説明

移動体通信システム及び有線基地局装置

【課題】 無線通信禁止施設内で電波を出力することなく携帯電話機の利用が可能であり、低コストで導入可能な移動体通信システムを提供する。
【解決手段】 携帯電話機5は、通常の無線モードと、無線信号の出力を停止する有線モードとを有する。インターネット基地局装置1は、無線通信禁止施設8内に設置される。携帯電話機5は、アダプタケーブル6の接続により、有線モードに移行する。インターネット基地局装置1は、上位のネットワーク制御装置2とインターネット3を介して接続されており、有線モードの携帯電話機5とネットワーク制御装置2とを接続して、無線信号を出力しない状態で、携帯電話機5を用いた移動体通信サービスの利用を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信システム及び有線基地局装置に関し、更に詳しくは、携帯電話等の移動体通信システム、及び、そのような移動体通信システムで使用される有線基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機が普及し、携帯電話機のユーザは、さまざまな場所で通話が可能となっている。しかしながら、携帯電話機が出力する電波は、医療機器等の精密機器に悪影響を及ぼす可能性があることから、病院等では、電波の出力を停止するために携帯電話機の電源を切るように呼びかけられている。このため、病院等で勤務する従業員や、外来者等は、携帯電話機を用いて、通話やメール、Webへの接続等の移動体通信サービスを利用することができず、不便を強いられていた。
【0003】
病院等において、携帯電話機の利用を可能にする技術としては、特許文献1に記載された技術がある。図10は、特許文献1に記載された従来の携帯型無線電話用有線中継システムの概略構成を示している。携帯型無線電話機210は、有線通信ネットワーク211を介して通信を行う有線モードを有している。携帯型無線電話機210は、有線モード時は、電波の出力を停止して、回線終端装置215及びブリッジ214を介して、受発信装置213との間で情報のやり取りを行う。
【0004】
集合アンテナ212は、例えば病院の屋上やその周辺に設置されている。受発信装置213は、携帯型無線電話機210との間でやり取りする信号を、集合アンテナ212から、携帯型無線電話機210が出力する電波と同様な電波を出力する。これにより、携帯型無線電話機210が電波を出力しなくても、携帯型無線電話機210を用いた通話が可能となる。このように、有線通信ネットワーク211を利用すれば、ユーザは、病院内において、精密機器に悪影響を与えることなく携帯型無線電話機210を利用することができる。
【特許文献1】特開2000−165315号公報(図1、段落0019〜0036)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、ペースメーカ等の精密機器を持った患者が、集合アンテナ212が設置されている場所の周辺に立ち入る可能性があるため、その場合には、ペースメーカ等が誤動作を起して、患者が危険にさらされるおそれがあるという問題がある。また、受発信装置210との無線インタフェースを持つ相手側装置も設計する必要があり、設備投資が多くなるという問題もある。
【0006】
ここで、携帯型無線電話機210が有線モードに設定されているときに、携帯型無線電話機210が回線終端装置215にケーブル接続されていないときには、有線通信ネットワーク211を利用することはできないため、その携帯型無線電話機210に通話要求をした発信者は、携帯型無線電話機210のユーザと通話することはできない。このとき、発信者には、どのような理由によって携帯型無線型電話機210のユーザと通話不能であるかは通知されないため、発信者は、通話が不可能である理由を判断することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、電波を出力することなく利用が可能であり、低コストで導入可能な移動体通信システム及び有線基地局装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、携帯電話機を有線通信モードに設定したユーザが、移動体通信システムを利用できない場合に、そのユーザに通話要求をした発信者が、どのような理由で通話が不可であるのかを判断できる移動体通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の移動体通信システムは、無線信号により通信を行う無線モードと無線信号の出力を停止して有線通信を行う有線モードとの間でモード選択が可能な携帯電話機と、前記携帯電話機とケーブル接続が可能であり、前記有線モードが選択された携帯電話機と有線通信が可能な有線基地局装置と、前記有線基地局装置と有線通信回線を介して接続され、前記携帯電話機の通信を制御するネットワーク制御装置とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の移動体通信システムでは、携帯電話機は、有線モード時には、有線基地局装置を介してネットワーク制御装置に接続可能であるため、無線通信が禁止される無線通信禁止施設内に有線基地局装置を設置することで、無線通信禁止施設内で携帯電話機を用いて移動体通信サービスの利用が可能になる。また、ネットワーク制御装置と有線基地局装置とが有線通信回線を介して接続されるため、有線回線として、既設の回線を使用することで、有線モードの携帯電話機の利用が可能な移動体通信システムを、低コストで導入できる。
【0011】
本発明の移動体通信システムでは、前記携帯電話機は、ユーザによる操作に応じて前記モード選択を行う構成を採用できる。この場合、ユーザは、任意に携帯電話機のモードを選択可能である。
【0012】
本発明の移動体通信システムでは、携帯電話機は、前記有線基地局装置との間のケーブル接続を検出すると、前記有線モードに移行する構成を採用することもできる。この場合、ユーザがモード切替の操作をしなくても、携帯電話機のモードを有線モードに移行させることができる。
【0013】
本発明の移動体通信システムでは、前記携帯電話機は、前記有線基地局装置との間のケーブル接続の解除を検出すると、所定時間経過後に前記無線モードに移行することが好ましい。所定時間は、例えばユーザがケーブル接続を解除してから無線通信禁止施設内から退去するまでにかかるであろう時間に基づいて設定される。この場合、無線通信禁止施設内で無線モードに移行して精密機器等に影響を与える事態を防止できると共に、ユーザが無線モードに移行させるのを忘れることを防止できる。
【0014】
本発明の移動体通信システムでは、前記携帯電話機は、前記モードの切替えに際して、該切替え後のモードを前記ネットワーク制御装置に通知し、該ネットワーク制御装置は、各携帯電話機のモード情報を保持する構成を採用できる。この場合、ネットワーク制御装置は、携帯電話機の通信モードが現在どの通信モードであるかを管理できる。
【0015】
本発明の移動体通信システムでは、前記ネットワーク制御装置は、有線モードが選択され且つ前記有線基地局装置に接続されていない携帯電話機に呼が発生したときには、該携帯電話機が有線モードを選択しており、かつ、通話できない旨の情報を、当該呼を発生した電話機に向けて送信することが好ましい。この場合、発信者は、どのような理由で通話が不可能であるかを判断できる。
【0016】
本発明の移動体通信システムでは、前記有線通信回線がインターネットである構成を採用できる。
【0017】
本発明の移動体通信システムでは、前記携帯電話機は、前記有線基地局装置とのケーブル接続を検出すると、表示画面上に、前記有線基地局装置と接続中である旨を表示する構成を採用できる。この場合、携帯電話機のユーザは、表示画面を参照することにより、有線基地局装置と正しく接続されたか否かを判断できる。
【0018】
本発明の有線基地局装置は、無線信号により通信を行う無線モードと無線信号の出力を停止して有線通信を行う有線モードとの間でモード選択が可能な携帯電話機とケーブル接続され、且つ、前記携帯電話機の通信を制御するネットワーク制御装置と有線通信回線を介して接続される有線基地局装置であって、有線モードが選択された携帯電話機との間で所定形式のデータの送受信を行う有線インタフェース部と、前記ネットワーク処理装置との間でベースバンド信号の送受信を行う伝送路インタフェースと、前記有線インタフェース部と伝送路インタフェースとを接続し、前記所定形式のデータとベースバンド信号との間でデータ変換を行うベースバンド処理部とを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の有線基地局装置は、有線モードの携帯電話機とネットワーク制御装置とを接続して、無線信号の出力を停止した状態で携帯電話機の利用を可能とする。また、有線モードの携帯電話機とネットワーク制御装置との間を有線通信回線を介して接続するため、有線回線として、既設の回線を使用することで、有線モードの携帯電話機の利用が可能な移動体通信システムを、低コストで導入できる。
【0020】
本発明の有線基地局装置では、前記伝送路インタフェースは、前記ベースバンド信号を、前記有線通信回線のプロトコルに従って、前記ネットワーク制御装置に送信する構成を採用でき、また、前記所定形式のデータがシリアルデータである構成を採用できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の移動体通信システム及び有線基地局装置は、無線信号を出力しない状態の携帯電話機を用いた移動体通信サービスの利用を可能とする。また、有線回線として、既設の回線を使用することで、このような移動体通信システムの導入コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態の移動体通信システムの構成を示している。移動体通信システム100は、インターネット接続型基地局装置(有線基地局装置)1と、ゲートウェイルータ7と、ネットワーク制御装置2とを備える。インターネット接続型基地局装置1は、アダプタケーブル6を介して、携帯電話機5に接続される。また、イーサネット(登録商標)ケーブル4を介して、ゲートウェイルータ7と接続される。ゲートウェイルータ7は、インターネット3を介して、ネットワーク制御装置2に接続される。
【0023】
ユーザは、携帯電話機5を用いて、通話やメール、Webへの接続等の移動体通信サービスを利用する。携帯電話機5は、通信モードとして、有線通信モードと無線通信モードとを有している。携帯電話機5の通信モードは、図2に示すように、表示画面上に表示される。携帯電話機5は、通常は、無線通信モードで動作し、無線信号によって図示しない無線基地局を介して上位のネットワーク制御装置2と接続する。携帯電話機5は、有線通信モード時は、無線信号の発信を停止し、インターネット接続型基地局装置1を介して上位のネットワーク制御装置2と接続する。ネットワーク制御装置2は、図示しない回線と接続されている。ネットワーク制御装置2は、携帯電話機5と通信可能な無線基地局又はインターネット接続型基地局装置1を特定する情報を有しており、携帯電話機5の通信を制御する。
【0024】
携帯電話機5の通信モードは、アダプタケーブル6を携帯電話機5に接続することにより、或いは、ユーザのボタン操作により、無線通信モードと有線通信モードとの間で切り替えられる。携帯電話機5は、自身の通信モードをネットワーク制御装置2に通知し、ネットワーク制御装置2は、通知された携帯電話機5の通信モードを保持する。ネットワーク制御装置2は、無線通信モードに設定された携帯電話機5のユーザに対しては、無線基地局を介した接続により、移動体通信サービスの利用を可能とし、有線通信モードに設定された携帯電話機5のユーザに対しては、インターネット接続型基地局装置1を介した接続により、移動体通信サービスの利用を可能とする。
【0025】
インターネット接続型基地局装置1は、無線通信が禁止される例えば病院等の無線通信禁止施設8内の各階に設置される。インターネット接続型基地局装置1は、携帯電話機5との間でやり取りするデータのデータ形式と、ネットワーク制御装置2との間でやり取りするデータのデータ形式との間でデータの変換を行う。インターネット接続型基地局装置1は、有線通信モードの携帯電話機5から、無線通信モードで無線信号によって携帯電話機5と無線基地局との間でやり取りされるデータと同様なデータを入力し、それをデータ変換して、上位のネットワーク制御装置2に受け渡す。インターネット接続型基地局装置1には、任意のアドレスが付与されており、ネットワーク制御装置2は、インターネット3及びゲートウェイルータ7を介して、複数のインターネット接続型基地局装置1と接続可能である。
【0026】
図3は、携帯電話機の構成を機能ブロック図で示している。携帯電話機5は、無線部50、有線部51、制御部52、マイク53、スピーカ54、及び、操作表示部55を有する。マイク52及びスピーカ54は、ユーザが通話をする際に用いられる。制御部52は、携帯電話機5の各部を制御し、通信モードの切替え等を行う。また、ベースバンド信号の変復調や誤り訂正を行う。無線部50は、無線通信モード時に、無線信号により無線基地局との間の接続を確立して、ユーザの通話等を実現する。有線部51は、有線通信モード時に、ネットワーク制御装置2との間の接続を確立して、ユーザの通話等を実現する。操作表示部55は、表示画面上に現在の通信モード等を表示して、ユーザに各種情報を通知する。
【0027】
無線部50は、制御部52で処理された送信ベースバンド信号を無線信号に変換し、これを無線基地局に向けて送信する。また、無線基地局から無線信号を受信して、受信した無線信号を受信ベースバンド信号に変換する。有線部51は、制御部52で処理された送信ベースバンド信号をシリアル信号に変換し、これをアダプタケーブル6を介してインターネット接続型基地局装置1に送信する。また、インターネット接続型基地局装置1からシリアル信号を受信して、受信したシリアル信号を受信ベースバンド信号に変換する。
【0028】
制御部52は、有線部51からアダプタケーブル6の接続を検出した旨の通知を受けると、或いは、ユーザが通信モードを有線通信モードに切り替える操作を行うと、通信モードを、有線通信モードに切り替える。また、制御部52は、アダプタケーブル6が接続された状態で電源がオンにされたときには、携帯電話機5を有線通信モード状態で起動させる。制御部50は、通信モードを有線通信モードに設定すると、無線部50を非活性化させて、無線信号の出力を停止させる。
【0029】
図4は、インターネット接続型基地局装置1の構成を機能ブロック図で示している。インターネット接続型基地局装置1は、有線インタフェース部10と、ベースバンド処理部11と、呼処理制御部12と、装置内監視制御部13と、伝送路インタフェース14とを有する。インターネット接続型基地局装置1は、複数の有線インタフェース部10を有しており、各有線インタフェース部10は、アダプタケーブル6を介して携帯電話機5と接続される。装置内監視制御部13は、装置内の状態監視制御を行う。有線インタフェース部10は、アダプタケーブルにより携帯電話機5が接続されたことを検出すると、装置内監視制御部13に、その旨を通知する。
【0030】
ベースバンド処理部11は、ベースバンド信号の変復調や誤り訂正を行う。呼処理制御部12は、ベースバンド処理部11に対して、各有線インタフェース10との間でやり取りするベースバンド信号の振り分けを指示する。有線インタフェース部10は、ベースバンド処理部11から入力する送信ベースバンド信号をシリアル信号に変換し、これを携帯電話機5に入力する。また、携帯電話機5から入力したシリアル信号を、受信ベースバンド信号に変換し、これをベースバンド処理部11に入力する。伝送路インタフェース部14は、所定のプロトコルにより、上位のネットワーク制御装置2との間で、有線インタフェース10が携帯電話機5との間でやり取りするデータの送受信を行う。
【0031】
図5は、インターネット接続型基地局装置1の外観を示している。インターネット接続型基地局装置1は、各有線部10の状態を示すためのLED100〜103を有する。「運用中」を示すLED100は、有線部10が運用可能状態にあるときに点灯する。「接続中」を示すLED101は、アダプタケーブル6に携帯電話機5が接続されると点灯する。「エラー」を示すLED102は、携帯電話機5がデータ要求に対して応答しないときに点灯する。「故障」を示すLED103は、有線部10又はインターネット接続型基地局装置1に故障が発生したときに点灯する。
【0032】
図6は、移動体通信システムの動作をフローチャートで示している。携帯電話機5は、無線通信モードで動作している。ユーザが、無線通信禁止施設8内に入る前に、携帯電話機5を操作して、通信モードを有線通信モードに切り替える操作を行うと、制御部52は、無線部50による無線信号の出力を停止させて、通信モードを有線通信モードに切り替える(ステップS1)。ステップS1では、携帯電話機5は、無線基地局を介してネットワーク制御装置2に通信モードを有線通信モードに切り替える旨を通知し、ネットワーク制御装置2から、有線モードへの切り替え通知に対する応答を受信して、通信モードを無線通信モードから有線通信モードに切り替える。
【0033】
制御部52は、通信モードの切替後に、操作表示部55に、通信モードが、有線通信モードである旨の表示を指示する(ステップS2)。ユーザは、このようにして通信モードを有線通信モードに切り替えた後に、携帯電話機5を無線通信禁止施設8に持ち込む。このとき、携帯電話機5は、通信モードが事前に有線通信モードに切り替えられたことにより無線信号を出力していないため、ユーザが携帯電話機5を電源オン状態で無線通信禁止施設8に持ち込んでも、精密機器等に悪影響を与えることはない。
【0034】
ユーザは、移動体通信サービスを利用するため、携帯電話機5にアダプタケーブル6を接続する(ステップS3)。このとき、携帯電話機5は、アダプタケーブル6の接続を検出するが(ステップS4)、既に通信モードが有線通信モードとなっているために通信モードの切替えは行わない。一方、インターネット接続型基地局装置1は、携帯電話機5の接続を検出して(ステップS5)、「接続中」を示すLED101(図5)を点灯させる(ステップS6)。ネットワーク制御装置2は、インターネット接続型基地局装置1のアドレスにより、携帯電話機5が接続されたインターネット接続型基地局装置1を特定する。ここまでの動作により、携帯電話機5は、ネットワーク制御装置2との間の接続を確立し、インターネット接続型基地局装置1及びネットワーク制御装置2によって待受け状態となる。
【0035】
ユーザが、携帯電話機5を操作して、通話要求を行うと、携帯電話機5は、その通話要求を、インターネット接続型基地局装置1に送信する(ステップS8)。このときインターネット接続型基地局装置1は、通話要求をした携帯電話機5が接続されている有線インタフェース部10を特定し、携帯電話機5から受信した通話要求を、ゲートウェイルータ4及びインターネット3を介して、上位のネットワーク制御装置2に送信する(ステップS9)。インターネット接続型基地局装置1は、ネットワーク制御装置2から通話許可があると、携帯電話機5に通話開始報告を行う。以降、ユーザは、携帯電話機5を利用して通話を行う。
【0036】
他のユーザが、携帯電話機5のユーザに対して通話を要求した場合には、ネットワーク制御装置2は、携帯電話機5の通信モードが無線通信モードである場合には、通常の動作により、無線基地局を介して携帯電話機5と接続し、通話を実現させる。また、携帯電話機5の通信モードが有線通信モードである場合には、その携帯電話機5が接続されているインターネット接続型基地局装置1を特定し、そのインターネット接続型基地局装置1を介して携帯電話機5と接続して、通話を実現させる。
【0037】
ユーザがアダプタケーブル6の接続を解除すると、携帯電話機5は、図示しないカウンタを動作させて、カウント値が所定の値に到達するまで、つまり所定時間が経過するまで、有線通信モード状態を維持する。この所定時間は、ユーザが、携帯電話機5のケーブル接続を解除してから、無線通信禁止施設8から出るまでの時間を考慮して設定される。所定時間が経過すると、携帯電話機5は、無線基地局を介して通信モードを無線通信モードに切り替える旨を通知し、その通知に対する応答を受信して、通信モードを無線通信モードに切り替える。ユーザが所定時間を経過する前に、通信モードを無線通信モードに切り替えるボタン操作を行った場合には、携帯電話機5は、その時点で、通信モードを無線通信モードに切り替える。
【0038】
ここで、携帯電話機5の通信モードは有線通信モードであるが、その携帯電話機5がまだインターネット接続型基地局装置1に接続されていない、或いは、既に接続が解除されている場合には、その携帯電話機5のユーザに通話要求した他のユーザは、携帯電話機5のユーザと通話することはできない。この場合、ネットワーク制御装置2は、有線通信モードに設定された携帯電話機5が何れのインターネット接続型基地局装置1とも接続されていないことを検出して、通話要求をした他のユーザに、相手が無線通信禁止施設8内にいるため繋がらない旨のアナウンスを流して、通話ができない理由を通知する。
【0039】
本実施形態では、ユーザは、ボタン操作により、或いは、アダプタケーブル6を携帯電話機5に接続することにより、携帯電話機5の通信モードを、有線通信モードに設定することができる。有線通信モード時には、ユーザは、携帯電話機5をインターネット接続型基地局装置2に接続することで、無線信号を停止した状態で、移動体通信サービスを利用することができる。このように、本実施形態では、無線通信禁止施設8の中では有線通信モードによって移動体通信サービスを利用することができ、無線通信禁止施設8の外では無線通信モードによって移動体通信サービスを利用することができるため、移動体通信サービスを利用可能な環境を広げることができる効果が得られる。
【0040】
また、本実施形態では、インターネット接続型基地局装置1と上位のネットワーク制御装置2とが、インターネット3を介して接続されている。このように、インターネット接続型基地局装置1と上位のネットワーク制御装置2とを既設の通信回線を流用して接続可能であり、設備投資を低減しつつ、有線通信モードによる移動体通信サービスの利用を実現できる。また、インターネット接続型基地局装置1には、装置毎にアドレスを付与でき、複数のインターネット接続型基地局装置1を、ゲートウェイルータ7を介して1回線で上位のネットワーク制御装置2と接続可能である。このため、インターネット接続型基地局装置1ごとに、ネットワーク制御装置2との回線を設ける必要がなく、運用コストを低減できる。
【0041】
本実施形態では、アダプタケーブル6の接続を解除しても、ユーザがボタン操作をしないときには、携帯電話機5は、有線通信モードを維持する。これにより、携帯電話機5が無線通信禁止施設8内で無線通信モードに移行することを防止できる。また、有線通信モードに設定された携帯電話機5がインターネット接続型基地局装置10との接続を解除しているときには、その携帯電話機5のユーザに通話を要求した他のユーザに、相手が無線通信禁止施設8内にいるため繋がらない旨のアナウンスを流す。これにより、通話要求をした他のユーザは、どのような理由で、携帯電話機5のユーザとの通話が不可能であるのかを判断することができ、利便性が高まる。
【0042】
なお、図1では、無線通信禁止施設8内にゲートウェイルータ7を1つ有する例について示したが、これには限定されず、例えば無線通信禁止施設8の各階にゲートウェイルータ7を設置して、各部屋にインターネット接続型基地局装置1を設置してもよい。また、図1では、ゲートウェイルータ4を設置して、複数のインターネット接続型基地局装置1を各階に設置したが、これには限定されない。例えば図7に示すように、インターネット接続型基地局装置1を2階に設置して、アダプタケーブル6を2階と1階とに伸ばして、各階で有線通信モードによる移動体通信サービスの理用を可能にすることもできる。このような構成を採用する場合、ゲートウェイルータ4を設置しなくても、複数の階で有線通信モードによる通話等を実現でき、移動体通信システムの導入コストを低減できる効果がある。
【0043】
図7に示す構成を採用する場合、例えば2階から1階に延びるアダプタケーブル6のように、ケーブル長が長くなるものについては、信号レベルの低下を防ぐために、図8に示すように、信号ライン中にバッファ61を挿入するとよい。また、携帯電話機5は、インターネット接続型基地局装置1との間の接続が確立されると、図9に示すように、表示画面上に接続中を示す情報を表示するとよい。このようにすることで、ユーザは、2階に移動してインターネット接続型基地局装置1の接続中を示すLED101(図5)を確認しなくても、インターネット接続型基地局装置1と携帯電話機5とが正しく接続されていることを確認できる。
【0044】
図6では、ユーザは、通信モードを有線通信モードにして携帯電話機5を無線通信禁止施設8に持ち込んだが、これに代えて、携帯電話機5を電源オフ状態で無線通信禁止施設8に持ち込んでもよい。この場合、アダプタケーブル6を接続してから電源をオンにすると、携帯電話機5は、ステップS4でアダプタケーブル6の接続を検出し、インターネット接続型基地局装置1を介して有線モードに設定する旨を通知して有線通信モードで起動し、操作表示部55に有線通信モードである旨を表示する。この場合にも、携帯電話機5が無線禁止通信禁止施設8内で無線信号を出力することがないため、ユーザは、精密機器等に悪影響を与えることなく、移動体通信サービスを利用することができる。
【0045】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の移動体通信システム及び有線基地局装置は、上記実施形態例にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態の移動体通信システムの構成を示すブロック図。
【図2】携帯電話機5の外観を示す外観図。
【図3】携帯電話機の構成を示す機能ブロック図。
【図4】インターネット接続型基地局装置1の構成を示す機能ブロック図。
【図5】インターネット接続型基地局装置1の外観を示す外観図。
【図6】移動体通信システムの動作例を示すフローチャート。
【図7】本発明の一実施形態の変形例の移動体通信システムの構成を示すブロック図。
【図8】アダプタケーブル6の構成を示すブロック図。
【図9】携帯電話機5の外観を示す外観図。
【図10】従来の携帯型無線電話用有線中継システムの概略構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0047】
1:インターネット接続型基地局装置
2:ネットワーク制御装置
3:インターネット
4:イーサネット(登録商標)ケーブル
5:携帯電話機
6:アダプタケーブル
7:ゲートウェイルータ
8:無線禁止施設
50:無線部
51:有線部
52:制御部
53:マイク
54:スピーカ
55:操作表示部
10:有線インタフェース部
11:ベースバンド処理部
12:呼処理制御部
13:装置内監視制御部
14:伝送路インタフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号により通信を行う無線モードと無線信号の出力を停止して有線通信を行う有線モードとの間でモード選択が可能な携帯電話機と、
前記携帯電話機とケーブル接続が可能であり、前記有線モードが選択された携帯電話機と有線通信が可能な有線基地局装置と、
前記有線基地局装置と有線通信回線を介して接続され、前記携帯電話機の通信を制御するネットワーク制御装置とを備えることを特徴とする移動体通信システム。
【請求項2】
前記携帯電話機は、ユーザによる操作に応じて前記モード選択を行う、請求項1に記載の移動体通信システム。
【請求項3】
前記携帯電話機は、前記有線基地局装置との間のケーブル接続を検出すると、前記有線モードに移行する、請求項1又は2に記載の移動体通信システム。
【請求項4】
前記携帯電話機は、前記有線基地局装置との間のケーブル接続の解除を検出すると、所定時間経過後に前記無線モードに移行する、請求項3に記載の移動体通信システム。
【請求項5】
前記携帯電話機は、前記モードの切替えに際して、該切替え後のモードを前記ネットワーク制御装置に通知し、該ネットワーク制御装置は、各携帯電話機のモード情報を保持する、請求項1〜4の何れか一に記載の移動体通信システム。
【請求項6】
前記ネットワーク制御装置は、有線モードが選択され且つ前記有線基地局装置に接続されていない携帯電話機に呼が発生したときには、該携帯電話機が有線モードで通話できない旨の情報を、当該呼を発生した電話機に向けて送信する、請求項5に記載の移動体通信システム。
【請求項7】
前記有線通信回線がインターネットである、請求項1〜6の何れか一に記載の移動体通信システム。
【請求項8】
前記携帯電話機は、前記有線基地局装置とのケーブル接続を検出すると、表示画面上に、前記有線基地局装置と接続中である旨を表示する、請求項1〜7の何れか一に記載の移動体通信システム。
【請求項9】
無線信号により通信を行う無線モードと無線信号の出力を停止して有線通信を行う有線モードとの間でモード選択が可能な携帯電話機とケーブル接続され、且つ、前記携帯電話機の通信を制御するネットワーク制御装置と有線通信回線を介して接続される有線基地局装置であって、
有線モードが選択された携帯電話機との間で所定形式のデータの送受信を行う有線インタフェース部と、
前記ネットワーク処理装置との間でベースバンド信号の送受信を行う伝送路インタフェースと
前記有線インタフェース部と伝送路インタフェースとを接続し、前記所定形式のデータとベースバンド信号との間でデータ変換を行うベースバンド処理部とを備えることを特徴とすることを特徴とする有線基地局装置。
【請求項10】
前記伝送路インタフェースは、前記ベースバンド信号を、前記有線通信回線のプロトコルに従って、前記ネットワーク制御装置に送信する、請求項9に記載の有線基地局装置。
【請求項11】
前記所定形式のデータがシリアルデータである、請求項9又は10に記載の有線基地局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−80828(P2006−80828A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262004(P2004−262004)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】