説明

磁気回転子及び磁気回転子を有する回転ポンプ

【課題】流体3を搬送するための回転ポンプ2の固定子5内のポンプ・ハウジング4内で磁気的に接触しないやり方で駆動及び浮上させることができ、フッ素化炭化水素を含む外部被包6によって被包される、回転ポンプ2のための磁気回転子1を提供する。
【解決手段】本発明によれば、回転子1は、被包6内で金属ジャケット7によって覆われる永久磁石8を備え、金属ジャケット7は、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム、金、プラチナ、パラジウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、及びロジウムで構成される要素の群のうちの少なくとも1つの金属を含む。本発明はさらに、プラント構成要素に関し、詳細には、磁気回転子1を有する回転ポンプ2に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ポンプのための磁気回転子、並びにプラント構成要素に関するものであり、詳細には、独立請求項1及び独立請求項7の前提部に記載された磁気回転子を有する回転ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気浮上回転ポンプは、特定の適用例のために確立されてきており、適用例では、羽根車が好ましくは完全に閉じたポンプ・ハウジングの内部で磁気力によって浮遊するように浮上させられ、且つポンプ・ハウジングの外側に配置されることが多い固定子によって生み出される回転磁場によって駆動される。そのようなポンプは、たとえば、血液など生体液体又は超純水など非常に純粋な液体を搬送するためなど、搬送される流体が汚染されてはならない応用例にとって特に有利である。
【0003】
さらに、そのような回転ポンプは、機械軸受けを短時間で破壊するおそれがある侵食性の液体を搬送するのに適している。したがってそのような回転ポンプは、特に好ましくは、たとえば半導体ウエハの表面を処理する際に機械的侵食性の流体を搬送するためなど、半導体業界において用いられる。ここで重要な実例として、化学機械研磨法(CMP、化学機械平坦化)を挙げることができる。そのような処理では、典型的には非常に微細な固体粒子及び液体の一般にスラリーと呼ばれる懸濁液が、回転するウエハに塗布され、非常に微細な半導体構造の研磨又はラッピングに用いられる。別の実例は、ウエハにフォトレジストを塗布すること、又は、付着力すなわちたとえばファン・デル・ワールス力による書込み/読取りヘッドの付着を防ぐために、コンピュータ・ハード・ディスクの表面を粗化することである。
【0004】
磁気浮上回転ポンプはまた、好ましくは実際、他の侵食性の高い物質にも用いられる。したがって、たとえば半導体製造において、たとえば150℃から200℃又はそれ以上など常温を超える温度で提供されなければならないことも多い、硫酸(HSO)など非常に侵食性の高い化学薬品を給送するために用いられる。別の典型的な非常に侵食性の高い酸は、特定の応用例では160℃又はそれ以上に上る温度で確実に給送されなければならない、リン酸(HPO)である。ただし、塩酸(HCl)、フッ化水素酸(HF)、硝酸(HNO)、酢酸(CHCOOH)、又はフッ化アンモニウム(NH)も同様である。これに関して、硫酸及びオゾン(HSOとO)、硫酸と過酸化水素(HSOとH)、又はたとえば硫酸とフッ化水素酸及び硝酸(HSOとHF及びHNO)など、混合物が用いられることも多い。
【0005】
これに関して、特定のフッ素化炭化水素は、化学的侵食性物質、特に上記で挙げた酸に対して、ある程度の耐性を示すことが知られている。したがって、回転子の内部に配置される永久磁石を、侵食性の酸又は酸混合物による損傷の影響から可能な限り保護するために、たとえば、軸受けなしのポンプの回転子にフッ素化炭化水素の被包を施すことも同様に知られている。
【0006】
ただし、フッ素化炭化水素は、化学薬品の気体成分に対するいかなる十分な障壁も形成しないことが非常に多い。すなわち、フッ素化炭化水素製の被包はたとえば、給送される硫酸及びオゾン(HSOとO)の混合物などにかなりの量含まれる可能性があるオゾン(O)に対して、非常に限定された障壁効果しかもたない。
【0007】
たとえば、フッ素化炭化水素の被包を通り回転子内部の永久磁石へとオゾンが十分な量拡散する場合、回転子内の永久磁石に非常に重大な損傷をもたらす可能性があり、永久磁石は、たとえば完全に膨張し、最悪の場合回転子を実際に破裂させるおそれがある。
【0008】
とりわけ、一般に知られているように拡散過程は常温より高い温度でますます大幅に加速されるため、これらの悪影響が常温より高い温度で大幅に増幅されることは自明である。
【0009】
反対に、より良好な拡散障壁を形成する物質は、とりわけ常温より高くない温度で、侵食性が極めて高い酸に対する耐性をもたないことが非常に多い。したがって、フッ素化炭化水素以外の材料で製作される回転子被包を用いようとする場合、これらの被包は、侵食性の酸によって非常に急速に侵襲され、被包の材料が、酸によって部分的に溶解され又は除去されるおそれがあり、次いで給送される流体中に不純物として移動し、処理の別の時点で損傷効果を生じるおそれがある。
【0010】
被包が金属を含有する場合、たとえば、金属イオンが、酸によって溶液中に運ばれるおそれがあり、且つ給送される流体の成分として後の処理に影響を及ぼすおそれがある。このことは、溶解させられた金属イオンがたとえば、流体中の濃度が非常に低いとしても、処理される半導体のドーピングを制御されないやり方で変化させるおそれがあり、最悪の場合半導体製品を完全に使用不能にするおそれがあるので、半導体業界における応用例において、ほとんど壊滅的な結果をもたらすおそれがある。
【0011】
当然、ポンプ・ハウジングに関する類似の問題も生じる。たとえば、ポンプ・ハウジングの内部表面がフッ素化炭化水素の層によって保護される場合、気体成分が依然拡散し、それにより時間が経つにつれ固定子を破壊するおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって本発明の目的は、回転子を交換しなければならない頻度がより低くなるように、回転子の内部に設けられる永久磁石が液体及び気体物質又は給送される流体にイオンの形で溶解された物質による損傷の影響から保護される、回転ポンプのための磁気回転子を提供することである。さらに、回転ポンプ、特に一般的なモータ・ポンプは、本発明によって設けられるべきであり、本発明による回転子と同様、従来技術から知られる上述の損傷の影響から十分に保護される。これに関して、高温で使用するためにも、特に気体成分を有する侵食性の酸からの十分な保護が設けられるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的を満たす本発明の主題は、独立請求項1及び独立請求項7の特徴部分によって特徴付けられる。
【0014】
従属請求項は、本発明の特に有利な実施例に関するものである。
【0015】
すなわち本発明は、回転ポンプのための磁気回転子に関するものであり、この回転子は、流体を搬送するための回転ポンプの固定子内のポンプ・ハウジング内で、磁気的に接触しないやり方で駆動及び浮上させることができ、フッ素化炭化水素を含む外部被包によって被包される。本発明によれば、回転子は、被包内で金属ジャケットにより覆われた永久磁石を備え、金属ジャケットは、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム、金、プラチナ、パラジウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、及びロジウムで構成される要素の群のうちの少なくとも1つの金属を含む。
【0016】
こうして、本発明の回転子の永久磁石は、二重に被包される。内部金属ジャケットは、回転子の永久磁石をほぼ完全に取り囲み、永久磁石は、特に好ましくは、金属ジャケットによって気密となるように取り囲まれる。次いで金属ジャケットは、フッ素化炭化水素製の外部被包内に配置される。これに関して、金属ジャケットは、好ましくは被包によって直接完全に包むことができ、或いは、応用例によっては、たとえば回転子の幾何学形状、質量、又は他のパラメータを特定の需要に一致させるために、金属ジャケットと外部被包との間にさらなる材料を設けることができる。したがって、永久磁石もまた、金属ジャケットによって直接取り囲むことができ、或いは、たとえば金属ジャケット及び/又は永久磁石の様々な熱膨張を補償するための熱補償手段として働くさらなる材料を、金属ジャケットと永久磁石との間に配置することができる。この目的のために、金属ジャケットと永久磁石との間に、間隙の形の対応する間隔を、当然且つ単純に設けることができる。
【0017】
永久磁石は、金属ジャケット及び外部被包によって二重に被包されるので、永久磁石はまた、たとえば、硫酸(HSO)など侵食性の液体から、たとえば150℃から200℃の常温より高い温度又はそれ以上の温度から、同時に保護される。それらは、フッ素化炭化水素の外部被包によって、永久磁石から遮蔽される。ただし、侵食性の液体化学薬品内にも同様に存在する可能性があるオゾンなど、存在するいかなる気体成分もまた、効果的に遮蔽される。外部被包によって阻止されず又は不十分にしか阻止されない、外部被包を通り回転子の内部内へと拡散する存在するあらゆる気体成分又は酸のイオン成分をも遮蔽するということは、それらが、永久磁石を取り囲む金属ジャケットによって少なくとも阻止されることを意味する。
【0018】
これに関して、本発明の回転子の永久磁石を、特定の応用例において160°Cに上る温度又はそれより高い温度であっても、確実に給送されなければならないリン酸(HPO)など非常に侵食性の高い酸から、また塩酸(HCL)、フッ化水素酸(HF)、硝酸(HNO)、酢酸(CHCOOH)、又はフッ化アンモニウム(NH)から、且つ他の化学的侵食性の物質からも、確実に遮蔽することさえできることが見出されている。これに関して、たとえば硫酸及びオゾン(HSOとO)、硫酸と過酸化水素(HSOとH)、又はたとえば硫酸とフッ化水素酸及び硝酸(HSOとHF及びHNO)の混合物など、或いは他の化学的に侵食性の高い混合物も、効果的に遮蔽することができる。
【0019】
本発明によってフッ素化炭化水素の外部層と、その下にあるタンタル、ニオビウム、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム、金、プラチナ、パラジウム、オスミウム、インジウム、ルテニウム、及びロジウムで構成される要素の群からの金属の第2の層とで被覆される、回転子の耐用年数又はプラント部品の耐用年数は、本発明によって決定的に延長される。
【0020】
好ましい実施例では、磁気回転子の金属ジャケットは、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム、金、プラチナ、パラジウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、及びロジウムで構成される要素の群のうちの、少なくとも1つの金属で構成される。実用のために特に好ましい実施例では、金属ジャケットは、実質的にタンタルのみで構成される。
【0021】
フッ素化エチレン・プロピレン(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン(ETFE)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシル・アルカン(PFA)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)又は様々なフッ素化炭化水素の組み合わせが、外部被包のためのフッ素化炭化水素としてみなすのに特に好ましい。これに関して、本発明による回転子の被包は、ポリ四フッ化エチレン、パーフルオロアルコキシル・アルカン、エチレン・クロロトリフルオロエチレン、又はポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも1つの材料のみで構成されることが好ましい。
【0022】
実際は、磁気回転子の永久磁石は一般に、動作状態において永久磁石が残りの回転子本体に対して基本的に動くことができないように、形状が適合され且つ/又は力を伝達するやり方で金属ジャケットに連結される。外部磁気駆動力は回転子の永久磁石にて自然に係合し、それにより流体を給送するための回転子が回転させられるので、これは回転子の安全な駆動にとって決定的である。金属ジャケットも同様に、特に好ましくは、形状が適合され且つ/又は力を伝達するやり方で、被包に、具体的にはプラスチック・ジャケットに連結される。
【0023】
これに関して、永久磁石を損傷せずに金属磁石を溶接することができるように、永久磁石と金属ジャケットとの間に切抜き部が特に有利に設けられるが、これは図面を参照しながら以下でより一層詳細に説明される。
【0024】
最後に、実際は上述したように、たとえばより高い温度にて金属ジャケットと永久磁石との間に望ましくない機械的歪みが誘導されないよう、金属ジャケット及び/又は永久磁石の様々な熱膨張を補償するために、熱補償手段が必要に応じて設けられる。熱補償手段は、間隙以外は、形状が適合され且つ/又は力を伝達する連結が金属ジャケットと永久磁石との間にさらに十分に保証されるように、永久磁石と金属ジャケットとの間の適当な狭さに選択された単純な間隙であることが非常に多い。
【0025】
本発明は、流体をポンプ・ハウジング内へと供給するための入口と、流体をポンプ・ハウジングから外に導くための出口とを有する、ポンプ・ハウジングを備え、磁気回転子が、ポンプ・ハウジング内の固定子内で磁気的に接触しないやり方で浮上させられ、且つ、流体を搬送するための駆動部と動作可能に連絡する。これに関して、回転子は、フッ素化炭化水素を含む外部被包によって被包される。本発明によれば、回転子は、被包内で金属ジャケットにより覆われた永久磁石を備え、金属ジャケットは、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム、金、プラチナ、パラジウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、及びロジウムで構成される要素の群のうちの少なくとも1つの金属を含む。
【0026】
給送される侵食性流体から固定子を保護するために、ポンプ・ハウジングのハウジング壁部の内部表面にフッ素化炭化水素製のプラスチック障壁を設けることができ、たとえばカップ又は円筒の形の金属障壁が、給送される侵食性流体から、特にまた既に述べた気体成分を有する酸混合物からも固定子が理想的に保護されるように、好ましくはハウジング壁部の内部表面と固定子との間に設けられ、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム、金、プラチナ、パラジウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、及びロジウムで構成される要素の群のうちの少なくとも1つの金属で構成される。
【0027】
回転子の金属ジャケット、及び/又は、特にポンプ・ハウジングの固定子に対する金属障壁は、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム、金、プラチナ、パラジウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、及びロジウムで構成される要素の群のうちの、少なくとも1つの金属で構成される。
【0028】
これに関して、フッ素化炭化水素は、フッ素化エチレン・プロピレン(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン(ETFE)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシル・アルカン(PFA)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)を特に有利に含み、或いは、固定子に対する金属障壁の内部表面における被包及び/又はプラスチック障壁は、ポリ四フッ化エチレン、パーフルオロアルコキシル・アルカン、エチレン・クロロトリフルオロエチレン、又はポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも1つの材料のみで実質的に構成される。
【0029】
本発明による回転ポンプの回転子は当然、上記で既に説明したように設計されるので、本発明による回転ポンプの回転子の詳細な説明を反復することはここでは必要ないことを理解されたい。
【0030】
有利には、以前からそれ自体知られる軸受けなしのモータは、一般にいかなる所望の実施例においても、本発明の回転ポンプのための駆動部とみなすことができ、固定子は、特に好ましい実施例では、軸受け固定子及び駆動固定子として同時に設計され、回転子の軸方向高さは、好ましくは回転子の直径の半分より小さいかそれと同じであり、したがって回転子は、それ自体知られるいわゆるディスク形回転子である。
【0031】
本発明を、以下で図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による回転子の実施例を示す図である。
【図2】本発明による回転ポンプを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明による磁気回転子1の断面を示す概略図である。
【0034】
図2を参照しながら特定の実施例において以下でさらに議論されるものなど回転ポンプ2のための、図1による磁気回転子1は、それ自体知られているやり方で流体3を搬送するための回転ポンプ2の固定子5内のポンプ・ハウジング4内で、磁気的に接触しないように、駆動及び浮上させられることができる。回転子1は、フッ素化炭化水素を含む外部被包6によって被包され、被包6のフッ素化炭化水素は、たとえばポリ四フッ化エチレン、パーフルオロアルコキシル・アルカン、エチレン・クロロトリフルオロエチレン、又はポリフッ化ビニリデンを含む。図1の特定の実例では、被包6は、上述のフッ素化炭化水素のうちの少なくとも1つのみで構成される。本発明によれば、回転子1は、被包6内で金属ジャケット7により覆われた永久磁石8を備え、金属ジャケット7は、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム、金、プラチナ、パラジウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、及びロジウムで構成される要素の群のうちの少なくとも1つの金属を含む。この特定の実施例では、金属ジャケットは、不純物以外はタンタルのみから構成される。
【0035】
図1から明らかにわかるように、永久磁石8は、金属ジャケット7に形状が適合するように連結され、回転子1の製造には高すぎる高温によって永久磁石8を損傷することなく金属ジャケット7を溶接することができるように、永久磁石8と金属ジャケット7との間に面取り部の形の凹部9が設けられる。被包を通って拡散される気体成分が永久磁石8へと入り込むことは、動作状態では阻止され、金属ジャケット7は好ましくは、永久磁石8の気密被覆を形成し、この被覆は、実際は、永久磁石8をまず金属ジャケット7内に配置し、次いで金属ジャケット7を気密となるように溶接又ははんだ付けすることで保証されることが多い。
【0036】
ここでは永久磁石8と金属ジャケット7との間の単純に適当に狭い間隙である、金属ジャケット7及び永久磁石8のそれぞれ異なる熱膨張の補償に役立つ熱補償手段10も、同様に図1においてはっきりと認識することができる。
【0037】
最後に図2は、本発明による回転子1を備える、それ自体は公知の回転ポンプ2の断面を、概略的に示す。回転ポンプ2は、ポンプ・ハウジング4を備え、ポンプ・ハウジング4は、流体3をポンプ・ハウジング4内へと供給するための入口11を有し、且つ流体3をポンプ・ハウジング4から外へと導くための出口12を有する。これに関して、流体3はたとえば、オゾンを含有する硫酸など、一部の気体を有する化学的侵食性の酸である。流体3を搬送するために、本発明による磁気回転子1は、ポンプ・ハウジング4内の固定子5内でそれ自体知られるやり方で磁気的に接触せずに浮上させられ、回転子1は、電気コイル131及び具体的には薄鋼板によって形成される固定子5を主要要素として備える駆動部13とともに、同様に知られたやり方で回転子1の永久磁石8と磁気動作可能に連結される。駆動部は、この特定の実施例ではそれ自体知られたいわゆる軸受けなしのモータであり、この中で固定子5は、軸受け固定子及び駆動固定子として同時に設計される。図2の特定の実例では、回転子1は、いわゆるディスク形回転子であり、回転子1の軸方向高さは、好ましくは、回転子1の直径の半分よりも小さいか、それと同じである。
【0038】
これに関して、本発明は、ディスク形回転子に限定されず、原則的に、所望の磁気浮上させられるあらゆる回転機械の、すべての回転子のタイプにおいて用いることができることが理解される。
【0039】
本発明によれば、回転子1は、フッ素化炭化水素製の外部被包6によって被包され、金属ジャケット7により覆われた永久磁石8が、被包6内に設けられる。これに関して、金属ジャケット7は、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム、金、プラチナ、パラジウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、及びロジウムで構成される要素の群のうちの少なくとも1つの金属を含む。
【0040】
フッ素化炭化水素で製作されポンプ・ハウジング4のハウジング壁部41の内部表面411上に設けられるプラスチックの障壁は、わかりやすくするためにより詳細には示さないが、ハウジング壁部41の内部表面411と固定子5との間に、カップ400の形の金属障壁が設けられ、前記カップは、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム、金、プラチナ、パラジウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム及びロジウムで構成される要素の群の金属を含む。
【0041】
図1において既に詳細に示したように、永久磁石8は、形が適合され且つ/又は力を伝達するように金属ジャケット7に連結され、金属ジャケット7及び永久磁石8のそれぞれ異なる熱膨張を補償するために、金属ジャケット7と永久磁石8の間の狭い間隙の形である熱補償手段10が設けられる。
【0042】
本発明の上記実施例はすべて、実例として又は実例によってのみ理解されるべきであり、本発明は特に、それだけではないが、記載された実施例のすべての適当な組み合わせを含むことを理解されたい。
【符号の説明】
【0043】
1 磁気回転子
2 回転ポンプ
3 流体
4 ポンプ・ハウジング
5 固定子
6 外部被包
7 金属ジャケット
8 永久磁石
9 凹部
10 熱補償手段
11 入口
12 出口
13 駆動部
41 ハウジング壁部
131 電気コイル
400 カップ
411 内部表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ポンプ(2)のための磁気回転子であって、
前記磁気回転子は、流体(3)を搬送するための前記回転ポンプ(2)の固定子(5)内のポンプ・ハウジング(4)内で磁気的に接触しないように駆動及び浮上させることができ、
前記磁気回転子が、フッ素化炭化水素を含む外部被包(6)によって被包され、且つ、前記被包(6)内の金属ジャケット(7)によって覆われる永久磁石(8)を備え、
前記金属ジャケット(7)が、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム、金、プラチナ、パラジウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、及びロジウムで構成される要素の群のうちの少なくとも1つの金属を含むことを特徴とする磁気回転子。
【請求項2】
前記金属ジャケット(7)が、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム、金、プラチナ、パラジウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、及びロジウムで構成される要素の前記群のうちの少なくとも1つの金属で構成される、請求項1に記載の磁気回転子。
【請求項3】
前記被包(6)の前記フッ素化炭化水素が、フッ素化エチレン・プロピレン、エチレン・四フッ化エチレン、ポリ四フッ化エチレン、パーフルオロアルコキシル・アルカン、エチレン・クロロトリフルオロエチレン、又はポリビニリデンを含み、或いは、前記被包(6)が、好ましくはポリ四フッ化エチレン、パーフルオロアルコキシル・アルカン、エチレン・クロロトリフルオロエチレン又はポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも1つの材料で構成される、請求項1又は請求項2に記載の磁気回転子。
【請求項4】
前記永久磁石(8)が、形状が適合され且つ/又は力を伝達するように前記金属ジャケット(7)に連結される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の磁気回転子。
【請求項5】
前記金属ジャケット(7)が、形状が適合され且つ/又は力を伝達するように前記被包(6)に連結される、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の磁気回転子。
【請求項6】
前記永久磁石(8)を損傷することなく前記金属ジャケット(7)を溶接することができるように、前記永久磁石(8)と前記金属ジャケット(7)との間に切抜き部(9)が設けられる、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の磁気回転子。
【請求項7】
前記金属ジャケット(7)及び/又は前記永久磁石(8)のそれぞれ異なる熱膨張を補償するために、熱補償手段(10)が設けられる、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の磁気回転子。
【請求項8】
流体(3)をポンプ・ハウジング(4)内へと供給するための入口(11)と、前記流体(3)を前記ポンプ・ハウジング(4)から外へと導くための出口(12)とを有する、前記ポンプ・ハウジング(4)を備える回転ポンプであって、
磁気回転子(1)が、前記ポンプ・ハウジング(4)内の固定子(5)内で磁気的に接触せずに浮上させられ、前記流体(3)を搬送するための駆動部(13)と動作可能に連結させられ、
前記磁気回転子(1)が、フッ素化炭化水素を含む外部被包(6)によって被包され、且つ前記被包(6)内で金属ジャケット(7)によって覆われる永久磁石(8)を含み、
前記金属ジャケット(7)が、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム、金、プラチナ、パラジウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、及びロジウムで構成される要素の群のうちの少なくとも1つの金属を含む、回転ポンプ。
【請求項9】
前記ポンプ・ハウジング(4)のハウジング壁部(41)の内部表面(411)に、前記フッ素化炭化水素製のプラスチック障壁が設けられ、且つ、金属障壁が、好ましくは前記ハウジング壁部(41)の前記内部表面(411)と前記固定子(5)との間に設けられ、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム、金、プラチナ、パラジウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、及びロジウムで構成される要素の前記群のうちの少なくとも1つの金属を含む、請求項8に記載の回転ポンプ。
【請求項10】
前記回転子(1)の前記金属ジャケット(7)、及び/又は前記金属障壁が、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウム、金、プラチナ、パラジウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、及びロジウムで構成される要素の前記群のうちの少なくとも1つの金属で構成される、請求項8又は請求項9に記載の回転ポンプ。
【請求項11】
前記フッ素化炭化水素が、フッ素化エチレン・プロピレン、エチレン・四フッ化エチレン、ポリ四フッ化エチレン、パーフルオロアルコキシル・アルカン、エチレン・クロロトリフルオロエチレン、又はポリフッ化ビニリデンを含み、或いは、前記被包(6)及び/又は前記内部表面(411)における前記プラスチック障壁が、好ましくは、ポリ四フッ化エチレン、パーフルオロアルコキシル・アルカン、エチレン・クロロトリフルオロエチレン、又はポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも1つの材料で構成される、請求項8から請求項10までのいずれか一項に記載の回転ポンプ。
【請求項12】
前記永久磁石(8)が、形状が適合され且つ/又は力を伝達するように前記金属ジャケット(7)に連結され、且つ/又は前記金属ジャケット(7)が、形状が適合され且つ/又は力を伝達するように前記被包(6)に連結される、請求項8から請求項11までのいずれか一項に記載の回転ポンプ。
【請求項13】
前記永久磁石(8)を損傷せずに前記ジャケット(7)を溶接することができるように、前記永久磁石(8)と前記金属ジャケット(7)の間に切抜き部(9)が設けられる、請求項8から請求項12までのいずれか一項に記載の回転ポンプ。
【請求項14】
前記金属ジャケット(7)及び/又は前記永久磁石(8)のそれぞれ異なる熱膨張を補償するために、熱補償手段(10)が設けられる、請求項8から請求項13までのいずれか一項に記載の回転ポンプ。
【請求項15】
前記駆動部が、軸受けなしのモータであり、前記固定子(5)が、好ましくは軸受け固定子及び駆動固定子として設計され、前記回転子(1)の軸方向高さが、好ましくは前記回転子(1)の直径の半分より小さいかそれと等しくされている、請求項8から請求項14までのいずれか一項に記載の回転ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−24239(P2013−24239A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153458(P2012−153458)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【出願人】(511081820)レヴィトロニクス ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】