説明

磁気カップリング及び撹拌装置

【課題】被回転体と回転体との間の軸心に沿った相互間距離が増大した場合にも、継続して非接触で動力を伝達する。
【解決手段】軸心が鉛直方向に沿う態様で配設した出力軸1と、出力軸1の延長上に配置した被駆動軸2との間に、反発用磁石ユニット40及び吸引用磁石ユニット30を配設し、反発用磁石ユニット40の反発力により出力軸1に対して被駆動軸2を浮上させた状態に維持するとともに、吸引用磁石ユニット30の吸引力により出力軸1と被駆動軸2との間に非接触で回転力を伝達するようにした磁気カップリングにおいて、出力軸1と被駆動軸2との間の軸心に沿った相互間距離Dが予め設定した閾値よりも小さい場合に反発力が吸引力を上回り、かつ相互間距D離が閾値を超えて増大した場合に吸引力が反発力を上回るようにそれぞれの磁力を設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で回転力を伝達する磁気カップリング及びこれを適用した撹拌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
撹拌槽の内部に貯留した液体を撹拌する装置としては、撹拌槽の内部に配設した撹拌翼(被回転体)と、撹拌槽の外部に配設したモータ等の駆動部の出力軸(回転体)との間に磁気カップリングを適用し、駆動部の回転力を非接触で撹拌翼に伝達するようにしたものがある。この種の磁気カップリングでは、撹拌翼と駆動部の出力軸との互いに対向する部位に吸引用磁石ユニットと反発用磁石ユニットとを配設し、反発用磁石ユニットの反発力により撹拌槽の内部で撹拌翼を浮上させた状態に維持し、かつ吸引用磁石ユニットの吸引力によって非接触で回転力を伝達するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−35098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した磁気カップリングにあっては、撹拌翼と駆動部の出力軸との間の反発力に対して互いの間の吸引力を大きく設定した場合、撹拌槽の内部で撹拌翼を浮上させることができないため、液体の撹拌を行うことができない。つまり、上記のような撹拌装置においては、撹拌翼と駆動部の出力軸との間の反発力が互いの間の吸引力を上回るようにそれぞれの磁石ユニットの磁力を設定する必要がある。
【0005】
磁石ユニットの磁力を上記のように設定した磁気カップリングによれば、撹拌翼と出力軸との間の軸心に沿った相互間距離が減少しても、互いの間に働く反発力によって撹拌翼が上昇し、再び駆動部との相互間距離が大きくなるように調整されることになり、撹拌翼が撹拌槽の底壁に接触する事態を防止することができるようになる。
【0006】
しかしながら、撹拌翼と出力軸との間の軸心に沿った相互間距離が増大した後においては、もはや両者を接近させる力が作用することはなく、そのまま相互間距離が増大して回転力を伝達することが困難となる恐れがある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、被回転体と回転体との間の軸心に沿った相互間距離が増大した場合にも、継続して非接触で動力を伝達することのできる磁気カップリング及び撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る磁気カップリングは、軸心が鉛直方向に沿う態様で配設した回転体と、前記回転体の延長上に配置した被回転体との間に、反発用磁石ユニット及び吸引用磁石ユニットを配設し、前記反発用磁石ユニットの反発力により前記回転体に対して前記被回転体を浮上させた状態に維持するとともに、前記吸引用磁石ユニットの吸引力により前記回転体と前記被回転体との間に非接触で回転力を伝達するようにした磁気カップリングにおいて、前記回転体と前記被回転体との間の軸心に沿った相互間距離が予め設定した閾値よりも小さい場合に前記反発用磁石ユニットの反発力が前記吸引用磁石ユニットの吸引力を上回り、かつ前記相互間距離が前記閾値を超えて増大した場合に前記吸引用磁石ユニットの吸引力が前記反発用磁石ユニットの反発力を上回るようにそれぞれの磁力を設定したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上述した磁気カップリングにおいて、前記吸引用磁石ユニットを前記回転体の中心部に配設し、かつ前記反発用磁石ユニットを前記吸引用磁石ユニットの外周部に配設し、前記吸引用磁石ユニットは、隣接するものが互いに異極となる態様で複数の磁石を周方向に交互に配設して構成し、前記反発用磁石ユニットは、互いに外径が異なる複数のリング状磁石を、隣接するものが互いに異極となる態様で同心上に配設して構成したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上述した磁気カップリングにおいて、前記回転体と前記被回転体との間に、前記回転体の軸心と前記被回転体の軸心とが合致した場合に相互間に作用する磁力がバランスし、かつ前記回転体の軸心と前記被回転体の軸心とが互いにずれた場合に前記磁力がアンバランスとなる横ずれ防止用磁石ユニットを配設したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る撹拌装置は、上述した磁気カップリングのいずれか一つにおいて、前記被回転体に撹拌翼を設け、かつ液体を撹拌する撹拌槽の内部に前記被回転体を配設する一方、前記撹拌槽の外部に前記回転体を駆動する駆動部を配設し、前記被回転体と前記回転体とを互いに対向させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転体と被回転体との間の軸心に沿った相互間距離が増大した場合に吸引用磁石ユニットの吸引力が反発用磁石ユニットの反発力を上回り、かつ相互間距離が減少した場合に反発用磁石ユニットの反発力が吸引用磁石ユニットの吸引力を上回るようにそれぞれの磁力を設定しているため、被回転体と回転体との間の相互間距離を増大するように力が作用した場合、吸引力が反発力を上回り、互いの相互間距離が減少する。従って、被回転体と回転体との間に継続して吸引力を作用させ、非接触で動力を伝達することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1である磁気カップリングを示した断面図である。
【図2】図2は、図1に示した磁気カップリングに適用する反発用磁石ユニット及び吸引用磁石ユニットの配置態様を示す図である。
【図3】図3は、図1に示した磁気カップリングの回転体と被回転体との間の軸心に沿った相互間距離と、反発用磁石ユニットの反発力及び吸引用磁石ユニットの吸引力との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、図1に示した磁気カップリングの回転体と被回転体との間の軸心に沿った相互間距離と、両者間に作用する力との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、図1に示した磁気カップリングを適用する撹拌装置を概念的に示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態2である磁気カップリングを示した断面図である。
【図7】図7は、図6に示した磁気カップリングの回転体に設けた磁石の配置態様を示す斜視図である。
【図8】図8は、図6に示した磁気カップリングの被回転体に設けた磁石の配置態様を一部破断して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る磁気カップリング及び撹拌装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1及び図2は、本発明の実施の形態1である磁気カップリングを示したものである。ここで例示する磁気カップリングは、出力軸(回転体)1を鉛直上方に向けた状態で配置された電動モータ(図示せず)と、出力軸1よりも上方となる部位に軸心を鉛直方向に沿って配置した被駆動軸(被回転体)2との間に適用され、これら出力軸1と被駆動軸2との間に非接触で回転力を伝達するもので、出力軸1の端部及び被駆動軸2の端部にそれぞれユニット保持体10,20を備えている。ユニット保持体10,20は、互いに同一の外径を有した円板状を成すものである。出力軸1のユニット保持体10は、自身の軸心を出力軸1の軸心に合致させた状態で出力軸1に固定してあり、被駆動軸2のユニット保持体20は、自身の軸心を被駆動軸2の軸心に合致させた状態で被駆動軸2の端部に固定してある。個々のユニット保持体10,20には、それぞれの端面に吸引用磁石ユニット30及び反発用磁石ユニット40が設けてある。
【0016】
吸引用磁石ユニット30は、出力軸1のユニット保持体10と被駆動軸2のユニット保持体20との間に吸引力を作用させ、出力軸1のユニット保持体10から被駆動軸2のユニット保持体20に非接触で回転力を伝達するためのものである。本実施の形態1では、ユニット保持体10,20の中心部に互いに同一の略扇形状を成す4つの永久磁石(以下、「吸引用磁石31N,31S」という)を配設することによって吸引用磁石ユニット30が構成してある。吸引用磁石31N,31Sは、それぞれ露出する端面全域がN極もしくはS極となるものであり、隣接するものが互いに異極となり、かつ4つを組み合わせたものの外形が、中心孔を有した円板状を呈する態様で、ユニット保持体10,20の軸心を中心として周方向に交互に並設してある。出力軸1のユニット保持体10に構成した吸引用磁石ユニット30と、被駆動軸2のユニット保持体20に構成した吸引用磁石ユニット30とは、互いに同一の形状を有するように構成してある。
【0017】
反発用磁石ユニット40は、出力軸1のユニット保持体10と被駆動軸2のユニット保持体20との間に反発力を作用させ、被駆動軸2のユニット保持体20を出力軸1のユニット保持体10から浮上した状態に維持するためのものである。本実施の形態1では、吸引用磁石ユニット30の外周部に互いに外径が異なるリング状を成した3つの永久磁石(以下、「反発用磁石41N,41S,41N」という)を配設することによって反発用磁石ユニット40が構成してある。反発用磁石41N,41S,41Nは、それぞれ露出する端面全周がN極もしくはS極となるもので、隣接するものが互いに異極となる態様で、ユニット保持体10,20の軸心を中心とした同心上に交互に並設してある。出力軸1のユニット保持体10に構成した反発用磁石ユニット40と、被駆動軸2のユニット保持体20に構成した反発用磁石ユニット40とは、互いに同一の形状、かつ同一の磁極を有するように構成してある。
【0018】
上記のように吸引用磁石ユニット30及び反発用磁石ユニット40を備えたユニット保持体10,20においては、互いの軸心を合致させた状態でそれぞれの端面を対向させると、反発用磁石41N,41S,41Nが同極同士で対向するため、互いの間に反発力が作用し、被駆動軸2のユニット保持体20が出力軸1の軸方向に沿ってユニット保持体10から浮上した状態に維持される。これに対して吸引用磁石ユニット30においては、ユニット保持体10,20が適宜相対回転することにより、互いに異極を対向させ、相互間に吸引力が作用した状態で停止することになる。
【0019】
ここで、反発用磁石ユニット40の反発力は、吸引用磁石ユニット30の吸引力よりも大きく設定しなければ、出力軸1のユニット保持体10に対して被駆動軸2のユニット保持体20を浮上した状態に維持することができない。しかしながら、反発用磁石ユニット40の反発力を、単に吸引用磁石ユニット30の吸引力よりも大きく設定した場合には、出力軸1のユニット保持体10と被駆動軸2のユニット保持体20との間の軸心に沿った相互間距離Dが増大するように力が作用すると、そのまま相互間距離Dが増大してしまうため、その後に回転力を伝達することが困難となる。
【0020】
このため、上述の磁気カップリングでは、図3及び図4に示すように、出力軸1のユニット保持体10と被駆動軸2のユニット保持体20との間の軸心に沿った相互間距離Dが予め設定した閾値よりも小さい場合、従前のものと同様に反発用磁石ユニット40の反発力が吸引用磁石ユニット30の吸引力を上回るように設定し、かつ相互間距離Dが上述の閾値を超えて増大した場合に吸引用磁石ユニット30の吸引力が反発用磁石ユニット40の反発力を上回るようにそれぞれの磁力が設定してある。つまり、吸引用磁石ユニット30の相互間に作用する吸引力に対して、反発用磁石ユニット40の反発力が、上述した相互間距離Dの変化に対してより急激に変化するように設定してある。
【0021】
出力軸1のユニット保持体10と被駆動軸2のユニット保持体20との間の軸心に沿った相互間距離Dの変化に対して反発用磁石ユニット40の反発力が吸引用磁石ユニット30の吸引力よりも急激に変化するように設定するには、例えば吸引用磁石31N,31Sの極数をできるだけ少なくすることが好ましい。これは、吸引用磁石31N,31Sの極数が多い場合、上述の相互間距離Dが増大すると、対向する吸引用磁石ユニット30の吸引用磁石31N,31Sの間において出入されていた磁力線が、同じ吸引用磁石ユニット30の隣接する吸引用磁石31N,31Sの間で出入りされるようになり、吸引用磁石ユニット30の相互間に作用する吸引力が急激に減少するためである。一方、反発用磁石ユニット40においては、反発用磁石41N,41S,41Nとして径方向の幅ができるだけ小さいものを適用することが好ましい。これは、上記と同様、上述した相互間距離Dが増大すると、対向する反発用磁石ユニット40の反発用磁石41N,41S,41Nの間において出入されていた磁力線が、同じ反発用磁石ユニット40の隣接する反発用磁石41N,41S,41Nの間で出入りされるようになり、反発用磁石ユニット40の相互間に作用する反発力が急激に減少するためである。
【0022】
上記のように構成した磁気カップリングによれば、反発用磁石ユニット40の反発力と吸引用磁石ユニット30の吸引力とがバランスし、出力軸1のユニット保持体10に対して被駆動軸2のユニット保持体20が浮上した状態に維持される。この状態から電動モータ(図示せず)を駆動すれば、吸引用磁石ユニット30の相互間に作用する吸引力により、出力軸1のユニット保持体10の回転が非接触で被駆動軸2のユニット保持体20に伝達され、被駆動軸2が出力軸1と同方向に回転することになる。
【0023】
この状態において、被駆動軸2に対してその軸心が水平方向にずれるように力が作用すると、出力軸1のユニット保持体10に配設した吸引用磁石31N,31Sと被駆動軸2のユニット保持体20に配設した吸引用磁石31N,31Sとの対向面積がアンバランスとなる。これにより、各吸引用磁石31N,31Sの間に作用する吸引力もアンバランスとなり、被駆動軸2の軸心が出力軸1の軸心に合致するように力が作用する。従って、上記磁気カップリングによれば、常に出力軸1の軸心と被駆動軸2の軸心とが互いに合致した状態に自動的に調整される。
【0024】
一方、被駆動軸2のユニット保持体20に対して、出力軸1のユニット保持体10から軸心に沿った相互間距離Dが増大するように力が作用すると、反発用磁石ユニット40の反発力及び吸引用磁石ユニット30の吸引力がいずれも減少することになる。しかしながら、吸引力の減少率に比べて反発力の減少率が大きいため、出力軸1のユニット保持体10と被駆動軸2のユニット保持体20との間には、吸引力が作用し、相互間距離Dが減少することになる。従って、再び二つのユニット保持体10,20の相互間距離Dが反発用磁石ユニット40の反発力と吸引用磁石ユニット30の吸引力とがバランスした位置で停止し、出力軸1のユニット保持体10に対して被駆動軸2のユニット保持体20が浮上した状態に維持される。この結果、被駆動軸2と電動モータ(図示せず)の出力軸1との間に継続して吸引力を作用させ、非接触で動力を伝達することが可能となる。
【0025】
図5は、上述した磁気カップリングを適用した撹拌装置を示したものである。この撹拌装置では、基台50に電動モータ(駆動部)60が出力軸1を鉛直上方に向けた状態で取り付けてあり、出力軸1の上端部に反発用磁石ユニット40及び吸引用磁石ユニット30を備えたユニット保持体10が固定してある。
【0026】
一方、基台50には、その上部に撹拌槽70が取り付けてある。撹拌槽70は、非磁性体によって中空の直方体状に形成したもので、その底壁71の四隅部に設けた脚部72を介して基台50の上面に固定してある。図5からも明らかなように、撹拌槽70の底壁71は、出力軸1に設けたユニット保持体10の上面に対して平行、かつ近接した状態で配置してある。
【0027】
撹拌槽70の内部には、撹拌すべき液体とともに被駆動軸2が配設してある。被駆動軸2の下端部には、反発用磁石ユニット40及び吸引用磁石ユニット30を備えたユニット保持体20が固定してある。被駆動軸2の上端部には、被駆動軸2の軸心を回転軸心として撹拌翼2aが取り付けてある。
【0028】
その他、実施の形態1と同様の構成に関しては、同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略している。
【0029】
上記のように構成した撹拌装置においても、反発用磁石ユニット40の反発力と吸引用磁石ユニット30の吸引力とがバランスし、出力軸1のユニット保持体10に対して被駆動軸2のユニット保持体20が浮上した状態に維持される。この状態から電動モータ60を駆動すれば、吸引用磁石ユニット30の相互間に作用する吸引力により、出力軸1のユニット保持体10の回転が非接触で被駆動軸2のユニット保持体20に伝達され、被駆動軸2が出力軸1と同方向に回転することになる。被駆動軸2が回転すると、これに取り付けた撹拌翼2aが回転することになり、撹拌槽70の液体が撹拌される。
【0030】
液体を撹拌している間、被駆動軸2に対してその軸心が水平方向にずれるように力が作用した場合、あるいは被駆動軸2に対して電動モータ60との間の軸心に沿った相互間距離Dが増大するように力が作用した場合、いずれも上述した磁気カップリングの作用によって自動的に復帰するため、継続的に液体を撹拌することが可能である。
【0031】
尚、上述した実施の形態1では、吸引用磁石ユニット30として、略扇形状を成す4つの吸引用磁石31N,31Sを配設することによって構成したものを例示しているが、吸引用磁石ユニット30を構成する永久磁石の構成はこれらに限定されない。その他の形状を成す永久磁石を適用しても良いし、極数も4極に限定されない。同様に、反発用磁石ユニット40として、外径が異なるリング状を成した3つの反発用磁石41N,41S,41Nを配設することによって構成したものを例示しているが、その他の形状を成す永久磁石を適用しても良いし、極数も3極に限定されない。
【0032】
また、上述した実施の形態1では、電動モータの駆動により非接触で被駆動軸を回転するものを例示しているが、被回転体としては必ずしも軸部材である必要はない。
【0033】
さらに、上述した実施の形態1では、撹拌槽70として底壁71が平板状を成すものを例示しているが、必ずしもこれに限定されない。例えば、中心部から外周に向かうに従って上方に傾斜するテーパ状の底壁を有した撹拌槽に適用すれば、液体をより効率よく撹拌させることが可能となる。
【0034】
(実施の形態2)
図6〜図8は、本発明の実施の形態2である磁気カップリングを示したものである。ここで例示する磁気カップリングは、実施の形態1と同様に、出力軸(回転体)1′を鉛直上方に向けた状態で配置された電動モータ(図示せず)と、出力軸1′よりも上方となる部位に軸心を鉛直方向に沿って配置した被駆動軸(被回転体)2′との間に適用され、これら出力軸1′と被駆動軸2′との間に非接触で回転力を伝達するもので、出力軸1′の端部及び被駆動軸2′の端部にそれぞれユニット保持体100,200を備えている。出力軸1′のユニット保持体(以下、区別する場合に「第1ユニット保持体100」という)は、出力軸1′よりも太径の円柱状を成す基部101と、基部101の外周面に設けたフランジ部102とを有したもので、基部101の軸心を出力軸1′の軸心に合致させた状態で出力軸1′に固定してある。被駆動軸2′のユニット保持体(以下、区別する場合に「第2ユニット保持体200」という)は、下端が開口した円筒状を成す基部201と、基部201の開口端部外周面に設けたフランジ部202とを有したもので、基部201の軸心を被駆動軸2′の軸心に合致させた状態で被駆動軸2′の端部に固定してある。第2ユニット保持体200の基部201は、第1ユニット保持体100の基部101を収容することのできる内径寸法に形成してある。第2ユニット保持体200のフランジ部202は、第1ユニット保持体100のフランジ部102と外径がほぼ一致するように形成してある。個々のユニット保持体100,200には、吸引用磁石ユニット130、反発用磁石ユニット140及び横ずれ防止用磁石ユニット150が設けてある。
【0035】
吸引用磁石ユニット130は、第1ユニット保持体100と第2ユニット保持体200との間に吸引力を作用させ、第1ユニット保持体100から第2ユニット保持体200に非接触で回転力を伝達するためのものである。本実施の形態2では、第1ユニット保持体100における基部101の端面中心部に互いに同一の略扇形状を成す4つの永久磁石(以下、「吸引用磁石131N,131S」という)を配設し、かつ第2ユニット保持体200における基部201の内端面中心部に互いに同一の略扇形状を成す4つの永久磁石(以下、「吸引用磁石131N,131S」という)を配設することによって吸引用磁石ユニット130が構成してある。吸引用磁石131N,131Sは、それぞれ露出する端面全域がN極もしくはS極となるものであり、隣接するものが互いに異極となり、かつ4つを組み合わせたものの外形が、中心孔を有した円板状を呈する態様で、ユニット保持体100,200の軸心を中心として周方向に交互に並設してある。第1ユニット保持体100に構成した吸引用磁石ユニット130と、第2ユニット保持体200に構成した吸引用磁石ユニット130とは、互いに同一の形状を有するように構成してある。
【0036】
反発用磁石ユニット140は、第1ユニット保持体100と第2ユニット保持体200との間に反発力を作用させ、第2ユニット保持体200を第1ユニット保持体100から浮上した状態に維持するためのものである。本実施の形態2では、第1ユニット保持体100のフランジ部102及び第2ユニット保持体200のフランジ部202にそれぞれ互いに外径が異なるリング状を成した3つの永久磁石(以下、「反発用磁石141N,141S,141N」という)を配設することによって反発用磁石ユニット140が構成してある。反発用磁石141N,141S,141Nは、それぞれ露出する端面全周がN極もしくはS極となるもので、隣接するものが互いに異極となる態様で、ユニット保持体100,200の軸心を中心とした同心上に交互に並設してある。第1ユニット保持体100に構成した反発用磁石ユニット140と、第2ユニット保持体200に構成した反発用磁石ユニット140とは、互いに同一の形状、かつ同一の磁極を有するように構成してある。
【0037】
実施の形態2の磁気カップリングにおいても、実施の形態1と同様、第1ユニット保持体100と第2ユニット保持体200との間の軸心に沿った相互間距離D′が予め設定した閾値よりも小さい場合、反発用磁石ユニット140の反発力が吸引用磁石ユニット130の吸引力を上回るように設定し、かつ上述した相互間距離D′が閾値を超えて増大した場合に吸引用磁石ユニット130の吸引力が反発用磁石ユニット140の反発力を上回るようにそれぞれの磁力が設定してある。
【0038】
横ずれ防止用磁石ユニット150は、出力軸1′の軸心と被駆動軸2′の軸心とが合致した場合に互いの間に作用する磁力、例えば反発力が全周でバランスし、かつ出力軸1′の軸心と被駆動軸2′の軸心とが互いにずれた場合に反発力がアンバランスとなることにより、常に出力軸1′の軸心と被駆動軸2′の軸心とを互いに合致した状態に維持するためのものである。本実施の形態2では、第1ユニット保持体100における基部101の外周面と第2ユニット保持体200における基部201の内周面との互いに対向する部位にリング状を成す永久磁石(以下、「防止用磁石151N,151N」という)を配設することによって横ずれ防止用磁石ユニット150が構成してある。第1ユニット保持体100の基部101に設けた防止用磁石151Nは、露出する外周面全周が例えばN極となるもので、基部101の上端部に配設してある。第2ユニット保持体200の基部201に設けた防止用磁石151Nは、露出する内周面全周が第1ユニット保持体100の防止用磁石151Nと同一のN極となるもので、基部201の下端部に配設してある。
【0039】
上記のように吸引用磁石ユニット130及び反発用磁石ユニット140を備えたユニット保持体100,200においては、互いの軸心を合致させた状態でそれぞれの端面を対向させると、反発用磁石141N,141S,141Nが同極同士で対向するため、互いの間に反発力が作用し、第2ユニット保持体200が第1ユニット保持体100から浮上した状態に維持される。これに対して吸引用磁石ユニット130においては、ユニット保持体100,200が適宜相対回転することにより、互いに異極を対向させ、相互間に吸引力が作用した状態で停止することになる。この状態から電動モータ(図示せず)を駆動すれば、吸引用磁石ユニット130の相互間に作用する吸引力により、第1ユニット保持体100の回転が非接触で第2ユニット保持体200に伝達され、被駆動軸2′が出力軸1′と同方向に回転することになる。
【0040】
この状態において、被駆動軸2′に対してその軸心が出力軸1′の軸心から水平方向にずれるように力が作用すると、横ずれ防止用磁石ユニット150の防止用磁石151N,151Nの間に作用する反発力がアンバランスとなる。反発力がアンバランスとなった横ずれ防止用磁石ユニット150においては、反発力が全周でバランスするように力が作用し、被駆動軸2′の軸心位置が出力軸1′の軸心に合致するように修正される。従って、上記磁気カップリングによれば、常に出力軸1′の軸心と被駆動軸2′の軸心とが互いに合致した状態に自動的に調整されることになる。しかも、実施の形態1で記載したように、第1ユニット保持体100に配設した吸引用磁石131N,131Sと第2ユニット保持体200に配設した吸引用磁石131N,131Sとの対向面積がアンバランスすることに起因した力も同時に作用するため、出力軸1′に対して被駆動軸2′の軸心がずれる事態をより確実に防止することができるようになる。
【0041】
一方、第2ユニット保持体200に対して、第1ユニット保持体100との間の軸心に沿った相互間距離D′が増大するように力が作用すると、反発用磁石ユニット140の反発力及び吸引用磁石ユニット130の吸引力がいずれも減少することになる。しかしながら、吸引力の減少率に比べて反発力の減少率が大きいため、第1ユニット保持体100と第2ユニット保持体200との間には、吸引力が作用し、相互間距離D′が減少することになる。従って、再び二つのユニット保持体100,200の相互間距離D′が反発用磁石ユニット140の反発力と吸引用磁石ユニット130の吸引力とがバランスした位置で停止し、第1ユニット保持体100に対して第2ユニット保持体200が浮上した状態に維持される。この結果、被駆動軸2′と電動モータ(図示せず)の出力軸1′との間に継続して吸引力を作用させ、非接触で動力を伝達することが可能となる。
【0042】
図には明示していないが、本実施の形態2においても、撹拌槽70′の内部に撹拌すべき液体とともに被駆動軸2′を配設し、その下端部に第2ユニット保持体200を設ける一方、撹拌槽70′の外部に電動モータを設置し、その出力軸1′の上端部に第1ユニット保持体100を設ければ、撹拌装置を構成することが可能である。但し、実施の形態2を適用する場合には、図6に示すように、撹拌槽70′の底壁をユニット保持体100,200の形状に沿って凹凸状に形成する必要がある。
【0043】
尚、上述した実施の形態2では、吸引用磁石ユニット130として、略扇形状を成す4つの吸引用磁石131N,131Sを配設することによって構成したものを例示しているが、吸引用磁石ユニット130を構成する永久磁石の構成はこれらに限定されない。その他の形状を成す永久磁石を適用しても良いし、極数も4極に限定されない。同様に、反発用磁石ユニット140として、外径が異なるリング状を成した3つの反発用磁石141N,141S,141Nを配設することによって構成したものを例示しているが、その他の形状を成す永久磁石を適用しても良いし、極数も3極に限定されない。さらに、第1ユニット保持体100の外周面と第2ユニット保持体200の内周面との互いに対向する部位に横ずれ防止用磁石ユニット150を設けるようにしているが、ユニット保持体100,200の対向する部位であれば、端面間に設けるようにしても良い。この場合、横ずれ防止用磁石ユニットは、吸引用磁石ユニットと反発用磁石ユニットとの間に設ける必要もなく、例えばユニット保持体の最外周部に設けるようにしても良い。
【0044】
また、上述した実施の形態2では、横ずれ防止用磁石ユニット150として、軸方向長さが同じ寸法となる2つの防止用磁石151N,151Nを例示しているが、2つの防止用磁石は軸方向長さが互いに異なるものを用いるようにしても良い。この場合、反発用磁石141N,141S,141Nの間に作用する反発力によって第2ユニット保持体200が第1ユニット保持体100から浮上した状態に維持された際に、軸方向長さの小さい防止用磁石151Nが軸方向長さの大きい防止用磁石151Nに対して高さ方向の中央部に位置するように設定することが好ましい。
【0045】
さらに、上述した実施の形態2では、電動モータの駆動により非接触で被駆動軸2′を回転するものを例示しているが、被駆動軸2′としては必ずしも軸部材である必要はない。
【符号の説明】
【0046】
1,1′ 出力軸
2,2′ 被駆動軸
2a 撹拌翼
10,20 ユニット保持体
30 吸引用磁石ユニット
31N,31S 吸引用磁石
40 反発用磁石ユニット
41N,41S,41N 反発用磁石
60 電動モータ
70,70′ 撹拌槽
100,200 ユニット保持体
130 吸引用磁石ユニット
131N,131S 吸引用磁石
140 反発用磁石ユニット
141N,141S,141N 反発用磁石
150 防止用磁石ユニット
151N 防止用磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心が鉛直方向に沿う態様で配設した回転体と、前記回転体の延長上に配置した被回転体との間に、反発用磁石ユニット及び吸引用磁石ユニットを配設し、前記反発用磁石ユニットの反発力により前記回転体に対して前記被回転体を浮上させた状態に維持するとともに、前記吸引用磁石ユニットの吸引力により前記回転体と前記被回転体との間に非接触で回転力を伝達するようにした磁気カップリングにおいて、
前記回転体と前記被回転体との間の軸心に沿った相互間距離が予め設定した閾値よりも小さい場合に前記反発用磁石ユニットの反発力が前記吸引用磁石ユニットの吸引力を上回り、かつ前記相互間距離が前記閾値を超えて増大した場合に前記吸引用磁石ユニットの吸引力が前記反発用磁石ユニットの反発力を上回るようにそれぞれの磁力を設定したことを特徴とする磁気カップリング。
【請求項2】
前記吸引用磁石ユニットを前記回転体の中心部に配設し、かつ前記反発用磁石ユニットを前記吸引用磁石ユニットの外周部に配設し、
前記吸引用磁石ユニットは、隣接するものが互いに異極となる態様で複数の磁石を周方向に交互に配設して構成し、前記反発用磁石ユニットは、互いに外径が異なる複数のリング状磁石を、隣接するものが互いに異極となる態様で同心上に配設して構成したことを特徴とする請求項1に記載の磁気カップリング。
【請求項3】
前記回転体と前記被回転体との間に、前記回転体の軸心と前記被回転体の軸心とが合致した場合に相互間に作用する磁力がバランスし、かつ前記回転体の軸心と前記被回転体の軸心とが互いにずれた場合に前記磁力がアンバランスとなる横ずれ防止用磁石ユニットを配設したことを特徴とする請求項1に記載の磁気カップリング。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載の磁気カップリングにおいて、前記被回転体に撹拌翼を設け、かつ液体を撹拌する撹拌槽の内部に前記被回転体を配設する一方、前記撹拌槽の外部に前記回転体を駆動する駆動部を配設し、前記被回転体と前記回転体とを互いに対向させたことを特徴とする撹拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−13216(P2013−13216A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143800(P2011−143800)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(303049418)株式会社プロスパイン (21)
【出願人】(000171919)佐竹化学機械工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】