説明

磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定方法及び測定装置

磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定において、磁気ディスク用サスペンションの基準面を、既知の捩れ角が設定された平滑な基準平面を有する治具上に加圧して固定する取付け手順と、前記治具に固定した前記サスペンションにおけるスライダ搭載面の前記基準面に対するロール方向及びピッチ方向の捩れ角を測定する測定手順とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ハードディスクドライブ等の磁気ディスク装置の構成部品であるサスペンションの捩れ角(ロール方向及びピッチ方向の捩れ角)を測定するための測定方法及び測定装置に関する。
【背景技術】
磁気ディスク用サスペンションのロール方向及びピッチ方向の捩れ角(以下、ロール角及びピッチ角という)を測定する場合には、通常、サスペンション基準面に対するスライダ浮上面の、あるいはスライダを搭載するスライダ搭載面の捩れ角を測定する。その際に、レーザ変位計を用いた測定ユニット、オートコリメータ、あるいは光干渉方法等を用いて、基準面及びスライダ搭載面の2カ所において角度測定し、その差分をとることにより測定値を得ている。
また、先端が球面形状のロードピンをサスペンションに点接触させ、サスペンションを擬似浮上状態(磁気ディスクに対し磁気ヘッドが実際にアクセスする際の浮上した状態を模倣した姿勢状態)にしたときの捩れ角を測定する方法も一般に行われている。
図5は、従来のサスペンション捩れ角測定手順の一例を説明するためのフロー図である。図10に、測定対象となる磁気ディスク用サスペンションの一例を示す。
図10に示したように、サスペンション1は、磁気ディスク装置に取り付ける側(図10の右側)の下面に測定基準面2を、反対側(図10の左側)の先端部にスライダを搭載するためのスライダ搭載面を有する。また、このサスペンション1では、捩れ角測定の際に、先端が球面形状のロードピン8を接触させる位置が予め決められている。以下、この位置をロードピンの規定位置という。
図5の捩れ角測定手順においては、測定治具が所定の個数のサスペンション(1ロット分)を取付け可能に設けてあり、測定治具上の各サスペンションのロード方向及びピッチ方向の捩れ角が連続的に測定される場合を想定している。
図5に示したように、ステップS11では、所定数のサスペンション(1ロット)を測定治具に取付ける。測定治具上には、水平な基準平面が形成してあり、複数のサスペンションが基準平面上に取付けられる。
ステップS12において、捩れ角測定装置に設けてあるXYステージ、Zステージを移動する。これらステージ上の測定治具及び複数のサスペンションも移動する。
ステップS13において、測定対象のサスペンションのロール角・ピッチ角の測定位置への移動が完了したか否かを判定する。まだ移動が完了しない場合には、上記ステップS12に制御を戻す。
測定位置への移動が完了した場合、ステップS14において、CCD画像により、ロードピンとサスペンションとの相対位置を確認する。
ステップS15において、ロードピンをサスペンションの規定位置へ移動する。
ステップS16において、ロードピンがサスペンションの規定位置に移動したか否かを判定する。ロードピンの移動がまだ完了しない場合、上記ステップS14及びS15に戻って、ロードピンをサスペンションの規定位置へ再度移動するロードピンの移動が完了した場合、ステップS17において、そのサスペンションにおけるスライダ搭載面の基準面に対するロール角θr及びピッチ角θpを角度測定器を用いて測定し、その測定データを制御部(コンピュータ)のメモリに格納する。
このステップS17では、治具に固定されたサスペンション基準面2の角度測定を行うとともに、サスペンション1のスライダ搭載面の角度測定を行い、その差分を捩れ角として算出する。したがって、複数のサスペンションの捩れ角を測定する際には、各サスペンション毎にロードピンを規定位置へ移動する位置合わせを行い、かつ、上記基準面2の角度測定とスライダ搭載面の角度測定とを行う必要がある。
ステップS18において、ロール角の測定データθrとピッチ角の測定データθpを制御部のディスプレイ上に表示する。
ステップS19において、治具上の全てのサスペンションについて捩れ角の測定が完了したか否かを判定する。完了した場合には、次のステップS21に制御を移行する。まだ完了していない場合、ステップS20で、次のサスペンションについての捩れ角の測定に制御を移行し、上記ステップS12以降の測定手順を繰り返す。
ステップS21において、測定治具から所定数のサスペンション(1ロット分)を取り外す。
ステップS22で、全てのロットのサスペンションについて捩れ角の測定が完了したか否かを判定する。完了した場合には、図5の測定手順を終了する。まだ完了していない場合、ステップS23で、次のロットのサスペンションについての捩れ角の測定に制御を移行し、上記ステップS11以降の測定手順を繰り返す。
近年、ハードディスクドライブの記録密度が向上し、それに伴ってサスペンション加工精度もより高いものが要求されるようになっている。このため、(1)測定処理能力と、(2)擬似浮上状態での測定における測定誤差の問題が生じている。
測定処理能力については、これまで抜き取りによる精度検査にてサスペンションの捩れ角度の品質保証可能であったものが、全数検査を行わなければならなくなり、測定装置の大幅な処理能力向上を図らなければならないという問題が生じている。
また、擬似浮上状態での測定における測定精度については、サスペンションの捩れ角測定において、ロードピンによる疑似浮上状態を作り出す際にロードピンがサスペンションの指定位置(X,Y,Z座標)に接触し、固定されていないと、サスペンションが本来、浮上状態にある姿勢とは異なった状態になり、そのため、捩れ角が本来測定されるべき値に対して誤差を生じてしまうことになる。この場合に、ロードピンとサスペンションとの相対的な位置関係を合わせ込んだ後、測定を行う方法が一般的であるが、合わせ込みにかかる時間のため、測定処理効率を悪化させることが避けられない。
【発明の開示】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定方法及び測定装置において、測定処理効率を向上させると共に、擬似浮上状態における測定誤差を低減することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定方法は、磁気ディスク用サスペンションの基準面を既知の捩れ角が設定された平滑な基準平面を有する治具上に加圧して固定する取付け手順と、前記治具に固定した前記サスペンションにおけるスライダ搭載面の前記基準面に対するロール方向及びピッチ方向の捩れ角を測定する測定手順とを有することを特徴とする。
前記捩れ角測定方法は、先端が球面形状のロードピンを前記治具に固定した前記サスペンションと規定位置において点接触させることにより、前記サスペンションを擬似浮上状態にする手順と、前記サスペンションと前記ロードピンとの相対的位置を変化させたときの、前記サスペンションのロール方向及びピッチ方向の捩れ角の変化量から得られる関係式を算出する算出手順とを有する構成としてもよい。
前記捩れ角測定方法は、前記サスペンションと前記ロードピンとの相対的位置の変化量が既知である場合に、前記ロードピンを移動することなく前記測定手順を行い、実際に得られた捩れ角の測定値と前記算出手順で得られた前記関係式とに基づいて、前記規定位置における捩れ角の測定値を近似的に算出する手順を有する構成としてもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定装置は、磁気ディスク用サスペンションにおけるスライダ搭載面の基準面に対するロール方向及びピッチ方向の捩れ角を測定する捩れ角測定装置であって、既知の捩れ角が設定された平滑な基準平面を有する治具と、前記サスペンションの基準面を前記治具の前記基準平面上に加圧して固定する取付け機構と、前記治具に固定した前記サスペンションにおけるスライダ搭載面の前記基準面に対するロール方向及びピッチ方向の捩れ角を測定する測定手段と、先端が球面形状のロードピンと、前記サスペンションを擬似浮上状態に設定するために、前記ロードピンを移動して前記サスペンションと規定位置において点接触させるロードピン移動手段と、前記サスペンションと前記ロードピンとの相対的位置を変化させたときの、前記サスペンションのロール方向及びピッチ方向の捩れ角の変化量から得られる関係式を算出する算出手段とを備えることを特徴とする。
前記捩れ角測定装置は、前記サスペンションと前記ロードピンとの相対的位置の変化量が既知である場合に、前記ロードピンを移動することなく捩れ角の測定を行い、実際に得られた捩れ角の測定値と前記関係式とに基づいて、前記規定位置における捩れ角の測定値を近似的に算出する手段を備える構成としてもよい。
本発明の磁気ディスク用サスペンション捩れ角測定方法及び測定装置によれば、サスペンションの基準面を、既知のロール角及びピッチ角を有する基準平面を設けた治具に突き当てることにより、サスペンションの基準面のロール角及びピッチ角は、治具の基準平面のロール角及びピッチ角と一致するため、あらためて測定する必要がなくなる。このため、従来の測定方法で行っていたサスペンション基準面の角度測定が不要になり、サスペンション1個当りの測定データ取得時間を低減させることができる。
また、治具に固定された時のサスペンションとロードピンとの相対位置関係が既知であり、かつ、ロードピン位置偏差に起因するサスペンションのロール角およびピッチ角の変化量が既知であれば、測定の度にサスペンションとロードピンとの位置合わせを行う必要がない。ロードピン変位に対する捩れ角変化の関係式に基づく補正値を導入することで、実際のサスペンションのロール角及びピッチ角を求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
本発明の他の目的、特徴及び利点については、添付の図面に基づき下記の発明の詳細な説明を参照することにより明確となる。
図1は、本発明に係る磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定方法に用いられる磁気ディスク用サスペンションと治具を示す図である。
図2Aは、図1に示した矢印Aの方向からみた磁気ディスク用サスペンションと治具を示す図である。
図2Bは、図1に示した矢印Bの方向からみた磁気ディスク用サスペンションと治具を示す図である。
図3は、図1の測定方法で用いられるロードピンと角度測定器を示す図である。
図4は、本発明に係る磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定方法の原理を説明するための図である。
図5は、従来のサスペンション捩れ角測定方法の一例を説明するためのフロー図である。
図6A、図6B及び図6Cは、本発明の一実施例に係る磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定方法の測定手順を説明するためのフロー図である。
図7は、本発明の一実施例に係る磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定装置の構成を示す図である。
図8は、本発明の一実施例に係る磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定装置を示す斜視図である。
図9は、図8に示した捩れ角測定装置における治具の構成を示す図である。
図10は、測定対象となる磁気ディスク用サスペンションの一例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の実施の形態を添付の図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係る磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定方法に用いられる磁気ディスク用サスペンションと治具を示す。
図2Aは、図1に示した矢印Aの方向からみた磁気ディスク用サスペンション1と治具3を示す。図2Bは、図1に示した矢印Bの方向からみた磁気ディスク用サスペンション1と治具3を示す。また、図3は、図1の測定方法で用いられるロードピン8と角度測定器11を示す。
図1、図2A及び図2Bに示したように、測定対象である磁気ディスク用サスペンション1は、その測定基準面2を、既知のロール角(θr0)及びピッチ角(θp0)が設定された平滑な基準平面を有する治具3上に押し当てられ、加圧される。このようにサスペンション1が治具3に固定されることにより、サスペンション1の基準面2は、冶具3基準平面の既知のロール角及びピッチ角に倣うことになる。
図3に示したように、サスペンション1を治具3に固定すると同時に、ロードピン8を用いて加圧することにより、サスペンション1を擬似浮上状態の姿勢にする。この時のロードピン8の規定位置(X0,Y0,Z0)において、サスペンション1のスライダ搭載面のロール角及びピッチ角を角度測定器11を用いて測定する。以下、この捩れ角測定を第1の測定という。
ロードピン8を上記規定位置から、X,Y,Z座標それぞれについて所定の距離(ΔX、ΔY、ΔZ)だけ移動させた後、サスペンション1のスライダ搭載面のロール角及びピッチ角を、角度測定器11を用いて再び測定する。以下、この捩れ角測定を第2の測定という。
第1の測定及び第2の測定の結果から、測定対象であるサスペンション1についての、ロードピン8の移動距離(ΔX、ΔY、ΔZ)に応じたロール角の変化量(Δθr)及びピッチ角の変化量(Δθp)を算出することができる。本発明の捩れ角測定方法では、このロール角及びピッチ角の変化量の算出値に基づいて、関係式f及びgを決定する。以下、この関係式f及びgについて、図4を用いて説明する。
図4は、本発明の一実施例に係る磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定方法の原理を説明するための図である。
まず、ロードピン8の規定位置の座標を(X0,Y0,Z0)とすると、一般に、サスペンション1に対してロードピン8を規定位置から移動させる際の位置座標(Xn,Yn, Zn)は次のように表される。
Xn:X0、X1、X2、・・・、Xp (p+1)箇所
Yn:Y0、Y1、Y2、・・・、Yq (q+1)箇所
Zn:Z0、Z1、Z2、・・・、Zr (r+1)箇所
従って、捩れ角の測定が必要な位置座標の個数は、合計(p+1)x(q+1)x(r+1)箇所となる。
X、Y、Zが独立な変数と仮定すると、サスペンションのロール角θrについての関係式fは次式で表すことができる。
θr=f (X,Y,Z)=a (X−α)+b(Y−β)+c(Z−γ)
ここで、a,b,C,α,β,γ,n,m,1は任意の実数である。
X、Y、Zの変化量がサスペンション1の外形寸法に比べて十分小さい値の場合には、上記関係式fは次のような一次式で近似することが可能である。
θr=f (X,Y,Z)=aX+bY+cZ+d (1)
上式(1)の係数(a,b,C,d)のうち、係数aは(p+1)個の測定データに基づき、係数bは(q+1)個の測定データに基づき、係数cは(r+1)個の測定データに基づき、それぞれ最小2乗法を用いて求めることができる。
同様に、サスペンション1のピッチ角θpについての関係式gは次のような一次式で近似可能である。
θp=g(X,Y,Z)=hX+iY+jZ+k (2)
上式(2)の係数(h,i,j,k)のうち、係数hは(p+1)個の測定データに基づき、係数1は(q+1)個の測定データに基づき、係数jは(r+1)個の測定データに基づき、それぞれ最小2乗法を用いて求めることができる。
従って、上述したように、サスペンション1のロール角及びピッチ角の測定結果から、ロードビン8の移動距離(ΔX、ΔY、ΔZ)に応じたロール角の変化量(Δθr)及びピッチ角の変化量(Δθp)を算出することができる。このロール角及びピッチ角の変化量の算出値に基づいて、上式(1)及び(2)の関係式f及びgにおける各係数値を最小2乗法を用いて求めることができ、サスペンション1のロール角及びピッチ角についての関係式f及びgが決定できる。
実際の測定において、複数のサスペンションを治具上に並べて搭載している場合には、それぞれの箇所について、ロードピン8先端の球面部頂点の位置座標(X,Y,Z)を測定しておくか、あるいは画像認識等の手段を用いて、サスペンション1とロードピン8の相対的な位置情報を得ることにより、本来ロードピンが接触・ロードする位置座標との偏差(ΔX,ΔY,ΔZ)を予め求めておく必要がある。
サスペンション1のロール角及びピッチ角についての関係式f及びgが決定すれば、ロードピン8を移動させること無く、上記第1の測定の手順と同様の手順を行うことで、複数のサスペンションの各スライダ搭載面のロール角およびピッチ角を連続して自動的に測定することが可能となる。
上記手順で測定されたロール角及びピッチ角に、予め求めた偏差(ΔX,ΔY,ΔZ)に相当するロール角およびピッチ角を補正値として加算することで、本来ロードピンが接触・ロードする位置座標にある場合のロール角及びピッチ角を算出する。この補正された捩れ角であるロール角及びピッチ角から、治具3の基準平面4の既知のロール角及びピッチ角(θr0、θp0)を減算することで、サスペンション測定基準面に対するスライダ搭載面のロール角およびピッチ角が求められる。
図6A、図6B及び図6Cは、本発明の一実施例に係る磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定方法の測定手順を説明するためのフロー図である。
図6A及び図6Bは、測定対象のサスペンションの特性値(関係式)を決定するための測定手順を示し、図6Cは、実際に複数のサスペンションのロール角、ピッチ角を測定するための捩れ角測定手順を示す。測定対象のサスペンションに対する各測定手順は、本発明の測定装置に設けた制御部12(図7で後述する)によって実行される。
図6Aに示したサスペンション特性値決定のための測定手順において、まず、ステップS31で、測定対象のサスペンション1を治具3に取付ける。
ステップS32において、ロードピン8を用いて加圧(ロード)して、サスペンション1を擬似浮上状態にする。
ステップS33において、XYステージを移動させて、サスペンション1とロードピン8との相対位置を調整する。
ステップS34において、ロードピン8の位置がサスペンション1の規定位置(X0,Y0,Z0)に移動したか否かを判定する。ロードピン8の移動がまだ完了しない場合、上記ステップS33に制御を戻す。
ロードピン8の移動が完了した場合、ステップS35において、XYステージ及びZステージを移動させて、ロードピン8の位置が目標位置(Xn,Yn,Zn)に移動したか否かを判定する。ロードピン8の目標位置への移動がまだ完了しない場合、上記ステップS35を再度実行する。
ロードピン8の目標位置への移動が完了した場合、ステップS36において、角度測定器11を用いて、サスペンション1のスライダ搭載面のロール角θr(Xn,Yn,Zn)、及びピッチ角θp(Xn,Yn,Zn)を測定し、その測定結果のデータを制御部12のメモリに格納する。
ステップS37において、予め指定されたロードピン8の目標位置全てについて、ロール角及びピッチ角の測定データの格納が完了したか否かを判定する。まだ、測定データの格納が完了しない場合、ステップS38において、ロードピン8を次の目標位置へ移動する。そして、上記ステップ35以降の手順を繰り返す。
ステップS39において、サスペンション1のロール角θrの変化量の測定データと、ロードピン8の位置座標のデータとから、最小2乗法を用いた演算を行い、上式(1)の関係式θr=f(X,Y,Z)の係数値a,b,c,dを決定する。
ステップS40において、上記ステップS39で決定された、上式(1)の関係式fの係数値a,b,c,dのデータを制御部12のメモリに格納する。
ステップS41において、サスペンション1のピッチ角θpの変化量の測定データと、ロードピン8の位置座標のデータとから、最小2乗法を用いた演算を行い、上式(2)の関係式θp=g(X,Y,Z)の係数値h,i,j,kを決定する。
ステップS42において、上記ステップS41で決定された、上式(2)の関係式gの係数値h,i,j,kのデータを制御部12のメモリに格納する。
ステップS42が終了すると、図6Bの測定手順のステップS43に制御を移行する。
図6Bのロードピン位置測定手順において、ステップS43では、治具3上のロードピン8がCCDカメラの視野内に入るようにXYステージを移動する。
ステップS44において、XYステージの移動が完了したか否かを判定する。移動が完了した場合、次のステップS45に制御を移行する。まだ移動が完了しない場合、上記ステップS43に制御を戻す。
ステップS45において、CCDカメラを制御してロードピン8の画像を取り込み、画像データを制御部12のメモリに格納する。
ステップS46において、変位計を制御してロードピン8の高さを測定して、高さの測定データを制御部12のメモリに格納する。
ステップS47において、ロードピン8の位置ずれ量(ΔXΔY,ΔZ)のデータを制御部12のメモリに格納する。ここで、X方向、Y方向の位置ずれ量(ΔXΔY)は、XYステージの変位データとCCD画像を制御部12による画像処理データから算出する。Z方向の位置ずれ量ΔZは、変位計により直接測定する。
ステップS48において、位置ずれ量(ΔX,ΔY,ΔZ)に応じた、ロール角補正量、及びピッチ角補正量を制御部12で演算して、その演算結果のデータを制御部12のメモリに格納する。
ステップS49において、治具3上の全てのサスペンションについてロードピン位置測定が完了したか否かを判定する。完了した場合には、図6CのステップS51に制御を移行する。まだ完了していない場合、ステップS50で、次のサスペンションについてのロードピン位置測定に制御を移行し、上記ステップS43以降の測定手順を繰り返す。
図6Cの捩れ角測定手順は、治具3が所定の個数のサスペンション(1ロット分)を取付け可能に設けてあり、各サスペンションに対しロードピン8を移動することなく、1ロットの複数のサスペンションの各捩れ角の測定を一度に行う場合を想定している。
図6Cに示したように、ステップS51で、所定数のサスペンション(1ロット分)を治具3に取付ける。
ステップS52において、XYステージ及びZステージを移動する。
ステップS53において、測定対象のサスペンションのロール角・ピッチ角測定位置への移動が完了したか否かを判定する。まだ移動が完了しない場合には、上記ステップS52に制御を戻す。
測定位置への移動が完了した場合、ステップS54において、そのサスペンションのロール角θr及びピッチ角θpを角度測定器11にて測定し、その測定データを制御部12のメモリに格納する。
ステップS55では、測定した位置のロードピン8について、ロール角測定値θrからロール角補正値Δθrを減算する演算(θr−Δθr)を行い、ロール角演算結果のデータθrrを制御部12のメモリに格納する。
ステップS56では、測定した位置のロードピン8について、ピッチ角測定値θpからピッチ角補正値Δθpを減算する演算(θp−Δθp)を行い、ピッチ角演算結果のデータθprを制御部12のメモリに格納する。
ステップS57において、ロール角演算結果のデータθrrとピッチ角演算結果のデータθppを制御部12のディスプレイ上に表示する。
ステップS58において、治具3上の全てのサスペンションについて捩れ角の測定が完了したか否かを判定する。完了した場合には、次のステップS60に制御を移行する。まだ完了していない場合、ステップS59で、次のサスペンションについての捩れ角の測定に制御を移行し、上記ステップS52以降の測定手順を繰り返す。
ステップS60において、治具3から所定数のサスペンション(1ロット分)を取り外す。
ステップS61で、全てのロットのサスペンションについて捩れ角の測定が完了したか否かを判定する。完了した場合には、図6Cの測定手順を終了する。まだ完了していない場合、ステップS62で、次のロットのサスペンションについての捩れ角の測定に制御を移行し、上記ステップS51以降の測定手順を繰り返す。
上記実施例の捩れ角測定方法によれば、サスペンション1の基準面2を、既知のロール角及びピッチ角を有する基準平面を設けた治具3に突き当てることにより、基準面2のロール角及びピッチ角は、治具3の基準平面のロール角及びピッチ角と一致するため、あらためて測定する必要がなくなる。このため、従来の測定方法で行っていたサスペンション基準面2の角度測定が不要になり、サスペンション1個当りの測定データ取得時間を短縮させることができる。
また、治具3に固定された時のサスペンション1とロードピン8との相対位置関係が既知であり、かつ、ロードピン位置偏差に起因するサスペンションのロール角およびピッチ角の変化量が既知であれば、測定の度にサスペンション1とロードピン8との位置合わせを行う必要がない。関係式f及びgに基づく補正値を導入することで、実際のサスペンションのロール角及びピッチ角を求めることが可能となる。
本発明の磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定方法によれば、複数のサスペンションを同一治具上に並べて一度に測定を行う場合には、治具3に対しロードピン8をそれぞれ独立して移動させる機構は必須ではなくなり、ロードピン移動に要する手順を省略することができ、捩れ角の測定時間を大幅に短縮するとともに、測定装置の機構を簡略化することが可能となる。
図7は、本発明の一実施例に係る磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定装置の構成を示す。図8は、本発明の一実施例に係る磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定装置を示す斜視図である。また、図9は、図8に示した捩れ角測定装置における治具の構成を示す。
図7乃至図9に示したように、この実施例の捩れ角測定装置は、治具3と、位置決めピン5と、圧縮ばね6と、取付け金具7と、ロードピン8と、3軸方向のマイクロアクチュエータ9と、XYステージ10と、角度測定器11と、図6A乃至図6Cに示したような捩れ角測定手順を実行するための制御部12(パーソナルコンピュータ(PC)等)と、Zステージ13と、CCDカメラ及び変位計14とから構成される。
測定対象となるサスペンション1は、その測定基準面2を冶具3上に設けられた平滑な基準平面4に合わせるように搭載する。このとき、サスペンション1は2箇所の位置決めピン5により、X、Y、θ方向の動きが拘束されて搭載される。冶具3は上下に2分割されている。サスペンション1は、冶具3の上部に内蔵された圧縮ばね6を介して取付け金具7により一定圧力で加圧される。測定基準面2が基準平面4に突き当てられ、サスペンション1は治具3に固定される。なお、冶具3の上部と下部はクランパにより一体的に固定されている。
サスペンション1が治具3に固定される際、ロードピン8がサスペンション1の規定位置を突き当たるため、サスペンション1は擬似浮上状態に設定される。ロードピン8は、3軸方向のマイクロアクチュエータ9を用いて微小距離だけ移動が可能であり、その移動距離は制御部12により制御される。
このアクチュエータ9は、個々のサスペンションに固有の、ロードピン変位に応じたロール角・ピッチ角の変化量の関係式を求める際にのみ、ロードピン8を移動させる。また、制御部12によりCCDカメラ及び変位計14を制御して、ロードピン8とサスペンション1の画像を取り込むことが可能であり、高さ測定が行える。
この実施例において、複数のロードピン8が、一個のブロツク上に各サスペンション1の搭載間隔で配置されている。また、各サスペンション1に固有の、ロードピン変位に応じたロール角・ピッチ角の変化量の関係式を求める際には、アクチュエータ9を制御して、各ロードピン8をX,Y,Z方向にそれぞれ移動させることにより、搭載したサスペンション全てについて同一条件のもとで測定データを連続的に複数個取得することができる。
複数のサスペンション1を固定するための冶具3は、XYステージ10に取付けてある。XYステージ10が移動することにより、各サスペンション1が角度測定器11の測定エリアに移動し、サスペンション個々のロール角、ピッチ角をそれぞれ測定する。なお、角度測定器11は、サスペンション1との距離を調整するためのZステージ13に取付けてある。XYステージ10及びZステージ13の移動は制御部12により制御される。
測定データは角度測定器11から制御部12に取り込まれ、予め測定してあるサスペンション1とロードピン8の相対位置を示すの位置データから、個々のサスペンションについて補正するロール角およびピッチ角の補正値が算出される。制御部12は、測定データ(実測値)に補正値を加算する演算を行い、その結果に治具3の基準平面4のロール角およびピッチ角を減じる演算を行った後、真のロール角およびピッチ角(即ち、ロードピン8が規定位置に点接触しているときのサスペンション1の実際の捩れ角)をディスプレイ等の出力装置に表示させる。
以上説明したように、従来の測定方法では、個々のサスペンションの捩れ角測定を行う毎に、ロードピンの位置合わせを行い、さらに基準面測定を行っていたのと比較して、本発明の磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定方法及び測定装置によれば、大幅な測定時間の短縮を図ることができ、かつ、擬似浮上状態における測定誤差を低減することが可能である。
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、請求の範囲記載の範囲内で様々な変形が可能である。
【図1】


【図3】

【図4】

【図5】




【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスク用サスペンションの基準面を、既知の捩れ角が設定された平滑な基準平面を有する治具上に加圧して固定する取付け手順と、
前記治具に固定した前記サスペンションにおけるスライダ搭載面の前記基準面に対するロール方向及びピッチ方向の捩れ角を測定する測定手順と
を有することを特徴とする磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定方法。
【請求項2】
先端が球面形状のロードピンを、前記治具に固定した前記サスペンションと規定位置において点接触させることにより、前記サスペンションを擬似浮上状態にする手順と、
前記サスペンションと前記ロードピンとの相対的位置を変化させたときの、前記サスペンションのロール方向及びピッチ方向の捩れ角の変化量から得られる関係式を算出する算出手順と
を有することを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定方法。
【請求項3】
前記サスペンションと前記ロードピンとの相対的位置の変化量が既知である場合に、前記ロードピンを移動することなく前記測定手順を行い、実際に得られた捩れ角の測定値と前記算出手順で得られた前記関係式とに基づいて、前記規定位置における捩れ角の測定値を近似的に算出する手順を有することを特徴とする請求項2記載の磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定方法。
【請求項4】
磁気ディスク用サスペンションにおけるスライダ搭載面の基準面に対するロール方向及びピッチ方向の捩れ角を測定する捩れ角測定装置において、
既知の捩れ角が設定された平滑な基準平面を有する治具と、
前記サスペンションの基準面を、前記治具の前記基準平面上に加圧して固定する取付け機構と、
前記治具に固定した前記サスペンションにおけるスライダ搭載面の前記基準面に対するロール方向及びピッチ方向の捩れ角を測定する測定手段と、
先端が球面形状のロードピンと、
前記サスペンションを擬似浮上状態に設定するために、前記ロードピンを移動して前記サスペンションと規定位置において点接触させるロードピン移動手段と、
前記サスペンションと前記ロードピンとの相対的位置を変化させたときの、前記サスペンションのロール方向及びピッチ方向の捩れ角の変化量から得られる関係式を算出する算出手段と
を備えることを特徴とする磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定装置。
【請求項5】
前記サスペンションと前記ロードピンとの相対的位置の変化量が既知である場合に、前記ロードピンを移動することなく捩れ角の測定を行い、実際に得られた捩れ角の測定値と前記関係式とに基づいて、前記規定位置における捩れ角の測定値を近似的に算出する手段を備えることを特徴とする請求項4記載の磁気ディスク用サスペンションの捩れ角測定装置。

【国際公開番号】WO2004/068492
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【発行日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544171(P2004−544171)
【国際出願番号】PCT/JP2003/000914
【国際出願日】平成15年1月30日(2003.1.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】