説明

移動体

【課題】取り扱い容易で破損の危険性の低い移動体を提供する。
【解決手段】移動体1の本体部10は左クローラユニット12Lと右クローラユニット12Rをハウジング11で連結したものである。本体部10の上面にはカメラユニット20と運搬用ハンドル30が設けられる。運搬用ハンドル30の最上位箇所はカメラユニット20の最上位箇所以上の高さとなっており、移動体1が転倒したとき、運搬用ハンドル30はカメラユニット20の保護の役割を果たす。運搬用ハンドル30は本体部10の重心CGよりもカメラユニット20寄りに設けられている。ハウジング11と左右クローラユニット12L、12Rの境界で、それぞれの外殻板同士が合わさって板が二重になった箇所に、運搬用ハンドル30の根元が固定される。運搬用ハンドル30の側面には障害物センサ25が設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の床下や天井裏等、人間が入り込みにくい空間、特に高さの低い空間で用いるのに適した点検ロボット等の移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅は、建築後時間が経過するに従い劣化する。住宅を長く使用するためには、適当なタイミングで点検を行い、補修の必要があれば早めに補修を施す必要がある。従来、点検は直接目視することにより行われていたが、床下や天井裏等、高さの低い空間での点検は作業者に多大の苦痛を強いるものであり、衛生面でも問題があった。
【0003】
上記のような点検作業者の負担を軽減するため、点検作業者に代わって床下や天井裏に入り込み、カメラで撮像した画像を点検作業者のもとに送信する点検ロボットが開発されつつある。そのような点検ロボットの一例を特許文献1に見ることができる。
【0004】
特許文献1に記載された点検ロボットは、上面に撮像ユニットを備え、床下の地面や天井裏などといった走行面をクローラで走行する。点検ロボットは操作端末からの無線通信で遠隔制御され、撮像データを操作端末に送信する。点検作業者は操作端末に映し出される映像や撮像データを見て補修の必要性等を判断する。点検ロボットには、撮像ユニットの他、前方に存在する障害物を検出する障害物センサや、被写体と平行移動する際に使用される距離センサ等、自律走行に必要なセンサ類が設けられている。
【特許文献1】特開2008−55569号公報(国際特許分類:B25J13/08、B25J5/00)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記点検ロボットが走行する地面や天井裏は、必ずしも平坦ではなく、不整であったり、障害物が横たわっていたりする。そのため点検ロボットは、移動手段として、不整地や障害物の走破性能が高いクローラを採用している。クローラは車輪に比べ構成部品が多く、移動体の重量を増加させる。また、点検中に電池切れとなって帰還できないなどといった事態が発生しないよう、電池容量にゆとりを持たせる必要があり、電池もある程度大きなものが搭載される。これらが相まって、点検ロボットはかなりの重量となり、運搬したり、床下点検口から下ろしたりするときなど、点検作業者に多大の労力を強いていた。また、指先から滑り落ちて破損する危険性もあった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、人間が入り込みにくい、高さの低い空間等で用いるのに好適する、取り扱い容易で破損の危険性の低い移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、本体部上面にカメラユニットを備えた移動体において、当該移動体の転倒時、前記カメラユニットの保護の役割を果たす運搬用ハンドルを前記本体部上面に設けたことを特徴としている。
【0008】
この構成によると、運搬用ハンドルを用いて移動体を容易に走行面に下ろしたり、走行面から引き上げたりすることができる。移動体が転倒したとき、運搬用ハンドルはカメラユニットの保護の役割を果たすから、高価なカメラユニットが破損したり故障したりする危険性を低減することができる。
【0009】
また本発明は、上記構成の移動体において、前記運搬用ハンドルの最上位箇所を、前記カメラユニットの最上位箇所以上の高さとしたことを特徴としている。
【0010】
この構成によると、移動体が転倒したとき、カメラユニットを運搬用ハンドルでしっかりと保護することができる。
【0011】
また本発明は、上記構成の移動体において、前記運搬用ハンドルは、前記本体部の重心よりも前記カメラユニット寄りに設けられていることを特徴としている。
【0012】
この構成によると、移動体が転倒したとき、移動体はカメラユニットから遠い側の本体部の角と運搬用ハンドルとで接地することになり、カメラユニットは走行面から浮き上がる。従ってカメラユニットに荷重が加わって破損したり故障したりすることを防止できる。
【0013】
また本発明は、上記構成の移動体において、前記本体部はハウジングの左右にクローラユニットを組み合わせて構成されるものであり、前記ハウジングとクローラユニットの境界で、それぞれの外殻板同士が合わさって板が二重になった箇所に、前記運搬用ハンドルの根元が固定されることを特徴としている。
【0014】
この構成によると、板が重なり合って強度が高くなった箇所に運搬用ハンドルが取り付けられるので、ハンドルを取り付けた箇所が破損するおそれが低減される。
【0015】
また本発明は、上記構成の移動体において、前記ハウジングとクローラユニットの外殻板同士が合わさって板が二重になった箇所を貫通して前記運搬用ハンドルの根元に嵌合するスリーブを設け、前記スリーブを通じて前記運搬用ハンドルの根元にねじ込まれるネジにより、前記運搬用ハンドルの固定が行われることを特徴としている。
【0016】
この構成によると、ネジは直接ハウジングとクローラユニットの外殻板に当たるのでなく、スリーブを介して当たるので、本体部は広い接触面積で重量を支えられることになり、外殻板の変形が抑制される。
【0017】
また本発明は、上記構成の移動体において、前記運搬用ハンドルに、前記ハウジングを構成する外殻板同士を繋ぐ継手部が形成されていることを特徴としている。
【0018】
この構成によると、ハウジングの隙間を塞ぎ、水や埃が侵入しにくい構造とすることができる。
【0019】
また本発明は、上記構成の移動体において、前記カメラユニットは垂直軸線まわりに旋回可能であり、前記運搬用ハンドルは前記カメラユニットの旋回を妨げない形状になっていることを特徴としている。
【0020】
この構成によると、カメラユニットを自由に旋回させることができる上、運搬用ハンドルを握りやすくなる。
【0021】
また本発明は、上記構成の移動体において、前記運搬用ハンドルの側面に障害物センサを設置したことを特徴としている。
【0022】
この構成によると、障害物センサの取り付けが強固になり、それが誤動作するおそれが軽減される。
【0023】
また本発明は、上記構成の移動体において、前記運搬用ハンドルの側面と、そこに取り付けられる前記障害物センサの台との間に、障害物センサ用の配線空間が形成されることを特徴としている。
【0024】
この構成によると、障害物センサ用の配線が運搬用ハンドルと障害物センサの台で保護され、断線のおそれが軽減される。
【0025】
また本発明は、上記構成の移動体において、前記運搬用ハンドルは、前記本体部から立ち上がる左右1対の支柱部と、前記1対の支柱部を連結するグリップ部の組み合わせからなり、前記支柱部とグリップ部の間に、前記障害物センサ用の配線空間が形成されることを特徴としている。
【0026】
この構成によると、障害物センサ用の配線の引き回しが容易になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、移動体の上面に設けたカメラユニットを効果的に保護でき、移動体の運搬も楽になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下本発明の実施形態を図1から図8に示す点検ロボットに基づき説明する。図1は点検ロボットの側面図、図2は点検ロボットの上面図、図3は転倒し仰向けになった状態の点検ロボットの側面図、図4は図2の線X−Xに沿った断面の一部を示す部分拡大断面図、図5は図2の線Y−Yに沿った断面図、図6は図5中の丸囲み箇所の拡大断面図、図7は図2の線Z−Zに沿った断面図、図8は図7中の丸囲み箇所の拡大断面図である。図1と図2では図の右側が点検ロボットの前方となる。
【0029】
点検ロボット1は、クローラを移動手段とする本体部10にカメラユニット20や各種センサを搭載したものであり、水平状態で一般住宅の床下点検口または天井裏点検口を通り抜ける大きさとなっている。点検ロボット1は図示しない操作端末による遠隔操作を受けて床下や天井裏を自律走行する。そして各所をカメラユニット20で撮像し、撮像データを操作端末に無線で送信する。点検作業者は操作端末に映し出される映像や撮像データを見て補修の必要性等を判断する。
【0030】
本体部10は上下方向に偏平な箱状のハウジング11の左右にクローラユニットを取り付けて構成されている。図2では図の上側に、図5では図の右側に描かれたクローラユニットは点検ロボット1の前進方向左側に位置するものであり、左クローラユニット12Lと呼称する。図2では図の下側に、図5では図の左側に描かれたクローラユニットは点検ロボット1の前進方向右側に位置するものであり、右クローラユニット12Rと呼称する。
【0031】
左右クローラユニット12L、12Rはいずれも履帯13で外周を囲まれている。履帯13は、ゴムまたは合成樹脂製のシュー14をリンク15でつなぎ合わせたものである。履帯13は左右クローラユニット12L、12Rにそれぞれ内蔵された駆動機構で駆動される。駆動機構は電動機を動力源とする周知の構成のものであり、図示しない。
【0032】
ハウジング11には、点検ロボット1の動力源となる電池や、無線通信部を含む制御部を構成する制御基板が内蔵される。これらの構成要素も図示しない。
【0033】
ハウジング11と左右クローラユニット12L、12Rは、いずれも、金属板をプレス成形したり合成樹脂を射出成型したりして形成した外殻板を複数組み合わせるものであり、ハウジング11の外殻板で左右クローラユニット12L、12Rの外殻板をつないで一つの車両形態を構成している。ハウジング11と左右クローラユニット12L、12Rの境界には、それぞれの外殻板同士が合わさって板が二重になった、強度の高い部分が生まれる。この部分を利用して運搬用ハンドル30を取り付ける。
【0034】
運搬用ハンドル30は、本体部10から立ち上がる左右1対の支柱部31L、31Rが根元を構成する。この支柱部31L、31Rを矩形且つ枠状のグリップ部32で連結することにより、運搬用ハンドル30が形成される。支柱部31L、31Rとグリップ部32はいずれも合成樹脂成型部品である。
【0035】
支柱部31L、31Rはネジ33(図5、図6参照)により本体部10に固定される。図6には支柱部31Rの固定構造が拡大して示されている。そこでは、ハウジング11と右クローラユニット12Rの外殻板同士が合わさって板が二重になった箇所を水平に貫通して支柱部31Rに嵌合するスリーブ34が設けられ、スリーブ34を通じてボルト形状のネジ33を支柱部31Rにねじ込むことにより、支柱部31Rは本体部10に固定される。ネジ33は直接ハウジング11と右クローラユニット12Rの外殻板に当たるのでなく、スリーブ34を介して当たるので、本体部10は広い接触面積で重量を支えられることになり、外殻板の変形が抑制される。
【0036】
支柱部31Rは前後2箇所でネジ33により固定される。支柱部31Lも支柱部31Rと同様の手法で本体部10に固定される。
【0037】
グリップ部32は支柱部31L、31Rの間にはまり込み、ネジ35(図7、図8参照)により支柱部31L、31Rに固定される。ネジ35も支柱部31L、31Rのそれぞれで前後2箇所ずつに設けられる。
【0038】
上記のように構成された運搬用ハンドル30は、その最上位箇所がカメラユニット20の最上位箇所以上の高さとなっている。このため、点検ロボット1が障害物に乗り上げて図3のように仰向けに転倒したとき、運搬用ハンドル30は自動車のロールバーのようにカメラユニット20の保護の役割を果たす。このため、高価なカメラユニット20が破損したり故障したりする危険性を低減することができる。
【0039】
本体部10の重心CGは図1に示す位置にある。カメラユニット20は重心CGよりも前方に配置されており、運搬用ハンドル30は重心CGよりもカメラユニット20寄りに設けられている。このように構成したことにより、図3のように仰向けに転倒したとき、点検ロボット1はカメラユニット20から遠い側の本体部10の角と運搬用ハンドル30とで接地する。カメラユニット20は走行面から浮き上がるから、カメラユニット20に荷重が加わって破損したり故障したりすることを防止できる。
【0040】
カメラユニット20は旋回台座21(図2参照)に旋回及び俯仰可能に支持され、垂直軸線回りに旋回する。運搬用ハンドル30はカメラユニット20の旋回を妨げない形状になっている。実施形態の場合、グリップ部32が上面から見てカメラユニット20の旋回中心を中心とする円弧形状となっており、カメラユニット20の旋回軌跡に干渉しない。このように構成したことにより、カメラユニット20を自由に旋回させることができる上、運搬用ハンドル30を握りやすくなる。
【0041】
ハウジング11は複数の外殻板からなる。図4にはその中の2個の外殻板11a、11bが示されている。外殻板11a、11bを、運搬用ハンドル30に形成された継手部30aで繋ぐといった構成にすることが可能である。このようにすることにより、ハウジング11の隙間を塞ぎ、水や埃が侵入しにくい構造とすることができる。これはハウジング11の内部の制御基板や電池を水や埃から守るのに役立つ。図4には旋回台座21の一部も図示されている。
【0042】
運搬用ハンドル30の側面には障害物センサ25が配置される。運搬用ハンドル30の左右両側面に金属板を正面形状コ字形に折曲成形したガード26L、26Rを固定し、ガード26L、26Rの内側に障害物センサ25を固定する。運搬用ハンドル30を利用して障害物センサ25を固定したことにより、障害物センサ25の取り付けが強固になり、それが誤動作するおそれが軽減される。
【0043】
図5及び図6に障害物センサ25として示されているのは、センサそのものではなく、センサを内蔵した台である。この障害物センサの台と運搬用ハンドル30の側面との間に配線空間27(図6参照)が形成される。配線空間27には障害物センサ25をハウジング11内の制御部に接続するリード線28が通される。リード線28は運搬用ハンドル30と障害物センサの台で保護され、断線のおそれが軽減される。
【0044】
図6に示すように、支柱部31Rとグリップ部32の間には一部に隙間が設けられ、この隙間が配線空間27の一部を構成する。支柱部31Lの側も同じ構造になっている。支柱部31L、31Rとグリップ部32の間にリード線28を通しておいてからグリップ部32を支柱部31L、31Rに固定すれば良いので、リード線28の引き回しが容易になる。
【0045】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は高さの低い空間で用いられる移動体に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る点検ロボットの側面図である。
【図2】図1の点検ロボットの上面図である。
【図3】転倒し仰向けになった状態の点検ロボットの側面図である。
【図4】図2の線X−Xに沿った断面の一部を示す部分拡大断面図である。
【図5】図2の線Y−Yに沿った断面図である。
【図6】図5中の丸囲み箇所の拡大断面図である。
【図7】図2の線Z−Zに沿った断面図である。
【図8】図7中の丸囲み箇所の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 点検ロボット
10 本体部
11 ハウジング
12L 左クローラユニット
12R 右クローラユニット
20 カメラユニット
25 障害物センサ
27 配線空間
28 リード線
30 ハンドル
31L、31R 支柱部
32 グリップ部
33 ネジ
34 スリーブ
CG 本体部の重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部上面にカメラユニットを備えた移動体において、
当該移動体の転倒時、前記カメラユニットの保護の役割を果たす運搬用ハンドルを前記本体部上面に設けたことを特徴とする移動体。
【請求項2】
前記運搬用ハンドルの最上位箇所を、前記カメラユニットの最上位箇所以上の高さとしたことを特徴とする請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記運搬用ハンドルは、前記本体部の重心よりも前記カメラユニット寄りに設けられていることを特徴とする請求項2に記載の移動体。
【請求項4】
前記本体部はハウジングの左右にクローラユニットを組み合わせて構成されるものであり、前記ハウジングとクローラユニットの境界で、それぞれの外殻板同士が合わさって板が二重になった箇所に、前記運搬用ハンドルの根元が固定されることを特徴とする請求項3に記載の移動体。
【請求項5】
前記ハウジングとクローラユニットの外殻板同士が合わさって板が二重になった箇所を貫通して前記運搬用ハンドルの根元に嵌合するスリーブを設け、前記スリーブを通じて前記運搬用ハンドルの根元にねじ込まれるネジにより、前記運搬用ハンドルの固定が行われることを特徴とする請求項4に記載の移動体。
【請求項6】
前記運搬用ハンドルに、前記ハウジングを構成する外殻板同士を繋ぐ継手部が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項7】
前記カメラユニットは垂直軸線まわりに旋回可能であり、前記運搬用ハンドルは前記カメラユニットの旋回を妨げない形状になっていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項8】
前記運搬用ハンドルの側面に障害物センサを設置したことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項9】
前記運搬用ハンドルの側面と、そこに取り付けられる前記障害物センサの台との間に、障害物センサ用の配線空間が形成されることを特徴とする請求項8に記載の移動体。
【請求項10】
前記運搬用ハンドルは、前記本体部から立ち上がる左右1対の支柱部と、前記1対の支柱部を連結するグリップ部の組み合わせからなり、前記支柱部とグリップ部の間に、前記障害物センサ用の配線空間が形成されることを特徴とする請求項8または9に記載の移動体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−146034(P2010−146034A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319047(P2008−319047)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】