説明

移動体用デジタル放送受信機

【課題】受信可能な放送局を検索する際、放送休止中の放送局を検索対象より除外することで処理時間を短縮することが可能な移動体用デジタル放送受信機を提供する。
【解決手段】移動体用デジタル放送受信機は、TS信号を出力するチューナ部と、TS信号をデコードし、放送休止情報及びネットワーク識別情報を出力するデコード部と、選局指示または放送局検索指示を入力する入力部と、放送サービスの物理チャネル、ネットワーク識別及び放送局検索対象情報からなる受信可能周波数テーブルを保持する選局DBと、選局指示が入力された場合、指定された放送サービスの物理チャネルをチューナ部に出力し、放送局検索指示が入力された場合、受信可能周波数テーブルにおいて放送局検索対象である物理チャネルをチューナ部に出力する選局制御部と、を備え、選局DBは、放送休止情報及びネットワーク識別情報に応じて受信可能周波数テーブルを更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体用デジタル放送受信機に関し、更に詳しくは、車載機器やポータブル機器等の移動体向けの地上デジタル放送受信機において、効率的に受信可能な放送サービスを検索することが可能な移動体用デジタル放送受信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送は移動体受信においても良好な受信が可能であることから、カーナビゲーションシステムや携帯電話等、地上デジタル放送を受信する機能を付加した移動体向けの地上デジタル放送受信機が普及している。
【0003】
日本の地上デジタル放送(ISDB−T)では、そのデータ構造によって放送休止を示すことができる。この地上デジタル放送のデータ構造の仕組みを利用して、あるチャネルで放送が休止していると判断した場合には、その旨を他のチャネルの受信状況と共に通知する放送受信装置もある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−266727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、日本の地上デジタル放送では、広域放送または県域放送といった具合に放送局が放送を送出するサービスエリアが決められていることと、場所によって電界強度も異なることから、移動に伴い今まで視聴していた放送サービスが視聴不可となる場合があり、その都度、受信可能な放送サービスを新たに検索する必要があった。上記特許文献1の放送受信装置では、受信可能な放送サービスを新たに検索する場合に放送休止中の放送サービスも併せて検索を行うため、無駄な時間を要しユーザーの利便性を損なうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題を解決するために、受信可能な放送サービスを検索する際には放送休止中の放送サービスを放送局検索の対象から除外することが可能な移動体用デジタル放送受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、受信している放送サービスが放送休止となった場合に、新たに受信可能な放送サービスを検索する際に利用する受信可能周波数テーブルから放送休止中の放送サービスを一時的に除外する構成を設ける。
【発明の効果】
【0008】
放送休止を検出した放送サービスを新たに受信可能な放送サービスを検索する際の対象から一時的に除外することで、一連の処理時間の短縮とユーザーの利便性の向上ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における移動体用デジタル放送受信機の構成を示すブロック図
【図2】同実施の形態における初期状態での受信可能周波数テーブルの例を示す図
【図3】同実施の形態におけるある放送サービスが放送休止となった場合の受信可能周波数テーブルの例を示す図
【図4】本発明の実施の形態2における移動体用デジタル放送受信機の構成を示すブロック図
【図5】同実施の形態における初期状態での受信可能周波数テーブルの例を示す図
【図6】同実施の形態におけるある放送サービスが放送休止となった場合の受信可能周波数テーブルの例を示す図
【図7】同実施の形態におけるある放送サービスが放送局検索対象に復帰した場合の受信可能周波数テーブルの例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、放送休止を検出した放送サービスを、新たに受信可能な放送サービスを検索する際の対象から一時的に除外する移動体用デジタル放送受信機であり、例えば、地上デジタル放送受信機能付きのカーナビゲーションシステムが好ましい形態である。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における移動体用デジタル放送受信機の構成を示すブロック図である。移動体用デジタル放送受信機は、放送用アンテナ100と、チューナ部101と、デコード部102と、映像表示部103と、音声再生部104と、入力部110と、選局制御部111と、選局データベース(記憶部)120から構成される。
【0012】
放送用アンテナ100は、地上デジタル放送の周波数帯域の電波を受信し、チューナ部101へと出力する。
【0013】
チューナ部101は、放送用アンテナ100で受信した電波から物理チャネル情報で指定されたチャネルの放送波を選局し、その放送波に対してOFDM復調とビタビ複号及びリードソロモン復号を行いトランスポートストリーム信号(TS信号)として出力する。また該当する物理チャネルでの受信の可否を受信可否情報として出力する。この受信可否情報で示す受信可否の判別は、現在受信している物理チャネルのC/N比やビットエラーレートもしくはこれらを組み合わせに基づいて行う。例えば地上デジタル放送の所要C/N比は19.6dB以上あり、ビットエラーレートが2×10−6(10のマイナス6乗)以下であればエラー訂正可能であること等が利用できる。判断に際する具体的な方式については特に限定しない。
【0014】
デコード部102は、TS信号をデコードし、映像出力信号を映像表示部103へ出力し、音声出力信号を音声再生部104へ出力する。また、TS信号に含まれているネットワーク識別(network_id)の内容をネットワーク識別情報として選局データベース120に出力する。更に、デコードを行っているTS信号の中で放送休止が示されている場合は放送が休止したことを示す放送休止情報を選局データベース120に出力する。
【0015】
映像表示部103は、映像出力信号を表示する手段である。この映像表示部103は例えば液晶ディスプレイ等の表示デバイスであるが、このようなデバイスを有さず他の機器への映像信号出力端子を有するものであっても良い。音声再生部104は、音声出力信号を再生する手段である。この音声再生部104は例えばスピーカ等の音声再生デバイスであるが、このようなデバイスを有さず他の機器への音声信号出力端子を有するものであっても良い。
【0016】
入力部110は、操作ボタンやタッチパネル、リモコン等の移動体用デジタル放送受信機のユーザーインターフェイスであり、実現方法については特に限定しない。ユーザーが視聴する放送サービスの指定や切り替えを希望した場合には入力部110は選局制御部111に対して選局指示を出力し、ユーザーが現在受信可能な放送サービスの検索を希望した場合には入力部110は選局制御部111に対して放送局検索指示を出力する。本実施の形態において、選局指示は、例えばリモコン番号入力や現在視聴している放送サービスに対するアップ/ダウン操作で行うことができるが、特に限定する必要はない。また、放送局検索指示は、受信可能な放送サービスを物理チャネルに順じて検索するアップ/ダウン検索として説明を行うが、現在視聴中もしくは視聴を希望する放送サービスを行っている中継局や系列局の検索であっても良い。
【0017】
選局制御部111は、入力部110からの選局指示及び放送局検索指示に基づき、チューナ部101での選局を制御する。具体的には、選局指示があった場合、選局指示で指定された放送サービスに対応する物理チャネルを選局データベース120に記憶された受信可能周波数テーブルから取得し、取得した物理チャネルを物理チャネル情報として出力する。選局指示での放送サービスの指定は例えばリモコンIDを用いることができる。この指定の方法は、放送サービスを指定できる方法であれば特にリモコンIDに限定する必要はない。一方、放送局検索指示があった場合には、選局データベース120の受信可能周波数テーブルに記載されている物理チャネルの中から、放送局検索対象となっている物理チャネルを選択し物理チャネル情報として順次出力する。チューナ部101からは、この物理チャネルでの受信の可否が受信可否情報にて通知される。受信可否情報が受信不可を示す場合には、受信可能周波数テーブルで放送局検索対象となっている別の物理チャネルを選択し物理チャネル情報として出力する。さらにその物理チャネルにおける受信可否情報を確認し、受信不可の場合は出力した物理チャネルでの受信可否情報が受信可能となるまで一連の処理を繰り返す。ここで、受信可能周波数テーブルについては後程詳しく説明を行う。
【0018】
選局データベース120は、選局制御部111に対して受信可能周波数テーブルを出力し、加えてこの受信可能周波数テーブルを放送休止情報とネットワーク識別情報に基づいて更新する機能を有している。受信可能周波数テーブルとその更新について説明する。受信可能周波数テーブルには、放送サービスに対するリモコンID、物理チャネル、ネットワーク識別、放送局検索対象とするか否かの情報が記載されている。放送局検索対象であるか否かについては、放送局検索対象の放送サービスは「対象」と記載し、放送局検索対象でない放送サービスについては「除外」と記載する。
【0019】
ここで、図2及び図3を用いて、受信可能周波数テーブルの更新について説明する。図2は、初期状態での受信可能周波数テーブルの例を示す図であり、図3は、ある放送サービスが放送休止となった場合の受信可能周波数テーブルの例を示す図である。
【0020】
図2の初期状態において放送局検索対象の列は全て「対象」と記載されている。ここで、現在受信している放送サービスのネットワーク識別(network_id)が0x7FD1(16進数表記)であり、この放送サービスが放送休止となったと仮定する。このとき、選局データベース120には、デコード部102からネットワーク識別情報としてネットワーク識別(0x7FD1)が入力され、かつ放送休止であることを示す放送休止情報が入力される。これらの情報をもとに選局データベース120は、図3に示すように受信可能周波数テーブルのネットワーク識別が0x7FD1である放送サービスの放送局検索対象の欄を「除外」に更新する。
【0021】
以上のように本実施の形態によれば、受信している放送サービスが放送休止であることを検出した際に、受信可能な放送サービスの検索対象から放送休止中の放送サービスを除外することができるため、受信可能な放送サービスを検索する際の処理時間の短縮することができる。
【0022】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における移動体用デジタル放送受信機の構成を示すブロック図である。移動体用デジタル放送受信機は、放送用アンテナ100と、チューナ部101と、デコード部102と、映像表示部103と、音声再生部104と、入力部110と、選局制御部111と、選局データベース(記憶部)120と、放送休止監視部221から構成される。ここで、図4において図1と同符号を付したものは、同機能を有するため説明を省略し、放送休止監視部221と放送休止監視部221によって更新される受信可能周波数テーブルについてのみ説明を行う。
【0023】
放送休止監視部221は、デコード部102から得た放送休止情報とネットワーク識別情報により現在受信している放送サービスが放送休止であるか否かを検出し、検出結果に応じて、ネットワーク識別監視情報と放送休止監視情報を選局データベース120へ出力する。
【0024】
ここで、図5乃至図7を用いて、放送休止監視部221による受信可能周波数テーブルの更新の例について説明する。図5は、初期状態での受信可能周波数テーブルの例を示す図であり、図6は、ある放送サービスが放送休止となった場合の受信可能周波数テーブルの例を示す図であり、図7は、ある放送サービスが放送復帰となった場合の受信可能周波数テーブルの例を示す図である。図5の初期状態においては、受信可能周波数テーブルに記載されている全ての放送サービスは放送局検索の「対象」となっている。
【0025】
放送休止監視部221は、デコード部102から得た放送休止情報とネットワーク識別情報により現在受信している放送サービスが放送休止であるか否かを検出する。現在受信している放送サービスのネットワーク識別が0x7FD1であり、この放送サービスが放送休止となったと仮定すると、放送休止監視部221は選局データベース120に対して、現在放送休止中の放送サービス、即ち受信可能周波数テーブルの中で放送局検索対象から除外する放送サービスを選局データベース120に通知する。具体的には、ネットワーク識別監視情報で放送休止となった放送サービスのネットワーク識別を通知し、放送休止監視情報で該当するネットワーク識別が放送休止中であることを通知する。
【0026】
この結果、選局データベース120に保持される受信可能周波数テーブルは、図6に示すようにネットワーク識別が0x7FD1である放送サービスの放送局検索対象の欄が「対象」から「除外」に更新される。
【0027】
受信可能周波数テーブルが図6の状態にあるとき、放送休止監視部221は、放送休止となった放送サービスのネットワーク識別(この例では0x7FD1)の保持と放送休止を検出してからの時間経過のカウントを行う。そして、放送休止を検出してからの時間経過が所定時間を越えた場合には、選局データベース120に対してネットワーク識別監視情報と放送休止監視情報とを用いて、放送サービスの休止を解除する。具体的には、ネットワーク識別監視情報によって対象となる放送サービスのネットワーク識別(この例では0x7FD1)を通知し、放送休止監視情報でネットワーク識別が放送休止中でないことを通知する。放送休止の時間経過の監視を行う所定時間については特に限定はしない。例えば、放送法第48条により総務大臣の許可を受けなければその放送を12時間以上休止することができないことから、通常は12時間以内に放送が再開されるものとして12時間以内の時間を選定しても良い。
【0028】
この結果、選局データベース120に保持される受信可能周波数テーブルは図7に示すように、ネットワーク識別が0x7FD1である放送サービスの放送局検索対象の欄が「除外」から「対象」に更新される。
【0029】
すなわち、放送休止中の放送サービスをユーザーが視聴し続ける可能性は低いため、放送休止監視部221において、一度検出した放送休止を時間経過によって解除することで、選局データベース120で保持する受信可能周波数テーブルにて放送局検索対象から「除外」した放送サービスを一定時間後に自動的に放送局検索対象に復帰させることができる。
【0030】
以上のように本実施の形態によれば、受信している放送サービスが放送休止であることを検出した際に、受信可能な放送サービスの検索対象から放送休止中の放送サービスを除外することができるため受信可能な放送サービスを検索する際の処理時間の短縮することができる。また、放送休止により放送局検索の対象から除外した放送サービスを所定時間後に放送局検索対象に復活させることで、放送再開時における放送局検索対象からの漏れを軽減できる。
【0031】
なお、本実施の形態の放送休止監視部221において、放送休止の解除をタイマーで実現したが、特にこの方法に限定する必要はない。TS信号に含まれる電子番組情報等から該当する放送サービスの放送休止が解除される時間を調べ、その時間若しくはその時間以前に放送休止が解除される旨を放送休止監視情報で通知しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明にかかる移動体用デジタル放送受信機は、放送休止を検出した放送サービスを、新たに受信可能な放送サービスを検索する際の対象から一時的に除外することから、例えば移動に伴い受信可能な放送サービスを検索する機会が多い地上デジタル放送受信機能付きのカーナビゲーションシステム等にとって有効である。
【符号の説明】
【0033】
100 放送用アンテナ
101 チューナ部
102 デコード部
103 映像表示部
104 音声再生部
110 入力部
111 選局制御部
120 選局データベース
221 放送休止監視部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上デジタル放送波を受信し、トランスポートストリーム信号を出力するチューナ部と、
前記トランスポートストリーム信号をデコードし、放送休止情報及びネットワーク識別情報を出力するデコード部と、
選局指示または現在受信可能な放送サービスの検索を要求する放送局検索指示を入力する入力部と、
少なくとも、放送サービスの物理チャネル、ネットワーク識別及び放送局検索対象であることを示す検索対象情報を含む受信可能周波数テーブルを保持する選局データベースと、
前記選局指示が入力された場合、前記選局指示で指定された放送サービスの物理チャネルを前記受信可能周波数テーブルから取得して前記チューナ部に出力し、前記放送局検索指示が入力された場合、前記受信可能周波数テーブルにおいて放送局検索対象である物理チャネルを前記チューナ部に出力する選局制御部と、を備え、
前記選局データベースは、前記デコード部が出力した前記放送休止情報及び前記ネットワーク識別情報に応じて前記受信可能周波数テーブルを更新する、ことを特徴とした移動体用デジタル放送受信機。
【請求項2】
前記放送休止情報及び前記ネットワーク識別情報に応じて、前記ネットワーク識別情報で指定される放送サービスの放送休止を判断するとともに、所定時間経過後に、放送休止した放送サービスの放送休止を解除させる放送休止監視部と、を更に備え、
前記選局データベースは、前記放送休止監視部からの放送休止監視情報及びネットワーク識別監視情報に応じて前記受信可能周波数テーブルを更新する、ことを特徴とした請求項1記載の移動体用デジタル放送受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−257142(P2012−257142A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129884(P2011−129884)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】