説明

神経保護のための小分子化合物を使用する方法

神経変性および神経細胞の喪失を予防する効果を有する小分子化合物を含む組成物を投与することによって神経変性および神経細胞の喪失を予防するための方法が提供される。本発明の一側面において、方法および組成物はまた、神経変性の疾病を治療するために有用である。小分子化合物は、それらの安定性のため、製造および処方の両方の場合における使いやすさのため、投与の容易さのため、および患者の服薬遵守のために、重要な治療の選択肢を提供する。本発明の小分子化合物組成物は、トポイソメラーゼII阻害剤、細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤、カルシウムチャネル拮抗剤、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、葉酸合成阻害剤またはナトリウムチャネルブロッカー、および神経変性に効果があるそれらの機能的類似体を含んでよい。本発明の組成物は、臨床症状の発症の前に予防的に投与されてよく、また神経変性の疾病の臨床症状が発生した後に投与してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中枢神経系の損傷または疾病を原因とする死または変性から神経細胞を保護するための方法およびそのような保護のための小分子化合物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
関連する出願への相互参照
本願は、2005年11月21日に出願された米国仮特許出願第60/738,761号、および2005年12月12日に出願された米国仮特許出願第60/749,910号の利益を主張し、両出願は、それら全体が本願に援用される。
【0003】
中枢神経系(「CNS」)の疾病および損傷は、毎年何百万もの個人の命を変化させる、破壊的で衰弱させる症状を起こす。一般に、これらの症状は、疾病または障害の中程度から重篤な臨床症状をもたらす、神経細胞の死および変性の後に発症する。外傷、虚血、および神経病理学的由来の多くのその他の発作による傷害は、例えば酸化ストレス、フリーラジカルによる損傷、または細胞タンパク質の機能不全といった機構により、直接的または間接的に神経細胞の損傷および死を起こすことが知られる。中枢神経系の傷害または疾病の例は、外傷性脳外傷(「TBI」);外傷後癲癇(「PTE」);脳卒中;脳虚血;神経変性疾病;イオン化または鉄プラズマ、神経ガス、シアン化物、または中毒性濃度の酸素の照射、曝露に誘導される発作に二次的な脳外傷;中枢神経系マラリアまたは抗マラリア薬剤による治療が原因の神経毒性;およびその他の中枢神経系外傷を含む。中枢神経系神経細胞傷害および神経変性疾病は何れも、しばしば、アポトーシス、酸化ストレスおよびミトコンドリアの機能障害による更なる神経細胞の減少を引き起こす。
【0004】
神経変性の疾病は、進行性の神経細胞の喪失によって特徴づけられ、(1)酵素機能障害、(2)活性酸素種の形成、および/または(3)究極的に組織変性をもたらすタンパク質ミスフォールディングおよび凝集を伴う。神経変性の疾病は、とりわけ、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンティングトン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症(「ALS」)、ポリグルタミン病、タウオパチー(tauopathy)、ジストニア、脊髄小脳の運動失調、脊髄および延髄性の筋萎縮ならびにプリオン病を含む海綿状脳症を含む。
【0005】
神経細胞の傷害および疾病は、酵素機能障害に結び付く可能性がある。多くの細胞の酵素は、神経細胞の機能にきわめて重大であり、および、タンパク質機能の変化は、細胞生存に破壊的と成り得る。正常な代謝酵素は、合成および分解の永続的なサイクルを構築するタンパク質を再利用する。正常な細胞機能の責任を負う細胞酵素は、レセプター、神経伝達物質輸送体、合成および分解酵素、分子シャペロンならびに転写制御因子を含む。これらの酵素における突然変異は、ミスフォールディングしたタンパク質の異常な蓄積および分解に結びつく。これらのミスフォールディングしたタンパク質は、神経細胞の損傷(例えば神経細胞の包含およびプラーク)に結びつくことが知られている。従って、細胞機序の理解、およびそのようなミスフォールディングしたタンパク質の減少、抑制および改良のための分子的ツールの同定は重大な意味を持つ。さらに、神経細胞の生存におけるタンパク質の凝集の効果を理解することは、これらの障害に対する合理的で効果的な治療プロトコールの開発を可能とする。
【0006】
神経毒性の活性酸素種の形成は、細胞の/神経細胞の変性の経路を開始させ、壊死性の神経細胞死の仲介において、有意な役割を果たすようである。特異的な毒素は、活性酵素種の損傷および神経変性から神経細胞を保護する化合物のin vivoにおけるスクリーニングに使用することができる。例えば、過剰な活性酵素種の形成を引き起こし、動物モデルにおいてドーパミン作動性神経細胞の減少を誘導する毒素は、1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(「MPTP」)、パラコート、ロテノン、および6−ヒドロキシドパミン(「6−OHDA」)(Simon et al., Exp Brain Res, 1974, 20: 375−384; Langston et al., Science, 1983, 219: 979−980; Tanner, Occup Med, 1992, 7: 503−513; Liou et a1., Neurology, l997, 48: 1583−1588)を含む。
【0007】
ALSの発症は、一般に自然発生的であり、微量金属および活性酸素種の役割はまた、ALSおよびその他の神経変性の疾病(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病、ポリグルタミン病、脊髄小脳の運動失調、脊髄及び延髄性の筋萎縮、海綿状脳症、タウオパチーおよびハンティングトン舞踏病)の散発的な症例に結びつけられる(Manfredi and Xu, Mitochondrion, 2005 Apr, 5(2): 77−87; Zeevalk et a1., Antioxid Redox Signal, 2005 Sep−Oct, 7(9−10): 1117−1139)。
【0008】
トルシン(Torsin)Aは、熱ショックタンパク質(「Hsp」)、プロテアーゼおよびダイニンを含むATP分解酵素の機能的に多様なAAA+タンパク質スーパーファミリーに属すタンパク質である(Neuwald et al., Genome Res., 1999, 9: 27−43)。分子シャペロン活性を有するタンパク質のトルシンファミリーは、トルシンA、トルシンB、TOR−1、TOR−2およびOOC−5を含む。トルシンAは、最近ドーパミン輸送体(「DAT」)およびその他のポリトピック膜結合型タンパク質の細胞内レベルを調整することが示された(Tones et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2004, 01: 15650−15655)。トルシンAは、DATの調整により、活性酸素種への暴露の後、ドーパミン作動性神経細胞に対して神経保護的であると考えられている(Cao et al., J Neurosci, 2005, 25(1): 3801−38l2)。トルシンタンパク質活性の低下または喪失もまた、タンパク質折りたたみを調整するその能力を抑制し、悪い環境条件に応答してタンパク質凝集および神経変性がもたらされる可能性がある。トルシンAタンパク質の突然変異はまた、早発性の捻転ジストニア(torsion dystonia)、ヒト運動障害に直接繋がった(L. J. Ozelius, et al., Nature Genetics, 1997, 17: 40)。
【0009】
分子シャペロンタンパク質(例えばトルシンタンパク質)は、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集を予防する正常な細胞性タンパク質の一つである。分子シャペロンタンパク質は、タンパク質ファミリー(例えばHsp100、Hsp90、Hsp70、Hsp60およびHsp40)を含む(Muchowski and Wacker, Nature Reviews, 2005, 6: 11−22)。ヒトトルシンAの突然変異は、抑えきれない筋痙攣によって特徴づけられる運動障害早発性の捻転ジストニアに結びつく。症状の重症度は、書痙から車椅子への束縛まで変動しうる。ジストニアは、北アメリカで300,000人を超える人々にて発症し、ハンティングトン舞踏病および筋ジストロフィーより一般的である。疾病が十分に理解されないので、治療は非常に制限され、選択肢は手術またはボツリヌス中毒症毒素を注入し筋収縮を制御することを含む。
【0010】
早発性の捻転ジストニアの大多数の患者は、トルシンA遺伝子(「DYT1」)の1コドンのユニークな欠失を有しており、その結果、トルシンAのカルボキシ末端でのグルタミン酸(「GAG」)残基の喪失がもたらされ、それによって機能不全のトルシンタンパク質が生産される(L. J. Ozelius, et al., Genomics, 1999, 62: 377; L. J. Ozelius, et al., Nature Genetics, 1997, 17: 40)。最近の論文によると、カルボキシ末端での18塩基対または6アミノ酸の付加的な欠失は、早発性の捻転ジストニアに結びつきうることが報告された(Leung, et al., Neurogenetics, 2001, 3: 133−143)。
【0011】
トルシンタンパク質はまた、神経変性の疾病(例えばハンティングトン舞踏病およびパーキンソン病)に関わるポリグルタミンの伸長およびα−シヌクレイン(synuclein)ミスフォールディングの疾病におけるタンパク質ミスフォールディングおよび凝集の予防に関係付けられている(Caldwell et al., Hum Mol Genetics, 2003, 12: 307−319; Cao et al., J Neurosci, 2005, 25: 3801−3812)(Cooper et al., Science, 2006, 313: 324−328も参照)。パーキンソン病、ハンティングトン舞踏病およびポリグルタミン伸長疾病のような神経変性の障害は、異常なタンパク質ミスフォールディングおよび凝集の結果生じる。トルシンタンパク質は、これらの障害のin vivoのモデルにおいて、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集を改善することが示された。トルシンタンパク質も、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集に関係する神経変性の疾病に結びつけられる、その他のタンパク質への作用を有すると考えられている。
【0012】
神経変性の障害を取り巻く主要な障害は、患者が、神経細胞の変性に寄与する神経細胞の環境が発達していることに、臨床症状が現れる点まで気づかないことである。臨床症状が顕在化する頃には、相当な神経細胞の喪失が既に生じており、神経細胞の環境は神経細胞の生存に非常に好ましくない。遺伝学的スクリーニングは、個人が神経変性の疾病を発病し易いかどうかの情報を提供する。しかしながら、タンパク質凝集または神経細胞の喪失のための信頼できる早期発見方法の不足は、神経細胞の喪失がすでに起こったため治療の効果がない又は不要となる点まで、これらの変性疾患がモニターされずに進行することを許してしまう。さらに、たとえ信頼できる早期発見方法が利用できたとしても、現在の治療はこれらの神経変性の疾病の長期治療に効果がなく、新しい薬剤および治療方法が必要である。
【0013】
異常なタンパク質凝集の分子機構および制御因子のより良い理解は、重大な神経細胞の破壊の前における結果として生じる障害の初期診断のための、およびドラッグデザインおよび開発を先導するための、改善された方法を開発するために必要である。タンパク質凝集に関係した特異的遺伝子および遺伝子産物を標的化する化合物は、モデルシステムを用いてスクリーニングし、開発することができる。加えて、それはまた、神経変性の機構を理解するために、およびタンパク質ミスフォールディングおよび凝集および神経細胞喪失の保証を予防または減弱させる神経保護の化合物を開発するために必要である。
【0014】
CNS傷害および疾病の罹患率は、神経変性の発生および進行の機構についての改善された理解の必要性を強調する。予防的にまたは傷害および疾病の出現後に、神経細胞の喪失を予防または減弱させる新規で改善された神経保護化合物の必要性が存在することが明らかである。従って、CNS傷害または疾病を原因とする死および変性から神経細胞を保護するための新しい薬物療法学が必要である。
【0015】
また、タンパク質ミスフォールディングおよびタンパク質凝集を含む神経細胞の損傷に起因する疾病を治療および予防するための新しい薬物療法学が必要とされる。理想的には、そのような薬物療法学は、予防的な使用並びに症状発現後の有用性である。現在利用できる治療的な選択肢は、ワクチンおよびタンパク質療法を含むが、ともに生成および管理が困難である。そのような薬物療法学が、何も存在しない治療選択肢を提供する一方で、製造および投与の困難性は、患者の服薬遵守の低下に結びつく可能性がある。従って、また、製造および投与が容易であり、高い患者の服薬遵守がもたらされる薬物療法が必要である。
【発明の概要】
【0016】
神経細胞の死を予防する効果を有する小分子化合物を投与することによって、傷害、虚血または神経変性に起因する損傷および死から神経細胞を保護するための方法が提供される。本発明の一側面において、これらの方法は、機能不全の細胞性タンパク質と関連する神経細胞の損傷および神経変性の疾病を治療するために有用である。本発明の別の側面において、これらの方法はまた、活性酸素種に関連する神経細胞の損傷および神経変性の疾病を治療するために有用である。本発明の更なる側面において、これらの方法は、小分子化合物を投与することによってin vitroでまたはin vivoでタンパク質ミスフォールディングまたは凝集を予防および減少させるために有用である。本発明の別の側面は、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集に関係する神経細胞の損傷および神経変性の疾病を治療するための方法を提供する。
【0017】
本発明の小分子化合物は、トポイソメラーゼII阻害剤、細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤、カルシウムチャネル拮抗剤、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、葉酸合成阻害剤またはナトリウムチャネルブロッカー、および、神経保護の効果を有するそれらの機能的類似体を含む。神経保護の効果は、細胞性タンパク質(例えば神経伝達物質輸送体または分子シャペロンタンパク質)の調整に起因してよい。小分子化合物は、欠陥のある細胞性タンパク質に起因する神経細胞の損傷を減少させるトルシンタンパク質活性を調整することで作用してよい。小分子化合物はまた、神経細胞の表面で神経伝達物質輸送体分子を調整することによって活性酸素種に起因する神経細胞の損傷を減少させるトルシンタンパク質活性を調整することによって作用してよい。小分子化合物は、さらに、タンパク質の適当な折りたたみの先導を助けることにより、タンパク質ミスフォールディングまたは凝集に起因する神経細胞の損傷を減少させるトルシンタンパク質分子シャペロン活性を調整するよう作用しうる。小分子化合物は、それらの安定性、製造および処方の両場合における容易性、投与の容易性、および患者の服薬遵守のために、重要な治療選択肢を提供する。CNS傷害または神経変性の疾病の臨床症状の発症が現れる前に予防的に投与してよく、またはその臨床症状が現れた後に投与してよい。
【0018】
したがって、本発明の目的は、CNS傷害または神経変性の後において、神経細胞を傷害または死から保護するための方法および組成物を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、欠陥のある細胞性タンパク質に関連した神経変性および神経細胞の喪失を治療または予防するための方法および組成物において使用するための小分子化合物を同定することである。
【0020】
本発明の別の目的は、活性酸素種に関連した神経変性および神経細胞の喪失を治療または予防するための方法および組成物において使用するための小分子化合物を同定することである。
【0021】
本発明の更なる目的は、タンパク質ミスフォールディングおよび凝縮に関連した神経変性および神経細胞の喪失を治療または予防するための方法および組成物において使用するための小分子化合物を同定することである。
【0022】
本発明の別の目的は、トポイソメラーゼII阻害剤、細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤、カルシウムチャネル拮抗剤、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、葉酸合成阻害剤またはナトリウムチャネルブロッカーおよびそれらの機能的類似体を含む小分子化合物を用いることによる、神経変性および神経細胞の喪失を予防する方法および組成物を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、トルシンタンパク質の作用を調整することによる、神経変性および神経細胞の喪失を治療または予防するための方法および組成物において使用するための小分子化合物を同定することである。
【0024】
本発明の更なる目的は、トルシンタンパク質の活性を調整することによる、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集に関連する神経変性および神経細胞の喪失を治療または予防するための方法を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集に関連した神経変性および神経細胞の喪失を治療または予防するための方法および組成物において使用するための、トルシン依存的機構を通して作用する小分子化合物を同定することである。
【0026】
本発明の別の目的は、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集に関連した神経変性および神経細胞の喪失を治療または予防するための方法および組成物において使用するための、神経伝達物質輸送体分子活性を調整する小分子化合物を同定することである。
【0027】
本発明のこれらおよびその他の目的、特徴、および利点は、開示される実施態様の以下の詳細な記載および添付される特許請求の範囲を精査した後明らかとなるだろう。
【発明の詳細な説明】
【0028】
本願に記載されるものと同一または等価の方法および材料は、本願発明の実施または試験において使用することができると理解される。本願で言及される全ての刊行物、特許出願、特許文献およびその他の引用文献は、その全てが本願に援用される。矛盾が生じる場合には、定義をも含めて本願発明によるものとする。加えて、物質、方法および実施例は、例証となるのみであり、本発明を限定するもとはならない。
【0029】
「小分子化合物」、「候補化合物」および「薬剤化合物」とは、活性酸素種の形成、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集、神経細胞の傷害および神経変性に効果があるとしてスクリーニングされた、本発明の分子化合物を意味する。これらの化合物は、プレストウィックライブラリー(Prestwick library)中の化合物、関連薬剤クラス(related drug classes)中の化合物またはその機能的類似体を含んでよい。
【0030】
「タンパク質ミスフォールディング」とは、タンパク質が折りたたまれ二次または三次構造を達成する正常な様式とは異なる、タンパク質のフォールディングを意味する。タンパク質のフォールディングにおけるエラーは、突然変異によるタンパク質配列の変化または適当なタンパク質フォールディングを助ける分子シャペロンタンパク質の異常に起因し得る。ミスフォールディングは、適当なタンパク質機能を増大、減少、または妨げる可能性のある、タンパク質の生理的機能の変化を生じさせる可能性がある。
【0031】
本発明の範囲内における「タンパク質凝集」とは、自己会合状態の集合体を形成するポリペプチドの異常な会合を意味し、それは可溶性または不溶性であってもよく、および必ずしも繊維状である必要はない。この用語はまた、互いに接触する少なくとも2つのポリペプチドが、その何れか1つが脱溶媒和の状態となっている現象を含む。これはまた、ポリペプチドの本来の機能的活性の喪失を含んでもよい。
【0032】
本発明の範囲における「治療する」とは、減少させること、阻害すること、改善させること、または妨げることを指す。好ましくは、活性酸素種に起因する神経変性、活性酸素種による細胞性機能障害、神経変性の疾病、タンパク質ミスフォールディング、タンパク質凝集、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集に起因する細胞性機能障害、およびタンパク質凝集関連疾病が治療されてよい。
【0033】
本発明の範囲内における「タンパク質凝集関連疾病」は、神経変性の障害を含むタンパク質凝集関連疾病に関係する、それが原因となる、またはそれに起因する、何れかの疾病、障害および/または苦痛を含む。
【0034】
「神経変性の障害」は、感覚、運動、および認識挙動の進行性の低下により生じる病因学的因子による神経細胞の喪失に起因する障害を含む。そのような障害は、ALS;アルツハイマー病;パーキンソン病;プリオン病;ポリグルタミン伸長疾病;脊髄小脳の運動失調;脊髄および延髄性の筋萎縮;海綿状脳症;タウオパチー;ハンティングトン舞踏病;前頭側頭型痴呆;運動ニューロン疾患(「MND」)などを含む。
【0035】
「CNS傷害」は、外傷性の脳損傷(「TBI」);外傷後癲癇(「PTE」);脳卒中;脳虚血;神経変性の疾病;イオン化もしくはイオンプラズマ(iron plasma)、神経ガス、シアン化物、または酸素の中毒性濃度の照射、曝露によって誘導される発作に対して従属的な脳損傷;CNSマラリアまたは抗マラリア薬剤による治療が原因の神経毒性等を含む。
【0036】
本願において、「類似体」または「機能的類似体」とは、構造的に母物質と類似しているが、組成がわずかに異なる(例えば、1原子または官能基が異なる、付加される、または除かれる)化学物質を意味する。類似体は、元の化合物より異なる化学的特性または物理的特性を有しており、または有していなくてよく、並びに生物学的および/または化学的活性が改善されており、または改善されていなくてよい。例えば、類似体はより親水性でよく、または、母物質と比較して反応性が変化してもよい。類似体は、母物質の化学的および/または生物学的活性を模倣してもよく(すなわち、類似的または同一の活性を有してよい)、または、ある場合には、増大もしくは減少した活性を有していてよい。類似体は、元の化合物の天然または非天然で生じる(例えば組換え)変種であってもよい。類似体のその他のタイプは、異性体(鏡像異性体、ジアステレオマーなど)および化合物のキラルな変種のその他のタイプ並びに構造異性体を含む。類似体は、線形化合物の枝分かれしたまたは環状化した変種であってもよい。例えば、線形化合物は、特定の所要の性質(例えば、親水性または生物学的利用能の改善)を付与するために、枝分かれした、さもなければ置換された類似体を有してよい。
【0037】
本願において「誘導体」とは、構造的に母物質と類似しており、および(実際にまたは理論的に)母物質から誘導される、化学物質の化学的または生物学的に改変された変種を意味する。母物質は、「誘導体」を作り出すための出発物質であってよく、一方、「類似体」または「機能的類似体」を作り出すための出発物質として母物質が必ずしも使用されなくてよいことから、「誘導体」は、「類似体」または「機能的類似体」と異なるものである。誘導体は、母物質と異なる化学的特性または物理的特性を有していてよく、または有していなくてよい。例えば、誘導体はより親水性でよく、または母物質と比較して反応性が変化していてよい。誘導体化(すなわち改変)は、分子内の、1以上の成分の置換(例えば官能基の変化)を含んでもよい。例えば、水素は、ハロゲン(例えばフッ素または塩素)で置換されてよく、またはヒドロキシル基(−OH)は、カルボン酸成分(−COOH)で置き換えられてよい。「誘導体」という用語はまた、母物質のコンジュゲートおよびプロドラッグ(すなわち、生理的条件下で元の化合物に変化できる化学的に修飾された誘導体)を含む。例えば、プロドラッグは、活性薬剤の不活性型であってもよい。生理的条件下で、プロドラッグは活性型の化合物に変わってもよい。例えば、プロドラッグは、窒素原子における1または2水素原子が、アシル基(アシルプロドラッグ)またはカルバメート基(カルバメートプロドラッグ)によって置換されて作製されてよい。プロドラッグに関するより詳細な情報は、例えば、Fleisherらによる文献(Advanced Drug Delivery Reviews 19 (1996) 115; Design of Prodrugs, H. Bundgaard (ed.), Elsevier, 1985; and H. Bundgaard, Drugs of the Future 16 (1991) 443)に記載されている。「誘導体」という用語はまた、全ての溶媒和化合物、例えば水和物または付加物(例えばアルコールによる付加物)、活性代謝物および母物質の塩を意味するよう使用される。作製してよい塩のタイプは、化合物内の成分の性質に依存する。例えば、カルボン酸基のような酸性基は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を形成することができる(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、および生理的に許容できる4原子アンモニウムイオンによる塩、ならびにアンモニアと生理的に許容できる有機アミン(例えばトリエチルアミン、エタノールアミンまたはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミン)とによる酸付加塩)。塩基性基は、例えば、無機酸(例えば、塩酸(「HCl」)、硫酸またはリン酸)との酸付加塩を形成することができ、または有機カルボン酸およびスルホン酸(例えば、酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、メタンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸)との酸付加塩を形成することができる。塩基性基および酸性基を同時に含む(例えば、塩基性窒素原子に加えてカルボキシル基)化合物は、双性イオンとして存在しうる。塩は、当業者に既知の慣習的な方法によって得ることができ、例えば、溶媒または希釈剤中で化合物と無機または有機酸または塩基とを組み合わせることで、または陽イオン交換もしくは陰イオン交換によってその他の塩から得ることができる。
【0038】
タンパク質凝集関連疾病は、全て、顕著な共通の特徴:異常なタンパク質の凝集および堆積(表1)を共有しており、分子シャペロンタンパク質の役割もまた、そのような疾病に結び付けられてきた(Muchowski and Wacker, Nature Reviews, 2005, 6:11−22)。タンパク質凝集関連疾病は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ポリグルタミン疾病、タウオパチー、ハンティングトン舞踏病、ジストニア、脊髄小脳運動失調、脊髄および延髄性の筋萎縮、海綿状脳症およびALSを含むが、これらに限定されない。遺伝子組換え動物モデル中の変異体タンパク質の発現は、これらの疾病の特徴を再現する(A. Aguzzi and A. J. Raeber, Brain Pathol, 8, 695 (1998))。神経細胞は、特に、変異体またはミスフォールディングタンパク質の毒作用に脆弱である。本願に記載されるように、タンパク質凝集関連神経変性の障害に関連する一般的な特徴の理解、例えば、不必要で潜在的に有害なタンパク質を処分し、タンパク質の適当な折りたたみを促進するための、正常な細胞の機構の理解は、効率的で良好な治療計画および診断法の開発を可能とする。
【表1】

【0039】
正しい折りたたみは、起こりうるものの誤った高次構造の集まりから1つの特定の構造を決定することをタンパク質に要求する。ポリペプチドがそれらの適当な構造をとり損なうことは、細胞機能および生存率にとって大きな脅威である。従って、誤って折り畳まれたタンパク質の有害な効果から細胞を保護するため、精巧なシステムが進化した。誤って折り畳まれたタンパク質に対する防衛の第1線は分子シャペロンを含み、当該分子シャペロンは、新生ポリペプチドがリボソームから生じるとすぐに結合し、適切なフォールディングを促進し、有害な相互作用を妨げる(J. P. Taylor, et al., Science, 2002, 296: 1991)。タンパク質の不適当な折りたたみは、必ずしもタンパク質凝集または神経変性に帰着するわけではないが、疾病または障害の臨床症状は、細胞性機能障害のより巧妙な原因のために、なお顕在化する可能性がある。例えば、早発性の捻転ジストニアでは、欠陥のあるトルシンAタンパク質は、適切にドーパミン輸送体の細胞レベルを調整せず、それによって、見かけ上の神経変性またはタンパク質凝集は起こらずジストニアの症状がもたらされる(Torres et al., Proc Nati Acad Sci., 2002, 101: 15650−15655; Cao et al., J Neurosci, 2005, 25(1): 3801−38l2)。
【0040】
本発明者らは、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集の妨げに作用する小分子化合物を同定するために、化学的に多様な小分子ライブラリーをスクリーニングした(表2)。C.エレガンス(C.elegans)小分子ライブラリーは、Prestwick Chemical社(ワシントンDC)(以降「プレストウィックライブラリー」と呼ぶ)から得た。ライブラリーは、C.エレガンスにおいて耐性で選択した240の小分子の化学的に多様なコレクションである。ライブラリー中の全ての化合物は、ウォームの寿命にわたって毒性がないか調べられ、C.エレガンスに非有毒であることが示された。候補化合物は、組織学的研究のためのインキュベーション培地を着色することはなく、また不明瞭にさせることはない。ライブラリー中の化合物の95%以上は、特許の切れた(off−patent)市販される薬剤であり、安全に人間に投与されている。これらの薬剤の約5%はアルカロイドである。このライブラリーは、十分な有効性で効果を示す薬剤のスクリーニングを可能とする。陽性結果が得られたが十分な有効性ではない場合、最適化された類似体を、コンピューターを利用したドラッグデザインを使用して合成し、同様に容易にスクリーニングに供してよい。このライブラリー中の化合物は、最初のリード化合物が、許容可能な半減期を有し、非有毒性で、経口的に生物利用可能であり、十分許容的であるため、更なる開発の機会を提供する。
【0041】
成功の可能性を向上させるため、化合物はChemX/ChemDiverse(Accelrys)といったコンピュータプログラムを使用し、経験豊かな医薬化学者による決定的な工夫に基づいて選択してよい。多様性を増加させ、スクリーニング工程の成功率を増大させるため、異なる治療分野において有効であることが既知の化合物をこのライブラリーに集合させてよい。これらの化合物は、神経精神医学的薬剤、抗糖尿病薬、抗ウイルス剤、降圧薬、解熱薬、抗炎症剤、抗生物質、および抗感染剤を含んでもよい。
【0042】
タンパク質凝集のためのC.エレガンスモデルにおいて小分子ライブラリーをスクリーニングすることによって、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集を予防する効果を有する幾つかのクラスの化合物が同定された(表2)。薬剤は基体上に固定(plate)してよく、そこにおいて、遺伝子組換えウォームは生育されまたはその他の従来の様式で管理され、ウォームは候補薬剤に曝露される。増殖基体に導入される場合、小分子化合物は表皮を通した拡散および摂取の両方によって動物に浸透する。投与のこのモードは、動物に対する連続的な薬剤への曝露を可能とする。最初のスクリーニング濃度で薬剤が反応をもたらした場合、段階希釈を行い、観察できる効果を生じさせうる最高の用量が決定される。
【0043】
遺伝子組換え動物モデルにおける変異体タンパク質の発現により、神経変性の疾病の特徴が再現される(A. Aguzzi and A. J. Raeber, Brain Pathol, 1998, 8: 695)。神経細胞は、特に、変異タンパク質またはミスフォールディングタンパク質の毒性効果に対し脆弱である。これらの神経変性の障害の共通の特徴から、活性酸素種が原因の損傷を予防するための正常な細胞機構の理解に基づいて、類似した治療のアプローチが示唆される。
【0044】
解剖学的および遺伝的に決定済みの透明なネマトーダ(nematode)は、正確に302の神経細胞を有し、その内8つがドーパミン作動性(「DA」)であるため、C.エレガンスはドーパミン作動性神経細胞の変性を研究するための理想的なモデルである。したがって、C.エレガンスモデルの使用は、動物齢(animal ages)の間、ドーパミン神経変性の迅速なスコアリングを促進する。ドーパミン作動性神経細胞は、特に、ドーパミン代謝の結果としての酸化ストレスに影響されやすく、並びに活性酸素種の形成に有利なその他の細胞内因子の存在に影響を受け易い。(Blum et al., 2001)。トルシンは、活性酸素種が関わる神経変性のためのモデルにおいて、ドーパミン機能障害と結びつけられる定義された細胞性ストレスからC.エレガンスのドーパミン作動性神経細胞を保護することができる。具体的には、トルシンは、6−OHDAへの暴露によって誘導される活性酸素種に関係する神経変性を妨げることができる(Cao et al., J Neurosci, 2005, 25(1): 3801−38l2)。
【0045】
C.エレガンスで神経変性を記録するための別のモデルは、cat−2を過剰発現する遺伝子組換えC.エレガンスであり、cat−2とは、ヒトチロシン水酸化酵素(「TH」)のウォームの相同体であり、ドーパミン合成経路中の酵素である。CAT−2の過剰発現は、DA神経細胞の広範囲にわたる喪失をもたらす(Cao et al., J Neurosci, 2005, 25(1): 3801−38l2)。トルシンタンパク質は、DA神経細胞に対して一定の神経保護作用を有することが示された。このモデルは、アドレナリン作動性、ノルアドレナリン作動性およびDA神経細胞といったTHを含む神経細胞において、作用のスクリーニングに使用できる。同様のアッセイは、異なる神経細胞のサブタイプ(例えば、セロトニン、グルタミン酸塩、GABA、グリシン、アセチルコリン、ヒスタミンおよびペプチド神経伝達物質を含む神経細胞)の死および変性を研究するために使用することができる。
【0046】
化学的に多様な小分子ライブラリーはまた、活性酸素種に関わる神経変性を予防する作用を有する小分子化合物を同定するためにスクリーニングされた。C.エレガンス小分子ライブラリーは、Prestwick Chemical社(ワシントン、DC)(以降「プレストウィックライブラリー」と呼ぶ)から得た。当該ライブラリーは、C.エレガンスにおいて耐性で選択された240の小分子の化学的に多様なコレクションである。ライブラリーの中の全ての化合物は、ウォームの生涯にわたって毒性がないか調べられ、C.エレガンスに非毒性であることが示された。候補化合物は、組織学的な研究のためのインキュベーション培地を着色することがなく、また濁らせなることがない。ライブラリー中の化合物の95%以上は特許の切れた市販される薬剤であり、安全にヒトに投与された。これらの薬剤の約5%はアルカロイドである。このライブラリーは、十分な有効性で効果を示す薬剤のスクリーニングを可能とする。陽性結果が得られたが十分な有効性がない場合、最適化された類似体を、コンピューターを利用したドラッグデザインを使用して合成し、同様に容易にスクリーニングに供してよい。このライブラリー中の化合物は、最初のリード化合物が、許容可能な半減期を有し、非有毒性で、経口的に生物利用可能であり、十分許容的であるため、更なる開発の機会を提供する。
【0047】
成功する可能性を向上させるため、化合物はChemX/ChemDiverse(Accelrys)といったコンピュータプログラムを使用し、経験豊かな医薬化学者による決定的な工夫に基づいて選択してよい。多様性を増加させ、スクリーニング工程の成功率を増大させるため、異なる治療分野において有効であることが既知の化合物をこのライブラリーに集合させてよい。これらの化合物は、神経精神医学的薬剤、抗糖尿病薬、抗ウイルス剤、降圧薬、解熱薬、抗炎症剤、抗生物質、および抗感染剤を含んでもよい。
【0048】
神経保護のためのC.エレガンスモデルにて小分子ライブラリーをスクリーニングすることによって、活性酸素種に関わる神経変性を予防する効果を有する幾つかのクラスの化合物が同定された。薬剤は基体上に固定(plate)してよく、そこにおいて、遺伝子組換えウォームは生育されまたはその他の従来の様式で管理され、ウォームは候補薬剤に曝される。増殖基体に導入される場合、小分子化合物は表皮を通した拡散および摂取の両方によって動物に浸透する。投与のこのモードは、動物に対する連続的な薬剤への曝露を可能とする。最初のスクリーニング濃度で薬剤が反応をもたらした場合、段階希釈を行い、観察できる効果を生じさせうる最高の用量が決定される。
【0049】
以下のリストは限定することを意図せず、本願に記載される神経保護作用を有する特異的な小分子を提供する。
【0050】
I.分子シャペロンの機能を補助する分子
以下のクラスの分子は、分子シャペロンの機能を調整することによって、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集に関連した神経変性および神経細胞の喪失を予防する。適切なタンパク質フォールディングの調節に主に関連する分子シャペロンは、40kDa熱ショックタンパク質(HSP40;DnaJ)、60kDa熱ショックタンパク質(HSP60;GroEL)、70kDa熱ショックタンパク質(HSP70;DnaK)、およびトルシン(TOR−1;TOR−2;トルシンA;トルシンB;OOC−5)ファミリーである。一実施態様において、これらのクラスの分子は、トルシンAタンパク質の作用を調整することにより適切なタンパク質フォールディングを促進する。
【0051】
a)トポイソメラーゼII阻害剤
一実施態様において、トポイソメラーゼII阻害剤は、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集が関与する神経変性および神経細胞の喪失の予防に使用される。トポイソメラーゼII阻害剤は、ロメフロキサシン、シノキサシン、アムサクリン、エトポシド、テニポシド(teniposide)、オキソリニック酸(oxoliic acid)、ナリジクス酸、スラミン、メルバロン(merbarone)、ゲニステイン、エピルビシンHCl、エリプチシン(ellipticine)、ドキソルビシン、アウリントリカルボン酸(「ATA」)またはそれらの医薬的に許容可能な塩から選択されるが、これらに限定されない。
【0052】
ナリジクス酸(NEGGRAM(登録商標), Sanofi−Aventis, Bridgewater, NJ; CAS No. 3 89−08−2)は特に重要であり、一般に尿路の感染症を治療することが知られているキノロン系抗菌剤である。ナリジクス酸は、4−オキソ(窒素に対してパラの位置のカルボニル)を含むキノロンである4−キノロンの薬剤ファミリーに属す。これらは、DNAジャイレースのAサブユニットを阻害し、抗生物質として使用される。第二世代の4−キノロンはまた、7位が1−ピペラジニル基で、6位がフッ素で置換されている。上記のように、本発明に含まれる小分子化合物は、ヒトにおける使用の認可を得ている。薬剤としてのナリジクス酸は尿路感染症の治療における使用の認可を受けており、推奨される用量は6時間ごとに約750mg/kgから約1500mg/kgであり、より一般には6時間ごとに約1グラム/kgで投与される。薬剤が1または2週を超えて摂取される場合、用量は6時間ごとに約500mg/kgまで減少させてよいが、この用量は必要に応じて適切に滴定することができる。活性薬剤のピーク血清レベルは、約90分の半減期で、絶食状態の正常な個人への1グラム/kg用量の投与後の1から2時間において、平均して約20〜40jig/mL(90%タンパク質が結合)となる。タンパク質ミスフォールディングおよび凝集に関わる神経変性および神経細胞の喪失を予防するためのナリジクス酸のこの用量は、その他の障害を治療するためにこれらの効果的および非毒性の用量に基づいて、必要に応じて適切に滴定することができる。
【0053】
特に重要なその他のトポイソメラーゼII阻害剤は、尿路感染症の治療に使用される抗生物質である、オキソリニック酸(oxolinic acid)(CAS NO:14698−29−4)である。上述のように、本発明を含む小分子化合物は、ヒトへの使用について認可されている。薬剤としてのオキソリニック酸は、尿路感染症の治療における使用の認可を得ており、推奨される用量は、約10mg/kgから約40mg/kgの間であり、より一般的には約20mg/kgである。タンパク質ミスフォールディングおよび凝集に関する神経変性および神経細胞の喪失を予防するためのオキソリニック酸のこの用量は、その他の障害の治療に対するこれらの効果的および非毒性の用量に基づいて、必要に応じて適切に滴定できる。
【0054】
b)細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤
代替となる実施態様において、細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤は、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集に関連する神経変性および神経細胞の喪失を予防するために使用される。細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤は、アンピシリン、クロキサシリン、ピペラシリン、アモキシシリン、セファドロキシル、ジクロキサシリン(dicloxyacillin)、カルベニシリン、ペニシリン、メタンピシリン(metampicillin)、アモキシシリン、セフォキサチン(cefoxatin)またはそれらの医薬的に許容可能な塩から選択されるが、これらに限定されない。
【0055】
特に重要なものは、ペニシリンの誘導体、メタンピシリンナトリウム塩である(CAS No.6489−97−0;プレストウィックライブラリー化合物235)。メタンピシリンは、8時間ごとに、約250mg/kgから約500mg/kgの間で一般に投与される。タンパク質ミスフォールディングおよび凝集に関する神経変性および神経細胞の予防のためのメタンピシリンの用量は、その他の障害の治療に対するこれらの効果的および非毒性の用量に基づいて、必要に応じて適切に滴定できる。
【0056】
本発明の一実施態様において、細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤は、活性酸素種に関係した神経変性および神経細胞の喪失の予防のために使用される。細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤は、アンピシリン、ペニシリン、ピバンピシリン、タランピシリン、メタンピシリン、アモキシシリンおよびセフォキサチンから選択されるが、これらに限定されない。一実施態様において、血液脳関門を通過する化合物が、活性酸素種に関する神経変性および神経細胞の喪失の予防に使われる。
【0057】
ペニシリン誘導体であるメタンピシリンナトリウム塩はきわめて重要である(CAS No. 6489−97−0;プレストウィックライブラリー化合物235)。上述のように、本発明を含む小分子化合物は、ヒトへの使用について認可されている。薬剤メタンピシリンは細菌感染症の治療の使用において認可されており、推奨される用量は8時間ごとに約250mg/kgから約500mg/kgの間であるが、この用量は必要に応じて適切に滴定することができる。神経保護を提供するためのメタンピシリンのこの用量は、その他の障害を治療するためのこれらの効果的および非毒性の用量に基づいて、必要に応じて適切に滴定することができる。
【0058】
II.欠陥があるシャペロンの効果を逆転させて(reversing)、作用を発揮する分子
以下のクラスの分子は、欠陥がある分子シャペロンの作用を逆転させることにより、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集に関連する神経変性および神経細胞の喪失を予防する。このグループには、欠陥のあるタンパク質分子シャペロン活性を有するトルシンタンパク質変異体の作用を逆転させる化合物が含まれる。
【0059】
a)カルシウムチャネル拮抗薬
一実施態様において、カルシウムチャネル拮抗薬は、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集に関連する神経変性および神経細胞の喪失の予防に使用される。カルシウムチャネル拮抗薬は、ニモジピン、ジプロテベリン(diproteverine)、ベラパミル、ニトレンジピン、ジルチアゼム、ミオフラジン(mioflazine)、ロペラミド、フルナリジン、ベプリジル、リドフラジン、CERM−196、R−58735、R−56865、ラノラジン(ranolazine)、ニソルジピン、ニカルジピン、PN200−110、フェロジピン、アムロジピン、R−(−)−202−791、またはR−(+)Bay K−8644またはそれらの医薬的に許容可能な塩から選択してよいが、これらに限定されない。
【0060】
特に重要なものとしては、ロペラミド塩酸塩(IMODIUM(登録商標), McNeil−PPC, Inc., Fort Washington, PA; Mylan, CAS No. 53179−11−6)であり、これはオピエート作動薬のグループに属し、特異的なデルタ、ミュー、およびカッパーオピエート受容体(それぞれ異なる脳の機能を調整する)の活性による、CNSおよび平滑筋における広範な効果を有している。上記の通り、本発明に含まれる小分子化合物は、ヒトへの使用について認可されている。薬剤ロペラミドHClは、下痢の治療における使用について認可されており、推奨される用量は、最初に約1mg/kgから約5mg/kgでその後約0.5mg/kgから3mg/kg、より一般的には最初に約4mg/kgでその後約2mg/kgであり、一日の用量が約16mg/kgを越えない。タンパク質ミスフォールディングおよび凝集に関わる神経変性および神経細胞の喪失を予防するためのロペラミドHClのこの用量は、その他の障害の治療するためのこれらの効果的および非毒性の用量に基づいて、必要に応じて適切に滴定することができる。
【0061】
b)シクロオキシゲナーゼ阻害剤
一実施態様において、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集と関係する神経変性および神経細胞の喪失を予防するために用いられる。シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、ナプロキセン、フルフェナム酸、トルフェナム酸、フェンブフェン、ケトプロフェン、フェナセチン、ジピロン、フルルビプロフェン、メクロフェナミド(meclofenamide)、ピロキシカム、インドメタシンまたはそれらの医薬的に許容可能な塩を含むが、これらに限定されない。消炎作用に加えて、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、鎮痛薬、解熱薬および血小板阻害作用を有する。それらは、主に、慢性的な関節炎症状および痛みおよび炎症に関係する特定の軟部組織異常の治療に使用される。シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、シクロオキシゲナーゼの阻害によるプロスタグランジンの合成を抑える作用を有する非ステロイド系抗炎症薬(「NSAID」)を含み、シクロオキシゲナーゼは、アラキドン酸を環状エンドペロキシド(プロスタグランジンの前駆体)に変換する。プロスタグランジン合成の阻害は、それらの鎮痛薬、解熱薬および血小板阻害作用の原因となり;その他の機構が、それらの抗炎症性効果に寄与する可能性がある。特定のNSAIDもまた、リポキシゲナーゼ酵素またはホスホリパーゼCを抑制する可能性があり、または、T細胞機能を調整する可能性がある(AMA Drug Evaluations Annual, l994, 1814−1815)。
【0062】
メクロフェナム酸ナトリウム塩は、きわめて重要である(Mylan, CAS No. 644−62−2)。上記のように、本発明に含まれる小分子化合物は、ヒトへの使用について認可された。薬剤メクロフェナム酸ナトリウム塩は、痛みの治療における使用について認可されており、推奨される用量は、約25mg/kgから約75mg/kgであり、より一般的には約50mg/kgで4回/日であるが、約400mg/日まで増加してもよい。タンパク質ミスフォールディングおよび凝集と関係する神経変性および神経細胞の喪失を予防するためのメクロフェナム酸ナトリウム塩のこの用量は、その他の障害の治療するためのこれらの効果的および非毒性の用量に基づいて、必要に応じて適切に滴定することができる。
【0063】
本発明の一実施態様において、シクロオキシゲナーゼ阻害剤が、活性酸素種と関係する神経変性および神経細胞の喪失を予防するために使われる。シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、フルルビプロフェン、メクロフェナミド、ピロキシカムおよびインドメタシンから選択されるが、これらに限定されない。消炎作用に加えて、それらは鎮痛薬、解熱薬および血小板阻害作用を有する。それらは、主に、慢性的関節炎症状ならびに痛みおよび炎症に関係する特定の軟部組織異常の治療に使用される。NSAIDは、シクロオキシゲナーゼを阻害することによってプロスタグランジンの合成を抑える作用を有する。シクロオキシゲナーゼは、アラキドン酸を環状エンドペロキシド(プロスタグランジンの前駆体)に変換する。プロスタグランジン合成の阻害は、それらの鎮痛薬、解熱薬および血小板阻害作用の原因となる;その他の機構は、それらの抗炎症性の効果に寄与する可能性がある。特定のNSAIDもまた、リポキシゲナーゼ酵素またはホスホリパーゼCを抑制する可能性があり、または、T細胞機能を調整する可能性がある(AMA Drug Evaluations Annual, l994, 1814−1815)。
【0064】
メクロフェナム酸ナトリウム塩は、きわめて重要である(Mylan Pharmaceuticals, Inc., CAS No. 644−62−2; Prestwick library compound 206)。上記のように、本発明に含まれる小分子化合物は、ヒトへの使用について認可された。薬剤メクロフェナム酸は、痛みの治療における使用について認可されており、推奨される用量は、約25mg/kgから約75mg/kgであり、より一般的には約50mg/kgで4回/日であるが、約400mg/日まで増加してもよい。活性酸素種と関係する神経変性および神経細胞の喪失を予防するためのメクロフェナム酸ナトリウム塩のこの用量は、その他の障害の治療するためのこれらの効果的および非毒性の用量に基づいて、必要に応じて適切に滴定することができる。
【0065】
III.ポリグルタミン伸長に影響する分子
以下のクラスの分子は、凝集し易いタンパク質に影響して、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集に関係する神経変性および神経細胞の喪失を予防する。これらのクラスには、ポリグルタミンリピートに関係するタンパク質に影響を与える分子が含まれる。
【0066】
a)葉酸合成酵素阻害剤
一実施態様において、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集に関連する神経変性および神経細胞の喪失を予防するために使用される。葉酸合成阻害剤は、スルホンアミド(スルファメトキサゾール、スルファジアジンおよびスルファドキシンを含む);ダプソン;トリメトプリム;ジアベリジン(diaveridine);ピリメタミン;メトトレキセート;またはそれらの医薬的に許容可能な塩から選択してよいが、それらに限定されない。
【0067】
SONH構造を含むスルホンアミドのメンバーであるマフェナイド(CAS No.138−39−6; Prestwick library compound 166)は、きわめて重要である。この基のメンバーは「サルファ剤」としても知られ、スルファニルアミドの誘導体であり、微生物において葉酸合成阻害剤として作用し、静菌性である。上記のように、本発明に含まれる小分子化合物は、ヒトへの使用について認可された。薬剤マフェナイドは、抗菌剤としての使用が認可され、推奨される用量は、最初の用量として約500mg/kgであり、その後、必要に応じて最高7日目まで、6時間ごとに約250mg/kgである。タンパク質ミスフォールディングおよび凝集と関係する神経変性および神経細胞の喪失を予防するためのマフェナイドのこの用量は、その他の障害の治療するためのこれらの効果的および非毒性の用量に基づいて、必要に応じて適切に滴定することができる。
【0068】
b)局所麻酔(Naチャネルブロッカー)
一実施態様において、ナトリウムチャネルブロッカーは、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集に関係する神経変性および神経細胞の喪失を予防するために使用される。ナトリウムチャネルブロッカーは、リドカイン、ディクロニンHCl、メキシリチン(mexilitine)、フェニトイン、ケタミン、フレカイニド、アマンタジンまたはそれらの医薬的に許容可能な塩から選択されるが、これらに限定されない。
【0069】
ディクロニン塩酸塩(DYCLONE(登録商標), AstraZeneca, DE, CAS No. 586−60−7)はきわめて重要である。ディクロニンHClは、適切な濃度で神経組織に局所的に適用されるとき、神経伝導を遮断する局所麻酔薬剤である。ディクロニンは、神経系の何れかの部分およびあらゆる種類の神経線維に作用する。神経幹に接触した場合、これらの麻酔薬は、神経支配された領域において感覚性および運動麻痺を引き起こしうる。それらの作用は完全に可逆性である(From Gilman AG, et. al., Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th ed)。ほとんど全ての局所麻酔薬は、電位依存性ナトリウムチャネルの活性化する傾向を低下させることで作用する。上記のように、本発明を含む小分子化合物は、ヒトへの使用について認可された。薬剤ディクロニンHClは局所麻酔としての使用が認可され、推奨される用量は2時間おきに約2−3mg/kgである。タンパク質ミスフォールディングおよび凝集と関係する神経変性および神経細胞の喪失を予防するためのディクロニンHClのこの用量は、その他の障害の治療するためのこれらの効果的および非毒性の用量に基づいて、必要に応じて適切に滴定することができる。
【0070】
本発明の別の実施態様において、ナトリウムチャネルブロッカーが、活性酸素種と関係する神経変性および神経細胞の喪失を予防するために使用される。ナトリウムチャネルブロッカーは、リドカイン、ディクロニンHCl、メキシリチン、フェニトイン、ケタミン、フレカイニド、およびアマンタジンか選択してよいが、これらに限定されず、ならびに一般に局所麻酔薬として使用される。神経幹と接触する場合、これらの麻酔薬は、神経支配された領域における感覚性および運動麻痺を引き起こしうる。それらの作用は完全に可逆性である(From Gilman AG, et. al., Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th ed)。
【0071】
リドカインHClはきわめて重要である(Alphacain HCl/anestacon/xylocaine, Astrazeneca, CAS No. 137−58−6; Prestwick Library compound 50)。リドカインは、適切な濃度で神経組織に局所的に適用されたときに神経伝導を遮断する局所麻酔薬剤である。リドカインは、神経系の何れかの部分およびあらゆる種類の神経線維に作用する。上記のように、本発明に含まれる小分子化合物は、ヒトへの使用について認可された。リドカインは、局所麻酔薬としての使用について認可され、推奨される用量は、約1mg/kgから約50mg/kg、より一般的には約5mg/kgから約35mg/kg、および最も一般的には約10mg/kgから約20mg/kgである。活性酸素種と関係する神経変性および神経細胞の喪失を予防するためのリドカインHClのこの用量は、その他の障害の治療するためのこれらの効果的および非毒性の用量に基づいて、必要に応じて適切に滴定することができる。
【表2】

【0072】
定量的構造活性相関(Quantitative Structure−Activity Relationship)(「QSAR」)法は、化合物の化学的構造とその生物活性との間の関係を定量するために使用してよい。それぞれの化合物のクラスは、化合物のクラスに関連がある1以上の構造に関連した1以上の活性を同定する構造活性相関(structure−activity relationship)(「SAR」)および/またはQSAR方法を用いて、広域スペクトルの有効性のために定量化または評価してよい。これらの化合物クラスのそれぞれは、合成可能性(synthesizability)、柔軟性、特許性、活性、毒性および/または代謝といった因子に基づいて優先順位をつけられる。この場合、それぞれの特定の化合物のクラスの中の、全ての、または付加的なセットの化合物をアッセイおよび分析してよい。幾つかの化合物クラスは非常に大きい可能性があるため、そのクラスの化合物の部分集合をアッセイおよび分析してよく、クラスが予め決定したレベルを超える有効性を示し続ける場合、残りのメンバーがアッセイされるだろう。このアプローチはまた、本発明の使用のための、化合物の機能的類似体および化合物のクラスを同定するだろう。機能的類似体の活性は、C.エレガンスモデルを用いて、タンパク質の凝集をスクリーニングして確認してよい。
【0073】
特別な重要性を有するとして上述した化合物に加えて、プレストウィックライブラリーに含まれるその他の関係する化学的化合物は、上記の化合物のクラス内で同定された。これらの化合物のクラスは表3に示される。
【表3】

【0074】
表3にリストされる化合物は、C.エレガンスによる第1次スクリーニングアッセイに供した。多くの化合物は、予備スクリーニング工程で有意な作用を有さないにも関わらず、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集と関係する神経変性および神経細胞の喪失を予防することがわかった。このデータは例1に示される。その他のin vitroおよびin vivoスクリーニングアッセイは、予備および第2のスクリーニングの結果を確認するために、これらの薬剤をスクリーニングする技術は公知である。予備スクリーニングにおけるネガティブな結果は、異なるアッセイを使用して有効となってもよい。タンパク質ミスフォールディングおよび凝集のその他のアッセイは、ダイナミック光散乱アッセイ(dynamic light scattering assay)(Li et al., FASEB J., 2004, ePub; Kaylor et al., J Mol Biol, 2005, 353: 357−372)、沈降速度分析(MacRaild et al., J Biol Chem, 2004, 2779: 21038−21045)、および酵母凝集アッセイ(Outeiro et al., Science, 2003, 302: 1772)を含むが、その他の分析が当該分野で公知であり、これらの目的のために使用してもよい。
【0075】
同様に、特定された薬剤クラス内の関連する化学的化合物および機能的類似体またはQSARを用いて同定されたこれらの化合物はまた、これらのタンパク質のミスフォールディング/凝集アッセイの何れかを用いてスクリーニングして、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集と関連した神経変性および神経細胞の喪失の予防における活性を決定してよい。ハイスループットスクリーニング技術は、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集と関係する神経変性および神経細胞の喪失の予防に効果のある一次C.エレガンススクリーニングで同定される薬剤の変種をスクリーニングするために使用してよい。コンピューターを利用したドラッグデザイン/コンピュータモデリング方法は、化学的変種を同定するために使用してよく、そのような化学的変種は、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集と関連した神経変性および神経細胞の喪失における作用についてスクリーニングされてよい。
【0076】
コンピュータモデリング技術は、選択された分子の三次元原子構造の可視化およびこの分子と相互作用するであろう新規の化合物の合理的な設計を可能とする。これらの方法は、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集と関係する神経変性および神経細胞の喪失において作用することがわかっている、小分子化合物の機能的類似体を見つける方法を提供する。標的タンパク質に結合する化合物の三次元構造の分析によって相互作用の部位が同定され、その後、同様の結合特性を有する同様の化合物および機能的類似体の同定に使用されるだろう。三次元構造物は、一般的に、選択した分子のX線結晶解析またはNIVIRイメージングからデータに依存する。分子力学は、力場のデータを必要とする。コンピュータグラフィックシステムは、新規の化合物が分子を標的にどのように結びつけるかの予測を可能とし、結合特性を完全とするための化合物および標的分子の構造の実験的操作を可能とする。小さな変化が生じた場合、分子−化合物相互作用はどのようなものかという予測は、分子機構ソフトウェアおよび演算力強化コンピューターの一方または両方によって行われ、それらは、通常、分子設計プログラムとユーザーとの間のユーザーフレンドリーで、メニュー選択方式のインターフェースでつなげられる。
【0077】
加えて、表3に挙げられる化合物の一部は、C.エレガンスにおける最初のスクリーニングに供した。多くの化合物は、予備スクリーニング工程で有意な作用を有さないにもかかわらず、活性酸素種と関係する神経変性および神経細胞の喪失を予防することがわかった。このデータは例2に示される。これらの薬剤をスクリーニングして予備および第2のスクリーニングの結果を確認するための、その他のin vitroおよびin vivoスクリーニングアッセイは、当該分野において既知である。
【0078】
同様に、特定された薬剤クラス内の関連する化学的化合物および機能的類似体またはQSARを用いて同定されたこれらの化合物はまた、何れかの神経変性のアッセイを用いてスクリーニングして、活性酸素種と関連した神経変性および神経細胞の喪失の予防における活性を決定してよい。そのようなアッセイは当業者に既知であり、in vivoおよびin vitroアッセイを含み、細胞カルチャーアッセイおよび神経変性の遺伝子組換え動物モデルを含む。ハイスループットスクリーニング技術は、神経変性に効果のある一次C.エレガンススクリーニングで同定される薬剤の変種をスクリーニングするために使用してよい。コンピューターを利用したドラッグデザイン/コンピュータモデリング方法は、化学的変種を同定するために使用してよく、そのような化学的変種は、活性酸素種と関連した神経変性および神経細胞の喪失における作用でスクリーニングされてよい。
【0079】
コンピュータモデリング技術は、選択された分子の三次元原子構造の可視化およびこの分子と相互作用するであろう新規の化合物の合理的な設計を可能とする。これらの方法は、活性酸素種と関係する神経変性および神経細胞の喪失において作用することがわかっている既知の小分子化合物の機能的類似体を見つける方法を提供する。標的タンパク質に結合する化合物の三次元構造の分析によって相互作用の部位が同定され、その後、同様の結合特性を有する同様の化合物および機能的類似体の同定に使用されるだろう。三次元構造物は、一般的に、選択した分子のX線結晶解析またはNMRイメージングからのデータに依存する。分子力学は、力場のデータを必要とする。コンピュータグラフィックシステムは、新規の化合物が標的分子にどのように結びつくかの予測を可能とし、結合特性を完全とするための化合物および標的分子の構造の実験的操作を可能とする。小さな変化が生じた場合、分子−化合物相互作用はどのようなものかという予測は、分子機構ソフトウェアおよび演算力強化コンピューターの一方または両方によって行われ、それらは、通常、分子設計プログラムとユーザーとの間のユーザーフレンドリーで、メニュー選択方式のインターフェースでつなげられる。
【0080】
分子モデルシステムの例は、CHARMmおよびQUANTAプログラム(Polygen Corporation, Waltham, Mass)である。CHARMmは、エネルギー最小化および分子動力学関数を実行する。QUANTAは、分子構造の構成、グラフィックモデリングおよび分析を実行する。QUANTAは、相互の分子の挙動の相互作用的な構成、改変、視覚化および分析を可能にする。
【0081】
多くの論文は、特異的なタンパク質との薬剤相互作用のコンピュータモデリングを概説している(Schneider and Fechner, Nat Rev Drug Discov, 2005 Aug, 4(8): 649−663; Guner, IDrugs, 2005 Jul, 8(7): 567−572; and Hanai, Curr Med Chem, 2005, 12(5): 501−525)。化学薬品をスクリーニングし視覚的に示すその他のコンピュータプログラムは、BioDesign社(Pasadena, Calif)およびHypercube社(Cambridge, Ontario)といった会社から利用できる。これらは主に、特定のタンパク質に特異的な薬剤への適用のために設計されるにもかかわらず、DNAまたはRNAの領域に特異的な薬剤の設計に、一旦その領域が同定されると、適用することができる。結合を変化させることができた化合物の設計および生成に関して上述したにも関わらず、天然物または合成化学薬品、およびタンパク質を含む生物活性物質を含む既知の化合物のライブラリーから、阻害剤または活性剤である化合物をスクリーニングすることができる。このアプローチを使用して同定される化合物の活性は、C.エレガンスモデルを使用してタンパク質凝集または神経保護のスクリーニングを行って確認してよい。
【0082】
本発明の別の側面において、小分子化合物は、活性酸素種と関係する神経変性および神経細胞の喪失を予防するために、トルシン依存的な機構によって作用する。活性酸素種と関係する損傷から神経細胞を保護するためにトルシンタンパク質の作用を調整することに作用する小分子化合物は、本願にて記述される方法を用いて同定してよい。化合物は、直接的または間接的な相互作用を通してトルシンタンパク質の作用を調整してもよい。間接的な作用は、トルシンタンパク質に下流の作用(downstream actions)を有する別の酵素または化学中間体を調整することを含んでもよい。一実施態様において、トルシンタンパク質の作用を調整する化合物は、メタンピシリンまたはその他の細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤を含む。
【0083】
本発明のある実施態様において、組成物は少なくとも1つの活性酸素種スカベンジャーを更に含んでもよい。適切な活性酸素種スカベンジャーは、補酵素Q、ビタミンE、ビタミンC、ピルビン酸塩、メラトニン、ナイアシンアミド、N−アセチルシステイン、グルタチオン(「GSH」)およびニトロンを含む。ある実施態様において、少なくとも1つの活性酸素種スカベンジャーは、小分子化合物の予防投与と共に、予防的に投与される。
【0084】
本方法に有用な化合物、またはその医薬的に許容可能な塩は、投与の多種多様な経路または様式を用いて患者に送達できる。投与の適切な経路は、吸入、経皮投与、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、腸管投与、および非経口投与(筋肉内注射、皮下注射、および静脈内注射を含む)を含むが、これらに限定されない。
【0085】
「医薬的に許容可能な塩」という用語は、本方法で使用される化合物の生物学的効果および特性を保持する塩であって、生物学的にまたはその他の点で望ましくないわけではないそれらの塩を意味する。そのような塩は、無機および有機塩基から調製してよい。無機塩基に由来する塩は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウム塩を含む。有機塩基に由来する塩は、1級、2級、および3級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、および環状アミンの塩を含むが、これらに限定されず、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N−アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジンおよびN−エチルピペリジンを含むが、これらに限定されない。カルボキサミド、低級アルキルカルボキサミド、ジ(低級アルキル)カルボキサミドなどを含むカルボン酸アミドといった、その他のカルボン酸誘導体は、この方法の実行において有用であると理解されるべきである。
【0086】
化合物、またはその医薬的に許容可能な塩は、単独で、その他の化合物との組み合わせで、および/またはその他の治療薬との組み合わせのカクテルで投与してよい。当然、本方法の化合物と同時投与できる治療薬の選択は、部分的に、治療される条件に依存する。
【0087】
活性化合物(またはその医薬的に許容可能な塩)は、それ自体で投与してよく、または、活性化合物が混合されている若しくは1以上の医薬的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤と混合されている医薬的組成物の形態で投与してよい。本発明による使用のための医薬組成物は、医薬的に使用可能な製剤への活性化合物の加工を促進する1以上の生理的に許容可能な担体(賦形剤および添加剤を含む)を用いて、従来の様式で処方してよい。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。
【0088】
注射のために、化合物は、水溶液、好ましくは生理的に適合性の緩衝液(例えばハンクス溶液、リンガー溶液または生理食塩水緩衝液)中で、処方してよい。経粘膜投与のために、浸透させる障壁に適切な浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は、通常、当該分野で既知である。
【0089】
経口投与のために、化合物は、活性化合物と、当該分野で周知の医薬的に許容可能な担体とを組み合わせることによって、容易に処方できる。そのような担体は、治療される患者による経口摂取のために、本方法の化合物を、錠剤、ピル、糖衣丸、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などに処方することを可能とする。経口使用のための医薬製剤は、任意に、適切な添加剤を添加した後に、生成される混合物を挽き、顆粒の混合物を加工し、必要な場合錠剤または糖衣丸コアを得て、固体賦形剤として得ることができる。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖のような充填材;例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル〜セルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン(「PVP」)を含むセルロース製剤である。必要に応じて、架橋結合PVP、寒天、アルギン酸またはそれらの塩(例えばアルギン酸ナトリウム)のような、崩壊剤を添加してよい。
【0090】
糖衣丸コアには、適切なコーティングを付与することができる。このために、濃縮糖溶液を使用してよく、それは任意にアラビアゴム、タルク、PVP、カルボポールゲル(carbopol gel)、ポリエチレングリコール(「PEG」)および/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含んでよい。同定のため、または、活性化合物の用量の異なる組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣丸コーティングに染料または色素を添加してもよい。
【0091】
経口投与のために、化合物は徐放性製剤として処方してよい。徐放性製剤を処方するための多数の技術は、以下の文献に記載されている:米国特許4,891,223; 6,004,582; 5,397,574; 5,419,917; 5,458,005; 5,458,887; 5,458,888; 5,472,708; 6,106,862; 6,103,263; 6,099,862; 6,099,859; 6,096,340; 6,077,541; 5,916,595; 5,837,379; 5,834,023; 5,885,616; 5,456,921; 5,603,956; 5,512,297; 5,399,362; 5,399,359; 5,399,358; 5,725,883; 5,773,025; 6,110,498; 5,952,004; 5,912,013; 5,897,876; 5,824,638; 5,464,633; 5,422,123;および4,839,177;およびWO 98/47491。
【0092】
経口的に使用可能な医薬製剤は、ゼラチンで出来ている押し込み型(push−fit)カプセル剤、並びに、ゼラチンおよび可塑剤(例えばグリセリンまたはソルビトール)で出来ている、柔らかい、封着されたカプセル剤を含む。押し込み型カプセル剤は、ラクトースのような充填材、デンプンのような結合剤、および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムのような潤滑油および任意に、安定剤との混合で、活性成分を含むことができる。軟カプセル剤において、活性化合物は、適切な液体(例えば脂肪油、流動パラフィンまたは液体PEG)に溶解または懸濁してよい。加えて、安定剤を添加してよい。経口投与のための全ての製剤は、そのような投与に適した用量でなければならない。
【0093】
経頬投与のために、組成物は、従来の様式で処方される錠剤またはロゼンジの形態をしてもよい。
【0094】
吸入による投与のために、活性化合物は、好都合に、適切な噴霧剤(例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素またはその他の適切なガス)を用いて、加圧パックまたはネブライザーからエアゾールスプレープレゼンテーションの形態で送達してよい。加圧エアゾールの場合、用量単位は、測定した量を送達するためのバルブを提供することで決定してよい。吸入器(inhaler)または散布器(insufflator)の使用のためのゼラチンのような化合物のカプセル剤およびカートリッジは、化合物の散剤ミックスおよび適切な散剤ベース(例えばラクトースまたはデンプン)を含むように処方してよい。
【0095】
化合物は、例えば、大量瞬時投与または持続注入法といった注射による非経口投与のために処方してよい。注射のための製剤は、防腐剤が添加されて、例えば、アンプルでまたはマルチ用量容器といった単位剤形で示されてもよい。組成物は、脂性または水性ベヒクル中の懸濁液、溶液または乳濁液といった形態をとってよく、懸濁剤、安定剤および/または分散剤といった処方用薬剤(formulatory agent)を含んでよい。
【0096】
非経口投与のための医薬製剤は、水溶性形態における活性化合物の水溶液を含む。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な脂性の注射懸濁液として製造してよい。適切な親油性溶媒またはベヒクルは、脂肪油(例えば胡麻油)または合成脂肪酸エステル(例えばオレイン酸エチルまたはトリグリセリド)またはリポソームを含む。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘性を増加させる物質(例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストラン)を含んでもよい。任意に、懸濁液はまた、高度に濃縮された溶液の製剤を可能とするために、化合物の溶解度を増加させる適切な安定剤または薬剤を含んでもよい。
【0097】
あるいは、活性化合物は、使用前に、適切な溶媒(例えば無菌パイロジェンフリー水)で構成するための散剤形態であってもよい。
【0098】
化合物はまた、例えば、従来の座薬基剤(例えばカカオバターまたはその他のグリセリド)を含む化合物といった、坐剤または保持浣腸(retention enemas)といった直腸組成物に処方してよい。
【0099】
前述の製剤に加えて、化合物はまた、デポ製剤として処方してよい。そのような長時間作用性の製剤は、移植または経皮的送達(例えば皮下にまたは筋肉内に)、筋肉内注射、または経皮パッチによって投与してよい。この為、例えば、化合物は、適切な重合体または疎水性物質(例えば、許容可能な油中の乳剤)またはイオン交換樹脂と共に、または、わずかに可溶性の塩といったわずかに可溶性の誘導体として処方してよい。
【0100】
本発明の更なる実施態様はナノ粒子に関する。ここに記述される化合物はナノ粒子に取り込まれてもよい。本発明の範囲内のナノ粒子は、単一の分子レベルの粒子並びに顕微鏡的特性を示す粒子のそれらの集合体を含むよう意図される。前述のナノ粒子を使用および作製する方法は、当該分野において既知である(米国特許番号6,395,253; 6,387,329; 6,383,500; 6,361,944; 6,350,515; 6,333,051; 6,323,989; 6,316,029; 6,312,731; 6,306,610; 6,288,040; 6,272,262; 6,268,222; 6,265,546; 6,262,129; 6,262,032; 6,248,724; 6,217,912; 6,217,901; 6,217,864; 6,214,560; 6,187,559; 6,180,415; 6,159,445; 6,149,868; 6,121,005; 6,086,881; 6,007,845; 6,002,817; 5,985,353; 5,981,467; 5,962,566; 5,925,564; 5,904,936; 5,856,435; 5,792,751; 5,789,375; 5,770,580; 5,756,264; 5,705,585;5,702,727;および5,686,113)。
【0101】
医薬組成物はまた、適切な固体またはゲル担体または賦形剤を含んでよい。そのような担体または賦形剤の例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびPEGといったポリマーを含むが、これらに限定されない。
【0102】
本方法に適した医薬組成物は、前述のように活性成分が治療的にまたは予防的に有効量で含まれ、例えば、治療的または予防的利益を達成するための有効量で含まれる組成物を含む。もちろん、特定の適用のための実際の有効量は、とりわけ、治療する症状および投与経路に依存する。有効量の測定は、特に本願の開示を考慮して、当業者の能力の範囲内で、適切に行われる。
【0103】
ヒトへの使用のための治療的有効量は、動物モデルから決定できる。例えば、ヒトのための用量は、動物において有効であることがわかった循環血中濃度を達成するよう処方できる。痛みの有用な動物モデルは当該分野において周知である。
【0104】
当業者は、過度の実験を行うことなく、投薬戦略−用量レベルおよび用量頻度の組合せ−を考案することができ、それは、各投薬期間において特定の期間望ましい濃度範囲での小分子化合物の血漿レベルの実質的に連続的な維持、それによる望ましい神経保護の最大化をもたらすだろう。連続的な曝露は、移植もしくは非経口的ポリマーまたは徐放性もしくはパルス放出性(pulse−release)経口製剤を含む徐放薬物送達システムの使用によって達成できる。血漿曝露を閾値レベルを越えるように維持することはまた、薬剤/製剤の組み合わせを用量レベルおよび投薬計画に対応させることによって達成することができることが当業者に周知である。これらの方法は、当該分野において、「ドージング・アップ(dosing up)」または「ドージング・トゥ・ステディ・ステイト(dosing to steady state)」を含む様々な名称で知られる。例えば、血漿中の薬剤濃度の短い半減期をもたらす経口製剤は、血漿レベルを望ましい閾値より上に維持するために、より高いレベルで投与でき、またはより頻繁に投与できる−そのような投与および投与計画は、公表された式または計算または当業者に公知の商業的に入手可能なソフトウェアプログラムをもちいて、製剤の薬物動態学的プロファイルの数学的モデリングに基づいて選択される。その他の例として、高いレベルの延長した曝露をもたらす製剤は、より頻度の少ない計画にて投与することができ、そのような投与および投与計画は、公表された式または計算または当業者に公知の商業的に入手可能なソフトウェアプログラムをもちいて、製剤の薬物動態学的プロファイルの数学的モデリングに基づいて選択される。その他の例として、低いレベルで延長した曝露をもたらす製剤は、決定した範囲内に血漿レベルがあると示されるまで、またはその範囲内にあると予測されるまで、より頻繁な投与計画を使用して「ドージング・アップ」することができ、そのような投与および投与計画は、公表された式または計算または当業者に公知の商業的に入手可能なソフトウェアプログラムをもちいて、製剤の薬物動態学的プロファイルの数学的モデリングに基づいて選択される。
【0105】
本発明の組成物は、CNS傷害または神経変性の疾病の発病の危険がある個人に、予防的に投与してよい。別の実施態様において、本発明の組成物は、個人がまだ無症候状態である場合には、神経変性の障害の遺伝的スクリーニングの陽性の試験結果の後、さもなければ神経変性の疾病の臨床症状が現れ始める場合には、疾病の発症のときに、個人に投与してよい。本方法の組成物は、個人がCNS傷害の危険がある、または神経変性の疾病を発病する危険がある期間の間、投与してよい。ここに記述される方法のいずれかにおいて、とりわけ記述される組成物は、神経変性を予防するための有効量で投与されてもよい。
【0106】
別の実施態様において、本発明の組成物は、傷害または虚血性の発作−例えば活性酸素種の形成−に二次的な因子が、第2の神経細胞の損傷をもたらす可能性のある、外傷性の脳損傷または虚血性の発作(例えば脳卒中)を患った直後に、個人に投与してよい。化合物は、傷害または虚血性の発作の後の少なくとも約3、9、18、または24時間、または傷害または虚血性の発作の後の少なくとも約3、5、7、12、または15日間投与してよい。少なくとも1ヵ月続く投与のより長い期間はまた、傷害の程度に従って使用してよい。
【0107】
本発明の方法のいずれかにおいて、ここに記述される組成物は、神経変性および神経細胞の喪失の治療または予防のために、有効量で投与してよい。化合物はまた、CNS傷害または虚血性の発作による第2の損傷が原因の神経変性および神経細胞の喪失の治療または予防のために、有効量で投与してよい。化合物は、CNS傷害または神経変性の疾病の症状の改善または軽減に十分な期間、投与してよい。様々な神経細胞のサブタイプは、ここに記述される小分子化合物によって保護されてよい。そのような神経細胞のサブタイプは、アドレナリン作動性の、ノルアドレナリン作動性の、セロトニン作動性の、ドーパミン作動性の、コリン作動性の、GABA作動性の、グリシン作動性、グルタミン酸作動性の、および、ヒスタミン作動性の神経細胞を含むが、これらに限定されない。
【0108】
別の実施態様において、ここに記述される化合物は、分子シャペロンタンパク質(例えば、タンパク質のトルシンファミリー内のタンパク質)の活性を調整するために投与されてもよい。これらの方法には、分子シャペロン活性が損なわれまたは悪化する障害に特に関係を有する。トルシンAタンパク質の突然変異が、分子シャペロン活性を損ない、ジストニアが関係する神経細胞の機能障害の部分的原因となる、早発性のトルシンジストニアを治療するための化合物の投与は、きわめて重要である。
【0109】
化合物はまた、神経伝達物質輸送体の活性を調整するために投与されてもよい。そのような輸送体は、ドーパミン輸送体(「DAT」)、セロトニン輸送体、GABA輸送体、ノルアドレナリン輸送体、小胞アセチルコリン輸送体などを含んでよいが、これらに限定されない。トルシンタンパク質および神経伝達物質輸送体の調整は、損傷または死の危険にある神経細胞に神経保護を提供するために用いてよい。
【0110】
別の側面において、小分子化合物は、タンパク質ミスフォールディングまたは凝集と関係する神経変性および神経細胞の喪失の治療または予防のために、トルシン依存的機構を通して作用する。タンパク質ミスフォールディングまたは凝集と関係する神経変性および神経細胞の喪失の治療または予防のためにトルシンタンパク質の作用を調整して作用する小分子化合物は、ここに記述される方法を用いて同定してよい。化合物は、直接的または間接的な相互作用を通してトルシンタンパク質の作用を調整してよい。間接的作用は、トルシンタンパク質において下流の作用をするその他の酵素または化学的中間体の調整を含んでよい。一実施態様において、トルシンタンパク質の作用を調整する化合物は、メタンピシリンまたはその他の細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤を含む。別の実施態様において、トルシンタンパク質の作用を調整する化合物は、ナリジクス酸またはオキソリン酸またはその他のトポイソメラーゼII阻害剤を含む。さらに別の実施態様において、化合物は、タンパク質ミスフォールディングまたは凝集と関係する神経変性および神経細胞の喪失を治療するまたは予防するために、変異体トルシンタンパク質を調整する。この特定の実施態様において、化合物は、カルシウムチャネル拮抗剤(例えばロペラミドHCl)またはシクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えばメクロフェナム酸ナトリウム塩一水和物)を含む。
【0111】
以下の例は、同時に如何なる限定をも構成することなく、本発明を更に例証するのに役立つだろう。手段は、その様々な実施態様、改変および等価物を有してよく、本願の説明を読んだ後に、発明の意図から逸脱することなく、それら自身を当業者に示唆してもよいことが明確に理解される。
【実施例】
【0112】
[例1]
タンパク質ミスフォールディングおよび凝集のC.エレガンスモデルを用いた小分子ライブラリーのスクリーニング
ブレンナーによって記述されるように、C.エレガンス ネマトーダはNGMプレート上にて20℃で育てた(Brenner, Genetics, 1974, 77: 71−94)。いくつかの遺伝子組換えC.エレガンス株を、プレストウィック小分子ライブラリーの一次スクリーニグのために使用した。遺伝子組換えウォーム株は、野生型(wt)(Punc−54::トルシンA)または変異体(Punc−54::トルシンA(ΔE))とともに、Punc−54::Q82−GFPを発現する。トルシンAは、蛍光顕微鏡下で可視可能なタンパク質凝集を起こす表現型を発現する。遺伝子組換えウォームは薬剤プレート上にプレーティングし、子孫を可溶性タンパク質への復帰についての研究に供した。
【0113】
可溶化した薬剤とウォームを成育する寒天培地とを混合することによって、標準的方法を用いて薬剤をC.エレガンスに投与した(Rand and Johnson, Methods Cell Biol, 1995, 48: 187−204)。投与のこの様式は、薬剤に対するウォームの連続的な曝露を可能とする。
【0114】
各々の薬剤を、最初に適切な溶媒に溶解し、その後、予め考慮した薬剤溶液の量で、プレオートクレーブされた培地に薬剤溶液を添加した。全ての薬剤は0.5mg/mlの初濃度で試験し、その内の少数がウォームに対して有毒であり、そのためそれらは0.1mg/mlまたは0.025mg/mlの濃度で試験を行った。各々のプレートに、100μlの濃縮したE. coli OP50細菌を播種した。
【0115】
化合物を同定するのに用いられるスクリーニング分析は、分子作用の特異性を決定するためにタンパク質凝集の情報(readout)を使用する。スクリーニングは、ポリグルタミン伸長を使用して、動物モデルシステムC.エレガンスにおける細胞のアッセイを利用した。さらに、トルシンAは3つの異なる方法で一部のアッセイに含めた:野生型トルシンAの存在、変異体トルシンAの存在または野生型および変異体トルシンAの存在(全ての場合においてポリグルタミン伸長を伴う)。ウォームは、タンパク質凝集において統計学的に有意に減少するものをスクリーニングした。陽性結果を示した化合物は、再スクリーニングを行い、アッセイの結果に基づいて識別した。
【0116】
凝集分析アッセイの方法は、Caldwellらが記述している(Hum Mol Genetics, 2003, 12(3): 307−319)。簡単に示すと、ウォームは、Endow GFP HYQおよびTexas Red HYQフィルターキューブ(Chroma社)を備えたニコンEclipse E800エピフロレッセンス顕微鏡を使用して調べた。画像は、Spot RI CCDカメラ(Diagnostic Instruments社)で取り込んだ。MetaMorph Software(Universal Imaging社)を、画像の仮着色(pseudocoloration)、画像のオーバレイおよび凝集サイズの定量化のために使用した。分析した各々のウォーム株について、l000xの拡大率で、30のL3段階動物(Q82::GFP集合体のため)の後方領域(posterior region)にて全ての凝集の画像を取り込むことによって、または30の成体動物/日(Q19::GFP分析のために)の全ての凝集の画像を取り込むことによって、平均凝集サイズを決定した。ピクセル領域は、MetaMorphソフトウェアシステムにてμmに変換し、更なる分析のためにExcelスプレッドシートに直接ダウンロードした。凝集サイズの統計分析は、Statistica(SPPS Software)を用いてANOVAによって行った。
【0117】
タンパク質ミスフォールディングおよび凝集の抑制に対する候補化合物の効果を見るため、5つの産卵期の成体ウォームを、各々の薬剤プレート上に移し、約3日間20℃で成育した。L3段階および若年成体段階の30のFlウォームについて凝集数を数えた。
【0118】
タンパク質ミスフォールディングおよび凝集に対する候補薬剤化合物の予防的効果を見るため、5つの産卵期の成体ウォームを、各々の薬剤プレート上に移し、約3日間20℃で成育した。L2段階の35−40のFlウォームを選択し、薬剤プレートと比較して同じ濃度の対照溶媒を含む対照プレートに移した。30のL3段階のウォームは、8時間後、凝集数を数えた。30の若年成体は、32時間後に分析した。
【0119】
タンパク質凝集における標準化された減少に基づくウォームに対する薬剤の特別な療法のスケール調整した有効性(scaled effectiveness)を算出するため、以下の式を使用した:
(A−B)/(A−C)x100%、ここにおいて
A=溶媒対照プレート上で生育するウォームの凝集数
B=ウォームの全生涯の間の特定薬剤プレート上で生育するウォームの凝集数
C=プレL2曝露を受け、その後溶媒対照プレートに移されたウォームの凝集数。
【0120】
療法に効果がない場合、値は0%に等しいと予想される。反対に、療法が、全生涯において薬剤上でウォームを生育させた場合と同様に有効であった場合、値は100%に等しいと予想される。
【0121】
タンパク質ミスフォールディングおよび凝集に対する候補薬剤化合物の補正(corrective)効果を見るため、5つの産卵期の成体ウォームを、溶媒対照プレートに移し、約3日間20℃で生育した。35−40のL2段階のFlウォームを選択し、薬剤プレートに移した。8時間後、30のL3段階のウォームにて凝集数を数えた。30の若年成体は、32時間後に分析した。
【0122】
タンパク質凝集における標準化された減少に基づくウォームに対する薬剤の特別な療法のスケール調整した有効性を算出するため、以下の式を使用した:
(A−B)/(A−C)x100%、ここにおいて
A=溶媒対照プレート上で生育するウォームの凝集数
B=ウォームの全生涯の間の特定薬剤プレート上で生育するウォームの凝集数
C=L2段階から(成体期まで)曝露を受けたウォームの凝集数。
【0123】
療法に効果がない場合、値は0%に等しいと予想される。反対に、療法が、全生涯において薬剤上でウォームを生育させた場合と同様に有効であった場合、値は100%に等しいと予想される。
【0124】
結果
ライブラリーの一次スクリーニングから、Punc−54::Q82::GFP+Punc−54::トルシンA+Punc54::トルシンA(ΔE)を含むウォームにおけるタンパク質凝集を再現的に減少させる7つの分子が同定された。
【0125】
小分子化合物が作用する機構を説明するために、一次スクリーニングで同定された全ての薬剤を、何れのトルシンAも発現しない導入遺伝子Punc.54::Q82::GFPを含む遺伝子組換えウォームを処理するために使用した。一次スクリーニングで同定された7つの化合物の内2つの薬剤、マフェナイドおよびディクロニン塩酸塩が、タンパク質凝集の存在を減少させた。このことは、これらの2つの薬剤が、おそらくポリグルタミンタンパク質に直接作用するトルシン依存的機構を介してタンパク質ミスフォールディングおよび凝集を予防することを意味する。
【0126】
単独で直接ポリグルタミンに作用しなかった残りの5つの一次候補薬剤は、wtトルシンAと共に導入遺伝Punc.54::Q82::GFP+Punc54::トルシンAを発現するウォームの存在下、プレーティングした。一次スクリーニングから同定された薬剤のうちの3つ、ナリジクス酸、オキソリン酸およびメタンピシリンナトリウム塩は、野生型トルシンAを介してタンパク質凝集を減少させた。
【0127】
単独で直接ポリグルタミンに作用しなかった同じ5つの一次候補薬剤はまた、変異型トルシンAとともに導入遺伝子Punc54::Q82::GFP+Punc54::トルシンA(ΔE)のみを発現するウォームの存在下プレーティングした。2つの薬剤、塩酸ロペラミドおよびメクロフェナム酸ナトリウム塩は、変異体トルシンAタンパク質に作用することによって、凝集を減少させた。これらのデータは、図1にまとめて示される。
【0128】
トルシン依存的機構によって作用する5つの分子と類似的な構造および作用機序を持つ分子を、タンパク質凝集の抑制ついて再分析した。これらの分子は、潜在的薬物療法学の初回の分析の第1回をパスしなかった。これらは、上記表2に示される。
【0129】
全ての分子は、プレストウィックライブラリー番号によって符号化される。C.エレガンス凝集モデルの関連薬剤のスクリーニングは、タンパク質凝集形成に対する可変性の作用をもたらした。これらのデータは図2に示される。試験した化合物の一部がこのモデルでタンパク質ミスフォールディングに有意な作用を示さないものの、その他のタンパク質ミスフォールディング/凝集アッセイで、タンパク質凝集の形成への作用が示される可能性がある。候補薬剤によって陽性反応を示す実験を複数回繰り返し、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集に対する効果を確認した。
【0130】
抑制アッセイの結果は、全ての5つのトルシン−特異的薬剤(ナリジクス酸、オキソリン酸、メタンピシリンナトリウム塩、ロペラミド(Loperamide)HCI、メクロフェナム酸ナトリウム塩)が、ウォームが孵化からL2段階まで薬剤化合物に曝露された場合に、有用であることを示している。特に、ウォームの齢がより長くなるほど(暴露の不足にもかかわらず)、薬剤の効果は強くなった(グラフの中実バー)。これらの結果は図3に示す。
【0131】
補正アッセイの結果は、3つのトルシン−特異的薬剤(オキソリン酸、メタンピシリンナトリウム塩およびロペラミドHCl)は、薬剤化合物が発育後期まで供給されない場合に、有用であることを示している。これらの結果を図4に示す。
【0132】
これらの結果は、候補薬剤化合物のライブラリーは、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集の予防または補正に対する効果を、このC.エレガンスモデルでスクリーニングしてよいことを実証する。これらの薬剤のより幅広いクラスはまた、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集の予防または補正に効果があるその他の薬剤化合物を同定するために、このモデルを使用してスクリーニングしてもよい。
【0133】
[例2]
プレストウィック小分子ライブラリーから同定された化合物による、C.エレガンスのドーパミン作動性神経細胞の神経保護
以前の研究において、C.エレガンスの「CEP」および「ADE」機械感覚性神経細胞は、ドーパミン選択的神経毒6−OHDAでの処理の後、容易に識別可能な神経細胞の変性を起こすことが確立された(Nass et al, 2002)。6−OHDAの毒性は、非酵素的な自己酸化工程を経た過酸化水素および水酸化物遊離基の生成によって、活性酸素種の形成を通して仲介される(Kumar et al., 1995; Foley and Riederer, 2000)。6−OHDAへの曝露の後、C.エレガンスドーパミン神経細胞は、アポトーシス性細胞死の特徴的な用量依存パターンを示し、それは超微細構造分析によって確認された(Nass et al., 2002)。この変性は、生きた動物において、緑色蛍光タンパク質とともに共発現させ、3つの時間的および形態学的に異なる段階(神経突起小疱形成(neuronal process blebbing)、突起喪失による細胞体球状化(cell body rounding with process loss)、および細胞体喪失(cell body loss)を含む)に分類することで、モニターできる。これらの特徴的な変化は2、3時間以内のオーダーで再現的に生じ、MPTP処理したサルおよび6−OHDA処理したラットの観察で再現され、線条体末端に対する損傷は逆行的な変化をもたらし、SNpc細胞体のそれに先行する(Berger et al., 1991; Herkenham et al., 1991)。近年、6−OHDAに媒介される神経変性におけるトルシンタンパク質の作用が示された(Cao et al., J Neurosci, 25(1): 3801−3812)。動物は様々な濃度の6−OHDAで処理され、ウォームが成長および加齢するにつれて、神経変性は、時間とともに、これらの透明な動物におけるドーパミンGFPマーカーの共発現を伴った。
【0134】
ブレンナーによって記述されるように、C.エレガンス ネマトーダはNGMプレート上にて25℃で育てた(Brenner, Genetics, 1974, 77: 71−94)。2つの遺伝子組換えC.エレガンス株を、プレストウィック小分子ライブラリーの一次スクリーニングに使用した。Pdat−1::GFP(野生型(Pdat−l::トルシンA)または変異体(Pdat−1:::トルシンA(ΔA))の両方とともに)を発現する遺伝子組換えウォーム株を使用した。トルシンAは、6−OHDAでの処理後、可視性の神経変性となる表現型を示す。遺伝子組換えウォームを薬剤プレートにプレーティングし、子孫において、C.エレガンスに存在する8つのドーパミン作動性神経細胞の形態学的な変化を研究した。
【0135】
薬剤は、可溶化した薬剤とウォームを生育する寒天培地とを混合することによって、標準的方法によりC.エレガンスに投与した(Rand and Johnson, Methods Cell Biol, 1995, 48: 187−204) 。投与のこの様式は、ウォームの薬剤への連続的な曝露を可能にする。
【0136】
各々の薬剤をまず適切な溶媒に溶解し、その後、予め薬剤溶液の量を考慮して、プレオートクレーブされた培地に薬剤を添加した。全ての薬剤は、0.5mg/mlの初濃度で試験し、そのうちの少数がウォームに毒性を示したため、0.1mg/mlまたは0.025mg/mlの濃度で試験した。各々のプレートは、100μlの濃縮されたE. coli OP50細菌を播種した。
【0137】
2%次亜塩素酸ナトリウムおよび0.5M NaOHで産卵期の成体を処理して胚を単離することによって、年齢を同期化したウォームを得た(Lewis Fleming, 1995)。これらの胚を25℃で30時間生育した。L3段階において、幼虫を、10分おきに穏やかに撹拌して、1時間、10mM(50mM)6−OHDAおよび2mM(または10mM)アスコルビン酸でインキュベートした(Nass et al., 2002)。その後、ウォームを洗浄し、細菌(OP50)を接種したNGMプレート上に広げ、6−OHDA曝露後の2時間から72時間までの時点でスコアをつけた。
【0138】
6−OHDA処理の直後、導入遺伝子を含むウォームを、GFPの存在に基づいて蛍光実体顕微鏡の下で選択し、OP50を播種した新鮮なNGMプレートに移した。それぞれの時点のために、30−40のウォームを2%アガロースパッドに適用し、3mMレバミゾールで固定化した。ウォームは、Endow GFPフィルターキューブ(Chroma Technology, Rockingham, VT)を備えたニコンEclipse E800エピフロレッセンス顕微鏡の下で調べた。分析の簡略化のため、ウォーム頭部の4つのCEP DA神経細胞だけスコア評価した。全ての4つのCEP神経細胞が存在し、それらの神経細胞の突起が完全な状態である場合、ウォームを「野生型」と評価した;以下に記載の通りに細胞体の4つの神経突起のうち少なくとも1つに欠損がある場合、ウォームを、「樹状突起小疱形成」、「細胞体球状化」または「細胞体喪失」と評価した。これらの実験は3回繰り返し、画像はMetaMorphソフトウェア(Universal Imaging, West Chester, PA)によって駆動されるCool Snap CCDカメラ(Photometrics, Tucson, AZ)で取り込んだ。
【0139】
結果
変異体および野生型トルシンの両方を発現しているウォームは、〜50%の欠損ドーパミン神経細胞を有している。ライブラリーの1次スクリーニングは、6−OHDA曝露の後にPdat−l::GFP+Pdat−1::トルシンA+Pdat−1::トルシンA(ΔE)を含むウォームにおいてドーパミン作動性神経変性を再現的に減少させる3分子を同定した(図5a)。
【0140】
小分子化合物が行う機構を解明するために、一次スクリーニングで同定された全ての薬剤を、何れのトルシンAも発現せず導入遺伝子Pdat−1::GFPを含む遺伝子組換えウォームとともにプレーティングした。一次スクリーニングで同定された3つの化合物の内2つの薬剤、リドカインHCl(50)およびメクロフェナム酸ナトリウム塩一水和物(206)が、6−OHDAに仲介される神経変性を減少させた(図5b)。これは、リドカインHClおよびメクロフェナム酸ナトリウム塩一水和物は、トルシン非依存的な機構によって神経変性を予防することを示唆している。
【0141】
メタンピシリンナトリウム塩(235)の作用機序を調べるため、Pdat−1::GFP+Pdat−1::トルシンA(wtトルシンAをコード化する)またはPdat−1::GFP+Pdat−1::トルシンA(ΔE)(変異体トルシンAをコード化する)を発現する2の遺伝子組換えウォーム菌株を、6−OHDAの侵襲の前にメタンピシリンナトリウム塩で処理した。メタンピシリンナトリウム塩による神経保護は、wtトルシンAを発現するPdat−1::GFP+Pdat−1::トルシンAウォームにて付与されるのみであった(図5cおよび5d)。これらの結果は、メタンピシリンナトリウム塩は、DA神経細胞を保護する際にトルシンを通して作用することを示す。
【0142】
まとめると、これらのデータは、候補薬剤化合物のライブラリーは、活性酸素種と関係する神経変性の予防に対する効果について、このC.エレガンスモデルでスクリーニングしてもよいことを示している。また、これらの薬剤のより幅広いクラスをこのモデルを用いてスクリーニングされ、活性酸素種と関連する神経変性および神経細胞の喪失の予防に効果があるその他の薬剤化合物が同定される。
【0143】
[例3]
チロシン水酸化酵素を過剰発現する遺伝子組換えC.エレガンスを用いた、神経変性のモデルにおける神経の保護
cat−2(チロシン水酸化酵素のウォーム相同体)の過剰発現は、野生型と比較して75%の遺伝子組換えウォームにおいて、神経細胞内のドーパミン生産の増大およびドーパミン作動性神経細胞の特徴的な喪失がもたらされる(Cao et al., J Neurosci, 25(1): 3801−3812)。ウォームまたはヒトトルシンタンパク質の共発現は、神経細胞の変性がなお現れるにも関わらず、ドーパミン作動性神経細胞の喪失をわずかな程度減少させる。これらの実験の目的は、神経変性の別の異なるC.エレガンスモデルにて、プレストウィックライブラリーで小分子化合物の効果を決定することであった。
【0144】
ウォームは、上述のものと同じ方法を用いて培養した。Pdat−l::CAT−2を発現する遺伝子組換えウォーム株は、完全な株の全ての発育段階において可視性の神経変性を生じるという表現型を示し、7日齢動物のわずか約55%が4つ全てのCEP神経細胞を維持している。神経保護のこのモデルを使用するスクリーニング実験は、2つの化合物が、特に、cat−2を過剰発現するドーパミン作動性神経細胞に対して神経保護の作用を有することを示した。化合物166(マフェナイド)および206(メクロフェナム酸ナトリウム塩)は共に、遺伝子組換えウォームのドーパミン作動性神経変性の標準化された減少における低下を示した(図6)。これらの結果はまた、神経変性の1モデルにてほとんど神経保護を示さない化合物が、おそらく作用の異なる機構により作用して、神経変性のための異なるモデルにて、なお陽性結果をもたらす可能性があるということを示している。化合物166はそのような化合物の例である。
【0145】
[例4]
神経変性のためのC.エレガンスモデルにおける化合物235に関する分子のスクリーニング
一次スクリーニングで同定された化合物に類似した構造および作用機構を有する、プレストウィックライブラリー中の分子は、神経変性のための様々なモデルにおける神経保護作用のために再分析してよい。これらの分子は上記表3に挙げられる。
【0146】
全ての分子は、プレストウィックライブラリー番号によって符号化される。メタンピシリンナトリウム塩(化合物235)に関連した化合物はきわめて重要である。メタンピシリンは、トルシンAタンパク質の作用を調整することにより、部分的に神経保護である(図5a−5d)。神経細胞の喪失がジストニアで認められない一方で、トルシン依存機構が関係しており、それゆえ、トルシン活性を調整する化合物は、欠損のある変異体トルシンAの発現が障害と関連する神経細胞の機能障害の原因となると考えられているジストニアの治療に関連する。化合物のスクリーニングは、可変性の神経保護の作用に帰着するC.エレガンス神経保護モデルにおけるメタンピシリンに関係した。これらのデータは図7に示される。試験した一部の化合物は、このモデルにおいて神経保護に有意な作用を示さないものの、その他の神経保護アッセイにより、神経細胞の死および変性の予防に作用することが実証される可能性がある。特に、セファドロキシルおよびカルベニシリン2ナトリウム塩(化合物434および703)は、化合物235と同程度の神経保護作用を示した。化合物クロキサシリンナトリウム塩およびアモキシシリン(化合物186および357)もまた、より小さな程度はあるが、このモデルにおいて神経保護作用を示した。候補薬剤によって陽性の反応を示した実験は、複数回繰り返し、神経保護作用を確認した。このモデルで陽性反応を示した化合物は、前述した(Pdat−1:: GFP + Pdat−1:: トルシンA) および(Pdat−1:: GFP + Pdat−1:: トルシンA (ΔE ))モデルにて容易に再スクリーニングされ、トルシン依存的機構を介した作用かどうかが確認される。
【0147】
これらの結果は、候補薬剤化合物のライブラリーが、神経保護作用について、このC.エレガンスモデルにてスクリーニングしてよいことを実証する。表3に挙げられるその他のクラスといった、薬剤の幅広いクラスもまた、このモデルを用いてスクリーニングを行い、神経保護作用を有するその他の薬剤化合物を同定してよい。
【0148】
[例5]
α−シヌクレイン毒性アッセイにおけるトルシンA依存性の再確認
我々は以前に、トルシンAは、C.エレガンスのDA神経細胞におけるα−シヌクレインの過剰発現に起因するドーパミン(「DA」)神経細胞変性を予防できる一方で、トルシンA(「ΔE」)は神経保護が低下したことを示した(Cao et al., J Neurosci, 2005, 25(1): 3801−38l2)。明確には、Pdat−1::GFP+Pdat−1::α−シヌクレインを発現するウォームの26.1±5.3%のみが、4齢成体としての4つ全ての野生型CEP DA神経細胞を維持する一方で、Pdat−1::GFP+Pdat−1::α−シヌクレイン+Pdat−1::トルシンAおよびPdat−1::GFP+Pdat−1::α−シヌクレイン+Pdat−1::トルシンA(ΔE)を発現しているウォームのパーセンテージは、それぞれ、57.3±1.6%および42.2±7.3%である(Cao et al., J Neurosci, 2005, 25(1): 3801−38l2)(図8)。
【0149】
全ての分子はプレストウィックライブラリー番号によって符号化される。凝集アッセイにより同定されるトルシンA依存性化合物は、トルシンA特異的な効果を有し、それゆえ、α−シヌクレイン毒性アッセイにおいて同様の様式で作用するようである。3つ全てのα−シヌクレイン遺伝子組換え株は、5つのトルシンA依存的な化合物に曝露され、トルシンA特異性が決定された(図9)。予想通り、これらの化合物は何れも、トルシンA発現がない場合にPdat−1::GFP+Pdat−1::α−シヌクレインで何の効果もなかった。対照的に、メタンピシリン(化合物235)、ナリジクス酸(化合物187)およびオキソリン酸(化合物193)、3つの野生型トルシンA依存化合物は、Pdat−1::GFP+Pdat−1::α−シヌクレイン+Pdat−1::トルシンAにおいて、それぞれ30.3±7%(p=0.013)、28.9±4.9%(p=0.005)および31.4±3.7%(p=0.002)で野生型DA神経細胞の生存性を増強させたが、一方で、塩酸ロペラミド(144)およびメクロフェナム酸(206)、2つのトルシンA(ΔE)依存化合物は、何れの有意な神経保護も示さなかった。反対に、Pdat−1::GFP+Pdat−1::α−シヌクレイン+Pdat−1::トルシンA(ΔE)ウォームにおいて、メタンピシリン、ナリジクス酸およびオキソリン酸は、全く有意な神経保護を示さなかったが、塩酸ロペラミドおよびメクロフェナム酸は、DA神経細胞の生存性を、39.5±1.4%(p=0.001)および25±1.2%(p=0.002)増大させた。
【0150】
これらの結果は、C.エレガンスパーキンソンモデル(Cao et al., J Neurosci, 2005, 25(1): 3801−38l2参照)を使用するα−シヌクレイン毒性アッセイが、パーキンソン病患者の脳で見られるようなα−シヌクレイン過剰発現の効果を模倣することを実証する。ヒトおよびネマトーダの両方において、ドーパミン神経細胞は、老化の進行の際、時間とともにα−シヌクレイン遺伝子の倍加に応じて死亡する。C.エレガンスパーキンソンモデルは、明確に、直接にヒト疾病状態に関連する治療的な能力を実証し、パーキンソン病の研究のための幾つかのモデルシステムをクロス確認し、および、さらに、複雑な神経変性の疾病の研究においてでさえ単純なモデルシステムが有用でありえることを証明する(Cooper et al., Science, 2006, 313: 324−328参照)。
【0151】
[例6]
それぞれのトルシンA依存薬剤に機能的に類似する化合物の試験
表3に示されるものに加えて、機能的に類似した分子の活性は、Punc−54::Q82::GFP+Punc−54::トルシンA+Punc−54::トルシンA(ΔE)を含む神経保護のためのC.エレガンスモデルにおいてアッセイして、機能的に類似した化合物と関連する有意な活性があるかどうかを決定した(表4)。
【0152】
これらの結果は、表4に示されるように、付加的な機能的に類似した化合物が有意な神経保護活性を示すことを証明する。表3に挙げられるその他のクラスといった薬剤の広範なクラスもまた、このモデルを用いてスクリーニングされ、神経保護作用を有するその他の薬剤化合物を同定してよい。
【表4】

【0153】
[例7]
異なる機構による、6−OHDAに対するリドカインおよびメクロフェナム酸保護
メクロフェナム酸またはリドカインが、トルシンAの機能に非依存的に、DAT−1タンパク質レベルを下方制御することができるかどうか調べるために、我々は、以前に記述された遺伝子組換え株Pdat−1::GFP::DAT−1を使用した(Cao et al., J Neurosci, 2005, 25(1): 3801−38l2)。dat−1 cDNAは、DA神経細胞特異的プロモーターの制御下で、gfpにインフレームで融合しており、GFPおよびDAT−1との間の融合タンパク質を産生する。以前の遺伝子組換え集団内における蛍光強度および可視GFP発現の出現率の試験にて示されたように、トルシンAはGFP::DAT−1レベルを下方制御することが可能である(Cao et al., J Neurosci, 2005, 25(1): 3801−38l2)。
【0154】
我々は、メクロフェナム酸またはリドカインでPdat−1::GFP::DAT−1を処理し、メクロフェナム酸は、対照群の1970A.U.から1740A.U.(p=0.029)へと蛍光強度を減少させた一方、細胞体および神経細胞突起のGFPを有するウォームのパーセンテージは、対照の70%から44.7%(p=0.029)まで減少させた(表5)。リドカインは、Pdat−1::GFP::DAT−1にて、対照の1970A.U.から1612A.U.(p=0.002)まで蛍光強度を減少させた一方、細胞体および神経細胞突起のGFPを有するウォームのパーセンテージは、対照の70%から30%(p=0.0007)まで減少させた(表5)。これらのデータは、リドカインおよびメクロフェナム酸の両者が、直接DAT−1タンパク質のレベルを下方制御することができることを実証している。
【0155】
これが非特異的な効果に起因しなかったことを確認するため、我々は、6−ヒドロキシドパミン(「6−OHDA」)に対して神経保護を示さないプレストウィックライブラリー由来の化合物(シクロピロックスエタノールアミン)を、GFP::DAT−1レベルに対する効果について試験した。シクロピロックスエタノールアミンは、対照に対して有意な効果を全く示さなかった[蛍光強度は1923A.U.(p=0.82)およびウォームの66.7%が細胞体および神経細胞突起のGFP(p=0.71)を有した](表5)。
【0156】
更にメクロフェナム酸およびリドカインの神経保護の効果を調べるため、我々は、我々が以前に記述した遺伝子組換え株(Pdat−1::CAT−2)を使用した(Cao et al., J Neurosci, 2005, 25(1): 3801−38l2)。cat−2(チロシン水酸化酵素(「TH」)遺伝子のC.エレガンス相同体)の過剰発現は、高いレベルのDA産生を生じさせ、結果としてDA神経細胞の変性が観察される(Cao et al., J Neurosci, 2005, 25(1): 3801−38l2)。我々は、Pdat−1::CAT−2でリドカインを試験した;それは、CAT−2誘導神経変性に対して有意な神経保護効果を示さなかった(−7.9%±5%,p=0.6)。このことは、確認された6−OHDAに対する神経保護の効果は、もっぱらDAT−1レベルの下方制御に帰することを示唆している。我々はまた、メクロフェナム酸がCAT−2誘導型神経変性を抑制可能どうか試験した。特に、19±1.1%(p=0.002)の神経保護効果があった。従って、メクロフェナム酸は、ドーパミン前駆体(チロシン水酸化酵素)の過剰発現によって生じる変性からDA神経細胞を保護することができる。
【0157】
これらの結果は、リドカインおよびメクロフェナム酸は、異なる機構によって神経毒6−OHDAに対して、神経保護効果を及ぼすことを実証している。
【表5】

【0158】
本明細書にて引用された全ての文献は本願に援用される。
【0159】
記述された本発明の実施態様に対する様々な修正および変更は、本発明の範囲および意図から逸脱することなく、当業者にとって明白であるだろう。本発明は、特異的で好ましい実施態様と関連して記述されるにも関わらず、請求される発明は、そのような特異的な実施態様に過度に制限されてはならないと理解される。実際、当業者にとって明らかな発明の実行の記述された様式の様々な改変は、本発明に包含されると意図される。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】図1は、プレストウィックライブラリーの一次スクリーニングで同定される候補薬剤の効果を示すグラフを提供する。図1aは、ポリグルタミン凝集に起因する神経変性の疾病のC.エレガンスモデルにおけるタンパク質ミスフォールディングおよび凝集の発生率を減少させる7つの候補薬剤を示す。図1bは、7つの化合物のうちの2つがトルシン非依存的機構によって凝集したタンパク質に直接作用することを示す。図1cは、3つの化合物がトルシン依存的機構によって作用することを示す。図1dは、2つの薬剤が機能障害性トルシンAに作用することによって機能することを示す。化合物は、プレストウィックライブラリーにおいてそれらの数によって同定される。
【図2】図2は、プレストウィックライブラリーの一次スクリーニングで同定される薬剤のそれぞれのクラスの範囲内における、機能的に関連のある化合物の効果を示すグラフを示す。化合物は、プレストウィックライブラリーでそれらの数によって同定される。
【図3】図3aは、薬剤が孵化からL2段階まで投与される場合の、トルシン依存的機構によって作用する5つの候補化合物のための予防的アッセイの効果を示すグラフを提供する。ハッチングのかかったバーは、L3幼生段階でのタンパク質凝集における標準化された減少を表し、中実のバーは、若年成体段階でのタンパク質凝集における標準化された減少を表す。化合物は、プレストウィックライブラリーでそれらの数によって同定される。図3bは、薬剤曝露および中止並びに凝集体減少のためのアッセイの時間を含む、予防的アッセイフォーマットを示す。
【図4】図4aは、薬剤曝露がL2段階からそれ以降に行われる場合の、トルシン依存的機構により作用する5つの候補化合物のための補正アッセイの効果を示すグラフである。ハッチングのかかったバーは、L3幼生段階でのタンパク質凝集における標準化された減少を表し、中実のバーは、若年成体段階でのタンパク質凝集における標準化された減少を表す。化合物は、プレストウィックライブラリーでそれらの数によって同定される。図4bは、薬剤曝露および中止並びに凝集体減少のためのアッセイの時間を含む、補正アッセイフォーマットを示す。
【図5】図5aは、6−OHDA侵襲に起因するドーパミン作動性神経細胞損傷の予防における3つの候補化合物の効果を示すグラフを提供する。化合物は、プレストウィックライブラリーでそれらの数によって同定される(50−リドカインHCl; 206−メクロフェナム酸ナトリウム塩一水和物; 23 5−メタンピシリンナトリウム塩)。図5bは、トルシン非依存的モデルにおける図5a由来の同一の化合物の効果を示すグラフを提供しており、3つの化合物のうちの2つが、ドーパミン作動性神経細胞をトルシン非依存的機構による損傷から保護することを示している。図5cおよび5dは、ドーパミン作動性の神経変性の予防におけるメタンピシリンナトリウム塩(プレストウィック化合物235)の作用がトルシン依存的機構によることを示すグラフを提供する。メタンピシリンは、野生型(「wt」)トルシンAタンパク質を発現する遺伝子組換えウォームにおいて神経保護を提供する。変異体トルシンA(ΔE)を発現する遺伝子組換えウォームは、6−OHDA侵襲後、メタンピシリンによって保護されていない。
【図6】図6は、ドーパミンの過剰産生に起因する神経変性の発生の予防における、マフェナイド(プレストウィック化合物66)およびメクロフェナム酸ナトリウム塩一水和物(プレストウィック化合物206)の効果を示すグラフを提供する。
【図7】図7は、神経変性のC.エレガンスモデルにおける6−OHDA侵襲に起因する神経変性の予防に対する、メタンピシリンナトリウム塩(プレストウィック化合物235)に関する一群の化合物の効果を示すグラフを提供する。
【図8】図8は、野生型(「wt」)トルシンAが、C.エレガンスのドーパミン作動性神経細胞においてα−シヌクレインの過剰発現に起因するドーパミン神経細胞変性を予防できる一方で、変異体トルシンAは神経保護が低下していることを示すグラフを提供する。
【図9】図9は、神経変性の疾病のC.エレガンスモデルにおける、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集の発生率を減少させる、プレストウィックライブラリー由来の5つのトルシンA依存的化合物のトルシンA特異性を示すグラフを提供する。図9は、5つのプレストウィック化合物のうちの3つは、トルシンA依存的機構によってドーパミン作動性神経細胞の生存性を改良するために、特に野生型(「wt」)トルシンAタンパク質に作用することを示す。図9は、さらに、5つのプレストウィック化合物のうちの2つは、トルシンA依存的機構によってドーパミン作動性神経細胞の生存性を改良するために、特に変異体トルシンAタンパク質に作用することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質のミスフォールディングまたは凝集に関連する神経変性および神経細胞の喪失を予防するための治療を必要とする哺乳類に対して、有効量の小分子化合物を含む組成物を投与することによって、タンパク質のミスフォールディングまたは凝集に関連する神経変性および神経細胞の喪失を予防するための方法であって、ここにおいて、前記小分子化合物は、タンパク質のミスフォールディングまたは凝集に関連した神経変性および神経細胞の喪失を予防する効果を有し、および、
ここにおいて、前記小分子化合物は、トポイソメラーゼII阻害剤、細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤、カルシウムチャネル拮抗剤、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、葉酸合成阻害剤またはナトリウムチャネルブロッカーおよびそれらの機能的類似体を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記トポイソメラーゼII阻害剤は、ロメフロキサシン、シノキサシン、アムサクリン、エトポシド、テニポシド、オキソリニック酸、ナリジクス酸、スラミン、メルバロン、ゲニステイン、エピルビシンHCl、エリプチシン、ドキソルビシン、アウリントリカルボン酸またはそれらの医薬的に許容可能な塩を含む方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記トポイソメラーゼII阻害剤は、オキソリニック酸またはナリジクス酸を含む方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記オキソリニック酸が約10mg/kgから約40mg/kgの間の用量で投与される方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、前記ナリジクス酸が約1グラム/日から約5グラム/日との間の用量で投与される方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤が、アンピシリン、クロキサシリン、ピペラシリン、アモキシシリン、セファドロキシル、ジクロキサシリン、カルベニシリン、ペニシリン、メタンピシリン、アモキシシリン、セフォキサチンまたはそれらの医薬的に許容可能な塩を含む方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤がメタンピシリンを含む方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記メタンピシリンが約250mg/kgから約500mg/kgの間の用量で8時間ごとに投与される方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記カルシウムチャネル拮抗剤が、ニモジピン、ジプロテベリン、ベラパミル、ニトレンジピン、ジルチアゼム、ミオフラジン、ロペラミド、フルナリジン、ベプリジル、リドフラジン、CERM−196、R−58735、R−56865、ラノラジン、ニソルジピン、ニカルジピン、PN200−110、フェロジピン、アムロジピン、R−(−)−202−791、またはR−(+)Bay K−8644またはそれらの医薬的に許容可能な塩を含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記カルシウムチャネル拮抗剤がロペラミドを含む方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記ロペラミドが、約1mg/kgから約5mg/kgの用量で投与される方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、前記シクロオキシゲナーゼ阻害剤が、ナプロキセン、フルフェナム酸、トルフェナム酸、フェンブフェン、ケトプロフェン、フェナセチン、ジピロン、フルルビプロフェン、メクロフェナミド、ピロキシカム、インドメタシンまたはそれらの医薬的に許容可能な塩を含む方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記シクロオキシゲナーゼ阻害剤がメクロフェナミドを含む方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記メクロフェナミドが、約25mg/kgから約75mg/kgの間の用量で投与される方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、前記葉酸合成阻害剤が、スルホンアミド、ダプソン、トリメトプリム、ジアベリジン、ピリメタミン、メトトレキセート、またはそれらの医薬的に許容可能な塩を含む方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記葉酸合成阻害剤がマフェナイドである方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記マフェナイドが約250mg/kgから約750mg/kgの間の用量で6時間ごとに投与される方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、前記ナトリウムチャネルブロッカーが、リドカイン、ディクロニンHCl、メキシリチン、フェニトイン、ケタミン、フレカイニド、アマンタジンまたはそれらの医薬的に許容可能な塩を含む方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記ナトリウムチャネルブロッカーがディクロニンHClである方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記ディクロニンHClが、約2mg/kgから約3mg/kgの間の用量で2時間ごとに投与される方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、前記小分子化合物が、吸入、経皮投与、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、腸管投与、または非経口投与にて投与される方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、前記小分子化合物が、タンパク質のミスフォールディングまたは凝集に関連する神経変性および神経細胞の喪失の発症の後に哺乳類に投与される方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法であって、前記小分子化合物がトルシンタンパク質の活性を調整する方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、前記小分子化合物が野生型トルシンAタンパク質の活性を調整する方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法であって、前記小分子化合物が変異型トルシンAタンパク質の活性を調整する方法。
【請求項26】
請求項1に記載の方法であって、前記タンパク質のミスフォールディングまたは凝集が、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病、ポリグルタミン伸長病、脊髄小脳の運動失調、脊髄および延髄性の筋萎縮、海綿状脳症、タウオパチー、ハンティングトン舞踏病、またはジストニアを含む神経変性疾病と関連する方法。
【請求項27】
活性酸素種に関連する神経変性および神経細胞の喪失を予防するための治療を必要とする哺乳類に対して、有効量の小分子化合物を含む組成物を投与することによって、活性酸素種に関連する神経変性および神経細胞の喪失を予防するための方法であって、ここにおいて、前記小分子化合物は、活性酸素種に関連した神経変性および神経細胞の喪失を予防する効果を有し、および、
ここにおいて、前記小分子化合物は、トポイソメラーゼII阻害剤、細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤、カルシウムチャネル拮抗剤、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、葉酸合成阻害剤またはナトリウムチャネルブロッカーおよびそれらの機能的類似体を含む方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記葉酸合成阻害剤が、マフェナイドHCl、スルファセタミドナトリウム水和物、スルファジアジン、スルファグアニディン、スルファチアゾール、スルファメトキサゾール、スルファベンザミドまたはそれらの機能的類似体を含む方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、前記葉酸合成酵素剤がマフェナイドを含む方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、前記マフェナイドが約250mg/kgから約500mg/kgの間の用量で投与される方法。
【請求項31】
請求項27に記載の方法であって、前記ナトリウムチャネルブロッカーが、リドカイン、ディクロニンHCl、メキシリチン、フェニトイン、ケタミン、フレカイニド、アマンタジンまたはそれらの医薬的に許容可能な塩を含む方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、前記ナトリウムチャネルブロッカーがリドカインを含む方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、前記リドカインが約1mg/kgから約50mg/kgの間の用量で投与される方法。
【請求項34】
請求項27に記載の方法であって、前記シクロオキシゲナーゼ阻害剤が、フルルビプロフェン、メクロフェナミド、ピロキシカム、インドメタシンまたはそれらの医薬的に許容可能な塩を含む方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、前記シクロオキシゲナーゼ阻害剤がメクロフェナミドを含む方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、前記メクロフェナミドが約25mg/kgから約75mg/kgの間の用量で投与される方法。
【請求項37】
請求項27に記載の方法であって、前記細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤が、アンピシリン、ペニシリン、セファドロキシル、アモキシシリン、ピペラシリン、クロキサシリン、カルベニシリン、メタンピシリン、ジクロキサシリン、アモキシシリン、セフォキサチンまたはそれらの医薬的に許容可能な塩を含む方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、前記細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤がメタンピシリンを含む方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法であって、前記メタンピシリンが、約250mg/kgから約500mg/kgの間の用量で8時間ごとに投与される方法。
【請求項40】
請求項27に記載の方法であって、前記小分子化合物が吸入、経皮投与、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、腸管投与、または非経口投与にて投与される方法。
【請求項41】
請求項27に記載の方法であって、前記活性酸素種が、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病、ポリグルタミン伸長病、脊髄小脳の運動失調、脊髄および延髄性の筋萎縮、海綿状脳症、タウオパチー、ハンティングトン舞踏病、またはジストニアを含む神経変性疾病と関連する方法。
【請求項42】
請求項27に記載の方法であって、前記小分子化合物が、更に、活性酸素種スカベンジャーまたは少なくとも1つの神経栄養性因子を含む方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法であって、前記活性酸素種スカベンジャーが、補酵素Q、ビタミンE、ビタミンC、ピルビン酸塩、メラトニン、ナイアシンアミド、N−アセチルシステイン、グルタチオン、またはニトロンを含む方法。
【請求項44】
請求項27に記載の方法であって、前記小分子化合物が、活性酸素種に関連する神経変性および神経細胞の喪失の発症の後に哺乳類に投与される方法。
【請求項45】
請求項27に記載の方法であって、前記小分子化合物が、トルシンタンパク質の神経保護活性を調整する方法。
【請求項46】
請求項45に記載の方法であって、前記小分子化合物が、前記トルシンタンパク質の神経保護活性を間接的に調節する方法。
【請求項47】
請求項27に記載の方法であって、前記神経細胞がチロシン水酸化酵素を発現する方法。
【請求項48】
請求項47に記載の方法であって、前記神経細胞がドーパミン作動性である方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−516751(P2009−516751A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542459(P2008−542459)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/045318
【国際公開番号】WO2007/062186
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(504474220)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティー・オブ・アラバマ・フォー・アンド・オン・ビハーフ・オブ・ザ・ユニバーシティー・オブ・アラバマ (4)
【Fターム(参考)】