説明

移動体検知システム

【課題】基地局端末と被測距端末との間、又は複数の基地局端末間に存在する移動体を検知することができる移動体検知システムを得る。
【解決手段】複数の基地局端末と、1又は複数の被測距端末4とを備え、基地局端末は、被測距端末4及び/又は他の基地局端末と無線信号を授受し、無線信号の伝播遅延時間及びRSSIを求め、該伝播遅延時間及びRSSIに基づき、当該基地局端末と、被測距端末4又は他の基地局端末との間の移動体5の有無を検知するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPS(Global Positioning System)が利用できない屋内での位置測定技術として、無線LAN(Local Area Network)やUWB(Ultra Wide Band:超広帯域無線通信)等を利用して被測距端末に対し測距を行い、測距結果を集約することによって被測距端末の位置を求める技術が提案されている。
測距は、RSSI(Received Signal Strength Indication:受信信号強度)によって無線端末間の距離を推定する方法や、送信から受信までの伝播遅延時間から距離を算出する方法がある。
【0003】
従来の移動体検知技術として、例えば「既存の放送電波の受信レベル変動を屋内のマルチパス空間内の或る位置において常時検知する第1の機能と、その受信レベルの変動を検出することにより、ある屋内空間での人物の在圏を検知する第2の機能とからなることを特徴とする人物在圏検知システム。」が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−221213号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被測距端末とそれを所持する移動体(主に人間)とを対として考えた場合、移動体と被測距端末とを個別に認識して制御するようなシステムを的確に動作させるためには、被測距端末の位置情報に加えて、それを所持する移動体に関する情報が必要である。
【0006】
しかし、従来の技術では、被測距端末の位置を検知することはできるが、被測距端末付近に移動体が存在しているか否かは判別することができない、という問題点があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、基地局端末と被測距端末との間、又は複数の基地局端末間に存在する移動体を検知することができる移動体検知システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る移動体検知システムは、
複数の基地局端末と、
1又は複数の被測距端末と
を備え、
前記基地局端末は、
前記被測距端末及び/又は他の基地局端末と無線信号を授受し、
前記無線信号の伝播遅延時間及び受信信号強度を求め、該伝播遅延時間及び受信信号強度に基づき、当該基地局端末と、前記被測距端末又は他の基地局端末との間の移動体の有無を検知するものである。
【0009】
また、この発明に係る移動体検知システムは、
互いに無線信号を授受する複数の基地局端末を備え、
前記基地局端末は、
前記無線信号の伝播遅延時間及び受信信号強度を求め、該伝播遅延時間及び受信信号強度に基づき、当該基地局端末と他の基地局端末との間の移動体の有無を検知するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、無線信号の伝播遅延時間及び受信信号強度を求め、該伝播遅延時間及び受信信号強度に基づき、当該基地局端末と、前記被測距端末又は他の基地局端末との間の移動体の有無を検知する。このため、基地局端末と被測距端末との間、又は複数の基地局端末間に存在する移動体を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1に係る移動体検知システムの概略図である。
【図2】実施の形態1に係る基地局端末の機能の概略的なブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る被測距端末の機能の概略的なブロック図である。
【図4】実施の形態1に係る移動体検知システムの動作フローチャートである。
【図5】実施の形態2に係る移動体検知システムの概略図である。
【図6】実施の形態2に係る基地局端末の機能の概略的なブロック図である。
【図7】実施の形態3に係る移動体検知システムの概略図である。
【図8】実施の形態2に係る基地局端末の機能の概略的なブロック図である。
【図9】図2及び図8に示した基地局端末のブロック図において、移動体検知に係る構成を抽出した図である。
【図10】実施の形態4に係る基地局端末の移動体検知に係る構成を抽出したブロック図である。
【図11】図6に示した基地局端末のブロック図において、移動体検知に係る構成を抽出した図である。
【図12】実施の形態5に係る基地局端末の移動体検知に係る構成を抽出したブロック図である。
【図13】実施の形態6に係る移動体検知システムの概略図である。
【図14】実施の形態7に係る移動体検知システムの概略図である。
【図15】実施の形態8に係る移動体検知システムの概略図である。
【図16】実施の形態8に係る基地局端末の機能の概略的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
(構成)
図1は実施の形態1に係る移動体検知システムの概略図である。
図1に示すように、本実施の形態における移動体検知システムは、第一基地局端末1、第二基地局端末2、第三基地局端末3、被測距端末4、及び統括部6を備える。
そして、この移動体検知システムは、移動体5の有無を検知する。
【0013】
なお、第一基地局端末1、第二基地局端末2、及び第三基地局端末3は、本発明における「基地局端末」に相当する。
なお、以下、第一基地局端末1、第二基地局端末2、及び第三基地局端末3を区別しないときは、単に「基地局端末」ともいう。
【0014】
第一基地局端末1、第二基地局端末2、及び第三基地局端末3は、フィールド内の既知の位置に設置される。
これら基地局端末は、被測距端末4と無線信号を授受し、この無線信号の伝播遅延時間及び受信信号強度(Received Signal Strength Indication:以下「RSSI」という。)を求める。
そして、伝播遅延時間及びRSSIに基づき、当該基地局端末と、被測距端末4との間の移動体5の有無を検知する。詳細は後述する。
【0015】
被測距端末4は、測距の対象となる端末である。被測距端末4は、第一基地局端末1、第二基地局端末2、及び第三基地局端末3と無線信号を授受する。
この被測距端末4は、各基地局端末のすべての位置から見通し距離で、例えば30m以内に存在又は不在である。
【0016】
移動体5は、例えば人間である。移動体5は、例えば被測距端末4を所持して任意の位置に移動可能である。
この移動体5は、各基地局端末と被測距端末4を直線で結んだ線上に存在又は不在である。
【0017】
統括部6は、任意の位置に設置される。統括部6は、各基地局端末と例えば有線により接続される。
統括部6は、各基地局端末の位置情報を有する。この位置情報は、例えば各基地局端末が設置された絶対座標の情報である。
この統括部6は、被測距端末4と各基地局端末との間の距離、及び各基地局端末の位置に基づき、被測距端末4の位置を求める。
【0018】
次に、基地局端末の構成について説明する。
【0019】
図2は実施の形態1に係る基地局端末の機能の概略的なブロック図である。
図2に示すように、本実施の形態における基地局端末は、UWBアンテナ7、UWB送受信部8、伝播遅延測定部9、RSSI結果受信部10、距離算出部11、距離算出部12、移動体検知部13、測距信号送信指示部14、伝播遅延測定カウンタ15、及び統括通知部16を備える。
【0020】
UWBアンテナ7は、UWB(Ultra Wide Band:超広帯域無線通信)による無線信号を送受信するアンテナである。
【0021】
UWB送受信部8は、送受信する無線信号を変復調する。このUWB送受信部8は、無線信号の仕様に応じた構成を適宜備える。
【0022】
伝播遅延測定部9、RSSI結果受信部10、距離算出部11、距離算出部12、移動体検知部13、測距信号送信指示部14、伝播遅延測定カウンタ15は、これらの機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアで実現することもできるし、マイコンやCPUなどの演算装置上で実行されるソフトウェアとして実現することもできる。
【0023】
統括通知部16は、統括部6との間で情報を送受信する。
この統括通知部16は、情報の送受信に必要なインターフェースを適宜備える。例えば、LANインターフェースのようなネットワークインターフェースで構成することができる。
【0024】
次に、被測距端末4の構成について説明する。
【0025】
図3は実施の形態1に係る被測距端末の機能の概略的なブロック図である。
図3に示すように、本実施の形態における被測距端末4は、UWBアンテナ17、UWB送受信部18、RSSI測定部19、及び測距信号返信指示部20を備える。
【0026】
UWBアンテナ17は、UWB(Ultra Wide Band:超広帯域無線通信)による無線信号を送受信するアンテナである。
【0027】
UWB送受信部18は、送受信する無線信号を変復調する。このUWB送受信部18は、無線信号の仕様に応じた構成を適宜備える。
【0028】
RSSI測定部19、測距信号返信指示部20は、これらの機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアで実現することもできるし、マイコンやCPUなどの演算装置上で実行されるソフトウェアとして実現することもできる。
【0029】
次に、本実施の形態1における移動体検知システムの動作について説明する。
【0030】
(動作)
まず、無線信号を用いた移動体5の検知の考え方について説明する。
例えばUWBに用いるマイクロ波は、電磁波の中で比較的波長が短く、光のように直進し、障害物や距離による減衰を受けやすいという特徴がある。
このような電波が送信側の端末から送信されると、受信側の端末に到達するまでの経路で、障害物等によって、反射、屈折、減衰等が起き、乱反射する。
そのため、電波経路上に障害物がある場合と、障害物が無い場合とでは、RSSIが異なることになる。
このことより、端末間で授受する無線信号のRSSIを用いて、各基地局端末と被測距端末4との間の電波経路上に、電波障害物となる移動体5の存在の有無を判別することができる。
このような動作の詳細について次に説明する。
【0031】
図4は実施の形態1に係る移動体検知システムの動作フローチャートである。
以下、図4の各ステップに基づき説明する。
【0032】
なお、以下の説明において、伝播遅延時間とRSSIを測定するために、各基地局端末から送信されるダミーデータの無線信号を「測距信号」と定義する。
また、被測距端末4が受信した測距信号のRSSIの測定結果の情報を、基地局端末へ返信するための無線信号を「測距返信信号」と定義する。
【0033】
(S101)
測距信号送信指示部14は、UWB送受信部8に対し、定期的に測距信号の送信指示を出す。
【0034】
(S102)
UWB送受信部8は、送信指示を受けると、測距信号を生成して当該信号を変調する。
変調された測距信号は、UWBアンテナ7を介して電波として送信される。
また、UWB送受信部8は、同時に伝播遅延測定カウンタ15をリセットする。
伝播遅延測定カウンタ15は、リセットの直後、1[ps]の周期でカウンタをインクリメントする。
【0035】
(S201)
被測距端末4は、基地局端末からの無線信号を受信可能な範囲に存在する場合、UWBアンテナ17により、各基地局端末から送信された測距信号の電波を受信する。
そして、UWB送受信部18は、受信した測距信号を復調する。
【0036】
一方、被測距端末4が、基地局端末からの無線信号を受信可能な範囲に存在せず、測距信号の受信ができない場合は、測距信号を受信するまで待機する。
【0037】
ここでは、図1に示すように、被測距端末4が、3つの基地局端末のすべてと通信可能な範囲に存在する場合を説明する。この通信可能な範囲は、例えば基地局端末の位置から見通し距離で30m以内である。
【0038】
(S202)
次に、UWB送受信部18は、受信通知を、測距信号返信指示部20に渡す。
【0039】
(S203)
RSSI測定部19は、UWBアンテナ17により受信された電波(測距信号)のRSSIを測定する。
そして、RSSI測定部19は、RSSI測定値を、測距信号返信指示部20に渡す。
【0040】
(S204)
測距信号返信指示部20は、受信通知と、RSSI測定値とを受け取ると、RSSI測定値をデータとして含む測距返信信号を、UWB送受信部18に渡す。
UWB送受信部18は、測距返信信号を変調し、UWBアンテナ17を介して測距返信信号を電波として送信する。
【0041】
被測距端末4は、測距信号を受信する度に、上記ステップS201〜S204を繰り返す。
【0042】
(S103)
基地局端末は、測距信号の送信から一定時間内に、測距返信信号を受信したか否かを判断する。
【0043】
(S104)
被測距端末4から一定時間内に測距返信信号の送信がなかった場合、被測距端末4が、当該基地局端末と通信可能な範囲に存在しないと判定する。この通信可能な範囲は、例えば基地局端末の位置から見通し距離で30m以内である。
そして、基地局端末は、被測距端末4が不在である旨を、統括部6に通知し、移動体5の検出動作を終了する。
【0044】
(S105)
一方、被測距端末4から一定時間内に測距返信信号の送信があった場合、基地局端末は、UWBアンテナ7により、被測距端末4からの測距返信信号の電波を受信する。
UWB送受信部8は、受信した測距返信信号を復調する。
また、UWB送受信部8は、同時に伝播遅延測定カウンタ15のカウントを停止する。
【0045】
(S106)
次に、UWB送受信部8は、受信通知を、伝播遅延測定部9に渡す。
【0046】
(S107)
UWB送受信部8は、測距返信信号内のRSSI測定値のデータを、RSSI結果受信部10に渡す。
【0047】
(S108)
伝播遅延測定部9は、UWB送受信部8からの受信通知を受けると、伝播遅延測定カウンタ15のカウンタ値を読み取り、その値を距離算出部11に渡す。
距離算出部11は、カウンタ値により、測距信号の送信から測距返信信号の受信までの伝播遅延時間を求める。そして、この伝播遅延時間に基づいて、当該基地局端末と被測距端末4との間の距離を算出する。
そして、距離算出部11は、算出した距離の情報を、移動体検知部13及び統括通知部16に渡す。
【0048】
なお、この距離は、本発明における「第1の距離」に相当する。
【0049】
なお、伝播遅延時間を利用した測距においては、移動体5による電波の反射によって実距離よりも長い距離が導出されることがあるが、複数回の測距を行い、測定値の中から距離の短いものを選べば、反射を含まない直接波によって求められた距離を取得することができる。
【0050】
(S109)
次に、基地局端末の統括通知部16は、算出された距離情報を、統括部6に送る。
統括部6は、各基地局端末からの距離情報を受け取ると、被測距端末4と各基地局端末との間の距離、及び各基地局端末の位置の情報に基づき、被測距端末4の位置を求める。
【0051】
(S110)
RSSI結果受信部10は、UWB送受信部8からRSSI測定値のデータを受け取ると、当該RSSI測定値を、距離算出部12に渡す。
距離算出部12は、受け取ったRSSI測定値に基づいて、当該基地局端末と被測距端末4との間の距離を算出する。
そして、距離算出部12は、導出した距離の情報を、移動体検知部13に渡す。
【0052】
なお、この距離は、本発明における「第2の距離」に相当する。
【0053】
この距離の算出は、例えば、距離算出部12は、予め、RSSI測定値と距離との対応表(テーブル)の情報を持ち、受け取ったRSSI測定値に対応する距離を、対応表から導出する。なお、RSSIに基づく距離の導出は、これに限るものではなく、例えば所定の演算により求めても良い。
【0054】
(S111)
移動体検知部13は、距離算出部11と距離算出部12とから、それぞれ距離の値を受け取ると、その2つの距離の値の差分を求める。
次に、移動体検知部13は、2つの距離の値に、所定値以上の差があった場合、当該基地局端末と被測距端末4との間に、移動体5が存在すると判断する。
一方、移動体検知部13は、2つの距離の値に、所定値以上の差がない場合、当該基地局端末と被測距端末4との間に、移動体5が存在しないと判断する。
そして、移動体検知部13は、移動体5の検知結果を、統括通知部16に渡す。
【0055】
(S112)
次に、基地局端末の統括通知部16は、移動体5の検知結果を、統括部6に送る。
統括部6は、各基地局端末から移動体5の検知結果を受け取ると、それらの移動体5の検知結果から、被測距端末4と各基地局端末との間の移動体5の有無を判別する。
【0056】
さらに、統括部6は、被測距端末4の位置と、各基地局端末からの移動体5の検知結果の情報とに基づき、被測距端末4に対して移動体5が存在する方向を検知する。
例えば図1の例では、第一基地局端末1と被測距端末4との間に移動体5が存在すると判断し、第二基地局端末2及び第三基地局端末3と被測距端末4との間には移動体5は存在しないと判断する。
そして、求めた被測距端末4の位置と、既知である各基地局端末の位置とにより、被測距端末4に対する第一基地局端末1の方向に、移動体5が存在すると検知できる。
【0057】
(効果)
以上のように本実施の形態においては、各基地局端末と被測距端末4との間で無線信号を授受して伝播遅延時間及びRSSIを求め、この伝播遅延時間及びRSSIに基づき、基地局端末と被測距端末4との間の移動体5の有無を検知する。
このため、基地局端末と被測距端末4間に存在する移動体5を検知することができる。
【0058】
また、被測距端末4の位置を求めるための測距信号及び測距返信信号の伝播遅延時間及びRSSIに基づいて、移動体5の有無を検知するので、被測距端末4の測距するための電波を利用して、移動体5の有無を検知することができる。
【0059】
また、被測距端末4が、移動体5が携帯すべき端末である場合、フィールド内に被測距端末4が存在し、移動体5が存在しなかったとき、統括部6は、移動体5が被測距端末4を置き忘れているということを検知できる。
【0060】
また、被測距端末4を移動体5の特定の位置に配置していることを前提とすれば、統括部6は、被測距端末4に対する移動体5の位置関係を検知することができ、移動体5の向いている向きを検知できる。
例えば、第一基地局端末1と被測距端末4との間では移動体5を検知でき、第二基地局端末2と被測距端末4との間、及び第三基地局端末3と被測距端末4との間では移動体5を検知できなかったとき、被測距端末4を移動体5の前面に配置していることを前提とすれば、統括部6は、移動体5は第一基地局端末1に対して背を向けているということを検知できる。
【0061】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、被測距端末4と基地局端末との間の移動体5を検知した。
本実施の形態2では、被測距端末4が存在しない場合において、各基地局端末間の移動体5を検知する。
【0062】
図5は実施の形態2に係る移動体検知システムの概略図である。
図5に示すように、本実施の形態における移動体検知システムは、第一基地局端末21、第二基地局端末22、第三基地局端末23、及び統括部24を備える。
そして、この移動体検知システムは、移動体5の有無を検知する。
なお、上記実施の形態1と同様の構成には同一の符号を付する。
【0063】
なお、第一基地局端末21、第二基地局端末22、及び第三基地局端末23は、本発明における「基地局端末」に相当する。
なお、以下、第一基地局端末21、第二基地局端末22、及び第三基地局端末23を区別しないときは、単に「基地局端末」ともいう。
【0064】
各基地局端末は、上記実施の形態1と同様に、フィールド内の既知の位置に設置される。
本実施の形態における基地局端末は、互いに無線信号を授受する。そして、無線信号の伝播遅延時間及びRSSIを求め、該伝播遅延時間及びRSSIに基づき、当該基地局端末と他の基地局端末との間の移動体5の有無を検知する。
【0065】
本実施の形態における移動体5は、各基地局端末間を直線で結んだ線上に存在又は不在である。
【0066】
図6は実施の形態2に係る基地局端末の機能の概略的なブロック図である。
図6に示すように、本実施の形態における基地局端末は、上記実施の形態1の構成(図2)に加え、RSSI測定部27、及び測距信号返信指示部28を備える。
なお、上記実施の形態1と同様の構成には同一の符号を付する。
【0067】
RSSI測定部27、及び測距信号返信指示部28は、これらの機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアで実現することもできるし、マイコンやCPUなどの演算装置上で実行されるソフトウェアとして実現することもできる。
【0068】
RSSI測定部27は、UWBアンテナ7により受信された電波(測距信号)のRSSIを測定する。そして、RSSI測定部27は、RSSI測定値を、測距信号返信指示部28に渡す。
【0069】
測距信号返信指示部28は、RSSI測定値を受け取ると、測距返信信号を、UWB送受信部25に渡す。
【0070】
本実施の形態におけるUWB送受信部25は、上記実施の形態1のUWB送受信部8の機能に加え、測距信号返信指示部28から渡される測距返信信号を変調し、UWBアンテナ7を介して電波を発信する機能を持つ。
【0071】
本実施の形態における距離算出部26は、上記実施の形態1の距離算出部11の機能から、算出した距離情報を統括通知部16に渡す機能を削除したものである。
本実施の形態における統括通知部29は、上記実施の形態1の統括通知部16の機能から、距離情報を統括部6に送る機能を削除したものである。
【0072】
このような構成により、本実施の形態における基地局端末は、上記実施の形態1の動作に加え、他の基地局端末から、測距信号を受信したとき、当該他の基地局端末へ測距返信信号を送信する。
【0073】
つまり、本実施の形態2における基地局端末は、無線信号の伝播遅延時間に基づき、当該無線信号を送信した他の基地局端末と当該基地局端末との間の距離を第1の距離として求める。
また、伝播遅延時間を求めた無線信号のRSSIに基づき、当該無線信号を送信した他の基地局端末と当該基地局端末との間の距離を第2の距離として求める。
そして、第1の距離と第2の距離との差が所定値以上のとき、当該基地局端末と、無線信号を送信した他の基地局端末との間に移動体5が存在すると検知する。
【0074】
(効果)
以上のように本実施の形態においては、上記実施の形態1の効果に加え、被測距端末4が存在しない場合であっても、基地局端末間に存在する移動体5を検知することができる。
【0075】
実施の形態3.
上記実施の形態1では、被測距端末4と基地局端末との間の移動体5を検知した。
また上記実施の形態2では、各基地局端末間の移動体5を検知した。
本実施の形態3では、被測距端末4と基地局端末との間、及び各基地局端末間の移動体5を検知する。
【0076】
図7は実施の形態3に係る移動体検知システムの概略図である。
図7に示すように、本実施の形態における移動体検知システムは、第一基地局端末30、第二基地局端末31、第三基地局端末32、被測距端末4及び統括部33を備える。
そして、この移動体検知システムは、移動体5の有無を検知する。
なお、上記実施の形態1及び2と同様の構成には同一の符号を付する。
【0077】
なお、第一基地局端末30、第二基地局端末31、及び第三基地局端末32は、本発明における「基地局端末」に相当する。
なお、以下、第一基地局端末30、第二基地局端末31、及び第三基地局端末32を区別しないときは、単に「基地局端末」ともいう。
【0078】
本実施の形態における移動体5は、各基地局端末と被測距端末4を直線で結んだ線上、又は各基地局端末間を直線で結んだ線上に存在又は不在である。
【0079】
本実施の形態における被測距端末4の構成及び動作は、上記実施の形態1と同様である。
【0080】
各基地局端末は、上記実施の形態1と同様に、フィールド内の既知の位置に設置される。
本実施の形態における基地局端末は、被測距端末4及び他の基地局端末と無線信号を授受する。そして、無線信号の伝播遅延時間及びRSSIを求め、該伝播遅延時間及びRSSIに基づき、当該基地局端末と被測距端末4との間、及び当該基地局端末と他の基地局端末との間の移動体5の有無を検知する。
【0081】
図8は実施の形態2に係る基地局端末の機能の概略的なブロック図である。
図8に示すように、本実施の形態における基地局端末は、上記実施の形態1(図2)の構成に加え、上記実施の形態2(図6)のRSSI測定部27、及び測距信号返信指示部28を備える。
また、本実施の形態におけるUWB送受信部25は、上記実施の形態2(図6)と同様の機能を有する。
その他の構成は上記実施の形態1と同様であり、同様の構成には同一の符号を付する。
【0082】
このような構成により、本実施の形態3における基地局端末は、上記実施の形態1と同様の動作により、無線信号の伝播遅延時間に基づき、当該無線信号を送信した被測距端末4と当該基地局端末との間の距離を第1の距離として求める。
また、伝播遅延時間を求めた無線信号のRSSIに基づき、当該無線信号を送信した被測距端末4と、当該基地局端末との間の距離を第2の距離として求める。
そして、第1の距離と第2の距離との差が所定値以上のとき、当該基地局端末と被測距端末4との間に移動体5が存在すると検知する。
【0083】
また、本実施の形態3における基地局端末は、上記実施の形態2と同様の動作により、無線信号の伝播遅延時間に基づき、当該無線信号を送信した他の基地局端末と当該基地局端末との間の距離を第1の距離として求める。
また、伝播遅延時間を求めた無線信号のRSSIに基づき、当該無線信号を送信した他の基地局端末と当該基地局端末との間の距離を第2の距離として求める。
そして、第1の距離と第2の距離との差が所定値以上のとき、当該基地局端末と、無線信号を送信した他の基地局端末との間に移動体5が存在すると検知する。
【0084】
(効果)
以上のように本実施の形態においては、上記実施の形態1又は2の効果に加え、被測距端末4の存否にかかわらず、基地局端末間又は被測距端末4と基地局端末との間に存在する移動体5を検知することができる。
【0085】
実施の形態4.
上記実施の形態1及び3では、無線信号の伝播遅延時間に基づいて端末間の距離を算出し、これとRSSIに基づき距離とを比較して、移動体5の有無を検知した。
本実施の形態4では、伝播遅延時間をRSSIに変換して、受信したRSSIとを比較することにより、移動体5の有無を検知する。
【0086】
図9は図2及び図8に示した基地局端末のブロック図において、移動体検知に係る構成を抽出した図である。
図10は実施の形態4に係る基地局端末の移動体検知に係る構成を抽出したブロック図である。
図10においては、図9に示すブロック図と同様の入出力を持ち、図9に示すブロック図と異なる導出過程で移動体を検知する基地局端末の機能の一部の概略的なブロック図を示している。
なお、図9及び図10において、上記実施の形態1及び3と同様の構成には同一の符号を付する。
なお、図10に示す移動体を検知する部分以外の機能は、実施の形態1又は3と同一である。
【0087】
図10に示すように、本実施の形態における基地局端末は、上記実施の形態1及び3の距離算出部12に代えて、RSSI変換部37を備える。
【0088】
RSSI変換部37は、この機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアで実現することもできるし、マイコンやCPUなどの演算装置上で実行されるソフトウェアとして実現することもできる。
【0089】
本実施の形態における伝播遅延測定部34は、上記実施の形態1又は3の伝播遅延測定部9の機能に加え、伝播遅延時間の測定値(カウンタ値)をRSSI変換部37に渡す。
【0090】
RSSI変換部37は、伝播遅延測定部34から渡された伝播遅延時間の測定値(カウンタ値)を、当該伝播遅延時間相当のRSSI値に変換する。
そして、RSSI変換部37は、変換したRSSIを移動体検知部38に渡す。
【0091】
この変換は、例えば予め、伝播遅延時間とRSSI値との対応表(テーブル)の情報を持ち、受け取った伝播遅延時間に対応するRSSIを、対応表から導出する。なお、これに限るものではなく、例えば所定の演算によりRSSIに変換しても良い。
【0092】
本実施の形態における距離算出部36は、上記実施の形態1又は3の距離算出部11の機能から、算出した距離情報を移動体検知部38に渡す機能を削除したものである。
【0093】
本実施の形態におけるRSSI結果受信部35は、UWB送受信部8からRSSI測定値のデータを受け取ると、当該RSSI測定値を、移動体検知部38に渡す。
【0094】
本実施の形態における移動体検知部38は、RSSI変換部37からの変換されたRSSI値と、RSSI結果受信部35からのRSSI値との比較を行う。そして、そのRSSI値の差分が所定値以上であれば、当該基地局端末と被測距端末4との間、又は当該基地局端末と他の基地局端末との間に移動体5が存在すると検知する。
【0095】
(効果)
以上のように本実施の形態においては、上記実施の形態1又は3と同様の効果を得ることができる。
また、RSSI値の差分が対象の端末間の減衰量となり、伝播経路ごとの電波の減衰の程度を測定することができる。
【0096】
なお、本実施の形態以外であっても、伝播遅延時間から求めた距離とRSSIから求めた距離との差を、電波の減衰量に変換することで、伝播経路ごとの電波の減衰の程度を測定することができる。
【0097】
実施の形態5.
上記実施の形態2では、無線信号の伝播遅延時間に基づいて端末間の距離を算出し、これとRSSIに基づき距離とを比較して、移動体5の有無を検知した。
本実施の形態5では、伝播遅延時間をRSSIに変換して、受信したRSSIとを比較することにより、移動体5の有無を検知する。
【0098】
図11は図6に示した基地局端末のブロック図において、移動体検知に係る構成を抽出した図である。
図12は実施の形態5に係る基地局端末の移動体検知に係る構成を抽出したブロック図である。
図12においては、図11に示すブロック図と同様の入出力を持ち、図11に示すブロック図と異なる導出過程で移動体を検知する基地局端末の機能の一部の概略的なブロック図を示している。
なお、図11及び図12において、上記実施の形態2と同様の構成には同一の符号を付する。
なお、図12に示す移動体を検知する部分以外の機能は、実施の形態2(図6)と同一である。
【0099】
図12に示すように、本実施の形態における基地局端末は、上記実施の形態2の構成の距離算出部26に代えて、RSSI変換部37を備える。
また、本実施の形態における基地局端末は、距離算出部12を設けない構成である。
【0100】
本実施の形態における伝播遅延測定部39は、上記実施の形態2の伝播遅延測定部9の機能に加え、伝播遅延時間の測定値(カウンタ値)をRSSI変換部37に渡す。
【0101】
RSSI変換部37は、上記実施の形態4と同様に、伝播遅延時間の測定値(カウンタ値)を、当該伝播遅延時間相当のRSSI値に変換し、移動体検知部38に渡す。
【0102】
RSSI結果受信部35は、上記実施の形態4と同様に、UWB送受信部8からRSSI測定値のデータを受け取ると、当該RSSI測定値を、移動体検知部38に渡す。
【0103】
本実施の形態における移動体検知部38は、RSSI変換部37からの変換されたRSSI値と、RSSI結果受信部35からのRSSI値との比較を行う。そして、そのRSSI値の差分が所定値以上であれば、当該基地局端末と他の基地局端末との間に移動体5が存在すると検知する。
【0104】
(効果)
以上のように本実施の形態においては、上記実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
また、距離算出に係る構成を省略することができるため、機器の構成を簡略化することができる。
【0105】
また、RSSI値の差分が対象の端末間の減衰量となり、伝播経路ごとの電波の減衰の程度を測定することができる。
【0106】
なお、本実施の形態以外であっても、伝播遅延時間から求めた距離とRSSIから求めた距離との差を、電波の減衰量に変換することで、伝播経路ごとの電波の減衰の程度を測定することができる。
【0107】
実施の形態6.
上記実施の形態では、被測距端末4が1台の場合を説明した。
本実施の形態6では、フィールド内に複数の被測距端末4が存在する場合について説明する。
【0108】
図13は実施の形態6に係る移動体検知システムの概略図である。
図13において上記実施の形態3と同様の構成には同一の符号を付する。
本実施の形態における基地局端末の構成及び動作は、上記実施の形態3と同様である。
本実施の形態における被測距端末の構成及び動作は、上記実施の形態1と同様である。
【0109】
本実施の形態では、被測距端末4が複数個存在している。
本実施の形態では、上記実施の形態3と同様に、ある基地局端末と被測距端末4との間を直線で結んだ線上、又は各基地局端末間を直線で結んだ線上に移動体5が存在した場合、基地局端末が移動体5を検知し、統括部33が各基地局端末から移動体5の検知結果を受け取る。
また、各基地局端末は、複数の被測距端末4に対して測距を行い、複数の基地局端末による各被測距端末4までの測距結果を受け取った統括部33が、被測距端末4のそれぞれの位置を算出する。
【0110】
(効果)
以上のように本実施の形態においては、上記実施の形態1及び3の効果に加え、フィールド内に複数の被測距端末4が存在していても、各被測距端末4の位置検知と移動体5の有無の判別を行うことができる。
【0111】
なお、本実施の形態では、被測距端末4の数は2つとしたが、被測距端末の数はこれに限るものではない。被測距端末4の数が2つ以上であっても、同様にそれぞれの被測距端末4の位置は測定でき、被測距端末4と各基地局端末間の移動体5の有無を判別することができる。
【0112】
実施の形態7.
上記実施の形態では、移動体5が単数の場合を説明した。
本実施の形態6では、フィールド内に複数の移動体5が存在する場合について説明する。
【0113】
図14は実施の形態7に係る移動体検知システムの概略図である。
図14において上記実施の形態3と同様の構成には同一の符号を付する。
本実施の形態における基地局端末の構成は、上記実施の形態3と同様である。
本実施の形態における被測距端末4の構成及び動作は、上記実施の形態1と同様である。
【0114】
本実施の形態では、移動体5が複数存在している。
本実施の形態では、上記実施の形態3と同様に、ある基地局端末と被測距端末4との間を直線で結んだ線上、又は基地局端末間を直線で結んだ線上に移動体5が存在した場合、基地局端末が移動体5を検知し、統括部33が各基地局端末から移動体5の検知結果を受け取る。
また、各基地局端末は、被測距端末4に対して測距を行い、複数の基地局端末による被測距端末4までの測距結果を受け取った統括部33が、被測距端末4の位置を算出する。
【0115】
本実施の形態における基地局端末は、上記実施の形態3の動作に加え、伝播遅延時間に基づき算出した距離(第1の距離)と、RSSIに基づき算出した(第2の距離)との差(以下、単に「差分値」という。)に応じて、当該基地局端末と被測距端末4、又は当該基地局端末と他の基地局端末との間の移動体5の数を検知する。
【0116】
これは、端末間に移動体5が存在する場合は、端末間で授受される電波の減衰によって、RSSIに基づく距離は、実距離よりも長くなる。そして、この距離の誤差は、端末間に存在する移動体5の数が多くなるほど誤差が大きくなる。
このことより、移動体5の数を検知することが可能である。
【0117】
本実施の形態では、基地局端末は、例えば、予め、移動体5が1つしか存在していない場合の差分値を記憶する。そして、端末間で授受した無線信号に基づき算出した差分値が、記憶した差分値と比べて大きいとき、当該端末間には、移動体5が複数存在すると検知する。
また、例えば、予め、差分値と移動体5との対応表(テーブル)の情報を持ち、算出した差分値に対応する移動体5の数を、対応表から導出する。これにより、当該端末間に存在する移動体5の数を検知する。
【0118】
なお、上記説明では、実施の形態3と同様の構成の場合を説明したが、上記実施の形態1、2、6の何れの構成においても、同様に、伝播遅延時間に基づき算出した距離(第1の距離)と、RSSIに基づき算出した(第2の距離)との差に応じて、当該基地局端末と被測距端末4、又は当該基地局端末と他の基地局端末との間の移動体5の数を検知することができる。
また、上記実施の形態4、5の何れの構成においても、基地局端末は、変換したRSSIと、伝播遅延時間を求めた無線信号のRSSIとの差に応じて、当該基地局端末と、被測距端末4又は他の基地局端末との間の移動体5の数を検知することができる。
【0119】
(効果)
以上のように本実施の形態においては、上記実施の形態1〜6の効果に加え、基地局端末間、又は基地局端末と被測距端末4との間に存在する移動体5の数を検知することができる。
これにより、フィールド内に移動体5が集中する場所を検知することができる。
【0120】
実施の形態8.
本実施の形態8では、RSSIの時系列データを取得し、この時系列データに基づき、移動体5の活動量を検知する形態について説明する。
【0121】
図15は実施の形態8に係る移動体検知システムの概略図である。
図15に示すように、本実施の形態における移動体検知システムは、第一基地局端末41、第二基地局端末42、第三基地局端末43、被測距端末4及び統括部40を備える。
そして、この移動体検知システムは、移動体5の有無を検知する。
なお、上記実施の形態3と同様の構成には同一の符号を付する。
【0122】
なお、第一基地局端末41、第二基地局端末42、及び第三基地局端末43は、本発明における「基地局端末」に相当する。
なお、以下、第一基地局端末41、第二基地局端末42、及び第三基地局端末43を区別しないときは、単に「基地局端末」ともいう。
【0123】
各基地局端末は、上記実施の形態3と同様に、フィールド内の既知の位置に設置される。
本実施の形態における被測距端末4の構成及び動作は、上記実施の形態1と同様である。
本実施の形態における基地局端末は、上記実施の形態3の動作に加え、RSSIの時系列データを取得し、該時系列データに基づき、移動体5の活動量を検知する。
【0124】
図16は実施の形態8に係る基地局端末の機能の概略的なブロック図である。
図16に示すように、本実施の形態における基地局端末は、上記実施の形態3(図8)の構成に加え、移動体活動量検知部45を備える。
その他の構成は上記実施の形態3と同様であり、同様の構成には同一の符号を付する。
【0125】
移動体活動量検知部45は、この機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアで実現することもできるし、マイコンやCPUなどの演算装置上で実行されるソフトウェアとして実現することもできる。
【0126】
本実施の形態におけるRSSI測定部44は、UWBアンテナ7により受信された電波(測距信号)のRSSIを測定する。そして、RSSI測定部44は、RSSI測定値を、測距信号返信指示部28に渡す。
さらに、RSSI測定部44は、測定したRSSI値の時系列データを取得し、この時系列データを、移動体活動量検知部45に渡す。
【0127】
移動体活動量検知部45は、受け取った時系列データに基づき、移動体5の活動量を検知する。
【0128】
ここで、移動体5が活動していた場合(例えば移動体5としての人が動いている場合等)、移動体5による電波の反射の影響が大きくなりRSSI値の時系列データは大きく変動することとなる。
このことより、RSSIの時系列データを解析することにより、移動体5の活動量を推定できる。
例えば、RSSI値の時系列データの標準偏差は、移動体5が活動していないときと比べて、移動体5が活動している場合の方が大きくなるため、RSSI値の時系列データの標準偏差を用いて、移動体5の活動量を推定できる。
【0129】
本実施の形態では、移動体活動量検知部45は、例えば、予め、移動体5が活動していない場合における、RSSI値の時系列データの標準偏差を記憶する。
そして、取得したRSSI値の時系列データの標準偏差と比較することにより、移動体5の活動量を推測する。
【0130】
移動体活動量検知部45は、推定した移動体5の活動量の情報を、統括通知部46に値を渡す。
統括通知部46は、受け取った活動量の値を、統括部40に送る。
統括部40は、各基地局端末から送られてきた移動体5の活動量の値を管理する。
【0131】
なお、上記説明では、実施の形態3と同様の構成の場合を説明したが、上記実施の形態1〜7の何れの構成においても、同様に、RSSI値の時系列データを取得し、この時系列データに基づき、移動体5の活動量を検知することができる。
【0132】
(効果)
以上のように本実施の形態においては、上記実施の形態1〜7の効果に加え、移動体5の活動量を検知することができる。
また、本発明を空調の制御等に適用することにより、移動体5としての人間の活動量(例えば人の動き)を検知することができ、空調の制御等に役立てることができる。
【0133】
なお、本実施の形態においては、RSSI値の時系列データの標準偏差から移動体5の活動量を検知したが、伝播遅延時間の測定においても移動体5が活動した際の電波の反射の影響は受けるので、RSSI値の代わりに伝播遅延時間の時系列データの標準偏差によって移動体5の活動量を検知しても良い。
【0134】
なお、上述した実施の形態6〜8では、基地局端末と被測距端末4との間、及び各基地局端末間の移動体5の検知を行う場合を説明したが、これに限らず、基地局端末と被測距端末4との間、又は各基地局端末間の一方のみについて、移動体5の検知をするようにしても良い。
例えば、実施の形態1(図1)における移動体位置検知システムのように、基地局端末間の移動体5の検知を行わなくても良い。
また、実施の形態2(図5)における移動体位置検知システムのように、基地局端末と被測距端末4との間の移動体5の検知を行わなくても良い。
【0135】
なお、上述した実施の形態1〜8では、基地局端末の数を3つとしたが、各基地局端末の測距の結果から被測距端末の位置を導出できれば良く、基地局端末の数は限定するものではない。
【0136】
なお、上述した実施の形態1〜8では、各基地局端末と統括部6との通信経路を有線としたが、各基地局端末と統括部6との間でデータの送受信ができれば良く、特に限定するものではない。
【0137】
なお、上述した実施の形態1〜8では、伝播遅延測定カウンタ15のカウント周期を1[ps]としているが、特に限定するものではない。
【0138】
なお、上述した実施の形態1〜8では、統括部6を設置したが、各基地局端末が取得した被測距端末4までの距離情報を統括して被測距端末4の位置を導出できれば良く、何れかの端末が統括部6の役割を担っても良い。
【0139】
なお、上述した実施の形態1〜8では、RSSIの測定は各基地局端末から被測距端末4に対して送られる電波に対して、被測距端末4が行ったが、被測距端末4が基地局端末に対して送った電波に対して基地局端末がRSSI測定を行い、その結果を移動体検知に用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の活用例として、UWBを用いた位置検知システムに組み込み、被測距端末4の位置測定に加え、被測距端末4と基地局端末との間の移動体5(人間)の有無を判別することで、被測距端末4の置き忘れ検知をすることができる。
また、測距を行う際に、基地局端末と被測距端末4との間の障害物の有無や電波減衰の程度を検知することによって、測距結果に重み付けをして位置測定を行う際に役立てることができる。
また、移動体5が人間である場合、被測距端末4と人間との位置関係を検知することで、被測距端末4を人体の特定の位置に配置することを前提としたとき、人間の向きを検知でき、照明の制御等に役立てられる。
また、基地局端末と被測距端末4との間、又は基地局端末間に存在する人間の活動量を検知することで、空調の制御等に役立てることができる。
【符号の説明】
【0141】
1 第一基地局端末、2 第二基地局端末、3 第三基地局端末、4 被測距端末、5 移動体、6 統括部、7 UWBアンテナ、8 UWB送受信部、9 伝播遅延測定部、10 RSSI結果受信部、11 距離算出部、12 距離算出部、13 移動体検知部、14 測距信号送信指示部、15 伝播遅延測定カウンタ、16 統括通知部、17 UWBアンテナ、18 UWB送受信部、19 RSSI測定部、20 測距信号返信指示部、21 第一基地局端末、22 第二基地局端末、23 第三基地局端末、24 統括部、25 UWB送受信部、26 距離算出部、27 RSSI測定部、28 測距信号返信指示部、29 統括通知部、30 第一基地局端末、31 第二基地局端末、32 第三基地局端末、33 統括部、34 伝播遅延測定部、35 RSSI結果受信部、36 距離算出部、37 RSSI変換部、38 移動体検知部、39 伝播遅延測定部、40 統括部、41 第一基地局端末、42 第二基地局端末、43 第三基地局端末、44 RSSI測定部、45 移動体活動量検知部、46 統括通知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局端末と、
1又は複数の被測距端末と
を備え、
前記基地局端末は、
前記被測距端末及び/又は他の基地局端末と無線信号を授受し、
前記無線信号の伝播遅延時間及び受信信号強度を求め、該伝播遅延時間及び受信信号強度に基づき、当該基地局端末と、前記被測距端末又は他の基地局端末との間の移動体の有無を検知する
ことを特徴とする移動体検知システム。
【請求項2】
前記基地局端末は、
前記無線信号の伝播遅延時間に基づき、当該無線信号を送信した前記被測距端末又は他の基地局端末と、当該基地局端末との間の距離を第1の距離として求め、
前記伝播遅延時間を求めた無線信号の受信信号強度に基づき、当該無線信号を送信した前記被測距端末又は他の基地局端末と、当該基地局端末との間の距離を第2の距離として求め、
前記第1の距離と前記第2の距離との差に基づき、当該基地局端末と、前記被測距端末又は他の基地局端末との間の移動体の有無を検知する
ことを特徴とする請求項1記載の移動体検知システム。
【請求項3】
前記基地局端末は、
前記第1の距離と前記第2の距離との差が所定値以上のとき、
当該基地局端末と、前記無線信号を送信した前記被測距端末又は他の基地局端末との間に前記移動体が存在すると検知する
ことを特徴とする請求項2記載の移動体検知システム。
【請求項4】
前記基地局端末は、
前記第1の距離と前記第2の距離との差に応じて、
当該基地局端末と、前記無線信号を送信した前記被測距端末又は他の基地局端末との間の前記移動体の数を検知する
ことを特徴とする請求項2又は3記載の移動体検知システム。
【請求項5】
前記基地局端末は、
前記伝播遅延時間を、当該伝播遅延時間相当の受信信号強度に変換し、
変換した前記受信信号強度と、前記伝播遅延時間を求めた無線信号の受信信号強度との差に基づき、当該基地局端末と、前記被測距端末又は他の基地局端末との間の移動体の有無を検知する
ことを特徴とする請求項1記載の移動体検知システム。
【請求項6】
前記基地局端末は、
変換した前記受信信号強度と、前記伝播遅延時間を求めた無線信号の受信信号強度との差が所定値以上のとき、
当該基地局端末と、前記無線信号を送信した前記被測距端末又は他の基地局端末との間に前記移動体が存在すると検知する
ことを特徴とする請求項5記載の移動体検知システム。
【請求項7】
前記基地局端末は、
変換した前記受信信号強度と、前記伝播遅延時間を求めた無線信号の受信信号強度との差に応じて、
当該基地局端末と、前記被測距端末又は他の基地局端末との間の移動体の数を検知する
ことを特徴とする請求項5又は6記載の移動体検知システム。
【請求項8】
前記各基地局端末の位置情報を有する統括部を備え、
前記基地局端末は、
前記無線信号の伝播遅延時間に基づき、当該無線信号を送信した前記被測距端末と当該基地局端末との間の距離を求め、該距離の情報を前記統括部に送信し、
前記統括部は、
前記被測距端末と前記基地局端末との間の距離、及び前記各基地局端末の位置に基づき、前記被測距端末の位置を求める
ことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の移動体検知システム。
【請求項9】
前記各基地局端末は、
当該基地局端末と前記被測距端末又は他の基地局端末との間の移動体の検知結果の情報を、前記統括部に送信し、
前記統括部は、
前記被測距端末の位置と、前記各基地局端末からの移動体の検知結果の情報とに基づき、前記被測距端末に対して前記移動体が存在する方向を検知する
ことを特徴とする請求項8記載の移動体検知システム。
【請求項10】
互いに無線信号を授受する複数の基地局端末を備え、
前記基地局端末は、
前記無線信号の伝播遅延時間及び受信信号強度を求め、該伝播遅延時間及び受信信号強度に基づき、当該基地局端末と他の基地局端末との間の移動体の有無を検知する
ことを特徴とする移動体検知システム。
【請求項11】
前記基地局端末は、
前記無線信号の伝播遅延時間に基づき、当該無線信号を送信した他の基地局端末と当該基地局端末との間の距離を第1の距離として求め、
前記伝播遅延時間を求めた無線信号の受信信号強度に基づき、当該無線信号を送信した他の基地局端末と当該基地局端末との間の距離を第2の距離として求め、
前記第1の距離と前記第2の距離との差に基づき、当該基地局端末と他の基地局端末との間の移動体の有無を検知する
ことを特徴とする請求項10記載の移動体検知システム。
【請求項12】
前記基地局端末は、
前記第1の距離と前記第2の距離との差が所定値以上のとき、
当該基地局端末と、前記無線信号を送信した他の基地局端末との間に前記移動体が存在すると検知する
ことを特徴とする請求項11記載の移動体検知システム。
【請求項13】
前記基地局端末は、
前記第1の距離と前記第2の距離との差に応じて、
当該基地局端末と、前記無線信号を送信した他の基地局端末との間の前記移動体の数を検知する
ことを特徴とする請求項11又は12記載の移動体検知システム。
【請求項14】
前記基地局端末は、
前記伝播遅延時間を、当該伝播遅延時間相当の受信信号強度に変換し、
変換した前記受信信号強度と、前記伝播遅延時間を求めた無線信号の受信信号強度との差に基づき、当該基地局端末と他の基地局端末との間の移動体の有無を検知する
ことを特徴とする請求項10記載の移動体検知システム。
【請求項15】
前記基地局端末は、
変換した前記受信信号強度と、前記伝播遅延時間を求めた無線信号の受信信号強度との差が所定値以上のとき、
当該基地局端末と、前記無線信号を送信した他の基地局端末との間に前記移動体が存在すると検知する
ことを特徴とする請求項14記載の移動体検知システム。
【請求項16】
前記基地局端末は、
変換した前記受信信号強度と、前記伝播遅延時間を求めた無線信号の受信信号強度との差に応じて、
当該基地局端末と、前記無線信号を送信した他の基地局端末との間の前記移動体の数を検知する
ことを特徴とする請求項14又は15記載の移動体検知システム。
【請求項17】
前記基地局端末は、
前記受信信号強度の時系列データを取得し、該時系列データに基づき、前記移動体の活動量を検知する
ことを特徴とする請求項1〜16の何れかに記載の移動体検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−223593(P2010−223593A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67956(P2009−67956)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】