説明

神経及び精神障害の治療法

エルトプラジン及び/又はその関連化合物を投与することによって、ヒトにおける神経又は精神障害、及びそれらに関連づけられる症状の治療方法が提供される。一部の実施形態において、特定の症状は、該症状を改善するのに有効な量でエルトプラジン及び/又はその関連化合物を投与することによって治療される。特に有意義なのは、認知機能不全に関連づけられる症状であり、そこでは、エルトプラジンが症状及びその症状に関連づけられる障害を改善する。特に重要なのは、ADHDに関連づけられない不注意、多動性及び衝動性である。本明細書中で提供される方法は、脳卒中などのCNS損傷後の機能回復を改善するのに特に有用であり、そこでは、改善された認知機能が、リハビリ課題の学習及び記憶の収得を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知機能不全に関連づけられる(is associated with)神経又は精神障害の新規な治療方法を対象とする。本発明は、また、認知機能不全に関連づけられる神経又は精神障害を有することで特徴づけられる個体における特定の症状の改善方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
精神障害は、認知課題に関する個体の能力にしばしば影響を及ぼす複雑な現象である。認知過程は、不安及び鬱病などの情動障害を含むストレス関連性神経精神障害で鍵となる役割を演じる(Hariri et al.,2006,Trends in Cognitive Sciences.,10(4):182-191;Miles et al.2004,Journal of Adolescence,27(6):691-701;Waiker et al.1997,Journal of Anxiety Disorders.,11(1):1-16)。豊富な臨床及び動物での証拠は、この概念を強く支持し、障害された認知過程は、情動性疾病の重要な要素であることを示唆している。加えて、いくつかの障害は、軽度認知障害(MCI, mild cognitive impairment)として現れ、次いで進行して痴呆になることが多いので、MCIは重要である。MCIは、加齢性認知低下に関連づけられる認知変化の間の移行状態に相当し、ほとんどの場合、痴呆の早期の臨床的発現に相当し(Peterson,2006 J Geriatr Psychiatry Neurol.Sep;19(3):147-54)、一部の血管リスク因子が、痴呆への転換リスクを高める(Ravaglia,2006 Dement Geriatr Cogn Disord.;21(1)51-8)。潜在的に治療可能な精神障害も、運動及び協調に影響を及ぼす変性脳疾患を有する患者で一般的である。例えば、ある研究は、ハンチントン病又はその他の変性疾患のどちらかを有する患者の80%までが、また、鬱病、認知処理(例えば、思考)障害、及び人格変化に苦しむと報告した(Leroi et al.Am J Psychiatry.2002 Aug;159(8):1306-14)。
【0003】
パーキンソン病は、動作緩慢、硬直、運動機能異常、及び姿勢不安定の症状で特徴づけられる、黒質(中脳)における細胞死によって引き起こされる神経変性障害である。その他の症状には、認知混乱に関連づけられる痴呆、睡眠障害、及び錯乱が含まれる。レボドーパ及びアマンタジンは、パーキンソン病の一部の症状を治療するのに使用される2つの薬物である。これらの薬物は、満たされていない医療上の要求のままである随伴性認知機能障害よりもむしろパーキンソン病に関連づけられる運動障害を対象とする。
【0004】
アルツハイマー病は、認知及び記憶機能にとって本質的な大脳皮質、海馬及びその他の脳領域における、老人斑中のアミロイドβペプチドの細胞外沈着、細胞内神経原線維変化、コリン作用欠如、広範な神経消失及びシナプス変化の発生によって特徴づけられる、不可逆的な認知及び記憶喪失に関連づけられるCNSの進行性神経変性障害である。アルツハイマー病の顕著な臨床的特徴は、注意力、短期及び長期記憶、判断、意思決定、身体環境に対する見当識、及び言語における進行性機能障害である。それは、全ての神経変性疾患の最も一般的なものであり、血管性の原因を伴う痴呆事例の約3分の2の原因であり、その他の神経変性疾患が、残りの3分の1のほとんどを含む。現在、アルツハイマー病用の治癒薬は存在せず、4種の薬物のみが、アルツハイマー病の症状の治療に関して承認されている。副作用がより少なくより優れた効力を有する薬物が求められている。
【0005】
ハンチントン病(HD, Huntington's disease)は、IT15(ハンチンチン)遺伝子における遺伝子突然変異によって引き起こされる神経障害である。線条体及び皮質での進行性細胞死並びに付随する認知、運動及び精神機能の低下は、この疾患の特徴である。この変性は、非制御性運動、知的能力の喪失及び情動障害を引き起こす。HDの一部の早期症状が、気分動揺、抑鬱、易怒性、さらには運転する、新たな事物を学習する、事実を思い出す、又は意思決定する上での困難である。自殺は、随伴性リスクであり、自殺率は、一般集団の4倍である7.3%に達する。医師は、HDに関連づけられる情緒及び運動問題を管理するのを助けるためのいくつかの薬剤を処方するが、HDの症状を治療するのに使用されるほとんどの薬物は、疲労、不穏状態、又は過剰興奮性などの副作用を有する。加えて、これらの薬物は、随伴性認知機能障害を対象としない。
【0006】
クッシング症候群は、下垂体腺種(クッシング病として知られる)、副腎皮質過形成症又は新生物、及び異所性副腎皮質刺激ホルモン(ACTH, adrenocorticotropic hormone)産生を含む各種原因に由来する高レベルの血中コルチゾールによって引き起こされる障害である。患者は、多幸症から精神病の範囲にわたる各種の心理学的障害を経験する。抑鬱及び不安も一般的である。患者は、特に、選択的注意力、及び視覚/言語、視空間の学習及び記憶の処理を含む、認知のいくつかの領域における障害を経験する。
【0007】
レビー小体病は、2番目に最も一般的な種類の痴呆であると考えられる。それは、アルツハイマー病で認められるものに類似した認知に関する問題、及びパーキンソン病でのそれに似た運動に関する問題を引き起こす。アルツハイマー病と同様に、レビー小体病は、現在、不治性であり、時間と共に悪化する。効果的な治療法は、欠けている。
【0008】
多発性硬化症(MS, multiple sclerosis)は、運動及び感覚機能の進行性低下によって特徴づけられ、結果として麻痺及び死亡に繋がる衰弱性の神経疾患である。神経機能障害の主な原因は、炎症性自己免疫応答によって引き起こされる、中枢神経系(CNS, central nervous system)における神経の脱髄である。したがって、MSに襲われた人々では、プラーク又は病変と呼ばれる傷害の斑点が、CNS内での内部的な、及びCNSと身体の残りを満たす神経との間での双方でのコミュニケーションシグナルを伝達することに責任がある神経線維から構成されるCNS「白質」の外観上ランダムな領域中に現れる。病変部位で、神経絶縁材料であるミエリンが失われる。MSのための現在の療法は、脱髄の原因である炎症応答を低減することに主として向けられる。認知欠陥は、記憶、注意力及び論理化の領域に影響を及ぼす。
【0009】
脳卒中(虚血性脳卒中、脳卒中症候群及び脳血管発作とも呼ばれる)は、出血、塞栓形成又は血栓症に由来する梗塞などの脳の急性血管病変、或いは破裂性動脈瘤によって引き起こされる突然の襲撃を伴う状態である。それ自体、それは、効果的な治療が緊急に必要とされる広範な範囲の神経欠陥に繋がる異種性障害である。梗塞又は出血の病巣を反映する典型的な症状には、半身麻痺、回転性眩暈、痺れ、失語及び構音障害が含まれる。脳卒中の危機的急性期(数時間)及び亜急性期(数日)を生き残るほとんどの患者は、彼らがリハビリ療法を受ける専門センターに廻される。脳卒中患者は、時間と共に、失われた神経機能の一部のささやかな程度の自発的な改善/回復を示すことが多い、それにもかかわらず、この代償性応答は小さく、永続的能力喪失及びハンディキャップに繋がる重大な感覚/運動障害を残し、患者の生活の質を相当に妨げる。特に大脳皮質中での脳梗塞後に観察される自発的機能回復は、各種の修復機構(すなわち、軸索新芽形成、血管形成)、並びに損傷部位に隣接する及びそれから遠く離れた現存する神経様回路網の解剖学的再構築(すなわち、可塑性)の活性化に帰せられている(Nudo 2006;Nudo 2007)。永続的な神経傷害は、一般に、結果であり、その全てが機能回復を遅らせる、短期記憶、注意力、視覚及び言語記憶についての問題、発言及び理解(失語症)、読み、書きの問題などの各種の認知欠陥に関連づけられる。
【0010】
耽溺障害は、耐性、身体的又は心理学的依存及び最終的には薬剤又は行動を捜し求めるような行動変化の発生をもたらす可能性のある、薬剤の長期使用又は活動への関与によって特徴づけられる。耽溺性の薬剤及び活動には、喫煙、薬物乱用、コカイン依存、賭博、及びその他の衝動制御障害が含まれる。症状を治療し、耽溺性の薬剤又は行動からの離脱を容易にするためのより優れた治療選択肢が必要とされる。判断力低下及び衝動性などの心理学的因子が、これらの障害の核心にある。
【0011】
広汎性発達障害(PDD, pervasive developmental disorders)は、社会性及びコミュニケーションを含む多様な基礎的機能の発達における遅延によって特徴づけられる5つの障害からなる群を指す。最も一般的に知られているPDDは自閉症であり、これ以外のものが、レット症候群、小児期崩壊性障害、アスペルガー症候群、及び特定不能の広汎性発達障害(又はPDD−NOS, pervasive developmental disorder not otherwise specified)である。症状には、言語を使用及び理解する上での困難;人々、対象及び出来事と関わる上での困難;玩具及びその他の対象物との異常な遊戯;定型的又は慣れ親しんだ環境の変化に関係する困難;及び反復性身体運動又は行動パターンが含まれる。それ自体、これらの症状は、遅延した認知発達を意味する。PDDのための既知の治療剤は存在せず、薬物は、いくつかの行動上の問題に対処するために使用される。
【0012】
特殊なPDDには、社会的相互行為及びコミュニケーションを損ない、全て3歳未満で始まる限定行動及び反復行動を引き起こす脳発達障害である自閉症スペクトラム障害(ASD, autism spectrum disorders)が含まれる。症状には、社会的又は情緒的相互性の不足、言語又は特異的言語の常同的及び反復的使用、並びに対象物の部分への頑固な関心が含まれる。ASDを有する人は、抗欝薬、興奮薬、及び抗精神薬などの薬剤に対して非定型的に応答する可能性があるが、該薬剤は有害効果を有することがあり、既知の薬剤は、自閉症の核心症状である社会及びコミュニケーション障害を軽減しない。認知障害は、深刻であり、且つこれらの障害のもう1つの特徴であり、意味を把握し、考えを組織し、且つ行動を計画し、関係を引き寄せ、且つ困難な刺激に向き合うための基本的能力の欠如が、一貫した症状である。
【0013】
脆弱X症候群は、X染色体上のFMR1遺伝子中の突然変異によって引き起こされる遺伝子障害である。症状には、常同性運動(例えば、手の羽ばたき)及び非定型の社会性発達、特に内気及び限られたアイコンタクトが含まれる。該症候群に対する現用の治療剤は存在しないが、この基礎にある原因のさらなる理解が、新たな治療法に繋がる希望は存在する。
【0014】
不安障害は、重症の障害性身体症状、及び認知実行機能の欠陥が付随する、懸念及び恐怖の感情によって特徴づけられる。不安の症状には、呼吸増加、頻拍、発汗、及び振戦が含まれる。一般に、ベンゾジアゼピン類が、不安障害の治療で有効であるが、これらの化合物の長期使用は、依存性に関する随伴リスクのため、制約されることがある。
【0015】
プラダー・ウィリー症候群(PWS, Prader-Willi syndrome)は、過食及び食物への没頭、並びに低身長及び学習困難によって特徴づけられる稀な遺伝子障害である。症状には、言葉の遅れ、成長障害、重要段階の遅れ/知的遅れ、及び過食が含まれる。プラダー・ウィリー症候群には治療薬がない。しかし、状態の症状を減らすために、いくつかの治療が適宜行われている。成長ホルモン代替療法は、体組成を改善し、身長を増大させる。
【0016】
統合失調症は、人口有病率がほぼ1%である一般的で高度障害性精神障害である。統合失調症の発現は、3つの主要領域:1)妄想、幻覚、及び行動混乱などの「陽性」症状;2)引きこもり、意欲欠如、及び感情表現低下を含む「陰性」症状;並びに3)認知機能不全;に分類される。認知欠陥(すなわち、認知症状)には、注意力、エピソード及び作業の記憶、情報処理速度、及び実行機能における重度の障害が含まれる。Tiihonenによって報告された臨床試験では(Lancet 1993 Jan 30;341(8840):307)、エルトプラジンが統合失調症に関連づけられる攻撃性を治療するためのなんらかの効力を有するかどうかを評価するという限られた目的で、統合失調症の群にエルトプラジンを投与した。
【0017】
双極性障害は、臨床的には躁病と呼ばれる異常に高められた気分の1又は複数のエピソードの存在によって定義される気分障害の範疇に入る。躁病エピソードを経験する個体は、また、鬱病のエピソード又は症状、或いは躁病及び鬱病エピソードの双方の特徴が存在する混合型エピソードを一般に経験する。躁病エピソード中に、患者は、乏しい衝動制御、運動応進、競争思考、優越及び無敵の感情を経験することがある。認知機能障害は、乏しい実行機能、並びに乏しいエピソード、情緒及び言語記憶に関係する。リチウムが、双極性障害に処方される主要薬物の1つであるが、深刻な毒性副作用を伴う狭い治療指数を有する。
【0018】
鬱病性障害は、人口の15%超を襲う。鬱病は、悲しみ、絶望及び落胆の感情で特徴づけられる憂鬱な気分の精神状態である。鬱病には、気分動揺性障害から大鬱病性障害までの正常な「陰鬱」感情が含まれる。気分動揺性障害は、憂鬱な感情(悲しい、陰鬱な、意気消沈した)、通常活動での関心又は喜びの喪失、並びに次のこと:食欲及び睡眠パターンの変化、気力喪失、低い自尊心、乏しい集中力又は意思決定スキル、及び絶望感の中の少なくとも一部によって特徴づけられる気分障害である。気分動揺性障害において、症状は、2年を超えて持続するが、大鬱病性障害に関する判定基準に合致するに十分なほど重症ではない。大鬱病性障害は、大鬱病性エピソード;次の症状:食欲、体重又は睡眠パターンの変化、精神運動性激越又は精神運動遅滞、思考、集中若しくは決定力の低下、気力喪失及び疲労、無価値感、自責又は罪責の感情、頻繁な死又は自殺の考え、自殺を犯す計画又は試みの中の一部の組合せを伴うほとんど全ての活動における、毎日の抑鬱気分又は関心若しくは楽しみの喪失の期間によって特徴づけられる(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,4thed.,American Psychiatric Association,Washington D.C.,1994)。
【0019】
血管性痴呆は、全て脳の血管性病変をもたらす種々の機構によって引き起こされる一群の症候群を指す。これらの中で最も一般的なものは、進行性又は漸進的に悪化する痴呆の全ての症例の10〜20%を占める多発脳梗塞性痴呆である。症状には、記憶に関する問題、複雑な問題の組織化及び解決に関する困難、遅い思考、注意散漫又は「熱中欠如」、記憶から単語を思い出す上での困難、指示に従う困難、錯乱、並びに情緒不安定が含まれる。行動及び情緒上の症状は、この患者群において特に重要であり、特別の考察に値する。これらの問題が発生すると、彼らは、通常的な精神薬理学的治療に対して抵抗性である傾向があり、多くの場合、入院及び永続的ケアに配置することに繋がる。有用である可能性のある薬剤には、抗欝薬、神経遮断薬及び気分安定剤が含まれる。
【0020】
軽度認知機能障害(MCI)は、ある人が、他人にとって注目に値し且つ試験で明らかになるのに十分な重症であるが、日々の生活を妨げるほどには重症でない、記憶、言語、又は他の精神機能の欠陥を有する状態である。現在、FDAに承認されたMCI用治療薬は存在しない。
【0021】
痴呆は、通常の加齢から予想できるものを超える、脳の傷害又は疾患による進行性認知機能低下を記述する。痴呆において、冒される認知の領域は、記憶、注意力、言語、及び問題解決であり得る。より高次の精神機能が、状態の経過中及び後期段階で最初に冒され、冒された人は、時間、場所、人に関する見当識が失われることがある。痴呆は、脳の何の部分が冒されるかに応じて、皮質又は皮質下のいずれかとして分類できる。痴呆の例には、精神緩慢、記憶に関する問題、及び乏しい集中力を伴う認知機能障害で特徴づけられるHIV関連痴呆、並びに話し言葉及び書き言葉の双方での失語をもたらす能力低下、計画能力の低下、気分動揺、無感情及び衝動性行動及び乏しい判断力などの人格変化で特徴づけられるピック病が含まれる。この疾患を有する患者を治療するための改善された薬剤が必要である。
【0022】
譫妄は、注意集中、知覚及び認知の急性の及び比較的突然の低下である。それは、一般に、痴呆を有する患者で発生する。譫妄は、多因子性であることが多く、治療は、基礎にある機能不全の原因を治療することによって達成される。
【0023】
閉経に関連する記憶及び認知能力機能不全、又は初期発達中での毒性若しくは耽溺性化合物への暴露による認知欠陥などの状態に関連づけられる、治療薬がほとんど存在しないその他の認知機能障害が存在する。
【0024】
エルトプラジンを含む各種ピペラジン化合物に関する米国特許第5424313号は、該特許中で開示される化合物が、中枢神経系障害の結果である傷害又は疾患、例えば、精神病、攻撃性、恐怖、抑鬱などの治療に適していると述べている。一部の化合物は、中枢性鎮痛活性を有すると述べている。ヒトにおける攻撃性のための治療薬としてのエルトプラジンの開発は、ヒトでの臨床試験からの不満足な結果の後に中止された(Verhoeven et al.,1992,The Lancet,340:1037-1038;Tiihonen,1993,The Lancet,341:307;Kohen,1993,The Lancet,341:628-629;Moriarty et al.,1994,Human Psychopharm.,9:253-258;DeKoning et al.,1994,Int.Clin.Psychopharm,9:187-194;Oliver,1994,Prog.Drug Res.42:167-308参照)。より最近に、エルトプラジンは、ADHD及びADHAに関連づけられる症状を治療するのに有用であることが見出された(参照によりその全体で本明細書に援用される米国特許出願公開第2003/0050308号を参照されたい)。
【0025】
エルトプラジンの結合プロフィールは、[H]エルトプラジンを用いて得られた直接結合データと一緒になって、該化合物が選択的5−HTリガンド(5−HT以外の全ての受容体に関して選択的)であることを示している。種々の5−HT受容体サブタイプに対するエルトプラジンの結合親和性は、5−HT1D受容体に対する比較的低い親和性を除けばセロトニンに密接に類似しており、5−HT1A、5−HT1Bに対しておおよそ等効力の親和性であり、5−HT2C受容体に対して幾分より低い親和性を有する(Schipper,J.et al.、同上)。エルトプラジンは、混合型5−HT1A/1B受容体アゴニストとして作用する。エルトプラジンは、ドーパミン受容体に対して実際的な親和性を有さない(すなわち、K>1μM、Schipper et al.、同上)。5−HT受容体の中で、5−HT1B受容体は、軸索終末上の自己受容体として配置され、神経伝達物質の放出を阻害する原因であり、一方、それは、また、軸索、及びそれらの活性を阻害する非セロトニン作動性ニューロンの終末上のヘテロ受容体としてシナプス後に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第5424313号
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0050308号明細書
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Hariri et al.,2006,Trends in Cognitive Sciences.,10(4):182-191
【非特許文献2】Miles et al.2004,Journal of Adolescence,27(6):691-701;
【非特許文献3】Waiker et al.1997,Journal of Anxiety Disorders.,11(1):1-16
【非特許文献4】Peterson,2006 J Geriatr Psychiatry Neurol.Sep;19(3):147-54
【非特許文献5】Ravaglia,2006 Dement Geriatr Cogn Disord.;21(1)51-8
【非特許文献6】Leroi et al.Am J Psychiatry.2002 Aug;159(8):1306-14
【非特許文献7】Lancet 1993 Jan 30;341(8840):307
【非特許文献8】Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,4th ed.,American Psychiatric Association,Washington D.C.,1994
【非特許文献9】Verhoeven et al.,1992,The Lancet,340:1037-1038
【非特許文献10】Tiihonen,1993,The Lancet,341:307
【非特許文献11】Kohen,1993,The Lancet,341:628-629
【非特許文献12】Moriarty et al.,1994,Human Psychopharm.,9:253-258
【非特許文献13】;DeKoning et al.,1994,Int.Clin.Psychopharm,9:187-194;
【非特許文献14】Oliver,1994,Prog.Drug Res.42:167-308
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
したがって、必要とされるものは、種々の神経及び精神障害に関連づけられる認知機能障害並びにこれらの障害を有すると特徴づけられる個体における症状を治療するための新規な医薬化合物である。神経及び精神障害並びにこれらの障害を有すると特徴づけられる個体における症状を治療するための新規な製剤及び方法も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、神経又は精神障害及びその症状、特に多動性、不注意、及び/又は衝動性の1又は複数、並びにその他の障害で現れる状態に関連づけられる認知機能障害を治療するための、塩酸エルトプラジン及び/又はその関連化合物の使用に関する。認知課題の機能障害をもたらす多数の神経及び精神障害が存在し、エルトプラジン及び/又はその関連化合物を用いる治療は、これらの障害の症状及び障害自体を改善する可能性がある。これらの神経又は精神障害には、限定はされないが、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、クッシング病、レビー小体病、多発性硬化症、脳卒中、耽溺障害(例えば、喫煙、薬物乱用、コカイン依存、賭博及びその他の衝動制御効果(impulse control effects))、広汎性発達障害、自閉症、脆弱X症候群、不安障害(例えば、急性及び慢性パニック、外傷後ストレス障害、全般性不安障害)、プラダー・ウィリー症候群、攻撃性に関連づけられない統合失調症、双極性障害、鬱病、血管性痴呆、軽度認知機能障害、痴呆、健忘障害、譫妄、及びその他の認知機能障害が含まれる。
【0030】
本明細書中で開示される発明は、いくつかの障害の神経学的要素に関連づけられる特定の症状を予防及び/又は治療するのに特に効果的である。具体的には、一実施形態において、エルトプラジンは、不注意、多動性、又は衝動性、或いはこれらの組合せのいずれかによる、機能障害を有する個体における認知機能を改善するのに特に有用である。
【0031】
不注意及び/又は多動性及び/又は衝動性によって特徴づけられるがADHDではない認知機能不全に関連づけられる神経及び精神障害を治療するのに有用な方法及び組成物は、例えば、次のものを含む:
i)パーキンソン病
ii)アルツハイマー病
iii)ハンチントン病
iv)クッシング病
v)レビー小体病
vi)多発性硬化症
vii)脳卒中
viii)耽溺障害(例えば、喫煙、薬物乱用、コカイン依存、賭博及びその他の衝動制御作用)
ix)広汎性発達障害
x)自閉症
xi)脆弱X症候群
xii)不安障害(例えば、急性及び慢性パニック、外傷後ストレス障害、全般性不安障害)
xiii)プラダー・ウィリー症候群
xiv)非攻撃性統合失調症
xv)双極性障害
xvi)鬱病
xvii)血管性痴呆
xiii)軽度認知機能障害
xix)痴呆
xx)譫妄
xxi)認知機能障害に関連づけられるその他の状態。
【0032】
上述のものそれぞれの治療は、本発明の明確な実施形態に相当することが理解される。本発明は、また、前記状態又はそれぞれの根底にある症状、及びこれらの状態に関連づけられる不注意、多動性又は衝動性の治療を提供する。本発明は、さらに、神経又は精神障害の認知症状を治療するための方法を提供し、該方法は、エルトプラジン及び/又はその関連化合物を投与することを含む。本発明中で使用するための化合物は、他の利用可能な治療薬に比較して、神経又は精神障害の治療で効果的であり、低減された副作用を示し、且つ乱用の可能性を有するとは予想されないと思われる。
【0033】
本発明による神経又は精神障害の治療は、これらの状態に関連づけられる診断基準のいずれか1又は複数を減らすのに使用できる。本発明の好ましい実施形態において、エルトプラジンは、障害された認知機能に関連づけられる症状の治療を提供するために、ADHD以外の神経又は精神障害を有すると特徴づけられる個体へ投与される。一実施形態において、このような症状は、不注意及び/又は多動性及び/又は衝動性である。治療は、このような認知症状の改善を判定するための当技術分野で周知である臨床的評価法及び試験を使用して評価されることが多い。本発明の1つの目的は、個体に治療上有効な量の次式の化合物を投与することによって神経又は精神障害を治療する方法を提供することであり、
【0034】
【化1】

【0035】
式中、
は、水素、アルキル、シクロアルキル、エステル化されていてもよいヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、置換されていてもよいフェニル又はヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキル−又はジアルキル−アミノカルボニル、ニトロ、アミノ、アルキル−又はジアルキル−アミノ、アシルアミノ、アルキルスルホニルアミノ、アリールアミノ、シアノ、ハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、エステル化されていてもよいヒドロキシル、アルキル−又はアミノ−スルホニル又は−スルフィニル、アルキル−又はジアルキル−アミノスルホニル又は−スルフィニルであり、pは、数値0〜3を有し、
及びR'は、独立に、水素又はアルキル基であり、n及びqは、数値0又は1を有することができ、
は、Rと同じ意味を有するか、或いはアルキリデン、オキソ又はチオキソ基でよく、mは、数値0〜2を有し、
Aは、フェニル基の2つの炭素原子と一緒になって、環中に基O、S及びNからの1〜3個のヘテロ原子(但し、酸素及び硫黄原子数の合計は、多くて2個である)を含む5〜7個の原子を有する完全に又は部分的に不飽和でよい環状基を形成し、
ここで、
化合物は、ラセミ化合物又は単一のジアステレオマー若しくはエナンチオマー、
その薬学的に許容される酸付加塩でよい。
【0036】
本発明のもう1つの目的は、個体に治療上有効な量の次式の化合物を投与することによって神経又は精神障害を治療する方法を提供することであり:
【0037】
【化2】

【0038】
式中、
は、水素、アルキル、シクロアルキル、エステル化されていてもよいヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、置換されていてもよいフェニル又はヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキル−又はジアルキル−アミノカルボニル、ニトロ、アミノ、アルキル−又はジアルキル−アミノ、アシルアミノ、アルキルスルホニルアミノ、アリールアミノ、シアノ、ハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、エステル化されていてもよいヒドロキシル、アルキル−又はアミノ−スルホニル又は−スルフィニル、アルキル−又はジアルキル−アミノスルホニル又は−スルフィニルであり、pは、数値0〜3を有し、
及びR'は、独立に、水素又はアルキル基であり、n及びqは、数値0又は1を有し、
は、Rと同じ意味を有するか、或いはアルキリデン、オキソ又はチオキソ基でよく、mは、数値0〜2を有することができ、
Aは、フェニル基の2つの炭素原子と一緒になって、環中に基O、S及びNからの1〜3個のヘテロ原子(但し、酸素及び硫黄原子数の合計は、多くて2個である)を含む6個の原子を有する完全に又は部分的に不飽和でよい環状基を形成し、
ここで、
化合物は、ラセミ化合物又は単一のジアステレオマー若しくはエナンチオマー、
その薬学的に許容される酸付加塩でよい。
【0039】
したがって、本発明の目的は、ADHDを有さない、認知機能障害に関連づけられる神経及び精神障害の個体を治療するための方法及び組成物を提供することである。加えて、本発明は、ADHD以外の神経及び精神障害を有すると特徴づけられるような個体における認知機能を改善するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】エルトプラジン(0.1mg/kg、IP)が、応答ピークを鋭くし、幅を有意に縮小することを示す図である。長期投与後に効果の損失がない。
【図2】スコポラミン(0.5mg/kg、IP)の投与が、ベースラインに比較して、放射アーム迷路中への反復進入の減少をもたらし、この効果は、ANOVAで明らかにされるように、エルトプラジン(0.3mg/kg、PO)の投与によって減弱されることを示す図である。
【図3】訓練の1時間前に投与されたエルトプラジン(0.3、1、3及び10mg/kg)が、訓練の24時間後に、媒体で治療された対照に比較して、ラットの新規対象物認識(NOR, novel object recognition)記憶を有意に改善したことを示す図である。3mg/kgの陽性対照ガランタミンも、生理食塩水に比較してNOR記憶を有意に高めた。
【図4】用量群当たり6匹のマウスを、媒体、又は3mg/kg、10mg/kg及び30mg/kgのエルトプラジンで治療した図である。エルトプラジンは、C57マウスの前頭前皮質(PFC, prefrontal cortex)においてドーパミン放出の用量に関連した増加を示した。
【図5】用量群当たり6匹のマウスを、媒体、又は3mg/kg、10mg/kg及び30mg/kgのエルトプラジンで治療した図である。エルトプラジンは、C57マウスのPFCにおいてドーパミン代謝産物DOPAC放出の用量に関連した増加を示した。
【図6】用量群当たり6匹のマウスを、媒体、又は3mg/kg、10mg/kg及び30mg/kgのエルトプラジンで治療した図である。エルトプラジンは、C57マウスのPFCにおいてノルエピネフリン代謝産物HVA放出の用量に関連した増加を示した。
【図7】用量群当たり6匹のマウスを、媒体、又は3mg/kg、10mg/kg及び30mg/kgのエルトプラジンで治療した図である。エルトプラジンは、C57マウスのPFCにおいてノルエピネフリン放出の用量に関連した増加を示した。
【図8】用量群当たり6匹のマウスを、媒体、又は3mg/kg、10mg/kg及び30mg/kgのエルトプラジンで治療した図である。エルトプラジンは、C57マウスのPFCにおいてセロトニン放出の用量に関連した増加を示した。
【図9】用量群当たり6匹のマウスを、媒体、又は3mg/kg、10mg/kg及び30mg/kgのエルトプラジンで治療した図である。エルトプラジンは、C57マウスのPFCにおいてセロトニン代謝産物5HIAA放出の用量に関連した増加を示した。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、個体に治療上有効な量の下式に記載の化合物を投与することによって、個体におけるADHD以外の認知機能障害を治療する方法を提供し:
【0042】
【化3】

【0043】
式中、
は、水素、アルキル、シクロアルキル、エステル化されていてもよいヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、置換されていてもよいフェニル又はヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキル−又はジアルキル−アミノカルボニル、ニトロ、アミノ、アルキル−又はジアルキル−アミノ、アシルアミノ、アルキルスルホニルアミノ、アリールアミノ、シアノ、ハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、エステル化されていてもよいヒドロキシル、アルキル−又はアミノ−スルホニル又は−スルフィニル、アルキル−又はジアルキル−アミノスルホニル又は−スルフィニルであり、pは、数値0〜3を有し、
及びR'は、独立に、水素又はアルキル基であり、n及びqは、数値0又は1を有することができ、
は、Rと同じ意味を有するか、或いはアルキリデン、オキソ又はチオキソ基でよく、mは、数値0〜2を有し、
Aは、フェニル基の2つの炭素原子と一緒になって、環中に基O、S及びNからの1〜3個のヘテロ原子(但し、酸素及び硫黄原子数の合計は、多くて2個である)を含む5〜7個の原子を有する完全に又は部分的に不飽和でよい環状基を形成し、
ここで、
化合物は、ラセミ化合物又は単一のジアステレオマー若しくはエナンチオマー、
その薬学的に許容される酸付加塩でよい。
【0044】
別の実施形態において、本発明は、個体に治療上有効な量の次式の化合物を投与することによって、個体におけるADHD以外の認知機能障害を治療する方法を提供し:
【0045】
【化4】

【0046】
式中、
は、水素、アルキル、シクロアルキル、エステル化されていてもよいヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、置換されていてもよいフェニル又はヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキル−又はジアルキル−アミノカルボニル、ニトロ、アミノ、アルキル−又はジアルキル−アミノ、アシルアミノ、アルキルスルホニルアミノ、アリールアミノ、シアノ、ハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、エステル化されていてもよいヒドロキシル、アルキル−又はアミノ−スルホニル又は−スルフィニル、アルキル−又はジアルキル−アミノスルホニル又は−スルフィニルであり、pは、数値0〜3を有し、
及びR'は、独立に、水素又はアルキル基であり、n及びqは、数値0又は1を有することができ、
は、Rと同じ意味を有するか、或いはアルキリデン、オキソ又はチオキソ基でよく、mは、数値0〜2を有し、
Aは、フェニル基の2つの炭素原子と一緒になって、環中に基O、S及びNからの1〜3個のヘテロ原子(但し、酸素及び硫黄原子数の合計は、多くて2個である)を含む6個の原子を有する完全に又は部分的に不飽和でよい環状基を形成し、
ここで、
化合物は、ラセミ化合物又は単一のジアステレオマー若しくはエナンチオマー、
その薬学的に許容される酸付加塩でよい。
【0047】
好ましい実施形態において、化合物はエルトプラジンである。本明細書に記載の障害及びそれに関連づけられる症状を治療するためのエルトプラジンの有用性は、エルトプラジンが、ADHDに関連づけられるいくつかの症状を他のものに比べてより大きな程度まで選択的に低減するという本明細書中で開示される発見に基づく。具体的には、ヒトでの臨床研究において、エルトプラジンは、ADHDを有する患者において、衝動性に比較して多動性及び不注意を治療するより大きな活性を有した。この選択的応答は、エルトプラジン及び/又は類似の薬理学的プロフィールを有する関連化合物が、類似の症状を有するその他の認知障害を治療するのに有用であることを示唆している。
【0048】
一実施形態において、本発明は、不注意及び/又は多動性及び/又は衝動性に関連づけられる認知機能障害の治療方法を提供する。本明細書中で使用される場合、用語「障害された認知機能」は、当業者に周知の評価方法によって判定されるような、思考、論理化、及び判断の機能障害を指す。「認知機能障害」には、限定はされないが、記憶機能、問題解決、見当識及び抽象化の1又は複数における後天性欠陥が含まれる。「認知機能試験」は、単純反応時間、選択反応時間及びディジット覚醒度(digit vigilance)などの注意力に関連する課題の部類;計算作業記憶及び空間作業記憶などの作業記憶の部類;単語認識、画像認識、即時単語想起、及び遅延単語想起などの二次エピソード認識記憶試験の部類;並びに視覚追跡などのその他の課題に分類できる。認知機能障害を測定するための標準的試験のその他の例としては、限定はされないが、ミニ精神状態検査(Mini Mental State Examination)、総合的悪化尺度及び老人性鬱病尺度(Global Deterioration Scale and Geriatric Scale)、Randt記憶試験(Randt Memory Test)、及びアルツハイマー病評価尺度(Alzheimer's Disease Assessment Scale)を挙げることができる。用語「障害」は、そうでないことを言明しない限り、用語「状態」及び「疾患」と同じ意味を有し、説明及びクレーム中で互換的に使用される。
【0049】
さらなる実施形態において、本発明は、認知機能不全又は機能障害に関連づけられる、ADHD以外の神経又は精神障害の症状の治療又は減弱のための方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、共存性ADHDを伴わない神経又は精神障害の症状の治療又は減弱のための方法を提供する。一部のこのような非限定的実施形態において、疾患又は障害は、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、クッシング病、レビー小体病、多発性硬化症、脳卒中、耽溺障害(例えば、喫煙、薬物乱用、コカイン依存、賭博及びその他の衝動制御作用)、自閉症、不安障害(例えば、急性及び慢性パニック、外傷後ストレス障害、全般性不安障害)、統合失調症、双極性障害、鬱病、血管性痴呆、軽度認知機能障害、痴呆、譫妄、健忘障害、及び別に特定されない認知障害を含むその他の認知機能障害(例えば、軽度神経性認知障害及び脳震盪障害)であるが、認知機能不全又は機能障害に関連づけられるその他の神経又は精神障害も、本明細書に記載される方法に関して想定される。
【0050】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、パーキンソン病を治療するのに使用される。パーキンソン病は、ドーパミン作動性黒質中の細胞の死滅によって引き起こされる神経変性障害である。一部の実施形態において、本発明は、パーキンソン病の1又は複数の症状を治療する方法を提供する。このような症状の例には、限定はされないが、言語変化、表情喪失、認知機能不全、気分動揺、情緒不安定、多幸症、双極性症候群、不安、失語症、不全失語症、又は撹乱、痴呆若しくは錯乱、鬱病、恐怖、不安、記憶困難、思考減速、性的機能不全、疲労、痛み、及び気力喪失が含まれる。
【0051】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、アルツハイマー病を治療するのに使用される。アルツハイマー病は、老人斑中でのアミロイドβペプチドの細胞外沈着、及び広範な神経喪失によって特徴づけられる不可逆性の認知及び記憶喪失に関連づけられる、CNSの進行性神経変性障害である。別の実施形態において、本発明は、アルツハイマー病の1又は複数の症状を治療する方法を提供する。症状には、限定はされないが、記憶、注意力、判断、意思決定、身体環境に対する見当識、言語、速度依存性活動、抽象的論理化、視空間能力、実行機能における機能障害、並びに行動障害、無関心及び受動性、無感動、不適切な衣装、乏しい自己ケア、激越、暴力爆発、攻撃性、鬱病、不安、幻覚、妄想、人格変化及び気分変動、並びに痴呆が含まれる。一実施形態において、認知症状、注意力及び作業記憶の治療が提供され、同時に、攻撃性を低下し、情動を改善する可能性も存在する。
【0052】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、ハンチントン病(HD)を治療するのに使用される。ハンチントン病は、IT15遺伝子中での遺伝子突然変異によって引き起こされる神経障害である。線条体及び皮質での進行性細胞死、並びに付随する認知、運動、及び精神機能の低下が、疾患の特徴である。一部の実施形態において、本発明は、ハンチントン病の1又は複数の症状の治療方法を提供する。HDの一部の早期症状は、気分動揺、抑鬱、過敏性、又は運転する、新たな事物を学習する、事実を思い出す、若しくは意思決定する上での困難性である。
【0053】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、クッシング症候群を治療するのに使用される。クッシング症候群は、下垂体腺種(クッシング病として知られる)、副腎皮質過形成症又は新生物、及び異所性副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生を含む各種原因に由来する高レベルの血中コルチゾールによって引き起こされる障害である。一部の実施形態において、本発明は、クッシング症候群の1又は複数の症状の治療方法を提供する。症状には、多幸感から精神病までの範囲に及ぶ各種の心理学的障害が含まれる。抑鬱及び不安も一般的である。
【0054】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、レビー小体病を治療するのに使用される。レビー小体病は、アルツハイマー病で認められるものに類似した認知問題を引き起こす。アルツハイマー病と同様、レビー小体病は、現在、不治であり、時間と共に悪化する。別の実施形態において、本発明は、レビー小体病の1又は複数の症状を治療する方法を提供する。症状には、痴呆、認知問題(思考、記憶、言語、様々なレベルの覚醒度及び注意力、視覚的幻覚、及び妄想を伴う問題)が含まれる。
【0055】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、多発性硬化症を治療するのに使用される。多発性硬化症は、免疫系が中枢神経系を攻撃し、神経線維の脱髄をもたらす、自己免疫状態である。それは、多くの身体的及び精神的症状を引き起こし、身体及び認知上の能力障害まで進行することが多い。別の実施形態において、本発明は、多発性硬化症の1又は複数の症状を治療する方法を提供する。症状には、抑鬱、認知機能不全、痴呆、気分動揺、情緒不安定、多幸感、双極性症候群、不安、失語症、不全失語、及び疲労が含まれる。
【0056】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、脳卒中を治療するのに使用される。脳卒中は、脳に血液を供給する血管の障害による、急速に進行する脳機能低下である。これは、血栓症又は塞栓症によって引き起こされる虚血によるか、或いは出血による場合がある。別の実施形態において、本発明は、脳卒中の1又は複数の症状を治療する方法を提供する。脳卒中の症状には、半身麻痺、回転性眩暈、痺れ、失語、錯乱、抑鬱、疲労、感覚運動欠陥、構語障害、不全失語、顔面下垂、平衡又は協調の低下、歩行不能、感覚変化、及び視力問題が含まれる。非伝統的症状には、例えば、頭痛、失見当識、及び意識変化が含まれる。脳卒中のリハビリは、能力障害性脳卒中を患う患者が、日常生活の技能を再獲得及び再学習することによってできる限り通常の生活に戻るのを助ける治療を受ける過程である。脳卒中後の機能回復には、良好な視覚運動機能及び協調性が要求され、注意力及び作業記憶などの実行機能が必要とされる。別の実施形態において、本発明は、認知機能を改善することによって脳卒中後の機能回復を促進する方法を提供する。
【0057】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、耽溺障害を治療するのに使用される。耽溺障害は、薬剤の長期又は習慣的使用、或いは耐性、身体的又は心理学的依存の発生、及び最終的には薬剤又は行動を捜し求める行動変化をもたらす可能性のある行動への参加によって特徴づけられる。一部の実施形態において、本発明は、耽溺障害の1又は複数の症状を治療する方法を提供する。耽溺障害の症状には、身体的又は情緒的依存が含まれる。
【0058】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、広汎性発達障害(PDD)を治療するのに使用される。PDDは、社会性及びコミュニケーションを含む多様な基礎的機能の発達遅延によって特徴づけられる5つの障害からなる群を指す。最も一般的に知られているPDDは自閉症であり、これ以外のものが、レット症候群、小児期崩壊性障害、アスペルガー症候群、及び特定不能の広汎性発達障害(又はPDD−NOS)である。一部の実施形態において、本発明は、PDDの1又は複数の症状を治療する方法を提供する。症状には、言語を使用及び理解する上での困難;人々、対象物及び出来事と関わる上での困難;玩具及びその他の対象物との異常な遊戯;定型的又は慣れ親しんだ環境の変化に伴う困難;及び反復性身体運動又は行動パターンが含まれる。
【0059】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、自閉症及び自閉症スペクトラム障害を治療するのに使用される。自閉症及び自閉症スペクトラム障害は、社会的相互交流及びコミュニケーションを損ない、全て3歳未満に始まる限定的及び反復的行動を引き起こす脳発達障害である。一部の実施形態において、本発明は、自閉症及び自閉症スペクトラム障害の症状の1又は複数を治療する方法を提供する。自閉症の症状には、攻撃性、激越、遅延した又は異常な発言パターン、高い調子の又は平坦なイントネーション、用語の欠如、表現方法としての声調及びボディーランゲージを理解する上での困難、アイコンタクトの欠如、別の観点を受け取れないこと、光、音、群集及びその他の外部刺激に対する過敏性又は感受性低下、並びに精巧な又は全体的運動の困難が含まれる。
【0060】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、不安障害脆弱X症候群を治療するのに使用される。脆弱X症候群は、X染色体上のFMR1遺伝子の突然変異によって引き起こされる遺伝子障害である。一部の実施形態において、本発明は、不安障害の1又は複数の症状を改善する方法を提供する。症状には、常同性運動(例えば、手の羽ばたき)及び非定型の社会性発達、特に内気及び限られたアイコンタクトが含まれる。該症候群に対する現用の治療剤は存在しないが、この基礎にある原因のさらなる理解が、新たな治療法に繋がる希望は存在する。
【0061】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、不安障害を治療するのに使用される。不安障害は、重症で能力障害性である身体症状が付随する、懸念及び恐怖の感情によって特徴づけられる。一部の実施形態において、本発明は、不安障害の1又は複数の症状を改善する方法を提供する。このような症状の例には、限定はされないが、不安障害の範疇を反映する可能性のある身体症状が付随する、懸念及び恐怖の感情が含まれる。例えば、全般性不安障害(GAD, generalized anxiety disorder)の症状には、例えば、震え、筋肉痛、不眠症、腹部不調、眩暈、及び過敏性が含まれる。強迫性障害(OCD, obsessive-compulsive disorder)は、例えば、個体を儀式又は定型的行動に導く(脅迫)可能性のある、しつこい繰り返し起こる心配事(脅迫観念)の症状で特徴づけられる。パニック障害の症状には、例えば、心臓動悸、胸部痛、胸部不快感、発汗、震え、刺痛感覚、窒息感、制御喪失の恐怖、死の恐怖、非現実感が含まれる。外傷後ストレス障害(PTSD, post-traumatic disorder)は、3つの主な症状、(1)フラッシュバック、悪夢、侵入不安、及び回顧などの外傷事件を「再体験する」こと、(2)回避行動及び情緒麻痺、並びに(3)睡眠不能、不安感、過活動性刺激応答、過覚醒、過敏性、及び怒り爆裂などの過敏症に関連づけられる。社会不安障害の身体症状には、例えば、心臓動悸、失神状態、顔面潮紅、及び大量発汗が含まれる。
【0062】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、プラダー・ウィリー症候群(PWS)を治療するのに使用される。PWSは、過食及び食物への没頭、並びに低身長及び学習困難によって特徴づけられる稀な遺伝子障害である。別の実施形態において、本発明は、PWSの1又は複数の症状を改善する方法を提供する。症状には、言葉の遅れ、成長障害、重要段階の遅れ/知的遅れ、及び過食が含まれる。
【0063】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、攻撃性に関連しない統合失調症を治療するのに使用される。統合失調症は、3つの明白な症状群によって特徴づけられる障害である。別の実施形態において、本発明は、攻撃性と関連づけられない統合失調症の1又は複数の症状を改善する方法を提供する。統合失調症の陽性症状の例には、限定はされないが、幻覚、妄想、及び/又は偏執症が含まれる。統合失調症の陰性症状の例には、限定はされないが、引きこもり、平坦な情動、無快感症、及び/又はモチベーション低下が含まれる。本発明の方法のよりさらなる実施形態において、本発明により治療される統合失調症の症状は、認知機能の欠陥に関連づけられる。このような認知症状の例には、限定はされないが、注意力、対象物指定、作業記憶、長期記憶貯蔵、又は実行機能の重度の欠陥、情報処理又は神経活動の減速、又は長期抑鬱が含まれる。
【0064】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、双極性障害を治療するのに使用される。双極性障害は、臨床的には躁病と呼ばれる異常に高められた気分の1又は複数のエピソードの存在によって定義される気分障害の部類に入る。一部の実施形態において、本発明は、障害された認知機能に関連づけられる双極性障害の1又は複数の症状を治療する方法を提供する。双極性障害の症状には、抑鬱気分、一部の又は全ての活動での興味又は楽しみの喪失、食欲、体重又は睡眠パターンの変化、気力喪失、疲労、低い自尊心、思考、集中又は決断に関する能力低下、否定的神経偏向、注意力誤用、衝動性、自傷、絶望感又は無価値感、精神運動性激越又は精神運動遅滞、自己非難、不適切な罪悪感、頻繁な死又は自殺の考え(自殺傾向)、自殺を犯す計画/試みなどの抑鬱症状が含まれる。双極性障害の症状には、また、乏しい衝動制御、多動性、乏しい情報処理速度、膨れ上がった自尊心又は誇張、睡眠要求の減少、通常に比べてより多いおしゃべり、考えの飛躍などの躁病症状が含まれ、注意力は、重要でない項目に引き寄せられ、目標に向けられた活動又は精神運動性激越、及び痛ましい結果への高い可能性を有する気持ちのよい活動への過度な関与を高める。
【0065】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、鬱病を治療するのに使用される。鬱病は、悲しみ、絶望及び落胆の感情によって特徴づけられる抑鬱された気分の精神状態である。別の実施形態において、本発明は、認知機能と関連づけられる鬱病の1又は複数の症状を治療する方法を提供する。症状には、抑鬱された感情又は気分、一部又は全ての活動における興味又は楽しみの喪失、食欲、体重又は睡眠パターンの変化、気力喪失、疲労、低い自尊心、思考、集中又は決断に関する能力の低下、否定的神経偏向、注意力誤用、自傷、絶望感又は無価値感、精神運動性激越又は精神運動遅滞、自責、不適切な罪悪感、頻繁な死又は自殺の考え(自殺傾向)、自殺を犯す計画/試みが含まれる。
【0066】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、血管性痴呆を治療するのに使用される。血管性痴呆は、全て、脳中に血管病変をもたらす種々の機構によって引き起こされる症候群の一群を指す。一部の実施形態において、本発明は、血管性痴呆の1又は複数の症状を治療する方法を提供する。血管性痴呆の症状には、最近の記憶、錯乱、情緒不安定、及び指示に従うことの困難性が含まれる。
【0067】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、軽度認知機能障害(MCI)を治療するのに使用される。MCIは、正常老化と痴呆との間の境界又は移行段階であると考えられる。一部の実施形態において、本発明は、MCIの1又は複数の症状を治療する方法を提供する。MCIの症状には、他人にとって注目に値し且つ試験で明らかになるのに十分な重症であるが、日々の生活を妨げるほどには重症でない、記憶、言語、又は他の精神機能の欠陥が含まれる。
【0068】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、痴呆を治療するのに使用される。痴呆は、通常の老化から予想されることを超える脳中の傷害又は疾患による、認知機能の進行性低下である。一部の実施形態において、本発明は、痴呆の1又は複数の症状を治療する方法を提供する。痴呆の症状には、失見当識;記憶、注意、言語及び問題解決に関する困難が含まれる。
【0069】
一実施形態において、本明細書中で開示される方法は、譫妄を治療するのに使用される。譫妄は、注意集中、知覚及び認知の急性又は比較的突然(数時間から数日にわたって進行する)の低下である。一部の実施形態において、本発明は、譫妄の1又は複数の症状を治療する方法を提供する。譫妄の症状には、記憶欠陥、失見当識、言語障害が含まれる。
【0070】
本明細書中で開示される方法は、また、本明細書中で具体的に説明されない認知機能障害に関連づけられるその他の状態を治療するのに有用である。その他の状態の例には、限定はされないが、閉経に関連する記憶及び認知能力の機能不全、或いは初期発達中の毒性又は耽溺性化合物に対する暴露による認知欠陥が含まれる。
【0071】
本明細書中で説明される全ての状態に関して、当業者は、特徴的症状の存否を判定する方法、さらにはこれらの状態を診断する方法を認識するであろう。例えば、NINCDS−ADRDAの判定基準(McKhann et al.,1984)、ICD−10判定基準(世界保健機構、1992)、及び/又はDSM−IV判定基準(米国精神医学会、1994)などの、疾患を診断するためのいくつかの判定基準が、有用である。本明細書に記載の状態を診断するのに有用なその他のマニュアルには、例えば、限定はされないが、Oppenheimer's Diagnostic Neuropathology:A Practice Manual(Esiri and Perl,2006,Hodder Arnold,London);Harrison's Principles of Internal Medicine(Ed.Kasper et al,16th Ed.2005 McGraw Hill,Columbus,OH);Goetz:Textbook of Clinical Neurology(Eds.Goetz,Pappert,2nd Ed.2003,W.B.Saunders,Philadelphia,PA)が含まれる。当業者は、これらの状態を診断するのに当技術分野で定型的に使用されるその他のこのようなマニュアルを承知しているであろう。
【0072】
一部のこのような実施形態において、患者は、神経又は精神障害の認知症状を有すると確認され、治療上有効な量のエルトプラジン及び/又はその関連化合物及び/又はその薬学的に許容される塩を投与される。
【0073】
乱用される可能性を有し、且つ/又は望ましくない副作用を有するいくつかのその他の治療薬と異なり、本発明は、最も広く処方される現在の薬理学的治療薬である精神刺激薬の乱用可能性を有するとは予想されず、他のタイプの薬理学的治療薬とは異なる副作用プロフィールを有する可能性がある。
【0074】
上で考察したように、障害は、個々の所有する症状に基づいて、DSM−IV−TR及び当技術分野で認められたその他の方法により規定されたように診断される。本発明で使用するための化合物、好ましくは、エルトプラジンは、本明細書に記載の障害、並びに/或いはそれらに関連づけられる特定の症状又は症状の一群の各種組合せを治療するのに使用できる。一実施形態において、「治療」又は「治療すること」は、疾患又は障害、或いはその少なくとも1つの認められる症状の減弱、予防、又は反転を指す。
【0075】
別の実施形態において、「治療」又は「治療すること」は、対象において、又は対象によって必ずしも認められない少なくとも1つの測定可能な身体又は認知に関するパラメーターの減弱、予防、又は反転を指す。さらに別の実施形態において、「治療」又は「治療すること」は、疾患又は障害の進行を身体的又は認知的に阻害又は減速すること、例えば、認められる症状を生理学的に安定化すること、例えば、身体又は認知に関するパラメーター、或いはその双方を安定化することを指す。さらに別の実施形態において、「治療」又は「治療すること」は、疾患又は障害の始まりを、例えば、それらが臨床的重要性に達する前に、根底にある病理学的過程を阻害することによって、遅延させることを指す。
【0076】
別の実施形態において、エルトプラジンに関連する化合物は、本発明の方法で有用である。この実施形態において、本発明による本明細書に記載の障害の治療方法は、治療を必要とする個体に、治療上有効な量の次式の化合物を投与することによって成し遂げられ:
【0077】
【化5】

【0078】
式中、
は、水素、アルキル、シクロアルキル、エステル化されていてもよいヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、置換されていてもよいフェニル又はヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキル−又はジアルキル−アミノカルボニル、ニトロ、アミノ、アルキル−又はジアルキル−アミノ、アシルアミノ、アルキルスルホニルアミノ、アリールアミノ、シアノ、ハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、エステル化されていてもよいヒドロキシル、アルキル−又はアミノ−スルホニル又は−スルフィニル、アルキル−又はジアルキル−アミノスルホニル又は−スルフィニルであり、pは、数値0〜3を有し、
及びR'は、独立に、水素又はアルキル基であり、n及びqは、数値0又は1を有することができ、
は、Rと同じ意味を有するか、或いはアルキリデン、オキソ又はチオキソ基でよく、mは、数値0〜2を有し、
Aは、フェニル基の2つの炭素原子と一緒になって、環中に基O、S及びNからの1〜3個のヘテロ原子(但し、酸素及び硫黄原子数の合計は、多くて2個である)を含む5〜7個の原子を有する完全に又は部分的に不飽和でよい環状基を形成する。
【0079】
そうでないことを明確にしない限り、アルキルは、1〜10個の炭素原子であり、アリールは、6〜10個の炭素原子であり、シクロアルキルは3〜10個の炭素原子である。
【0080】
は、ハロゲンであるなら、好ましくは、フルオロ、クロロ又はブロモであり、アルキル基であるなら、好ましくは、1〜5個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和基である。
【0081】
は、アルキル基であるなら、好ましくは、メチル又はエチル基である。
【0082】
は、ヒドロキシアルキル基であるなら、好ましくは、1〜3個の炭素原子を含む。
【0083】
又はRが、エステル化されたヒドロキシル基又はヒドロキシルアルキル基であるなら、該エステル基は、好ましくは、式O−CO−R又は−O−CS−Rを有し、ここで、該式中のRは、アルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルであり、該アルキル基は、分枝状又は非分枝状でよく、該(へテロ)アリール部分は、置換されていてもよいか、或いはRは、アルコキシ、ヘテロアルコキシ、又はジアルキルアミノ基でよく、ここで2つのアルキル基は窒素原子と一緒になって複素環式環を形成できる。
【0084】
又はRが、エーテル化されたヒドロキシル基又はヒドロキシアルキル基であるなら、該エーテル基は、好ましくは式−O−Rを有し、ここで、Rは、1〜5個のC原子を有する直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基であるか、或いはそのアルコキシ部分及びアルキル部分の双方に1〜2個のC原子を有するアルコキシアルキル基である。
【0085】
そのR、R、R'及びRは、水素であり、Aは、それが結合しているフェニル環と一緒になって、2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシンを形成している、エルトプラジン(1−(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキサニル−5−イル)ピペラジン)(C1216)、又はその薬学的に許容される塩、特にHCl塩が、本発明で使用するのに特に好ましい。本発明で有用である可能性のある別の好ましい化合物が、バトプラジン(8−(1−ピペラジン)−2H−1−ベンゾピラン−2−オン)である。本発明は、また、不活性ではあるが、投与後に体内で活性形態に転換される、示した式の化合物のプロドラッグ、特に式の化合物の誘導体の使用を包含する。
【0086】
エルトプラジンを含む前記の化合物及びそれらの合成方法は、当技術分野で周知であり、参照によりその全体で本明細書に援用される、米国特許第4833142号明細書、米国特許第5424313号明細書、欧州特許第189612号明細書、及び欧州特許第138280号明細書に記載されている。
【0087】
本発明により本明細書に記載の障害を治療するのに使用される化合物の用量は、治療を必要とする個体の障害の重症度、体重及び代謝健康状態によって、通常的方式で変化する。一般的な患者集団に対する好ましい初回投与量は、例えば臨床試験中に行われる定型的な投与量範囲研究によって決定される。個々の患者に対する治療上有効な用量は、副作用を最小にしながら所望の治療又は予防効果に達するために個体に付与される薬物量を設定することによって決定できる。この化合物に関する好ましい初回投与量は、約0.1mg/日〜約20mg/日でよい。より好ましくは、初回投与量は、約0.1mg/日〜約10mg/日であると見積もられる。さらにより好ましくは、初回投与量は、約0.5mg/日〜約5mg/日であると見積もられる。さらにより好ましくは、初期投与量は、約1.0mg/日〜約5mg/日であると見積もられる、最も好ましくは、両端を含めて約2.5〜約5mg/日である。
【0088】
エルトプラジン及び/又はその関連化合物のその他の有用な用量は、約0.5〜約20mg/日、約1.0〜約15mg/日、約5〜約10mg/日、約7〜約12mg/日及び約8〜約10mg/日である。一部の実施形態において、エルトプラジン及び/又はその関連化合物の1日当たり投与量は、0.1mg、0.5mg、1mg、2mg、2.5mg、5mg、7mg、9mg、10mg、12mg、15mg、17mg、19mg、20mgである。投与計画も、本明細書に記載の障害又は症状を治療するための化合物の治療上有効な濃度を達成するように変更できる。一部の実施形態において、化合物は、1日に1回、2回、3回、4回、5回、7回又は10回投与できる。しばしば、投与量は、その日中に等しく分割できるが、いくつかの障害又は症状を治療するための一部の実施形態では、投与量を投与する計画を、1日当たりの治療薬のほとんどをその日の前半に投与するように偏向させることが有用であることもある。一部の実施形態において、投与量の約50%、60%、70%又は80%が、その日の前半で投与される、他の実施形態において、投与量のほとんどをその日の後半で投与することがより適切であることもあり、その結果、投与量の約50%、60%、70%又は80%がその日の後半に投与される。
【0089】
別の実施形態において、エルトプラジン及び/又はその関連化合物は、別の治療化合物と同時投与される。補助化合物は、エルトプラジン及び/又はその関連化合物に類似した、それらと相乗的である、又はそれらと相違する作用を有することができる。補助化合物の例には、限定はされないが、抗精神病薬、気分安定薬、SSRI抗欝薬(セイヨウオトギリソウを含む)、5HT1A受容体アゴニスト又はその他のセロトニン介在性治療薬、麻薬性鎮痛薬、抗凝固薬、制吐薬、β遮断薬、鎮痛性抗ヒスタミン薬、NSAID(例えば、アスピリン及びイブプロフェン)、COX−2阻害薬、合成及び天然アヘン薬(例えば、オキシコドン、メペリジン、モルフィン及びコデイン)、メキシレチン、バクロフェン、トラマドール、抗不整脈薬、抗痙攣薬(例えば、ラモトリジン、ガバペンチン、バルプロ酸、トピラメート、ファモトジン、フェノバルビタール、ジフェニルヒダントイン、フェニトイン、メフェニトイン、エトトイン、メフォバルビタール、プリミドン、カルバマゼピン、エトスクシミド、メトスクシミド、フェンスクシミド、トリメタジオン、ベンゾジアゼピン(ジアゼパムなど)、フェナセミド、アセタゾラミド、プロガビド、クロナゼパム、ジバルプロエクスナトリウム、硫酸マグネシウム注、メタルビタール、パラメタジオン、フェニトインナトリウム、バルプロ酸ナトリウム、クロバザム、スルチアム、ジランチン、ジフェニラン)、カプサイシンクリーム、膜安定化薬(例えば、リドカイン)、N−メチル−D−アスパルテート受容体(NMDA, N-methyl-D-aspartate receptor)アンタゴニスト(ケタミンなど)、並びにその他全ての既知の鎮痛薬及び神経障害の症状を治療するのに有用な薬物(プレガバリン、ハルコセリド、アミトリプチリン、デシプラミンなど)並びにその他の関連三環系抗欝薬及び中枢神経系活性を有する任意の薬物が含まれる。
【0090】
本発明の化合物の投与は、例えば、経口、非経口、静脈内、筋内、皮下、又は直腸投与などの、治療薬を投与するのに使用される任意の方法によって行うことができる。
【0091】
当業者は、本明細書に記載の状態を有する患者の年齢が、投与量又は投与、或いはその他の因子又は共存状態の存在などの因子に応じて、様々な程度で治療に応答することを認識するであろう。したがって、当業者は、本明細書に記載の方法は、特定の年齢群を対象にすることができることを認識するであろう。治療群は、年齢によって、乳児/よちよち歩きの幼児、子供、青年、成人、高齢者及び老人に分類できる。本明細書中で使用する場合、これらの用語は、ほぼ次の年齢群:乳児/よちよち歩きの幼児(約5歳以下)、子供(約5歳〜約12歳)、青年(約12歳〜約22歳)、成人(約22歳〜約55歳)、高齢者(約55歳〜約65歳)及び老人(約65歳以上)を指す。本明細書中で使用する場合、用語「乳児」は、一般に、誕生から立位をとる時期までのヒトを指す。本明細書中で使用する場合、用語「よちよち歩きの幼児」は、一般に、幼い子供、及び子供が社会的ルールについて学習し、運動能力を発達させ始める時期を指す。本明細書中で使用する場合、用語「青年」は、一般に、第二次性徴の出現で始まり、身体的成長の停止で終わる生涯の時期を指す。本明細書中で使用する場合、用語「成人」は、一般に、完全な成長又は成熟を獲得した個体を指す。本明細書中で使用する場合、用語「高齢者」は、まだ老人期に達しないが、老化し始めた成人個体を指す。本明細書中で使用する場合、用語「老人」は、一般に、老齢に達した成人個体を指す。
【0092】
本発明で使用するための治療用化合物、特にエルトプラジン[1−(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−5−イル)ピペラジン]又はその薬学的に許容される塩(エルトプラジンの場合には好ましくはHCl塩)又はプロドラッグを含むことに加えて、本発明で使用するための医薬組成物は、薬学的に許容される担体も含む。このような担体は、保存剤、添加剤、賦形剤、湿潤化剤、結合剤、崩壊剤などの添加物を含むことができ、本発明の組成物中には緩衝剤も存在できる。適切な添加物は、例えば、炭酸マグネシウム又はカルシウム、カルボキシメチルセルロース、デンプン、糖類、ゴム類、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カルシウム、着色又は風味剤などでよい。広範な種類の薬学的に許容される医薬剤形用添加物が存在し、適切な添加物の選択は、医薬製剤に関わる当業者にとって定型的な事柄である。
【0093】
組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、ロゼンジ剤、座剤、再構成可能な粉末剤、或いは経口又は無菌非経口用溶液剤又は懸濁剤などの液状調合剤の形態でよい。
【0094】
投与の一定性を得るために、本発明の組成物は、単位用量の形態であることが好ましい。経口投与用の単位剤形は、錠剤、カプセル剤などでよく、結合剤、例えば、シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカントゴム、又はポリビニルピロリドンなどの通常の添加剤;及び担体又は賦形剤、例えば、乳糖、砂糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトール又はグリシンを含むことができる。添加物としては、崩壊剤、例えば、デンプン、ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム又は微結晶セルロース;保存剤;及びラウリル硫酸ナトリウムなどの薬学的に許容される湿潤化剤を挙げることができる。
【0095】
単位剤形に加えて、多回剤形も本発明の範囲に包含されると考えられる。限定はされないが、維持放出剤形、長期放出剤形、遅延放出剤形、及び拍動放出剤形を含む、本発明で使用するための修飾又は制御放出剤形が考えられる。
【0096】
本発明の制御放出製剤で使用するための適切なポリマーには、限定はされないが、セルロース系ポリマー、好ましくはヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、メチルセルロース、及びエチルセルロース、並びにこれらの組合せを含む未架橋の線状ポリマー;カルボポール樹脂を含む(メタ)アクリル酸の高分子量架橋ホモポリマー及びコポリマーなどの共有結合で架橋された不溶性ポリマー、或いはこれらの未架橋及び共有結合で架橋されたポリマーの混合物が含まれる。さらに、適切なポリマーには、少しの例を挙げれば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アンモニオメタクリレート、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸エチル、ビニルポリマー、及びポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸フタル酸ビニル、酢酸ビニル−クロトン酸コポリマー、及びエチレン−酢酸ビニルコポリマーが含まれる。上記ポリマーの2以上の各種組合せも、本発明の剤形で使用するために考えられる。
【0097】
遅延放出組成物は、例えば、徐放性被覆、マイクロカプセル化及び/又は徐溶出性ポリマーを採用することによって調製できる。
【0098】
固形経口組成物は、混合、充填、打錠などの通常的な方法によって調製することができる。反復混合操作を利用して、活性薬剤を、大量の賦形剤を採用するそれらの組成物中にあまねく分配することができる。このような操作は当技術分野で一般的である。錠剤を、通常の製薬実務で周知の方法により、例えば腸溶性被覆を用いて被覆することができる。
【0099】
経口液状製剤は、例えば、乳剤、シロップ剤又はエリキシル剤の形態でよく、或いは使用前に水又はその他の適切な媒体で再構成するための乾燥製品として提供できる。このような液状製剤は、懸濁化剤、例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、及び水素化食用油;乳化剤、例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、又はアラビアゴム;非水性媒体(食用油を含むこともできる)、例えば、アーモンド油又は分別カカオ油、グリセリン、プロピレングリコール、又はエチルアルコールのエステルなどの油性エステル;保存剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはプロピル、又はソルビン酸;並びに所望なら通常の風味又は着色剤などの、通常の添加物を含むことができる。
【0100】
非経口投与の場合、流動性単位剤形は、化合物及び無菌媒体を利用して調製され、使用される濃度に応じて媒体に懸濁又は溶解することができる。溶液剤を調製するには、化合物を、注射用の水又は生理食塩水に溶解し、フィルター滅菌した後に、適切なバイアル瓶又はアンプルに充填し、密閉する。有利には、局所麻酔薬、保存剤及び緩衝剤などの添加物を媒体に溶解させることができる。適切な緩衝剤は、例えば、リン酸塩及びクエン酸塩である。安定性を高めるために、組成物を、バイアル瓶へ充填した後に凍結し、水を真空下で除去することができる。非経口用懸濁剤は、化合物を溶解する代わりに媒体に懸濁することを除けば、実質的に同様の方式で調製することができ、滅菌は濾過によって行うことはできない。組成物は、通常の手段によって、例えば、無菌媒体に懸濁させる前に、放射線又はエチレンオキシドに暴露することによって滅菌することができる。有利には、化合物の均一分布を促進するために、組成物中に界面活性剤又は湿潤化剤を含める。
【0101】
患者を、当技術分野で周知の試験のいずれかによって、神経又は精神障害について評価できる。パーキンソン病の治療は、ラットにおけるMPTPの神経毒性の低減を測定することによって評価することができる(Lee E H et al.,1992 Chin J Physiol 35(4):317-36)。また、動物において実験的に誘導された線条体DA枯渇は、パーキンソン症候群の妥当なモデルである(Shulz W 1982 Prog Neurobiol 18(2-3):121-66)。動物におけるDA欠乏をもたらすために、カテコールアミン作動性ニューロンを傷害するいくつかの物質の能力が広範に使用されている(Annett L E et al.,1994 Exp Neurol 125(2):228-46)。
【0102】
神経変性疾患に由来するものを含む記憶に関する認知症状、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病、及び脳卒中などの血管性疾患は、5選択反応時間試験(Five-choice Serial Reaction Time Test)のようなモデルで評価することができる(The 5-choice serial reaction time task:behavioural pharmacology and functional neurochemistry.Psychopharmacology(Berl).2002 Oct;163(3-4):362-80)。恐怖条件付けパラダイム(Fear Conditioning Paradigm)(Gould T J et al.,2002 Behav Pharmacol.13(4):287-94;Hamm A O et al.,2003 Brain 126(Pt2):267-75)及び新規対象物認識(novel object recognition)(Animal Models of Cognitive Impairment,2006(Ed,by Levin,E.D.& Buccafusco,J.J.)Boca Raton,Fla.)は、空間参照記憶及び学習と同時に、放射アーム試験(Aggleton J P et al.,1996 Behav Brain Res.19(2):133-46)又はMorris水迷路(Bontempi B et al.,1996 Eur J Neurosci.8(11):2348-60)で評価できる。さらに、記憶及び海馬機能低下は、シナプス可塑性に対するエルトプラジンの影響を測定することによって評価できる(Day and Good,2005 Jan.,Neurobiol Learn Mem.,83(1):13-21)。Tg2576、APP、PSI及びPS2遺伝子導入マウスなどのいくつかの遺伝子導入動物モデルを、これらのパラダイム及び試験と組み合わせて使用することができる(Frautschy SA,Am J Pathol.1998 Jan;152(1):307-17)。
【0103】
ハンチントン病は、行動及び認知試験を、ハンチントン病のN171−82Q及びR6/2マウスモデルなどの遺伝子導入モデルと組み合わせて使用して評価できる(Luthi-Carter,Hum Mol Genet.2000 May 22;9(9):1259-71;Cha,Proc Natl Acad Sci USA.1998 May 26;95(11):6480-5)。
【0104】
クッシング病は、自然発症のウマ及びイヌモデルのようなモデルと組み合わせた行動及び認知試験によって評価できる(Kemppainen,Trends Endocrinol Metab.1994 Jan-Feb;5(1):21-8)。
【0105】
レビー小体病は、α−シヌクレイン遺伝子導入マウスなどの遺伝子導入モデルと組み合わせた行動試験のようなモデルと組み合わせた行動及び認知試験によって評価できる(Kahle,Am J Pathol.2001 Dec;159(6):2215-25)。
【0106】
多発性硬化症は、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE, experimental autoimmune encephalomyelitis)モデルによって評価できる(Liu H Y et al.,2002 J Neurosci Res 70(2):238-48;Lublin,Springer Semin Immunopathol.1985;8(3):197-208)。
【0107】
さらに、脳卒中については、Tamuraモデルが、中大脳動脈が電気凝固によって閉塞されている、最も特徴的な局所虚血モデルの1つである。また、Johnson及びMcCartyモデル、自然発症高血圧ラット(SHR, spontaneously hypertensive rat)、及びより新しいエンドセリン−1モデルを使用して脳卒中を評価できる(Johnson M P,McCarty D R et al.,1998 Life Sci.63(4):241-53;Sharkey J and Butcher S P 1995 J Neurosci Methods 60(1-2)125-31)。
【0108】
耽溺障害は、行動及び認知試験を復元モデル(Shaham,Psychopharmacology(Berl)168,3-20(2003))、時間差強化学習(TDRL, temporal difference reinforcement learning)モデル(Redish,Science.2004 Dec 10;306(5703):1944-7)などの強化学習モデルのようなモデルと組み合わせて使用して評価できる。
【0109】
自閉症スペクトラム障害は、R451C遺伝子導入マウスのようなモデルと組み合わせた行動及び認知試験を使用して評価できる(Tabuchi,Science.2007 Oct 5;318(5847):71-6)。
【0110】
不安障害は、デザートヘッジホッグ・ノックアウトマウスのようなモデルと組み合わせた行動及び認知試験を使用して評価できる(Umehara,Behav Brain Res.2006 Nov 1;174(1):167-73)。
【0111】
前臨床的に、動物を、攻撃性を伴わない統合失調症に関連づけられる症状の遮断/減弱について評価できる。統合失調症の動物モデルにおける陽性症状は、ドーパミン(DA, dopamine)活性の全体的活性レベルの変化を、運動活性(Depoortere R et al.,2003 Neuropsychopharmacology 28(11):1889-902)、D−アンフェタミン(AMPH, D-amphetamine)及びモデル精神病又は運動多動の誘導を介するフェンシクリジン(PCP, phencyclidine)(Freed W J et al.,1984 Neuropharmacology 23(2A):175-81)の随伴性並行変化と共に測定することによって評価できる。例えば、Depoortereらは、陽性症候学及び副作用プロフィールに関連する運動活性、カタレプシー、登攀、常同症及びカタレプシーを、化合物を定型及び非定型の抗精神病効力で特徴づけることによって評価するための試験を記載している(2003)。アポモルフィン誘導性登攀(AIC, apomorphine-induced climbing)、常同性及びカタレプシーの減弱は、Fung Y K et al.1986 Pharmacol BiochemBehav.1986 24(1):139-41及びFung,et al,1987 Steroids 49(4-5):287-94によって発表されているように評価できる。統合失調症の症状を評価するのに使用できるさらなるモデルには、社会隔離立ち上がりモデル(social isolation rearing test)(Geyer et al.,Biol.Psychiatry,34,361-372,1993)及び母性剥奪モデル(maternal deprivation model)(Ellenbroek et al.,Schizophr.Res.,30(3),251-260,1998)が含まれる。統合失調症の動物モデルを検証する広範に認められた手段には、パルス前阻害試験が含まれる(Van den Buuse et al.,Curr.Mol.Med.,3,459-471,2003)。さらに、統合失調症による注意機能の変化は、5選択反応時間試験(5CSRT, choice serial reaction time test)(Muir J L.et al.,1995 Psychopharmacology(Berl)118(1):82-92;Robbins et al.,1998 Ann N Y Acad Sci.846:222-37参照)、及び注意設定移行試験(Birrell,J Neurosci.2000;20:4320-4324)、作業記憶試験(Egan,Proc Natl Acad Sci USA 2001 98:6917-6922)及び実行機能(Ho,Mol Psychiatry 2005 10:287-298)によって調べることができる。社会的認知の変化は、また、社会認識試験(social recognition test)を使用して調べることができる。
【0112】
双極性障害は、D−ボックス結合タンパク質(Dbp, D-box binding protein)マウスのようなモデル(Le-Niculescu H,Am J Med Genet Neuropsychiatr Genet.2008 Mar.5;147(2):134-66)又は双極性障害のアンフェタミンゲッ歯動物モデル(Frey,Life Sci.2006 Jun 13;79(3):281-6)と組み合わせた行動及び認知試験を使用して評価できる。
【0113】
鬱病の評価は、5−HT1Aノックアウトマウスなどのモデル(Pattij,Behavioural Brain Research,2003;141(2):137-145)、及びクロルピリフォス(CPF, chiorpyrifos)胎児期暴露モデル(Aldridge,Environ Health Perspect.2005 May;113(5):527-31)を使用して測定できる。鬱病及び不安は、双方とも、卵巣切除ラットにおける尾部懸垂で誘導される廃用性萎縮症により評価できる(Ohmori S et al.,2001 Environ Med 45(1):12-4)。さらに、不安は、次の試験:(1)Geller-Seifter葛藤試験(Babbini M et al.,1982 Pharmacol Biochem Behav 17(1):43-8;Shimizu H et al.,1992 Jpn J Pharmacol 58(3):283-9)、(2)社会的相互作用(Gonzalez L E et al.,1998 Pharmacol Biochem Behav 59(4):787-92)、(3)明/暗探索(Holmes A et al.,2001 Behav Brain Res 122(2):159-67)、(4)高架式十字迷路(Andreatini R and L F Bacellar 1999 Braz J Med Biol Res 32(9):1121-6)、(5)防御性覆い隠し(defensive burying)(Overmier J B et al.,1994 Biol Psychiatry 36(10):703-4)、及び(6)ラットのど渇き葛藤(thirsty rat conflict)(Mendelson W B et al.,1983 Life Sci 32(19):2241-6;Overton D A et al.,1993 Psychopharmacology(Berl)112(3):270-6)によって評価できる。
【0114】
血管性痴呆は、血管性痴呆ラット(Cai,Chin J Integra Med.2006 Dec;12(4):292-6)及び自然発症高血圧ラット(SHR)(Sabbatini,Mach Ageing Dev.2002 Mar 15;123(5):547-59)のようなモデルを使用して評価できる。前記刊行物のそれぞれは、参照によりその全体で本明細書に援用される。
【0115】
当技術分野で定型的に使用されるその他の評価法を使用して、本明細書に記載の治療方法の有効性を評価できる。その他の評価法には、限定はされないが、発病前知能指数評価(Premorbid Intelligence Quotient Estimate)、マチス痴呆評価スケール(Mattis Dementia Rating Scale)、ミニ精神状態試験(Mini-Mental Status Test)、CVLT−II、CVLT、CVLT−II代替法、WMS−R、WMS−III、ホプキンス言語学習試験(Hopkins Verbal Learning Test)、レイ複雑図形試験(Rey Complex Figure Test)、簡易視空間記憶試験(Brief Visuospatial Memory Test)、連続視覚記憶試験(Continuous Visual Memory Test)、ウィスコンシンカード区分け試験(Wisconsin Card Sorting Test)、ストループ色単語緩衝試験(Stroop Color Word Interference Test)、トレールB陸軍知能総合試験(Trails B Army Intelligence Test Battery)、自己制定指示試験(Self-Ordered Pointing Test)、WAIS−III類似性サブテスト(WAIS-III Similarities Subtest)、ボストンネーミング試験(Boston Naming Test)、ピーボディー絵画語彙試験―III(Peabody Picture Vocabulary Test-III)、トーケン試験(Token Test)、ディジットスパン(Digit Span)、フーパー視覚構成試験(Hooper Visual Organization Test)、マトリックス総合試験(Matrix Test Battery)、ハミルトン抑鬱インベントリー(Hamilton Depression Inventory)、ベック抑鬱インベントリー(Beck Depression Inventory)、及び修正評価尺度(Modified Ranking Scale)が含まれる。当業者は、どの評価法が特定の神経又は精神障害を評価するのに適切であるかを認識するであろう。
【0116】
本発明を、本発明の方法によれば他の認知障害の類似の症状を治療するための効力の指標である、ADHDに関連づけられる特定の症状を改善する上での基本的化合物エルトプラジンの有効性を例示する実施例により、以下でより詳細に説明する。次の実施例及び本明細書に記載の実施形態は、単に例示目的のためであること、及びそれに照らした各種の修正又は変更は、当業者にとって思いつくものであり、本出願の精神及び範囲及び添付クレームの範囲内に包含されることを理解されたい。本明細書中で引用される各刊行物、特許及び特許出願は、参照によりその全体で全ての目的のために本明細書に援用される。
【実施例1】
【0117】
成人における注意欠陥多動障害(ADHD, attention deficit hyperactivity disorder)の症状に対するエルトプラジンの効果:二重盲検、複数回投与、交差、安全性及び予備効力試験
この研究の主な目的は、成人におけるADHDの症状に対する2用量エルトプラジンの効果をプラセボと比較することである。主な効力パラメーターは、注意欠陥/多動障害評価尺度−IV(ADHD−RS−IV, Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder Rating Scale-IV)である。
【0118】
方法論:
この二重盲検、複数回投与、プラセボ対照、交差研究は、ADHDを有する48名の成人における、14日間の経口エルトプラジン治療の効果を評価するために実施された。研究に登録される資格のある対象は、ADHD用精神障害の診断・統計マニュアル、第4版、テキスト版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorder,Fourth Edition,Text Revision)(DSM−IV−TR)の判定基準に合致しなければならない。評価は、臨床履歴、DSM−IV軸障害用構造化臨床面接−研究バージョン(Structured Clinical Interview for DSM-IV Axis Disorders-Research Version)(SCID−RV)、及びコナーズのDSM−IV用成人期ADHD診断面接(Conners'Adult ADHD Diagnostic Interview for DSM-IV)(CAADID)によってなされなければならない。
【0119】
塩酸エルトプラジンの経口投与量は、連続14日間、5mg/日又は10mg/日(すなわち、それぞれ、2.5又は5mgを1日に2回(bid))とした。塩酸エルトプラジンは、添加剤としてリン酸水素カルシウム2HO、トウモロコシデンプンNF、ポリエチレングリコール6000NF、及びステアリン酸マグネシウムNFを用いたゼラチンカプセル剤で投与した。
【0120】
結果:
主要評価項目−ADHD−RS−IV
主要評価項目は、ADHD−RS−IVを用いて評価した。治療によるADHD−RS−IVの不注意、多動性及び衝動性下位尺度評点を表1に示す。プラセボ、5mg/日、又は10mg/日のエルトプラジンでの14日間の治療後に、ADHDの全般的症状は、高い評点ほどより高度の機能障害を表すADHD−RS−IVで測定されるように、改善された。
【0121】
【表1】


【0122】
表2に示すADHD−RS−IV合計評点は、ベースラインに比較して全ての治療で有意に低下し、表2に示すように、プラセボ、5mg/日、及び10mg/日のエルトプラジンでそれぞれ32%、42%、及び41%まで低下した。ADHD−RS−IV合計評点のベースラインからの平均変化は、プラセボ、5mg/日、及び10mg/日のエルトプラジンでそれぞれ−13.6、−17.9、及び−17.4であった(p<0.001、全ての治療でのベースライン対ベースライン後)。
【0123】
【表2】

【0124】
ADHD−RS−IVの不注意及び多動性下位尺度を使用すると、5mg/日のエルトプラジンでの14日間後に、プラセボでの14日間後に比較して、統計的に有意な低下が認められた(不注意及び多動性下位尺度に関して、それぞれp=0.041及び0.047)。不注意下位尺度評点は、プラセボで29%、5mg/日エルトプラジンで39%低下し、多動性下位尺度は、プラセボで35%、5mg/日のエルトプラジンで47%低下した。改善は、同様の統計的に有意なレベルではないが、衝動性についても認められた。
【0125】
副次評価項目
副次評価項目は、臨床的総合印象改善度(CGI−I,Clinical Global Impression-Improvement)及び連続遂行試験(CPT, Continuous Performance Test)を用いて評価した。CGI−I試験は、改善度に関する患者の総合的認識を判定するのに使用される。CGI−I試験の結果を表4に示す。CGI−I評点は、10mg/日のエルトプラジンで有意に改善された。5mg/日のエルトプラジンでの62%、プラセボでの52%(それぞれ、p<0.342及び0.094)に比較して、10mg/日のエルトプラジンでは対象の71%が、統計的に有意な改善(p<0.029)を示し、患者の認識は、治療が症状を効果的に減弱しているというものであったことを示している。CPTは、統計的に有意な発見を少しももたらさなかった。
【0126】
ベースラインでのADHD−RS−IV評点>40
ADHD−RS−IV、CPT、及びCGI−I評点を、ベースライン評点がより大きな機能障害の存在を示す40を超える対象について、別々に分析した。22名の対象が、40を超えるベースラインADHD−RS−IV合計評点を有した。
【0127】
ADHD−RS−IV評点に関するこのサブグループの分析を、合計評点、及び不注意、多動性、及び衝動性の下位尺度評点について表3に示す。平均のADHD−RS−IV合計ベースライン評点は47.2であった。14日間の治療の終わりまでに、ADHD−RS−IV合計評点は、より重症のADHDを有する対象において、プラセボでのたった37%の低下に比較して、5mg/日のエルトプラジンでは55%まで有意に低下した(p<0.029)。不注意、多動性、及び衝動性下位尺度は、また、5mg/日のエルトプラジンで改善されたが、評点の変化は、不注意の下位尺度評点でのみプラセボに比較して統計的有意に到達し(5mg/日対プラセボで、54%対32%の改善)、多動性及び衝動性の下位尺度評点では改善されなかった(5mg/日対プラセボで、それぞれ、56%対39%、及び55%対42%の改善)。
【0128】
【表3】

【0129】
CGI−I評点に関するこのサブグループ分析を表4に示す。14日間の治療の終わりまで、プラセボでの52%に比較して、5及び10mg/日のエルトプラジンではそれぞれ対象の62%及び71%が改善を示した。治療群間の階差は、同様であった(それぞれ5及び10mg/日のエルトプラジンで、プラセボに対してp<0.190及び0.091)。10mg/日のエルトプラジンでの改善は統計的に有意(p=0.029)であったが、プラセボ及び5mg/日のエルトプラジンで認められた改善は、統計的に有意なレベルに達しなかった(それぞれ、p<0.094及び0.342)。CPTは、統計的に有意な発見を少しももたらさなかった。
【0130】
【表4】

【0131】
結論
この研究の最も興味ある発見は、不注意及び多動性に対して顕著で、衝動性に対する度合いがより少ない、エルトプラジンの選択的な作用である。主要効果評価項目は、ADHD−RS−IV評点における5又は10mg/日のエルトプラジンとプラセボとの間のベースラインからの変化であった。プラセボ、5mg/日、又は10mg/日のエルトプラジンでの14日間の治療後に、ADHDの全般的症状は、ADHD−RS−IVで測定すると、ベースラインに比較して改善された。ADHD−RS−IV合計評点は、プラセボ、5mg/日、及び10mg/日のエルトプラジンで、それぞれベースラインから32%、42%、及び41%有意に下落した(すなわち、より低い評点は、より少ない機能障害に相当する)。しかし、ADHD−RS−IV合計評点におけるこれらの変化は、プラセボとエルトプラジン(5又は10mg/日)との間で有意ではなかった。ADHD−RS−IVの不注意及び多動性下位尺度を使用して評価すると、プラセボ治療に比較して、5mg/日のエルトプラジンでベースライン評点からの統計的に有意なより大きな下落(すなわち、より大きな症状の改善)が存在した。衝動性評点も、改善されたが、統計的に有意な程ではなかった。
【0132】
副次評価項目は、5又は10mg/日のエルトプラジンとプラセボとの間でCGI−I評点についてベースラインから変化した。CGI−I評点は、10mg/日のエルトプラジンで、ベースラインから有意に改善されたが、これらの評点は、プラセボとエルトプラジン治療との間で統計的に有意に異なることはなかった。
【0133】
ADHD−RS−IV、及びCGI評点を、より大きな機能障害の存在を示す40を超えるベースライン評点の対象について、別々に分析した。より重症のADHDを有するこの下位集団において、5mg/日のエルトプラジンでADHD症状のより大きな改善が認められた。ADHD−RS−IV合計評点は、ベースラインから55%まで、下位尺度評点は、不注意、多動性、及び衝動性でそれぞれ54%、56%、及び55%まで低下した。CGI−I評点は、より重症の集団において、5mg/日のエルトプラジンでADHD症状の改善を示した(それぞれ、重症度評点の14%の低下、及び対象の62%が改善)。5mg/日のエルトプラジンでのこれらの変化は、ADHD−RS−IV合計評点及び不注意下位評点に関してプラセボと統計的に有意に異なった。10mg/日のエルトプラジン投与量は、また、症状の改善を示したが、結果は、CGI−Iに関してプラセボと統計的に有意に異なった。
【0134】
実施例2〜12は、認知機能障害に関連づけられる症状又は状態を治療するために当業者が本明細書に記載の方法を実施する方法を予言的に説明するものである。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、類似の方法を、認知機能障害に関連するその他の症状及び状態、或いは不注意、多動性又は衝動性などの症状に適用できる。
【実施例2】
【0135】
統合失調症における不注意及び他動性のエルトプラジンでの治療
DSM−IVによる妄想、幻覚、及び言語能力の崩壊又は変性などの統合失調症の症状を臨床的に呈している患者を、視標追跡機能不全及びプレパルス抑制傷害(Eye Tracking Dysfunction and Impaired Prepulse Inhibition)及びMATRICS試験バッテリー、並びにCGI−I及びADHD−RS−IVの不注意及び多動性下位尺度、並びに統合失調症を評価するために精神健康の専門家によって定型的に使用されるその他の試験を使用する通常的な試験で評価する。
【0136】
患者に10mg/日のエルトプラジンを処方し、次いで、2週間後に再び評価して、症状が改善されたかどうかを判定する。評価後に、統合失調症の症状変化に応じて、投与量を上下に調節するか、同じに保持する。統合失調症の症状の安定な消散をもたらすのに必要な限り、治療を継続する。
【実施例3】
【0137】
鬱病のエルトプラジンでの治療
DSM−IVによる鬱病の症状を臨床的に呈している患者を、ハミルトン鬱病インベントリー(Hamilton Depression Inventory)、ベック鬱病インベントリー(Beck Depression Inventory)などの行動試験を使用する通常の試験で評価する。
【0138】
患者に5mg/日のエルトプラジンを処方し、次いで、2週間後に同じ行動試験を使用して再び評価し、その結果で、初期投与量に対する個体の応答に応じて、投与量を上下に調節するか、同じに保持する。鬱病の症状を改善するのに必要な限り、投与を継続する。
【実施例4】
【0139】
精神運動遅滞のエルトプラジンでの治療
協調性、言語能力の減速、及び構音障害で特徴づけられる精神運動遅滞と診断された患者を、精神運動覚醒試験(PVT, Psychomotor Vigilance Test)及びコンピューター支援ディジットシンボル置換試験(CDSST, computerized digit symbol substitution test)を使用して評価する(Rogers et al.Brain,Vol.110,No.3,761-776,1987)。
【0140】
患者に、2回/日で5mg/日の経口エルトプラジンを処方し、投与2〜4時間後に起立性心拍数及び血圧を含むバイタルサインを測定して、化合物の耐容性を評価する。仰臥位心拍数及び血圧は、安静5分後に、立位心拍数及び血圧は直立1〜2分後に測定しなければならない。対象は、薬物投与の2〜4時間後に心電図(ECG, electrocardiogram)を記録しなければならない。次いで、2週間後に、患者をPVT及びCDSSTを使用して評価する。各評価の時点で、初期投与量に対する個体の応答に応じて、投与量を上下に調節するか、同じに保持する。精神運動遅滞が低減されるまで、投与を継続する。
【実施例5】
【0141】
パーキンソン病における不注意及び多動性のエルトプラジンでの治療
パーキンソン病と臨床的に診断された患者を、CGI−I及びADHD−RS−IVの不注意及び多動性下位尺度を使用して評価する。
【0142】
患者に、2回/日で5mg/日のエルトプラジンを処方し、次いで、2週間後に同じ行動試験を使用して評価し、その結果で、初期投与量に対する個体の応答に応じて、投与量を上下に調節するか、同じに保持する。不注意を治療するのに必要な限り、投与を継続する。
【実施例6】
【0143】
脳卒中後の機能回復の改善
脳卒中患者を、入院時及び脳卒中の2、4及び6カ月後に、バーセルインデックス(Barthel Index)、リバーミードの総合機能運動評価(Rivermead Motor Assessment of Gross Function)、リバーミードの脚/体幹運動評価(Rivermead Motor Assessment of Leg/Trunk)、リバーミードの腕部運動評価(Rivermead Motor Assessment of Arm)及びノッチンガッムの日常生活長期活動性(Nottingham Extended Activities of Daily Living)(入院時を除く)で評価する。
【0144】
患者に、2回/日で5mg/日の経口エルトプラジンを処方し、投与2〜4時間後に起立性心拍数及び血圧を含むバイタルサインを測定して、化合物の耐容性を評価する。仰臥位心拍数及び血圧は、安静5分後に、立位心拍数及び血圧は直立1〜2分後に測定しなければならない。対象は、7及び35日目、並びにスクリーニング兼45日目/研究終結日に研究薬物投与の2〜4時間後に、心電図(ECG)を記録しなければならない。次いで、患者を、2週間、1カ月及び3カ月後に同一試験を使用して評価する。患者が一般的課題の訓練及び再学習を受けていれば、エルトプラジンは、リハビリ治療の間に認知機能を改善する。
【実施例7】
【0145】
アルツハイマー病のエルトプラジンでの治療
精神障害の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorder)(第4版)によりアルツハイマー病と診断された継続外来患者を、ミニ精神状態検査(MMSE, Mini-Mental State Examination)、並びに記憶、論理化、視覚運動協調性、及び言語技能を評価するためのその他の試験を使用して評価する。注意力、作動記憶、判断及び意思決定を扱う認知機能に特別の注意が払われる。
【0146】
患者に、5mg/日のエルトプラジンを処方し、次いで2週間後に、同じ行動試験を使用して評価し、その結果で、初期投与量に対する個体の応答に応じて、投与量を上下に調節するか、同じに保持する。アルツハイマー病の症状を改善するのに、及び注意、判断、及び意思決定を改善するのに必要な限り、投与を継続する。
【実施例8】
【0147】
幼年期患者における不安障害のエルトプラジンでの治療
不安障害についてDSM−III−R又はDSM−IVの判定基準に合致している幼年期患者を、改善に関する臨床的総合印象(Clinical Global Impression of Improvement)(CGI−I)及びハミルトン不安評価尺度(HARS, Hamilton Anxiety Rating Scale)で評価する。
【0148】
患者に、5mg/日のエルトプラジンを処方し、次いで2週間後に、同じ行動試験を使用して評価し、その結果で、初期投与量に対する個体の応答に応じて、投与量を上下に調節するか、同じに保持する。介入後にいくつかの不安診断、いくつかのDSM−IV不安症状、及び恐怖状況に対処する能力に関して、子供を「大いに」又は「極めて大いに」改善されたと判断する。不安障害の症状を改善するのに必要な限り、投与を継続する。
【実施例9】
【0149】
認知脱抑制のエルトプラジンでの治療
刺激追求及び衝動的意思決定で特徴づけられる認知脱抑制と臨床的に診断された患者を、ヘイリング文章完成試験(Hayling Sentence Completion Test)を使用して評価する。ズッカーマン刺激追求尺度の脱抑制尺度(Disinhibitation-scale of Zuckerman's Sensation Seeking Scale)を使用して、認知脱抑制における低対高の間を区別し、図合わせ試験(Matching Familiar Figures Test)(Kagan et al.,1964)を使用して、行動抑制の指標を得る。
【0150】
患者に、5mg/日のエルトプラジンを処方し、次いで2週間後に、同じ行動試験を使用して評価し、その結果で、初期投与量に対する個体の応答に応じて、投与量を上下に調節するか、同じに保持する。認知脱抑制を治療するのに必要な限り、投与を継続する。
【実施例10】
【0151】
統合失調症に関連づけられる多動性のエルトプラジンでの治療
DSM−IVにより妄想、幻覚、及び言語能力の崩壊又は変性などの、統合失調症の症状を臨床的に呈している患者を、CGI−I及びADHD−RS−IVの不注意及び多動性下位尺度を使用して評価する。
【0152】
患者に、2回/日で5mg/日のエルトプラジンを処方し、次いで2週間後に、同じ行動試験を使用して評価し、その結果で、初期投与量に対する個体の応答に応じて、投与量を上下に調節するか、同じに保持する。多動性を治療するのに必要な限り、投与を継続する。
【実施例11】
【0153】
アルツハイマー病を有する患者における不注意のエルトプラジンでの治療
アルツハイマー病の症状を臨床的に呈している患者を、CGI−I、CPT、及びADHD−RS−IVの注意及び多動性下位尺度を使用して評価する。
【0154】
患者に、2回/日で5mg/日のエルトプラジンを処方し、次いで2週間後に、同じ行動試験を使用して評価し、その結果で、初期投与量に対する個体の応答に応じて、投与量を上下に調節するか、同じに保持する。不注意を治療するのに必要な限り、投与を継続する。
【実施例12】
【0155】
ADHDを共存しない統合失調症患者における不注意、多動性及び衝動性のエルトプラジンでの治療
DSM−IVによる妄想、幻覚、及び言語能力の崩壊又は変性などの、統御失調症の症状を臨床的に呈している患者を、CGI−I及びADHD−RS−IVの不注意、多動性及び衝動性下位尺度を使用して評価する。
【0156】
患者に、2回/日で5mg/日のエルトプラジンを処方し、次いで2週間後に、同じ行動試験を使用して評価し、その結果で、初期投与量に対する個体の応答に応じて、投与量を上下に調節するか、同じに保持する。不注意、多動性及び衝動性を治療するのに必要な限り、投与を継続する。
【実施例13】
【0157】
注意力及び衝動性に対するエルトプラジンの効果
タイミング/ピーク法試験(Timing/Peak Procedure Test)は、30秒の固定時間間隔での食物報酬に応答するように訓練されたマウスでのオペラント試験である。マウスは、ほぼ30秒周期での彼らの応答を高めるように学習する。この試験は、衝動性、注意力及びタイミング理解力を評価する。30秒間隔での高い応答ピーク及び狭い幅は、動物の改善された注意力及び時間理解力の印しである。
【0158】
簡潔には、マウスを、チャンバー内に配置し、食物を求めてレバーを押すように訓練した。訓練後、動物は、この固定間隔での応答のみが報償をもたらすので、30秒の固定間隔が経過した後に応答することを学習する。強化送達を伴って、レバーが引っ込められ、試行間間隔が始まる。一旦、動物を強化試行で訓練すると、「ピーク試行」又は非強化試行が、導入され、強化試行と混合される。これらの無意味な試行中、応答は強化されず、試行は120秒間持続する(すなわち、レバーは伸びるが、強化は提供されない)。120秒経過した後、試行は終結し、レバーが引っ込められ、前と同じように試行間間隔が始まる。したがって、動物は、30秒間後に食物が提供されないなら、レバーが引っ込められ、試行が再び始まるまで、強化送達が存在しないことを学習した。
【0159】
この課題を上手に実施するため、動物は、応答(レバー押し)と強化送達(コンデンスミルク)との間の関連を学習する必要があり、彼らは、時間を理解、記憶する必要があり、記憶した時間に応答して又は応答を抑制して行動する必要があり、最終的に、試行中の経過時間を強化のための時間に関する彼らの記憶と比較する必要がある。したがって、真の認知増強剤は、ピーク時間に影響を及ぼさないで、強化時間後の応答を低減、すなわち、カーブを鋭くし、応答曲線の幅を縮小しなければならない。鋭い曲線は、高められた注意過程を暗示する。
【0160】
エルトプラジン(0.1mg/kg、腹腔内)が、応答ピークを鋭くし、幅を有意に縮小したことを示すデータについては図1を参照されたい。長期投与後の効果の低下は存在しなかった。
【実施例14】
【0161】
作業記憶に対するエルトプラジンの効果
放射アーム迷路(RAM, radial arm maze)などのいくつかの迷路を、げっ歯動物における作業記憶を評価するように構成した。RAMは、中心コンパートメントから円陣状に広がる8つの長い通路からなる。RAM中で、ラットは、アームの全て又はサブ区分から食物報酬を取って来ることを学習する。作業記憶は、前以て餌をまいたアームへの所定の試行内での侵入を測定することによって、評価する。RAMは、ラットにおける作業記憶の敏感な評価を提供することが見出されている。海馬の病変は、統合失調症の成人及び新生児の双方での海馬病変モデルにおいて欠陥をもたらす。
【0162】
訓練のために、食物を取り上げられたラットを、迷路の中心の囲まれた円筒中に20秒間配置したのち、円筒を除去して、迷路を探索することを可能にする。食物報酬で各放射アームに誘惑する。動物に、全ての食物報酬を取ってくるために最大で5分間を付与した。この訓練を、動物が課題の成功的習得についての能力判定基準に合致するまで、1日1回、3週間継続した。
【0163】
4種のパラメーター:(1)既に侵入したアームへの侵入として定義される誤りの数、(2)最初の誤りが発生する前の、未訪問アーム中への連続的侵入(反復進入)の数、(3)課題を完結するための潜伏期、及び(4)8つのアーム中の全ての食物が捕集される前の、又は最大セッション継続期間に達する前のアーム侵入総数を記録して、ラットの能力を評価した。課題の成功的習得の判定基準は、3連続セッションについて、セッション毎に最大で3回の誤り、最小で6回の反復進入である。薬物試験では、放射アーム迷路の8つ全てのアームに餌をまいた。セッションは、どちらが最初に起こっても、全ての食物ペレットが捕集されるか、或いは10分が経過するまで継続した。
【0164】
ラットは、交差計画により、スコポラミン(0.5mg/kg、腹腔内)+媒体、又はスコポラミン(0.5mg/kg、腹腔内)+エルトプラジン(0.3mg/kg、腹腔内)を受け入れた。全ての対象が、双方の薬物治療を受け入れた。行動能力の評点化及び薬物投与は、治療条件を目隠しされた実験者によって実施された。全ての薬物試験セッションは、ビデオテープに記録した。
【0165】
0.5mg/kgスコポラミンの腹腔内投与は、ベースラインに比較して放射アーム迷路への反復進入の減少をもたらし、この効果は、ANOVAによって明らかにされるように、0.3mg/kgエルトプラジンの経口投与によって減弱された。図2参照。
【実施例15】
【0166】
視空間記憶に対するエルトプラジンの効果
作業記憶欠陥に加えて、「統合失調症における認知改善のための測定及び治療調査」(MATRICS, Measurement and Treatment Research to Improve Cognition in Schizophremia)イニシアチブで、統合失調症患者が視覚に関する学習及び記憶の障害を示す学習及び記憶の他の領域を確認した。げっ歯類での研究に適したいくつかの視覚に関する学習及び記憶課題が存在する(Powell,S.B.and M.A.Geyer,Overview of animal models of schizophrenia.Curr Protoc Neurosci,2007.Chapter 9:p.Unit 9 24)。げっ歯類での視空間要素を有する1つの記憶試験が、新規対象物認識試験(NOR, Novel Object Recognition Test)である(Ennaceur,A.and J.Delacour,A new one-trial test for neurobiological studies of memory in rats.1:Behavioral data.Behav Brain Res,1988.31(1):p.47-59)。該試験は、ラットを2つの同一対象物に触れさせ、間を置いて、ラットを最初の触れ合いで遭遇した馴染みの対象物の1つ及び追加の新規対象物と共にチャンバー内に戻すことを含む。げっ歯類本来の性向は、馴染みの対象物に比べ新規対象物により多く触れ合うことである。したがって、新規対象物を探索することにより長い時間を費やすラットは、最初の触れ合いで遭遇した馴染みの対象物のより良好な「記憶」を有すると考えられる。
【0167】
雄性Wistarラットを、薄暗い照明下の音響減衰室中に配置されたオープンフィールド区域を含む試験装置中で認知能力について評価した。各ラットを別々に試験し、区域、試行間の試験対象物、及びラットを清潔にすることによって、嗅覚/味覚の手がかりを除去するように注意した。全ての試験を、治療を目隠しされた観察者がビデオで評点化した。1日目に、ラットが10分の順化期間中に区域を自由に探索できるようにした。2日目に、各ラットを2つの同一対象物が存在する試験区域に配置した。各ラットを、同時に同一方向に向けて区域内に配置し、10分の試験期間中に対象物を積極的に探索するのに費やした時間を記録した。試験と試験との間は、ラットをその自分のケージに戻した。24時間後、各ラットを、1つの馴染みの対象物及び新規対象物の存在する試験区域に再び10分間配置し、双方の対象物を探索するのに費やした時間を記録した。対象物の呈示順序及び位置(左/右)は、ラット間で無作為化し、順序又は位置の好みに由来する偏向を防止した。新規対象物を探索するのに費やした時間のパーセントを記録した。
【0168】
訓練の1時間前に投与された0.3、1、3、及び10mg/kgのエルトプラジンは、訓練24時間後の媒体で治療された対照と比較して、ラットの新規対象物認識(NOR)記憶を有意に改善した。陽性対照である3mg/kgのガランタミンも、生理食塩水に比べてNOR記憶を有意に増強した。図3参照。
【実施例16】
【0169】
微小透析実験
前頭前皮質(PFC, prefrontal cortex)中の高められたドーパミン機能が、統合失調症の認知欠陥を改善できるという証拠が蓄積されている。エルトプラジンは、PFC中でのドーパミン及びノルエピネフェリンのかなりの放出、並びに対応するセロトニン放出の減少をもたらす(図4〜9参照)。
【0170】
微小透析プローブを前頭前皮質中に埋め込んだ。座標は、歯形バーも0mmに設定して、十字縫合からAP+2.0mm、ML+0.7mm(8°角で)、硬膜からDV−3.3mmであった。膜の有効透析表面長は2mmであった。微小透析実験は、手術の48時間後に開始した(前頭前皮質)。高精密ポンプ(KdScientific 220)を使用して、リンガー溶液を1.166μL/分の流速で微小透析プローブを通して灌流した。PEEKチューブ(内径0.005インチ、外形0.020インチ)に連結されたマウスデュアルチャネルスイベル(Mouse dual channel swivel)(Type 375/D/22QM、Instech Laboratories社製)を使用して、マウスの無制限運動を可能にした。透析プローブの灌流開始2.5時間後に手でサンプルを捕集して、モノアミン及びそれらの代謝産物に関する安定なベースラインを得た。最初の4サンプルの平均を計算し、ベースライン濃度とした。サンプルを30分毎に捕集し、電気化学検出を備えたHPLCで分析した。
【0171】
投与群につき6匹のマウスを、媒体、又は3mg/kg、10mg/kg及び30mg/kgのエルトプラジンで治療した。エルトプラジンは、C57マウスのPFC中での投与量に関連した、ドーパミン、ノルエピネフリン及びそれらの代謝産物(DOPAC及びHVA)の放出増加、並びにセレトニン及びその代謝産物(5HIAA)の対応する減少を示した。図4〜9参照。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経又は精神障害の症状を改善するために、神経疾患の症状を有する個体に有効量のエルトプラジン又はその薬学的に許容される酸付加塩を投与することを含む、多動性、不注意又は衝動性の中の1又は2以上を伴う認知機能障害に関連づけられる、ADHD以外の神経又は精神障害の治療方法。
【請求項2】
多動性を改善又は治療するために、必要とする個体に有効量のエルトプラジン又はその薬学的に許容される酸付加塩を投与することを含む、ADHD以外の神経又は精神障害に関連づけられる多動性の治療方法。
【請求項3】
不注意を改善又は治療するために、必要とする個体に有効量のエルトプラジン又はその薬学的に許容される酸付加塩を投与することを含む、ADHD以外の神経又は精神障害に関連づけられる不注意の治療方法。
【請求項4】
衝動性を改善又は治療するために、必要とする個体に有効量のエルトプラジン又はその薬学的に許容される酸付加塩を投与することを含む、ADHD以外の神経又は精神障害に関連づけられる衝動性の治療方法。
【請求項5】
障害が、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、クッシング病、レビー小体病、多発性硬化症、脳卒中、耽溺障害、広汎性発達障害、自閉症、脆弱X症候群、不安障害、プラダー・ウィリー症候群、攻撃性に関連づけられない統合失調症、双極性障害、鬱病、血管性痴呆、軽度認知機能障害、痴呆、及び譫妄からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
障害がパーキンソン病である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
障害がアルツハイマー病である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
障害がハンチントン病である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
障害がクッシング病である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
障害がレビー小体病である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
障害が多発性硬化症である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
障害が脳卒中である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
障害が耽溺障害である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
障害が広汎性発達障害である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
障害が自閉症である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
障害が脆弱X症候群である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
障害が不安障害である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
障害がプラダー・ウィリー症候群である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
障害が、攻撃性に関連づけられない統合失調症病である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
障害が双極性障害である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
障害が鬱病である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
障害が血管性痴呆である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
障害が軽度認知機能障害である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
障害が痴呆である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
障害が譫妄である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
認知機能を改善するために、必要とする個体に有効量のエルトプラジン又はその薬学的に許容される酸付加塩を投与することを含む、ヒトにおける認知機能の改善方法。
【請求項27】
精神運動遅滞と診断された個体に有効量のエルトプラジン又はその薬学的に許容される酸付加塩を投与することを含む、精神運動遅滞の治療方法。
【請求項28】
精神運動遅滞が、統合失調症に関連づけられる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
精神運動遅滞が、鬱病に関連づけられる、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
精神運動遅滞が、痴呆に関連づけられる、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
精神運動遅滞が、アルツハイマー病に関連づけられる、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
精神運動遅滞が、双極性障害に関連づけられる、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
精神運動遅滞と診断された個体に有効量のエルトプラジン又はその薬学的に許容される酸付加塩を投与することを含む、認知脱抑制の治療方法。
【請求項34】
認知脱抑制が、耽溺障害に関連づけられる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
認知脱抑制が、アルツハイマー病に関連づけられる、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
認知脱抑制が、統合失調症に関連づけられる、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
化合物が、約0.1mg/日〜約20mg/日の用量で投与される、請求項1〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
化合物が、約0.1mg/日〜約10mg/日の用量で投与される、請求項1〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
化合物が、約0.5mg/日〜約5mg/日の用量で投与される、請求項1〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
化合物が、約1mg/日〜約5mg/日の用量で投与される、請求項1〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
化合物が、約2.5mg/日〜約5mg/日の用量で投与される、請求項1〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
化合物がエルトプラジンである、請求項1〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
エルトプラジンが、1日あたり約5mgの用量で投与される、請求項1〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
エルトプラジンが、1日あたり約10mgの用量で投与される、請求項1〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
有効量のエルトプラジンが、個体において約0.06ng/ml〜約200ng/mlの血漿中エルトプラジン濃度をもたらす、請求項1〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
有効量のエルトプラジンが、個体において約0.2ng/ml〜約65ng/mlの血漿中エルトプラジン濃度をもたらす、請求項1〜41のいずれかに記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−521954(P2011−521954A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511764(P2011−511764)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/045221
【国際公開番号】WO2009/148891
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(503419631)サイコジェニックス・インコーポレーテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】PSYCHOGENICS INC.
【住所又は居所原語表記】765 Old Saw Mill River Road, Tarrytown, New York 10591, United States of America
【Fターム(参考)】