説明

磁気ヘッド・キーパ間隔、ヘッド媒体間隔、またはヘッドと軟下地層との間隔を低減した記録媒体

【課題】磁気記録媒体の面積密度を高くするために、物理的間隔を犠牲にせずに有効磁気間隔を低減するための構成要素および方法を提供する。
【解決手段】磁気記録媒体のヘッド媒体間隔(107)またはヘッド・キーパ間隔(106)を低減することにより面積密度を高くするための構成要素および方法であって、現在用いられている中間層やオーバーコートなどのデバイスの非磁性構成要素を、常磁性または強磁性の材料を含む構成要素および合成物(101、102、104)で置換する。下地層の結晶組成の核を形成するために磁気媒体内に堆積させる磁気シード層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高い面積密度を持つ記録媒体に関し、より詳しくは、ヘッド媒体間隔、ヘッド・キーパ間隔、またはヘッドと軟下地層との間隔を低減することにより磁気間隔を低減することを可能にする方法、システム、および構成要素に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気媒体は広い応用に、特にコンピュータおよびデータ記憶装置業界で例えばハードディスクドライブなどの装置および他の記録装置に多く用いられている。面積密度(ビット密度とも呼ぶ)とは単位面積当たりの記憶媒体に詰め込み得るデータの量を指す。面積密度は一般に平方インチ当たりのギガビットで測る。現在の磁気および光学ディスクの面積密度は平方インチ当たり数ギガビットである。媒体の面積記録密度を平方インチ当たり200ギガビット以上に高める研究が行われている。これに関して、高い面積密度を得るには従来の面内媒体より垂直記録媒体構造の方が優れていることが分かっている。磁気記録媒体は、磁性材料の粒子の磁気領域の方向に従って、一般に「面内」と「垂直」とに分類される。本発明の磁気記録媒体は、垂直記録媒体、面内記録媒体、離散トラック記録媒体、ビットパターン化媒体、または熱支援磁気記録(HAMR)媒体を含んでよい。
【0003】
垂直磁気記録媒体(磁性層内に垂直異方性を持つ記録媒体)では、磁気媒体の表面に垂直の方向に残留磁化を形成して、記録されたビットを記録層内の垂直、あるいは平面外の方向に記憶する。
従来技術の薄膜型磁気媒体では、微粒子の多結晶磁性合金層が活性状態の記録層になる。一般に、記録媒体は多結晶のCoCrまたはCoPt酸化物を含有する膜で作られる。多結晶膜内のCoリッチな領域は強磁性であり、膜内のCrまたは酸化物リッチな領域は非磁性である。隣接する強磁性領域の間の磁気相互作用はその間の非磁性領域により減衰させられる。
【0004】
高い線形記録密度は、「単極」磁気変換器すなわち「ヘッド」を垂直磁気媒体と共に用いることにより得られる。書込み変換器すなわちヘッドは主(書込み)極と補助極とを備えてよく、高い集中磁界を作って、記憶する情報のビットに基づいて媒体の磁化方向を変化させる。書込み変換器が作る局所磁界が記録媒体層の材料の保磁力より大きい場合は、その場所の多結晶材料の粒子は磁化される。書込み変換器が印加した磁界が消えた後も粒子はその磁化を保持する。磁化の方向は印加磁界の方向に一致する。その後、記録媒体層の磁化は読取り変換器、あるいは読取り「ヘッド」内に電気応答を生成するので、記憶された情報を読み取ることができる。
【0005】
一般的な垂直記録システムは、(磁気記録層に比べて)比較的厚い「軟」磁性下地層(SUL)および比較的薄い「硬」垂直磁気記録層を持つ磁気媒体と、単極ヘッドとを用いる。「軟磁性材料」とは、約2−150エルステッド(Oe)または好ましくは約1kOeの比較的低い保持力を有するNiFe合金(パーマロイ)などの磁性材料、または容易に磁化および消磁する材料を指す。「硬磁性」記録層は数kOe、一般に2−10kOe、または好ましくは約3−8kOeの比較的高い保持力を有し、例えば、垂直異方性を有するコバルト・ベースの合金(例えば、CoCrPtBなどのCo−Cr合金で、容易に磁化も消磁もしない材料)を含む。
【0006】
軟磁性下地層は、ヘッドから出て硬垂直磁気記録層を通る磁束を導く。このシステムは更に、好ましくは非磁性基板、少なくとも1つの非磁性中間層、および随意の接着層を含む。1つ以上の非磁性材料の層を含む比較的薄い中間層は、好ましくは少なくとも1つの硬磁性記録層の下に位置し、軟磁性下地層と硬磁性記録層との間の磁気的相互作用を防ぎ、硬磁性記録層の望ましい微細構造および磁気特性を促進する。米国広報第20070287031号、米国特許第6914749号、米国特許第7201977号を参照のこと。中間層は中間層スタックを形成する多層を含んでよく、これらの層の少なくとも1つは好ましくは硬磁性垂直記録層に隣接するhcp(六方稠密)材料を含む。
【0007】
磁束φは磁気ヘッドの主書込み極から出て、主極の下の領域内の少なくとも1つの垂直に向いた硬磁性記録層に入って通過し、SUL内に入って或る距離進み、次にそこから出て、変換器ヘッドの補助極の下の領域内の少なくとも1つの垂直硬磁性記録層を通過する。
【0008】
粒状の垂直磁気記録媒体の性能の開発は、従来技術の垂直媒体(磁性粒子間に強い横交換結合が存在するために制限される)に比べると、記憶するデータの面積密度を更に高める方向に進んでいる。粒状の(すなわち、平面内の粒子は不連続の性質を有するという意味)垂直記録媒体は、空隙、酸化物、窒化物、非磁性材料、またはこれらの組合せを含む粒界により分離される磁性柱状粒子を有する粒状の垂直磁性層を含む。約2から約20オングストローム(Å)の厚さを有する粒界は磁性粒子間の磁気的相互作用を実質的に低減する。アルゴン(Ar)などの不活性ガス内で一般に低圧かつ高温で垂直磁性層をスパッタする従来技術の垂直媒体とは対照的に、粒状の垂直磁性層の堆積を比較的高圧かつ低温で行い、また酸素(O)および/または窒素(N)を、例えば、ArとO、ArとN、またはArとOとNの混合ガスを導入する反応スパッタリング法を用いる。
【0009】
代替的に、酸化物および/または窒化物を含むスパッタ・ターゲットを用いて酸素および窒素を導入してよい。これは、不活性ガス(例えば、Ar)の中でスパッタするか、または不活性ガスが存在しまたは存在せずに、Oおよび/またはNを含むスパッタリングガスの中でスパッタしてよい。Oおよび/またはNを導入すると酸化物および/または窒化物を形成して粒界内に移動し、粒子間の横交換結合の小さな粒子垂直構造を形成することができる。米国広報第20060269797号を参照のこと。かかる粒界を導入すると、記録/記憶媒体の面積密度を高めることができる。
【0010】
ここに述べたように媒体内に種々の層を挿入することによりスタック構造を形成する。媒体の層スタックは多結晶層内に粒界を含む。硬磁性主記録層は好ましくは中間層の上にエピタキシャル形成を行うので、各多結晶層の粒子の幅は実質的に同じであり(水平方向に測ったとき)、また垂直に記録する(すなわち、垂直に「相関する」すなわち整列する)。層スタックは、硬磁性層の上に形成されるダイアモンド状炭素(DLC)などの保護オーバーコート層と、保護オーバーコート層の上に形成されるパーフルオロポリエーテル材料などの潤滑トップコート層で完成する。垂直記録媒体はシード層も含む。これは好ましくは軟磁性下地層(SUL)に隣接し、また好ましくは非晶質材料と面心立方格子構造(fcc)材料の少なくとも一方を含む。
【0011】
「非晶質」という用語は、かかる材料のX線回折パターンが背景雑音に比べてピークを示さないことを意味する。材料のX線回折パターンが背景雑音に比べてピークを示さない限り、本発明に係る非晶質層は非晶質相または任意の他の形態の材料の中に微結晶を含んでよい。シード層は下地層の特定の結晶組成の核形成の種となる。従来技術では、シード層は非磁性基板の上に最初に堆積させる層である。この層の役割は、次のCrを含有する下地層の結晶方向を決める、すなわち整列させることである。シード層、下地層、および磁性層は、従来技術ではアルゴンの雰囲気などの不活性ガスの雰囲気の中で基板の上に順にスパッタ堆積させる。
【0012】
いわゆる「粒状」記録層(磁性粒子が横方向に弱くのみ交換結合している)と連続層(磁性粒子が横方向に強く交換結合している)とを含む垂直スタック磁性層は、或る記録媒体構成では共に強磁性的に結合する。かかる媒体では、連続の磁性層全体が粒状の磁性層内の各粒子と結合してよい(垂直交換結合合成物「ECC」を形成する)。米国特許第7201977号を参照のこと。
【0013】
極微粒子の磁気記録媒体は熱不安定性を有することがある。1つの解決策は、強磁性記録層と別の強磁性層または反強磁性層とを結合して安定させることである。これを行うには、薄い非磁性スペーサ層を間に挟むことにより反強磁性結合(「AFC」)させた少なくとも1対の強磁性層を含む安定化された磁気記録媒体を形成する。結合させることにより各磁性粒子の有効容量が増えてその安定性が増すと考えられる。強磁性層対の間の結合力は安定性の向上を決定する重要なパラメータである。連続の強磁性層は不連続の強磁性層より保持力が小さい。非磁性スペーサ層は、その厚さに応じて、連続の強磁性層と不連続の強磁性層との間の磁気結合または反強磁性結合を与える。上部および下部の磁性層の磁性粒子が垂直に整列して成長し、またサイズが等しいかまたはほぼ等しいことが好ましい。さもなければ、各強磁性層対に書き込まれる面積が一致しないことがある。米国特許第6777112号を参照のこと。
【0014】
基板は一般に円盤型で、ガラス、セラミック、ガラス・セラミック、NiP/アルミニウム、金属合金、プラスチック/ポリマ材料、セラミック・ガラスポリマ合成材料非磁性材料、またはこれらの組合せまたは積層板を含んでよい。米国特許第7060376号を参照のこと。磁気記録剛性円盤を製作するのに従来用いられている基板材料はアルミニウム・マグネシウム(Al−Mg)合金を含む。かかるAl−Mg合金は一般に約15ミクロンの厚さにNiPの層で無電界メッキして基板の堅さを増すことにより、研磨に適した表面を形成して必要な表面粗さすなわち組成を形成する。随意の接着層は、基板表面上にある場合は、Ti、Tiベースの合金、Ta、Taベースの合金、Cr、またはCrベースの合金などの金属または金属合金材料の約200オングストローム(Å)より薄い層を一般に含む。
【0015】
比較的厚い軟磁性下地層は、一般に約50から約300nmの厚さのNi、Co、Fe、NiFe(パーマロイ)、FeN、FeSiAl、FeSiAlNなどのFeを含有する合金、CoZr、CoZrCr、CoZrNbなどのCoを含有する合金、またはCoFeZrNb、CoFe、FeCoB、およびFeCoCなどのCo−Feを含有する合金などの軟磁性材料の層を含む。比較的薄い中間層スタックは一般に約50から約300Åの厚さの非磁性材料の層を含む。中間層スタックは、硬磁性垂直記録層に隣接する、Ru、TiCr、Ru/CoCr37Pt、RuCr/CoCrPtなどのhcp材料の少なくとも1つの中間層を含む。軟磁性下地層(SUL)に隣接するシード層が存在するときは、シード層は約100Åより薄いCu、Ag、PtまたはAuの合金などのfcc材料、またはTa、TaW、CrTa、Ti、TiN、TiW、またはTiCrなどの非晶質または微細粒子材料の層を一般に含んでよい。少なくとも1つの硬磁性垂直記録層は、約10から約25nmの厚さの、Cr、Fe、Ta、Ni、Mo、Pt、W、Cr、Ru、Ti、Si、O、V、Nb、Ge、B、およびPdから成る群から選択された1つ以上の要素を含むCoベースの合金の層を一般に含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第6777112号
【特許文献2】米国特許第6914749号
【特許文献3】米国特許第7060376号
【特許文献4】米国特許第7201977号
【特許文献5】米国特許出願第12/324,629号
【特許文献6】米国広報第20060269797号
【特許文献7】米国広報第20070287031号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上に述べた従来の媒体タイプの中で、面内媒体は垂直媒体より開発が進み、コンピュータ業界で数十年にわたって用いられてきた。この間に、変換器ヘッド、チャネル、および媒体などの構成要素およびサブシステムは、コンピュータ環境内で何度も最適化され、効率的に動作している。しかし面内記録は、物理的限界のために面積記録密度をこれ以上高めることが実質的にできないので、コンピュータ応用における業界標準としての寿命は終わりに近づいていると一般に考えられている。
【0018】
他方で、垂直媒体はコンピュータ関連の記録応用において面内媒体に取って代わり、面内媒体の能力をはるかに超えてますます面積記録密度を高める方向に今後も発展すると期待される。しかし垂直媒体および記録技術は、全ての面で面内媒体および記録技術より開発が遅れている。特に、変換器ヘッド、媒体、および記録チャネルを含む垂直磁気記録技術の個々の構成要素は、面内記録技術の対応する構成要素に比べて開発および最適化が完全に遅れている。その結果、垂直媒体およびシステムが持つ利点は従来技術(すなわち面内媒体およびシステム)に比べて評価が困難である。
【0019】
高密度の垂直記録媒体については、以下のいくつかの磁気特性について慎重に調整しまた平衡させる必要がある。すなわち、熱安定性および高勾配ヘッドとの互換性を可能にする十分高い異方性、ヘッドによる書込みを可能にする十分低いスイッチング磁界、磁性粒子またはクラスタ間の小さな相関長さを保持するのに十分低くかつ狭いスイッチング磁界分布(SFD)を保持するのに十分高い横交換結合、および熱安定性を保持しかつSFDを最小にするのに十分な磁気特性の粒子間の均一性である。
【0020】
記録密度が高くなると、1ビット内の磁性粒子の数を同じ値に保つために粒子構造を一層小さくする必要がある。粒子構造が小さくなると粒子内の異方性の変動などの不均一性に影響されやすくなり、また熱安定性を保つために一層高い異方性が必要になるので、書込み性能に悪い影響を与える。したがって、書込み性能が優れ、SFDをより狭くするために欠陥がより少なく、また特性の均一性が優れた媒体が必要である。
【0021】
面積密度を高めるための現在の方法は、装置の磁気記録層内の要素の操作および微調整に集中している。しかし、ヘッド媒体間隔(HMS)(磁気ライタヘッドと磁気記録層との間の距離、ただし、ヘッドまたは記録層の上のオーバーコートおよび潤滑コートを除く)、ヘッド・キーパ間隔(HKS)(ライタの空気軸受け表面とSULとの間の空隙)すなわちヘッドとSULとの間隔は、面積密度を制限する主な要因である。HMS/HKSが低減すれば面積密度は高くなる。図1を参照のこと。1オングストローム低減するたびに面積密度は大幅に高くなる。他方で、磁界勾配も改善される。しかし、HMS/HKSを低減するのは非常に困難であり、近年、磁気ディスクドライブ記録および記憶業界全体でHMS/HKSの低減速度は減速した。
【0022】
面積密度の増加を制限する主な理由の1つは、従来のスケーリング則を保つことができないから、言い換えると、ヘッドの形状の縮小と共にHMS/HKSを低減することができないからである。また、HMS/HKSの物理的間隔を低減するのは望ましくないことがある。なぜなら、物理的間隔が最適であれば、磁気記録層内の機能的垂直方向、粒子の分離、および適当な粒子サイズなど、媒体に与える利点があるからである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
種々の態様は、HMS、HKSまたはSULの減少に対する現在の限界を克服し、同時にスケーリングの予測の限界を破ることにより、記録装置の面積密度を最適にすることを目的とする。種々の実施の形態は、デバイスの現在の非磁性構成要素(例えば、媒体オーバーコート、磁気ヘッドオーバーコート、または中間層)に代わるものとして常磁性または強磁性の材料を含む媒体記憶デバイスまたは記録デバイス(例えば、垂直記録媒体、面内記録媒体、離散トラック記録媒体、ビットパターン化媒体、または熱支援磁気記録(HAMR)媒体)を対象とする。好ましくは、記録プロセス中に、物理的間隔を犠牲にせずに有効磁気HMS、HKS、またはヘッドと軟下地層との間隔を低減する。
【0024】
1つの実施の形態は、磁気記録層と、磁気記録層の上の別個の常磁性または強磁性の媒体オーバーコートとを含む磁気記録デバイスを対象とする。好ましくは、常磁性または強磁性の媒体オーバーコートはFe、Co、Ni、C、Ni−Fe−C、Ni−Co−C、またはこれらの組合せを含む。
【0025】
別の実施の形態は常磁性または強磁性の中間層を含むデバイスを対象とする。好ましくは、常磁性または強磁性の中間層は粒状で、ルテニウム(Ru),鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、炭素(C)、結晶磁性材料、またはこれらの組合せを含む。より好ましくは、常磁性または強磁性の中間層はそれぞれがRuCoを含む2つの粒状層の間に位置するRuを含むサンドイッチ構造の粒状層を含み、2つのRuCo層のそれぞれの厚さは約1−200オングストロームまたは約100オングストロームであり、またRu層の厚さは約0.1−100オングストロームまたは約10オングストロームである。好ましくは、Ru層はRuCo層の一方または両方に反強磁性的に結合し、また好ましくは各RuCo層の飽和磁化(M)は約100−1000emu/ccまたは約1000emu/cc以上である。好ましくは、デバイスはサンドイッチ構造の上にかつ磁気記録層の下に堆積させたRuを含む別個の粒状層を含み、またRuを含むこの別個の粒状層の厚さは約0−100オングストローム、10−70オングストローム、または約60オングストロームである。
【0026】
別の実施の形態は、常磁性または強磁性の中間層、常磁性または強磁性の媒体オーバーコート、磁気ライタの表面上に堆積させた常磁性または強磁性のヘッドオーバーコート、またはこれらの組合せを含むデバイスを対象とする。前記中間層、媒体オーバーコート、および/またはヘッドオーバーコートの飽和磁化(M)は約100−1000emu/cc、約400emu/cc以上、約500emu/cc以上、約800emu/cc以上、または約1000emu/cc以上である。好ましくは、前記常磁性または強磁性の中間層の厚さは約1−1000オングストローム、約1−500オングストローム、約10−500オングストローム、約100−500オングストローム、約200−400オングストローム、または約250−350オングストロームである。好ましくは、前記常磁性または強磁性の媒体オーバーコートの厚さは約0.1−100オングストローム、または約0.5−50オングストロームである。好ましくは、前記常磁性または強磁性のヘッドオーバーコートの厚さは約0.1−100オングストローム、または約0.5−50オングストロームである。
【0027】
別の実施の形態は、常磁性または強磁性の中間層、常磁性または強磁性の媒体オーバーコート、常磁性または強磁性のヘッドオーバーコート、またはこれらの組合せを含むデバイスを対象とする。デバイスは、常磁性または強磁性の媒体オーバーコート、常磁性または強磁性のヘッドオーバーコート、常磁性または強磁性の中間層、またはこれらの組合せを持たないデバイスに比べて、ヘッド媒体間隔(HMS)またはヘッド・キーパ間隔(HKS)の有効磁気間隔が約0.1−100オングストローム、1−50オングストローム、1−30オングストローム、1−10オングストローム、または10−20オングストローム低減し、面積密度、最大書込み磁界、または磁界勾配が高くなる。好ましくは、面積密度は約5%、約10%、約15%、約20%、または約25%以上増加する。
【0028】
別の実施の形態は磁気記録用のデバイスを製作する方法を対象とする。この方法は、基板の上に軟磁性下地層(SUL)を堆積させ、SULの上に磁気記録層を堆積させ、そして磁気記録層の上に常磁性または強磁性の媒体オーバーコートを堆積させる。好ましくはこの方法は更に、SULと磁気記録層との間に常磁性または強磁性の中間層を堆積させることを含む。好ましくは、常磁性または強磁性の中間層は、それぞれがRuCoを含む2つの粒状層に反強磁性的に結合するRuを含むサンドイッチ構造の粒状層を含む。2つのRuCo層の厚さはそれぞれ約1−200オングストロームまたは約100オングストロームであり、またRu層の厚さは約0.1−100オングストロームまたは約10オングストロームである。好ましくは、この方法は更に、タンタル(Ta)、RuCr、磁性材料、分極材料、NiFe、Ni、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、またはこれらの組合せを含む連続のシード層を、常磁性または強磁性の中間層の下にかつSULの上に堆積させることを含み、シード層の厚さは約1−100オングストローム、約50−100オングストローム、または約60オングストロームである。
【0029】
別の実施の形態は磁気ライタの表面上に常磁性または強磁性のヘッドオーバーコートを堆積させることを含む方法を対象とする。好ましくは、常磁性または強磁性の媒体オーバーコート、常磁性または強磁性の中間層、常磁性または強磁性のヘッドオーバーコート、またはこれらの組合せは、常磁性または強磁性の媒体オーバーコート、常磁性または強磁性の中間層、またはこれらの組合せを持たないデバイスに比べて、デバイスのヘッド媒体間隔(HMS)またはヘッド・キーパ間隔(HKS)の有効磁気間隔を0.1から100オングストローム低減し、またデバイスの面積密度を約10−25%高める。
【0030】
別の実施の形態は、かかる実施の形態に係る方法の任意の1つまたは組合せの方法により製作する磁気記録デバイスを対象とする。
実施の形態および利点の他の例は、一部は以下の説明に示されており、また一部はこの説明から明らかであり、またはその実際から学ぶことができる。しかしかかる例を示すことにより制限するつもりはない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】HMS/HKSの感度に対する有限要素法(FEM)のシミュレーション結果を示す。この結果は、HMS/HKSを低減すると最大書込み磁界および磁界勾配が増加することを示す。記録ヘッドの形状、ヘッドおよび媒体の磁気パラメータはこれらのシミュレーション中は全て同じであり、HMS/HKSの値だけを変えた。
【図2】aは垂直記録システム用の微小磁気シミュレーションモデルを示す。このモデルは遮蔽極を持つ単極ヘッド、媒体磁性層、およびSULを含み、印加(外部)磁界、結晶異方性磁界、静磁界、および交換磁界を含めて媒体がさらされる一般的な磁界を考慮に入れた。 bは粒子サイズ分布およびHの大きさ分布を対数正規分布により示す。またHの角度分布を5゜角度により示す。
【図3】媒体/中間層の透磁率の増加に伴う垂直書込み磁界の改善を含む、媒体/中間層の透磁率の効果を示す。
【図4】本発明の1つの実施の形態の略図を示す。磁気記録層のオーバーコートは磁性材料に基づく。
【図5】本発明の1つの実施の形態の略図を示す。磁気記録層のオーバーコートは磁性材料に基づく。中間層は結晶磁性材料で作る。
【図6】防食磁性層で置換した磁性層の頂部を含む本発明の1つの実施の形態の略図を示す。
【図7】RuCo/Ru/RuCoの粒状サンドイッチ中間層を含みまた連続のシード層およびSULを含む、1つの実施の形態の略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
1つの実施の形態は、一般に用いられている材料より透磁率の高い材料を中間層、潤滑層、媒体磁性層オーバーコート、磁気ライタヘッドオーバーコート、またはこれらの組合せに導入することにより磁気間隔を低減する独自の媒体設計を対象とする。好ましくは、磁気間隔の低減は物理的間隔の低減を伴わずに行う。透磁率の高い材料は強磁性材料、常磁性材料、またはこれらの組合せを含んでよい。
【0033】
得られる間隔の低減とは有効磁気間隔の低減のことであり、これは物理的間隔を透磁率で割って計算する。したがって、ライタおよび/またはリーダが認識する磁気間隔は、測定した層または空間の物理的間隔(すなわち物理的厚さ)を、対象とする層または空間の比透磁率で割った値に依存する。透磁率は材料のモーメントに関係し、高いモーメントを持つ材料ほど高い透磁率を有する。好ましくは、記録媒体デバイスの種々の実施の形態において、磁気記録層内の機能的垂直方向、粒子の分離、および適当な粒子サイズなどの物理的間隔に従属するパラメータを保持するため、(有効磁気間隔とは異なり)物理的間隔を低減しない。
【0034】
図2a−bは従来技術の垂直記録システム用の微小磁気シミュレーションモデルを示す。典型的な問題形状(媒体磁性層230、遮蔽極を持つ単極ヘッド210、SUL220、および中間層255を含む)で定式化されたこのモデルを用いて検討した問題は、媒体の透磁率の影響、垂直媒体スイッチング速度、粒子サイズの影響、媒体角度および異方性(H)分布、および動的スイッチング下の遷移パラメータである。このモデルは、印加外部磁界(磁気ライタヘッドからの)、結晶異方性磁界(各材料の固有の異方性磁界)、静磁界、および交換磁界(粒子間の磁界)を考慮に入れる。
【0035】
驚くべきことに、従来技術で主流である非磁性構成要素の代わりに強磁性、常磁性、または分極の材料を用いると、書込み性能が最適になりまた面積密度が高くなることが分かった。軟下地層と硬磁性記録層との間の磁気的相互作用を防ぎ、また硬記録層の望ましい微小構造および磁気特性を促進するために、従来技術では中間層に非磁性材料が一般に用いられる。しかし図3は、中間層の透磁率が高くなるに従って書込み磁界が良くなることを示す。このモデルでは、10,000Oeでの飽和磁化および異方性で媒体を正規化した。この方法では磁界勾配の不利益はない。
【0036】
透磁率が高くなると、実際の物理的間隔に影響を与えずに有効磁気間隔(HKS、HMSすなわちヘッドとSULとの間隔など)を低減することができる。媒体デバイスは、HKS、HMS、「ヘッドとSULとの間隔」の物理的間隔について特定の配分すなわち割当を有していることがある。多くの場合に物理的間隔を犠牲にしない(すなわち低減しない)のが望ましい理由は、中間層内の種々の副層が、磁気記録層の垂直方向性を良くし、粒子の分離を良くし、また粒子サイズを適切にすることを含む(ただしこれに限定されない)利点を与えるからである。
【0037】
中間層、媒体ヘッドオーバーコート、および円盤すなわち媒体オーバーコート(例えば、炭素オーバーコート[COC])は一般に媒体内の間隔の物理的厚さを厚くする主要因である。標高、温度、および湿度も物理的間隔に影響する。媒体デバイスの現在の非磁性構成要素の1つまたは組合せを、透磁率の比較的高い材料(本発明の実施の形態に係る常磁性または強磁性の材料など)で置換することにより、有効磁気間隔は低減し、面積密度は高くなるが、物理的間隔は望ましいことに犠牲にならない。1つの実施の形態では、従来技術の円盤オーバーコート、円盤潤滑層、ヘッドオーバーコート、中間層、またはこれらの組合せの材料を、透磁率の高い磁性材料で置換する。好ましくは、正味の効果は、物理的間隔が低減せずにHMS、HKS、およびヘッドとSULとの間隔などの有効磁気間隔(物理的間隔を比透磁率で割ったもの)が低減することである。改善された媒体および/または中間層の透磁率の結果を図3に示す。媒体/中間層の透磁率が高くなるに従って垂直書込み磁界は良くなる。
【0038】
1つの実施の形態は磁気ライタおよび記録媒体を含む記録デバイスを対象とする。記録媒体は、磁気記録層(好ましくは媒体硬層を含む)と媒体磁性層の上の別個の常磁性または強磁性の媒体オーバーコートとを含む。好ましくは、常磁性または強磁性のオーバーコートは潤滑層を含む。より好ましくは、磁気オーバーコートは防食性である。追加的にまたは代替的に、防食層は磁気記録層と磁気オーバーコートとの間に堆積させてよい。また、防食層は好ましくは磁気記録層の頂部または記録媒体の別の構成要素を置換してよい。デバイス構成要素内に組み込む防食材料は、鉄、ニッケル、コバルト、炭素、またはこれらの組合せを含む(しかしこれらに限定されない)。常磁性または強磁性の媒体オーバーコートは、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、炭素(C)、Ni−Fe−C、Ni−Co−C、またはこれらの組合せを含んでよく、また厚さは約0.1−100オングストローム、または約0.5−50オングストロームでよい。
【0039】
別の実施の形態では、常磁性または強磁性の媒体オーバーコートは、デバイス内の円盤潤滑層、炭素オーバーコート、ダイアモンド状炭素オーバーコート、これらの一部、またはこれらの組合せを置換する。常磁性または強磁性の媒体オーバーコートの飽和磁化(M)は、好ましくは約100−1000emu/cc、約400emu/cc以上、約500emu/cc以上、約800emu/cc以上、または約1000emu/cc以上である。別の実施の形態は常磁性または強磁性のライタヘッドオーバーコートを対象とする。このヘッドオーバーコートを、単独でまたは本発明の種々の実施の形態に応じた常磁性または強磁性の材料の代替物と組み合わせて用いることにより、記録媒体デバイスの有効磁気間隔を低減することができる。
【0040】
常磁性または強磁性の媒体またはヘッドオーバーコートの炭素含有率は、1−20%、20%−80%、50%−90%、または90%以上でよい。1つの実施の形態では、常磁性または強磁性の媒体オーバーコートはオーバーコートの垂直厚さの方向に濃度が勾配する炭素を含み、炭素濃度は磁気ライタの表面に向かう方が媒体硬層の表面に向かう方より高い。別の実施の形態では、炭素の濃度は逆の方向に勾配し、最高濃度は記録媒体の底部に向かう(言い換えると、SULに向かう)方にあり、最低濃度は磁気ライタヘッドに面する記録媒体の表面に向かう方にある。
【0041】
好ましくは、常磁性または強磁性の媒体オーバーコートおよび/またはヘッドオーバーコートを用いると、常磁性または強磁性の媒体オーバーコートおよび/またはヘッドオーバーコートを持たないデバイスに比べて、媒体記録デバイスのヘッド媒体間隔(HMS)、ヘッド・キーパ間隔(HKS)、ヘッドとSULとの間隔、またはこれらの組合せの磁気間隔は低減する。かかる磁気間隔の低減は好ましくは、約0.1オングストローム以上、約0.5オングストローム以上、約1オングストローム以上、約2オングストローム以上、約5オングストローム以上、約10オングストローム以上、約20オングストローム以上、約30オングストローム以上、または約50オングストローム以上である。好ましくは、常磁性または強磁性の媒体および/またはヘッドのオーバーコートを用いると、磁気オーバーコートを持たないデバイスに比べて、媒体記録デバイスの面積密度、最大書込み磁界、磁界勾配、またはこれらの組合せが高くなる。1つの実施の形態では、面積密度は約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、または約30%以高くなる。
【0042】
別の実施の形態は、好ましくはSULの上に堆積させた常磁性または強磁性の中間層を含む記録媒体を対象とする。好ましくは、常磁性または強磁性の中間層は磁気記録層の下に位置する。好ましくは、常磁性または強磁性の中間層は粒状である。常磁性または強磁性の中間層はルテニウム(Ru)、Fe、Co、Ni、C、またはこれらの組合せを含んでよい。或る実施の形態では、常磁性または強磁性の中間層は結晶磁性材料を含む。好ましくは、これは3層のナノ結晶膜を含む。1つの実施の形態では、常磁性または強磁性の中間層を記録媒体内に堆積させ、他方で、従来技術の媒体オーバーコートを持つまたは持たない従来技術の媒体硬層を用いる。別の実施の形態では、本発明の実施の形態に係る常磁性または強磁性の媒体オーバーコートと常磁性または強磁性の中間層の両方が記録デバイス内に位置する。好ましくは、常磁性または強磁性のヘッドオーバーコートも用いる。
【0043】
常磁性または強磁性の中間層の材料の飽和磁化(M)は、好ましくは約100−1000emu/cc、約400emu/cc以上、約500emu/cc以上、800emu/cc以上、または約1000emu/cc以上である。常磁性または強磁性の中間層の厚さは約1−1000オングストローム、約1−500オングストローム、約10−500オングストローム、約100−500オングストローム、約200−400オングストローム、または約250−350オングストロームでよい。
【0044】
1つの実施の形態は、好ましくは、Ruを含む連続の反強磁性結合(AFC)層により2つの領域に分離されたSULを含む記録デバイスを対象とする。好ましくは、これらの2つのSUL領域はそれぞれ非晶質のFeCo合金を含み、また好ましくは、2つの別個の領域の厚さはそれぞれ約1−400オングストローム、約10−300オングストローム、約100−300オングストローム、または約200オングストロームである。好ましくは、Ruを含む連続のAFC層の厚さは約1−100オングストローム、約1−50オングストローム、約1−30オングストローム、または約10オングストロームである。
【0045】
別の実施の形態では、記録デバイスは、それぞれがRuCoを含む2つの層の間に挟まれたRuを含む層で作られた常磁性または強磁性の中間層を含む。RuCo層は、好ましくは50%以上のCo、75%以上のCo、90%以上のCo、または99%以上のCoを含む。2つのRuCo層のそれぞれの厚さは、好ましくは約1−200オングストローム、より好ましくは約50−150オングストローム、最も好ましくは約100オングストロームである。Ru層は好ましくは粒状であり、その厚さは約0.1−100オングストローム、より好ましくは約10オングストロームであり、また好ましくはRuCo層の一方または両方に反強磁性的に結合する。
【0046】
好ましくは、各RuCo層の飽和磁化(M)は約100−1000emu/ccまたは約1000emu/cc以上であり、また好ましくは粒状である。
別の実施の形態では、Ruを含む別個の粒状層をRuCo−Ru−RuCoサンドイッチ構造の上にかつ磁気記録媒体(好ましくは媒体硬層を含む)の下に堆積させる。好ましくは、この別個のRu層の厚さは約0−100オングストローム、10−70オングストローム、または約60オングストロームである。
【0047】
別の実施の形態は、SULの上に堆積させた連続のシード層を含む記録デバイスを対象とする。好ましくは、このシード層は本発明の種々の実施の形態に係る常磁性または強磁性の中間層の下に堆積させる。シード層は、好ましくは磁性材料、分極材料、タンタル(Ta)、RuCr、NiFe、Ni、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、またはこれらの組合せを含む。1つの実施の形態では、シード層はここに述べたRuCo−Ru−RuCoサンドイッチ構造の下に配置する。好ましくは、シード層の厚さは約1−100オングストローム、約50−100オングストローム、または約60オングストロームである。
【0048】
別の実施の形態では、シード層は磁性材料、分極材料、またはこれらの組合せを含む。好ましくは、シード層の材料はNiFe、Ni、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、またはこれらの組合せを含む。
RuおよびCoを含有する層を含むサンドイッチ構造を持たない記録デバイスに比べて、ここに開示したRuCo−Ru−RuCoサンドイッチ構造は好ましくはSULからの雑音を低減する。本発明の実施の形態に係る常磁性または強磁性の中間層は、常磁性または強磁性の中間層を持たない記録デバイスに比べて好ましくはSULからの雑音を低減する。
【0049】
好ましくは、常磁性または強磁性の中間層を持たないデバイスに比べて、常磁性または強磁性の中間層は媒体記録デバイスのヘッド媒体間隔(HMS)、ヘッド・キーパ間隔(HKS)、ヘッドとSULとの間隔、またはこれらの組合せの磁気間隔を低減する。かかる有効磁気間隔の低減は、好ましくは約0.1オングストローム以上、約0.5オングストローム以上、約1オングストローム以上、約2オングストローム以上、約5オングストローム以上、約10オングストローム以上、約20オングストローム以上、約30オングストローム以上、または約50オングストローム以上である。好ましくは、磁性中間層を持たないデバイスに比べて、磁性中間層は媒体記録デバイスの面積密度、最大書込み磁界、磁界勾配、またはこれらの組合せを高くする。1つの実施の形態では、面積密度は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、または約30%以上高くなる。
【0050】
以下の開示はこれらの態様を実現する実施例を提供するが、可能な実施の形態の全てを示すものでもないし、制限するものでもない。
【実施例1】
【0051】
Ni−C合成膜すなわち磁気媒体オーバーコート(101)を、好ましくは記録デバイス内の媒体硬層を含む磁気記録層(103)の上に堆積させる。好ましくは、現在の標準であるダイアモンド状炭素(DLC)オーバーコートを磁気オーバーコート(101)で置換する。図4を参照のこと。好ましくは、この図に示す実施の形態のように、比較的高い透磁率を有する材料を含むオーバーコート(102)で磁気ライタヘッドの表面を覆う。その結果、常磁性または強磁性のオーバーコートを磁気媒体層および/または磁気ライタヘッドの上に持たない従来技術のデバイスに比べて、有効磁気HKSおよびHMSは低減するが物理的距離は変わらない。この実施の形態の磁気Ni−C膜は実質的にオーバーコート(101)の厚さを磁気的に低減する。HKS(106)およびHMS(107)は図5−7にも示す。
【0052】
常磁性または強磁性の媒体またはヘッドオーバーコートすなわち保護膜は、Ni−Fe−C、Ni−Co−C、Ni、Co、Feまたはこれらの組合せも含んでよい。膜あるいはオーバーコート内の炭素の割合は好ましくは約50−90%で、厚さは約0.5Å−50Åである。好ましくは、記録デバイスは更に中間層(104)およびSUL(105)を含む。
【0053】
図4−7の水平の矢印は、SUL(105)二重層AFC構造(図4、5、および6)内、および多層から成るAFC粒状中間層(108)(図5、6、および7)内の逆平行磁界を示す。逆平行磁界によりデバイスは平衡状態に、言い換えると雑音のない状態になる。図7の垂直矢印は磁束φの経路を示す。1つの実施の形態では、単極磁気変換器ヘッドの単極から出る磁束φは単極の下の領域内の硬磁気記録層(103)に入って通過し、軟磁性下地層(105)内に入って或る距離進んだ後、SUL(105)から出て、単極磁気変換器ヘッドの補助極の下の領域内の磁気記録層(103)内の少なくとも1つの垂直の硬磁気記録層を通過する。
【実施例2】
【0054】
図5に示す例は図4に示すものと同様であるが、従来技術の中間層(104)をRuCoおよびRuを含有する磁性中間層(108)で更に置換した構造を示す。この実施の形態では、Ruを含有する層(110)を好ましくは2つのRuCoを含有する層(111)で挟む。これらの3層は全て好ましくはナノ結晶膜である。RuCo合金内のCo組成は好ましくは約50%から100%である。RuCo膜の厚さは好ましくは約0.1Åから約20Åである。Ru膜の厚さは好ましくは約0.1Åから約20Åである。
【実施例3】
【0055】
図6は、RuCo(111)/Ru(110)/RuCo(111)の粒状サンドイッチ磁性中間層(108)を含む、図5に示すものと同様の構造を持つ別の実施の形態を示す。この実施の形態では、好ましくはNi−C合成膜を含む防食性の上部磁性層(109)を、磁気記録層の上部を置換するものとして、または磁気記録層の別個の頂部層として用いる。磁気記録層は、好ましくは少なくとも1つの媒体硬層も含む。
【0056】
現在の設計ではCoCrPt合金を含む連続の頂部層を有する磁性層を用いるが、この磁性層は防食性ではない。本発明の1つの実施の形態はNi−Cベースの合成膜を用いてCoCrPt合金を置換し、合成膜のMは約100emu/cc以上、好ましくは約400emu/cc以上、より好ましくは約500emu/cc以上、より好ましくは約800emu/cc以上、またはより好ましくは約1000emu/cc以上である。好ましくは炭素組成は約20%−80%である。1つの実施の形態では、炭素組成は層の厚さに従って勾配し、頂面の方が高いC%を有する。Fe、Ni、Co、Cを含む他の合成膜も提案する。かかる防食合成膜は、好ましくは磁気オーバーコート内に含まれ、またはより好ましくは媒体硬層の上に配置される別個の層を構成する。好ましくは防食合成膜により媒体硬層の頂部を置換する。より好ましくは、防食合成膜は本発明の実施の形態に係る媒体硬層と常磁性または強磁性のオーバーコートとの間に配置される。
【0057】
1つの実施の形態に係る記録媒体は、好ましくは磁気オーバーコート(101)と、図5および図6に示す磁性中間層(108)または図4に示す従来技術の非磁性中間層(104)のいずれかを含む。
【実施例4】
【0058】
図7に示す例では、磁性中間層(108)は、両側を挟む2つの粒状のRuCo膜(113)のどちらかの側に反強磁性結合(AFC)するRu層(114)を含む。このAFC結合の設計は、RuCoを含有する粒状「SMILE」(軟磁性中間層同等物)の単層を用いる現在の設計とはそれが多層構造であるために異なる。本発明のこの実施の形態に係るAFCの設計を用いると、RuCoの単層を用いる記録媒体に比べて、軟磁性中間層からの雑音が低減するので好ましい。RuCo層の飽和磁化(M)は、好ましくは約100−1000emu/ccである。
【0059】
2つのRuCo層(113)のそれぞれの厚さは好ましくは約100Åである。2つのRuCo層(113)の間のAFC Ru粒状層(114)の厚さは好ましくは約10Åである。RuCo/Ru/RuCoの層のスタックの上に好ましくは別個の粒状Ru層(112)がある。これは、磁気記録層(「M1」で示す)と磁性中間層とを分離して2層の間の交換結合により生じる問題を防ぐ。磁気記録層(この実施の形態では、厚さは約20nm、すなわち約200オングストロームである)は、好ましくは媒体硬層を含み、より好ましくは更に媒体軟層、常磁性または強磁性の媒体オーバーコート、防食層、潤滑層、またはこれらの組合せを含む。別個の粒状Ru層(112)の厚さは、好ましくは約0−100Å、より好ましくは約10−70Å、より好ましくは約60Åである。
【0060】
別の実施の形態では、RuCo/Ru/RuCoサンドイッチ層の下にかつSULの上に好ましくはTa/RuCrを含む連続のシード層があり、その厚さは約1−100Å、好ましくは約60Åである。別の実施の形態では、好ましくは非晶質FeCo合金を含むSULを、連続のAFC Ruを含む層によりほぼ中間で2つの別個の層に分離する。好ましくは2つのFeCo層の厚さはそれぞれ約200Åであり、その間のAFC Ru層の厚さは好ましくは約1−100オングストローム、約1−50オングストローム、約1−30オングストローム、約10−30オングストローム、またはより好ましくは約10オングストロームである。
図7に示すような本発明の実施の形態は、物理的には中間層の物理的厚さは保持するが磁気的にはその有効厚さを低減する。
【実施例5】
【0061】
中間層の磁気的厚さを更に低減するため、或る実施の形態では常磁性または強磁性の材料または分極材料を用いる。好ましくは、これらの材料はNiFe、Ni、Pd、Pt、Rh、およびこれらの組合せから成る群から選ぶ。かかる磁性材料あるいは分極材料は、更に好ましくはSULと磁性中間層との間のシード層内に含まれる。これは、少なくとも追加された分極材料(Pt、Rh、Pdなど)のために「軟磁気中間層同等物」(「SMILE」)を用いる現在の設計とは異なる。
【0062】
本発明の他の実施の形態および使用は、ここに開示した本発明の仕様と実際とを考慮すれば当業者に明らかである。ここに引用した全ての参照文献は、全ての刊行物や米国および外国の特許および特許出願を含めて、特定してまた全体的に援用する。本出願を通して用いた「含む」という用語は、より制限的な用語および句である「本質的に成る」および「成る」を含む。仕様および実施例は単なる例示であって、本発明の真の範囲および精神は特許請求の範囲に示されている。
【0063】
(関連技術の相互参照)
本出願は米国特許出願第12/324,629号、2008年11月26日出願に対する優先権を主張し、その全体をここに引用して援用する。
【符号の説明】
【0064】
101 磁気媒体オーバーコート
102 磁気ヘッドオーバーコート
103 磁気記録層
104 中間層
105 軟磁性下地層
106 ヘッド・キーパ間隔
107 ヘッド媒体間隔
108 磁性中間層
109 上部磁性層
110 Ru含有層
111 RuCo含有層
112、114 Ru粒状層
113 RuCo層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気データ記憶用媒体であって、
磁気記録層と、
前記磁気記録層の上に配置された別個の常磁性または強磁性の媒体オーバーコートと、
を含む磁気データ記憶用媒体。
【請求項2】
請求項1記載の磁気データ記憶用媒体であって、前記磁気記録層の下に堆積させた常磁性または強磁性の中間層を更に含み、前記常磁性または強磁性の中間層の材料の飽和磁化(M)が約100−1000emu/cc、約400emu/cc以上、約500emu/cc以上、800emu/cc以上、または約1000emu/cc以上であり、厚さが約1−1000オングストローム、約1−500オングストローム、約10−500オングストローム、約100−500オングストローム、約200−400オングストローム、または約250−350オングストロームである、媒体。
【請求項3】
請求項2記載の磁気データ記憶用媒体であって、前記常磁性または強磁性の中間層は粒状で、ルテニウム(Ru),鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、炭素(C)、結晶磁性材料、またはこれらの組合せを含む、媒体。
【請求項4】
請求項2記載の磁気データ記憶用媒体であって、前記常磁性または強磁性の中間層の下に堆積させた軟磁性下地層(SUL)を更に含み、前記常磁性または強磁性の中間層は、常磁性または強磁性の中間層を持たないデバイスに比べて前記SULからの雑音を低減する、媒体。
【請求項5】
請求項2記載の磁気データ記憶用媒体であって、常磁性または強磁性の媒体オーバーコートを持たず、常磁性または強磁性の中間層を持たず、またはこれらの組合せを持たないデバイスに比べて、ヘッド媒体間隔(HMS)またはヘッド・キーパ間隔(HKS)の有効磁気間隔が0.1から100オングストローム低減し、面積密度、最大書込み磁界、または磁界勾配が高く、また前記面積密度が約5%、約10%、約15%、約20%、または約25%以上高い、媒体。
【請求項6】
請求項1記載の磁気データ記憶用媒体であって、前記常磁性または強磁性の媒体オーバーコートの飽和磁化(M)が約100−1000emu/cc、約400emu/cc以上、約500emu/cc以上、約800emu/cc以上、または約1000emu/cc以上であり、また厚さが約0.1−100オングストローム、または約0.5−50オングストロームである、媒体。
【請求項7】
請求項1記載の磁気データ記憶用媒体であって、前記常磁性または強磁性の媒体オーバーコートは潤滑剤を含み、防食性であり、またはこれらの組合せである、媒体。
【請求項8】
請求項1記載の磁気データ記憶用媒体であって、前記常磁性または強磁性の媒体オーバーコートはFe、Co、Ni、C、Ni−Fe−C、Ni−Co−C、またはこれらの組合せを含む、媒体。
【請求項9】
請求項1記載の磁気データ記憶用媒体であって、常磁性または強磁性のヘッドオーバーコートをその表面上に堆積させた磁気ライタを更に含む、媒体。
【請求項10】
請求項9記載の磁気データ記憶用媒体であって、前記デバイスは、ヘッド媒体間隔(HMS)またはヘッド・キーパ間隔(HKS)の有効磁気間隔が0.1から100オングストローム小さく、また常磁性または強磁性のヘッドオーバーコートを持たず、常磁性または強磁性の媒体オーバーコートを持たず、またはこれらの組合せを持たないデバイスの面積密度に比べて面積密度が約10−25%高い、媒体。
【請求項11】
記録媒体を含む垂直磁気記録デバイスであって、前記記録媒体は、
磁気記録層と、
軟磁性下地層(SUL)と、
前記磁気記録層と前記SULとの間に位置する常磁性または強磁性の中間層と、
を含む垂直磁気記録デバイス。
【請求項12】
請求項11記載の垂直磁気記録デバイスであって、前記常磁性または強磁性の中間層は粒状で、Ru、Fe、Co、Ni、C、またはこれらの組合せを含む、デバイス。
【請求項13】
請求項11記載の垂直磁気記録デバイスであって、前記常磁性または強磁性の中間層は、RuCoを含む2つの粒状層の間に位置するRuを含むサンドイッチ構造の粒状層を含み、前記Ru層は前記RuCo層に反強磁性結合し、前記2つのRuCo層のそれぞれの厚さは約1−200オングストローム、また飽和磁化(M)は約100−1000emu/ccであり、またRu層の厚さは約0.1−100オングストロームまたは約10オングストロームである、デバイス。
【請求項14】
請求項11記載の垂直磁気記録デバイスであって、前記サンドイッチ構造の上にかつ前記磁気記録層の下に堆積させたRuを含む別個の粒状層を更に含み、またRuを含む前記別個の粒状層の厚さは約0−100オングストローム、10−70オングストローム、または約60オングストロームである、デバイス。
【請求項15】
請求項11記載の垂直磁気記録デバイスであって、前記デバイスは、ヘッド媒体間隔(HMS)またはヘッド・キーパ間隔(HKS)の有効磁気間隔が0.1から100オングストローム小さく、また常磁性または強磁性の中間層を持たないデバイスの面積密度に比べて面積密度が約10−25%高い、デバイス。
【請求項16】
磁気記録用デバイスを製作する方法であって、
基板の上に軟磁性下地層(SUL)を堆積させること、
前記SULの上に磁気記録層を堆積させること、また
前記磁気記録層の上に常磁性または強磁性の媒体オーバーコートを堆積させること、前記SULと前記磁気記録層との間に常磁性または強磁性の中間層を堆積させること、磁気ライタの表面の上に常磁性または強磁性のヘッドオーバーコートを堆積させること、またはこれらの組合せ、
を含む磁気記録用デバイスを製作する方法。
【請求項17】
請求項16記載の磁気記録用デバイスを製作する方法であって、前記常磁性または強磁性の中間層を堆積させることは、
RuCoを含みかつ約1−200オングストロームの厚さを有する第1の粒状層を前記SULの上に堆積させること、
Ruを含みかつ約0.1−100オングストロームの厚さを有する粒状層をRuCoを含む前記第1の粒状層の上に堆積させること、
RuCoを含みかつ約1−200オングストロームの厚さを有する第2の粒状層を、Ruを含む前記粒状層の上に堆積させること、
を含み、
Ruを含む前記粒状層はRuCoを含む前記第1および第2の粒状層に反強磁性結合する、方法。
【請求項18】
請求項16記載の磁気記録用デバイスを製作する方法であって、前記常磁性または強磁性の媒体オーバーコート、前記常磁性または強磁性の中間層、前記常磁性または強磁性のヘッドオーバーコート、またはこれらの組合せは、常磁性または強磁性の媒体オーバーコート、常磁性または強磁性の中間層、またはこれらの組合せを持たないデバイスに比べて、前記デバイスのヘッド媒体間隔(HMS)またはヘッド・キーパ間隔(HKS)の有効磁気間隔を0.1から100オングストローム低減し、また前記デバイスの面積密度を約10−25%高める、方法。
【請求項19】
請求項16記載の磁気記録用デバイスを製作する方法であって、前記常磁性または強磁性の媒体オーバーコートは前記常磁性または強磁性の媒体オーバーコートの垂直厚さ方向に濃度が傾斜する炭素を含み、前記炭素濃度が前記常磁性または強磁性の媒体オーバーコートの上面に向かう方が前記磁気記録層の表面に向かう方より高い、方法。
【請求項20】
請求項16記載の方法により製作された磁気記録デバイス。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−129167(P2010−129167A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260566(P2009−260566)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(500373758)シーゲイト テクノロジー エルエルシー (278)
【Fターム(参考)】