説明

神経変性疾患を治療するためのインドール誘導体

本発明は、以下の式(I)の化合物、またはその薬理学的に許容される塩、または立体異性体もしくは任意の比率での立体異性体の混合物に関し、式中:Xは、CHまたはC=O基であり;Xは、8から24個の炭素原子を有する飽和または不飽和の直鎖状炭水化物鎖であり;Rは、水素原子、またはOH、またはメトキシなどの(C‐C)アルコキシ基であり;ならびに、Rは、CHまたはCHOR基であり、ここで、Rは、水素原子または(C‐C)アルキル、CO−(C‐C)アルキル、もしくはNH−(C‐C)アルキル基である。本発明はまた、特に神経変性疾患の治療のための薬物としての前記化合物の使用、およびそれを作製するための方法にも関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族鎖で置換されたインドールの中心型を有し、神経変性疾患の治療に有用である化合物、およびそれを作製するための方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
寿命が延びると共に、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの神経変性疾患に罹患する患者がますます増加している。
【0003】
神経変性疾患は、患部伝達軸の機能障害と関連する、特定のニューロンサブ集団の進行性アポトーシス死を特徴とする。この種の疾患は、中枢神経系、特に脳の機能に進行的に影響を与えるものであり、この疾患は、素早くまたはゆっくり発病する可能性があり(数週間から数年)、多くの場合不可逆性である。この疾患による中枢神経系の患部領域に応じて、運動(motricity)、言語、記憶、知覚、および認知などのいくつかの機能が影響を受ける可能性がある。最も多い神経変性疾患はアルツハイマー病およびパーキンソン病である。
【0004】
世界全体で約2400万人が罹患するアルツハイマー病は、進行性および不可逆性である精神機能の喪失を引き起こす、脳組織の疾患である。最初の症状は、最近の出来事の記憶の喪失であり(健忘症)、続いて、言語(失語症)、運動の構成(失行症)、視覚的認識(失認)、および実行機能(意思決定および計画立案など)に影響を与える認知障害が発生する。
【0005】
パーキンソン病は、中枢神経系に影響を与え、運動機能の進行性の障害、特に身体の震えを引き起こす。
【0006】
種々のニューロン集団を維持することが報告されているニューロトロフィンの治療的使用が、治療目的で提案されてきた。傷害動物モデルにおける組換えニューロトロフィンの投与は、ニューロンの生存に対する有益な効果を示したが、そのヒトへの使用は、最初は推奨されたが、すぐに制限された。血液脳関門の通過を阻止するこれらの化合物の非常に強い親水性の性質、およびこれらが迅速に酵素分解されることにより、頭蓋内投与を繰り返し行う必要があり、このことは、著しい副作用を発生させる。
【0007】
さらに、これらの種々の神経変性疾患に対して報告されているその他の医薬は、疾患の進行速度を軽減することができるだけであり、その中には、この疾患の治癒、またはその進行の停止さえも可能であるものはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、これらの神経変性疾患の治療のために、血液脳関門を通過することができる新規なより活性な分子の発見が実際に現時点で求められている。
【0009】
インドール核は、抗菌、抗寄生虫、抗酸化、神経栄養、および抗炎症の活性がこれまでに報告されていることから、種々の生物学的活性を有する多くの天然または非天然化合物中に存在する中心型である。
【0010】
長鎖脂肪族がインドールにグラフトされている化合物は、その神経栄養特性について報告されている(Coowar D. et al. J. Med. Chem. 2004, 47, 6270)。これらの構造は、すでに報告されており、インドール環に直接結合した鎖を有するが、トリプタミンから誘導された構造は、このような特性について研究されていない。
【0011】
興味深いことに、発明者らはここで、バンレイシ科(Annonaceae family)のいくつかの植物、特にアテモヤ(Annona atemoya)、ギュウシンリ(Annona reticulata)、およびロリニアムコサ(Rollinia mucosa)から抽出された長鎖N‐アシルトリプタミンのタイプのトリプタミン天然誘導体(Wu Y.-C. et al. J. Nat. Prod. 2005, 68 (3), 406-408)、ならびにトリプタミンから誘導されるその他の合成類似体が、培養中のドーパミン作動性ニューロンに対する保護および分化活性を有することを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明の目的は、医薬としての、特に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、または脳血管発作などの神経変性疾患の治療または予防が有利に意図される、神経栄養薬または神経保護薬としての使用のための、以下の式(I):
【化1】

〔式中:
‐ Xは、CHまたはC=O基を表し;
‐ Xは、1〜24個、好ましくは8〜22個の炭素原子を含む飽和または不飽和の直鎖状炭化水素鎖を表し;
‐ Rは、水素原子、またはOH、またはメトキシなどの(C‐C)アルコキシ基を表し;ならびに、
‐ Rは、CHまたはCHOR基を表し、ここで、Rは、水素原子、または(C‐C)アルキル、CO−(C‐C)アルキル、もしくはNH−(C‐C)アルキル基を表す。〕
の化合物、またはこの化合物の薬理学的に許容される塩、立体異性体、もしくは任意の比率での立体異性体の混合物、特にはエナンチオマーの混合物、特にはラセミ体である。
【0013】
本発明の目的のために、「(C‐C)アルキル」基とは、1から6個の炭素原子を含む直鎖状もしくは分岐鎖状飽和炭化水素鎖を意味し、特に、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、イソ‐ブチル、sec‐ブチル、tert‐ブチル、n‐ペンチル、n‐ヘキシル基である。好ましくは、これはメチル基である。
【0014】
本発明の目的のために、「(C‐C)アルコキシ」基とは、酸素原子を介して分子と結合する上記で定める(C‐C)アルキル基を意味する。特に、これは、メトキシ、エトキシ、n‐プロポキシ、イソプロポキシ、n‐ブトキシ、イソ‐ブトキシ、sec‐ブトキシ、tert‐ブトキシ、n‐ペントキシ基を意味する。好ましくは、これはメトキシ基である。
【0015】
本発明の目的のために、「CO−(C‐C)アルキル」基とは、CO基を介して構成要素(module)と結合する上記で定める(C‐C)アルキル基を意味する。特に、これは、アシル基(−COCH)またはエチルカルボニル基(−COCHCH)であってよい。
【0016】
本発明の目的のために、「NH−(C‐C)アルキル」基とは、NH基を介して構成要素と結合する上記で定める(C‐C)アルキル基を意味する。
【0017】
本発明の目的のために、「不飽和」とは、炭化水素鎖が、1もしくは複数の不飽和部分を含んでよいことを意味する。
【0018】
本発明の目的のために、「不飽和部分」とは、二重結合または三重結合を意味し、好ましくは二重結合を意味する。
【0019】
本発明の目的のために、「薬理学的に許容される」とは、医薬組成物の作製に有用であり、一般的に安全であり、毒性でも、それ以外の生物学的に望ましくない性質でもなく、獣医学的用途およびヒトへの薬理学的用途に対して許容されるものを意味する。
【0020】
本発明の目的のために、化合物の「薬理学的に許容される塩」とは、本明細書で定めるように薬理学的に許容され、親化合物の必要とされる薬理活性を有する塩を意味する。そのような塩としては:
(1) 水和物および溶媒和物、
(2) 塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、およびリン酸などの無機酸から形成されるか;または、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2‐ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2‐ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、ジベンゾイル‐L‐酒石酸、酒石酸、p‐トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸、およびトリフルオロ酢酸などの有機酸から形成される酸付加塩;ならびに、
(3) 親化合物に存在する酸プロトンが、アルカリ金属イオン(例えばNa、K、またはLi)、アルカリ土類金属イオン(Ca2+またはMg2+など)、またはアルミニウムイオンを例とする金属イオンによって置換されるか;または、有機もしくは無機塩基と配位結合する場合に形成される塩、が挙げられる。許容される有機塩基としては、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N‐メチルグルカミン、トリエタノールアミン、およびトロメタミンなどが挙げられる。許容される無機塩基としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、および水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0021】
本発明において、「立体異性体」とは、ジアステレオ異性体またはエナンチオマーを意味する。これらは、従って、光学異性体である。互いに鏡像の関係にない立体異性体の場合、それらは「ジアステレオ異性体」と称され、重なり合わない鏡像の関係にある立体異性体は、「エナンチオマー」と称される。
【0022】
4つの同一ではない置換基と結合する炭素原子は、「キラル中心」と称される。
【0023】
2つのエナンチオマーの等モル混合物は、ラセミ体と称される。
【0024】
本発明の1つの特定の実施態様によれば、本発明による化合物は、以下の式(Ia):
【化2】

〔式中:

【化3】

は、独立して、単結合または二重結合を表し、
‐ X、R、およびRは、上記で定める通りであり、ならびに、
‐ mは、1と等しいかもしくはこれより大きい整数を表し、nおよびpは、互いに独立して、0と等しいかもしくはこれより大きい整数を表し、ここで、m+n+p+4≦24であり、好ましくは、8≦m+n+p+4≦22である。〕
を満たし得るものである。
【0025】
より特定的には、本発明による化合物は、以下の式(Ib)および(Ic):
【化4】

〔式中:
‐ R、R、およびXは、上記で定める通りであり、
‐ qは、1〜24、好ましくは8〜22の整数を表し、ならびに、
‐ m、nおよびpは、上記で定める通りである。〕
を満たし得るものである。
【0026】
は、インドール中心型の炭素原子のいずれか1つに位置する、インドール核に対する置換基を表す。これは、有利には、水素原子である。
【0027】
は、有利には、CHまたはCHOH基を表す。
【0028】
は、有利には、CH基を表す。
【0029】
特に、本発明による化合物は、以下から選択することができる:
【表1】


【0030】
本発明はまた、医薬の製造、特に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、または脳血管発作などの神経変性疾患の治療または予防が有利に意図される神経栄養薬または神経保護薬の製造のための上記で定める式(I)の化合物の使用にも関する。
【0031】
本発明はまた、上記で定める式(I)の化合物の効果量の投与を、それを必要とする患者に施すことを含む、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、または脳血管発作などの神経変性疾患の治療または予防のための方法にも関する。
【0032】
本発明の別の目的は、以下の式(I):
【化5】

〔式中:
‐ Xは、CHまたはC=O基を表し、
‐ Xは、1〜24個、好ましくは8〜22個の炭素原子を含む飽和または不飽和の直鎖状炭化水素鎖を表し、
‐ Rは、水素原子、またはOH、またはメトキシなどの(C‐C)アルコキシ基を表し、ならびに、
‐ Rは、CHまたはCHOR基を表し、ここで、Rは、水素原子、または(C‐C)アルキル、CO−(C‐C)アルキル、もしくはNH−(C‐C)アルキル基を表す。〕
の化合物、またはその薬理学的に許容される塩、立体異性体、もしくは任意の比率での立体異性体の混合物、特にはエナンチオマーの混合物、特にはラセミ体であるが、ただし、以下の式:
【化6】

〔式中、u=14、16〜18、または20〜24である。〕の化合物は除く。
【0033】
除外される化合物は、アテモヤまたはロリニアムコサの種子の新たに単離された化合物として、Wu Y.-C. et al. J. Nat. Prod. 2005, 68 (3), 406-408およびChavez D. et al. J. Nat. Prod. 1999, 62 (8), 1119-1122に記載されている。
【0034】
本発明の1つの特定の実施態様によれば、本発明による化合物は、以下の式(Ia):
【化7】

〔式中:

【化8】

は、独立して、単結合または二重結合を表し、
‐ X、RおよびRは、上記で定める通りであり、ならびに、
‐ mは、1と等しいかもしくはこれより大きい整数を表し、nおよびpは、互いに独立して、0と等しいかもしくはこれより大きい整数を表し、ここで、m+n+p+4≦24であり、好ましくは、8≦m+n+p+4≦22である。〕
を満たし得るものである。
【0035】
より詳細には、本発明による化合物は、以下の式(Ib)および(Ic):
【化9】

〔式中:
‐ R、RおよびXは、上記で定める通りであり、
‐ qは、1〜24、好ましくは8〜22の整数を表し、ならびに、
‐ m、nおよびpは、上記で定める通りである。〕
の1つを満たし得るものである。
【0036】
は、有利には、水素原子を表す。
【0037】
は、有利には、CHまたはCHOH基を表す。
【0038】
は、有利には、CH基を表す。
【0039】
特に、本発明による化合物は、以下から選択することができる:
【表2】


【0040】
本発明の別の目的は、少なくとも1つの上述の式(I)の化合物、および薬理学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0041】
本発明による化合物は、経口、舌下、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所、または直腸内の経路で投与してよく、好ましくは経口経路である。
【0042】
経口、舌下、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所、または直腸内投与用の本発明の医薬組成物の活性成分は、従来の医薬担体と混合した単位投与剤形として、動物またはヒトに投与してよい。適切な単位投与剤形は、錠剤、カプセル剤、粉末剤、ペレット剤、および経口溶液剤または懸濁液剤などの経口経路用剤形、舌下および経口投与剤形、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、鼻腔内、または眼内投与剤形、ならびに直腸内投与剤形を含む。
【0043】
固体組成物が錠剤の形態で作製される場合、主たる活性成分は、ゼラチン、デンプン、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはアラビアガムなどの医薬担体と混合される。錠剤は、ショ糖もしくはその他のいずれかの適切な材料でコーティングしてよく、または持続もしくは遅延活性を有するように、および所定量の活性成分を連続して放出するように錠剤を処理してもよい。
【0044】
カプセル製剤は、活性成分を希釈剤と混合し、得られた混合物を軟質または硬質カプセルへ注ぎ込むことで得られる。
【0045】
シロップ剤またはエリキシル剤の形態の製剤は、活性成分を、甘味剤、防腐剤、および呈味剤、ならびに適切な着色剤と組み合わせて含有してよい。
【0046】
水に分散可能である粉末剤またはペレット剤は、活性成分を、分散剤もしくは湿潤剤、または懸濁剤、および味調節剤もしくは甘味剤と混合して含有してよい。
【0047】
直腸内投与には、カカオバターまたはポリエチレングリコールを例とする直腸内温度で融解するバインダーと共に作製される坐薬が利用される。
【0048】
非経口、鼻腔内、または眼内投与には、分散剤および/または薬理学的に適合可能である湿潤剤を含有する水性懸濁液、等張性生理食塩水溶液、または滅菌注射溶液が利用される。
【0049】
活性剤はまた、1もしくは複数の添加担体を含む場合もあるマイクロカプセルの形態で製剤してもよい。
【0050】
本発明による化合物は、1日あたり0.01mgから1000mgの間の用量で用いてよく、単一用量として1日1回投与しても、または1日2回の等用量を例とする1日を通して複数回の用量として投与してもよい。1日に投与される用量は、有利には、5mgから500mgの間であり、さらにより有利には、10mgから200mgの間である。これらの範囲外の用量を用いる必要があり得るが、当業者であれば、自身でこのことを認識するであろう。
【0051】
1つの特定の実施態様によれば、上記で定める医薬組成物はまた、特に神経変性疾患の治療または予防に有用であり、有利には、ドネゼピル(donezepil)、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン、およびタクリンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬;セレギリンなどのモノアミンオキシダーゼ阻害薬;エンタカポンなどのO‐メチルトランスフェラーゼカテコラミン阻害薬;アマンタジンおよびバクロフェンなどのグルタミン酸作動阻害薬(glutamatergic inhibitors);サブコメリンなどのコリン作動アゴニスト(cholinergic agonists);ペルゴリド、カベルゴリン、ロピリノール(ropirinole)、およびプラミペキソールなどのドーパミン作動アゴニスト(dopaminergic agonists);L‐3,4‐ジヒドロキシフェニルアラニンなどの神経メディエーター類似体または前駆体;ならびに、トリヘキシフェニジルおよびトロパテピンなどの抗コリン作動薬、の中から選択される、別の活性成分も含んでよい。
【0052】
本発明の別の目的は、医薬としての、特に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、または脳血管発作などの神経変性疾患の治療または予防が有利に意図される神経栄養薬または神経保護薬としての使用のための、上記で定める医薬組成物である。
【0053】
本発明の別の目的は、上述の式(I)の化合物の製造のための方法であり、その方法は、以下の工程:
(a) トリプタミンと、以下の式(II):
Z−X−R (II)
〔式中、Zはカルボン酸官能基の遊離の形態または活性の形態を表し、RおよびXは上記で定める通りである。〕の化合物とをカップリングさせ、以下の式(I‐1):
【化10】

〔式中、R、RおよびXは上記で定める通りである。〕の化合物を得る工程、
b) 所望により、上記の工程(a)で得られた式(I‐1)の化合物のカルボニル官能基を還元し、以下の式(I‐2):
【化11】

〔式中、R、RおよびXは上記で定める通りである。〕の化合物を得る工程、ならびに、
(c) 前工程で得られた化合物(I‐1)または(I‐2)を反応媒体から分離する工程、
を含むことを特徴とする。
【0054】
工程a:
本発明の目的のために、「遊離の形態のカルボン酸官能基」とは、COH基を意味する。
【0055】
本発明の目的のために、「活性化された形態のカルボン酸官能基」とは、求核剤に対してより活性となるように修飾されたカルボン酸官能基を意味する。このような活性化された形態は、当業者に公知であり、特に、酸塩化物(COCl)であってよい。
【0056】
従って、Zは、有利には、COHまたはCOCl基を表す。
【0057】
特に、式(II)の化合物は、Z=COHである場合、市販の脂肪酸などであってよい。Zが活性化されたカルボン酸官能基を表す場合、式(II)の化合物は、当業者に公知の技術を用いてカルボン酸官能基を活性化することにより、対応する市販のカルボン酸から容易に得ることができる。従って、酸塩化物は、特に、数滴のジメチルホルムアミド(DMF)の存在下における対応するカルボン酸と塩化オキサリルとの反応によって得ることができる。この反応は、ジクロロメタンなどの溶媒中、特に周囲温度にて実施してよい。
【0058】
本発明の第一の特定の実施態様によれば、用いられる式(II)の化合物は、Z=COHの基を含む(遊離酸の形態)。この場合、カップリング反応は、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐3‐エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、2‐H‐ベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2‐(1H‐ベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、またはO‐(7‐アゾベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)などのカップリング剤の存在下にて行われ、場合によっては、N‐ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、N‐ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、3,4‐ジヒドロ‐3‐ヒドロキシ‐4‐オキソ‐1,2,3‐ベンゾトリアゾール(HOOBt)、1‐ヒドロキシ‐7‐アザベンゾトリアゾール(HAt)、またはN‐ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホNHS)などのカップリング補助剤と共に行われる。好ましくは、カップリングは、EDC/HOBtの組み合わせの存在下で行われる。
【0059】
この反応は、ジクロロメタンなどの溶媒中、特に周囲温度にて、場合によってはトリエチルアミンなどの塩基を用いて行ってよい。
【0060】
この第一の特定の実施態様は、R=CHOHである式(I)の化合物の作製に特に適している。
【0061】
本発明の第二の特定の実施態様によれば、用いられる式(II)の化合物は、Zの基を、活性化されたカルボン酸官能基の形態、より詳細には、酸塩化物の形態で含む。この場合、カップリング反応は、有利には、トリエチルアミンなどの塩基の存在下で行われる。
【0062】
この反応は、ジクロロメタンなどの溶媒中、特に周囲温度にて行ってよい。
【0063】
この第二の特定の実施態様は、有利には、R≠CHOHの場合に、特にR=CHの場合に用いられ、それは、ヒドロキシル基(OH)が塩化オキサリルと反応してしまうからである。
【0064】
工程b:
この還元工程により、アミドをアミンへ還元して、XがC=Oである式(I)の化合物をXがCHである式(I)の化合物へ変換することが可能となる。
【0065】
この工程は、有利には、LiAlHなどの水素化物の存在下で行われる。これは、テトラヒドロフランなどの溶媒中で行ってよい。
【0066】
本発明の目的のために、「水素化物」とは、Hヒドリドイオンを放出して還元反応を行う能力を有する化学化合物を意味する。
【0067】
工程c:
最終生成物は、例えば、抽出、溶媒の蒸発、または析出およびろ過による、当業者に公知の技術を用いて媒体から分離される。
【0068】
こうして得られた式(I)の化合物はまた、必要に応じて、化合物が結晶性である場合は再結晶、蒸留、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィ、または高速液体クロマトグラフィ(HPLC)など、当業者に公知の方法を用いて精製してもよい。
【0069】
本発明は、以下の限定されない実施例を読むことでより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、処理なし(コントロール)、または10μMでのTrolox(登録商標)による処理後、または10nMでの化合物1hによる処理後、DHR‐123試験条件下で得られた蛍光ニューロンの写真を示す。
【図2】図2は、実施例2.3で作製された3つの部分の脳切片を示す。
【図3】実施例2.3の実験で用いたマウスの脳抽出物のHPLC‐MS/MSを用いて得られたクロマトグラム(横座標は時間を分で示し、縦座標は相対強度をパーセントで示す)を示す図であり、本発明による化合物2cの存在および非存在を示す。図4は、経口投与処理のフレームワークで得られたクロマトグラムに相当し、図5は、腹腔内処理のフレームワークで得られたクロマトグラムに相当する。
【図4】実施例2.3の実験で用いたマウスの脳抽出物のHPLC‐MS/MSを用いて得られたクロマトグラム(横座標は時間を分で示し、縦座標は相対強度をパーセントで示す)を示す図であり、本発明による化合物2cの存在および非存在を示す。図4は、経口投与処理のフレームワークで得られたクロマトグラムに相当し、図5は、腹腔内処理のフレームワークで得られたクロマトグラムに相当する。
【実施例】
【0071】
1. 本発明による化合物の合成
1.1 XがC=Oである式(I)の化合物の合成
酸塩化物を出発物質とする一般合成手順:
乾燥ジメチルホルムアミドの3滴および塩化オキサリル(1.04mL、12mmol)を、不活性雰囲気下、0℃にて、ジクロロメタン中(10mL)の脂肪酸(2mmol)の溶液へ添加する。この混合物を0℃にて1時間攪拌する。ジクロロメタンおよび過剰の塩化オキサリルを減圧留去する。こうして得られた酸塩化物を5mLの乾燥ジクロロメタンに溶解する。
【0072】
トリエチルアミン(0.55mL、2mmol)を、不活性窒素雰囲気下、0℃にて、ジクロロメタン中(10mL)のトリプタミン(160mg、1mmol)の溶液へ添加し、次に、ジクロロメタン(5mL)に溶解した酸塩化物をゆっくり添加する。この反応混合物を周囲温度で2時間攪拌する。この反応物を加水分解し、次にジクロロメタンで抽出する。有機相を無水MgSO上で乾燥し、次に減圧濃縮する。生成物を、8:2の比率のシクロヘキサンおよび酢酸エチルの混合物を用いたシリカカラム上で精製する。
【0073】
N‐(2‐(1H‐インドール‐3‐イル)エチル)トリデカナミド(1a)
収率: 95%
NMR1H (400 MHz, CDCl3) δ ppm: 0.88 (t, J= 6.8 Hz, 3H); 1.25 (m, 17H); 1.58 (m, 5H); 2.09 (t, J= 7.2 Hz, 2H); 2.98 (t, J= 6.8 Hz, 2H); 3.59 (t, J= 6.8 Hz, 1H); 3.62 (t, J= 6.8 Hz, 1H); 5.48 (s, 1H); 7.04 (d, J= 1.6 Hz, 1H); 7.13 (t, J= 7.2 Hz, 1H); 7.22 (t, J= 7.2 Hz, 1H); 7.38 (d, J= 8.0 Hz, 1H); 7.61 (d, J= 8.0 Hz, lH,); 8.05 (s, 1H).
NMR13C (100 MHz, CDCl3) δ ppm: 14.1, 22.5,25.2, 29.2, 29.3, 29.5, 3 1.8, 36.8, 39.5, 111.1, 113.1, 118.6, 119.4, 121.8, 122.1, 127.4, 136.4, 173.0.
ESI-MS m/z: 379 ([M+Na]+,100).
IR cm-1: 608,671,719,739, 801,847,913, 1009, 1068, 1094, 1130, 1222, 1246, 1271, 1294, 1340, 1377, 1424, 1456, 1470, 1554, 1629, 1650, 2851, 2918, 2955, 3089, 3264, 3387.
【0074】
N‐(2‐(1H‐インドール‐3‐イル)エチル)ペンタデカナミド(1b)
収率: 77%
NMR1H (400MHz, CDCl3) δ ppm: 0.88(t, J= 6.8 Hz, 3H); 1.25 (m,22H); 1.61 (m, 4H); 2.10 (t, J= 7.0 Hz, 2H); 2.98 (t, J= 6.8 Hz, 2H); 3.58 (t, J= 6.4 Hz, 1H); 3.65(t,J=6.4 Hz,1H); 5.49(s,1H);7.04(s,1H);7.12(t,J=7.0 Hz,1H); 7.22(t,J=7.8 Hz,1H); 7.38(d,J= 7.6 Hz, 1H); 7.61(d,J= 8.2 Hz, 1H); 8.04(s, 1H).
NMR13C (100MHz, CDCl3) δ ppm: 14.1, 22.6, 22.9, 23.7, 25.3, 28.9, 29.2, 29.4, 29.6, 31.8, 36.8, 39.6, 111.2, 112.9, 118.6, 119.3, 122.0, 127.3, 128.7, 130.8, 136.4, 173.1.
ESI-MS m/z: 407([M+Na]+,100).
IR cm-1: 607, 718, 739, 801, 931, 1010, 1069, 1094, 1130, 1225, 1297, 1340, 1377, 1425, 1456, 1470, 1555, 1630, 1650, 2850, 2918, 2955, 3267, 3387.
【0075】
N‐(2‐(1H‐インドール‐3‐イル)エチル)ヘキサデカナミド(1c)
収率: 87%
NMR1H (400MHz, CDCl3) δ ppm: 0.88(t, J= 6.9 Hz, 3H); 1.25 (m,30H); 1.57 (m, 4H); 2.09 (t, J= 7.2 Hz, 2H); 2.98 (t, J= 6.9 Hz, 2H); 3.60 (t, J= 6.6 Hz, 1H); 3.62(t, J= 6.6Hz,1H); 5.56(s, 1H); 7.04(d,J= 2.1 Hz, 1H); 7.13(t, J=.8 Hz, 1H); 7.22(t, J= 6.9 Hz,1H); 7.37(d,J= 8.1 Hz, 1H); 7.61(d,J= 7.2 Hz, 1H); 8.06(s, 1H).
NMR13C (100MHz, CDCl3) δ ppm: 14.1, 22.7, 25.2, 25.3, 25.7, 26.9, 29.1, 29.3, 29.4, 29.5, 29.6, 29.7, 31.9, 33.4, 36.9, 39.7, 111.2, 113.0, 118.7, 119.4, 122.0, 122.1, 127.4, 136.4, 173.1.
ESI-MS m/z: 421 ([M+Na]+,100).
IR cm-1: 608, 718, 739, 801, 1011, 1094, 1225, 1293, 1340, 1377, 1456, 1553, 1630, 2850, 2918, 3267, 3387.
【0076】
N‐(2‐(1H‐インドール‐3‐イル)エチル)ヘプタデカナミド(1d)
収率: 93%
NMR1H (400MHz, CDCl3) δ ppm: 0.88(t, J= 6.6 Hz, 3H); 1.25 (m,26H); 1.57 (m, 2H); 2.09 (t, J= 7.6 Hz, 2H); 2.98 (t, J= 6.8 Hz, 2H); 3.60 (t, J= 6.6 Hz, 1H); 3.62(t, J= 6.6 Hz, 1H); 5.49(s, 1H); 7.04(d,J= 2.1 Hz, 1H); 7.13(t, J= 7.6 Hz, 1H); 7.21(t, J= 7.6Hz,1H); 7.38(d,J= 8.0 Hz, 1H); 7.61(d,J= 8 Hz, 1H); 8.09(s, 1H).
NMR13C (100MHz, CDCl3) δ ppm: 14.1, 22.7, 25.4, 25.7, 29.3, 29.4, 29.6, 29.7, 31.9, 36.9, 39.6, 111.2, 113.1, 118.7, 119.5, 121.9, 122.2, 127.3, 136.4, 173.1.
ESI-MS m/z: 435 ([M+Na]+, 100).
IR cm-1: 717, 739, 800, 1010, 1067, 1094, 1225, 1300, 1339, 1377, 1423, 1456, 1471, 1552, 1629, 1649, 2850, 2918, 3267, 3393.
【0077】
N‐(2‐(1H‐インドール‐3‐イル)エチル)オクタデカナミド(1e)
収率: 95%
NMR1H (400MHz, CDCl3) δ ppm: 0.88 (t, J= 6.9 Hz, 3H); 1.25 (m, 27H); 1.57 (m, 2H); 2.09 (t, J= 7.2 Hz, 2H); 2.98 (t, J= 6.6 Hz, 2H); 3.60 (t, J= 6.3 Hz, 1 H); 3.62 (t, J= 6.3 Hz, 1H); 5.45 (s, 1H); 7.03 (d, J=2.1 Hz, 1H); 7.13 (t, J= 7.8 Hz, 1H); 7.21 (t, J= 7.8 Hz, 1H); 7.38 (d, J= 8.1 Hz, 1H); 7.61 (d, J= 7.2 Hz, 1H); 8.07 (s, 1H).
NMR13C (100MHz, CDCl3) δ ppm: 14.1, 22.7, 25.4, 25.7, 29.3, 29.4, 29.5, 29.6, 29.7, 31.9, 36.9, 39.6, 111.2, 113.2, 118.8, 119.5, 121.9, 122.2, 127.4, 136.4, 173.1.
ESI-MS m/z: 449 ([M+Na]+ (100).
IR cm-1: 609, 718, 739, 800, 1013, 1094, 1224, 1298, 1339, 1377, 1424, 1456, 1553, 1629, 1649, 2850, 2918, 3267, 3392.
【0078】
N‐(2‐(1H‐インドール‐3‐イル)エチル)イコサナミド(1f)
収率: 50%
NMR1H (400MHz, CDCl3) δ ppm: 0.88 (t, J= 6.8 Hz, 3H); 1.25 (m, 30H); 1.57 (m, 2H); 2.09 (t, J= 7.6 Hz, 2H); 2.98 (t, J= 6.8 Hz, 2H); 3.60 (t, J= 6.4 Hz, 1H); 3.62 (t, J= 6.4 Hz, 1H); 5.05 (s, 1H); 7.04 (s, 1H); 7.13 (t, J= 8.0 Hz, 1H); 7.21 (t, J= 7.6 Hz, 1H); 7.38 (d, J= 8.0 Hz, 1H); 7.61 (d, J= 7.6 Hz, 1H); 8.10 (s, 1H).
NMR13C (100MHz,CDCl3) δ ppm: 14.1, 22.7, 25.4, 25.7, 29.3, 29.4, 29.5, 29.7, 31.9, 33.7, 36.9, 39.6, 111.2, 113.1, 118.7, 119.5, 121.9, 122.2, 136.6, 173.1.
ESI-MS m/z: 477 ([M+Na]+, (100).
IR cm-1: 669, 718, 739, 799, 913, 1012, 1066, 1095, 1222, 1299, 1339, 1377, 1424, 1456, 1472, 1552, 1629, 1649, 2850, 2917, 3269, 3394.
【0079】
N‐(2‐(1H‐インドール‐3‐イル)エチル)トリコサナミド(1g)
収率: 88%
NMR1H (400MHz, CDCl3) δ ppm: 0.88 (t, J= 6.6 Hz, 3H); 1.25 (m, 38H); 1.57 (m, 2H); 2.09 (t, J= 7.2 Hz, 2H), 2.98 (t, J= 6.4 Hz, 2H), 3.60 (t, J= 6.4 Hz, 1H); 3.62 (t, J= 6,4 Hz, 1H); 5.47 (s, 1H), 7.04 (d, J=2.0 Hz, 1H); 7.13 (t, J= 7.6 Hz, 1H); 7.21 (t, J= 7.6 Hz, 1H); 7.38 (d, J= 8.4 Hz, 1H); 7.61 (d, J= 8.0 Hz, 1H); 8.02 (s, 1H).
NMR13C (100MHz, CDCl3) δ ppm: 14.1, 22.7, 25.4, 25.7, 29.3, 29.4, 29.5, 29.7, 31.9, 33.7, 36.9, 39.6, 111.2, 113.1, 118.7, 119.5, 121.9, 122.2, 136.6, 173.1.
ESI-MS m/z: 497([M+Na]+, 100).
IR cm-1: 560, 580, 612, 719, 738, 800, 983, 1093, 1225, 1342, 1377, 1462, 1472, 1564, 1628, 2848, 2917, 2959, 3258, 3396
【0080】
(8Z,11Z)‐N‐(2‐(1H‐インドール‐3‐イル)エチル)へプタデカ‐8,11‐ジエナミド(1h)
収率: 81%
NMR1H (400MHz, CDCl3) δ ppm: 0.90 (t, J= 6.8 Hz, 3H); 1.25 (m, 14H); 1.59 (t, J=6.8 Hz, 2H); 2.06 (m, 4H); 2.10 (t. J= 7.2 Hz, 2H), 2.79 (t, J= 6.4 Hz, 2H), 2.98 (t, J= 6,4 Hz, 2H); 3.59 (t, J= 6.4 Hz, 1 H); 3,62 (t, J= 6,4 Hz, 1H); 5.37 (m, 4H), 5.63 (s, 1H), 7.00 (d, J=1,6 Hz, 1H); 7.12 (t, J= 7.6 Hz, 1H); 7.21 (t, J= 7.6 Hz, 1H); 7.37 (d, J= 8.0 Hz, 1H); 7.60 (d, J= 7.6 Hz, 1H); 8.47 (s, 1H).
NMR13C (100MHz, CDCl3) δ ppm: 14.0, 22.5, 25.3, 25.6, 25.7, 27.1, 29.1, 29 2, 29.3, 29.4, 29.6, 31.5, 36.8, 39,7, 111.3, 112.8, 118.6, 119.3, 122.0, 127.3, 127.8, 128.0, 130.0, 130.2, 136.4, 173.2.
ESI-MS m/z: 445([M+Na])+, 100).
IR cm-1: 560, 580, 608, 719, 739, 801, 931, 1011, 1069, 1094, 1126, 1225, 1269, 1299, 1340, 1377, 1425, 1456, 1555, 1629, 1650, 2851, 2920, 3010, 3264, 3386.
【0081】
遊離カルボン酸を出発物質とする一般合成手順:
トリエチルアミン(0.83mL、6mmol)、EDC(768mg、4mmol)、およびHOBt(405mg、3mmol)を、ジクロロメタン中(40mL)のトリプタミン(320mg、2mmol)およびカルボン酸(518mg、2mmol)の溶液へ添加する。この混合物を、不活性窒素雰囲気下、周囲温度にて一晩攪拌する。この反応物を加水分解し、次にジクロロメタンで抽出し、飽和NHCl水溶液で洗浄する。有機相を無水MgSO上で乾燥し、減圧濃縮する。生成物を、95:5の比率のジクロロメタンおよびメタノールの混合物を用いたシリカカラム上で精製する。
【0082】
N‐(2‐(1H‐インドール‐3‐イル)エチル)‐15‐ヒドロキシペンタデカナミド(1i)
収率: 60%
NMR1H (400MHz, CDCl3) δ ppm: 1.25 (m, 22H); 1.57 (m, 4H); 2.09 (t, J= 7.2 Hz, 2H); 2.98 (t, J= 6.8 Hz, 2H); 3.59-3.65 (m, 4H); 5.48 (s, 1H); 7.04 (d, J= 1.6 Hz, 1H); 7.13 (t, J= 7.6 Hz, 1H); 7.22 (t, J= 8.0 Hz, 1H); 7.38 (d, J= 8.0 Hz, 1H); 7.61 (d, J= 8.0 Hz, 1H); 8.06 (s, 1H).
NMR13C (100MHz, CDCl3) δ ppm: 24.8, 25.4, 25.7, 26.3, 29.3, 29.4, 29.5, 30.4, 39.6, 63.1, 105.1, 111.2, 118.5, 118.8, 119.5, 121.9, 122.3, 127.4, 183.4.
ESI-MS m/z: 423 ([M+Na]+, (100).
IR cm-1: 606, 704, 727, 741, 758, 974, 1012, 1026, 1057, 1109, 1166, 1224, 1267, 1357, 1375, 1457, 1556, 1629, 1669, 1982, 2037, 2849, 2917, 3275, 3394.
【0083】
1.2. X=CHである式(I)の化合物の合成
一般手順:
LiAlH(304mg、8mmol)を、THF中(10mL)のアミド(予め作製しておいたもの)(1mmol)の溶液へ、不活性窒素雰囲気下、0℃にて、少しずつゆっくり添加する。次にこの混合物を2時間還流させる。冷却後、この反応物を1mLの水で緩やかに加水分解し、続いて、白色析出物が得られるまで1M NaOHの溶液を滴下する。この混合物をセライト上でろ過し、酢酸エチルで洗浄し、次に無水MgSO上で乾燥し、減圧濃縮する。
【0084】
N‐(2‐(1H‐インドール‐3‐イル)エチル)トリデカン‐1‐アミン(2a)
収率: 84%
NMR1H (300MHz, CDCl3) δ ppm: 0.88 (t, J= 6.9 Hz, 3H); 1.25 (m, 21H); 1.46 (m, 2H); 2.62 (t, J= 7.2 Hz, 2H); 2.97 (m, 4H); 7.04 (d, J= 2.1 Hz, 1H); 7.12 (td, J= 0.9 Hz, J=7.8 Hz, lH); 7.20 (td, J=1.2Hz, J=7.2Hz, lH); 7.36 (d, J=7.8 Hz, 1H); 7.64(d, J= 7.8 Hz, 1H); 8.10 (s, 1H)
NMR13C (75MHz, CDCl3) δ ppm: 14.1, 22.7, 25.8, 27.4, 29.3, 29.6, 29.7, 30.1, 32.0, 50.0, 111.1, 114.2, 118.9, 119.2, 121.8, 122.0, 127.5, 136.4.
ESI-MS m/z: 343 ([M+H]+, 100).
IR cm-1: 565, 592, 611, 722, 739, 804, 842, 886, 914, 1010, 1078, 1104, 1221, 1309, 1341, 1358, 1376, 1453, 1467, 1504, 1553, 1622, 2849, 2916, 3063, 3139, 3275, 3387.
【0085】
N‐(2‐(1H‐インドール‐3‐イル)エチル)ペンタデカン‐1‐アミン(2b)
収率: 83%
NMR1H (300MHz, CDCl3) δ ppm: 0.89(t, J= 6.9 Hz, 3H); 1.26 (m, 24H); 1.46 (m, 2H); 2.62 (t, J=7.2Hz,2H); 2.97 (m, 4H); 7.04 (d, J=1.8Hz,1H); 7.12 (td, J=1.2Hz, J= 7.8 Hz, 1H); 7.20 (td, J= 1.2 Hz, J= 8.1 Hz, 1H); 7.36 (d, J= 7.8 Hz, 1H); 7.64 (d, J= 7.5Hz, 1H); 8.18 (s, 1H).
NMR13C (75MHz, CDCl3) δ ppm: 14.1, 22.7, 25.8, 27.4, 27.5, 29.4, 29.6, 29.7, 30.1, 31.9, 50.0, 111.1, 114.1, 117.4, 118.9, 119.2, 121.8, 122.0, 128.4, 133.4.
ESI-MS m/z: 371 ([M+H]+, 100).
IR cm-1: 592, 611, 721, 739, 805, 874, 1011, 1104, 1222, 1341, 1454, 1630, 2649, 2916, 3387.
【0086】
N‐(2‐(1H‐インドール‐3‐イル)エチル)ヘキサデカン‐1‐アミン(2c)
収率: 50%
NMR1H (300MHz, CDCl3) δ ppm: 0.88 (t, J= 6.9 Hz, 3H); 1.25 (m,26H); 1.47 (m, 2H); 2.61 (t, J= 7.2 Hz, 2H); 2.97 (m,4H); 7.04 (d,J= 1.8 Hz, 1H); 7.11 (td, J= 1.2 Hz, J= 8.1 Hz, 1H); 7.19(td, J= 1.2 Hz, J= 8.1 Hz, 1H); 7.36(d, J= 8.1 Hz, 1H); 7.62(d, J= 7.8Hz, 1H); 8.21 (s, 1H).
NMR13C (75MHz, CDCl3) δ ppm: 14.1, 22.7, 25.6, 27.3, 29.3, 29.5, 29.6, 29.7, 29.8, 30.0, 31.9, 50.0, 111.1, 113.8, 118.8, 119.2, 122.0, 127.4, 136.4.
ESI-MS m/z: 385 ([M+H]+, 100).
IR cm-1: 565, 592, 611, 721, 739, 784, 803, 842, 886, 910, 1011, 1105, 1222, 1341, 1376, 1454, 1467, 1621, 2849, 2916, 3053, 3139.
【0087】
N‐(2‐(1H‐インドール‐3‐イル)エチル)ヘプタデカン‐1‐アミン(2d)
収率: 90%
NMR1H (200MHz, CDCl3) δ ppm: 0.88 (t, J= 6.9 Hz, 3H); 1.25 (m, 28H); 1.46 (m, 2H); 2.61 (t, J= 7.2 Hz, 2H); 2.97 (m, 4H); 7.05 (d, J= 2.1 Hz, 1H); 7.12 (t, J= 7.8 Hz, 1H); 7.20 (t, J= 7.5 Hz, 1H); 7.37 (d, J= 8.1 Hz, 1H); 7.64 (d, J= 7.8 Hz, 1H); 8.05 (s, 1H).
NMR13C (SOMHz, CDCl3) δ ppm: 14.1, 22.7, 25.9, 27.4, 29.3, 29.6, 29.7, 30.2, 3 1.9, 50.0, 111.1, 114.2, 118.9, 119.2, 121.8, 122.0, 127.5, 136.4.
ESI-MS m/z: 399 ([M+H]+, 100).
IR cm-1: 565, 592, 612, 721, 739, 805, 841, 871, 891, 1011, 1074, 1105, 1223, 1342, 1358, 1376, 1454, 1466, 1505, 1622, 2849, 2916, 3064, 3141.
【0088】
N‐(2‐(1H‐インドール‐3‐イル)エチル)オクタデカン‐1‐アミン(2e)
収率: 52%
NMR1H (300MHz, CDCl3) δ ppm: 0.88 (t, J= 6.9 Hz, 3H); 1.25 (m, 30H); 1.46 (m, 2H); 2.62 (t, J= 7.2 Hz, 2H); 2.98 (m, 4H); 7.04 (d, J= 1.8 Hz, 1 H); 7.12 (t, J= 7.8 Hz, 1H); 7.20 (t, J= 7.8 Hz, 1H); 7.36 (d, J= 8.1 Hz, 1H); 7.63 (d, J= 7.8 Hz, 1H); 8.11 (s, 1H).
NMR13C (75MHz, CDCl3) δ ppm: 14.1, 22.7, 25.4, 27.4, 29.4, 29.7, 30.0, 32.0, 49.9, 111.1, 114.0, 118.9, 119.2, 121.8, 121.9, 122.0, 136.4.
ESI-MS m/z: 413 ([M+H]+, 100).
IR cm-1: 563, 577, 600, 735, 805, 1010, 1125, 1223, 1339, 1455, 1619, 2848, 2916, 3417.
【0089】
N‐(2‐(IH‐インドール‐3‐イル(エチル)イコサン‐1‐アミン(2f)
収率: 74%
NMR1H (300MHz, CDCl3) δ ppm: 0.88 (t, J= 6.9 Hz, 3H); 1.25 (m, 34H); 1.54 (m, 2H); 2.62 (t, J= 7.2 Hz, 2H); 2.97 (m, 4H); 7.04 (d, J= 2.1 Hz, 1H); 7.11 (t, J= 7.8 Hz, 1H); 7.19 (t, J= 7.8 Hz, 1H); 7.36 (d, J= 7.8 Hz, 1H); 7.63 (d, J= 8.1 Hz, 1H); 7.98 (s, 1H).
NMR13C (75MHz, CDCl3) δ ppm: 14.1, 22.7, 25.8, 27.4, 29.4, 29.7, 30.1, 31.9, 49.9, 111.1, 114.1, 119.1, 119.6, 121.8, 122.0, 127.4, 136.4.
ESI-MS m/z: 441 ([M+H]+, 100).
IR cm-1: 562, 572, 592, 609, 720, 740, 806, 868, 1011, 1104, 1221, 1341, 1455, 1626, 2849, 2916, 3244.
【0090】
N‐(2‐(1H‐インドール‐3‐イル)エチル)トリコサン‐1‐アミン(2g)
収率: 52%
NMR1H (300MHz, CDCl3) δ ppm: 0.88(t, J= 6.8 Hz, 3H); 1.25 (m,40H); 1.47 (m, 2H); 2.63 (t, J= 7.6 Hz, 2H); 2.99 (m,4H); 7.06 (s, 1H); 7.12 (t, J= 7.6 Hz, 1H); 7.20 (t, J= 7.6 Hz, 1H); 7.36 (d, J= 8.0 Hz, 1H); 7.62 (d, J= 8,O Hz, 1H); 8.03 (s, 1H).
NMR13C (75MHz,CDCl3) δ ppm: 14.1, 22.7, 25.6, 27.3, 29.2, 29.3, 29.4, 29.5, 29.7, 31.9, 49.8, 111.1, 113.9, 118.9, 119.3, 122.0, 127.4, 136.4.
ESI-MS m/z: 483 ([M+H]+, 100).
IR cm-1: 577, 668, 720, 735, 746, 805, 1091, 1215, 1463, 1619, 2849, 2916, 3418.
【0091】
(8Z,11Z)‐N‐(2‐(IH‐インドール‐3‐イル)エチル)へプタデカ‐8,11‐ジエナミン(2h)
収率: 52%
NMR1H (300MHz, CDCl3) δ ppm: 0.89 (t, J= 6.8 Hz, 3H); 1.25 (m, 14H); 1.49 (m, 2H); 2.04(m, 4H); 2.64 (t, J= 7.2 Hz, 2H), 2.77 (t, J= 6.4 Hz, 2H), 3.00 (m, 4H); 5.34 (m, 4H); 7.04 (s, 1H); 7.11 (t, J= 7.6 Hz, 1H); 7.19 (t, J= 7.2 Hz, 1H); 7.36 (d, J= 8.0 Hz, 1H); 7.63 (d, J= 7.6Hz, 1H); 8.10 (s, 1H).
NMR13C (75MHz, CDCl3) δ ppm: 14.1, 22.6, 25.5, 25.6, 27.2, 27.3, 29.2, 29.3, 29.5, 29.6, 29.7, 31.5, 49.8, 111.1, 113.8, 118.9, 119.3, 121.9, 122.0, 127.4, 127.9, 128.0, 130.1, 130.2, 136.4.
ESI-MS m/z: 409 ([M+H]+, 100).
IR cm-1: 625, 738, 803, 1010, 1108, 1231, 1354, 1456, 1620, 2853, 2923, 3009, 3415.
【0092】
N‐(2‐(1H‐インドール‐3‐イル)エチル)‐15‐ヒドロキシペンタデカナミン(2i)
収率: 71%
NMR1H (300MHz, CDCl3) δ ppm: 1.24 (m, 24H); 1.47 (m, 4H); 2.62 (t, J= 7.6 Hz, 2H); 2.97 (m, 4H); 3.64(t, J=6.8Hz,2H); 7.04 (d, J= 1.6Hz, 1H); 7.11 (t, J= 7.6Hz, 1H); 7.20 (t, J= 7.6 Hz, 1H); 7.36 (d, J= 8.0 Hz, 1H); 7.63 (d, J= 8.0 Hz, 1H); 8.03(s, 1H).
NMR13C (75MHz, CDCl3) δ ppm: 25.7, 25.8, 27.4, 29.4, 29.5, 30.1, 32.8, 50.0, 63.0, 111.1, 114.2, 118.9, 119.3, 121.8, 122.0, 124.5, 136.4.
ESI-MS m/z: 387 ([M+H]+, 100).
IR cm-1: 587, 669, 727, 740, 760, 974, 1010, 1024, 1044, 1108, 1149, 1216, 1355, 1374, 1457, 1466, 1668, 2848, 2923, 3299, 3425.
【0093】
2.生物学的結果
緒言で述べたように、血液脳関門を通過し、ニューロトロフィンの効果を模倣する能力を有する僅かな親水性しか持たない新しい小分子を見出すことが実際に求められている。
【0094】
インビトロでは、ニューロン成長因子の神経栄養活性は、第一にニューロンの生存を促進し、第二にニューロンの成熟を刺激するその能力を特徴とする。
【0095】
神経栄養活性を模倣する小分子の探索に用いられる1つの革新的な手法は、研究される化合物の神経保護および神経突起生成の特性を別々に研究することから成り、それは、対象である化合物がこの2つの活性を有する必要があるからである。神経突起生成の測定は、ニューロンの成熟状態を表す形態学的な基準である。
【0096】
抗酸化性化合物もまた、神経保護能を有する。本発明による化合物の抗酸化能を評価することも興味深いのはこのためである。
【0097】
2.1 本発明による化合物の神経保護および神経突起生成活性
操作手順
解体. 解体は、15日間の在胎後、ラットの子宮から胚を取り出すことから成る。次に、腹側中脳を取り出す目的で、双眼拡大鏡下、各胚の脳を解体する。
【0098】
播種. 中脳を、2mLのL15培地を入れたフラスコ中にまとめ、次に、機械的に解離し(操作を30回繰り返す)、5mLのL15培地を添加する。この懸濁液を8分間静置させる。次に、浮遊部5mLを新しいフラスコに回収し、細胞を再度解離させる(操作を30回繰り返す)。5mLのL15を再度添加し、この懸濁液を8分間静置させる。5mLの浮遊部を前の浮遊部に添加する。次に、こうして抽出された細胞に、1000rmp−1にて5分間遠心分離を施す。細胞沈降物を、B27の1%、グルタミンの1%、およびペニシリンとストレプトマイシンとの混合物の1%を添加したNeurobasal培地に溶解する。次に、細胞を適切な希釈度で播種する(24ウェルプレートでは、ウェルあたり0.6の胚、48ウェルプレートでは、ウェルあたり0.4の胚)。24ウェルプレートまたは48ウェルプレート中、5%COを加えた湿潤雰囲気下、37℃にて培養物をインキュベートする。
【0099】
処理. 24時間後、各ウェルの培地の3分の2を、適切な希釈度で試験すべき生成物を添加した新しい培地で置換する。培養の4日後に、同じ方法で培地の置換を行なう。
【0100】
免疫組織化学. 8日間の培養後、4%ホルムアルデヒドの溶液で細胞を固定し、次にPBSで3回洗浄する。次に、抗チロシンヒドロキシラーゼ(TH)による免疫組織化学を細胞に施し、赤色に発光するフルオロフォア(Cy3)と結合した二次抗体によって発色させる。
【0101】
分析. 神経保護は、倒立蛍光顕微鏡下、ウェルあたり10視野分の陽性THニューロンを直接カウントすることで評価し、未処理コントロールに対するパーセントとして報告する。実験は、1条件あたり3つのウェルに対して行う。3つの条件下で3つの独立した実験を行う。Explora Nova社のOutgrowthソフトウェアを用い、1条件あたり60から100の独立して撮影されたニューロンについて、細胞あたりの全神経突起長を算出する。
【0102】
結果
腹側中脳は、パーキンソン病で変性する黒質由来のドーパミン作動性ニューロン、および腹側被蓋野に存在するこのニューロンを含有する。
【0103】
胚腹側中脳の一次培養物は、胚の取り出しおよび解体、腹側中脳の回収および解離、ならびに細胞懸濁液のマルチウェルプレート中での播種の後に作製することができる。
【0104】
腹側中脳の一次培養物は、混合培養物である。そこには、ニューロンとグリアという2つの神経集団が存在する。培養物中に存在するニューロンは、実質的にはGABA作動性ニューロン(約94%)であり、ドーパミン作動性ニューロン(約3%)およびセロトニン作動性ニューロン(約3%)を伴う。グリアは、実質的には星状であり、より少ない割合でオリゴデンドロサイトおよびミクログリア(約3%)も存在する。赤血球、線維芽細胞、および内皮細胞などのその他の非神経細胞型も非常に少ない割合で存在する。
【0105】
異なる細胞集団は、特異的マーカーの免疫細胞化学によって識別することができる。ドーパミン作動性ニューロンは、チロシンヒドロキシラーゼ標識によって識別される。
【0106】
過去の研究では、腹側中脳の一次培養物におけるドーパミン作動性ニューロンの自発的で進行性の特異的変性について報告されている(Guerreiro S. et al. Mol. Pharmacol. 2008, 74, 980-989)。
【0107】
ドーパミン作動性ニューロン(TH+ニューロン)の数は時間と共に少しずつ減少し、一方ニューロンの総数は変わらない。この観察結果は、神経保護化合物を探索するための、パーキンソン病におけるニューロン死のインビトロモデルとして利用された。
【0108】
このような条件下では、残りのニューロン線維は影響を受けず、神経突起生成を観察し、定量することができる。従って、このモデルは、2つの期待される結果、すなわち神経保護および神経突起生成の定量を単一の実験で得ることが可能となることから、発明者らの研究において特に興味深いものである。
【0109】
発明者らの化合物の神経栄養の可能性は、神経保護の可能性および神経突起成長を刺激する能力を算出することを含む、二重スクリーニングによって評価した。
【0110】
ドーパミン作動性ニューロンの自発的な死を引き起こす条件下における、15.5日間の在胎後のラット胚の腹側中脳の一次培養物を、試験すべき化合物の存在下または非存在下にて8日間維持する。固定後、この細胞培養物に、ドーパミン作動性ニューロンの特異的マーカーであるチロシンヒドロキシラーゼに対して指向された免疫細胞化学を施す。
【0111】
次に、各化合物の神経保護の可能性を、蛍光顕微鏡下にて残留ニューロン(TH+ニューロン)の数をカウントすることで算出する。異なる処理に対する結果を、未処理培養物(コントロール)に対する残留ニューロン数のパーセントとして表す。
【0112】
神経突起生成の定量は、ドーパミン作動性ニューロンあたりの全神経突起長(神経突起長/THニューロン)を、条件あたり少なくとも60の撮影したニューロン(全ドーパミン作動性ニューロンの10〜30%)に対してイメージアナライザーを用いて測定することで行う。
【0113】
実験はすべて、ポジティブコントロールであるジブチリル‐環状AMP(db‐AMPc)との比較によって行った(Mourlevat S. et al. Mol. Pharmacol. 2003, 64 (3), 578-586)。
【0114】
この2種類の活性について得られた確率を区別する目的で、データを互いに比較することで有意性の試験を行ったが;発明者らは、PおよびPという表記を、それぞれ、保護活性および神経突起生成活性に関する確率に対して用いる。与えられた確率が2つの活性に適用される場合は、PP/Nを用いる。
【0115】
本発明による化合物は、1、10、100、および1000nMで試験し、10nMで効果が観察され、この系列の化合物は、これより低い濃度および高い濃度では、それぞれ不活性または毒性であった。得られた結果を以下の表1に示す。
【0116】
【表3】

【0117】
この系列の化合物はすべて、ナノモル濃度にて神経突起生成を誘発する能力を有する。これらの化合物の神経保護の可能性は、アミド官能よりもアミン官能を有する化合物の方が良好であると思われ(1c対2cを参照)、最良の活性は化合物2cで見られる。鎖の長さによる変動は最小限であるが、最も短い化合物の活性が僅かに低いことが見られる。不飽和部分の存在に関しては、2つの活性に対して変動は見られなかった(2h対2eを参照)。末端ヒドロキシル官能基は、アミンの系列でのみ2つの活性を向上させる。
【0118】
これらの結果は、必要とされる二重活性をこの系列に付与する鎖内アミンの役割が重要であることを示している。しかしながら、最良の神経保護の可能性は、末端ヒドロキシルを有する場合もある、窒素原子後の鎖長(すなわち、X−X−R)が15炭素原子と等しいかまたはこれよりも長い場合(すなわち、鎖長Xが13炭素原子と等しいかまたはこれよりも長い)に見られている。最良の活性の組み合わせは、化合物2cおよび2iで得られた。
【0119】
2.2 本発明による化合物の抗酸化能
2つの試験を用いて、本発明による化合物の抗酸化能、すなわち遊離ラジカルを中和するその能力を評価した。
【0120】
ABTSによる試験
ABTSまたは2,2’‐アジノ‐ビス‐(3‐エチルベンズチアゾリン‐6‐スルホン)酸は、溶液中のヒドロキシルラジカルの存在を示す発色指示薬である。ヒドロキシルラジカルがABTSを攻撃すると、ATBS+.カチオンラジカルが形成される(反応式1)。この発色物は、450nmに等しい溶液の吸収(Abs)をもたらす。
ABTS + HO ――――→ ABTS+. + HO
反応式1
【0121】
試験の間、鉄および過酸化水素の存在下のフェントン反応により、ヒドロキシルラジカルが発生する(反応式2)。
+ Fe2+ ――――→ HO + HO + Fe3+
反応式2
【0122】
ラジカルトラップまたは抗酸化剤が溶液中に存在する場合、ヒドロキシルラジカルの還元に対するABTSとの競合が発生し、これが450nmにおける吸収(Abs)を低下させる。
【0123】
対象である化合物によってヒドロキシルイオンに変換されたヒドロキシルラジカルのパーセント(変換%)は、数式1を用いて算出することができる:
【数1】

【0124】
次に、化合物の抗酸化能は、試験化合物によってヒドロキシルラジカルの50%が減少した濃度を反映するIC50の形で表すことができる。
【0125】
従って、試験すべき化合物およびTrolox(登録商標)を、1mMの溶液が得られるようにエタノール中に溶解した。発明者らは、段階希釈を用いて、1mMから10nMまで変動する濃度範囲を得た。次に、1:1の水‐エタノール混合物の90μLをELISA 96‐ウェルプレートに添加し、続いて、1mMのABTS水溶液15μL、0.5mMのFeSO4水溶液15μL、種々の濃度の各試験すべき化合物15μL、および次に100mMの過酸化水素水溶液15μlを添加した。こうして得られた混合物を、空気から遮断した状態で周囲温度にて30分間攪拌し、次に405nmにおける吸収値を測定した。各化合物のヒドロキシルラジカルを還元する能力は、450nmの吸収の低下によって決定され、コントロール溶液は、純粋エタノールから成るものとした。
【0126】
従って、ABTS試験は、Trolox(登録商標)との比較で行った。10nmから1mMの同じ濃度範囲のインドール、1a、1c、1g、1i、2a、4c、2g、2h、および2iを試験した。
【0127】
以下の表2にそれを示す。
【0128】
【表4】

【0129】
興味深いことに、試験した本発明に従うアミン化合物2a、2c、2g、2h、および2iのIC50値は、Trolox(登録商標)に対する値に近く、これらの化合物の抗酸化活性におけるアミン官能基の重要性を示している。鎖内二重結合の存在は、抗酸化活性を向上させ、Trolox(登録商標)よりも低いIC50値をもたらした(2h参照)。
【0130】
ジヒドロローダミン123による細胞試験
ジヒドロローダミン123またはDHR123は、反応性酸素種(ROS)の指示薬として用いられる。これは、帯電されておらず、蛍光性でなく、細胞膜を受動的に通過するものであり、遊離ラジカルと接触して酸化されると、緑色蛍光を発するローダミン123となる。
【0131】
【化12】

【0132】
細胞を抗酸化剤で処理すると、細胞内ROSの量が減少する。この減少が、DHR123の存在下における発光蛍光の定量可能な減衰を引き起こす。
【0133】
観察された神経保護活性における本発明による化合物の抗酸化能の役割を結論付ける目的で、培養物を、神経保護/神経突起発生試験に対するものと厳密に同じ条件下に置いた。従って、10nMの濃度での試験した各トリプタミン誘導体の存在下にて、この培養物を8日間維持した。インビトロでの第8日に(DIV8)、50μMのDHR‐123(Sigma社)を添加し、細胞を37℃にて30分間インキュベートした。次に、これを3回洗浄し、再度本発明による化合物で処理し、フェノールレッドをまったく含まない培地中に配置した。直ちに撮影された生存蛍光ニューロンを観察することができ、ニューロンあたりの蛍光密度を、画像解析ソフトウェアにより、倒立蛍光顕微鏡下にて定量する。得られた結果を以下の表3に示す。
【0134】
【表5】

【0135】
10nMのトリプタミン誘導体で処理したニューロン培養物は、未処理培養物よりも著しく少ない細胞質内ROS量を有し、このことが、発光される蛍光の40〜60%の減少をもたらす。従って、これらの化合物は、参照化合物に対して観察される値のオーダーである強い抗酸化活性を有するものであり、および、常に、アミド誘導体と比べてアミン誘導体の方が良好な活性を有している(1i対2i、および1h対2hを参照)。図1はまた、10nMの化合物1hで処理した後のニューロンで発光された蛍光強度も示しており、この化合物は、Trolox(登録商標)および未処理コントロールと比較して、最良の抗酸化活性を有している。
【0136】
トリプタミン誘導体について、その神経保護活性を観察するために必要である条件および濃度で見られた強い抗酸化能は、これらの化合物の神経保護成分としての作用メカニズムについての答えを得る1つの要素であり得る。
【0137】
従って、これらの化合物は、神経変性疾患の治療に適用可能である保護および再生の両効果を併せ持つことから、非常に興味深い。
【0138】
2.3 血液脳関門(BBB)の通過に関する研究
本研究は、本発明による化合物として化合物2cを用いて行った。
【0139】
本研究の目的は、質量分析と組み合わせたHPLCを用いて、経口または腹腔内(IP)経路による分子2cの塩酸塩(2c/HCl)による亜慢性処理後の脳実質中における本発明に従う分子2cの存在を確認することである。
【0140】
装置および方法
動物: およそ5週齢、到着時の体重が20から24gであるオスのRjOrl:スイスマウス(R Janvier Breeding Centre,フランス、より)を、一定の温度(22±1℃)および制御湿度下(55±20%)で、12時間の明暗サイクル(8時00分〜20時00分)にて動物小屋で飼育する。順化および研究期間の間、マウスには飼料および飲み物を自由に取らせた。実験はすべて、動物に対する実験に関する2001年5月29日の法令第2001‐464号(decree No. 2001-464, 29 May 2001)に定められる条件に従って行った。
【0141】
処理: 5日間の亜慢性処理を2種類行った(経口または腹腔内経路):
‐ 腹腔内経路(IP)による処理:
注射用の2c/HClの塩酸塩の溶液を、担体中(10% Tween20 + 20% DMSO + 70% NaClの09%水溶液)、2.0g/Lの濃度で調製する。以下の3つのグループを形成した:
(1) 10mL/kgで担体をIP経路で受けたマウス(グループN、n=4)、
(2) 20mg/kgおよび10mL/kgにて、IP経路による2c/HClで処理したマウス(グループR、n=6)、および、
(3) 処理を行わなかったコントロールマウス(n=2)
【0142】
処理マウスR4、R5、およびR6、ならびに担体マウスN1、N2、N3、およびN4は、以下の処理を受けた:
【0143】
【表6】

【0144】
処理マウスR1、R2、およびR3は、木曜日に2回目の処理を受けなかったこと以外は上述のマウスと同じ処理を受けた。
【0145】
【表7】

【0146】
‐ 経口経路(経口投与)による処理:
投与用の2cの塩酸塩の溶液を、担体中(0.5% Tween80 + 99.5% 0.9%NaCl水溶液中の1%カルボキシメチルセルロース)、15.0g/Lの濃度で調製する。
【0147】
以下の3つのグループを形成した:
(1) 10mL/kgで担体を経口経路で受けたマウス(グループV、n=4)、
(2) 150mg/kgおよび10mL/kgにて、経口経路による2c/HClで処理したマウス(グループB、n=6)、および、
(3) 処理を行わなかったコントロールマウス(n=2)
【0148】
マウスにはすべて、4日間、1日2回の処理を施した。第5日に最後の処理を施し、この最後の処理後、以下のスキームに従って3時00分から7時30分の間に安楽死させた:
【0149】
【表8】

【0150】
安楽死: ペントバルビタールナトリウムの6%溶液を0.1mL注射することでマウスを麻酔し、次に、ヘパリンを含有する0.9%NaCl溶液(0.9%NaCl 1リットル中、5000UI/mLのheparin choayを200μL)でマウスに灌流を施して脳から血液をすべて除去する。各動物について、少なくともこの溶液50mLで灌流を行う。マウスの脳を取り出す。小脳、脳幹、および嗅球を除去する。
【0151】
脳を、図2に示すスキームに従って3つの部分に解体する。脳のこの3つの部分を−30℃にてイソペンタン中で1分間凍結させ、次に別々に−80℃で保存する。
【0152】
抽出方法: 各脳サンプルを秤量し、MeOH中にホモジナイズし(10mgの脳組織に対して100μLのMeOH)、次に超音波処理によって混合する。こうして得られた懸濁液を4℃にて10分間、27000gで遠心分離する。MeOHで1/2に希釈した浮遊部を、HPLC‐MS/MSによる化合物2cの分析のために、HPLCバイアルに移す。
【0153】
しかし、マウス脳の1の部分のみを抽出、分析し、今後の分析のためにサンプルを残した。しかしながら、各グループ(IPおよび経口投与)のマウスの脳の3つの部分は、化合物2cがこの3つの部分のうちの1つに選択的に分布していないことを確認する目的で抽出を行った。
【0154】
分析の前および最中は、すべてのサンプルを−4℃で保存した。すべてのサンプルのすべての分析は、同一の条件下にて同じ日に行った。
【0155】
ポジティブおよびネガティブコントロール: 担体マウスの脳をポジティブおよびネガティブコントロールに用いた。ポジティブコントロールについては、1μg/mLにおける2cの塩酸塩の溶液10μlを浮遊部に添加し、MeOHで1/2に希釈した後、HPLCバイアルに移す。
【0156】
濃度範囲の化合物2cの調製: まずは、2cの塩酸塩の一次溶液を、MeOH中にて1.0mg/mLの濃度で調製する。その他の溶液はすべて、この一次溶液をMeOH中に希釈することで調製し、次に−4℃で保存する。
【0157】
化合物2cの分析のための機器および条件: 検出およびピーク面積に基づく定量は、MRMモードのHPLC‐MS/MSを用いて行う。
【0158】
HPLCシステムは、Dionex WPS-3000PLオートサンプラーを備えたDionex Ultimate 3000ポンプから構成される。用いた質量分析器は、エレクトロスプレーイオン化源および三連四重極アナライザーを備えたWater-Micromass Quattro Ultima分光器である。データおよび解析は、Masslynx 3.5を用いて取得する。
【0159】
液体クロマトグラフィは、XBridge(商標)C18、150×2.1mmカラム(Waters社)、粒子サイズ3.5μmを、均一濃度モード(isocratic mode)で用いて行う。移動相は、2つの相AおよびBの3:97の比率での混合物から成る。相Aは、水による0.2%(体積/体積)トリエチルアミンから成る(pH=11.5)。相Bは、MeOHによる0.2%トリエチルアミンから成る(体積/体積)。流速は0.2mL/分に固定し、注入体積は10μLである。
【0160】
質量分析器は、エレクトロスプレーイオン化源を用いてHPLCシステムと接続される。イオン化源キャピラリーにおける塩の蓄積を防止する目的で、クロマトグラフィの最初の3分間分は廃棄するように切り替えバルブをプログラムする。キャピラリー電圧は3000Vに調節し、コーン電圧は50Vとし、イオン化源の温度は120℃に調節し、脱溶媒和ガス(precipitation gas)(N)は、流速を463L/時間および温度を350℃に調節する。質量スペクトルは、ポジティブモードで取得する。化合物2cに対応するm/z 385.66で分子イオンが最大となるようにパラメータを最適化する。不活性ガス(アルゴン)を用いて衝突を起こし、エネルギーをMS/MSモードにおいて22eVに固定して質量の遷移:m/z 385.66→254.23および385.66→144.17を検出する。
【0161】
7つの濃度を含む標準的な手順を用いて、直線の検量線を作成する(0.5μg/mL;0.1μg/mL;20ng/mL;4ng/mL;0.8ng/mL;0.16ng/mL、および0.08ng/mL)。
【0162】
結果
HPLC‐MS/MS法の検証: HPLCのピーク面積は、0.16から500.00ng/mLまでの範囲内において、0.9997のRで、化合物2cの濃度に依存する。検出限界は0.08ng/mLであり、S/N(シグナル/ノイズ)比は3:1である。化合物2cの保持時間は5.3分であり、取得時間は8分である。
【0163】
脳抽出物中の化合物2cの濃度:
‐ 経口投与経路:
得られたクロマトグラムを図3に示す。化合物2cは、担体で処理したマウスからの脳抽出物では検出することができず、ポジティブコントロールでは、20.31ng/mLと定量される。経口投与処理したマウスからの脳抽出物では、化合物2cは、平均濃度21.25ng/mL ± 0.82 SEM(n=8)と定量される。
【0164】
‐ IP経路:
得られたクロマトグラムを図4に示す。化合物2cは、担体で処理したマウスからの脳抽出物では検出することができず、ポジティブコントロールでは、19.48ng/mLと定量される。IP処理したマウスからの脳抽出物では、化合物2cは、平均濃度14.73ng/mL ± 0.58 SEM(n=8)と定量される。
【0165】
考察および結論
化合物2cは、2c/HClのIP投与および経口投与後、インビボにてBBBを通過する能力を有する。300mg/kg/日での経口投与経路による処理では、20mg/kg/日でのIP処理後に得られるよりも約1.5倍高い濃度が得られる。
【0166】
使用した略語:
EDC:1‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐3‐エチルカルボジイミド塩酸塩
ESI‐MS:エレクトロスプレーモードによる質量分析
GC:気相クロマトグラフィ
HOBt:N‐ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC:高速液体クロマトグラフィ
HPLC‐MS/MS:タンデム質量分析器と組み合わせた高速液体クロマトグラフィ
IR:赤外吸収
MRM:多重反応モニタリング
NMR H:プロトンの核磁気共鳴
NMR 13C:炭素の核磁気共鳴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬としての、特に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、または脳血管発作などの神経変性疾患の治療または予防が有利に意図される、神経栄養薬または神経保護薬としての使用のための、以下の式(I)の化合物、またはその薬理学的に許容される塩、立体異性体、もしくは任意の比率での立体異性体の混合物、特にエナンチオマーの混合物、特にラセミ体:
【化1】

〔式中:
‐ Xは、CHまたはC=O基を表し;
‐ Xは、8〜24個の炭素原子を含む飽和または不飽和の直鎖状炭化水素鎖を表し;
‐ Rは、水素原子、またはOH、またはメトキシなどの(C‐C)アルコキシ基を表し;ならびに、
‐ Rは、CHまたはCHOR基を表し、ここで、Rは、水素原子、または(C‐C)アルキル、CO−(C‐C)アルキル、もしくはNH−(C‐C)アルキル基を表す〕。
【請求項2】
以下の式(Ia)を満たす、請求項1に記載の化合物:
【化2】

〔式中:

【化3】

は、独立して、単結合または二重結合を表し;
‐ X、R、およびRは、請求項1で定める通りであり、ならびに、
‐ mは、1と等しいかもしくはこれより大きい整数を表し、nおよびpは、互いに独立して、0と等しいかもしくはこれより大きい整数を表し、ここで、8≦m+n+p+4≦24である〕。
【請求項3】
以下の式(Ib)または(Ic)を満たす、請求項1または2に記載の化合物:
【化4】

〔式中:
‐ R、RおよびXは、請求項1で定める通りであり、
‐ qは、8〜24の整数を表し、ならびに、
‐ m、nおよびpは、請求項2で定める通りである〕。
【請求項4】
以下の化合物:
【表1】


から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
以下の式(I):
【化5】

〔式中:
‐ Xは、CHまたはC=O基を表し;
‐ Xは、8〜24個の炭素原子を含む飽和または不飽和の直鎖状炭化水素鎖を表し;
‐ Rは、水素原子、またはOH、またはメトキシなどの(C‐C)アルコキシ基を表し;ならびに、
‐ Rは、CHまたはCHOR基を表し、ここで、Rは、水素原子、または(C‐C)アルキル、CO−(C‐C)アルキル、もしくはNH−(C‐C)アルキル基を表す〕
の化合物、またはその薬理学的に許容される塩、立体異性体、もしくは任意の比率での立体異性体の混合物、特にエナンチオマーの混合物、特にラセミ体(ただし、以下の式の化合物:
【化6】

〔式中、u=14、16〜18、または20〜24である〕は除く)。
【請求項6】
以下の式(Ia)を満たす、請求項5に記載の化合物:
【化7】

〔式中:

【化8】

は、独立して、単結合または二重結合を表し、
‐ X、RおよびRは、請求項1で定める通りであり、ならびに、
‐ mは、1と等しいかもしくはこれより大きい整数を表し、nおよびpは、互いに独立して、0と等しいかもしくはこれより大きい整数を表し、ここで、8≦m+n+p+4≦24である〕。
【請求項7】
以下の式(Ib)または(Ic)を満たす、請求項5または6に記載の化合物:
【化9】

〔式中:
‐ R、RおよびXは、請求項1で定める通りであり、
‐ qは、8〜24の整数を表し、ならびに、
‐ m、nおよびpは、請求項2で定める通りである〕。
【請求項8】
以下の化合物:
【表2】


から選択される、請求項5〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物、および薬理学的に許容される担体を含んでなる、医薬組成物。
【請求項10】
特に神経変性疾患の治療または予防に有用であり、有利には、ドネゼピル(donezepil)、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン、およびタクリンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬;セレギリンなどのモノアミンオキシダーゼ阻害薬;エンタカポンなどのO‐メチルトランスフェラーゼカテコラミン阻害薬;アマンタジンおよびバクロフェンなどのグルタミン酸作動阻害薬(glutamatergic inhibitors);サブコメリンなどのコリン作動アゴニスト(cholinergic agonists);ペルゴリド、カベルゴリン、ロピリノール(ropirinole)、およびプラミペキソールなどのドーパミン作動アゴニスト(dopaminergic agonists);L‐3,4‐ジヒドロキシフェニルアラニンなどの神経メディエーター類似体または前駆体;ならびに、トリヘキシフェニジルおよびトロパテピンなどの抗コリン作動薬、の中から選択される、別の活性成分を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
医薬としての、特に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、または脳血管発作などの神経変性疾患の治療または予防が有利に意図される神経栄養薬または神経保護薬としての使用のための、請求項9または10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の製造のための方法であって、以下の工程:
(b) トリプタミンと、以下の式(II):
Z−X−R (II)
〔式中、Zはカルボン酸官能基の遊離の形態または活性の形態を表し、RおよびXは請求項1で定める通りである〕の化合物とをカップリングさせ、以下の式(I‐1):
【化10】

〔式中、R、RおよびXは請求項1で定める通りである〕の化合物を得る工程、
(d) 所望により、上記の工程(a)で得られた式(I‐1)の化合物のカルボニル官能基を還元し、以下の式(I‐2):
【化11】

〔式中、R、RおよびXは請求項1で定める通りである〕の化合物を得る工程、ならびに、
(e) 前工程で得られた化合物(I‐1)または(I‐2)を反応媒体から分離する工程、
を含んでなる、方法。
【請求項13】
工程(a)が、Z=COHである構造(II)の化合物により、ジイソプロピルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐3‐エチルカルボジイミド塩酸塩、カルボニルジイミダゾール、2‐H‐ベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、2‐(1H‐ベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、またはO‐(7‐アゾベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートなどのカップリング剤の存在下にて行われ、場合によっては、N‐ヒドロキシスクシンイミド、N‐ヒドロキシベンゾトリアゾール、3,4‐ジヒドロ‐3‐ヒドロキシ‐4‐オキソ‐1,2,3‐ベンゾトリアゾール、1‐ヒドロキシ‐7‐アザベンゾトリアゾール、またはN‐ヒドロキシスルホスクシンイミドなどのカップリング補助剤と共に行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(a)が、Z=COClである構造(II)の化合物により行われ、場合によってはトリエチルアミンなどの塩基の存在下で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
工程(b)が、LiAlHなどの水素化物の存在下で行われる、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公表番号】特表2012−519202(P2012−519202A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552413(P2011−552413)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052596
【国際公開番号】WO2010/100133
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【Fターム(参考)】