磁気記録媒体とその製造方法、および、磁気記録媒体の記録再生方法
【課題】高密度記録した場合には、微小な記録磁区を安定して形成することが難しいという課題を有していた。
【解決手段】ディスク基板上に、少なくとも記録層を備え、前記記録層が磁気グレインごとに分離し、磁気的に孤立した記録ドメインを形成する構成、あるいは、相互に孤立した磁気グレインの集合体により、記録膜中に微細な構造を形成し、記録膜の比抵抗が大きい特性を有する構成の光磁気記録媒体とその製造方法。
【解決手段】ディスク基板上に、少なくとも記録層を備え、前記記録層が磁気グレインごとに分離し、磁気的に孤立した記録ドメインを形成する構成、あるいは、相互に孤立した磁気グレインの集合体により、記録膜中に微細な構造を形成し、記録膜の比抵抗が大きい特性を有する構成の光磁気記録媒体とその製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は書き換えが可能な磁気記録媒体、あるいは、記録媒体に光を入射して温度上昇させながら信号を記録再生する磁気記録媒体において、特に高密度記録を実現できる磁気記録媒体とその製造方法、および、その記録再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光磁気記録媒体や相変化記録媒体などの光記録媒体は大容量・高密度記録が可能な可搬型記録媒体であり、近年のマルチメディア化に伴うコンピュータの大容量ファイルや動画を記録する媒体として需要が急増しつつある。
【0003】
光記録媒体は一般にプラスチック等の透明な円盤状の基板に記録層を含む多層膜を形成した構成を有する。この光記録媒体に、レーザを照射して、フォーカスサーボ、および、案内溝、あるいは、プリピットを用いて、トラッキングサーボをかけながら、情報の記録、消去を行い、レーザの反射光を用いて信号を再生する。
【0004】
光磁気記録媒体は、従来、固定磁界を加えて消去した後、反対方向の固定磁界を加えて記録するいわゆる光変調記録が中心であったが、近年、レーザを照射しながら、磁界を記録パターンに従って変調させる磁界変調方式が、1回転で記録(ダイレクトオーバーライト)可能であり、しかも高記録密度であっても正確に記録できる方式として注目を浴びている。また、相変化記録媒体は、光変調記録によりダイレクトオーバーライト可能で、CDやDVDと同じ光学系で再生可能であるために注目を浴びている。
【0005】
光記録媒体の記録密度の限界は光源のレーザ波長(λ)によって決まる回折限界(〜λ/2NA:NAは対物レンズの開口数)に依存している。また最近は、対物レンズを2枚組にすることで0.8以上のNAをもったシステムが提案されて、開発が活発に行われている。記録再生のためのレーザは従来、基板を通して記録膜に照射されていたが、NAが大きくなるほど光が基板を通過した時の基板の傾きなどによる収差が大きくなるため、基板厚みを薄くする必要がある。
【0006】
また、磁気記録媒体では、媒体の改良と、GMRヘッド等の実用化により、光記録媒体よりも高記録密度を実現しているが、さらに高密度の磁気記録媒体を実現するためには、記録膜の高密度化技術、および、ディスク−ヘッドのインターフェース技術の改良が必須である。
【0007】
また、光磁気記録媒体では、例えば、特許文献1には、磁壁移動によって、見かけ上の再生信号を増大させる技術が考案されているが、記録膜に高密度化に記録するという点では課題があった。
【0008】
さらに、磁気記録の場合には、記録ドメインの微細化、高密度化により、記録磁区の熱安定性の問題が重要な課題となっており、記録磁区の安定性と、情報蓄積メディアとしての信頼性を確保することが必要であった。
【特許文献1】特開平6−290496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の磁気記録媒体では、高密度化した場合には、記録磁区の熱安定性の課題があるため、さらに磁気異方性を増大させる必要があった。
【0010】
また、FePt系の磁性材料は、磁気異方性は大きい特性を有するが、結晶配勾性を揃えるために、高温でのアニール処理が必要であった。
【0011】
また、希土類金属―遷移金属系の材料は、アモルファス材料であるために、磁壁移動により、微小な記録マークの磁区が不安定になり消滅するという課題があった。
【0012】
さらに、いずれの方法でも、記録マークの微細化による高密度記録による安定性と、情報蓄積メディアとしての、十分な長期信頼性を確保する事が難しい、という課題がある。
【0013】
本発明の目的は、磁気記録再生を行なう記録媒体において、磁気グレインごとに分離し、磁気的に孤立した構成、あるいは、記録膜中に微細な構造を形成し、記録膜の抵抗率が大きい特性を有する構成により、高密度で記録した場合にも、記録情報の安定性を確保し、信号特性に優れた磁気記録媒体を提供することである。
【0014】
また、光を照射して記録膜の温度を上昇させながら磁気記録再生する記録媒体においても、微細な記録マークの安定性を高め、信号特性に優れた磁気記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上述のような現状に鑑み、鋭意検討を重ね、以下のような本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明の磁気記録媒体は、ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に磁気異方性を有する記録層を備えた記録膜により構成された磁気記録媒体であって、少なくとも前記記録層は、相互に孤立した磁気グレインの集合体であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0017】
あるいは、ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に磁気異方性を有する記録層を備えた記録膜により構成された磁気記録媒体であって、前記記録層中の膜面内方向に、磁化の大きさが分布した構成を有することを特徴とする磁気記録媒体である。
【0018】
さらに、前記記録層中の膜面内方向に、保磁力の大きさが分布した構成を有することを特徴とする磁気記録媒体である。
【0019】
あるいは、前記記録層の膜面面内方向に、垂直磁気異方性が分布していることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0020】
また、前記記録層の膜面面内方向での磁壁エネルギー密度、あるいは、磁壁幅が分布していることを特徴とする磁気記録媒体、あるいは、前記記録層の膜面面内方向での磁壁幅が膜厚よりも小さいことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0021】
また、本発明の磁気記録媒体は、前記記録層の膜面面内方向での抵抗率が500μΩcm以上であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0022】
あるいは、前記記録膜が、コラム状の断面構造により分離されていることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0023】
さらに、前記記録層がコラム構造形状の構造を形成し、前記コラム構造の構造単位が互いに孤立した構成を有することを特徴とする磁気記録媒体である。
【0024】
また、前記記録層の前記磁気グレインの幅が、50nm以下であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0025】
さらに、前記記録膜が、下地層の形状によって分離され、相互に孤立した磁気グレイン構造を有することを特徴とする磁気記録媒体である。
【0026】
あるいは、前記記録膜の孤立した境界に、気体分子が取込まれた構成であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0027】
さらに、前記取り込まれた気体分子としては、H、N、O、He、Ne、Ar、Kr、Xeが含まれることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0028】
また、前記記録膜は、希土類金属を含有することを特徴とする磁気記録媒体であり、前記希土類金属は、Tb、Gd、Dyの少なくとも一つを含むことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0029】
さらに、前記記録層の膜厚は、10nm以上400nm以下であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0030】
そして、前記記録層に磁気的に結合した再生層を含む多層膜に構成された記録膜であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0031】
あるいは、少なくとも、記録層、再生層を含む多層膜に構成された記録膜であって、前記記録膜を構成する各層の間で、磁壁エネルギー密度が異なることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0032】
また、前記記録膜が、さらに中間層を含み、前記中間層の磁壁エネルギー密度が、前記再生層の磁壁エネルギー密度より大きいことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0033】
さらに、前記再生層の、膜面垂直磁気異方性が、中間層の磁気異方性よりも大きいことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0034】
また、前記再生層の磁壁エネルギーは、膜面面内方向と、膜面垂直方向で異なることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0035】
あるいは、前記再生層は、磁壁抗磁力が小さいことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0036】
また、中間層の膜面面内方向での磁壁幅が小さいことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0037】
さらに、中間層は、深さ方向での磁壁幅が膜厚よりも小さいことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0038】
また、前記ディスク基板表面に、エンボス加工したことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0039】
さらに、前記記録層形成前の下地層表面を、凹凸加工したことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0040】
また、本発明の磁気記録媒体の製造方法は、ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に磁気異方性を有する記録層を形成する磁気記録媒体の製造装置において、磁気グレインの相互に孤立して膜成長させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。
【0041】
あるいは、ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に磁気異方性を有する記録層を形成する磁気記録媒体の製造装置において、表面粗さを0.5nm以上である下地層の上に、前記記録層のグレインを相互に分離して膜成長させたことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。
【0042】
さらに、本発明の磁気記録媒体の記録再生方法は、前記磁気記録媒体に、レーザ光スポットを照射することにより、前記記録層を昇温させながらディスク上の情報信号を記録再生することを特徴とする磁気記録媒体の記録再生方法である。
【0043】
あるいは、前記磁気記録媒体上の情報信号を、磁気ヘッドを用いて記録再生することを特徴とする磁気記録媒体の記録再生方法である。
【発明の効果】
【0044】
磁気記録媒体において、ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に記録層を備えた構成の磁気記録媒体であって、前記記録層が磁気グレインごとに分離し、磁気的に孤立した記録ドメインを形成する構成、あるいは、相互に孤立した磁気グレインの集合体により、記録膜中に微細な構造を形成し、記録膜の比抵抗が大きい特性を有する構成により、微細な記録磁区を安定して記録することができ、再生信号振幅を劣化させることなく、記録密度の大幅な向上が可能となる。また、光を照射して記録膜の温度を上昇させながら磁気記録再生する記録媒体においても、サーボ特性が安定して、信頼性を高めることができ、ディスクの生産性、コストを大幅に向上できる。
【0045】
さらに、高密度記録での、繰り返し書き換えを行なった場合にも、安定した記録再生特性が得られ、信号特性の優れた信号特性の磁気記録媒体とその製造方法、および、記録再生方法を提供することが実現可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下に、実施形態をもって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り以下の実施形態に限定されるものではない。
【0047】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態について図面を参照にして詳細に説明する。
【0048】
図1は本発明の実施の形態1における磁気記録媒体(以下、磁気ディスク)1の構造を示す断面図である。図1において、2は結晶ガラスからなる透明なディスク基板、3は誘電体層、その上に、4の下地磁性層、5の記録層からなる磁性記録膜、さらに6は、記録膜を保護する誘電体保護層を順次積層した構成である。さらに、その上に、記録膜の保護と摺動のための潤滑層7が積層され、表面をテクスチャー処理8されている。
【0049】
磁気ディスク1は、案内溝を有した構成であり、情報を記録するトラックのグルーブと、ランドが形成されている。また、サーボのためのピット領域と、情報を記録するデータ領域とにより構成された場合には、ピット領域は、トラッキングサーボとアドレス検出のための、プリピットが形成されている。
【0050】
図1で示した本発明の実施の形態1の磁気記録媒体は、レーザ光スポットを記録膜に集光させて照射し、情報信号に応じて磁気ヘッドで変調された信号を記録し、信号再生時には、光学ヘッドにより偏光面の揃ったレーザ光スポットを照射し、記録磁区からの反射光あるいは透過光を検出して再生することによって、高密度に記録された記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。
【0051】
あるいは、磁気ディスクの記録再生装置では、情報の記録時には、ディスクが回転し、情報信号に伴って変調された記録信号により、光ヘッドによりレーザ光を照射しながら磁気ヘッドで変調されて記録される。また、信号再生時には、磁気ヘッドにより、記録磁区からの磁束を検出して再生する。
【0052】
しかしながら、従来の記録媒体では、特に微細なマークを記録しようとした場合には、磁壁の移動により、記録磁区が拡大する、あるいは、消滅するために、安定した記録ができないという課題があった。また、このことは、記録密度が高密度化されると、特に顕著になり、熱安定性から、長期間保存した場合の、信頼性にも課題を有していた。
【0053】
ここで、本実施形態の記録膜についてさらに詳しく説明する。図1において、ポリカーボネートからなるディスク基板2は、誘電体層3を介して、積層した下地磁性層4、記録層5が形成されている。下地磁性層4は、情報を保持しておく記録層5に磁気的に孤立した膜構造を形成するための制御を行い、記録層5との間は交換結合している構成である。さらに、磁性記録膜の上には、誘電体保護層6、潤滑層7が形成されて構成されている。
【0054】
次に、本願発明の実施の形態1の磁気ディスク1の構成と作製方法について詳細に説明する。
【0055】
図1に示すように、ディスク基板2に、磁性薄膜の記録膜を含む構成に積層して形成されている。ディスク基板2は、記録トラックにピット領域と、データ領域が形成されている。また、本実施形態の磁気ディスク1のトラックピッチは0.3μmである。
【0056】
まず、グルーブとランドを有するスタンパを用いて、加圧したインプリント法を用いて、ディスク基板2を形成する。
【0057】
次に、直流マグネトロンスパッタリング装置に、Siターゲットを設置し、ディスク基板を基板ホルダーに固定した後、7×10ー6Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたまま0.3Paとなるまでチャンバー内にArガスとN2ガスを導入し、基板を回転させながら、SiNからなる誘電体の誘電体層3を50nm、反応性スパッタリング法により膜形成される。
【0058】
さらに、Arガスを、0.5Paとなるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、Gd、Fe、Coそれぞれのターゲットを用いて、GdFeCoの下地磁性層4を35nmを、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。さらに、Tb、Fe、Co、Crそれぞれのターゲットを用いて、Arガスを2.5Paとなるまでチャンバー内に導入して、TbFeCoの記録膜5を100nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。
【0059】
ここで、膜組成は、ターゲットの投入パワー比を調整することにより、所望の膜組成に合せることができる。
【0060】
本願発明の実施形態の製造方法では、TbFeCoからなる記録層5は補償組成温度が−50 ℃であり、キュリー温度は320℃になるように各ターゲットの投入パワーを設定して組成を調整して製膜し、この組成により、室温での保磁力が15koeと大きく、膜面垂直方向の磁気異方性も大きい記録層が形成できる。また、記録層製膜時に、下地磁性層を形成した後に、2Pa以上のArガス中でスパッタリングすることにより、コラム状の微細な構造を有する記録膜を形成できる。
【0061】
図2本発明の実施形態における磁気記録媒体の断面をSEM観察した特性図(a)と、従来の磁気記録媒体の断面をSEM観察した特性図(b)、を示す。図に示すように、従来の磁気記録媒体の記録層では、膜が連続的に形成されているため、容易に磁壁が移動する。これに対して、本実施形態の磁気記録媒体の記録層は、コラム状の微細な構造が形成されており、コラム間では、磁気的に孤立した特性を有する。
【0062】
このため、情報信号を、微小磁区として記録した場合にも、安定した記録磁区を形成できる。また、信号の繰り返し記録再生した場合にも、信号特性の劣化の少ない、優れた記録再生が可能となる。
【0063】
したがって、従来の磁気記録媒体では、特に微細なマークを記録しようとした場合には、磁壁の移動により、記録磁区が拡大する、あるいは、消滅するために、安定した記録ができないという課題があった。また、このことは、記録密度が高密度化されると、特に顕著になり、熱安定性の問題からも、長期間保存した場合の、信頼性にも課題を有していた。
【0064】
これに対し、本願発明の磁気記録媒体は、ディスク基板上に、記録層を形成した磁気記録媒体であって、前記記録層が、微細な膜構造を有する構成により、孤立した磁気グレインを形成することにより、高密度に記録した場合のマークの安定性を実現できる。また、環境温度等が変化した場合にも、記録膜の微細な構造を安定化させることが出来るため、温度変化に対する安定性に優れ、信号特性に優れた磁気記録媒体を実現できるものである。
【0065】
(実施の形態2)
以下、本発明をその実施の形態について図面を参照にして詳細に説明する。
【0066】
図3は本発明の実施の形態2における磁気記録媒体10の構造を示す断面図である。図3において、11はAl合金からなるディスク基板、12は誘電体層、その上に、13の記録層、14の中間層、15の再生層からなる磁性記録膜、さらに16は、記録膜を保護する誘電体保護層を順次積層した構成である。さらに、その上に、記録膜の保護と摺動のための潤滑層17がコーティングされて積層されている。
【0067】
磁気ディスク10は、案内溝を有した構成であり、情報を記録するトラックのグルーブ18a、bと、ランド19a、bが形成されている。また、サーボのためのピット領域と、情報を記録するデータ領域とにより構成された場合には、ピット領域は、トラッキングサーボとアドレス検出のための、プリピットが形成されている。
【0068】
図3で示した本発明の実施の形態2の磁気記録媒体は、レーザ光スポットを記録膜に集光させて、磁気ヘッド、あるいは、光学ヘッドにより信号を記録、再生検出することによって、高密度に記録された記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。
【0069】
本実施形態の磁気ディスクの記録再生装置では、情報の記録時には、ディスクが回転し、情報信号に伴って変調された記録信号により、光ヘッドによりレーザ光を照射しながら磁気ヘッドで変調されて記録される。また、信号再生時には、光学ヘッドにより、偏光面の揃ったレーザ光スポットを照射し、記録磁区からの反射光あるいは透過光を検出して再生する。
【0070】
しかしながら、従来の記録媒体では、特に微細なマークを記録しようとした場合には、磁壁の移動により、記録磁区が拡大する、あるいは、消滅するために、安定した記録ができないという課題があった。また、このことは、記録密度が高密度化されると、特に顕著になり、熱安定性から、長期間保存した場合の、信頼性にも課題を有していた。
【0071】
ここで、本実施形態の記録膜についてさらに詳しく説明する。
【0072】
図3において、Al合金からなるディスク基板11は、誘電体層12を介して、積層した磁性記録膜13、14、15が形成されている。磁性記録膜は、情報を保持しておく記録層13、情報を磁壁の移動によって検出するための再生層15、再生層と記録層の間の交換結合を制御するための中間遮断層(あるいは、中間層)14、により構成されている。さらに、磁性記録膜の上には、誘電体保護層16、潤滑層17が形成されて構成されている。
【0073】
図3で示した本発明の実施の形態2の磁気記録媒体は、光ビームによる温度勾配により、差し掛かった磁壁を次々と移動させこの磁壁の移動を光学ヘッドにより検出することによって、再生時に信号検出感度を向上させて超解像再生が可能となるDWDD方式を磁気記録媒体に適用できる構成である。
【0074】
上述した構成に積層した記録膜は磁壁の移動を利用して、再生信号の振幅、および信号量を大きくする方法であるDWDD方式(Domain Wall Displacement Detection)の一例であり、例えば特許文献1記載される如く、大きな界面飽和保磁力を有する磁性膜を記録層とし、小さな界面飽和保磁力を有する磁性膜を磁壁移動する再生層とし、比較的低いキュリー温度を有する磁性膜を切り換えのための中間層として用いている。したがって、DWDD方式を可能にする磁性膜を用いていれば良く、この膜構成に限るものではない。
【0075】
上記したDWDD方式の再生原理について、図11を参照しながら説明する。
【0076】
図11(a)は、回転している磁気ディスクの記録膜の断面を示す図であり、ディスク基板、誘電体層(図示していない)に、再生層113、中間層114、記録層115の3層構成の記録膜により構成され、さらに図示していないが、誘電体層、保護層あるいは潤滑摺動層が形成されている。
【0077】
再生層113としては、磁壁抗磁力の小さい磁性膜材料を用いており、中間層114はキュリー温度の小さい磁性膜、記録層115は小さなドメイン径でも記録磁区を保持できる磁性膜を用いている。ここで、磁気記録媒体の再生層は、記録トラック間にガードバンド等を形成することにより、閉じていない磁壁を含む磁区構造を形成している。
【0078】
図に示すように、情報信号は、記録層に熱磁気記録された記録磁区として形成されている。レーザ光スポットの照射されていない室温での記録膜は記録層、中間層、再生層がそれぞれ強く交換結合しているため、記録層の記録磁区は、そのまま再生層に転写形成される。
【0079】
図11(b)は、(a)の断面図に対応した位置χと記録膜の温度Tとの関係を表す。図示されているように、記録信号の再生時には、ディスクが回転し、トラックに沿ってレーザ光による再生ビームスポットが照射される。この時、記録膜は、図11(b)に示すような温度分布を示し、中間層(あるいは中間遮断層、スイッチング層)がキュリー温度Tc以上となる温度領域Tsが存在し、再生層と記録層との交換結合が遮断される。
【0080】
また、再生ビームが照射されると、図11(c)の磁壁エネルギー密度σに対する依存性に示すように、図11(a)、(b)の位置に対応するディスク回転方向のχ方向に磁壁エネルギー密度σの勾配が存在するために、図11(d)に示すように、位置χでの各層の磁壁に対して磁壁を駆動させる力Fが作用する。
【0081】
この記録膜に作用する力Fは、図に示すように磁壁エネルギー密度σの低い方に磁壁を移動させるように作用する。再生層は、磁壁抗磁力が小さく磁壁の移動度が大きいので、閉じていない磁壁を有する場合の再生層単独では、この力Fによって容易に磁壁が移動する。従って、再生層の磁壁は、矢印で示したように、より温度が高く磁壁エネルギー密度の小さい領域へと瞬時に移動する。そして、再生ビームスポット内を磁壁が通過すると、スポット内での再生層の磁化は光スポットの広い領域で同じ方向に揃う。
【0082】
この結果、記録磁区の大きさに依らず、再生磁区の大きさは、常に一定の最大振幅になる。このため、光学ヘッド、あるいは、GMRヘッド等の磁気ヘッドを用いて信号再生する場合にも、光ビーム等による温度勾配により、再生層での転写磁区を拡大することにより、常に一定の最大振幅の信号量になる。
【0083】
次に、本願発明の実施の形態2の磁気ディスク10の構成と作製方法について詳細に説明する。
【0084】
図2に示すように、Al合金の金属からなる研磨されたディスク基板11に、磁性薄膜の記録膜を含む構成に積層して形成されている。ディスク基板11は、記録トラックにピット領域と、データ領域が形成されている。また、本実施形態の磁気ディスク1のトラックピッチは0.3μmである。
【0085】
まず、グルーブ18a、bとランド19a、bを有するスタンパを用いて、加熱したインプリント法により、図に示すような、ディスク基板11を形成する。
【0086】
まず、図示すように、Al合金のからなるディスク基板11の表面にフォトポリマーを用いてピットを形成し、ピット形状以外の部分は、マスクを通してイオンガンによりエッチングすることにより、表面粗さをRa0.5nm以上と、Raの異なるプリピットが形成できる。あるいは、磁気的なプリピットを形成する場合には、ディスク基板に記録膜作製後に、磁気転写、あるいは、サーボライター等を用いて記録する。
【0087】
まず、直流マグネトロンスパッタリング装置に、AlTiターゲットを設置し、ディスク基板を基板ホルダーに固定した後、7×10ー6Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたまま0.3Paとなるまでチャンバー内にArガスとN2ガスを導入し、基板を回転させながら、AlTiNからなる誘電体の誘電体層12を50nm、反応性スパッタリング法により膜形成される。
【0088】
そして、Arガスを、2.5Paとなるまでチャンバー内に導入して、Tb、Fe、Co、Crそれぞれのターゲットを用いて、基板を回転させながら、TbFeCoの記録膜13を100nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。さらに、同じターゲットを用いて、TbFeCoCrの中間層14を20nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。さらに、Arガスを、0.5Paとなるまでチャンバー内に導入し、Gd、Fe、Coそれぞれのターゲットを用いて、GdFeCoの再生層13を35nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。
【0089】
ここで、膜組成は、ターゲットの投入パワー比を調整することにより、所望の膜組成に合せることができる。
【0090】
本願発明の実施形態の製造方法では、TbFeCoからなる記録層13は補償組成温度が70℃であり、キュリー温度は300℃になるように各ターゲットの投入パワーを設定して組成を調整して製膜し、この組成により、室温での保磁力が19koeと大きく、膜面垂直方向の磁気異方性も大きい記録層が形成できる。また、基板表面に微細な凹凸を形成し、表面粗さRaが0.5nm以上のディスク基板上に、誘電体層、記録層を順次積層することにより、孤立した磁気グレインの集合体の記録層を形成できるため、情報信号の微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成できる。また、信号の繰り返し記録再生した場合にも、信号特性の劣化の少ない、優れた記録再生が可能となる。
【0091】
ここで、ディスク基板11が、凹凸、あるいは、表面粗さの異なるプリピットを有する構成には、スタンパを用いて、インプリントによりディスク基板11に転写する、あるいは、イオンエッチングによりピット部の凹凸形状、あるいは、表面粗さ等を制御して、スタンパ、あるいは、ディスク基板に直接形成される。
【0092】
このような、凹凸、あるいは、表面粗さを用いたディスク基板11上に、AlTiNからなる誘電体の下地層12を形成した場合にも、ディスク基板11表面のピットが、下地層12の表面にも形成される。また、ピット部が表面粗さの小さいサーボ用ピットとして形成することも可能である。
【0093】
以上のように、本願発明の磁気記録媒体は、微細な凹凸を形成したディスク基板上に、記録層を形成した磁気記録媒体であって、前記記録層が、孤立した磁気グレインの集合体である記録層を形成した構成により、高密度に記録した場合のマークの安定性を実現できる。また、環境温度等が変化した場合にも、記録膜の微細な構造を安定化させることが出来るため、温度変化に対する安定性に優れ、信号特性に優れた磁気記録媒体を実現できるものである。
【0094】
(実施の形態3)
以下、本発明をその実施の形態について図面を参照にして詳細に説明する。
【0095】
図4は本発明の第3の実施形態における磁気ディスク30の構造を示す断面図である。本発明の第3の実施形態における磁気ディスクの構造は、図4に示すように、実施の形態2と同様に断面構造を有する。
【0096】
図4において、31はガラスからなる透明なディスク基板、33は下地誘電体層である。その誘電体層33上には、34、35、36、37はそれぞれ、記録層、中間層、制御層、再生層の磁性記録膜である。さらに、38は記録膜を保護し磁気ヘッドを摺動させるための保護層、39は潤滑保護層が積層されている。
【0097】
ここで、下地の誘電体層33形成前のディスク基板31は、ピットを形成したスタンパを用いて、ガラスのディスク基板31に塗布したフォトポリマー32に転写させて、硬化させた構成である。この構成により、トラッキングサーボとアドレス検出のための、ピットが形成され、記録トラックは、サーボのためのピット領域と、情報を記録するデータ領域とが検出できる構成となる。
【0098】
本発明の実施の形態3の磁気記録媒体は、本願発明の実施の形態2同様に、光ビームによる温度勾配により、差し掛かった磁壁を次々と移動させこの磁壁の移動を検出することによって、再生時の信号検出感度を向上させて超解像再生が可能となるDWDD方式を磁気記録媒体に適用できる構成である。
【0099】
この構成により、記録磁区の大きさに依らず、再生磁区の大きさは、常に一定の最大振幅になる。このため、光学ヘッド、あるいは、GMRヘッド等の磁気ヘッドを用いて信号再生する場合にも、光ビーム等による温度勾配により、再生層での転写磁区を拡大することにより、信号再生時には、常に一定の最大振幅の信号量になる。
【0100】
したがって、図4で示した本発明の実施の形態3の磁気記録媒体は、磁気ディスクに、レーザ光ビームを照射し、入射光スポットの偏光面の回転として、磁壁移動により拡大された再生層の磁区を検出することによって、再生時のレーザ光スポットの検出限界よりも、小さい記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用することもできる構成である。
【0101】
あるいは、この磁気ヘッドにより信号を記録、再生検出する構成によって、再生時のレーザ光スポットの検出限界よりも、小さい記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。
【0102】
ここで、本実施形態の記録膜は温度Tの上昇と共に、保磁力Hcは減少し、飽和磁化Msは増加する特性を有している。このことにより、GMRヘッドで再生した場合には、再生信号の検出感度を向上させることができる。
【0103】
本実施形態の磁気ディスクの記録再生装置では、情報の記録時には、ディスクが回転し、トラックに沿ってレーザ光ビームスポットを照射しながら磁気ヘッドで記録される。この時、記録膜は、高温では保磁力が低下することから、磁気ヘッドでの記録が可能となる。また、信号再生時には、レーザ光ビームを照射して、温度上昇させながら、GMRヘッドにより、記録磁区を検出する。この時、飽和磁化Msは温度と共に上昇し、70℃で極大となるため、GMRヘッドでの検出感度が向上し、再生信号が増大する。
【0104】
これに対して、従来の記録媒体では、高密度に微小な磁区を記録した場合には、記録磁区の磁壁が移動することによって、記録マークが不安定になるという課題があった。
【0105】
さらに、環境温度の変動、記録膜へのレーザ光ビームを照射した際の磁気ディスクの温度上昇等に伴い、浮遊磁界とその温度特性により、記録マークが変化することにより、再生信号が劣化するという課題があった。さらに、クロストーク、クロスイレーズや、記録再生信号の劣化、あるいは再生信号量が低下するという課題を有していた。
【0106】
次に、本願発明の実施の形態3の磁気ディスク30の構成と作製方法について詳細に説明する。
【0107】
まずスタンパを用いて、ガラス基板上に塗布したフォトポリマー32に、ピットとグルーブを転写し、紫外線を照射して硬化させることにより、ディスク基板31を形成する。
【0108】
次に、直流マグネトロンスパッタリング装置に、ターゲットを設置し、ディスク基板を基板ホルダーに固定した後、6×10ー6Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたまま0.3Paとなるまでチャンバー内にArガスとN2ガスを導入し、基板を回転させながら、AlTiNからなる下地の誘電体層33を35nm、反応性スパッタリング法により膜形成される。
【0109】
次に、記録層作製時には、Krガスを、0.5Paになるように導入し、合金ターゲットを用いて、TbFeCoの記録層34を60nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成される。
【0110】
また、記録層34を形成した後に、イオンガンを用いて、イオンエッチングすることにより、記録層に微細な構造を形成できる。この結果、記録層34の磁壁エネルギーが膜面内方向で分布した構成を形成できる。
【0111】
次に、チャンバー内が1.5PaであるArガス雰囲気中で、基板を回転させながら、中間層35、制御層36、再生層37を、それぞれの組成を有する合金ターゲットを用いてスパッタリング順次積層する。ここで、TbFeCo、TbFeCoCr、GdFeCo、の磁性記録膜組成は、ターゲットの投入パワー比を調整することにより、所望の膜組成に合せることができる。
【0112】
そして、さらに再生層37の上には、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる誘電体保護層38をArとCH4の混合雰囲気中で、Cターゲットを用いて、反応性RFスパッタリングにより、5nm形成する。さらに、パーフルオロポリエーテル(以下、PFP)からなる潤滑層39を塗布することにより形成する。
【0113】
この時、本実施形態の磁気ディスク30のトラックピッチは0.25μmである。
【0114】
ここで、ここで、本実施形態の磁気記録媒体の、記録層の面内方向での抵抗率と、イオンガンによるエッチング時間との関係を図5に示す。図に示すように、記録層製膜後に、エッチング時間を大きくすることにより、記録層の面内方向での抵抗率が増加することがわかる。さらに、抵抗率が、500μΩcm以上になると、100nm以下の微小な記録膜が安定して形成できることが確認できた。
【0115】
また、TbFeCoからなる記録層34は補償組成温度が130 ℃であり、キュリー温度は320 ℃になるように合金ターゲット組成を調整して製膜した。この組成により、室温での保磁力が8koeとなる。また、本願発明の磁気記録媒体は、上記製造方法で作製したことにより、ディスク基板上に、希土類金属、あるいは遷移金属との水素化合物を含有した構成により、高密度に記録した場合にも、記録磁区が安定し優れた信号特性の磁気ディスクとその製造方法を実現できる。また、磁気ヘッドにより微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成でき、繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れ、また、温度変化に対する安定性に優れた磁気記録媒体を実現できるものである。また、記録層34の保磁力Hcは、室温からは温度上昇と共に減少するという膜特性が得られるため、昇温した状態では保磁力が小さくなり、磁気ヘッドでの記録が容易となり、大きな記録磁界は必要なくなる。
【0116】
さらに、本実施形態の磁気記録媒体では、光ビームを照射した状態での温度勾配により、DWDD方式により信号を再生すると、記録層からの信号を転写拡大した再生層は、90℃で飽和磁化Msが極大となる組成であるために、さらに、再生信号の増大効果がある。
【0117】
また、上記の構成により、微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成でき、磁気ヘッドにより繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
【0118】
上記本実施形態の磁気ディスク30は、記録層34をイオンエッチングした構成について述べてきたが、記録層表面の下地層側、あるいは、中間層側に非常に薄い酸化膜を形成した構成であっても、記録層の磁気グレインを微細化、孤立化させることは可能である。
【0119】
また、上記本実施形態の磁気ディスク30は、フォトポリマー32をディスク基板31上に塗布した構成について述べてきたが、ガラス基板を直接インプリントした構成、エッチング等により、ディスク基板の表面性を変化させた構成、ガラス基板を直接加工、あるいは、加熱溶融による転写させた構成、さらに、プラスチック基板による成形等を用いてもよい。
【0120】
さらに、本実施形態では、トラックピッチが0.25μmであったが、情報の記録される記録トラック幅が0.6μm以下の構成であって、記録情報の最短のマーク長が0.35μm以下の記録ドメインを記録する構成であれば、より効果が大きい。
【0121】
以上のように、本実施形態の構成により、高密度に記録再生した場合にも、安定した再生信号特性が得られる。さらに、情報トラックでの記録磁区が安定した形状に形成させるために、記録再生時に隣接トラックからのクロスライト及びクロストークも低減できるものである。
【0122】
また、本実施形態の磁気記録媒体では、光ビームを照射した状態での温度勾配により、DWDD方式により信号を再生するため、再生層は、非晶質で微細な構造を有さず、磁壁移動が容易な膜構造である。これに対して、記録層は、上述した製造方法により構成により、記録膜に微細な構造を有し、微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成できる。また、レーザ光スポットを照射して、繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
【0123】
(実施の形態4)
以下、本発明をその実施の形態について図面を参照にして詳細に説明する。
【0124】
本発明の実施の形態4における磁気ディスクの構造は、実施の形態3と同様に、図4に示すような断面構造を有する。図4に示すように、ガラスを研磨した平板のディスク基板に、誘電体層33、再生層37、中間層35、記録層34からなる磁性記録膜、さらに、磁性記録膜を保護し、磁気ヘッドを摺動させるための誘電体保護層38、および、潤滑層39により構成されている。
【0125】
磁気ディスク30は、記録トラック上に、サーボとアドレス検出のためのピットが形成され、データ領域に情報が記録される構成を有する。ピットとしては、トラッキングサーボとアドレス検出のために用いられ、表面粗さの異なる形状に作製、あるいは磁性記録膜形成後、磁気転写、または、サーボライター等により磁気的に記録形成される。
【0126】
ここで、表面粗さ等のディスク基板31の表面形状を変化させてピットを形成する場合は、ガラス原盤にフォトレジスト等を用いて、プリピット状に形成したスタンパを用いて、インプリント等によりディスク基板31に転写させて作製する。
【0127】
あるいは、イオンエッチングによりピット部の凹凸形状、あるいは、表面粗さ等を制御して、スタンパ、あるいは、ディスク基板に直接形成される。
【0128】
あるいは、スタンパに形成したプリピットの底面を、イオンエッチングと組合せて、表面粗さも変化させた構成も可能である。
【0129】
図4で示した本発明の実施の形態4の磁気記録媒体は、34、35、36、37の磁性記録膜が形成された薄膜表面に、誘電体保護層38、潤滑保護層39を形成し、潤滑層の上から、磁気ヘッドにより信号を記録、再生検出することによって、高密度に記録された記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。この磁気ヘッドにより信号を記録、再生検出する構成によって、再生時のレーザ光スポットの検出限界よりも、小さい記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。
【0130】
ここで、本実施形態の磁気ディスク30のトラックピッチは0.3μmであり、プリピット径は0.25μmである。
【0131】
次に、本実施形態の磁気ディスクの記録再生装置では、情報の記録時には、ディスクが回転しながら磁気ヘッドで記録される。この時、記録層は、保磁力が10koeにすることにより、磁気ヘッドでの記録が可能となる。また、信号再生時には、GMRヘッドにより、記録磁区からの信号を検出する。この時、レーザ光を照射する構成であれば、保磁力は温度上昇と共に低下し、飽和磁化Msは温度と共に上昇する特性の記録層を用いて、60℃で極大となる組成に調整すれば、GMRヘッドでの検出感度が向上し、再生信号が増大する。また、前述したDWDD方式を用いて、再生信号振幅をさらに拡大して再生することができる。
【0132】
次に、本願発明の実施の形態4の磁気ディスク30の作製方法について詳細に説明する。
【0133】
ここで、次に、本発明の実施形態における磁気記録媒体を製造するための、製造装置の構成図を図9に示す。図に示すように、磁気記録媒体の製造装置は、脱ガス室71と、メインチャンバー73とが、ロードアンロード室72により接続されて構成されている。また、脱ガス室71は、ロード室74、アンロード室75、加熱室77とつながった構成である。また、メインチャンバー73には、複数のプロセス室81、82、83、84、85、86、87が接続されており、メインチャンバー73を通して磁気ディスクが移動し、それぞれの真空室で膜形成される構成である。
【0134】
まず、ディスク基板は、脱ガス室71のロード室74から投入され、途中、加熱室77でディスク基板の加熱しながら、脱ガス室71を移動して、ディスク基板からの吸着ガスの脱ガスを行なう。脱ガス室71のロード室75は、メインチャンバーのロードアンロード室72に接続されており、ディスク基板31を、基板ホルダー、マスクを固定して、真空搬送室70を通して、メインチャンバー73に移動する。
【0135】
そして、メインチャンバー73から、真空プロセス室81に移動し、8×10ー6Pa以下の高真空にターボ分子ポンプで真空排気される。真空プロセス室81では、その雰囲気に真空排気したまま、0.3Paとなるまでチャンバー内にArガスとO2ガスを導入し、基板を回転させながら、TaOからなる誘電体層33を10nm、反応性スパッタリング法により形成する。
【0136】
次に、メインチャンバー73を通して、TbFeCo記録層製膜のための真空プロセス室82に移動する。ここで、真空プロセス室82は、7×10ー6Pa以下の高真空にターボ分子ポンプで真空排気されているが、この時、真空プロセス室82内の水素の分圧は、2×10ー8Paとなっている。この時の、真空雰囲気は、真空排気のためのターボ分子ポンプの回転数により制御できる。そしてこのように真空排気をしたまま、Xeガスを0.8Paとなるまで真空プロセス室82内に導入し、基板を回転させながら、TbFeCoの合金ターゲットを用いて、TbFeCoの記録層34を60nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成される。ここで、TbFeCoの膜組成は、合金ターゲットの組成と製膜条件を調整することにより、所望の膜組成に合せることができる。また、真空プロセス室内のXeガスを用いた製膜雰囲気と製膜速度等の条件により、スパッタリング製膜中にTbFeCo記録層34の膜中に微細な構造が形成され、磁気的に孤立したミクロな膜構造を形成する。実際、図2の断面構造の観察図と同様に、磁気グレインが微細化され、コラム形状の膜構造を形成できる。
【0137】
さらに、メインチャンバー73を通して、真空プロセス室83、84、85と順次移動し、TbFeCoAlの中間層35、TbFeCoCrの制御層36、GdFeCoの再生層37をそれぞれ順次積層して形成する。ここで、TbFeCoAl中間層35の膜厚は15nm、TbFeCoCr制御層36の膜厚は10nm、GdFeCoの再生層37の膜厚は35nm、にそれぞれに設定している。
【0138】
なお、TbFeCoの記録層34の製膜時と同様に、真空プロセス室83、84での、TbFeCoAl中間層35、TbFeCoCr制御層36の膜形成時にも、真空プロセス室83、84にXeを導入した条件で形成すると同等以上の効果が得られる。
【0139】
そして、さらに磁性記録膜34、35、36、37の上には、さらに真空プロセス室86に移動して、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる誘電体保護層38をArとCH4の混合雰囲気中で、Cターゲットを用いて、反応性RFスパッタリングにより、3nm形成する。さらに、真空プロセス室87で、製膜した磁気ディスク30を冷却した後、ロードアンロード室72を通して、真空装置の外に送り出す。
【0140】
さらに、パーフルオロポリエーテル(以下、PFPE)からなる潤滑保護層39をディッピング装置により引き上げながら塗布することにより、2nmに塗布形成する。
【0141】
ここで、TbFeCoからなる記録層34は補償組成温度が140 ℃であり、キュリー温度は330 ℃になるようにターゲット組成と条件を設定して膜組成を調整して製膜した。また、ここでは、記録層34製膜後に、記録膜をエッチングする方法は用いていないが、真空プロセス室の真空中で、水素あるいは窒素を含むAr雰囲気中に保持し、さらに膜中に水素、窒素等の気体分子を吸蔵、吸着させる方法を用いてもよい。
【0142】
このような記録層の組成と、気体分子を含有する構成により、孤立した磁気グレインからなるミクロな膜構造で安定であり、室温での保磁力が10koe以上となる。この結果、磁気ヘッドにより微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成でき、磁気ヘッドにより繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
【0143】
従来の磁気記録媒体では、磁壁移動のために、記録した磁区が拡大、あるいは、収縮による消滅で、微細なマークの記録が安定していないという課題を有していた。また、環境温度の変動、記録膜へのレーザ光ビームを照射した際の磁気ディスクの温度上昇等に伴い、磁気グレインの熱揺らぎが課題となり、記録ドメイン形状が変動する、あるいは、劣化するという課題、あるいは、クロストーク、クロスイレーズ、記録再生信号の劣化といった課題を有していた。
【0144】
これに対し、本願発明の磁気記録媒体は、簡易な方法で、記録層に水素を含有して記録層を安定化する構成により、高密度に微細な磁区を記録した場合にも、安定した記録特性の磁気記録媒体とその製造方法を実現できる。また、記録層の室温での保磁力も大きく、環境温度等が変化した場合にも、安定した記録磁区を形成できるため信号特性に優れ、信頼性の高い磁気記録媒体を実現できるものである。
【0145】
以上のように、本実施形態の構成により、高密度に記録再生した場合にも、安定した再生信号特性が得られる。さらに、情報トラックでの記録磁区が安定した形状に形成させるために、記録再生時に隣接トラックからのクロスライト及びクロストークも低減できるものである。
【0146】
(実施の形態5)
以下、本発明をその実施の形態について図面を参照にして詳細に説明する。
【0147】
本発明の実施の形態5における磁気ディスク50の構造は、図6に示すような断面構造を有する。図6に示すように、研磨したAl合金からなる金属のディスク基板に、下地の誘電体層52、記録層53、中間層54、再生層からなる磁性記録膜群、さらに、磁性記録膜を保護し、磁気ヘッドを摺動させるための誘電体保護層56、および、潤滑層57により構成されている。
【0148】
磁気ディスク50は、記録トラック上に、プリピットと、情報を記録するデータ領域を有する構成である。プリピットは、トラッキングサーボとアドレス検出に用いられており、凹凸、表面粗さの異なるピット、あるいは、磁気記録によるプリピットが形成されている。
【0149】
ここで、ディスク基板51が、凹凸、あるいは、表面粗さの異なるプリピットを有する場合には、ピットを形成したスタンパを用いて、インプリントにより金属のディスク基板51に転写する、あるいは、イオンエッチングによりピット部の凹凸形状、あるいは、表面粗さ等を制御して、スタンパ、あるいは、ディスク基板に直接形成される。
【0150】
このような、凹凸、あるいは、表面粗さを用いたディスク基板51上に、AgCu等の金属下地層52、あるいは、ZnSSiO2からなる誘電体の誘電体層52を形成した場合にも、ディスク基板51表面のピットが、下地の誘電体層52の表面にも形成される。この結果、ピット部が表面粗さの小さいサーボ用ピットとして形成される。
【0151】
本発明の実施の形態5の磁気記録媒体は、記録膜が形成された潤滑層側から、レーザ光ビームを照射し、磁気ヘッドにより信号を記録、再生検出することによって、再生時のレーザ光スポットの検出限界よりも、小さい記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。
【0152】
ここで、本実施形態の記録膜は温度Tの上昇と共に、保磁力Hcは減少し、飽和磁化Msは極大温度まで増加する特性を有している。
【0153】
本実施形態の磁気記録媒体は、情報の記録時には、ディスクが回転し、トラックに沿ってレーザ光ビームスポットを照射しながら磁気ヘッドで記録される。この時、記録膜は、高温では保磁力が低下することから、磁気ヘッドでの記録が可能となる。また、信号再生時には、レーザ光ビームを照射して、温度上昇させながら、GMRヘッドにより、記録磁区を検出する。この時、飽和磁化Msは温度と共に上昇し、100℃で極大となるため、GMRヘッドでの検出感度が向上し、再生信号が増大する。
【0154】
しかしながら、従来の記録媒体では、記録膜へレーザ光ビームを照射した際に、磁気ディスクの温度上昇と冷却過程での温度変化に伴い、記録磁区が不安定になり、磁壁の移動によって、記録ドメインが劣化するという課題があった。
【0155】
次に、本願発明の実施の形態5の磁気ディスク50と作製方法について詳細に説明する。
【0156】
図6に示すように、金属からなる研磨されたディスク基板51に、磁性薄膜の記録膜を含む構成に積層して形成されている。ディスク基板51は、プリピットを設けた記録トラックが形成されており、本実施形態の磁気ディスク50のトラックピッチは0.3μmである。
【0157】
まず、図示すように、Al合金のからなるディスク基板51の表面にフォトポリマーを用いてピットを形成し、ピット形状以外の部分は、マスクを通してイオンガンによりエッチングすることにより、表面粗さをRa0.5nm以上と、Raの異なるプリピットが形成できる。ここで、磁気的なプリピットを形成する場合には、ディスク基板に記録膜作製後に、磁気転写、あるいは、サーボライター等を用いて記録する。
【0158】
次に、スパッタリング装置を用いて、誘電体層、記録膜、保護層を作製するが、そのための製造装置は、実施の形態4で説明した、図9に示す構成と同様の製膜装置を用いることができる。
【0159】
まず、スパッタリング装置に、ターゲットを設置し、ディスク基板51を基板ホルダーに固定した後、8×10ー6Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたまま0.2Paとなるまでチャンバー内にArガスを導入し、基板を回転させながら、AgCuからなる金属膜の下地層を20nmを形成し、さらに、0.4PaのArを導入し、ZnSSiO2からなる誘電体の下地層52を10nm、RFマグネトロンスパッタリング法により膜形成される。
【0160】
そして、真空排気をしたままArガスを2.0Paとなるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、TbFeCoの合金ターゲットを用いて、TbFeCoの記録膜54を80nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成される。ここで、TbFeCoの膜組成は、合金のターゲット組成比と製膜条件を調整することにより、所望の膜組成に合せることができる。
【0161】
次に、水素、および窒素を含有するAr雰囲気中で、イオンガンを用いて、TbFeCo記録層をエッチングし、さらに、その後、記録層を、水素を20at%含有する雰囲気中に30秒、保持する。このことにより、気体分子が記録膜中に取込まれ、希土類金属と安定な結合状態を形成する。また、この時、エッチング条件を調整することにより、記録層53の表面の平滑性も調整できる。
【0162】
さらに、チャンバー内が1.5PaであるArガス雰囲気中で、基板を回転させながら、中間層、再生層を、それぞれの組成を有する合金ターゲットを用いてスパッタリング順次積層する。ここで、TbFeCoCr、GdFeCo、の磁性記録膜組成は、ターゲットの組成比と製膜条件を調整することにより、所望の膜組成に合せることができる。
【0163】
そして、さらに再生層55の上には、アモルファスカーボン(αC)からなる誘電体保護層56をAr雰囲気中で、Cターゲットを用いて、DCスパッタリングにより、7nm形成する。さらに、パーフルオロポリエーテル(以下、PFPE)からなる潤滑保護層57をスピンコータで塗布することにより形成する。
【0164】
ここで、TbFeCoからなる記録層53は補償組成温度が−20℃であり、キュリー温度は310℃になるように膜組成を調整して製膜した。
【0165】
この結果、本実施形態の磁気記録媒体では、光ビームを照射した状態での温度、120℃で、飽和磁化Msが極大となり、また、保磁力Hcは、温度上昇と共に減少するという膜特性を有し、微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成でき、磁気ヘッドにより繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
【0166】
このような、本実施形態の磁気記録媒体は、情報の記録時には、ディスクが回転し、トラックに沿ってレーザ光ビームスポットを照射しながら磁気ヘッドで記録磁界を変調することにより記録される。この時、記録層53は、高温では保磁力が低下することから、磁気ヘッドの磁界で記録が可能となる。また、信号再生時には、レーザ光ビームを照射して、温度上昇させながら、上記したDWDD方式を用いて、磁壁移動により、転写磁区を拡大させながら、GMRヘッドにより、再生磁区を検出する。この時、再生層の飽和磁化Msも温度と共に上昇する構成であれば、昇温時に再生信号が極大となるため、GMRヘッドでの検出感度が向上し、再生信号が増大する。
【0167】
ここで、本実施形態の磁気記録媒体の、記録層の面内方向での抵抗率と、イオンガンによるエッチング時間との関係は、実施の形態3同様に、図5のような関係を示す。したがって、記録層製膜後に、記録層の面内方向での抵抗率が増加する条件に、エッチング時間、パワー等を設定することにより、抵抗率が、500μΩcm以上が可能となり、100nm以下の微小な記録膜が安定して形成できることが確認できる。
【0168】
この時、記録層は、孤立した磁気グレインを形成しており、記録膜の抵抗率と微細な磁気グレインとの間には、密接な関連があると考えられる。したがって、エッチング時間6秒以上に設定することにより、記録層の抵抗率を大きくすることができ、抵抗率が増大する条件で記録層を形成することにより、記録層の膜中に微細な構造を形成でき、孤立した微小な磁気グレインを形成できることとなる。
【0169】
従来の磁気記録媒体では、記録膜へレーザ光ビームを照射した際に、磁気ディスクの温度上昇に伴い、微小な記録磁区が劣化するという課題があった。特に、記録膜へレーザ光ビームを照射した際に、磁気ディスクの温度上昇と冷却過程での温度変化に伴い、記録磁区が不安定になり、磁壁の移動によって、記録ドメインが劣化するという課題があった。また、磁気的にサーボピットを形成した場合には、サーボ信号の特性も変動する、あるいはそれに伴い記録再生特性が低下する等の課題を有していた。
【0170】
これに対し、本願発明の磁気記録媒体は、記録層が孤立した微細な磁気グレインを安定した構造で形成することにより、環境温度の変化、あるいは、記録再生時に記録膜にレーザ光ビームを照射した際の磁気ディスクの温度変化にも、微細な記録磁区を安定して記録が可能となる。この結果、光ビーム等により記録膜を昇温させて、GMRヘッド等の磁気ヘッドを用いて信号再生する場合にも、熱耐久性に優れ、信号特性に優れた磁気記録媒体を実現できるものである。
【0171】
また、本実施形態では、トラックピッチが0.3μmであったが、情報の記録されるグルーブ幅が0.6μm以下の構成であって、記録情報の最短のマーク長が0.3μm以下の記録ドメインを記録する構成であれば、より効果が大きい。
【0172】
以上のように、本実施形態の構成により、高密度に記録再生した場合にも、安定した再生信号特性が得られる。さらに、情報トラックでの記録磁区が安定した形状に形成させるために、記録再生時に隣接トラックからのクロスライト及びクロストークも低減できるものである。
【0173】
(実施の形態6)
以下、本発明をその実施の形態について図面を参照にして詳細に説明する。
【0174】
本発明の実施の形態6における磁気ディスク60の構造は、実施の形態5を方向に積層した断面構造を有する。
【0175】
また、図7に、本実施形態における磁気記録媒体の断面構成図の、SEM観察した断面写真を示す。
【0176】
図に示すように、透明なポリカーボネートからなるディスク基板61上に、誘電体層62、非晶質な膜構造の再生層63、中間層64、微細な柱状の孤立した磁気グレインを有する記録層65が形成されている。その上には、誘電体保護層66が形成されており、さらに、その上に、記録膜の保護のためのオーバーコート層が積層された構成を有する。
【0177】
磁気ディスク60は、案内溝を有した構成であり、情報を記録するトラックのグルーブと、ランドが形成されている。また、サーボのためのピット領域と、情報を記録するデータ領域とにより構成された場合には、ピット領域は、トラッキングサーボとアドレス検出のための、プリピットが形成されている。
【0178】
ここで、本実施形態の記録膜についてさらに詳しく説明する。
【0179】
図7において、射出成形されて案内溝とプリピットが形成された透明なプラスチックのディスク基板61は、誘電体層62を介して、積層した磁性記録膜63、64、65が形成されている。磁性記録膜は、情報を保持しておく記録層65、情報を磁壁の移動によって検出するための再生層63、再生層と記録層の間の交換結合を制御するための中間遮断層(あるいは、中間層)64、により構成されている。さらに、その上には、誘電体保護層66、オーバーコート層により磁性記録膜を保護する構成となっている。
【0180】
本実施形態の磁気記録媒体は、本願発明の第2の実施形態同様に、光ビームによる温度勾配により、差し掛かった磁壁を次々と移動させこの磁壁の移動を検出することによって、再生時の信号検出感度を向上させて超解像再生が可能となるDWDD方式を磁気記録媒体に適用できる構成である。
【0181】
この構成により、記録磁区の大きさに依らず、再生磁区の大きさは、常に一定の最大振幅になる。このため、光学ヘッド、あるいは、GMRヘッド等の磁気ヘッドを用いて信号再生する場合にも、光ビーム等による温度勾配により、再生層での転写磁区を拡大することにより、信号再生時には、常に一定の最大振幅の信号量になる。
【0182】
図7で示したような、本発明の実施の形態6の磁気記録媒体は、記録膜が形成されたディスク基板側から、レーザ光ビームを照射し、入射光スポットの偏光面の回転として、磁壁移動により拡大された再生層の磁区を検出することによって、再生時のレーザ光スポットの検出限界よりも、小さい記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。
【0183】
次に、本願発明の実施の形態6の磁気ディスクの作製方法について詳細に説明する。
【0184】
図7に示すように、ポリカーボネートを用いたディスク基板61に、磁性薄膜の記録膜を含む構成に積層して形成されている。ディスク基板61は、記録トラックにピット領域と、データ領域を有しており、射出成形により、ピットとグルーブが形成されている。また、本実施形態の磁気ディスク60のトラックピッチは0.35μmである。
【0185】
まず、直流マグネトロンスパッタリング装置に、Siターゲットを設置し、ディスク基板を基板ホルダーに固定した後、8×10ー6Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたまま0.4Paとなるまでチャンバー内にArガスとN2ガスを導入し、基板を回転させながら、反応性スパッタリングにより、SiN膜が形成される。
【0186】
そして、真空排気をしたまま真空室を移動し、Arガスを0.6Paとなるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、GdFeCoCrの合金ターゲットを用いて、GdFeCoCrの再生層63を30nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成される。次に、真空排気をしたまま真空室を移動し、Arガスを1.5Paとなるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、TbFeCoCrの合金ターゲットを用いて、TbFeCoCrの中間層64を20nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成される。そしてさらに、真空排気をしたまま、水素ガス分圧0.5%含有するKrガスを1.0Paとなるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、TbFeCoの合金ターゲットを用いて、TbFeCoの記録層65を70nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成される。
【0187】
ここで、TbFeCo、TbFeCoCr、GdFeCoの膜組成は、合金のターゲット組成比と製膜条件を調整することにより、所望の膜組成に合せることができる。
【0188】
さらに、0.3Paとなるまでチャンバー内にArガスとN2ガスを導入し、基板を回転させながら、SiNからなる誘電体保護層66を4nm、反応性スパッタリング法により膜形成されている。
【0189】
そして、さらに誘電体保護層66の上には、ポリウレタン系材料からなる、紫外線硬化型の樹脂をスピンコータで塗布し、紫外線を照射して硬化させて、オーバーコート層を形成する。
【0190】
ここで、TbFeCoからなる記録層は補償組成温度が−50℃であり、キュリー温度は310 ℃になるように膜組成を調整して製膜し、記録層の保磁力Hcは、室温からは温度上昇と共に減少するという膜特性が得られる。
【0191】
また、本実施形態の磁気記録媒体では、光ビームを照射した状態での温度勾配により、DWDD方式により信号を再生するため、再生層は、非晶質で微細な構造を有さず、磁壁移動が容易な膜構造である。これに対して、記録層は、上述した製造方法により構成により、記録膜に微細な構造を有し、微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成できる。また、レーザ光スポットを照射して、繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
【0192】
図7の、本実施形態の磁気記録媒体60の断面SEM写真に示すように、ディスク基板61の上に、誘電体層62、非晶質な膜構造の再生層63、中間制御層64、微細な柱状の孤立した磁気グレインを有する記録層65が形成されている。さらにその上に。誘電体保護層66が形成された構造を有する。
【0193】
さらに、本実施形態の磁気記録媒体では、再生層63の膜面垂直方向の磁気異方性が、中間層64の磁気異方性よりも大きい構成となっている。
【0194】
さらに、再生層63の薄膜の深さ方向の磁壁幅が、膜面面内方向よりも大きい構成とすることにより、記録層の記録ドメインが安定して再生層に転写されることとなる。
【0195】
したがって、従来の磁気記録媒体では、特に微細なマークを記録しようとした場合には、磁壁の移動により、記録磁区が拡大する、あるいは、消滅するために、安定した記録ができないという課題があった。また、このことは、記録密度が高密度化されると、特に顕著になり、熱安定性から、長期間保存した場合の、信頼性にも課題を有していた。さらに、微細な記録ドメインの転写では、再生層への転写が不安定になり、再生信号が劣化するという課題があった。
【0196】
これに対し、本願発明の磁気記録媒体は、ディスク基板上に、図7に示すような、ミクロなコラム構造を有する記録層を形成した磁気記録媒体であって、前記記録層が、水素元素を含有して結合した構成により、膜構造が安定化し、磁壁のピンニングサイトにより保磁力も増大し、高密度に記録した場合のマークの安定性を実現できる。また、環境温度等が変化した場合にも、記録膜の微細な構造を安定化させ、さらに、再生層へ安定して転写することが出来るため、温度変化に対する安定性に優れ、信号特性に優れた磁気記録媒体を実現できるものである。
【0197】
また、本実施形態の磁気記録媒体は、記録膜が形成された磁気ディスクのディスク基板側から、レーザ光ビームを照射し、情報を記録再生する構成について述べてきたが、磁気ヘッドにより信号を記録、再生検出することによって、再生時のレーザ光スポットの検出限界よりも、小さい記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できるものである。
【0198】
この時、本実施形態の磁気記録媒体は、情報の記録時には、ディスクが回転し、トラックに沿ってレーザ光ビームスポットを照射しながら磁気ヘッドで記録される。ここで、記録膜は、高温では保磁力が低下することから、磁気ヘッドでの記録が可能となる。また、信号再生時には、レーザ光ビームを照射して、温度上昇させながら、GMRヘッドにより、記録磁区を検出する。この時、記録膜は温度Tの上昇と共に、保磁力Hcは減少し、飽和磁化Msは極大温度まで増加する特性を有していれば、飽和磁化Msは温度と共に上昇し、100℃で極大となるため、GMRヘッドでの検出感度が向上し、再生信号が増大する。
【0199】
しかしながら、従来の記録媒体では、記録膜へレーザ光ビームを照射した際に、磁気ディスクの温度上昇と冷却過程での温度変化に伴い、記録磁区が不安定になり、磁壁の移動によって、記録ドメインが劣化するという課題があった。
【0200】
ここで、TbFeCoからなる記録層65は補償組成温度が−50℃であり、キュリー温度は310℃になるように膜組成を調整して製膜した。
【0201】
この結果、本実施形態の磁気記録媒体では、光ビームを照射した状態での温度、120℃で、飽和磁化Msが極大となり、また、保磁力Hcは、温度上昇と共に減少するという膜特性を有し、微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成でき、磁気ヘッドにより繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
【0202】
このような、本実施形態の磁気記録媒体は、情報の記録時には、ディスクが回転し、トラックに沿ってレーザ光ビームスポットを照射しながら磁気ヘッドで記録磁界を変調することにより記録される。この時、記録層は、高温では保磁力が低下することから、磁気ヘッドの磁界で記録が可能となる。また、信号再生時には、レーザ光ビームを照射して、温度上昇させながら、上記したDWDD方式を用いて、磁壁移動により、転写磁区を拡大させながら、GMRヘッドにより、再生磁区を検出する。この時、再生層の飽和磁化Msも温度と共に上昇する構成であれば、昇温時に再生信号が極大となるため、GMRヘッドでの検出感度が向上し、再生信号が増大する。
【0203】
ここで、図8に示すように、磁気記録媒体の記録層の面内方向での抵抗率と製膜圧力との関係では、製膜時のAr圧力を大きくすることにより、記録層の面内方向での抵抗率が増加することがわかる。さらに、抵抗率が、500μΩcm以上になると、100nm以下の微小な記録膜が安定して形成できることが確認できた。
【0204】
この時、記録層は、孤立した磁気グレインを形成しており、記録膜の抵抗率と微細な磁気グレインとの間には、密接な関連があると考えられる。抵抗率が増大する条件で記録層を形成することにより、記録層の膜中に微細な構造を形成でき、孤立した微小な磁気グレインを形成できることとなる。
【0205】
従来の磁気記録媒体では、記録膜へレーザ光ビームを照射した際に、磁気ディスクの温度上昇に伴い、微小な記録磁区が劣化するという課題があった。特に、記録膜へレーザ光ビームを照射した際に、磁気ディスクの温度上昇と冷却過程での温度変化に伴い、記録磁区が不安定になり、磁壁の移動によって、記録ドメインが劣化するという課題があった。また、磁気的にサーボピットを形成した場合には、サーボ信号の特性も変動する、あるいはそれに伴い記録再生特性が低下する等の課題を有していた。
【0206】
これに対し、本願発明の磁気記録媒体は、記録層が孤立した磁気グレインを形成して安定した構造を有することにより、環境温度の変化、あるいは、記録再生時に記録膜にレーザ光ビームを照射した際の磁気ディスクの温度変化にも、微細な記録磁区を安定して記録が可能となる。この結果、光ビーム等により記録膜を昇温させて、GMRヘッド等の磁気ヘッドを用いて信号再生する場合にも、熱耐久性に優れ、信号特性に優れた磁気記録媒体を実現できるものである。
【0207】
なお、本実施形態では、トラックピッチが0.35μmであったが、情報の記録されるグルーブ幅が0.6μm以下の構成であって、記録情報の最短のマーク長が0.3μm以下の記録ドメインを記録する構成であれば、より効果が大きい。
【0208】
さらに、本実施形態では、射出成形により、案内溝とプリピットとを形成した構成について述べてきたが、フォトポリマーを硬化させて、ピットと溝を形成した構成、あるいは、加熱したガラスにインプリント等を用いた基板の形成方法であっても、同等の効果が得られる。
【0209】
以上のように、本実施形態の構成により、高密度に記録再生した場合にも、安定した記録ドメインが形成でき、さらに優れた再生信号特性が得られる。また、情報トラックでの記録磁区が安定した形状に形成させるために、記録再生時に隣接トラックからのクロスライト及びクロストークも低減できるものである。
【0210】
次に、本実施形態の磁気記録媒体の記録再生装置について図面を参照にして詳細に説明する。
【0211】
本発明の実施形態における磁気記録媒体の記録再生装置は、図10に示すような構成を有する。図10に示すように、スピンドルモータ103に取り付けられた磁気ディスク101は、磁気ヘッド制御、検出回路106でコントロールされた磁気ヘッドにより、信号が記録再生される。また、光学ヘッド104は、レーザ駆動回路105により制御されたレーザ光をディスク上に照射しながら、磁気ヘッドでの記録再生を行なう。この時、モータ駆動回路107により、モータの回転駆動制御と、レーザ光のサーボ制御等が行われる。
【0212】
このような構成の記録再生装置を用いて、本実施形態の磁気ディスクは、水素と安定な結合状態の構造を有する記録層により、表面形状、あるいは磁気的に記録されたピットにより、トラッキングサーボをかけながら、情報の記録再生が可能となる。
【0213】
ここで、本実施形態の磁気ディスクでは、水素を含有した安定なマイクロ構造を有する記録層からなる構成により、高密度で微細な記録ドメインを記録した場合にも、安定した記録磁区を実現できるものである。
【0214】
ここで、光学ヘッドは、磁気ヘッドと反対方向に配置した構成について示してあるが、磁気ヘッドと同じ側から照射する構成、さらに、磁気ヘッドと光学ヘッド、あるいは光源とつながった導波路と一体となった構成であっても良い。
【0215】
以上のように、本実施形態の記録再生装置の構成により、微細な磁区を高密度に記録再生した場合にも、安定した記録ドメインを形成し、再生信号を検出できる、優れた記録再生信号特性が得られる記録再生装置を実現できるものである。
【0216】
以上のように、本実施形態の構成により、高密度に記録再生した場合にも、安定した記録磁区が形成でき、優れた再生信号が検出でき、しかも、信頼性の高い、磁気記録媒体とその製造方法、および、記録再生方法を実現できるものである。
【0217】
なお、本実施形態の磁気記録媒体の記録層は、相互に孤立した磁気グレインの集合体である構成について述べてきたが、記録層の膜面内方向に磁化の大きさが分布した構成、あるいは、記録層中の膜面内方向に保磁力の大きさが分布した構成、あるいは、記録層の膜面面内方向に、垂直磁気異方性が分布している構成であっても良い。あるいはさらに、記録層は、膜面面内方向での磁壁エネルギー密度、あるいは、磁壁幅が分布している構成であっても同等の効果が得られる。
【0218】
また、記録層の膜面面内方向での磁壁幅が膜厚よりも小さい構成により、さらに効果が大きい。そして、記録膜の各層の間で、磁壁エネルギー密度が異なる構成にすることにより、同等以上の効果が得られる。
【0219】
また、前記記録層の膜面面内方向での抵抗率が500μΩcm以上である構成、あるいは、磁気グレインの幅が50nm以下である構成について述べてきたが、この値に限定されるものではなく、相互に孤立した磁気グレインの集合体により、微細な記録ドメインが安定化される構成であれば、同等の効果が得られる。
【0220】
さらに、本実施形態では、再生層の膜面垂直磁気異方性が、中間層の磁気異方性よりも大きい構成について述べてきたが、さらに、中間層の磁壁エネルギー密度が、再生層の磁壁エネルギー密度より大きい構成、あるいは、再生層の磁壁エネルギーが膜面面内方向と膜面垂直方向で異なる構成であれば、同等以上の効果が得られる。
【0221】
また、本実施形態では、中間層の深さ方向での磁壁幅が、中間層の膜厚よりも小さい構成について述べてきたが、膜面面内方向での磁壁幅も同様に小さい構成であっても良い。
【0222】
さらに、本実施形態の磁気記録媒体の記録層では、下地層の凹凸を用いて、相互に孤立した磁気グレインの集合体である記録層の構成について述べてきたが、ディスク基板、あるいは下地層をエンボス加工した構成、あるいは、下地層表面を、凹凸加工した構成、さらに、記録マークに応じた微細な凹凸を形成した構成であっても、同等以上の効果が得られる。
【0223】
また、本実施形態の記録層では、Ar、Kr、Xeを含有する雰囲気中でスパッタリングする製造方法について述べてきたが、Ne、Ar、Kr、Xeの少なくともひとつを含有し、さらに混合した不活性ガスを用いても良い。
【0224】
また、磁気記録媒体の製造方法は、真空プロセス室の真空中で、イオンガンによるエッチング、あるいは、水素、窒素を含有する雰囲気中に保持し、気体分子を吸蔵、吸着させて記録膜に取り込む方法について述べてきたが、Arに対して、微量の酸素、あるいはその他のガスを含む雰囲気中に保持する方法であってもよい。また、磁気記録媒体を保持する雰囲気も、真空中のみでなく、1気圧以上の加圧雰囲気であってもよい。また、その条件も、保持する雰囲気のガスの種類と分圧、保持圧力、時間の条件を適宜設定して、記録膜に取込む製造方法であればよい。
【0225】
さらに、本実施形態では、イオンガンを用いて、TbFeCo記録層をエッチングし、記録層に水素を含有する製造方法について述べてきたが、Ne、Ar、Kr、Xeあるいは、その他のスパッタリングガスを用いて、記録層をイオン照射エッチング、プラズマエッチング等のドライエッチングを行う製造方法であっても良い。
【0226】
また、記録層形成後、あるいはその他の薄膜層形成後に、エッチング工程により、記録層の抵抗率を増大させた構成について述べてきたが、エッチング電力、照射するイオンガスの種類を変化させた方法であっても良い。
【0227】
また、本実施形態では、7×10ー6Pa以下の高真空に真空排気された真空プロセス室内に、Arガスを導入して製膜する製造方法について述べてきたが、記録層形成前の到達真空度が、5×10−5Pa以下である真空プロセス室に、スパッタリングガスを導入して前記記録層を膜成長させる製膜する製造方法であれば、同等の効果が得られる。
【0228】
また、本実施形態の記録層の製造方法では、記録層TbFeCo製膜時に、製膜速度、ディスク基板の回転数を制御することにより、TbとFe、Coの膜のミクロな構造を変化させることができ、磁気異方性の大きい非晶質な膜構造の磁性薄膜を用いても良い。より具体的には、TbFeCoの記録層製膜時に、40rpmで自公転の回転をしながら、それぞれの元素粒子が、0.5nm/secの製膜レートで、それぞれ製膜することにより、上記膜構造が可能である。
【0229】
また、本実施形態の記録層の構成は、磁気的超解像を用いた多層構造について述べてきたが、記録情報を保持しておく記録層を有する構成であれば同様の効果が得られる。この時、単層、あるいは、再生情報の信号量を増大させるための再生層と記録層とで構成され、2層間相互に磁気的に交換結合されている構成であっても良い。
【0230】
また、ここで、TbFeCoからなる記録層について述べてきたが、希土類金属―遷移金属合金を用いた磁性薄膜であって、少なくともTb、Gd、Dy、Nd、Ho、Pr、Er等の希土類金属材料のひとつと、Fe、Co、Ni等の遷移金属を含む磁性薄膜であれば良い。
【0231】
また、GdFeCoCrの再生層について、述べてきたが、GdFeCoAl、あるいはその他の材料組成、あるいは、さらに、それらの材料を用いた構成、あるいは、多層に積層した構成であってもよい。
【0232】
あるいはさらに、記録層のTbFeCo製膜時に、製膜速度、光ディスク基板の回転数を制御することにより、TbとFe、Coの遷移金属とを、周期構造に積層した構成であっても良い。この時の積層周期としては、少なくとも2.0nm以下の周期的な積層構造にすることにより、記録層の飽和磁化Msと保磁力Hcとの積Ms・Hcを増大させることができる。実際、1.0nmの積層周期の記録層では、4.0×106erg/cm3という大きなMs・Hc値が得られ、50nm以下の微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成でき、繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
【0233】
また、本実施形態の光磁気記録媒体の記録層は、TbとFeCoの積層周期が0.3nm以上、4nm以下に積層した構成であって、記録層の膜厚を20nm以上、より好ましくは、40nmから200nmに形成した構成であれば、同等の効果が得られる。また、TbとFe、Coの遷移金属が周期的な積層構成に限定されるものではなく、Tb、Fe、Coそれぞれ異なるターゲット、あるいは、それ以外の材料を含む構成であっても、2nm以下の積層周期を有する記録層の構成であればよい。
【0234】
また、TbFeCoからなる記録層のキュリー温度は300℃から330 ℃に設定していたが、磁気ヘッドの特性、光学ヘッドによる温度上昇の条件、さらに、環境温度の許容範囲に応じて、少なくとも150℃以上の温度範囲に設定すれば良い。
【0235】
なお、ここで、磁気記録媒体の磁気特性の変化は、ディスク基板、あるいは下地層の変化にも依存しており、保磁力、飽和磁化、磁束密度、磁気異方性、あるいはそれらの温度特性等を含めて本願発明の記録層に調整すれば、同等以上の効果が得られる。
【0236】
また、本実施形態では、DWDD方式を用いた磁気的超解像を用いた磁気ディスクについて述べてきたが、また、その膜構成は、再生層、中間層、記録層、あるいはさらに制御層を含む構成について述べてきたが、この構成に限定されるものではなく、RAD、FAD、CAD、あるいは、ダブルマスク方式の磁気的超解像方式、あるいは、MAMMMOS方式等の転写した磁区が拡大再生されるような膜構成の磁気記録媒体であっても良い。また、記録膜の構成も、記録層、中間層、再生層の3層構造に限定されず、必要な機能を有した多層膜を形成した構成であれば良い。
【0237】
また、DWDD方式を用いた磁気記録媒体では、凹凸、あるいは、面粗さの異なるピットを形成したディスク基板について述べてきたが、グルーブ、あるいは、ランドを有し、記録トラック間を分離する構成であっても良い。あるいは、トラック間に案内溝を設けて、アニール処理をする構成であっても良い。このような構成であれば、情報の記録されるトラック間が磁性的遮断され、再生層に転写された記録磁区が容易に磁壁移動する構成を実現でき、DWDD方式での信号特性が、さらに優れた磁気記録媒体を実現できる。このように、グルーブ、あるいは、ランドの凹凸により、記録トラック間の分離を行なうと、0.1μm以下の微小磁区を安定して形成し、DWDD方式による転写磁区の磁壁の移動度を確保でき、再生信号特性に優れた磁気ディスクを実現することができる。さらに、記録再生時に隣接トラックからのクロスライト及びクロストークも低減できるものである。
【0238】
なお、ディスク基板の材料は、ガラス、Al合金の金属、ポリカーボネートについて述べてきたが、その他の金属材料、プラスチック材料等を用いても良い。
【0239】
また、上記本実施形態の磁気ディスクは、ディスク基板表面にフォトポリマーによりピットを形成した構成、あるいは、インプリント等を用いた方法について述べてきたが、ディスク基板表面を直接エッチングにより加工した構成、あるいは、直接ピットの加工、あるいは、ガラスを加熱溶融して転写させることによりピット形成を行なっても良い。あるいは、インプリント等を用いてフォトポリマーに転写させる方法であっても良い。また、表面粗さを利用したディスク基板の場合には、フォトレジスト原盤を直接エッチングにより加工して作製したスタンパを用いて、ディスク基板に転写させた形成、あるいは、ディスク基板上に形成した下地表面を直接エッチングする方法でも良い。
【0240】
また、自己組織化された有機の微粒子を塗布したディスク基板上に、記録層を形成する方法であっても、微粒子のパターンの大きさまで高密度に記録が可能となる。さらに、微粒子を、均一な特性を有し、直径の小さいものを用いれば、さらに高密度での記録が可能となる。あるいは、自己組織化された微粒子の形状を、ディスク基板上に、転写形成した構成であっても良い。特に、微粒子を塗布、あるいは、転写してからエッチング等を行なえば、同等の効果が得られる。
【0241】
さらに、本実施形態では、トラックピッチは、0.25μmから0.4μmのディスク基板について説明してきたが、情報の記録されるグルーブ幅が0.6μm以下の構成であって、記録情報の最短のマーク長が0.3μm以下の記録ドメインを記録する構成であればよい。また、記録トラック、線記録密度が小さくなった場合には、より効果が大きい。
【0242】
なお、本実施形態のプリピットの深さ、大きさは限定していないが、より好ましくは、10nmから200nmの範囲にある深さのプリピットを有する構成、またサーボピット、アドレスピット等のプリピットからの信号が磁気ヘッドにより検出可能でできるだけ小さい構成であれば、同等以上の効果を実現できる。
【0243】
なお、本実施形態では、表面形状の異なるプリピット、あるいは、磁気的な記録によるプリピットが形成し、アドレスを検出する方法について述べてきたが、グルーブ、あるいは、ランドをウォブルさせてアドレス情報を検出する方法であっても良い。その場合、グルーブ、あるいは、ランドの片側のみをウォブルさせることもできる。
【0244】
また、ディスク基板と誘電体の下地層との間に、熱伝導率の大きい熱吸収層を形成し、さらに、熱伝導率の小さい層を形成して、ディスク内での温度分布、熱伝導を制御した構成であっても良い。
【0245】
また、下地層としては、ディスク基板上にSiN、AlTiN、ZnSSiO2、TaO、AgCuについて述べてきたが、AlTi、AlCr、Cr、Ti、Taあるいはその他の材料の酸化物、あるいは窒化物、あるいはカルコゲン系化合物等のII−VI族、III−V族化合物、あるいはさらに、Al、Cu、Ag、Au、Pt等の金属材料、あるいはそれらを含む混合材料であっても良い。
【0246】
またこれらの材料を、保護膜材料として用いても良い。
【0247】
そして、さらに保護層には、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる固体潤滑層をArとCH4の混合雰囲気中で、Cターゲットを用いて、反応性RFスパッタリングにより形成する方法について述べてきたが、CVD等を用いてDLC膜を形成すると、さらに緻密な膜の形成が可能になる。
【0248】
また、スパッタリングで形成したアモルファスカーボンの保護層について述べてきたが、表面粗さ、Raが小さく、摩擦係数の小さい材料で、膜強度の大きい材料であれば、これに限定されるものではない。
【0249】
また、さらに保護層として、エポキシアクリレート系からなる樹脂、あるいはウレタン系樹脂を用いて、スピンコートにより5μm程度の均一な膜厚に塗布し、紫外線ランプを照射して硬化、あるいは、熱的に硬化させることにより形成する方法であっても良い。
【0250】
さらに、パーフルオロポリエーテルからなる潤滑保護層を塗布する構成について述べてきたが、スピンコート、あるいは、ディッピング等を用いれば良い。また、潤滑層も下地の保護層上で安定した材料であれば良い。
【0251】
また、本願発明の磁気記録媒体に、テープバーニッシュ処理をさらに追加して、表面を傷つくことなく異物、突起などが除去され、内周から外周端まで膜厚分布で均一で平滑性の良好な塗布する工程を用いても良い。
【0252】
また、ディスク基板は、両面タイプであっても良い。その場合には、サーボピットは両面に形成し、記録層、保護層の形成を両面に行なう必要がある。また、記録再生装置では、記録膜両面に、磁気ヘッドを取り付けたドライブ構成にする必要がある。
【0253】
さらに、両面に成膜後、媒体表面をテープバーニッシュ装置に装着し、回転させながら両面を内周から外周に向かってテープバーニッシュすることで、異物、突起などを除去した構成であっても良い。
【0254】
以上述べてきたように、本願発明の磁気記録媒体では、ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に記録層を備えた構成の磁気記録媒体であって、前記記録層が磁気グレインごとに分離し、磁気的に孤立した記録ドメインを形成する構成、あるいは、相互に孤立した磁気グレインの集合体により、記録膜中に微細な構造を形成し、記録膜の比抵抗が大きい特性を有する構成により、微細な記録磁区を安定して記録することができ、再生信号振幅を劣化させることなく、記録密度の大幅な向上が可能となる。また、光を照射して記録膜の温度を上昇させながら磁気記録再生する記録媒体においても、サーボ特性が安定して、信頼性を高めることができ、ディスクの生産性、コストを大幅に向上できる。
【0255】
さらに、高密度記録での、繰り返し書き換えを行なった場合にも、安定した記録再生特性が得られ、信号特性の優れた信号特性の磁気記録媒体とその製造方法、および、記録再生方法を提供することが実現可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0256】
本発明の磁気記録媒体は、高密度の情報の記録が可能であり、情報蓄積デバイス、メモリー媒体として有用であり、適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0257】
【図1】本発明の第1の実施形態における磁気記録媒体の構成を示す断面図
【図2】(a)本発明の実施形態における磁気記録媒体の断面をSEM観察した特性図(b)従来の磁気記録媒体の断面をSEM観察した特性図
【図3】本発明の第2の実施形態における磁気記録媒体の構成を示す断面図
【図4】本発明の第3の実施形態における磁気記録媒体の構成を示す断面図
【図5】本発明の実施形態における磁気記録媒体の記録層薄膜の抵抗率と、記録層へのエッチング時間との関係を示す特性図
【図6】本発明の第5の実施形態における磁気記録媒体の構成を示す断面図
【図7】本発明の第6の実施形態における磁気記録媒体の構成を、SEM観察した断面構成図
【図8】本発明の実施形態における磁気記録媒体の記録層薄膜の抵抗率と、記録層の製膜ガス圧力との関係を示す特性図
【図9】本発明の実施形態における磁気記録媒体を製造するための、製造装置を示す構成図
【図10】発明の実施形態における磁気記録媒体の記録再生装置の構成を示す図
【図11】DWDD方式の再生原理について説明する図
【符号の説明】
【0258】
1,10,30,50 磁気ディスク
2,11,31,51 ディスク基板
3,12,33,52 誘電体層
4 下地磁性層
5,13,34,53 記録層
14,35,54 中間層
15,37,55 再生層
6,16,38,56 誘電体保護層
7,17,39,57 潤滑層
8 テクスチャー処理
32 フォトポリマー
36 制御層
101 磁気ディスク
102 磁気ヘッド
103 スピンドルモータ
104 光学ヘッド
【技術分野】
【0001】
本発明は書き換えが可能な磁気記録媒体、あるいは、記録媒体に光を入射して温度上昇させながら信号を記録再生する磁気記録媒体において、特に高密度記録を実現できる磁気記録媒体とその製造方法、および、その記録再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光磁気記録媒体や相変化記録媒体などの光記録媒体は大容量・高密度記録が可能な可搬型記録媒体であり、近年のマルチメディア化に伴うコンピュータの大容量ファイルや動画を記録する媒体として需要が急増しつつある。
【0003】
光記録媒体は一般にプラスチック等の透明な円盤状の基板に記録層を含む多層膜を形成した構成を有する。この光記録媒体に、レーザを照射して、フォーカスサーボ、および、案内溝、あるいは、プリピットを用いて、トラッキングサーボをかけながら、情報の記録、消去を行い、レーザの反射光を用いて信号を再生する。
【0004】
光磁気記録媒体は、従来、固定磁界を加えて消去した後、反対方向の固定磁界を加えて記録するいわゆる光変調記録が中心であったが、近年、レーザを照射しながら、磁界を記録パターンに従って変調させる磁界変調方式が、1回転で記録(ダイレクトオーバーライト)可能であり、しかも高記録密度であっても正確に記録できる方式として注目を浴びている。また、相変化記録媒体は、光変調記録によりダイレクトオーバーライト可能で、CDやDVDと同じ光学系で再生可能であるために注目を浴びている。
【0005】
光記録媒体の記録密度の限界は光源のレーザ波長(λ)によって決まる回折限界(〜λ/2NA:NAは対物レンズの開口数)に依存している。また最近は、対物レンズを2枚組にすることで0.8以上のNAをもったシステムが提案されて、開発が活発に行われている。記録再生のためのレーザは従来、基板を通して記録膜に照射されていたが、NAが大きくなるほど光が基板を通過した時の基板の傾きなどによる収差が大きくなるため、基板厚みを薄くする必要がある。
【0006】
また、磁気記録媒体では、媒体の改良と、GMRヘッド等の実用化により、光記録媒体よりも高記録密度を実現しているが、さらに高密度の磁気記録媒体を実現するためには、記録膜の高密度化技術、および、ディスク−ヘッドのインターフェース技術の改良が必須である。
【0007】
また、光磁気記録媒体では、例えば、特許文献1には、磁壁移動によって、見かけ上の再生信号を増大させる技術が考案されているが、記録膜に高密度化に記録するという点では課題があった。
【0008】
さらに、磁気記録の場合には、記録ドメインの微細化、高密度化により、記録磁区の熱安定性の問題が重要な課題となっており、記録磁区の安定性と、情報蓄積メディアとしての信頼性を確保することが必要であった。
【特許文献1】特開平6−290496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の磁気記録媒体では、高密度化した場合には、記録磁区の熱安定性の課題があるため、さらに磁気異方性を増大させる必要があった。
【0010】
また、FePt系の磁性材料は、磁気異方性は大きい特性を有するが、結晶配勾性を揃えるために、高温でのアニール処理が必要であった。
【0011】
また、希土類金属―遷移金属系の材料は、アモルファス材料であるために、磁壁移動により、微小な記録マークの磁区が不安定になり消滅するという課題があった。
【0012】
さらに、いずれの方法でも、記録マークの微細化による高密度記録による安定性と、情報蓄積メディアとしての、十分な長期信頼性を確保する事が難しい、という課題がある。
【0013】
本発明の目的は、磁気記録再生を行なう記録媒体において、磁気グレインごとに分離し、磁気的に孤立した構成、あるいは、記録膜中に微細な構造を形成し、記録膜の抵抗率が大きい特性を有する構成により、高密度で記録した場合にも、記録情報の安定性を確保し、信号特性に優れた磁気記録媒体を提供することである。
【0014】
また、光を照射して記録膜の温度を上昇させながら磁気記録再生する記録媒体においても、微細な記録マークの安定性を高め、信号特性に優れた磁気記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上述のような現状に鑑み、鋭意検討を重ね、以下のような本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明の磁気記録媒体は、ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に磁気異方性を有する記録層を備えた記録膜により構成された磁気記録媒体であって、少なくとも前記記録層は、相互に孤立した磁気グレインの集合体であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0017】
あるいは、ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に磁気異方性を有する記録層を備えた記録膜により構成された磁気記録媒体であって、前記記録層中の膜面内方向に、磁化の大きさが分布した構成を有することを特徴とする磁気記録媒体である。
【0018】
さらに、前記記録層中の膜面内方向に、保磁力の大きさが分布した構成を有することを特徴とする磁気記録媒体である。
【0019】
あるいは、前記記録層の膜面面内方向に、垂直磁気異方性が分布していることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0020】
また、前記記録層の膜面面内方向での磁壁エネルギー密度、あるいは、磁壁幅が分布していることを特徴とする磁気記録媒体、あるいは、前記記録層の膜面面内方向での磁壁幅が膜厚よりも小さいことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0021】
また、本発明の磁気記録媒体は、前記記録層の膜面面内方向での抵抗率が500μΩcm以上であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0022】
あるいは、前記記録膜が、コラム状の断面構造により分離されていることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0023】
さらに、前記記録層がコラム構造形状の構造を形成し、前記コラム構造の構造単位が互いに孤立した構成を有することを特徴とする磁気記録媒体である。
【0024】
また、前記記録層の前記磁気グレインの幅が、50nm以下であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0025】
さらに、前記記録膜が、下地層の形状によって分離され、相互に孤立した磁気グレイン構造を有することを特徴とする磁気記録媒体である。
【0026】
あるいは、前記記録膜の孤立した境界に、気体分子が取込まれた構成であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0027】
さらに、前記取り込まれた気体分子としては、H、N、O、He、Ne、Ar、Kr、Xeが含まれることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0028】
また、前記記録膜は、希土類金属を含有することを特徴とする磁気記録媒体であり、前記希土類金属は、Tb、Gd、Dyの少なくとも一つを含むことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0029】
さらに、前記記録層の膜厚は、10nm以上400nm以下であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0030】
そして、前記記録層に磁気的に結合した再生層を含む多層膜に構成された記録膜であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0031】
あるいは、少なくとも、記録層、再生層を含む多層膜に構成された記録膜であって、前記記録膜を構成する各層の間で、磁壁エネルギー密度が異なることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0032】
また、前記記録膜が、さらに中間層を含み、前記中間層の磁壁エネルギー密度が、前記再生層の磁壁エネルギー密度より大きいことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0033】
さらに、前記再生層の、膜面垂直磁気異方性が、中間層の磁気異方性よりも大きいことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0034】
また、前記再生層の磁壁エネルギーは、膜面面内方向と、膜面垂直方向で異なることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0035】
あるいは、前記再生層は、磁壁抗磁力が小さいことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0036】
また、中間層の膜面面内方向での磁壁幅が小さいことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0037】
さらに、中間層は、深さ方向での磁壁幅が膜厚よりも小さいことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0038】
また、前記ディスク基板表面に、エンボス加工したことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0039】
さらに、前記記録層形成前の下地層表面を、凹凸加工したことを特徴とする磁気記録媒体である。
【0040】
また、本発明の磁気記録媒体の製造方法は、ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に磁気異方性を有する記録層を形成する磁気記録媒体の製造装置において、磁気グレインの相互に孤立して膜成長させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。
【0041】
あるいは、ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に磁気異方性を有する記録層を形成する磁気記録媒体の製造装置において、表面粗さを0.5nm以上である下地層の上に、前記記録層のグレインを相互に分離して膜成長させたことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。
【0042】
さらに、本発明の磁気記録媒体の記録再生方法は、前記磁気記録媒体に、レーザ光スポットを照射することにより、前記記録層を昇温させながらディスク上の情報信号を記録再生することを特徴とする磁気記録媒体の記録再生方法である。
【0043】
あるいは、前記磁気記録媒体上の情報信号を、磁気ヘッドを用いて記録再生することを特徴とする磁気記録媒体の記録再生方法である。
【発明の効果】
【0044】
磁気記録媒体において、ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に記録層を備えた構成の磁気記録媒体であって、前記記録層が磁気グレインごとに分離し、磁気的に孤立した記録ドメインを形成する構成、あるいは、相互に孤立した磁気グレインの集合体により、記録膜中に微細な構造を形成し、記録膜の比抵抗が大きい特性を有する構成により、微細な記録磁区を安定して記録することができ、再生信号振幅を劣化させることなく、記録密度の大幅な向上が可能となる。また、光を照射して記録膜の温度を上昇させながら磁気記録再生する記録媒体においても、サーボ特性が安定して、信頼性を高めることができ、ディスクの生産性、コストを大幅に向上できる。
【0045】
さらに、高密度記録での、繰り返し書き換えを行なった場合にも、安定した記録再生特性が得られ、信号特性の優れた信号特性の磁気記録媒体とその製造方法、および、記録再生方法を提供することが実現可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下に、実施形態をもって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り以下の実施形態に限定されるものではない。
【0047】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態について図面を参照にして詳細に説明する。
【0048】
図1は本発明の実施の形態1における磁気記録媒体(以下、磁気ディスク)1の構造を示す断面図である。図1において、2は結晶ガラスからなる透明なディスク基板、3は誘電体層、その上に、4の下地磁性層、5の記録層からなる磁性記録膜、さらに6は、記録膜を保護する誘電体保護層を順次積層した構成である。さらに、その上に、記録膜の保護と摺動のための潤滑層7が積層され、表面をテクスチャー処理8されている。
【0049】
磁気ディスク1は、案内溝を有した構成であり、情報を記録するトラックのグルーブと、ランドが形成されている。また、サーボのためのピット領域と、情報を記録するデータ領域とにより構成された場合には、ピット領域は、トラッキングサーボとアドレス検出のための、プリピットが形成されている。
【0050】
図1で示した本発明の実施の形態1の磁気記録媒体は、レーザ光スポットを記録膜に集光させて照射し、情報信号に応じて磁気ヘッドで変調された信号を記録し、信号再生時には、光学ヘッドにより偏光面の揃ったレーザ光スポットを照射し、記録磁区からの反射光あるいは透過光を検出して再生することによって、高密度に記録された記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。
【0051】
あるいは、磁気ディスクの記録再生装置では、情報の記録時には、ディスクが回転し、情報信号に伴って変調された記録信号により、光ヘッドによりレーザ光を照射しながら磁気ヘッドで変調されて記録される。また、信号再生時には、磁気ヘッドにより、記録磁区からの磁束を検出して再生する。
【0052】
しかしながら、従来の記録媒体では、特に微細なマークを記録しようとした場合には、磁壁の移動により、記録磁区が拡大する、あるいは、消滅するために、安定した記録ができないという課題があった。また、このことは、記録密度が高密度化されると、特に顕著になり、熱安定性から、長期間保存した場合の、信頼性にも課題を有していた。
【0053】
ここで、本実施形態の記録膜についてさらに詳しく説明する。図1において、ポリカーボネートからなるディスク基板2は、誘電体層3を介して、積層した下地磁性層4、記録層5が形成されている。下地磁性層4は、情報を保持しておく記録層5に磁気的に孤立した膜構造を形成するための制御を行い、記録層5との間は交換結合している構成である。さらに、磁性記録膜の上には、誘電体保護層6、潤滑層7が形成されて構成されている。
【0054】
次に、本願発明の実施の形態1の磁気ディスク1の構成と作製方法について詳細に説明する。
【0055】
図1に示すように、ディスク基板2に、磁性薄膜の記録膜を含む構成に積層して形成されている。ディスク基板2は、記録トラックにピット領域と、データ領域が形成されている。また、本実施形態の磁気ディスク1のトラックピッチは0.3μmである。
【0056】
まず、グルーブとランドを有するスタンパを用いて、加圧したインプリント法を用いて、ディスク基板2を形成する。
【0057】
次に、直流マグネトロンスパッタリング装置に、Siターゲットを設置し、ディスク基板を基板ホルダーに固定した後、7×10ー6Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたまま0.3Paとなるまでチャンバー内にArガスとN2ガスを導入し、基板を回転させながら、SiNからなる誘電体の誘電体層3を50nm、反応性スパッタリング法により膜形成される。
【0058】
さらに、Arガスを、0.5Paとなるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、Gd、Fe、Coそれぞれのターゲットを用いて、GdFeCoの下地磁性層4を35nmを、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。さらに、Tb、Fe、Co、Crそれぞれのターゲットを用いて、Arガスを2.5Paとなるまでチャンバー内に導入して、TbFeCoの記録膜5を100nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。
【0059】
ここで、膜組成は、ターゲットの投入パワー比を調整することにより、所望の膜組成に合せることができる。
【0060】
本願発明の実施形態の製造方法では、TbFeCoからなる記録層5は補償組成温度が−50 ℃であり、キュリー温度は320℃になるように各ターゲットの投入パワーを設定して組成を調整して製膜し、この組成により、室温での保磁力が15koeと大きく、膜面垂直方向の磁気異方性も大きい記録層が形成できる。また、記録層製膜時に、下地磁性層を形成した後に、2Pa以上のArガス中でスパッタリングすることにより、コラム状の微細な構造を有する記録膜を形成できる。
【0061】
図2本発明の実施形態における磁気記録媒体の断面をSEM観察した特性図(a)と、従来の磁気記録媒体の断面をSEM観察した特性図(b)、を示す。図に示すように、従来の磁気記録媒体の記録層では、膜が連続的に形成されているため、容易に磁壁が移動する。これに対して、本実施形態の磁気記録媒体の記録層は、コラム状の微細な構造が形成されており、コラム間では、磁気的に孤立した特性を有する。
【0062】
このため、情報信号を、微小磁区として記録した場合にも、安定した記録磁区を形成できる。また、信号の繰り返し記録再生した場合にも、信号特性の劣化の少ない、優れた記録再生が可能となる。
【0063】
したがって、従来の磁気記録媒体では、特に微細なマークを記録しようとした場合には、磁壁の移動により、記録磁区が拡大する、あるいは、消滅するために、安定した記録ができないという課題があった。また、このことは、記録密度が高密度化されると、特に顕著になり、熱安定性の問題からも、長期間保存した場合の、信頼性にも課題を有していた。
【0064】
これに対し、本願発明の磁気記録媒体は、ディスク基板上に、記録層を形成した磁気記録媒体であって、前記記録層が、微細な膜構造を有する構成により、孤立した磁気グレインを形成することにより、高密度に記録した場合のマークの安定性を実現できる。また、環境温度等が変化した場合にも、記録膜の微細な構造を安定化させることが出来るため、温度変化に対する安定性に優れ、信号特性に優れた磁気記録媒体を実現できるものである。
【0065】
(実施の形態2)
以下、本発明をその実施の形態について図面を参照にして詳細に説明する。
【0066】
図3は本発明の実施の形態2における磁気記録媒体10の構造を示す断面図である。図3において、11はAl合金からなるディスク基板、12は誘電体層、その上に、13の記録層、14の中間層、15の再生層からなる磁性記録膜、さらに16は、記録膜を保護する誘電体保護層を順次積層した構成である。さらに、その上に、記録膜の保護と摺動のための潤滑層17がコーティングされて積層されている。
【0067】
磁気ディスク10は、案内溝を有した構成であり、情報を記録するトラックのグルーブ18a、bと、ランド19a、bが形成されている。また、サーボのためのピット領域と、情報を記録するデータ領域とにより構成された場合には、ピット領域は、トラッキングサーボとアドレス検出のための、プリピットが形成されている。
【0068】
図3で示した本発明の実施の形態2の磁気記録媒体は、レーザ光スポットを記録膜に集光させて、磁気ヘッド、あるいは、光学ヘッドにより信号を記録、再生検出することによって、高密度に記録された記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。
【0069】
本実施形態の磁気ディスクの記録再生装置では、情報の記録時には、ディスクが回転し、情報信号に伴って変調された記録信号により、光ヘッドによりレーザ光を照射しながら磁気ヘッドで変調されて記録される。また、信号再生時には、光学ヘッドにより、偏光面の揃ったレーザ光スポットを照射し、記録磁区からの反射光あるいは透過光を検出して再生する。
【0070】
しかしながら、従来の記録媒体では、特に微細なマークを記録しようとした場合には、磁壁の移動により、記録磁区が拡大する、あるいは、消滅するために、安定した記録ができないという課題があった。また、このことは、記録密度が高密度化されると、特に顕著になり、熱安定性から、長期間保存した場合の、信頼性にも課題を有していた。
【0071】
ここで、本実施形態の記録膜についてさらに詳しく説明する。
【0072】
図3において、Al合金からなるディスク基板11は、誘電体層12を介して、積層した磁性記録膜13、14、15が形成されている。磁性記録膜は、情報を保持しておく記録層13、情報を磁壁の移動によって検出するための再生層15、再生層と記録層の間の交換結合を制御するための中間遮断層(あるいは、中間層)14、により構成されている。さらに、磁性記録膜の上には、誘電体保護層16、潤滑層17が形成されて構成されている。
【0073】
図3で示した本発明の実施の形態2の磁気記録媒体は、光ビームによる温度勾配により、差し掛かった磁壁を次々と移動させこの磁壁の移動を光学ヘッドにより検出することによって、再生時に信号検出感度を向上させて超解像再生が可能となるDWDD方式を磁気記録媒体に適用できる構成である。
【0074】
上述した構成に積層した記録膜は磁壁の移動を利用して、再生信号の振幅、および信号量を大きくする方法であるDWDD方式(Domain Wall Displacement Detection)の一例であり、例えば特許文献1記載される如く、大きな界面飽和保磁力を有する磁性膜を記録層とし、小さな界面飽和保磁力を有する磁性膜を磁壁移動する再生層とし、比較的低いキュリー温度を有する磁性膜を切り換えのための中間層として用いている。したがって、DWDD方式を可能にする磁性膜を用いていれば良く、この膜構成に限るものではない。
【0075】
上記したDWDD方式の再生原理について、図11を参照しながら説明する。
【0076】
図11(a)は、回転している磁気ディスクの記録膜の断面を示す図であり、ディスク基板、誘電体層(図示していない)に、再生層113、中間層114、記録層115の3層構成の記録膜により構成され、さらに図示していないが、誘電体層、保護層あるいは潤滑摺動層が形成されている。
【0077】
再生層113としては、磁壁抗磁力の小さい磁性膜材料を用いており、中間層114はキュリー温度の小さい磁性膜、記録層115は小さなドメイン径でも記録磁区を保持できる磁性膜を用いている。ここで、磁気記録媒体の再生層は、記録トラック間にガードバンド等を形成することにより、閉じていない磁壁を含む磁区構造を形成している。
【0078】
図に示すように、情報信号は、記録層に熱磁気記録された記録磁区として形成されている。レーザ光スポットの照射されていない室温での記録膜は記録層、中間層、再生層がそれぞれ強く交換結合しているため、記録層の記録磁区は、そのまま再生層に転写形成される。
【0079】
図11(b)は、(a)の断面図に対応した位置χと記録膜の温度Tとの関係を表す。図示されているように、記録信号の再生時には、ディスクが回転し、トラックに沿ってレーザ光による再生ビームスポットが照射される。この時、記録膜は、図11(b)に示すような温度分布を示し、中間層(あるいは中間遮断層、スイッチング層)がキュリー温度Tc以上となる温度領域Tsが存在し、再生層と記録層との交換結合が遮断される。
【0080】
また、再生ビームが照射されると、図11(c)の磁壁エネルギー密度σに対する依存性に示すように、図11(a)、(b)の位置に対応するディスク回転方向のχ方向に磁壁エネルギー密度σの勾配が存在するために、図11(d)に示すように、位置χでの各層の磁壁に対して磁壁を駆動させる力Fが作用する。
【0081】
この記録膜に作用する力Fは、図に示すように磁壁エネルギー密度σの低い方に磁壁を移動させるように作用する。再生層は、磁壁抗磁力が小さく磁壁の移動度が大きいので、閉じていない磁壁を有する場合の再生層単独では、この力Fによって容易に磁壁が移動する。従って、再生層の磁壁は、矢印で示したように、より温度が高く磁壁エネルギー密度の小さい領域へと瞬時に移動する。そして、再生ビームスポット内を磁壁が通過すると、スポット内での再生層の磁化は光スポットの広い領域で同じ方向に揃う。
【0082】
この結果、記録磁区の大きさに依らず、再生磁区の大きさは、常に一定の最大振幅になる。このため、光学ヘッド、あるいは、GMRヘッド等の磁気ヘッドを用いて信号再生する場合にも、光ビーム等による温度勾配により、再生層での転写磁区を拡大することにより、常に一定の最大振幅の信号量になる。
【0083】
次に、本願発明の実施の形態2の磁気ディスク10の構成と作製方法について詳細に説明する。
【0084】
図2に示すように、Al合金の金属からなる研磨されたディスク基板11に、磁性薄膜の記録膜を含む構成に積層して形成されている。ディスク基板11は、記録トラックにピット領域と、データ領域が形成されている。また、本実施形態の磁気ディスク1のトラックピッチは0.3μmである。
【0085】
まず、グルーブ18a、bとランド19a、bを有するスタンパを用いて、加熱したインプリント法により、図に示すような、ディスク基板11を形成する。
【0086】
まず、図示すように、Al合金のからなるディスク基板11の表面にフォトポリマーを用いてピットを形成し、ピット形状以外の部分は、マスクを通してイオンガンによりエッチングすることにより、表面粗さをRa0.5nm以上と、Raの異なるプリピットが形成できる。あるいは、磁気的なプリピットを形成する場合には、ディスク基板に記録膜作製後に、磁気転写、あるいは、サーボライター等を用いて記録する。
【0087】
まず、直流マグネトロンスパッタリング装置に、AlTiターゲットを設置し、ディスク基板を基板ホルダーに固定した後、7×10ー6Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたまま0.3Paとなるまでチャンバー内にArガスとN2ガスを導入し、基板を回転させながら、AlTiNからなる誘電体の誘電体層12を50nm、反応性スパッタリング法により膜形成される。
【0088】
そして、Arガスを、2.5Paとなるまでチャンバー内に導入して、Tb、Fe、Co、Crそれぞれのターゲットを用いて、基板を回転させながら、TbFeCoの記録膜13を100nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。さらに、同じターゲットを用いて、TbFeCoCrの中間層14を20nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。さらに、Arガスを、0.5Paとなるまでチャンバー内に導入し、Gd、Fe、Coそれぞれのターゲットを用いて、GdFeCoの再生層13を35nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。
【0089】
ここで、膜組成は、ターゲットの投入パワー比を調整することにより、所望の膜組成に合せることができる。
【0090】
本願発明の実施形態の製造方法では、TbFeCoからなる記録層13は補償組成温度が70℃であり、キュリー温度は300℃になるように各ターゲットの投入パワーを設定して組成を調整して製膜し、この組成により、室温での保磁力が19koeと大きく、膜面垂直方向の磁気異方性も大きい記録層が形成できる。また、基板表面に微細な凹凸を形成し、表面粗さRaが0.5nm以上のディスク基板上に、誘電体層、記録層を順次積層することにより、孤立した磁気グレインの集合体の記録層を形成できるため、情報信号の微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成できる。また、信号の繰り返し記録再生した場合にも、信号特性の劣化の少ない、優れた記録再生が可能となる。
【0091】
ここで、ディスク基板11が、凹凸、あるいは、表面粗さの異なるプリピットを有する構成には、スタンパを用いて、インプリントによりディスク基板11に転写する、あるいは、イオンエッチングによりピット部の凹凸形状、あるいは、表面粗さ等を制御して、スタンパ、あるいは、ディスク基板に直接形成される。
【0092】
このような、凹凸、あるいは、表面粗さを用いたディスク基板11上に、AlTiNからなる誘電体の下地層12を形成した場合にも、ディスク基板11表面のピットが、下地層12の表面にも形成される。また、ピット部が表面粗さの小さいサーボ用ピットとして形成することも可能である。
【0093】
以上のように、本願発明の磁気記録媒体は、微細な凹凸を形成したディスク基板上に、記録層を形成した磁気記録媒体であって、前記記録層が、孤立した磁気グレインの集合体である記録層を形成した構成により、高密度に記録した場合のマークの安定性を実現できる。また、環境温度等が変化した場合にも、記録膜の微細な構造を安定化させることが出来るため、温度変化に対する安定性に優れ、信号特性に優れた磁気記録媒体を実現できるものである。
【0094】
(実施の形態3)
以下、本発明をその実施の形態について図面を参照にして詳細に説明する。
【0095】
図4は本発明の第3の実施形態における磁気ディスク30の構造を示す断面図である。本発明の第3の実施形態における磁気ディスクの構造は、図4に示すように、実施の形態2と同様に断面構造を有する。
【0096】
図4において、31はガラスからなる透明なディスク基板、33は下地誘電体層である。その誘電体層33上には、34、35、36、37はそれぞれ、記録層、中間層、制御層、再生層の磁性記録膜である。さらに、38は記録膜を保護し磁気ヘッドを摺動させるための保護層、39は潤滑保護層が積層されている。
【0097】
ここで、下地の誘電体層33形成前のディスク基板31は、ピットを形成したスタンパを用いて、ガラスのディスク基板31に塗布したフォトポリマー32に転写させて、硬化させた構成である。この構成により、トラッキングサーボとアドレス検出のための、ピットが形成され、記録トラックは、サーボのためのピット領域と、情報を記録するデータ領域とが検出できる構成となる。
【0098】
本発明の実施の形態3の磁気記録媒体は、本願発明の実施の形態2同様に、光ビームによる温度勾配により、差し掛かった磁壁を次々と移動させこの磁壁の移動を検出することによって、再生時の信号検出感度を向上させて超解像再生が可能となるDWDD方式を磁気記録媒体に適用できる構成である。
【0099】
この構成により、記録磁区の大きさに依らず、再生磁区の大きさは、常に一定の最大振幅になる。このため、光学ヘッド、あるいは、GMRヘッド等の磁気ヘッドを用いて信号再生する場合にも、光ビーム等による温度勾配により、再生層での転写磁区を拡大することにより、信号再生時には、常に一定の最大振幅の信号量になる。
【0100】
したがって、図4で示した本発明の実施の形態3の磁気記録媒体は、磁気ディスクに、レーザ光ビームを照射し、入射光スポットの偏光面の回転として、磁壁移動により拡大された再生層の磁区を検出することによって、再生時のレーザ光スポットの検出限界よりも、小さい記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用することもできる構成である。
【0101】
あるいは、この磁気ヘッドにより信号を記録、再生検出する構成によって、再生時のレーザ光スポットの検出限界よりも、小さい記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。
【0102】
ここで、本実施形態の記録膜は温度Tの上昇と共に、保磁力Hcは減少し、飽和磁化Msは増加する特性を有している。このことにより、GMRヘッドで再生した場合には、再生信号の検出感度を向上させることができる。
【0103】
本実施形態の磁気ディスクの記録再生装置では、情報の記録時には、ディスクが回転し、トラックに沿ってレーザ光ビームスポットを照射しながら磁気ヘッドで記録される。この時、記録膜は、高温では保磁力が低下することから、磁気ヘッドでの記録が可能となる。また、信号再生時には、レーザ光ビームを照射して、温度上昇させながら、GMRヘッドにより、記録磁区を検出する。この時、飽和磁化Msは温度と共に上昇し、70℃で極大となるため、GMRヘッドでの検出感度が向上し、再生信号が増大する。
【0104】
これに対して、従来の記録媒体では、高密度に微小な磁区を記録した場合には、記録磁区の磁壁が移動することによって、記録マークが不安定になるという課題があった。
【0105】
さらに、環境温度の変動、記録膜へのレーザ光ビームを照射した際の磁気ディスクの温度上昇等に伴い、浮遊磁界とその温度特性により、記録マークが変化することにより、再生信号が劣化するという課題があった。さらに、クロストーク、クロスイレーズや、記録再生信号の劣化、あるいは再生信号量が低下するという課題を有していた。
【0106】
次に、本願発明の実施の形態3の磁気ディスク30の構成と作製方法について詳細に説明する。
【0107】
まずスタンパを用いて、ガラス基板上に塗布したフォトポリマー32に、ピットとグルーブを転写し、紫外線を照射して硬化させることにより、ディスク基板31を形成する。
【0108】
次に、直流マグネトロンスパッタリング装置に、ターゲットを設置し、ディスク基板を基板ホルダーに固定した後、6×10ー6Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたまま0.3Paとなるまでチャンバー内にArガスとN2ガスを導入し、基板を回転させながら、AlTiNからなる下地の誘電体層33を35nm、反応性スパッタリング法により膜形成される。
【0109】
次に、記録層作製時には、Krガスを、0.5Paになるように導入し、合金ターゲットを用いて、TbFeCoの記録層34を60nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成される。
【0110】
また、記録層34を形成した後に、イオンガンを用いて、イオンエッチングすることにより、記録層に微細な構造を形成できる。この結果、記録層34の磁壁エネルギーが膜面内方向で分布した構成を形成できる。
【0111】
次に、チャンバー内が1.5PaであるArガス雰囲気中で、基板を回転させながら、中間層35、制御層36、再生層37を、それぞれの組成を有する合金ターゲットを用いてスパッタリング順次積層する。ここで、TbFeCo、TbFeCoCr、GdFeCo、の磁性記録膜組成は、ターゲットの投入パワー比を調整することにより、所望の膜組成に合せることができる。
【0112】
そして、さらに再生層37の上には、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる誘電体保護層38をArとCH4の混合雰囲気中で、Cターゲットを用いて、反応性RFスパッタリングにより、5nm形成する。さらに、パーフルオロポリエーテル(以下、PFP)からなる潤滑層39を塗布することにより形成する。
【0113】
この時、本実施形態の磁気ディスク30のトラックピッチは0.25μmである。
【0114】
ここで、ここで、本実施形態の磁気記録媒体の、記録層の面内方向での抵抗率と、イオンガンによるエッチング時間との関係を図5に示す。図に示すように、記録層製膜後に、エッチング時間を大きくすることにより、記録層の面内方向での抵抗率が増加することがわかる。さらに、抵抗率が、500μΩcm以上になると、100nm以下の微小な記録膜が安定して形成できることが確認できた。
【0115】
また、TbFeCoからなる記録層34は補償組成温度が130 ℃であり、キュリー温度は320 ℃になるように合金ターゲット組成を調整して製膜した。この組成により、室温での保磁力が8koeとなる。また、本願発明の磁気記録媒体は、上記製造方法で作製したことにより、ディスク基板上に、希土類金属、あるいは遷移金属との水素化合物を含有した構成により、高密度に記録した場合にも、記録磁区が安定し優れた信号特性の磁気ディスクとその製造方法を実現できる。また、磁気ヘッドにより微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成でき、繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れ、また、温度変化に対する安定性に優れた磁気記録媒体を実現できるものである。また、記録層34の保磁力Hcは、室温からは温度上昇と共に減少するという膜特性が得られるため、昇温した状態では保磁力が小さくなり、磁気ヘッドでの記録が容易となり、大きな記録磁界は必要なくなる。
【0116】
さらに、本実施形態の磁気記録媒体では、光ビームを照射した状態での温度勾配により、DWDD方式により信号を再生すると、記録層からの信号を転写拡大した再生層は、90℃で飽和磁化Msが極大となる組成であるために、さらに、再生信号の増大効果がある。
【0117】
また、上記の構成により、微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成でき、磁気ヘッドにより繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
【0118】
上記本実施形態の磁気ディスク30は、記録層34をイオンエッチングした構成について述べてきたが、記録層表面の下地層側、あるいは、中間層側に非常に薄い酸化膜を形成した構成であっても、記録層の磁気グレインを微細化、孤立化させることは可能である。
【0119】
また、上記本実施形態の磁気ディスク30は、フォトポリマー32をディスク基板31上に塗布した構成について述べてきたが、ガラス基板を直接インプリントした構成、エッチング等により、ディスク基板の表面性を変化させた構成、ガラス基板を直接加工、あるいは、加熱溶融による転写させた構成、さらに、プラスチック基板による成形等を用いてもよい。
【0120】
さらに、本実施形態では、トラックピッチが0.25μmであったが、情報の記録される記録トラック幅が0.6μm以下の構成であって、記録情報の最短のマーク長が0.35μm以下の記録ドメインを記録する構成であれば、より効果が大きい。
【0121】
以上のように、本実施形態の構成により、高密度に記録再生した場合にも、安定した再生信号特性が得られる。さらに、情報トラックでの記録磁区が安定した形状に形成させるために、記録再生時に隣接トラックからのクロスライト及びクロストークも低減できるものである。
【0122】
また、本実施形態の磁気記録媒体では、光ビームを照射した状態での温度勾配により、DWDD方式により信号を再生するため、再生層は、非晶質で微細な構造を有さず、磁壁移動が容易な膜構造である。これに対して、記録層は、上述した製造方法により構成により、記録膜に微細な構造を有し、微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成できる。また、レーザ光スポットを照射して、繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
【0123】
(実施の形態4)
以下、本発明をその実施の形態について図面を参照にして詳細に説明する。
【0124】
本発明の実施の形態4における磁気ディスクの構造は、実施の形態3と同様に、図4に示すような断面構造を有する。図4に示すように、ガラスを研磨した平板のディスク基板に、誘電体層33、再生層37、中間層35、記録層34からなる磁性記録膜、さらに、磁性記録膜を保護し、磁気ヘッドを摺動させるための誘電体保護層38、および、潤滑層39により構成されている。
【0125】
磁気ディスク30は、記録トラック上に、サーボとアドレス検出のためのピットが形成され、データ領域に情報が記録される構成を有する。ピットとしては、トラッキングサーボとアドレス検出のために用いられ、表面粗さの異なる形状に作製、あるいは磁性記録膜形成後、磁気転写、または、サーボライター等により磁気的に記録形成される。
【0126】
ここで、表面粗さ等のディスク基板31の表面形状を変化させてピットを形成する場合は、ガラス原盤にフォトレジスト等を用いて、プリピット状に形成したスタンパを用いて、インプリント等によりディスク基板31に転写させて作製する。
【0127】
あるいは、イオンエッチングによりピット部の凹凸形状、あるいは、表面粗さ等を制御して、スタンパ、あるいは、ディスク基板に直接形成される。
【0128】
あるいは、スタンパに形成したプリピットの底面を、イオンエッチングと組合せて、表面粗さも変化させた構成も可能である。
【0129】
図4で示した本発明の実施の形態4の磁気記録媒体は、34、35、36、37の磁性記録膜が形成された薄膜表面に、誘電体保護層38、潤滑保護層39を形成し、潤滑層の上から、磁気ヘッドにより信号を記録、再生検出することによって、高密度に記録された記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。この磁気ヘッドにより信号を記録、再生検出する構成によって、再生時のレーザ光スポットの検出限界よりも、小さい記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。
【0130】
ここで、本実施形態の磁気ディスク30のトラックピッチは0.3μmであり、プリピット径は0.25μmである。
【0131】
次に、本実施形態の磁気ディスクの記録再生装置では、情報の記録時には、ディスクが回転しながら磁気ヘッドで記録される。この時、記録層は、保磁力が10koeにすることにより、磁気ヘッドでの記録が可能となる。また、信号再生時には、GMRヘッドにより、記録磁区からの信号を検出する。この時、レーザ光を照射する構成であれば、保磁力は温度上昇と共に低下し、飽和磁化Msは温度と共に上昇する特性の記録層を用いて、60℃で極大となる組成に調整すれば、GMRヘッドでの検出感度が向上し、再生信号が増大する。また、前述したDWDD方式を用いて、再生信号振幅をさらに拡大して再生することができる。
【0132】
次に、本願発明の実施の形態4の磁気ディスク30の作製方法について詳細に説明する。
【0133】
ここで、次に、本発明の実施形態における磁気記録媒体を製造するための、製造装置の構成図を図9に示す。図に示すように、磁気記録媒体の製造装置は、脱ガス室71と、メインチャンバー73とが、ロードアンロード室72により接続されて構成されている。また、脱ガス室71は、ロード室74、アンロード室75、加熱室77とつながった構成である。また、メインチャンバー73には、複数のプロセス室81、82、83、84、85、86、87が接続されており、メインチャンバー73を通して磁気ディスクが移動し、それぞれの真空室で膜形成される構成である。
【0134】
まず、ディスク基板は、脱ガス室71のロード室74から投入され、途中、加熱室77でディスク基板の加熱しながら、脱ガス室71を移動して、ディスク基板からの吸着ガスの脱ガスを行なう。脱ガス室71のロード室75は、メインチャンバーのロードアンロード室72に接続されており、ディスク基板31を、基板ホルダー、マスクを固定して、真空搬送室70を通して、メインチャンバー73に移動する。
【0135】
そして、メインチャンバー73から、真空プロセス室81に移動し、8×10ー6Pa以下の高真空にターボ分子ポンプで真空排気される。真空プロセス室81では、その雰囲気に真空排気したまま、0.3Paとなるまでチャンバー内にArガスとO2ガスを導入し、基板を回転させながら、TaOからなる誘電体層33を10nm、反応性スパッタリング法により形成する。
【0136】
次に、メインチャンバー73を通して、TbFeCo記録層製膜のための真空プロセス室82に移動する。ここで、真空プロセス室82は、7×10ー6Pa以下の高真空にターボ分子ポンプで真空排気されているが、この時、真空プロセス室82内の水素の分圧は、2×10ー8Paとなっている。この時の、真空雰囲気は、真空排気のためのターボ分子ポンプの回転数により制御できる。そしてこのように真空排気をしたまま、Xeガスを0.8Paとなるまで真空プロセス室82内に導入し、基板を回転させながら、TbFeCoの合金ターゲットを用いて、TbFeCoの記録層34を60nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成される。ここで、TbFeCoの膜組成は、合金ターゲットの組成と製膜条件を調整することにより、所望の膜組成に合せることができる。また、真空プロセス室内のXeガスを用いた製膜雰囲気と製膜速度等の条件により、スパッタリング製膜中にTbFeCo記録層34の膜中に微細な構造が形成され、磁気的に孤立したミクロな膜構造を形成する。実際、図2の断面構造の観察図と同様に、磁気グレインが微細化され、コラム形状の膜構造を形成できる。
【0137】
さらに、メインチャンバー73を通して、真空プロセス室83、84、85と順次移動し、TbFeCoAlの中間層35、TbFeCoCrの制御層36、GdFeCoの再生層37をそれぞれ順次積層して形成する。ここで、TbFeCoAl中間層35の膜厚は15nm、TbFeCoCr制御層36の膜厚は10nm、GdFeCoの再生層37の膜厚は35nm、にそれぞれに設定している。
【0138】
なお、TbFeCoの記録層34の製膜時と同様に、真空プロセス室83、84での、TbFeCoAl中間層35、TbFeCoCr制御層36の膜形成時にも、真空プロセス室83、84にXeを導入した条件で形成すると同等以上の効果が得られる。
【0139】
そして、さらに磁性記録膜34、35、36、37の上には、さらに真空プロセス室86に移動して、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる誘電体保護層38をArとCH4の混合雰囲気中で、Cターゲットを用いて、反応性RFスパッタリングにより、3nm形成する。さらに、真空プロセス室87で、製膜した磁気ディスク30を冷却した後、ロードアンロード室72を通して、真空装置の外に送り出す。
【0140】
さらに、パーフルオロポリエーテル(以下、PFPE)からなる潤滑保護層39をディッピング装置により引き上げながら塗布することにより、2nmに塗布形成する。
【0141】
ここで、TbFeCoからなる記録層34は補償組成温度が140 ℃であり、キュリー温度は330 ℃になるようにターゲット組成と条件を設定して膜組成を調整して製膜した。また、ここでは、記録層34製膜後に、記録膜をエッチングする方法は用いていないが、真空プロセス室の真空中で、水素あるいは窒素を含むAr雰囲気中に保持し、さらに膜中に水素、窒素等の気体分子を吸蔵、吸着させる方法を用いてもよい。
【0142】
このような記録層の組成と、気体分子を含有する構成により、孤立した磁気グレインからなるミクロな膜構造で安定であり、室温での保磁力が10koe以上となる。この結果、磁気ヘッドにより微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成でき、磁気ヘッドにより繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
【0143】
従来の磁気記録媒体では、磁壁移動のために、記録した磁区が拡大、あるいは、収縮による消滅で、微細なマークの記録が安定していないという課題を有していた。また、環境温度の変動、記録膜へのレーザ光ビームを照射した際の磁気ディスクの温度上昇等に伴い、磁気グレインの熱揺らぎが課題となり、記録ドメイン形状が変動する、あるいは、劣化するという課題、あるいは、クロストーク、クロスイレーズ、記録再生信号の劣化といった課題を有していた。
【0144】
これに対し、本願発明の磁気記録媒体は、簡易な方法で、記録層に水素を含有して記録層を安定化する構成により、高密度に微細な磁区を記録した場合にも、安定した記録特性の磁気記録媒体とその製造方法を実現できる。また、記録層の室温での保磁力も大きく、環境温度等が変化した場合にも、安定した記録磁区を形成できるため信号特性に優れ、信頼性の高い磁気記録媒体を実現できるものである。
【0145】
以上のように、本実施形態の構成により、高密度に記録再生した場合にも、安定した再生信号特性が得られる。さらに、情報トラックでの記録磁区が安定した形状に形成させるために、記録再生時に隣接トラックからのクロスライト及びクロストークも低減できるものである。
【0146】
(実施の形態5)
以下、本発明をその実施の形態について図面を参照にして詳細に説明する。
【0147】
本発明の実施の形態5における磁気ディスク50の構造は、図6に示すような断面構造を有する。図6に示すように、研磨したAl合金からなる金属のディスク基板に、下地の誘電体層52、記録層53、中間層54、再生層からなる磁性記録膜群、さらに、磁性記録膜を保護し、磁気ヘッドを摺動させるための誘電体保護層56、および、潤滑層57により構成されている。
【0148】
磁気ディスク50は、記録トラック上に、プリピットと、情報を記録するデータ領域を有する構成である。プリピットは、トラッキングサーボとアドレス検出に用いられており、凹凸、表面粗さの異なるピット、あるいは、磁気記録によるプリピットが形成されている。
【0149】
ここで、ディスク基板51が、凹凸、あるいは、表面粗さの異なるプリピットを有する場合には、ピットを形成したスタンパを用いて、インプリントにより金属のディスク基板51に転写する、あるいは、イオンエッチングによりピット部の凹凸形状、あるいは、表面粗さ等を制御して、スタンパ、あるいは、ディスク基板に直接形成される。
【0150】
このような、凹凸、あるいは、表面粗さを用いたディスク基板51上に、AgCu等の金属下地層52、あるいは、ZnSSiO2からなる誘電体の誘電体層52を形成した場合にも、ディスク基板51表面のピットが、下地の誘電体層52の表面にも形成される。この結果、ピット部が表面粗さの小さいサーボ用ピットとして形成される。
【0151】
本発明の実施の形態5の磁気記録媒体は、記録膜が形成された潤滑層側から、レーザ光ビームを照射し、磁気ヘッドにより信号を記録、再生検出することによって、再生時のレーザ光スポットの検出限界よりも、小さい記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。
【0152】
ここで、本実施形態の記録膜は温度Tの上昇と共に、保磁力Hcは減少し、飽和磁化Msは極大温度まで増加する特性を有している。
【0153】
本実施形態の磁気記録媒体は、情報の記録時には、ディスクが回転し、トラックに沿ってレーザ光ビームスポットを照射しながら磁気ヘッドで記録される。この時、記録膜は、高温では保磁力が低下することから、磁気ヘッドでの記録が可能となる。また、信号再生時には、レーザ光ビームを照射して、温度上昇させながら、GMRヘッドにより、記録磁区を検出する。この時、飽和磁化Msは温度と共に上昇し、100℃で極大となるため、GMRヘッドでの検出感度が向上し、再生信号が増大する。
【0154】
しかしながら、従来の記録媒体では、記録膜へレーザ光ビームを照射した際に、磁気ディスクの温度上昇と冷却過程での温度変化に伴い、記録磁区が不安定になり、磁壁の移動によって、記録ドメインが劣化するという課題があった。
【0155】
次に、本願発明の実施の形態5の磁気ディスク50と作製方法について詳細に説明する。
【0156】
図6に示すように、金属からなる研磨されたディスク基板51に、磁性薄膜の記録膜を含む構成に積層して形成されている。ディスク基板51は、プリピットを設けた記録トラックが形成されており、本実施形態の磁気ディスク50のトラックピッチは0.3μmである。
【0157】
まず、図示すように、Al合金のからなるディスク基板51の表面にフォトポリマーを用いてピットを形成し、ピット形状以外の部分は、マスクを通してイオンガンによりエッチングすることにより、表面粗さをRa0.5nm以上と、Raの異なるプリピットが形成できる。ここで、磁気的なプリピットを形成する場合には、ディスク基板に記録膜作製後に、磁気転写、あるいは、サーボライター等を用いて記録する。
【0158】
次に、スパッタリング装置を用いて、誘電体層、記録膜、保護層を作製するが、そのための製造装置は、実施の形態4で説明した、図9に示す構成と同様の製膜装置を用いることができる。
【0159】
まず、スパッタリング装置に、ターゲットを設置し、ディスク基板51を基板ホルダーに固定した後、8×10ー6Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたまま0.2Paとなるまでチャンバー内にArガスを導入し、基板を回転させながら、AgCuからなる金属膜の下地層を20nmを形成し、さらに、0.4PaのArを導入し、ZnSSiO2からなる誘電体の下地層52を10nm、RFマグネトロンスパッタリング法により膜形成される。
【0160】
そして、真空排気をしたままArガスを2.0Paとなるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、TbFeCoの合金ターゲットを用いて、TbFeCoの記録膜54を80nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成される。ここで、TbFeCoの膜組成は、合金のターゲット組成比と製膜条件を調整することにより、所望の膜組成に合せることができる。
【0161】
次に、水素、および窒素を含有するAr雰囲気中で、イオンガンを用いて、TbFeCo記録層をエッチングし、さらに、その後、記録層を、水素を20at%含有する雰囲気中に30秒、保持する。このことにより、気体分子が記録膜中に取込まれ、希土類金属と安定な結合状態を形成する。また、この時、エッチング条件を調整することにより、記録層53の表面の平滑性も調整できる。
【0162】
さらに、チャンバー内が1.5PaであるArガス雰囲気中で、基板を回転させながら、中間層、再生層を、それぞれの組成を有する合金ターゲットを用いてスパッタリング順次積層する。ここで、TbFeCoCr、GdFeCo、の磁性記録膜組成は、ターゲットの組成比と製膜条件を調整することにより、所望の膜組成に合せることができる。
【0163】
そして、さらに再生層55の上には、アモルファスカーボン(αC)からなる誘電体保護層56をAr雰囲気中で、Cターゲットを用いて、DCスパッタリングにより、7nm形成する。さらに、パーフルオロポリエーテル(以下、PFPE)からなる潤滑保護層57をスピンコータで塗布することにより形成する。
【0164】
ここで、TbFeCoからなる記録層53は補償組成温度が−20℃であり、キュリー温度は310℃になるように膜組成を調整して製膜した。
【0165】
この結果、本実施形態の磁気記録媒体では、光ビームを照射した状態での温度、120℃で、飽和磁化Msが極大となり、また、保磁力Hcは、温度上昇と共に減少するという膜特性を有し、微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成でき、磁気ヘッドにより繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
【0166】
このような、本実施形態の磁気記録媒体は、情報の記録時には、ディスクが回転し、トラックに沿ってレーザ光ビームスポットを照射しながら磁気ヘッドで記録磁界を変調することにより記録される。この時、記録層53は、高温では保磁力が低下することから、磁気ヘッドの磁界で記録が可能となる。また、信号再生時には、レーザ光ビームを照射して、温度上昇させながら、上記したDWDD方式を用いて、磁壁移動により、転写磁区を拡大させながら、GMRヘッドにより、再生磁区を検出する。この時、再生層の飽和磁化Msも温度と共に上昇する構成であれば、昇温時に再生信号が極大となるため、GMRヘッドでの検出感度が向上し、再生信号が増大する。
【0167】
ここで、本実施形態の磁気記録媒体の、記録層の面内方向での抵抗率と、イオンガンによるエッチング時間との関係は、実施の形態3同様に、図5のような関係を示す。したがって、記録層製膜後に、記録層の面内方向での抵抗率が増加する条件に、エッチング時間、パワー等を設定することにより、抵抗率が、500μΩcm以上が可能となり、100nm以下の微小な記録膜が安定して形成できることが確認できる。
【0168】
この時、記録層は、孤立した磁気グレインを形成しており、記録膜の抵抗率と微細な磁気グレインとの間には、密接な関連があると考えられる。したがって、エッチング時間6秒以上に設定することにより、記録層の抵抗率を大きくすることができ、抵抗率が増大する条件で記録層を形成することにより、記録層の膜中に微細な構造を形成でき、孤立した微小な磁気グレインを形成できることとなる。
【0169】
従来の磁気記録媒体では、記録膜へレーザ光ビームを照射した際に、磁気ディスクの温度上昇に伴い、微小な記録磁区が劣化するという課題があった。特に、記録膜へレーザ光ビームを照射した際に、磁気ディスクの温度上昇と冷却過程での温度変化に伴い、記録磁区が不安定になり、磁壁の移動によって、記録ドメインが劣化するという課題があった。また、磁気的にサーボピットを形成した場合には、サーボ信号の特性も変動する、あるいはそれに伴い記録再生特性が低下する等の課題を有していた。
【0170】
これに対し、本願発明の磁気記録媒体は、記録層が孤立した微細な磁気グレインを安定した構造で形成することにより、環境温度の変化、あるいは、記録再生時に記録膜にレーザ光ビームを照射した際の磁気ディスクの温度変化にも、微細な記録磁区を安定して記録が可能となる。この結果、光ビーム等により記録膜を昇温させて、GMRヘッド等の磁気ヘッドを用いて信号再生する場合にも、熱耐久性に優れ、信号特性に優れた磁気記録媒体を実現できるものである。
【0171】
また、本実施形態では、トラックピッチが0.3μmであったが、情報の記録されるグルーブ幅が0.6μm以下の構成であって、記録情報の最短のマーク長が0.3μm以下の記録ドメインを記録する構成であれば、より効果が大きい。
【0172】
以上のように、本実施形態の構成により、高密度に記録再生した場合にも、安定した再生信号特性が得られる。さらに、情報トラックでの記録磁区が安定した形状に形成させるために、記録再生時に隣接トラックからのクロスライト及びクロストークも低減できるものである。
【0173】
(実施の形態6)
以下、本発明をその実施の形態について図面を参照にして詳細に説明する。
【0174】
本発明の実施の形態6における磁気ディスク60の構造は、実施の形態5を方向に積層した断面構造を有する。
【0175】
また、図7に、本実施形態における磁気記録媒体の断面構成図の、SEM観察した断面写真を示す。
【0176】
図に示すように、透明なポリカーボネートからなるディスク基板61上に、誘電体層62、非晶質な膜構造の再生層63、中間層64、微細な柱状の孤立した磁気グレインを有する記録層65が形成されている。その上には、誘電体保護層66が形成されており、さらに、その上に、記録膜の保護のためのオーバーコート層が積層された構成を有する。
【0177】
磁気ディスク60は、案内溝を有した構成であり、情報を記録するトラックのグルーブと、ランドが形成されている。また、サーボのためのピット領域と、情報を記録するデータ領域とにより構成された場合には、ピット領域は、トラッキングサーボとアドレス検出のための、プリピットが形成されている。
【0178】
ここで、本実施形態の記録膜についてさらに詳しく説明する。
【0179】
図7において、射出成形されて案内溝とプリピットが形成された透明なプラスチックのディスク基板61は、誘電体層62を介して、積層した磁性記録膜63、64、65が形成されている。磁性記録膜は、情報を保持しておく記録層65、情報を磁壁の移動によって検出するための再生層63、再生層と記録層の間の交換結合を制御するための中間遮断層(あるいは、中間層)64、により構成されている。さらに、その上には、誘電体保護層66、オーバーコート層により磁性記録膜を保護する構成となっている。
【0180】
本実施形態の磁気記録媒体は、本願発明の第2の実施形態同様に、光ビームによる温度勾配により、差し掛かった磁壁を次々と移動させこの磁壁の移動を検出することによって、再生時の信号検出感度を向上させて超解像再生が可能となるDWDD方式を磁気記録媒体に適用できる構成である。
【0181】
この構成により、記録磁区の大きさに依らず、再生磁区の大きさは、常に一定の最大振幅になる。このため、光学ヘッド、あるいは、GMRヘッド等の磁気ヘッドを用いて信号再生する場合にも、光ビーム等による温度勾配により、再生層での転写磁区を拡大することにより、信号再生時には、常に一定の最大振幅の信号量になる。
【0182】
図7で示したような、本発明の実施の形態6の磁気記録媒体は、記録膜が形成されたディスク基板側から、レーザ光ビームを照射し、入射光スポットの偏光面の回転として、磁壁移動により拡大された再生層の磁区を検出することによって、再生時のレーザ光スポットの検出限界よりも、小さい記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。
【0183】
次に、本願発明の実施の形態6の磁気ディスクの作製方法について詳細に説明する。
【0184】
図7に示すように、ポリカーボネートを用いたディスク基板61に、磁性薄膜の記録膜を含む構成に積層して形成されている。ディスク基板61は、記録トラックにピット領域と、データ領域を有しており、射出成形により、ピットとグルーブが形成されている。また、本実施形態の磁気ディスク60のトラックピッチは0.35μmである。
【0185】
まず、直流マグネトロンスパッタリング装置に、Siターゲットを設置し、ディスク基板を基板ホルダーに固定した後、8×10ー6Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたまま0.4Paとなるまでチャンバー内にArガスとN2ガスを導入し、基板を回転させながら、反応性スパッタリングにより、SiN膜が形成される。
【0186】
そして、真空排気をしたまま真空室を移動し、Arガスを0.6Paとなるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、GdFeCoCrの合金ターゲットを用いて、GdFeCoCrの再生層63を30nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成される。次に、真空排気をしたまま真空室を移動し、Arガスを1.5Paとなるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、TbFeCoCrの合金ターゲットを用いて、TbFeCoCrの中間層64を20nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成される。そしてさらに、真空排気をしたまま、水素ガス分圧0.5%含有するKrガスを1.0Paとなるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、TbFeCoの合金ターゲットを用いて、TbFeCoの記録層65を70nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成される。
【0187】
ここで、TbFeCo、TbFeCoCr、GdFeCoの膜組成は、合金のターゲット組成比と製膜条件を調整することにより、所望の膜組成に合せることができる。
【0188】
さらに、0.3Paとなるまでチャンバー内にArガスとN2ガスを導入し、基板を回転させながら、SiNからなる誘電体保護層66を4nm、反応性スパッタリング法により膜形成されている。
【0189】
そして、さらに誘電体保護層66の上には、ポリウレタン系材料からなる、紫外線硬化型の樹脂をスピンコータで塗布し、紫外線を照射して硬化させて、オーバーコート層を形成する。
【0190】
ここで、TbFeCoからなる記録層は補償組成温度が−50℃であり、キュリー温度は310 ℃になるように膜組成を調整して製膜し、記録層の保磁力Hcは、室温からは温度上昇と共に減少するという膜特性が得られる。
【0191】
また、本実施形態の磁気記録媒体では、光ビームを照射した状態での温度勾配により、DWDD方式により信号を再生するため、再生層は、非晶質で微細な構造を有さず、磁壁移動が容易な膜構造である。これに対して、記録層は、上述した製造方法により構成により、記録膜に微細な構造を有し、微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成できる。また、レーザ光スポットを照射して、繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
【0192】
図7の、本実施形態の磁気記録媒体60の断面SEM写真に示すように、ディスク基板61の上に、誘電体層62、非晶質な膜構造の再生層63、中間制御層64、微細な柱状の孤立した磁気グレインを有する記録層65が形成されている。さらにその上に。誘電体保護層66が形成された構造を有する。
【0193】
さらに、本実施形態の磁気記録媒体では、再生層63の膜面垂直方向の磁気異方性が、中間層64の磁気異方性よりも大きい構成となっている。
【0194】
さらに、再生層63の薄膜の深さ方向の磁壁幅が、膜面面内方向よりも大きい構成とすることにより、記録層の記録ドメインが安定して再生層に転写されることとなる。
【0195】
したがって、従来の磁気記録媒体では、特に微細なマークを記録しようとした場合には、磁壁の移動により、記録磁区が拡大する、あるいは、消滅するために、安定した記録ができないという課題があった。また、このことは、記録密度が高密度化されると、特に顕著になり、熱安定性から、長期間保存した場合の、信頼性にも課題を有していた。さらに、微細な記録ドメインの転写では、再生層への転写が不安定になり、再生信号が劣化するという課題があった。
【0196】
これに対し、本願発明の磁気記録媒体は、ディスク基板上に、図7に示すような、ミクロなコラム構造を有する記録層を形成した磁気記録媒体であって、前記記録層が、水素元素を含有して結合した構成により、膜構造が安定化し、磁壁のピンニングサイトにより保磁力も増大し、高密度に記録した場合のマークの安定性を実現できる。また、環境温度等が変化した場合にも、記録膜の微細な構造を安定化させ、さらに、再生層へ安定して転写することが出来るため、温度変化に対する安定性に優れ、信号特性に優れた磁気記録媒体を実現できるものである。
【0197】
また、本実施形態の磁気記録媒体は、記録膜が形成された磁気ディスクのディスク基板側から、レーザ光ビームを照射し、情報を記録再生する構成について述べてきたが、磁気ヘッドにより信号を記録、再生検出することによって、再生時のレーザ光スポットの検出限界よりも、小さい記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できるものである。
【0198】
この時、本実施形態の磁気記録媒体は、情報の記録時には、ディスクが回転し、トラックに沿ってレーザ光ビームスポットを照射しながら磁気ヘッドで記録される。ここで、記録膜は、高温では保磁力が低下することから、磁気ヘッドでの記録が可能となる。また、信号再生時には、レーザ光ビームを照射して、温度上昇させながら、GMRヘッドにより、記録磁区を検出する。この時、記録膜は温度Tの上昇と共に、保磁力Hcは減少し、飽和磁化Msは極大温度まで増加する特性を有していれば、飽和磁化Msは温度と共に上昇し、100℃で極大となるため、GMRヘッドでの検出感度が向上し、再生信号が増大する。
【0199】
しかしながら、従来の記録媒体では、記録膜へレーザ光ビームを照射した際に、磁気ディスクの温度上昇と冷却過程での温度変化に伴い、記録磁区が不安定になり、磁壁の移動によって、記録ドメインが劣化するという課題があった。
【0200】
ここで、TbFeCoからなる記録層65は補償組成温度が−50℃であり、キュリー温度は310℃になるように膜組成を調整して製膜した。
【0201】
この結果、本実施形態の磁気記録媒体では、光ビームを照射した状態での温度、120℃で、飽和磁化Msが極大となり、また、保磁力Hcは、温度上昇と共に減少するという膜特性を有し、微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成でき、磁気ヘッドにより繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
【0202】
このような、本実施形態の磁気記録媒体は、情報の記録時には、ディスクが回転し、トラックに沿ってレーザ光ビームスポットを照射しながら磁気ヘッドで記録磁界を変調することにより記録される。この時、記録層は、高温では保磁力が低下することから、磁気ヘッドの磁界で記録が可能となる。また、信号再生時には、レーザ光ビームを照射して、温度上昇させながら、上記したDWDD方式を用いて、磁壁移動により、転写磁区を拡大させながら、GMRヘッドにより、再生磁区を検出する。この時、再生層の飽和磁化Msも温度と共に上昇する構成であれば、昇温時に再生信号が極大となるため、GMRヘッドでの検出感度が向上し、再生信号が増大する。
【0203】
ここで、図8に示すように、磁気記録媒体の記録層の面内方向での抵抗率と製膜圧力との関係では、製膜時のAr圧力を大きくすることにより、記録層の面内方向での抵抗率が増加することがわかる。さらに、抵抗率が、500μΩcm以上になると、100nm以下の微小な記録膜が安定して形成できることが確認できた。
【0204】
この時、記録層は、孤立した磁気グレインを形成しており、記録膜の抵抗率と微細な磁気グレインとの間には、密接な関連があると考えられる。抵抗率が増大する条件で記録層を形成することにより、記録層の膜中に微細な構造を形成でき、孤立した微小な磁気グレインを形成できることとなる。
【0205】
従来の磁気記録媒体では、記録膜へレーザ光ビームを照射した際に、磁気ディスクの温度上昇に伴い、微小な記録磁区が劣化するという課題があった。特に、記録膜へレーザ光ビームを照射した際に、磁気ディスクの温度上昇と冷却過程での温度変化に伴い、記録磁区が不安定になり、磁壁の移動によって、記録ドメインが劣化するという課題があった。また、磁気的にサーボピットを形成した場合には、サーボ信号の特性も変動する、あるいはそれに伴い記録再生特性が低下する等の課題を有していた。
【0206】
これに対し、本願発明の磁気記録媒体は、記録層が孤立した磁気グレインを形成して安定した構造を有することにより、環境温度の変化、あるいは、記録再生時に記録膜にレーザ光ビームを照射した際の磁気ディスクの温度変化にも、微細な記録磁区を安定して記録が可能となる。この結果、光ビーム等により記録膜を昇温させて、GMRヘッド等の磁気ヘッドを用いて信号再生する場合にも、熱耐久性に優れ、信号特性に優れた磁気記録媒体を実現できるものである。
【0207】
なお、本実施形態では、トラックピッチが0.35μmであったが、情報の記録されるグルーブ幅が0.6μm以下の構成であって、記録情報の最短のマーク長が0.3μm以下の記録ドメインを記録する構成であれば、より効果が大きい。
【0208】
さらに、本実施形態では、射出成形により、案内溝とプリピットとを形成した構成について述べてきたが、フォトポリマーを硬化させて、ピットと溝を形成した構成、あるいは、加熱したガラスにインプリント等を用いた基板の形成方法であっても、同等の効果が得られる。
【0209】
以上のように、本実施形態の構成により、高密度に記録再生した場合にも、安定した記録ドメインが形成でき、さらに優れた再生信号特性が得られる。また、情報トラックでの記録磁区が安定した形状に形成させるために、記録再生時に隣接トラックからのクロスライト及びクロストークも低減できるものである。
【0210】
次に、本実施形態の磁気記録媒体の記録再生装置について図面を参照にして詳細に説明する。
【0211】
本発明の実施形態における磁気記録媒体の記録再生装置は、図10に示すような構成を有する。図10に示すように、スピンドルモータ103に取り付けられた磁気ディスク101は、磁気ヘッド制御、検出回路106でコントロールされた磁気ヘッドにより、信号が記録再生される。また、光学ヘッド104は、レーザ駆動回路105により制御されたレーザ光をディスク上に照射しながら、磁気ヘッドでの記録再生を行なう。この時、モータ駆動回路107により、モータの回転駆動制御と、レーザ光のサーボ制御等が行われる。
【0212】
このような構成の記録再生装置を用いて、本実施形態の磁気ディスクは、水素と安定な結合状態の構造を有する記録層により、表面形状、あるいは磁気的に記録されたピットにより、トラッキングサーボをかけながら、情報の記録再生が可能となる。
【0213】
ここで、本実施形態の磁気ディスクでは、水素を含有した安定なマイクロ構造を有する記録層からなる構成により、高密度で微細な記録ドメインを記録した場合にも、安定した記録磁区を実現できるものである。
【0214】
ここで、光学ヘッドは、磁気ヘッドと反対方向に配置した構成について示してあるが、磁気ヘッドと同じ側から照射する構成、さらに、磁気ヘッドと光学ヘッド、あるいは光源とつながった導波路と一体となった構成であっても良い。
【0215】
以上のように、本実施形態の記録再生装置の構成により、微細な磁区を高密度に記録再生した場合にも、安定した記録ドメインを形成し、再生信号を検出できる、優れた記録再生信号特性が得られる記録再生装置を実現できるものである。
【0216】
以上のように、本実施形態の構成により、高密度に記録再生した場合にも、安定した記録磁区が形成でき、優れた再生信号が検出でき、しかも、信頼性の高い、磁気記録媒体とその製造方法、および、記録再生方法を実現できるものである。
【0217】
なお、本実施形態の磁気記録媒体の記録層は、相互に孤立した磁気グレインの集合体である構成について述べてきたが、記録層の膜面内方向に磁化の大きさが分布した構成、あるいは、記録層中の膜面内方向に保磁力の大きさが分布した構成、あるいは、記録層の膜面面内方向に、垂直磁気異方性が分布している構成であっても良い。あるいはさらに、記録層は、膜面面内方向での磁壁エネルギー密度、あるいは、磁壁幅が分布している構成であっても同等の効果が得られる。
【0218】
また、記録層の膜面面内方向での磁壁幅が膜厚よりも小さい構成により、さらに効果が大きい。そして、記録膜の各層の間で、磁壁エネルギー密度が異なる構成にすることにより、同等以上の効果が得られる。
【0219】
また、前記記録層の膜面面内方向での抵抗率が500μΩcm以上である構成、あるいは、磁気グレインの幅が50nm以下である構成について述べてきたが、この値に限定されるものではなく、相互に孤立した磁気グレインの集合体により、微細な記録ドメインが安定化される構成であれば、同等の効果が得られる。
【0220】
さらに、本実施形態では、再生層の膜面垂直磁気異方性が、中間層の磁気異方性よりも大きい構成について述べてきたが、さらに、中間層の磁壁エネルギー密度が、再生層の磁壁エネルギー密度より大きい構成、あるいは、再生層の磁壁エネルギーが膜面面内方向と膜面垂直方向で異なる構成であれば、同等以上の効果が得られる。
【0221】
また、本実施形態では、中間層の深さ方向での磁壁幅が、中間層の膜厚よりも小さい構成について述べてきたが、膜面面内方向での磁壁幅も同様に小さい構成であっても良い。
【0222】
さらに、本実施形態の磁気記録媒体の記録層では、下地層の凹凸を用いて、相互に孤立した磁気グレインの集合体である記録層の構成について述べてきたが、ディスク基板、あるいは下地層をエンボス加工した構成、あるいは、下地層表面を、凹凸加工した構成、さらに、記録マークに応じた微細な凹凸を形成した構成であっても、同等以上の効果が得られる。
【0223】
また、本実施形態の記録層では、Ar、Kr、Xeを含有する雰囲気中でスパッタリングする製造方法について述べてきたが、Ne、Ar、Kr、Xeの少なくともひとつを含有し、さらに混合した不活性ガスを用いても良い。
【0224】
また、磁気記録媒体の製造方法は、真空プロセス室の真空中で、イオンガンによるエッチング、あるいは、水素、窒素を含有する雰囲気中に保持し、気体分子を吸蔵、吸着させて記録膜に取り込む方法について述べてきたが、Arに対して、微量の酸素、あるいはその他のガスを含む雰囲気中に保持する方法であってもよい。また、磁気記録媒体を保持する雰囲気も、真空中のみでなく、1気圧以上の加圧雰囲気であってもよい。また、その条件も、保持する雰囲気のガスの種類と分圧、保持圧力、時間の条件を適宜設定して、記録膜に取込む製造方法であればよい。
【0225】
さらに、本実施形態では、イオンガンを用いて、TbFeCo記録層をエッチングし、記録層に水素を含有する製造方法について述べてきたが、Ne、Ar、Kr、Xeあるいは、その他のスパッタリングガスを用いて、記録層をイオン照射エッチング、プラズマエッチング等のドライエッチングを行う製造方法であっても良い。
【0226】
また、記録層形成後、あるいはその他の薄膜層形成後に、エッチング工程により、記録層の抵抗率を増大させた構成について述べてきたが、エッチング電力、照射するイオンガスの種類を変化させた方法であっても良い。
【0227】
また、本実施形態では、7×10ー6Pa以下の高真空に真空排気された真空プロセス室内に、Arガスを導入して製膜する製造方法について述べてきたが、記録層形成前の到達真空度が、5×10−5Pa以下である真空プロセス室に、スパッタリングガスを導入して前記記録層を膜成長させる製膜する製造方法であれば、同等の効果が得られる。
【0228】
また、本実施形態の記録層の製造方法では、記録層TbFeCo製膜時に、製膜速度、ディスク基板の回転数を制御することにより、TbとFe、Coの膜のミクロな構造を変化させることができ、磁気異方性の大きい非晶質な膜構造の磁性薄膜を用いても良い。より具体的には、TbFeCoの記録層製膜時に、40rpmで自公転の回転をしながら、それぞれの元素粒子が、0.5nm/secの製膜レートで、それぞれ製膜することにより、上記膜構造が可能である。
【0229】
また、本実施形態の記録層の構成は、磁気的超解像を用いた多層構造について述べてきたが、記録情報を保持しておく記録層を有する構成であれば同様の効果が得られる。この時、単層、あるいは、再生情報の信号量を増大させるための再生層と記録層とで構成され、2層間相互に磁気的に交換結合されている構成であっても良い。
【0230】
また、ここで、TbFeCoからなる記録層について述べてきたが、希土類金属―遷移金属合金を用いた磁性薄膜であって、少なくともTb、Gd、Dy、Nd、Ho、Pr、Er等の希土類金属材料のひとつと、Fe、Co、Ni等の遷移金属を含む磁性薄膜であれば良い。
【0231】
また、GdFeCoCrの再生層について、述べてきたが、GdFeCoAl、あるいはその他の材料組成、あるいは、さらに、それらの材料を用いた構成、あるいは、多層に積層した構成であってもよい。
【0232】
あるいはさらに、記録層のTbFeCo製膜時に、製膜速度、光ディスク基板の回転数を制御することにより、TbとFe、Coの遷移金属とを、周期構造に積層した構成であっても良い。この時の積層周期としては、少なくとも2.0nm以下の周期的な積層構造にすることにより、記録層の飽和磁化Msと保磁力Hcとの積Ms・Hcを増大させることができる。実際、1.0nmの積層周期の記録層では、4.0×106erg/cm3という大きなMs・Hc値が得られ、50nm以下の微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成でき、繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
【0233】
また、本実施形態の光磁気記録媒体の記録層は、TbとFeCoの積層周期が0.3nm以上、4nm以下に積層した構成であって、記録層の膜厚を20nm以上、より好ましくは、40nmから200nmに形成した構成であれば、同等の効果が得られる。また、TbとFe、Coの遷移金属が周期的な積層構成に限定されるものではなく、Tb、Fe、Coそれぞれ異なるターゲット、あるいは、それ以外の材料を含む構成であっても、2nm以下の積層周期を有する記録層の構成であればよい。
【0234】
また、TbFeCoからなる記録層のキュリー温度は300℃から330 ℃に設定していたが、磁気ヘッドの特性、光学ヘッドによる温度上昇の条件、さらに、環境温度の許容範囲に応じて、少なくとも150℃以上の温度範囲に設定すれば良い。
【0235】
なお、ここで、磁気記録媒体の磁気特性の変化は、ディスク基板、あるいは下地層の変化にも依存しており、保磁力、飽和磁化、磁束密度、磁気異方性、あるいはそれらの温度特性等を含めて本願発明の記録層に調整すれば、同等以上の効果が得られる。
【0236】
また、本実施形態では、DWDD方式を用いた磁気的超解像を用いた磁気ディスクについて述べてきたが、また、その膜構成は、再生層、中間層、記録層、あるいはさらに制御層を含む構成について述べてきたが、この構成に限定されるものではなく、RAD、FAD、CAD、あるいは、ダブルマスク方式の磁気的超解像方式、あるいは、MAMMMOS方式等の転写した磁区が拡大再生されるような膜構成の磁気記録媒体であっても良い。また、記録膜の構成も、記録層、中間層、再生層の3層構造に限定されず、必要な機能を有した多層膜を形成した構成であれば良い。
【0237】
また、DWDD方式を用いた磁気記録媒体では、凹凸、あるいは、面粗さの異なるピットを形成したディスク基板について述べてきたが、グルーブ、あるいは、ランドを有し、記録トラック間を分離する構成であっても良い。あるいは、トラック間に案内溝を設けて、アニール処理をする構成であっても良い。このような構成であれば、情報の記録されるトラック間が磁性的遮断され、再生層に転写された記録磁区が容易に磁壁移動する構成を実現でき、DWDD方式での信号特性が、さらに優れた磁気記録媒体を実現できる。このように、グルーブ、あるいは、ランドの凹凸により、記録トラック間の分離を行なうと、0.1μm以下の微小磁区を安定して形成し、DWDD方式による転写磁区の磁壁の移動度を確保でき、再生信号特性に優れた磁気ディスクを実現することができる。さらに、記録再生時に隣接トラックからのクロスライト及びクロストークも低減できるものである。
【0238】
なお、ディスク基板の材料は、ガラス、Al合金の金属、ポリカーボネートについて述べてきたが、その他の金属材料、プラスチック材料等を用いても良い。
【0239】
また、上記本実施形態の磁気ディスクは、ディスク基板表面にフォトポリマーによりピットを形成した構成、あるいは、インプリント等を用いた方法について述べてきたが、ディスク基板表面を直接エッチングにより加工した構成、あるいは、直接ピットの加工、あるいは、ガラスを加熱溶融して転写させることによりピット形成を行なっても良い。あるいは、インプリント等を用いてフォトポリマーに転写させる方法であっても良い。また、表面粗さを利用したディスク基板の場合には、フォトレジスト原盤を直接エッチングにより加工して作製したスタンパを用いて、ディスク基板に転写させた形成、あるいは、ディスク基板上に形成した下地表面を直接エッチングする方法でも良い。
【0240】
また、自己組織化された有機の微粒子を塗布したディスク基板上に、記録層を形成する方法であっても、微粒子のパターンの大きさまで高密度に記録が可能となる。さらに、微粒子を、均一な特性を有し、直径の小さいものを用いれば、さらに高密度での記録が可能となる。あるいは、自己組織化された微粒子の形状を、ディスク基板上に、転写形成した構成であっても良い。特に、微粒子を塗布、あるいは、転写してからエッチング等を行なえば、同等の効果が得られる。
【0241】
さらに、本実施形態では、トラックピッチは、0.25μmから0.4μmのディスク基板について説明してきたが、情報の記録されるグルーブ幅が0.6μm以下の構成であって、記録情報の最短のマーク長が0.3μm以下の記録ドメインを記録する構成であればよい。また、記録トラック、線記録密度が小さくなった場合には、より効果が大きい。
【0242】
なお、本実施形態のプリピットの深さ、大きさは限定していないが、より好ましくは、10nmから200nmの範囲にある深さのプリピットを有する構成、またサーボピット、アドレスピット等のプリピットからの信号が磁気ヘッドにより検出可能でできるだけ小さい構成であれば、同等以上の効果を実現できる。
【0243】
なお、本実施形態では、表面形状の異なるプリピット、あるいは、磁気的な記録によるプリピットが形成し、アドレスを検出する方法について述べてきたが、グルーブ、あるいは、ランドをウォブルさせてアドレス情報を検出する方法であっても良い。その場合、グルーブ、あるいは、ランドの片側のみをウォブルさせることもできる。
【0244】
また、ディスク基板と誘電体の下地層との間に、熱伝導率の大きい熱吸収層を形成し、さらに、熱伝導率の小さい層を形成して、ディスク内での温度分布、熱伝導を制御した構成であっても良い。
【0245】
また、下地層としては、ディスク基板上にSiN、AlTiN、ZnSSiO2、TaO、AgCuについて述べてきたが、AlTi、AlCr、Cr、Ti、Taあるいはその他の材料の酸化物、あるいは窒化物、あるいはカルコゲン系化合物等のII−VI族、III−V族化合物、あるいはさらに、Al、Cu、Ag、Au、Pt等の金属材料、あるいはそれらを含む混合材料であっても良い。
【0246】
またこれらの材料を、保護膜材料として用いても良い。
【0247】
そして、さらに保護層には、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる固体潤滑層をArとCH4の混合雰囲気中で、Cターゲットを用いて、反応性RFスパッタリングにより形成する方法について述べてきたが、CVD等を用いてDLC膜を形成すると、さらに緻密な膜の形成が可能になる。
【0248】
また、スパッタリングで形成したアモルファスカーボンの保護層について述べてきたが、表面粗さ、Raが小さく、摩擦係数の小さい材料で、膜強度の大きい材料であれば、これに限定されるものではない。
【0249】
また、さらに保護層として、エポキシアクリレート系からなる樹脂、あるいはウレタン系樹脂を用いて、スピンコートにより5μm程度の均一な膜厚に塗布し、紫外線ランプを照射して硬化、あるいは、熱的に硬化させることにより形成する方法であっても良い。
【0250】
さらに、パーフルオロポリエーテルからなる潤滑保護層を塗布する構成について述べてきたが、スピンコート、あるいは、ディッピング等を用いれば良い。また、潤滑層も下地の保護層上で安定した材料であれば良い。
【0251】
また、本願発明の磁気記録媒体に、テープバーニッシュ処理をさらに追加して、表面を傷つくことなく異物、突起などが除去され、内周から外周端まで膜厚分布で均一で平滑性の良好な塗布する工程を用いても良い。
【0252】
また、ディスク基板は、両面タイプであっても良い。その場合には、サーボピットは両面に形成し、記録層、保護層の形成を両面に行なう必要がある。また、記録再生装置では、記録膜両面に、磁気ヘッドを取り付けたドライブ構成にする必要がある。
【0253】
さらに、両面に成膜後、媒体表面をテープバーニッシュ装置に装着し、回転させながら両面を内周から外周に向かってテープバーニッシュすることで、異物、突起などを除去した構成であっても良い。
【0254】
以上述べてきたように、本願発明の磁気記録媒体では、ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に記録層を備えた構成の磁気記録媒体であって、前記記録層が磁気グレインごとに分離し、磁気的に孤立した記録ドメインを形成する構成、あるいは、相互に孤立した磁気グレインの集合体により、記録膜中に微細な構造を形成し、記録膜の比抵抗が大きい特性を有する構成により、微細な記録磁区を安定して記録することができ、再生信号振幅を劣化させることなく、記録密度の大幅な向上が可能となる。また、光を照射して記録膜の温度を上昇させながら磁気記録再生する記録媒体においても、サーボ特性が安定して、信頼性を高めることができ、ディスクの生産性、コストを大幅に向上できる。
【0255】
さらに、高密度記録での、繰り返し書き換えを行なった場合にも、安定した記録再生特性が得られ、信号特性の優れた信号特性の磁気記録媒体とその製造方法、および、記録再生方法を提供することが実現可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0256】
本発明の磁気記録媒体は、高密度の情報の記録が可能であり、情報蓄積デバイス、メモリー媒体として有用であり、適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0257】
【図1】本発明の第1の実施形態における磁気記録媒体の構成を示す断面図
【図2】(a)本発明の実施形態における磁気記録媒体の断面をSEM観察した特性図(b)従来の磁気記録媒体の断面をSEM観察した特性図
【図3】本発明の第2の実施形態における磁気記録媒体の構成を示す断面図
【図4】本発明の第3の実施形態における磁気記録媒体の構成を示す断面図
【図5】本発明の実施形態における磁気記録媒体の記録層薄膜の抵抗率と、記録層へのエッチング時間との関係を示す特性図
【図6】本発明の第5の実施形態における磁気記録媒体の構成を示す断面図
【図7】本発明の第6の実施形態における磁気記録媒体の構成を、SEM観察した断面構成図
【図8】本発明の実施形態における磁気記録媒体の記録層薄膜の抵抗率と、記録層の製膜ガス圧力との関係を示す特性図
【図9】本発明の実施形態における磁気記録媒体を製造するための、製造装置を示す構成図
【図10】発明の実施形態における磁気記録媒体の記録再生装置の構成を示す図
【図11】DWDD方式の再生原理について説明する図
【符号の説明】
【0258】
1,10,30,50 磁気ディスク
2,11,31,51 ディスク基板
3,12,33,52 誘電体層
4 下地磁性層
5,13,34,53 記録層
14,35,54 中間層
15,37,55 再生層
6,16,38,56 誘電体保護層
7,17,39,57 潤滑層
8 テクスチャー処理
32 フォトポリマー
36 制御層
101 磁気ディスク
102 磁気ヘッド
103 スピンドルモータ
104 光学ヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に磁気異方性を有する記録層を備えた記録膜により構成された磁気記録媒体であって、少なくとも前記記録層は、相互に孤立した磁気グレインの集合体であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に磁気異方性を有する記録層を備えた記録膜により構成された磁気記録媒体であって、前記記録層中の膜面内方向に、磁化の大きさが分布した構成を有することを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項3】
ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に磁気異方性を有する記録層を備えた記録膜により構成された磁気記録媒体であって、前記記録層中の膜面内方向に、保磁力の大きさが分布した構成を有することを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記記録層の膜面面内方向に、垂直磁気異方性が分布していることを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記記録層の膜面面内方向での磁壁エネルギー密度、あるいは、磁壁幅が分布していることを特徴とする請求項1、2記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
前記記録層の膜面面内方向での磁壁幅が膜厚よりも小さいことを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項7】
前記記録層の膜面面内方向での抵抗率が500μΩcm以上であることを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項8】
前記記録膜が、コラム状の断面構造により分離されていることを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項9】
前記記録層がコラム構造形状の構造を形成し、前記コラム構造の構造単位が互いに孤立した構成を有することを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項10】
前記磁気グレインの幅が、50nm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項11】
前記記録膜が、下地層の形状によって分離され、相互に孤立した磁気グレイン構造を有することを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項12】
前記記録膜の孤立した境界に、気体分子が取込まれた構成であることを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項13】
取り込まれた気体分子としては、H、N、O、He、Ne、Ar、Kr、Xeが含まれることを特徴とする請求項12記載の磁気記録媒体。
【請求項14】
前記記録膜は、希土類金属を含有することを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項15】
前記希土類金属は、Tb、Gd、Dyの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項14記載の磁気記録媒体。
【請求項16】
前記記録層の膜厚は、10nm以上400nm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項17】
前記記録層に磁気的に結合した再生層を含む多層膜に構成された記録膜であることを特徴とする、請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項18】
少なくとも、記録層、再生層を含む多層膜に構成された記録膜であって、前記記録膜を構成する各層の間で、磁壁エネルギー密度が異なることを特徴とする請求項17記載の磁気記録媒体。
【請求項19】
前記記録膜が、さらに中間層を含み、前記中間層の磁壁エネルギー密度が、前記再生層の磁壁エネルギー密度より大きいことを特徴とする請求項17記載の磁気記録媒体。
【請求項20】
前記再生層の、膜面垂直磁気異方性が、中間層の磁気異方性よりも大きいことを特徴とする請求項17記載の磁気記録媒体。
【請求項21】
前記再生層の磁壁エネルギーは、膜面面内方向と、膜面垂直方向で異なることを特徴とする請求項17記載の磁気記録媒体。
【請求項22】
前記再生層は、磁壁抗磁力が小さいことを特徴とする請求項17記載の磁気記録媒体。
【請求項23】
中間層の膜面面内方向での磁壁幅が小さいことを特徴とする請求項17記載の磁気記録媒体。
【請求項24】
中間層は、深さ方向での磁壁幅が膜厚よりも小さいことを特徴とする請求項17記載の磁気記録媒体。
【請求項25】
前記ディスク基板表面に、エンボス加工したことを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項26】
前記記録層形成前の下地層表面を、凹凸加工したことを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項27】
ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に磁気異方性を有する記録層を形成する磁気記録媒体の製造装置において、磁気グレインの相互に孤立して膜成長させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項28】
ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に磁気異方性を有する記録層を形成する磁気記録媒体の製造装置において、表面粗さを0.5nm以上である下地層の上に、前記記録層のグレインを相互に分離して膜成長させたことを特徴とする請求項27記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項29】
請求項1から26のいずれかに記載の前記磁気記録媒体に、レーザ光スポットを照射することにより、前記記録層を昇温させながら、ディスク上の情報信号の記録あるいは再生を行うことを特徴とする磁気記録媒体の記録再生方法。
【請求項30】
請求項1から26記載の前記磁気記録媒体上の情報信号を、磁気ヘッドを用いて記録再生することを特徴とする磁気記録媒体の記録再生方法。
【請求項1】
ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に磁気異方性を有する記録層を備えた記録膜により構成された磁気記録媒体であって、少なくとも前記記録層は、相互に孤立した磁気グレインの集合体であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に磁気異方性を有する記録層を備えた記録膜により構成された磁気記録媒体であって、前記記録層中の膜面内方向に、磁化の大きさが分布した構成を有することを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項3】
ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に磁気異方性を有する記録層を備えた記録膜により構成された磁気記録媒体であって、前記記録層中の膜面内方向に、保磁力の大きさが分布した構成を有することを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記記録層の膜面面内方向に、垂直磁気異方性が分布していることを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記記録層の膜面面内方向での磁壁エネルギー密度、あるいは、磁壁幅が分布していることを特徴とする請求項1、2記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
前記記録層の膜面面内方向での磁壁幅が膜厚よりも小さいことを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項7】
前記記録層の膜面面内方向での抵抗率が500μΩcm以上であることを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項8】
前記記録膜が、コラム状の断面構造により分離されていることを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項9】
前記記録層がコラム構造形状の構造を形成し、前記コラム構造の構造単位が互いに孤立した構成を有することを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項10】
前記磁気グレインの幅が、50nm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項11】
前記記録膜が、下地層の形状によって分離され、相互に孤立した磁気グレイン構造を有することを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項12】
前記記録膜の孤立した境界に、気体分子が取込まれた構成であることを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項13】
取り込まれた気体分子としては、H、N、O、He、Ne、Ar、Kr、Xeが含まれることを特徴とする請求項12記載の磁気記録媒体。
【請求項14】
前記記録膜は、希土類金属を含有することを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項15】
前記希土類金属は、Tb、Gd、Dyの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項14記載の磁気記録媒体。
【請求項16】
前記記録層の膜厚は、10nm以上400nm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項17】
前記記録層に磁気的に結合した再生層を含む多層膜に構成された記録膜であることを特徴とする、請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項18】
少なくとも、記録層、再生層を含む多層膜に構成された記録膜であって、前記記録膜を構成する各層の間で、磁壁エネルギー密度が異なることを特徴とする請求項17記載の磁気記録媒体。
【請求項19】
前記記録膜が、さらに中間層を含み、前記中間層の磁壁エネルギー密度が、前記再生層の磁壁エネルギー密度より大きいことを特徴とする請求項17記載の磁気記録媒体。
【請求項20】
前記再生層の、膜面垂直磁気異方性が、中間層の磁気異方性よりも大きいことを特徴とする請求項17記載の磁気記録媒体。
【請求項21】
前記再生層の磁壁エネルギーは、膜面面内方向と、膜面垂直方向で異なることを特徴とする請求項17記載の磁気記録媒体。
【請求項22】
前記再生層は、磁壁抗磁力が小さいことを特徴とする請求項17記載の磁気記録媒体。
【請求項23】
中間層の膜面面内方向での磁壁幅が小さいことを特徴とする請求項17記載の磁気記録媒体。
【請求項24】
中間層は、深さ方向での磁壁幅が膜厚よりも小さいことを特徴とする請求項17記載の磁気記録媒体。
【請求項25】
前記ディスク基板表面に、エンボス加工したことを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項26】
前記記録層形成前の下地層表面を、凹凸加工したことを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項27】
ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に磁気異方性を有する記録層を形成する磁気記録媒体の製造装置において、磁気グレインの相互に孤立して膜成長させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項28】
ディスク基板上に少なくとも膜面垂直方向に磁気異方性を有する記録層を形成する磁気記録媒体の製造装置において、表面粗さを0.5nm以上である下地層の上に、前記記録層のグレインを相互に分離して膜成長させたことを特徴とする請求項27記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項29】
請求項1から26のいずれかに記載の前記磁気記録媒体に、レーザ光スポットを照射することにより、前記記録層を昇温させながら、ディスク上の情報信号の記録あるいは再生を行うことを特徴とする磁気記録媒体の記録再生方法。
【請求項30】
請求項1から26記載の前記磁気記録媒体上の情報信号を、磁気ヘッドを用いて記録再生することを特徴とする磁気記録媒体の記録再生方法。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図7】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図7】
【公開番号】特開2008−198238(P2008−198238A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152093(P2005−152093)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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