説明

磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法、並びにガラス基板

【課題】磁気ディスク用ガラス基板の端面を低コストで効率良く高品質に仕上げることができる安定した研削加工を可能とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を提供する。
【解決手段】円板状のガラス基板の端面部分に研削液を供給しつつ、基板の外周側端面に砥石を接触させて研削することにより基板の端面を形状加工する。上記砥石は、端面部分を有する円盤状に形成されその中心を回転軸にして回転可能に構成されている円盤状回転砥石である。砥石の移動方向とガラス基板の移動方向とが交差するようにして、砥石の端面部分を基板の端面に接触させ且つ前記基板と砥石とを相対的に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ(HDD)などの磁気記録装置に搭載される磁気ディスクに関し、詳しくは磁気ディスク用ガラス基板の端面を形状加工する工程を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、情報記録技術、特に磁気記録技術は、急速なIT産業の発達に伴い飛躍的な技術革新が要請されている。ハードディスクドライブ(HDD)等の情報記録装置に搭載される記録媒体である磁気ディスクでは、高容量化の要求は高まる一方である。
【0003】
ところで、磁気ディスク等の情報記録媒体用基板としては、従来はアルミニウム系合金基板が広く用いられていたが、最近では、高記録密度化に適した磁気ディスク用基板として、ガラス基板の占める比率が次第に高くなってきている。ガラス基板は、アルミニウム系合金基板に比べて剛性が高いので、磁気ディスク装置の高速回転化に適し、また、平滑な表面が得られるので、磁気ヘッドの浮上量を低下させることが容易となり、記録信号のS/N比を向上させることが出来るので好適である。
【0004】
また、磁気ディスクの高記録密度化のためには、ガラス基板の加工精度にも高度なものが要求されており、それはガラス基板の主表面のみならず、端面形状においても同様である。
磁気ディスク用ガラス基板は、通常、ディスク状に成形したガラス基板に、研削、研磨、化学強化等の工程を順次施して製造される。
【0005】
従来のガラス基板の端面の研削方法としては、ディスク状に成形したガラス基板の端面部分に研削液を供給しながら、ガラス基板の外周側端面および内周側端面に研削砥石を接触回転させて研削加工を行い、ガラス基板の外周側端面および内周側端面に所定の面取り加工を施していた。例えば図4に示すように、従来のガラス基板端面の研削加工に用いていた研削砥石40は、溝形状を有し、該溝は、ガラス基板10の例えば外周側端面の側壁面と、該ガラス基板の主表面と側壁面との間の面取面との両方の面を同時に研削加工できるように形成されており、具体的には、側壁部(側壁面研削加工部)40a及びその両側に存在する面取部(面取面研削加工部)40b,40bからなる溝形状を備えている。そして、ガラス基板10の面方向と、上記研削砥石40に形成された溝形状の溝方向を一致させた状態で、ガラス基板10の例えば外周側端面12に上記研削砥石40を接触させながら、ガラス基板10と研削砥石40の両方を回転させて研削加工を行っていた。
【0006】
特許文献1には、以上のような従来の総型砥石を用いたガラス基板端面の研削加工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3061605号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
情報化社会の進展とともに、磁気ディスクの高記録密度化と低価格化の要求は日増しに高まってきている。磁気ディスクの端面形状においても、更なる平滑化、加工精度の向上及び加工時間の短縮や、副資材の寿命向上が求められてきている。
また、上述のハードディスクドライブは、従来のパーソナルコンピュータなどに搭載されるものだけでなく、近年は、カーナビゲーション、家庭用ビデオレコーダーやビデオカメラの記録媒体として大容量化が図られている。よって、磁気ディスクの記録密度を飛躍的に増大させる必要から、安価で高性能な磁気記録媒体が求められてきている。
【0009】
このような安価で高記録密度が達成できる磁気記録媒体が求められているが、そのためには、読み書きヘッドの位置決め精度を得るための内径寸法精度の高精度化、媒体主表面に対するコロージョン発生などのコンタミ要因の低減要請に基づく外径端面の高品位化の達成が要求される。
ところが、上述の図4に示したような研削砥石を用いた現状の端面加工プロセスでは研削加工時に発生する基板へのダメージが大きくクラックが深いことから次の研磨工程での研磨取代が徒に多くなってしまうため、寸法精度が安定しにくい、端面に残留クラックが残りやすい、というプロセスが抱える問題点がある。すなわち、従来の磁気ディスク用ガラス基板の端面の面取り加工は、所定寸法を高能率で加工するために、断続的なクリープ研削に似た研削様式により行っている。そのため、従来は粗粒度(粒径大)の砥石を用いることにより、必要な除去速度を確保するための大きな切込み量(研削性)が得られるようにしている。しかしながら、このような大きな切込み量は、脆性破壊モードによる研削加工となり、塑性モード主体の研削加工による良好な研削面品位(鏡面品位)が得られ難い。従来は、端面の研削加工を行った後に、端面の鏡面研磨工程を施すことにより鏡面品位を得るようにしていたが、切込み量が大きいと研削加工面の加工歪みが深くなり、鏡面研磨を行っても歪みや条痕が残留し高品位が得られない場合がある。良好な研削面品位を得るためには、例えば微細粒度(粒径小乃至は微細)の砥石を用いることが考えられる。
【0010】
上記のとおり、従来の研削加工においては、ガラス基板の外周側端面に図4に示すような円筒状の研削砥石の外周側を接触回転させて研削加工を行っていたが、この場合の砥石と基板との接触状態は、砥石の外径弧と基板の外径弧との基板厚み方向での線接触であるため、例えば加工面品位にとって有利な微細砥粒砥石を用いて研削加工を行った場合、砥粒1刃当りの負荷が大きくなり、前述したように加工能率を優先した現行の切込み量では砥粒に要求される除去能率に追従できず、目潰れや目詰まりが生じて短時間で研削不能状態となる。また切れ刃である砥粒は常に同一ベクトル方向からの研削抵抗を断続的に受けるため、単位時間当りの砥粒の損傷が激しい。また、作製すべき端部形状が変更された場合、その形状に合わせた新たな砥石の作製が必要になる。
【0011】
そのため、従来の端面研削工程よりもダメージを軽減できる研削加工プロセスが必要である。より一層の高情報記録密度化などの観点から、ガラス基板の端面の寸法形状精度や面取り加工の仕上がり面品位など、磁気ディスク用ガラス基板に対する品質要求は従来に増して高まる一方であり、従来の研削方法や研磨方法を用いて多数枚の磁気ディスク用ガラス基板を製造した場合、高まるガラス基板の品質要求に安定的に応えることが次第に困難になってきているという問題があり、再加工可能な基板は再加工することもできるが、コスト高になってしまう問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、高記録密度化への信頼性の確保が急務となっている磁気ディスクの高記録密度化と低価格化の要請に応える観点から、特に磁気ディスク用ガラス基板の外周側及び内周側の端面を低コストで効率良く高品質に仕上げることができる安定した研削加工を可能とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を提供することを第1の目的とする。また、このような製造方法による磁気ディスク用ガラス基板を用いる磁気ディスクの製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述したように、従来の研削方法を用いて多数枚の磁気ディスク用ガラス基板の端面の面取り加工を行った場合、ガラス基板のたとえば外周側端面のうち、ガラス基板の主表面と直交する側壁面と、この側壁面と表裏の主表面との間にそれぞれ形成される2つの面取面の何れもの寸法形状精度や面取り加工の仕上がり面品位など高まるガラス基板の品質要求に安定的に応えることが次第に困難になってきている。
また、磁気ディスク用のガラス基板の端面はチャンファ面を有する面取り形状であり、更にそれぞれの形状に内外径の寸法公差を含めて公差精度要求も最近では非常に厳しいことから、ガラス基板端面の面取り加工による寸法形状精度を確保するためには、砥石の磨耗を抑えながら(形状維持を保ちながら)切れ味を持続させ、研削性を安定的に確保する必要がある。
【0014】
そこで、本発明者は、前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、以下の構成を有する本発明を完成するに到ったものである。
すなわち、本発明は、前記課題を解決するため、以下の構成としている。
(構成1)
円板状のガラス基板の端面部分に研削液を供給しつつ、前記ガラス基板の端面に砥石を接触させて研削することにより前記ガラス基板の端面を形状加工する工程を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、前記砥石は、端面部分を有する円盤状に形成されているとともにその中心を回転軸にして回転可能に構成されている円盤状回転砥石であり、前記砥石の移動方向と前記ガラス基板の移動方向とがこれらの接触点において交差するようにして、前記砥石の端面部分を前記ガラス基板の端面に接触させ且つ前記ガラス基板と前記砥石とを相対的に移動させることにより、前記ガラス基板の端面を形状加工することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【0015】
(構成2)
前記ガラス基板と前記砥石の両方を回転させることにより形状加工することを特徴とする構成1に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
(構成3)
前記ガラス基板の端面の側壁面を形状加工する砥石と該端面の面取面を形状加工する砥石とを同時に使用することを特徴とする構成1又は2に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
(構成4)
前記ガラス基板の端面を形状加工した後、同じく端面を研磨ブラシを用いて鏡面研磨加工することを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【0016】
(構成5)
前記砥石を用いた形状加工とその後の研磨ブラシを用いた鏡面研磨加工とで加工方向を略90度異ならせることを特徴とする構成4に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
(構成6)
加工する前記ガラス基板の端面は外周側端面であることを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
(構成7)
前記ガラス基板の形状加工後の外周側及び/又は内周側の端面の少なくとも面取面が凹面状になっていることを特徴とする構成1乃至6のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【0017】
(構成8)
前記ガラス基板の形状加工後の外周側及び/又は内周側の端面の側壁面が凹面状になっていることを特徴とする構成1乃至7のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
(構成9)
構成1乃至8のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法によって製造された磁気ディスク用ガラス基板の主表面上に少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
【0018】
(構成10)
円板状のガラス基板の端面部分に研削液を供給しつつ、前記ガラス基板の端面に砥石を接触させて研削することにより前記ガラス基板の端面を形状加工することによって得られる磁気ディスク用ガラス基板の製造に用いられるガラス基板であって、前記砥石は、端面部分を有する円盤状に形成されているとともにその中心を回転軸にして回転可能に構成されている円盤状回転砥石であり、前記砥石の移動方向と前記ガラス基板の移動方向とがこれらの接触点において交差するようにして、前記砥石の端面部分を前記ガラス基板の端面に接触させ且つ前記ガラス基板と前記砥石とを相対的に移動させることにより、前記ガラス基板の端面の形状加工を行い、前記ガラス基板の形状加工後の外周側及び/又は内周側の端面の少なくとも面取面が凹面状になっていることを特徴とするガラス基板。
【0019】
上記構成1の本発明では、加工に用いる砥石は、端面部分を有する円盤状に形成されているとともにその中心を回転軸にして回転可能に構成されている円盤状回転砥石であり、前記砥石の移動方向と前記ガラス基板の移動方向とが交差(もしくは直交)するようにして、前記砥石の端面部分を前記ガラス基板の外周側端面に接触させ且つ前記ガラス基板と前記砥石とを相対的に移動させることにより、前記ガラス基板の端面の形状加工を行う。そのため、この場合の砥石とガラス基板との接触状態は、砥石の外周端面と基板の端面とが交差且つ点接触状態となり、砥石と基板との接触面積が減少する。ゆえに、研削効率を向上させることができる。また、砥石とガラス基板の移動方向がこれらの接触点において交差することによって、研削加工面に研削痕が残りにくい。すなわち、従来技術では砥石とガラス基板の移動方向が交差していないため、円周方向の筋目が残りやすく、その後の研磨工程(例えばブラシによる端面及び面取り面同時研磨)ではその筋目が除去しきれない場合があった。これは、ブラシによる研磨力が小さいこともあるが、研磨部(ブラシと基板の接触しているところ)においてブラシの移動方向とガラス基板の移動方向が同じであることも影響している。一方、本発明では、そもそも筋目が入りにくいばかりか、例え筋目が入る場合であっても、砥石の回転数を制御することで筋目の方向を円周方向からずらすことが可能である。こうすることで、その後にブラシ研磨工程による鏡面化を行う場合であっても、ブラシの移動方向が筋目方向と直交するようにできるので、筋目を少ない取りしろで容易に消去することが可能となる。また、本発明では円盤状の砥石を用いるため、加工面は凹面状となり、加工面の端部は尖る傾向である。逆に、一般的に研磨ブラシを用いた鏡面研磨加工では、面取り面と端面の境界、及び、主表面と面取り面の境界部分が研磨されやすいため、研磨加工後の面取り面は凸形状となり、境界部においては局率半径が大きくなる傾向にある。この傾向は研磨加工の取りしろが大きくなるほど顕著となる。よって、従来は筋目を除去するために研磨加工の取りしろを増やすと、寸法形状精度が悪化するという問題があった。本発明では、ブラシ研磨加工の取りしろを減らすことができるのみならず、凹面に対して凸形状となる加工を施すことで凹凸を相殺する効果が得られるため、良好な寸法精度を容易に達成することができる。
したがって、微細砥粒砥石を用いて研削加工を行った場合にも安定した研削性を確保でき、良好な研削面品位(鏡面品位)を安定的に得ることができる。しかも、微細砥粒を用いても砥石の切れ味を持続させ、研削性を安定的に確保することで、ガラス基板端面の面取り加工による良好な寸法形状精度を確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法によれば、磁気ディスクの高記録密度化と低価格化の要請に応える観点から、磁気ディスク用ガラス基板の外周側端面の寸法形状精度を確保でき、低コストで効率良く高品質に仕上げることができる安定した形状研削加工が可能であり、基板端面が高品質に仕上げられた磁気ディスク用ガラス基板を低コストで安定して大量に提供することが可能になる。
【0021】
さらに、この磁気ディスク用ガラス基板の製造方法によって製造された磁気ディスク用ガラス基板を用いる磁気ディスクの製造方法によれば、基板の端面を高品質に仕上げることができ、コロージョン対策など、基板端面の表面状態が起因する障害の発生を防止し、より一層の高記録密度化を実現できる磁気ディスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係わる磁気ディスク用ガラス基板を示すもので、(A)はその一部を断面で示した側面図、(B)はその平面図である。
【図2】本発明における一実施の形態の構成を示す概略斜視図である。
【図3】本発明における一実施の形態の構成を示す概略平面図である。
【図4】従来の基板端面の研削加工方法を説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について詳述する。
図1は、本発明が適用される磁気ディスク用ガラス基板1の全体図であり、(A)はその一部を断面で示した側面図、(B)はその平面図である。る。該ガラス基板1は、中心部に円孔を有する全体がディスク(円板)状に形成され、その表裏の主表面11,11と、これら主表面11,11間に形成される外周側の端面12と、内周側の端面13とを有する。
上記ガラス基板1の外周側の端面12は、その主表面11と直交する側壁面12aと、この側壁面12aと表裏の主表面11,11との間にそれぞれ形成されている2つの面取面(面取りした面)12b、12bとからなる形状に形成されている。また、上記ガラス基板1の内周側の端面13についても、その主表面11と直交する側壁面13aと、この側壁面13aと表裏の主表面11,11との間にそれぞれ形成されている2つの面取面(面取りした面)13b、13bとからなる形状に形成されている。
【0024】
そして磁気ディスク、例えば、2.5インチディスクの場合は、ガラス基板1の外径が65mm、内径が20mmに仕上げられる。ここで、内径とは、ガラス基板1の中心部の円孔の内径のことである。
また、磁気ディスク用ガラス基板1の主表面11、外周側端面12、内周側端面13は、それぞれ所定の表面粗さとなるように研磨(鏡面研磨)仕上げされる。外周側端面12及び内周側端面13はいずれも、上述のような端面形状に仕上げられ、なお且つ、表面粗さが例えばRmaxで1μm以下、Raで0.1μm以下の鏡面状態に仕上げられることが通常求められる。
【0025】
磁気ディスク用ガラス基板1は、通常、例えばダイレクトプレス等により所定のディスク状に成形したガラス基板(ガラスディスク)10に、端面の研削、研磨、主表面の鏡面研磨、化学強化等の工程を順次施して製造される。
まず、上記ガラス基板(ガラスディスク)10の端面の研削工程について説明する。
【0026】
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法は、円板状のガラス基板の端面部分に研削液を供給しつつ、前記ガラス基板の端面に砥石を接触させて研削することにより前記ガラス基板の端面を形状加工する工程を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、前記砥石は、端面部分を有する円盤状に形成されているとともにその中心を回転軸にして回転可能に構成されている円盤状回転砥石であり、前記砥石の移動方向と前記ガラス基板の移動方向とがこれらの接触点において交差するようにして、前記砥石の端面部分を前記ガラス基板の端面に接触させ且つ前記ガラス基板と前記砥石とを相対的に移動させることにより、前記ガラス基板の端面を形状加工することを特徴としている。
【0027】
図2は、本発明における一実施の形態の構成を示す概略斜視図であり、図3は、その概略平面図である。
ガラス基板10は、本実施の形態では基板面が水平となるように配置され、ガラス基板10を回転駆動する駆動部26上にセットされている。
上外径面取面加工用砥石20、下外径面取面加工用砥石22、および外径側壁面加工用砥石24は、いずれも端面部分を有する円盤状に形成されているとともにその中心を回転軸にして回転可能に構成されている円盤状回転砥石である。上外径面取面加工用砥石20は駆動部21によって、下外径面取面加工用砥石22は駆動部23によって、外径側壁面加工用砥石24は駆動部25によってそれぞれ所定方向に回転駆動される。
【0028】
上記外径側壁面加工用砥石24は、上記ガラス基板10の外周側の端面において、上下の両主表面と直交する側壁面を加工できるように、上記上外径面取面加工用砥石20は、この側壁面と上主表面との間に形成されている面取面を加工できるように、また下外径面取面加工用砥石22は、この側壁面と下主表面との間に形成されている面取面を加工できるように、それぞれ所定の位置に配設されている。なお、「上」、「下」とは、図2における便宜上の位置関係である。
なお、図2に示したガラス基板10に対する上記上外径面取面加工用砥石20、下外径面取面加工用砥石22、および外径側壁面加工用砥石24の配設関係は一例であって、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0029】
本発明においては、上記のとおり、これら上外径面取面加工用砥石20、下外径面取面加工用砥石22、および外径側壁面加工用砥石24のいずれもその移動方向と上記ガラス基板10の移動方向とがこれらの接触点において交差するようにして、上記各砥石の端面部分を上記ガラス基板10の端面に接触させ且つ上記ガラス基板10と上記各砥石とを相対的に移動させることにより、上記ガラス基板10の端面を形状加工するものである。この場合の移動とは回転移動である。
【0030】
本実施の形態においては、図2及び図3に示すとおり、上外径面取面加工用砥石20、下外径面取面加工用砥石22、および外径側壁面加工用砥石24のいずれもその回転方向と上記ガラス基板10の回転方向とが略垂直に交差するようになっている。上記各砥石の回転方向とガラス基板10の回転方向(基板面の方向)とが交差する角度は、略垂直であることには限定されないが、本発明の作用効果がより良く発揮されるためには、例えば小さい方の角度で60度〜90度の範囲内とすることが好適である。
【0031】
動作を具体的に説明すると、上記上外径面取面加工用砥石20、下外径面取面加工用砥石22、および外径側壁面加工用砥石24はそれぞれ図2に示すような所定の位置に配設されており、この時点ではまだガラス基板10の端面とは接触していない。上記ガラス基板10を所定の回転速度で回転させた後、上記上外径面取面加工用砥石20、下外径面取面加工用砥石22、および外径側壁面加工用砥石24をそれぞれ回転させ最適な回転速度に保ち、上記各砥石を被加工物であるガラス基板10に向かって最適な速度で送り込み(送り機構は図示省略)、上記各砥石の端面部分を上記ガラス基板10の外周側端面に接触させ且つ上記ガラス基板10と上記各砥石とを相対的に回転移動させることにより、上記ガラス基板10の端面を形状加工する。
【0032】
このような本発明の構成によると、砥石とガラス基板との接触状態は、砥石の外周端面と基板の端面とが交差且つ点接触状態となり、砥石と基板との接触面積が減少する。ゆえに、研削効率を向上させることができる。また、砥石とガラス基板の移動方向がこれらの接触点において交差することによって、研削加工面に研削痕(研削条痕)が残りにくい。従来技術では砥石とガラス基板の移動方向が交差していないため、円周方向の筋目が残りやすく、その後の研磨工程(例えばブラシによる端面及び面取り面同時研磨)ではその筋目が除去しきれない場合があった。本発明では、そもそも筋目が入りにくいばかりか、例え筋目が入る場合であっても、砥石の回転数を制御することで筋目の方向を円周方向からずらすことが可能である。こうすることで、その後にブラシ研磨工程による鏡面化を行う場合であっても、ブラシの移動方向が筋目方向と直交するようにできるので、筋目を少ない取りしろで容易に消去することが可能となる。
また、本発明では円盤状の砥石を用いるため、加工面は凹面状となり、加工面の端部は尖る傾向である。一般的に研磨ブラシを用いた鏡面研磨加工では、面取り面と端面の境界、及び、主表面と面取り面の境界部分が研磨されやすいため、研磨加工後の面取り面は凸形状となり、境界部においては局率半径が大きくなる傾向にある。この傾向は研磨加工の取りしろが大きくなるほど顕著となる。よって、従来は筋目を除去するために研磨加工の取りしろを増やすと、寸法形状精度が悪化するという問題があった。本発明では、ブラシ研磨加工の取りしろを減らすことができるのみならず、凹面に対して凸形状となる加工を施すことで凹凸を相殺する効果が得られるため、良好な寸法精度を容易に達成することができる。
したがって、微細砥粒砥石を用いて研削加工を行った場合にも安定した研削性を確保でき、良好な研削面品位(鏡面品位)を安定的に得ることができる。しかも、微細砥粒を用いても砥石の切れ味を持続させ、研削性を安定的に確保することで、ガラス基板端面の面取り加工による良好な寸法形状精度を確保することができる。
【0033】
なお、ガラス基板10の端面の側壁面を形状加工する上記砥石24と、該端面の面取面を形状加工する上記砥石20,22とを同時に使用することにより、ガラス基板10の端面の側壁面と面取面を同時に加工できるので、生産効率上は好ましいが、これには限定されず、側壁面と面取面を別々の工程で加工するようにしてもよい。
【0034】
本発明では、上記上外径面取面加工用砥石20、下外径面取面加工用砥石22、および外径側壁面加工用砥石24の各大きさは、ガラス基板10の例えば外径を考慮して適宜決定されればよい。
また、本発明では上記各砥石とガラス基板10の夫々の回転速度は特に制約する必要はなく、研削性や加工能率の観点を考慮して適宜決定されればよい。
【0035】
本発明に使用する上記上外径面取面加工用砥石20、下外径面取面加工用砥石22、および外径側壁面加工用砥石24としては、砥粒と樹脂とからなるレジン砥石を用いることができる。本発明のような磁気ディスク用ガラス基板の端面の面取り加工には、研削砥石としてレジン砥石を用いるのが好適である。また、砥粒と金属結合材からなるメタル砥石、砥粒とガラス質結合材からなるビトリファイド砥石、及びそれらの結合材を混合させた複合砥石を用いることもできる。特にレジン砥石としては、例えばダイヤモンド砥粒を、必要に応じて適当な充填材を加えて、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、またはポリイミド樹脂等で結合して所定の形状に成形したものを用いることができる。また、アルミナ砥粒、立方晶窒化ホウ素砥粒などを用いることもできる。砥粒の粒度は、例えば#1500以細の微細砥粒を好適に用いることができる。本発明の場合、加工面品位の向上の観点からは有利な微細砥粒砥石を用いた場合にも、砥石の切れ味を持続させ、安定した研削性を確保でき、良好な研削面品位(鏡面品位)と良好な寸法形状精度を安定的に得ることができる。
【0036】
また、本発明に使用する研削液(クーラント)としては、特に制約はないが、冷却効果が高く、生産現場において安全性の高い水溶性の研削液が特に好適である。
【0037】
なお、磁気ディスク用ガラス基板に用いる硝種としては特に限定を設けないが、ガラス基板の材質としては、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、石英ガラス、チェーンシリケートガラス、又は結晶化ガラス等のガラスセラミックス等が挙げられる。なかでもアモルファスのアルミノシリケートガラスは、耐衝撃性や耐振動性に優れるため特に好ましい。アルミノシリケートガラスとしては、SiO2:62〜75wt%、Al2O3: 5〜15wt%、Li2O:4〜10wt%、Na2O: 4〜12wt%、ZrO2: 5.5〜15wt%を主成分として含有すると共に、Na2O/ZrO2の重量比が0.5〜2.0、Al2O3/ZrO2の重量比が0.4〜2.5である化学強化用ガラス等が好ましい。また、ZrO2の未溶解物が原因で生じるガラス基板表面の突起を無くすためには、モル%表示で、SiO2を57〜74%、ZnO2を0〜2.8%、Al2O3を3〜15%、LiO2を7〜16%、Na2Oを4〜14%含有するガラス等を使用することが好ましい。
【0038】
なお、ガラス基板10の外周側端面の研削加工は上述のようにして行うが、内周側端面の研削加工についても同様に本発明を適用することができる。なお、外周、内周のうち片方の研削加工にのみ本発明を適用し、もう一方について従来行われている方法を適用して実施することもできる。
【0039】
また、上述の本発明によるガラス基板の端面の形状研削加工を行った後、要求される鏡面品位によって、さらに同じく端面を鏡面研磨する工程を追加してもよい。この場合、従来の研磨ブラシを用いて鏡面研磨加工することができる。
本実施の形態においては、上記のとおり、上記上外径面取面加工用砥石20、下外径面取面加工用砥石22、および外径側壁面加工用砥石24のいずれもその回転移動方向と上記ガラス基板10の回転移動方向とが例えば略垂直に交差するようにして加工を行うので、この形状加工とその後の研磨ブラシを用いた鏡面研磨加工とで加工方向を略90度異ならせることが可能になる。本発明によれば、そもそも筋目が入りにくいばかりか、例え筋目が入る場合であっても、砥石の回転数を制御することで筋目の方向を円周方向からずらすことが可能である。こうすることで、その後にブラシ研磨工程による鏡面化を行う場合であっても、ブラシの移動方向が筋目方向と直交するようにできるので、筋目を少ない取りしろで容易に消去することが可能となる。
【0040】
上述の本発明によるガラス基板の端面の形状研削加工を行うことにより、良好な研削面品位と良好な寸法形状精度を安定的に得ることができるため、さらに同じく端面をブラシ研磨等により鏡面研磨する場合においても、研磨取り代は小さく、その研磨加工時間は例えば数十秒程度と短くて済み、作業負荷は軽減される。
以上のようにして、基板の外周側及び内周側端面の研削、研磨工程を終えたガラス基板に、続いて主表面の鏡面研磨工程、化学強化工程、等を施すことにより、図1に示すような磁気ディスク用ガラス基板1が得られる。
【0041】
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法によれば、磁気ディスクの高記録密度化と低価格化の要請に応える観点から、磁気ディスク用ガラス基板の外周側端面の寸法形状精度を確保でき、低コストで効率良く高品質に仕上げることができる安定した形状加工が可能である。したがって、基板端面が高品質に仕上げられた磁気ディスク用ガラス基板を低コストで安定して大量に提供することが可能になる。
【0042】
また、本発明は、上述の本発明による磁気ディスク用ガラス基板の製造方法によって製造された磁気ディスク用ガラス基板の主表面上に少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法についても提供する。
すなわち、上述の本発明の実施の形態により得られる磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成することにより磁気ディスクが得られる。通常は、例えば垂直磁気記録媒体として、ガラス基板上に、付着層、軟磁性層、下地層、磁性層、保護層、潤滑層などを設けた磁気ディスクとするのが好適である。
本発明による磁気ディスク用ガラス基板を用いる磁気ディスクの製造方法によれば、基板の端面を高品質に仕上げることができ、コロージョン対策など、基板端面の表面状態が起因する障害の発生を防止し、より一層の高記録密度化を実現できる磁気ディスクを提供することができる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を挙げて、本発明の実施の形態についてさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
以下の(1)粗ラッピング工程(粗研削工程)、(2)精ラッピング工程(精研削工程)、(3)端面研削工程(4)端面研磨工程、(5)主表面第1研磨工程、(6)化学強化工程、(7)主表面第2研磨工程、を経て本実施例の磁気ディスク用ガラス基板を製造した。
【0044】
(1)粗ラッピング工程
まず、溶融ガラスから上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスにより直径66mmφ、厚さ1.0mmの円盤状のアルミノシリケートガラスからなるガラス基板(ガラスディスク)を得た。なお、この場合、ダイレクトプレス以外に、ダウンドロー法やフロート法で形成したシートガラスから研削砥石で切り出して円盤状のガラス基板を得てもよい。このアルミノシリケートガラスとしては、SiO:58〜75重量%、Al:5〜23重量%、LiO:3〜10重量%、NaO:4〜13重量%を含有する化学強化ガラスを使用した。次いで、ガラス基板に寸法精度及び形状精度を向上させるためラッピング工程を行った。このラッピング工程は両面ラッピング装置を用い、粒度#400の砥粒を用いて行なった。具体的には、はじめに粒度#400のアルミナ砥粒を用い、荷重を100kg程度に設定して、上記ラッピング装置のサンギアとインターナルギアを回転させることによって、キャリア内に収納したガラス基板の両面を面精度0〜1μm、表面粗さ(Rmax)6μm程度にラッピングした。
【0045】
(2)精ラッピング工程
次に、砥粒の粒度を#1000に変え、ガラス基板表面をラッピングすることにより、表面粗さをRmaxで2μm程度、Raで0.2μm程度とした。上記ラッピング工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、水の各洗浄槽(超音波印加)に順次浸漬して、超音波洗浄を行なった。
【0046】
(3)端面研削工程
次に、円筒状の砥石を用いてガラス基板の中央部分に孔を空けると共に、前述の図2に示す方法によって基板の外周側端面の研削をして直径を65mmφとした後、外周側端面に所定の面取り加工を施した。この場合の面取面加工用砥石及び側壁面加工用砥石は、いずれも粒度#3000のダイヤモンド砥粒をフェノール樹脂で結合して図2に示すような端面部分を有する円盤状に成形したものを使用した。また、研削液としては水溶性研削液(温度20℃)を使用した。
ガラス基板の外周側端面部分に上記研削液を供給しつつ、上記砥石をガラス基板の外周側端面を接触させなお且つガラス基板と砥石の両方を回転させることにより、ガラス基板の外周側端面の側壁面及び面取面の両方の面を形状加工した。なお、砥石の回転速度は20000rpm、ガラス基板の回転速度は20rpmとした。
【0047】
こうして、約30秒間の研削加工を行った。このときのガラス基板の外周側端面の表面粗さは、側壁面、面取面ともにRmaxで0.5μm程度であった。なお、一般に、2.5インチ型HDD(ハードディスクドライブ)では、外径が65mmの磁気ディスクを用いる。
次いで、所定の研削砥石を用いて従来と同様に基板の内周側端面の研削、面取り加工を施した。なお、本発明の端面加工方法は内周側端面にも適用できるが、本実施例では、一例として、本発明の加工方法を外周側端面のみに適用し、内周側端面は従来の総型砥石による加工とした。
【0048】
(4)端面研磨工程
次いで、研磨ブラシを用いてガラス基板の外周側端面の研磨を行った。この場合の研磨ブラシのブラシ毛の材質は6−6ナイロンを使用した。この研磨ブラシの回転数は1000rpm、またガラス基板の回転数は、研磨ブラシとは逆方向に50rpmとした。また、研磨剤は酸化セリウムを使用し、この酸化セリウムを含む約30℃の研磨液を供給した。
【0049】
こうして100枚の研削、研磨加工を終えたガラス基板の外周側端面の表面粗さは、平均値でRaが0.05μm程度の鏡面に仕上がっていた。研磨後のガラス基板の外周側端面形状をコントレーサーで測定したところ、図1に示すような、端面12が、2つの面取面12bとその間の側壁面12aとからなる所定の面取り形状に仕上がっていた。そして、外周側端面の側壁面及び面取面の角度形状のばらつきは45度に対して±2°以内であり、外径寸法のばらつきも10μm以内であり、外周側端面の寸法形状精度は良好であった。また、研磨仕上り後の端面観察において、残留する加工損傷を顕微鏡(倍率×1000)を用いて外周端面の全面を観察したが、その残留痕は確認されず、良好な研磨面となっていた。なお、上記の形状加工で使用した砥石は、目詰まりや目潰れといった問題は発生しておらず、上記加工後においてもなお良好な切れ味を維持していた。
そして、上記端面研磨加工を終えたガラス基板の表面を水洗浄した。
【0050】
(5)主表面第1研磨工程
次に、上述したラッピング工程で残留した主表面の傷や歪みを除去するための第1研磨工程を両面研磨装置を用いて行なった。両面研磨装置においては、研磨パッドが貼り付けられた上下定盤の間にキャリアにより保持したガラス基板を密着させ、このキャリアをサンギアとインターナルギアとに噛合させ、上記ガラス基板を上下定盤によって挟圧する。その後、研磨パッドとガラス基板の研磨面との間に研磨液を供給して回転させることによって、ガラス基板が定盤上で自転しながら公転して両面を同時に研磨加工するものである。具体的には、ポリシャとして硬質ポリシャ(硬質発泡ウレタン)を用い、研磨工程を実施した。研磨条件は、研磨液としては酸化セリウム(平均粒径1.3μm)を研磨剤として分散したRO水とし、荷重:100g/cm、研磨時間:15分とした。上記第1研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、純水、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、超音波洗浄し、乾燥した。
【0051】
(6)化学強化工程
次に、上記洗浄を終えたガラス基板に化学強化を施した。化学強化は硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合した化学強化液を用意し、この化学強化溶液を380℃に加熱し、上記洗浄・乾燥済みのガラス基板を約4時間浸漬して化学強化処理を行なった。化学強化を終えたガラス基板を硫酸、中性洗剤、純水、純水、IPA、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、超音波洗浄し、乾燥した。
【0052】
(7)主表面第2研磨工程
次に第1研磨工程で使用したものと同じタイプの両面研磨装置を用い、ポリシャを軟質ポリシャ(スウェードパット)に変えて、第2研磨工程を実施した。この第2研磨工程は、上述した第1研磨工程で得られた平坦な表面を維持しつつ、例えば表面粗さRaを0.1〜0.3nm程度以下まで低減させることを目的とするものである。研磨条件は、研磨液としてはコロイダルシリカ(平均粒径0.05μm)を分散したRO水とし、荷重:100g/cm、研磨時間を5分とした。上記第2研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、純水、IPA、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、超音波洗浄し、乾燥した。
【0053】
次に、上記洗浄を終えたガラス基板表面の目視検査及び光学検査装置による検査を実施した。その結果、ガラス基板表面に付着物による突起や、傷等の欠陥は発見されなかった。また、上記工程を経て得られたガラス基板の主表面の表面粗さを原子間力顕微鏡(AFM)にて測定したところ、Ra=0.20nmと超平滑な表面を持つ磁気ディスク用ガラス基板を得た。また、ガラス基板の外径は65mm、内径は20mm、板厚は0.635mmに仕上がっていた。
【0054】
以上の様にして磁気ディスク用ガラス基板を約1万枚製造してロングランテストを行った。その結果、1度目の端面研削、研磨加工により、所定の端面形状、寸法精度、表面粗さをクリアした良品率は平均90%以上であり、不良となった基板についても再研磨により良品となったものがほとんどであった。
【0055】
(比較例)
本比較例は、ガラス基板の外周側端面の研削加工を従来の方法を用いて行った点が前述の実施例とは相違する。すなわち、ガラス基板の外周側端面に前述の図4に示すような円筒状の研削砥石の外周面側を接触させ且つガラス基板と砥石の両方を回転させることにより研削加工を行った。研削砥石には、粒度(微細砥粒#500)のダイヤモンド砥石(あるいは酸化セリウム砥石)を用いた。その他の研削条件については適宜調整して行った。
次いで、従来の研磨ブラシ、研磨装置を用いて、ガラス基板の外周側端面の研磨を行った。この場合の研磨ブラシのブラシ毛の材質は6−6ナイロンを使用した。研磨剤は酸化セリウムを使用し、この酸化セリウムを含む約30℃の研磨液を供給した。その他の研磨条件については適宜調整して行った。
【0056】
以上の点以外は実施例1と同様にして磁気ディスク用ガラス基板を製造した。
こうして100枚の研削、研磨加工を終えたガラス基板の外周側端面の表面粗さは、平均値でRaが0.1μm程度であったが、外径の寸法ばらつきは50μm程度と大きかった。
研磨後のガラス基板の外周側端面形状をコントレーサーで測定したところ、断面で見ると全体が丸く仕上がっており、図1に示すような、端面12が、2つの面取面12bとその間の側壁面12aとからなる所定の面取り形状にきっちりと仕上がっていなかった。なお、外周側端面の研削加工には、加工面品位の点で有利な微細砥粒砥石を使用したが、短時間で目詰まりや目潰れといった問題が発生したため、途中で砥石を交換し、再度条件出しを行う必要が生じ、作業能率が低下した。
【0057】
そして、本比較例においても、上記2.5インチ磁気ディスク用ガラス基板を約1万枚製造してロングランテストを行ったところ、1度目の端面研削、研磨加工により、所定の端面形状、寸法と角度精度、表面粗さをクリアした良品率は平均80%以下であった。
【0058】
(実施例2)
上記実施例で得られた本発明の磁気ディスク用ガラス基板に以下の成膜工程を施して、垂直磁気記録用磁気ディスクを得た。
すなわち、上記ガラス基板上に、Ti系合金薄膜からなる付着層、CoTaZr合金薄膜からなる軟磁性層、Ru薄膜からなる下地層、CoCrPt合金からなる垂直磁気記録層、カーボン保護層、潤滑層を順次成膜した。保護層は、磁気記録層が磁気ヘッドとの接触によって劣化することを防止するためのもので、水素化カーボンからなり、耐磨耗性が得られる。また、潤滑層は、アルコール変性パーフルオロポリエーテルの液体潤滑剤をディップ法により形成した。
得られた磁気ディスクについて、DFHヘッドを備えたHDDに組み込み、80℃かつ80%RHの高温高湿環境下においてDFH機能を作動させつつ1ヶ月間のロードアンロード耐久性試験を行ったところ、特に障害も無く、良好な結果が得られた。
【符号の説明】
【0059】
1 磁気ディスク用ガラス基板
10 ディスク状ガラス基板(ガラスディスク)
11 ガラス基板の主表面
12 ガラス基板の外周側端面
13 ガラス基板の内周側端面
20 上外径面取面加工用砥石
21,23,25,26 駆動部
22 下外径面取面加工用砥石
24 外径側壁面加工用砥石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状のガラス基板の端面部分に研削液を供給しつつ、前記ガラス基板の端面に砥石を接触させて研削することにより前記ガラス基板の端面を形状加工する工程を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、
前記砥石は、端面部分を有する円盤状に形成されているとともにその中心を回転軸にして回転可能に構成されている円盤状回転砥石であり、
前記砥石の移動方向と前記ガラス基板の移動方向とがこれらの接触点において交差するようにして、前記砥石の端面部分を前記ガラス基板の端面に接触させ且つ前記ガラス基板と前記砥石とを相対的に移動させることにより、前記ガラス基板の端面を形状加工することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記ガラス基板と前記砥石の両方を回転させることにより形状加工することを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記ガラス基板の端面の側壁面を形状加工する砥石と該端面の面取面を形状加工する砥石とを同時に使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記ガラス基板の端面を形状加工した後、同じく端面を研磨ブラシを用いて鏡面研磨加工することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項5】
前記砥石を用いた形状加工とその後の研磨ブラシを用いた鏡面研磨加工とで加工方向を略90度異ならせることを特徴とする請求項4に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項6】
加工する前記ガラス基板の端面は外周側端面であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項7】
前記ガラス基板の形状加工後の外周側及び/又は内周側の端面の少なくとも面取面が凹面状になっていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項8】
前記ガラス基板の形状加工後の外周側及び/又は内周側の端面の側壁面が凹面状になっていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法によって製造された磁気ディスク用ガラス基板の主表面上に少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
【請求項10】
円板状のガラス基板の端面部分に研削液を供給しつつ、前記ガラス基板の端面に砥石を接触させて研削することにより前記ガラス基板の端面を形状加工することによって得られる磁気ディスク用ガラス基板の製造に用いられるガラス基板であって、
前記砥石は、端面部分を有する円盤状に形成されているとともにその中心を回転軸にして回転可能に構成されている円盤状回転砥石であり、
前記砥石の移動方向と前記ガラス基板の移動方向とがこれらの接触点において交差するようにして、前記砥石の端面部分を前記ガラス基板の端面に接触させ且つ前記ガラス基板と前記砥石とを相対的に移動させることにより、前記ガラス基板の端面の形状加工を行い、
前記ガラス基板の形状加工後の外周側及び/又は内周側の端面の少なくとも面取面が凹面状になっていることを特徴とするガラス基板。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−80531(P2013−80531A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218431(P2011−218431)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】