増加するほど、導電体構造物15の電気伝導度が大きいほど、磁場生成部12に印加される交流電圧の周波数が高いほど、本発明による温度測定装置の解像度が高くなる。
図11A及び図11Bは、複数の導電体構造物15を備える温度測定装置の構造を示すものであり、図11Aは、ウェーハ10の上側から見た平面図であり、図11Bは、側面図である。ベーク装置のような熱処理装置内で熱処理されているウェーハ10の温度偏差を正確に測定するためには、なるべくウェーハ10のいろいろな領域で温度を測定する必要がある。したがって、図11Aと同じく、ウェーハ10の上面に複数の導電体構造物15を均一に設置して、ウェーハ10の各部分での温度を測定する。この時、ウェーハの表面に積層されている半導体チップ(または、半導体チップを形成するための構造物)が損傷しないように、前記導電体構造物15は、ウェーハの表面のうち半導体チップが形成されていない空いている空間に配置されることが望ましい。
【0024】
また、図11Bに示すように、複数の導電体構造物15のそれぞれに対応する位置に、複数の磁場生成部12及び磁場測定センサー18がそれぞれ配置される。これを通じて、複数の導電体構造物15それぞれに変化する磁場を印加し、また、それぞれの導電体構造物15で発生する誘導磁場の大きさを、導電体構造物15の上方にある磁場測定センサー18が測定する。この時、複数の磁場生成部12でそれぞれ発生する磁場により干渉現象が起きることもある。このような干渉現象は、正確な温度測定を妨害する。したがって、それぞれの磁場生成部12に交流電圧を交互に1つずつ印加することが望ましい。例えば、第1の磁場生成部に交流電圧を印加する間、他の磁場生成部はOFF状態にする。そして、所定の時間が過ぎれば、第2の磁場生成部に交流電圧を印加し、他の磁場生成部はOFFとする。この時、各磁場生成部に交流電圧が印加される時間間隔は、交流電圧の周波数によって適切に定められうる。例えば、交流電圧の周波数が100Hzであれば、少なくとも1/100秒以上の時間の間に磁場生成部に電圧が印加されねばならない。
【0025】
図12は、図11A及び図11Bに図示された本発明による温度測定装置で測定したウェーハの温度偏差を例示的に示すグラフである。ウェーハ10が加熱される直前には、ウェーハ10の全体表面が大気の温度と同じ状態にある。ウェーハ10が、例えば、ベーク装置のホットプレート上で加熱されれば、ウェーハ10の表面温度が徐々に上がり始める。この時、ホットプレート及びウェーハ10の状態によって、ウェーハ10の表面温度の上昇速度は差がありうるために、熱処理途中にも△T1の温度偏差がありうる。また、ウェーハ10の熱処理が完了した後にも、△T2の温度偏差がありうる。本発明による温度測定装置は、ウェーハ10の表面に複数設置された磁場生成部12、導電体構造物15、磁場測定センサー18を通じて、このような温度偏差をリアルタイムで観測できる。したがって、温度偏差の大きさ△T1または△T2が、例えば、0.1℃以上に大きくなる場合、熱処理過程で問題が発生したことがすぐ分かる。
【0026】
図14は、本発明による温度測定装置の概略的な回路構成を図示する。図14に示すように、交流発生装置(または交流電源)60は、磁場生成部12に交流電圧を供給する。この時、ユーザは、磁場生成部12に供給される交流電圧の特性(例えば、周波数、波形、振幅など)を適切に調節できる。また、複数の磁場生成部12が存在する場合、前記交流発生装置60は、複数の磁場生成部12に一つずつ交互に電圧を印加できる。それにより、前述したように、磁場生成部12で磁場が発生する。前記磁場生成部12で発生した磁場の大きさは、誘導コイルのような導電体構造物15により減少し、磁場測定センサー18がこのような磁場の大きさを測定する。
【0027】
磁場測定センサー18は、磁場の大きさによる信号を発生させるが、この信号は信号処理部70に伝えられる。信号処理部70は、磁場測定センサー18で測定された磁場の強度から温度を計算する役割を行う。さらに具体的に、信号処理部70は、磁場測定センサー18から受けた信号を増幅する信号増幅器72、増幅された信号から磁場の大きさを計算する磁場計算部74、磁場生成部12で発生した磁場の大きさと、磁場計算部74で計算された磁場の大きさとを比較して、導電体構造物15で誘導された磁場の大きさを計算する誘導磁場計算部76、及び計算された誘導磁場の大きさからウェーハ10の温度を計算する温度計算部78を含む構成とすることができる。ここで、磁場生成部12で発生した磁場の大きさは、磁場生成部12に印加される交流電圧から知ることができる。一方、温度計算部78は、導電体構造物15で発生する誘導磁場の大きさとウェーハ10の温度との関係についてあらかじめ測定されたデータを、ルックアップテーブルの形態にメモリ(図示せず)に記録しておくことができる。この場合、温度計算部78は、別途の計算過程なしにルックアップテーブルを検索して、誘導磁場の大きさからウェーハ10の温度を速い速度で求めことができる。
【0028】
このようにして得たウェーハ10の温度は端末器80に伝えられて、ユーザが容易に識別できるようにディスプレイされる。例えば、温度は、図12のグラフのような形で表示されることもできる。
図13は、本発明による温度測定装置を含む熱処理装置の構造を概略的に示す断面図である。ウェーハ10を均一に加熱するためのベーク装置のような熱処理装置で、ウェーハ10はホットプレート40の上面に置かれる。ホットプレート40の内部には、熱を発生させるための熱線が内蔵されている。ここで、図13に示すように、このようなホットプレート40の内部に、本発明による複数の磁場生成部12を設置できる。しかし、これはあくまでも1つの例であるだけで、ホットプレート40の下部に磁場生成部12を複数設置することもできる。したがって、ホットプレート40は、磁場に影響を与えない材料を使用することが望ましい。
【0029】
一方、図13に示すように、磁場の強度を測定するための磁場測定センサー18は、ホットプレートを覆うカバー50に設置することができる。カバー50は、熱処理されるウェーハ10が外部の環境により影響されないように内部を密閉する役割を行う。磁場測定センサー18は、このようなカバー50の内面から下方に突出して、導電体構造物15と対向して設置されうる。このような構造を通じて、本発明による温度測定装置は、ウェーハ熱処理装置に適切に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、磁場の変化を利用した温度測定装置の関連技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】従来の接触式温度測定方法を説明するための概略的な図面である。
【図1B】従来の接触式温度測定方法を説明するための概略的な図面である。
【図2】従来の非接触式温度測定方法を説明するための概略的な断面図である。
【図3A】本発明による磁場の変化を利用した温度測定装置の概略的な構造を例示的に示す斜視図である。
【図3B】本発明による磁場の変化を利用した温度測定装置の概略的な構造を例示的に示す断面図である。
【図4】一般的な導体の電気伝導度と温度との関係を示すグラフである。
【図5】導電体構造物の誘導磁場と温度との関係を示すグラフである。
【図6】導電体構造物による磁場分布の変化をテストするための温度測定装置の構造を示す図面である。
【図7A】図6に図示された構造での磁場分布を磁場ベクトルで示す図面である。
【図7B】図6に図示された構造での磁場分布を等磁力線で示す図面である。
【図8】導電体構造物の巻線数と誘導磁場との関係を示すグラフである。
【図9】導電体構造物の電気伝導度と誘導磁場との関係を示すグラフである。
【図10】電磁石に印加される電流の周波数と、導電体構造物で発生する誘導磁場との関係を示すグラフである。
【図11A】複数の導電体構造物を備える温度測定装置の構造を示す図面である。
【図11B】複数の導電体構造物を備える温度測定装置の構造を示す図面である。
【図12】本発明による温度測定装置で測定したウェーハの温度偏差を例示的に示す図面である。
【図13】本発明による温度測定装置を備える熱処理装置の構造を概略的に示す断面図である。
【図14】本発明による温度測定装置の概略的な回路構成を示す図面である。
【符号の説明】
【0032】
10 ウェーハ
12 磁場生成部
15 導電体構造物
18 磁場測定センサー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの熱処理工程でウェーハの温度を測定する装置において、
前記ウェーハの一側表面に配置され、温度によって電気伝導度が変化する少なくとも1つの導電体構造物と、
前記ウェーハを中心に、前記導電体構造物と対向して設置された磁場生成部と、
前記導電体構造物の上方に設置される磁場測定センサーと、
を備えることを特徴とするウェーハ温度測定装置。
【請求項2】
前記磁場生成部に交流電流を供給する交流電源と、
前記磁場測定センサーで測定された磁場の強度からウェーハの温度を計算する信号処理部と、
前記計算されたウェーハの温度をディスプレイする端末器と、
をさらに備える請求項1に記載のウェーハ温度測定装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、
前記磁場測定センサーからの信号を増幅する信号増幅器と、
前記増幅された信号から磁場の大きさを計算する磁場計算部と、
磁場生成部で発生した磁場の大きさと、磁場計算部で計算された磁場の大きさとを比較して、前記導電体構造物から誘導された磁場の大きさを計算する誘導磁場計算部と、
前記計算された誘導磁場の大きさからウェーハの温度を計算する温度計算部と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載のウェーハ温度測定装置。
【請求項4】
前記温度計算部は、誘導磁場の大きさと、ウェーハの温度との関係をあらかじめ測定して記録したルックアップテーブルを利用することを特徴とする請求項3に記載のウェーハ温度測定装置。
【請求項5】
前記導電体構造物は、螺旋形に少なくとも1回巻線された誘導コイルであることを特徴とする請求項1に記載のウェーハ温度測定装置。
【請求項6】
前記ウェーハの表面に、複数の誘導コイルが配置されていることを特徴とする請求項5に記載のウェーハ温度測定装置。
【請求項7】
前記複数の誘導コイルは、前記ウェーハの表面のうち半導体チップが形成されていない空いている空間に配置されることを特徴とする請求項6に記載のウェーハ温度測定装置。
【請求項8】
前記複数の誘導コイルそれぞれに対応する位置に、複数の磁場生成部と磁場測定センサーとがそれぞれ配置されることを特徴とする請求項7に記載のウェーハ温度測定装置。
【請求項9】
前記交流電源は、所定の順序によって、所定の時間間隔で、それぞれの磁場生成部に順次に交流電流を供給することを特徴とする請求項8に記載のウェーハ温度測定装置。
【請求項10】
前記磁場生成部は、交流駆動電磁石であることを特徴とする請求項1に記載のウェーハ温度測定装置。
【請求項11】
上部面に置かれたウェーハを均一に加熱するホットプレート及び前記ホットプレートを密閉するように覆うカバーを備えるウェーハの熱処理装置において、
前記加熱されるウェーハの上面に配置され、温度によって電気伝導度が変化する少なくとも1つの導電体構造物と、
前記ウェーハを中心に前記導電体構造物と対向して設置された磁場生成部と、
前記導電体構造物の上方に設置される磁場測定センサーと、
を備えるウェーハ温度測定装置をさらに備えることを特徴とするウェーハ熱処理装置。
【請求項12】
前記温度測定装置は、
前記磁場生成部に交流電流を供給する交流電源と、
前記磁場測定センサーで測定された磁場の強度から、ウェーハの温度を計算する信号処理部と、
前記計算されたウェーハの温度をディスプレイする端末器と、
をさらに備える請求項11に記載のウェーハ熱処理装置。
【請求項13】
前記導電体構造物は、螺旋形に少なくとも1回巻線された誘導コイルであることを特徴とする請求項11に記載のウェーハ熱処理装置。
【請求項14】
前記ウェーハの表面に、複数の誘導コイルが配置されていることを特徴とする請求項13に記載のウェーハ熱処理装置。
【請求項15】
前記複数の誘導コイルは、前記ウェーハの表面のうち半導体チップが形成されていない空いている空間に配置されることを特徴とする請求項14に記載のウェーハ熱処理装置。
【請求項16】
前記複数の誘導コイルそれぞれに対応する位置に、複数の磁場生成部及び磁場測定センサーがそれぞれ配置されることを特徴とする請求項14に記載のウェーハ熱処理装置。
【請求項17】
前記磁場生成部は、前記ホットプレート内に設置され、前記磁場測定センサーは、前記カバーの内面から下方に設置されることを特徴とする請求項16に記載のウェーハ熱処理装置。
【請求項18】
前記交流電源は、所定の順序によって所定の時間間隔で、それぞれの磁場生成部に順次に交流電流を供給することを特徴とする請求項16に記載のウェーハ熱処理装置。
【請求項1】
ウェーハの熱処理工程でウェーハの温度を測定する装置において、
前記ウェーハの一側表面に配置され、温度によって電気伝導度が変化する少なくとも1つの導電体構造物と、
前記ウェーハを中心に、前記導電体構造物と対向して設置された磁場生成部と、
前記導電体構造物の上方に設置される磁場測定センサーと、
を備えることを特徴とするウェーハ温度測定装置。
【請求項2】
前記磁場生成部に交流電流を供給する交流電源と、
前記磁場測定センサーで測定された磁場の強度からウェーハの温度を計算する信号処理部と、
前記計算されたウェーハの温度をディスプレイする端末器と、
をさらに備える請求項1に記載のウェーハ温度測定装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、
前記磁場測定センサーからの信号を増幅する信号増幅器と、
前記増幅された信号から磁場の大きさを計算する磁場計算部と、
磁場生成部で発生した磁場の大きさと、磁場計算部で計算された磁場の大きさとを比較して、前記導電体構造物から誘導された磁場の大きさを計算する誘導磁場計算部と、
前記計算された誘導磁場の大きさからウェーハの温度を計算する温度計算部と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載のウェーハ温度測定装置。
【請求項4】
前記温度計算部は、誘導磁場の大きさと、ウェーハの温度との関係をあらかじめ測定して記録したルックアップテーブルを利用することを特徴とする請求項3に記載のウェーハ温度測定装置。
【請求項5】
前記導電体構造物は、螺旋形に少なくとも1回巻線された誘導コイルであることを特徴とする請求項1に記載のウェーハ温度測定装置。
【請求項6】
前記ウェーハの表面に、複数の誘導コイルが配置されていることを特徴とする請求項5に記載のウェーハ温度測定装置。
【請求項7】
前記複数の誘導コイルは、前記ウェーハの表面のうち半導体チップが形成されていない空いている空間に配置されることを特徴とする請求項6に記載のウェーハ温度測定装置。
【請求項8】
前記複数の誘導コイルそれぞれに対応する位置に、複数の磁場生成部と磁場測定センサーとがそれぞれ配置されることを特徴とする請求項7に記載のウェーハ温度測定装置。
【請求項9】
前記交流電源は、所定の順序によって、所定の時間間隔で、それぞれの磁場生成部に順次に交流電流を供給することを特徴とする請求項8に記載のウェーハ温度測定装置。
【請求項10】
前記磁場生成部は、交流駆動電磁石であることを特徴とする請求項1に記載のウェーハ温度測定装置。
【請求項11】
上部面に置かれたウェーハを均一に加熱するホットプレート及び前記ホットプレートを密閉するように覆うカバーを備えるウェーハの熱処理装置において、
前記加熱されるウェーハの上面に配置され、温度によって電気伝導度が変化する少なくとも1つの導電体構造物と、
前記ウェーハを中心に前記導電体構造物と対向して設置された磁場生成部と、
前記導電体構造物の上方に設置される磁場測定センサーと、
を備えるウェーハ温度測定装置をさらに備えることを特徴とするウェーハ熱処理装置。
【請求項12】
前記温度測定装置は、
前記磁場生成部に交流電流を供給する交流電源と、
前記磁場測定センサーで測定された磁場の強度から、ウェーハの温度を計算する信号処理部と、
前記計算されたウェーハの温度をディスプレイする端末器と、
をさらに備える請求項11に記載のウェーハ熱処理装置。
【請求項13】
前記導電体構造物は、螺旋形に少なくとも1回巻線された誘導コイルであることを特徴とする請求項11に記載のウェーハ熱処理装置。
【請求項14】
前記ウェーハの表面に、複数の誘導コイルが配置されていることを特徴とする請求項13に記載のウェーハ熱処理装置。
【請求項15】
前記複数の誘導コイルは、前記ウェーハの表面のうち半導体チップが形成されていない空いている空間に配置されることを特徴とする請求項14に記載のウェーハ熱処理装置。
【請求項16】
前記複数の誘導コイルそれぞれに対応する位置に、複数の磁場生成部及び磁場測定センサーがそれぞれ配置されることを特徴とする請求項14に記載のウェーハ熱処理装置。
【請求項17】
前記磁場生成部は、前記ホットプレート内に設置され、前記磁場測定センサーは、前記カバーの内面から下方に設置されることを特徴とする請求項16に記載のウェーハ熱処理装置。
【請求項18】
前記交流電源は、所定の順序によって所定の時間間隔で、それぞれの磁場生成部に順次に交流電流を供給することを特徴とする請求項16に記載のウェーハ熱処理装置。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−13517(P2006−13517A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186453(P2005−186453)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
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