説明

磁界共鳴方式の非接触給電装置

【課題】第1に、高圧で大容量の電源装置を用いることなく、第2に、エアギャップ拡大や大電力供給が実現され、第3に、電磁波障害も防止される、磁界共鳴方式の非接触給電装置を提案する。
【解決手段】この非接触給電装置15は、送電側回路6について、送電コイル3と並列コンデンサ11が配されて、並列共振回路が形成されると共に、受電側回路7について、受電コイル4と並列コンデンサ12が配されて、並列共振回路が形成されている。そして、両並列共振回路の共振周波数が等しく設定されると共に、送電側回路6の高周波電源9の電源周波数が、この共振周波数と揃えられている。送電側回路6は、高周波電源9側の回路部分と、並列コンデンサ11や送電コイル3側の回路部分とが、コンデンサ21,22による電界結合によって、接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電装置に関する。例えば、地面側,送電側から車輌側,受電側に非接触で電力を供給する、磁界共鳴方式の非接触給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
ケーブル等の機械的接触なしで、例えば電気自動車等の車輌に外部から電力を供給する非接触給電装置が、需要に基づき開発,実用化されている。
この非接触給電装置では、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、地上側に定置された送電側回路の送電コイルから、車輌等の移動体側に搭載された受電側回路の受電コイルに、例えば数10mm〜数100mm程度のエアギャップを存し、非接触で近接対応位置しつつ、電力を供給する(後述する図4も参照)。
【0003】
《従来技術》
さて、この種の非接触給電装置にあっては、給電時の利便性に鑑み、エアギャップ拡大・大エアギャップ化のニーズが大であり、その一環として磁界共鳴方式の研究,開発が進展している。
そして磁界共鳴方式は、代表的には、図3の(1)図に示したように、中継コイル2を使用した非接触給電装置1について、適用,実施されていた。
すなわち、この非接触給電装置1では、送電コイル3と受電コイル4間のエアギャップGの磁路に、共振回路5を構成する中継コイル2が、送電コイル3側と受電コイル4側とに、それぞれ配設されている。この両共振回路5は、送電コイル3等の送電側回路6や受電コイル4等の受電側回路7から、電気的に絶縁されており、独立した別回路よりなる。そして、エアギャップGの磁路に励磁無効電力を供給するようになっている。図中8は、共振用のコンデンサである。
そして磁界共鳴方式として、両共振回路5の共振周波数が等しく設定されており、共鳴コイルとして中継コイル2間で磁場が結合すると共に、送電側回路6の高周波電源9の電源周波数が、この共振周波数と揃えられている。
【0004】
磁界共鳴方式は、このように中継コイル2を使用した図3の(1)図の非接触給電装置1について、適用,実施されるタイプが代表的である。
これに対し磁界共鳴方式は、中継コイル2を使用しない図3の(2)図に示した非接触給電装置10について、適用,実施するタイプも可能である。
すなわち、この非接触給電装置10では、送電側回路6について、送電コイル3と並列コンデンサ11が配されて、並列共振回路が形成されると共に、受電側回路7について、受電コイル4と並列コンデンサ12が配されて、並列共振回路が形成されている。
そしてこのタイプでは、磁界共鳴方式として、送電コイル3と受電コイル4が共鳴コイルとして用いられ、両並列共振回路の共振周波数が等しく設定されると共に、送電側回路6の高周波電源9の電源周波数が、この共振周波数と揃えられている。図中13,14は、フェライトコア等の磁心コア、Lは負荷である。
そして磁界共鳴方式を、図3の(2)図の非接触給電装置10に適用,実施したタイプは、図3の(1)図の非接触給電装置1に適用,実施したタイプに比し、抵抗値減少等により、より大きな電力供給が可能となるという利点がある。なお、大きなエアギャップG化に伴う、電磁結合の結合係数Kの低下は、コイルのQ値で補うことが可能であり、送電コイル3と受電コイル4の相互インダクタンスよりはるかに小さな抵抗分を有する送電コイル3や受電コイル4を採用することによって、コイル間効率維持が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
磁界共鳴方式を図3の(1)図の非接触給電装置1に適用,実施したタイプとしては、例えば、次の特許文献1が挙げられる。
図3の(2)図に示した非接触給電装置10については、例えば、同特許文献1中の背景技術欄を参照。
【特許文献1】特開2010−173503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
《問題点》
ところで、このような従来の磁界共鳴方式の非接触給電装置10については、次の課題が指摘されていた。
磁界共鳴方式は、エアギャップG拡大を可能とし、例えば送電コイル3と受電コイル4間の電磁結合の結合係数Kが0.1以下となる、大きなエアギャップGのもとでの非接触給電を可能とする。しかしながら、送電コイル3を励磁する励磁皮相電力が極めて大となり、大容量の高周波電源9を必要とし、コスト負担が過大となる、という問題が指摘されていた。
例えば、図3の(2)図の非接触給電装置10についてシミュレーションすると、K値が0.05の場合、受電側回路7に2kW程度(出力電圧V420V×5A)の電力供給を行おうとすると、送電側回路6の励磁皮相電力は、130kVAを超える大きさとなる(1.4kV×96A)。
送電コイル3への入力電圧Vは、1.4kVを越える高電圧を要し、これを送電側回路6の共振回路で作り出すことになる。結局、この高電圧を、高周波電源9やトランスにて供給することが必要となる。このように、送電コイル3と受電コイル4を共鳴コイルとして用いるタイプの磁界共鳴方式については、高圧で大容量のインバーター電源や昇圧トランスが必要となり、電源装置がコスト高となる、という問題が指摘されていた。
【0007】
《本発明について》
本発明の磁界共鳴方式の非接触給電装置は、このような実情に鑑み、上述した従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、高圧で大容量の電源装置を用いることなく、第2に、エアギャップ拡大や大電力供給が実現され、第3に、電磁波障害も防止される、磁界共鳴方式の非接触給電装置を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲に記載したように、次のとおりである。請求項1については、次のとおり。
請求項1の磁界共鳴方式の非接触給電装置は、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、送電側回路の送電コイルから受電側回路の受電コイルに、エアギャップを存し非接触で近接対応位置しつつ電力を供給する。
そして該送電側回路について、該送電コイルと並列コンデンサが配されて、並列共振回路が形成されると共に、該受電側回路について、該受電コイルと並列コンデンサが配されて、並列共振回路が形成されている。
そして、両該並列共振回路の共振周波数が等しく設定されると共に、該送電側回路の高周波電源の電源周波数が、該共振周波数と揃えられている。該送電側回路は、該高周波電源側の回路部分と、該並列コンデンサや送電コイル側の回路部分とが、コンデンサによる電界結合によって接続されていること、を特徴とする。
【0009】
請求項2については、次のとおり。
請求項2の磁界共鳴方式の非接触給電装置では、請求項1において、該電界結合用コンデンサは昇圧機能を発揮し、該高周波電源側の回路部分を低圧に保持しつつ、該送電コイル等側の回路部分を高圧化すること、を特徴とする。
請求項3については、次のとおり。
請求項3の磁界共鳴方式の非接触給電装置では、請求項2において、該送電側回路は、該高周波電源側の回路部分と、該電界結合用コンデンサ,並列コンデンサ,送電コイル側の回路部分とが、絶縁トランスを介して接続されていること、を特徴とする。
請求項4については、次のとおり。
請求項4の磁界共鳴方式の非接触給電装置では、請求項2において、該送電コイル等の送電側回路は、地面,路面,床面,その他の地上側に定置配置され、該受電コイル等の受電側回路は、車輌,その他の移動体側に搭載されていること、を特徴とする。
【0010】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)非接触給電装置では、受電コイルが送電コイルにエアギャップを存し近接対応位置しつつ、電力が供給される。
(2)給電に際しては、送電コイルに通電されて磁束が形成され、エアギャップに磁路が形成される。
(3)このように、誘起された磁界を利用し、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、送電コイル側から受電コイル側へと電力が供給される。
(4)さて、送電側回路では送電コイルと並列コンデンサにより、受電側回路では受電コイルと並列コンデンサにより、並列共振回路が形成されている。これと共に、両共振周波数,高周波電源の電源周波数等が揃えられた、磁界共鳴方式よりなる。
(5)このように、送電コイルと受電コイルが、共鳴コイルとして用いられている。そしてエアギャップ拡大に鑑み、送電コイルへの励磁皮相電力が大きく、大なる入力電圧と電流を要する。
(6)そこでまず、共振回路で大電流が得られるから、電源装置側は小電流,小容量のまま、送電コイル側の大電力化が実現される。
(7)これと共に、送電側回路の高周波電源側と送電コイル等側間を、電界結合用コンデンサにて接続してなり、その昇圧機能により、高周波電源側を低圧に保持しつつ、送電コイル等側が高圧化される。電源装置側は低圧,小容量のまま、送電コイル側の高圧化が実現される。
(8)勿論、磁界共鳴方式よりなるので、エアギャップ拡大も実現される。又、エアギャップに独立した共振回路を設けないので、その分、大きな電力供給が可能となる。
(9)なお、送電側回路の高周波電源を絶縁トランスを介して接続すると、コモンモード電流が削減され、外部放射される不要電磁波が低減される。
(10)さてそこで、本発明の磁界共鳴方式の非接触給電装置は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0011】
《第1の効果》
第1に、高圧で大容量の電源装置を用いることなく、送電コイル電圧を高めることができる。
この磁界共鳴方式の非接触給電装置は、送電コイルと受電コイルを共鳴コイルとして用いるタイプよりなり、エアギャップ拡大のため送電コイルに大なる励磁皮相電力を要する。そこで本発明では、送電側回路の高周波電源側に対し送電コイル等側を、コンデンサによる電界結合によって接続し、もって高周波電源側を低圧に保持しつつ、送電コイル等側を高圧化する。これと共に、送電コイルに対して並列に共振コンデンサを接続し、もって、高周波電源側を小容量に保持しつつ、送電コイル等側を大電力化する。
従って、前述したこの種従来技術のように、高圧で大容量のインバーター電源やトランスを要し、電源装置がコスト高となる、という問題は解消される。本発明では、高周波電源の高圧化,大容量化を要することなく、トランスによる昇圧,高圧化も要することもなく、送電コイル高圧化を実施可能である。電源装置側は、低圧,小容量のまま給電すればよく、大幅なコスト低減が実現される。
【0012】
《第2の効果》
第2に、もってエアギャップ拡大や、大電力供給が実現される。本発明の磁界共鳴方式の非接触給電装置は、送電コイルと受電コイルを共鳴コイルとして用いるタイプよりなる。
そこでまず、磁界共鳴方式の特徴を活かし、エアギャップ拡大・大エアギャップ化が実現され、給電時の利便性が向上する。これと共に、前述した中継コイルを使用したタイプの磁界共鳴方式の非接触給電装置に比し、より大きな電力供給が可能となる。
【0013】
《第3の効果》
第3に、電磁波障害も防止される。この非接触給電装置では、数10kHz〜数100kHz程度の高周波交流が使用されることが多く、そのままでは、高次の高調波を含む電流がコイルに流れ、コモンモード電流も高次高調波を含んだものとなる。そのコモンモード電流によって形成される磁界に基づいて外部放射される電磁波により、近隣周辺に電波妨害や人体への機能障害を与える虞がある。
そこで、送電側回路中に絶縁トランスを設け、コモンモード電流を阻止することにより、不要電磁波放射が低減され、電磁波障害発生の危険は低減される。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る磁界共鳴方式の非接触給電装置について、発明を実施するための形態の説明に供し、回路図である。
【図2】磁界共鳴方式の非接触給電装置の説明に供し、(1)図は、その原理説明に供する回路説明図、(2)図は、出力電圧の周波数応答グラフである。
【図3】磁界共鳴方式の非接触給電装置の説明に供し、(1)図は、その1例の回路説明図、(2)図は、他の例の回路説明図である。
【図4】非接触給電装置の説明に供し、(1)図は、全体側面図、(2)図は、構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
《非接触給電装置15について》
まず、本発明の前提となる非接触給電装置15について、図4,図1,図2の(1)図等を参照して、一般的に説明する。
非接触給電装置15は、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、送電側回路6の送電コイル3から受電側回路7の受電コイル4に、エアギャップGを存し非接触で近接対応位置しつつ、電力を供給する。
送電側回路6は、地上A側に定置配設されており、受電側回路7は車輌B等の移動体側に搭載されている。
【0016】
このような非接触給電装置15について、更に詳述する。まず、給電側,トラック側,1次側の送電側回路6は、給電スタンドC等の給電エリアにおいて、地面,路面,床面,その他の地上A側に、定置配置されている。
これに対し、受電側,ピックアップ側,2次側の受電側回路7は、電気自動車(EV車)や電車等の車輌B,その他の移動体側に搭載されている。受電側回路7は、駆動用の他、非駆動用としても利用可能であり、図4中に示したように、車載のバッテリー16に接続されるのが代表的であるが、図1,図2の(1)図中に示したように、各種負荷Lに直接接続される場合もある。
そして、送電側回路6の送電コイル3と受電側回路7の受電コイル4とは、給電に際し数10mm〜数100mm、例えば50mm〜150mm程度の僅かな間隙空間であるエアギャップGを存しつつ、非接触で近接して対応位置される。
給電に際しては、図示のように受電コイル4が、定置された送電コイル3に対し、上側等から対応位置して停止,駐車される停止給電方式が代表的であり、停止給電方式の場合は、送電コイル3と受電コイル4とは、上下等で対をなしうる対称構造よりなる。これに対し、受電コイル4が送電コイル3上等を低速走行しつつ給電を行う移動給電方式も、可能であり、移動給電方式の1例としては、高速道路上で走行中の電気自動車に対して、給電する例が挙げられる。
【0017】
送電側回路6の送電コイル3は、高周波電源9に接続されている。高周波電源9は、周波数等交換用のインバーター電源よりなり、例えば数kHz〜数10kHz、更には数10kHz〜数100kHz程度の高周波交流を、給電交流,励磁電流として送電コイル3に向けて通電する。図1の送電側回路6中、17はチョークコイル、11は、送電コイル3との並列共振用の並列コンデンサである。
受電側回路7の受電コイル4は、図4の例では、バッテリー16に接続可能となっており、給電により充電されたバッテリー16にて走行用のモータ18が駆動されるが、図1,図2の(1)図の例では、その他の負荷Lに電力供給される。図4中19は、交流を直流に変換するコンバータ(整流部や平滑部)、20は、直流を交流に変換するインバータであり、図1の受電側回路7中、12は受電コイル4との並列共振用の並列コンデンサである。
送電コイル3および受電コイル4は、渦巻状に巻回された扁平フラット構造をなしている。すなわち、絶縁被覆されたコイル導線が、同一平面において並列化された平行位置関係を維持しつつ、円形や方形の渦巻状に複数回巻回ターンされ、もって全体的に凹凸のない平坦で肉厚の薄い扁平フラット構造をなすと共に、環状,略フランジ状をなしている。
又、送電コイル3や受電コイル4は、それぞれ外側に、フェライトコア等の磁心コア13や14を備えている(図3を参照)。磁心コア13,14は強磁性体よりなり、フラットな平状,環状,略フランジ状の扁平フラット構造をなし、送電コイル3や受電コイル4に対し、若干大きな表面積よりなると共に同心に配置されている。そして、コイルインダクタンスを増し電磁結合を強化すると共に、形成磁束を誘導,収集,方向付けする。
【0018】
電磁誘導の相互誘導作用については、次のとおり。給電に際し、エアギャップGを介して近接対応位置する送電コイル3と受電コイル4間において、送電コイル3での磁束形成により、受電コイル4に誘導起電力を生成させ、もって送電コイル3から受電コイル4に電力を供給することは、公知公用である。
すなわち、図1,図2の(1)図に示したように、送電側回路6の送電コイル3に、高周波電源9から給電交流,励磁電流を印加,通電することにより、自己誘導起電力が発生して、磁界が送電コイル3の周囲に生じ、磁束φがコイル面に対して直角方向に形成される。
そして、このように形成された磁束φが、受電側回路7の受電コイル4を貫き鎖交することにより、誘導起電力が生成されて磁界が形成される。このように、誘起された磁界を利用して電力が送受され、数kW以上そして数10kW〜数100kW程度の電力供給が可能である。送電コイル3側の磁束φの磁気回路と、受電コイル4側の磁束φの磁気回路とは、相互間にも磁束φの磁気回路つまり磁路が形成されて、電磁結合される。
非接触給電装置15では、このような電磁誘導の相互誘導作用に基づき、非接触給電が行われる。非接触給電装置15について、一般的説明は以上のとおり。
【0019】
《本発明の概要》
以下、本発明の磁界共鳴方式の非接触給電装置15について、図1,図2を参照して説明する。まず、本発明の概要については、次のとおり。
この非接触給電装置15では、送電側回路6について、送電コイル3と並列に並列コンデンサ11が配されて、並列共振回路が形成されると共に、受電側回路7について、受電コイル4と並列に並列コンデンサ12が配されて、並列共振回路が形成されている。
そして磁界共鳴方式よりなり、両並列共振回路の共振周波数が等しく設定されると共に、送電側回路6の高周波電源9の電源周波数が、共振周波数と揃えられている。
そして本発明では、送電側回路6は、高周波電源9側の回路部分と、並列コンデンサ11や送電コイル3側の回路部分とが、コンデンサ21,22による電界結合によって、接続されている。この電界結合用コンデンサ21,22は昇圧機能を発揮し、高周波電源9側の回路部分を低圧に保持しつつ、送電コイル3等側の回路部分を高圧化する。
もって、共振による送電コイル3の大電流化と、このような高圧化により、送電コイル3の励磁皮相電力が大となる。
本発明の概要については、以上のとおり。以下、このような本発明について、更に詳述する。
【0020】
《磁界共鳴方式について》
まず、磁界共鳴方式について図2等を参照して説明する。非接触給電方式としては、前述したように、電磁誘導の相互誘導作用を利用するものが知られているが、近年、これに加え磁界共鳴方式を併用する技術が、注目されている。
磁界共鳴方式では、相互磁束φで電磁結合すると共に互いに同一の共振周波数を有する送電コイル3側と受電コイル4側とを、エアギャップGを存して近接対応位置させると共に、共振周波数と同一周波数の励磁電流を流す。これにより、送電コイル3と受電コイル4間で共鳴現象が生じ、もって更なるエアギャップG拡大が実現されつつ、給電が行われるようになる。
そして、本発明の非接触給電装置15では、まず前提として、送電側回路6について、送電コイル3と並列コンデンサ11にて並列共振回路が形成されると共に、受電側回路7について、受電コイル4と並列コンデンサ12にて、並列共振回路が形成される。
これと共に、本発明が前提とする磁界共鳴方式では、送電側回路6の並列共振回路の共振周波数と、受電側回路7の並列共振回路の共振周波数とが、等しく設定されると共に、送電側回路6の高周波電源9の電源周波数も、これと揃えられている。
磁界共鳴方式については、以上のとおり。
【0021】
《周波数設定について》
次に、上述した周波数の設定について、図2等を参照して説明する。まず、送電側回路6の並列共振回路の共振周波数f(Hz)は、送電コイル3の自己インダクタンスL(H)と、並列コンデンサ11のキャパシタンスC(F)とによって定まる。
又、受電側回路7の並列共振回路の共振周波数f(Hz)は、受電コイル4の自己インダクタンスL(H)と、並列コンデンサ12のキャパシタンスC(F)とによって定まる。
そして、この両共振周波数f,fが等しくなるように、設定される。共振周波数f,fは、次の数式1,2にて与えられる。
【0022】
【数1】

【数2】

【0023】
具体的な周波数設定については、次のとおり。まず前提として、送電側回路6の送電コイル3への入力電圧Vに対する、受電側回路7の受電コイル4の出力電圧Vの周波数応答は、図2の(2)図のような比率となり、双峰特性を示す。
すなわち、送電コイル3と受電コイル4間のエアギャップG距離が、過度に大きい場合、出力電圧Vの周波数応答は単峰特性を示す。これに対し、エアギャップG距離が給電可能に接近すると、周波数応答は、電磁結合係数Kに対応しつつ図示のように双峰特性を示す。
なお結合係数Kは、送電コイル3と受電コイル4間の電磁結合の結合度合を表し、次の数式3にて与えられる。M(H)は相互インダクタンスであり、K値は、エアギャップG距離の大小に比例して、0〜1間の値を取る。距離が離れると漏洩磁束が増加するので0に近づき、距離が近づくと1に近づき、漏洩磁束のない仮想状態では1となる。
【0024】
【数3】

【0025】
さて、図2の(2)図に示したように、受電コイル4の出力電圧Vの周波数応答は、双峰特性を示すが、その峰と峰の間の周波数差Δfの大小は、K値に比例する。エアギャップG距離が小さくなって、K値が大きくなると、広がり、エアギャップG距離が大きくなってK値が小さくなると、縮まる。
そして、テーマとする共振周波数fの設定に際しては、特定の結合係数Kについて、このような双峰特性を示す両峰の周波数の中間の周波数とされる。受電コイル4側の共振周波数fは、一方の峰の周波数と他方の峰の周波数との、中間の周波数に合わせられる。
そこで、送電コイル3側の共振周波数fもこれに等しく設定され、高周波電源9の電源周波数も、これに揃えられる。これに対応して、送電コイル3や受電コイル4の自己インダクタンスL,Lが調整される。
周波数設定については、以上のとおり。
【0026】
《電界結合用コンデンサ21,22について》
次に、電界結合用コンデンサ21,22について、図1を参照して説明する。送電側回路6は、高周波電源9側の回路部分と、並列共振回路を構成する送電コイル3および並列コンデンサ11の回路部分とが、電界結合用コンデンサ21,22によって接続されている。
すなわち、送電コイル3の両端は、それぞれ、並列コンデンサ11との両接続点を経由して、両電界結合用コンデンサ21,22の一方の電極側に、直列接続されている。これに対し、両電界結合用コンデンサ21,22の他方の電極側は、それぞれ、図示例では絶縁トランス23の2次側コイルの両端に、直列接続されている。
そして、電界結合用コンデンサ21,22は、それぞれ電極間に誘起される電気力線そして電界を利用して電力を送受するが、送電コイル3と共振することによって、昇圧機能を発揮する。
すなわち、両電界結合用コンデンサ21,22は、分圧しつつ送電コイル3と並列共振する(その共振周波数は、前述した共振周波数と等しく設定される)。もって送電側回路6について、高周波電源9側の回路部分を、高圧化,昇圧化することなく低圧に保持しつつ、送電コイル3および並列コンデンサ11側の回路部分を、並列コンデンサ11と共に高圧化する。
電界結合用コンデンサ21,22については、以上のとおり。
【0027】
《絶縁トランス23等について》
次に、絶縁トランス23等について、図1を参照して説明する。送電側回路6は、上述したように低圧に保持される高周波電源9側の回路部分に関し、更に、絶縁トランス23が設けられている。高周波電源9側の回路部分と、上述した電界結合用コンデンサ21,22,並列コンデンサ11,送電コイル3等側の回路部分とが、絶縁トランス23を介して接続されている。
すなわち、絶縁トランス23の2次側コイルは、その一端が、一方の電界結合用コンデンサ21に直列接続され、その他端が、他方の電界結合用コンデンサ22に直列接続されている。これに対し、絶縁トランス23の1次側コイルは、その一端が、高周波電源9の一端側に、チョークコイル17を介して直列接続され、その他端が、高周波電源9の他端側に、コンデンサ24を介して直列接続されている。
そして絶縁トランス23は、高周波電源9側と送電コイル3側間を電気的に絶縁し、もってコモンモード電流を削減して、送電コイル3によって形成される磁界に基づく不要電磁波放射を、低減すべく機能する。
勿論、絶縁トランス23による変圧機能により、高周波電源9のインバータ電源を、適切な運転ポイントで運転するようにすることも可能であり、効率向上の一助ともなる。
【0028】
なおチョークコイル17は、高周波電源9からの給電交流について、基本波以外の高調波成分を減衰せしめる。すなわち、高周波電源9としては、コスト面に優れた矩形波インバータが使用されることが多く、給電交流に高調波成分が含まれているので、並列コンデンサ11への流入をカットすべく、設けられている。
又、コンデンサ24は、絶縁トランス23に直流成分が流れ込むのをブロックする。すなわちコンデンサ24は、高周波電源9からの給電交流に含まれる直流成分が、絶縁トランス23に流れ込むのを阻止し、もって絶縁トランス23の性能劣化を防止する。
絶縁トランス23等については、以上のとおり。
【0029】
《作用等》
本発明の磁界共鳴方式の非接触給電装置15は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)非接触給電装置15では、車輌B等の移動体側に搭載された受電側回路7の受電コイル4が、地上A側に定置配置された送電側回路6の送電コイル3に対し、エアギャップGを存し非接触で近接対応位置しつつ、電力が供給される(図4等を参照)。
【0030】
(2)給電に際しては、まず送電側回路6において、送電コイル3が高周波電源9からの高周波交流を励磁電流として、通電される。そこで、送電コイル3に磁束φが形成され、もって、送電コイル3と受電コイル4間のエアギャップGに、磁束φの磁路が形成される(図2の(1)図等を参照)。
【0031】
(3)このようにエアギャップGを介して、送電コイル3側と受電コイル4側間が電磁結合され、磁束φが受電コイル4を貫き鎖交することにより、誘導起電力が生成される。
非接触給電装置15では、このように誘起された磁界を利用し、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、電力が送電側回路6から受電側回路7へと、供給される(図1,図2の(1)図を参照)。
【0032】
(4)ところで、この非接触給電装置15は、送電側回路6については送電コイル3と並列コンデンサ11により、受電側回路7については受電コイル4と並列コンデンサ12により、それぞれ並列共振回路が形成されている。
これと共に、この非接触給電装置15は磁界共鳴方式よりなり、両並列共振回路の共振周波数f,f、および送電側回路6の高周波電源9の電源周波数が、等しく揃えられ、送電コイル3の大電流化が達成されている(図1等を参照)。
【0033】
(5)さて、この磁界共鳴方式の非接触給電装置15は、送電コイル3と受電コイル4を共鳴コイルとして用いるタイプよりなる。そして、K値で言えば0.1以下となる大きなエアギャップG下で非接触給電が実施されるので、送電コイル3への励磁皮相電力が大きく、送電コイル3への入力電圧Vにも高電圧を要する。
【0034】
(6)そこで本発明では、送電側回路6について、高周波電源9側と送電コイル3等側との間を、電界結合用コンデンサ21,22にて、接続してなる(図1を参照)。
そして、この電界結合用コンデンサ21,22が昇圧機能を発揮し、送電側回路6の高周波電源9側を低圧に保持しつつ、送電コイル3等側を高圧化する。もって、高周波電源9の高圧化,大容量化や、トランスによる昇圧,高圧化を要することなく、電源装置側は低圧,小容量のまま、送電コイル3の高圧化が実現される。
【0035】
(7)勿論、この非接触給電装置15は、送電コイル3と受電コイル4を共鳴コイルとして用いるタイプの磁界共鳴方式よりなるので、エアギャップGの拡大,大きなエアギャップGも実現される。
更に、この磁界共鳴方式は、エアギャップGについて、送電側回路6や受電側回路7とは独立した中継コイル2や共振回路5(図3の(1)図の従来技術を参照)を、設けないタイプよりなる。そこで、その分だけ抵抗値が減少される等により、受電側回路7に対し、より大きな電力供給が可能となる。
【0036】
(8)ところで図示例では、送電側回路6について、高周波電源9側と電界結合用コンデンサ21,22,並列コンデンサ11,送電コイル3等側とが、絶縁トランス23を介して、接続されている(図1を参照)。
そして絶縁トランス23は、高周波電源9側と送電コイル3側間を電気的に絶縁して、コモンモード電流を削減する。もって、送電コイル3そして受電コイル4間に形成される磁界に基づき外部放射される電磁波が、大きく低減されるので、非接触給電装置15の近隣周辺における電磁波障害発生の危険は、回避される。
【0037】
(9)なお、この明細書において、「共振周波数が等しく設定される」,「共振周波数と等しく揃えられる」,「共振周波数と揃えられる」,「両峰の周波数」,「両峰の周波数の中間の周波数」等の用語は、完全同一や完全中間を要求するものではない。
すなわち、これらの用語はより広い意味に、つまりその程度の周波数,その前後範囲の周波数を意味する概念として、把握される。なお、そのQ値が高ければ、その意味する周波数範囲は狭く把握され、Q値が低ければ、その意味する周波数範囲は広く把握される。つまり、これらの用語は、テーマとする共鳴を可能ならしめる範囲の周波数を意味すべく、把握される。
作用等については、以上のとおり。
【実施例】
【0038】
ここで、本発明の実施例について説明しておく。
本発明の非接触給電装置15を図1の回路について実施し、もって受電側回路7の負荷Lに対し、2kW程度の電力供給を行う場合について、シミュレーションした。
なお、K値=0.05、送電コイル3の自己インダクタンスL=26.2(H)、受電コイル4の自己インダクタンスL=18.2(H)、並列コンデンサ11のキャパシタンス=100n(F)、並列コンデンサ12のキャパシタンス=170n(F)、電界結合用コンデンサ21,22のキャパシタンス=50n(F)とした。(なお、電界結合用コンデンサ21,22のキャパシタンスは、このように同じ値に揃えなくてもよい。)
【0039】
このような前提条件下でシミュレーションした結果、次のデータが得られた。
・高周波電源9:
257V×10A=電源供給電力2.57kW
・絶縁トランス23の1次側コイル側:
260V×10A=皮相電力2.60kVA
・絶縁トランス23の2次側コイル 〜 電界結合用コンデンサ21,22の低圧側:
145V×10A=皮相電力1.45kVA
・電界結合用コンデンサ21,22の高圧側 〜 送電コイル3:
1.4kV×96A=皮相電力134.4kVA
・受電コイル4〜:
420V×40A=皮相電力16.8kVA
・負荷L:
420V×5A=有効電力2.1kW
このように、受電側回路7の負荷Lに対し、2kW程度の電力供給を実施する場合、つまり送電側回路6の送電コイル3に対し、1.4kV程度の入力電圧Vを要する場合でも、送電側回路6の絶縁トランス23側は145V程度の低電圧で済み、そして高周波電源9側は257V程度の低電圧で済んだ。このように、電源装置側が低電圧で済むことが裏付けられた。
実施例については、以上のとおり。
【符号の説明】
【0040】
1 非接触給電装置(従来例)
2 中継コイル
3 送電コイル
4 受電コイル
5 共振回路
6 送電側回路
7 受電側回路
8 コンデンサ
9 高周波電源
10 非接触給電装置(従来例)
11 並列コンデンサ
12 並列コンデンサ
13 磁心コア
14 磁心コア
15 非接触給電装置(本発明)
16 バッテリー
17 チョークコイル
18 モータ
19 コンバータ
20 インバータ
21 電界結合用コンデンサ
22 電界結合用コンデンサ
23 絶縁トランス
24 コンデンサ
A 地上
B 車輌
C 給電スタンド
G エアギャップ
L 負荷
入力電圧
出力電圧
φ 磁束


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導の相互誘導作用に基づき、送電側回路の送電コイルから受電側回路の受電コイルに、エアギャップを存し非接触で近接対応位置しつつ電力を供給する、非接触給電装置において、
該送電側回路について、該送電コイルと並列コンデンサが配されて、並列共振回路が形成されると共に、該受電側回路について、該受電コイルと並列コンデンサが配されて、並列共振回路が形成されており、
両該並列共振回路の共振周波数が等しく設定されると共に、該送電側回路の高周波電源の電源周波数が、該共振周波数と揃えられており、
該送電側回路は、該高周波電源側の回路部分と、該並列コンデンサや送電コイル側の回路部分とが、コンデンサによる電界結合によって接続されていること、を特徴とする磁界共鳴方式の非接触給電装置。
【請求項2】
請求項1において、該電界結合用コンデンサは昇圧機能を発揮し、該高周波電源側の回路部分を低圧に保持しつつ、該送電コイル側の回路部分を高圧化すること、を特徴とする磁界共鳴方式の非接触給電装置。
【請求項3】
請求項2において、該送電側回路は、該高周波電源側の回路部分と、該電界結合用コンデンサ,並列コンデンサ,送電コイル側の回路部分とが、絶縁トランスを介して接続されていること、を特徴とする磁界共鳴方式の非接触給電装置。
【請求項4】
請求項2において、該送電コイル等の送電側回路は、地面,路面,床面,その他の地上側に、定置配置され、該受電コイル等の受電側回路は、車輌,その他の移動体側に搭載されていること、を特徴とする磁界共鳴方式の非接触給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−143106(P2012−143106A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−719(P2011−719)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000187208)昭和飛行機工業株式会社 (72)
【Fターム(参考)】