説明

移動方向推定装置及び移動方向推定方法

【課題】任意に設定された領域における人の移動方向に関する情報をタイムリーに得ることを可能とする。
【解決手段】移動方向推定装置1では、移動方向生成部14により、任意に設定可能なメッシュに属する位置情報が抽出されると共に、抽出された位置情報に基づいてユーザ毎のベクトルデータが生成され、移動方向集計部15により、ベクトルデータが合成されることにより移動方向情報が生成されるので、任意に設定された領域における人の移動方向を推定することが可能となる。また、移動端末の移動に伴って逐次収集される位置情報に基づいて移動方向情報が生成されるので、タイムリーな人の移動方向の推定が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動方向推定装置及び移動方向推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エリアマーケティングや、自治体等による道路計画の策定等において、当該地域における人の移動方向及び移動量といった移動状況を把握することが重要である。従来、人の移動状況を把握するために、例えば、アンケート調査等を実施して、回答を集計・分析することにより、人の移動状況に関する情報を得ていた。また、近年において、移動通信網における基地局に管轄される携帯電話の情報を集計することにより、人の移動状況に関する情報を得ることが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−18375号公報
【特許文献2】特開2002−259581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンケート調査の実施、回答の集計には時間を要するため、人の移動状況に関する情報をタイムリーに得ることは不可能である。また、特許文献1、2に記載されるように基地局に管轄される携帯電話の情報により得られる人の移動状況に関する情報は、基地局の管轄領域間の移動に関するものに限定される。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、任意に設定された領域における人の移動方向に関する情報をタイムリーに得ることが可能な移動方向推定装置及び移動方向推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の移動方向推定装置は、移動端末のユーザの所在位置を示す情報を含む位置情報に基づいて、所定領域における人の移動方向を推定する移動方向推定装置であって、複数の位置情報を取得する位置情報取得手段と、地理的な単位領域を規定するメッシュに関する情報であり予め記憶されたメッシュ情報を取得する地域情報取得手段と、地域情報取得手段により取得されたメッシュ情報に基づいて、位置情報取得手段により取得された位置情報に示される所在位置が属するメッシュである所属メッシュを位置情報毎に判定する所属メッシュ判定手段と、所属メッシュ判定手段により判定された所属メッシュに基づいて一のメッシュに含まれる位置情報を抽出し、抽出した位置情報に含まれる同一ユーザの複数の位置情報に基づいて、当該ユーザの移動方向を表すベクトルデータをユーザ毎に生成する移動方向生成手段と、移動方向生成手段により生成されたユーザ毎のベクトルデータを合成し、一のメッシュにおける人の移動方向を表す移動方向情報を生成する移動方向集計手段と、移動方向集計手段により生成された移動方向情報を出力する処理結果出力手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の移動方向推定方法は、移動端末のユーザの所在位置を示す情報を含む位置情報に基づいて、所定領域における人の移動方向を推定する移動方向推定装置における移動方向推定方法であって、複数の位置情報を取得する位置情報取得ステップと、地理的な単位領域を規定するメッシュに関する情報であり予め記憶されたメッシュ情報を取得する地域情報取得ステップと、地域情報取得ステップにおいて取得されたメッシュ情報に基づいて、位置情報取得ステップにおいて取得された位置情報に示される所在位置が属するメッシュである所属メッシュを位置情報毎に判定する所属メッシュ判定ステップと、所属メッシュ判定ステップにおいて判定された所属メッシュに基づいて一のメッシュに含まれる位置情報を抽出し、抽出した位置情報に含まれる同一ユーザの複数の位置情報に基づいて、当該ユーザの移動方向を表すベクトルデータをユーザ毎に生成する移動方向生成ステップと、移動方向生成ステップにおいて生成されたユーザ毎のベクトルデータを合成し、一のメッシュにおける人の移動方向を表す移動方向情報を生成する移動方向集計ステップと、移動方向集計ステップにおいて生成された移動方向情報を出力する処理結果出力手段とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の移動方向推定装置及び移動方向推定方法によれば、任意に設定可能なメッシュに属する位置情報が抽出され、抽出された位置情報に基づいて生成されるユーザ毎のベクトルデータを合成することにより移動方向情報が生成されるので、任意に設定された領域における人の移動方向を推定することが可能となる。また、移動端末の移動に伴って逐次収集される位置情報に基づいて移動方向情報が生成されるので、タイムリーな人の移動方向の推定が可能である。
【0009】
また、本発明の移動方向推定装置では、位置情報は、当該位置情報に示される所在位置が測位された時刻である測位時刻に関する情報を含み、移動方向生成手段は、一のメッシュに含まれる同一ユーザの複数の位置情報から、測位時刻が最も早い位置情報である始点位置情報、及び測位時刻が最も遅い位置情報である終点位置情報を抽出し、始点位置情報に示される所在位置を始点とし終点位置情報に示される所在位置を終点とするベクトルデータを生成することが好ましい。
【0010】
この場合には、始点位置情報及び終点位置情報に示される2点の所在位置に基づいてベクトルデータが生成されるので、当該ユーザの移動方向を示すベクトルデータが適切に生成されると共に、ベクトルデータの生成における処理負荷が軽減される。
【0011】
また、本発明の移動方向推定装置では、移動方向生成手段は、同一ユーザの位置情報に示される所在位置を時系列に並べた軌跡が、第1のメッシュから第2のメッシュに向かうようにメッシュの境界を跨いでいる場合において、所在位置の軌跡とメッシュの境界との交点を求め、第1のメッシュにおける当該ユーザのベクトルデータを生成する場合には、当該交点を終点とし、第2のメッシュにおける当該ユーザのベクトルデータを生成する場合には、当該交点を始点とすることが好ましい。
【0012】
この場合には、メッシュの境界近傍の移動が反映されたベクトルデータが生成されるので、移動方向情報の精度を向上させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の移動方向推定装置では、移動方向生成手段は、始点から終点に至る方向を向きとして、大きさを所定の単位長さとするベクトルデータを生成することが好ましい。
【0014】
この場合には、大きさが所定の単位長さに統一されたベクトルデータが生成されるので、ベクトルデータの生成処理、及び移動方向情報の生成処理の負荷を軽減することができる。
【0015】
また、本発明の移動方向推定装置では、位置情報は、移動端末が備えるGPS装置により測位された所在位置を示す情報を含むことが好ましい。
【0016】
GPS装置により測位された所在位置は高精度であると共に、移動端末の所在位置を逐次反映したものであるので、高精度なベクトルデータ及び移動方向情報を得ることが可能となる。
【0017】
また、本発明の移動方向推定装置では、位置情報は、移動端末が在圏するセクタを制御する基地局の所在位置を、当該移動端末のユーザの所在位置を示す情報として含むことを特徴とする。
【0018】
移動端末が在圏するセクタ及び基地局の情報は、移動体通信網を制御する既存の装置より収集可能であるので、移動方向推定装置を含むシステムの構成を簡易なものとすることができる。また、基地局の所在位置を移動端末の所在位置とする位置情報に基づいて、メッシュ毎のベクトルデータ生成を行うので、セクタの構成に制約されない移動方向情報を得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の移動方向推定装置及び移動方向推定方法によれば、任意に設定された領域における人の移動方向に関する情報をタイムリーに得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】移動方向推定装置を含むシステムの全体構成図である。
【図2】移動方向推定装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】移動方向推定装置のハードブロック図である。
【図4】位置情報記憶部の構成及び内容の一例を示す図である。
【図5】メッシュ情報により示されるメッシュの構成を模式的に示す図である。
【図6】地域情報記憶部に記憶されたメッシュ情報のデータ構成及び内容を具体的に示す図である。
【図7】所属メッシュが判定され、所属メッシュのメッシュIDが対応付けられた位置情報の例を示す図である。
【図8】所属メッシュが判定された位置情報から、メッシュIDが「M1」であり、ユーザIDが「a」である位置情報を抽出した例を示す図である。
【図9】図8に示す位置情報の所在位置を模式的に示す図である。
【図10】メッシュに含まれる位置情報に基づいて移動方向生成部により生成されたベクトルデータを一時記憶するテーブルの例を示す図である。
【図11】移動方向集計部により生成された移動方向情報の例を示す図である。
【図12】処理結果出力部が視覚的に移動方向情報を出力した例を示す図である。
【図13】移動方向推定装置において実施される処理内容を示すフローチャートである。
【図14】位置情報の所在位置の軌跡とメッシュ境界との交点の求め方を説明するための図である。
【図15】ポイントID「13」,「14」の位置情報間に、所在位置の移動の軌跡とメッシュの境界との交点の位置情報が挿入された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る移動方向推定装置の実施形態について図面を参照して説明する。なお、可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る移動方向推定装置を含むシステムの全体構成図である。図1に示すように、移動方向推定装置1は、ネットワークNを介して位置情報記憶装置2、地域情報記憶装置3とネットワークNを介して通信可能である。また、アプリケーションサービス提供装置5及び移動端末4もネットワークNを介した通信をすることができる。
【0023】
ここで、移動方向推定装置1の説明に先立って、位置情報記憶装置2、地域情報記憶装置3及びアプリケーションサービス提供装置5について説明する。
【0024】
位置情報記憶装置2は、アプリケーションサービス提供装置5から移動端末4の位置情報を取得し、取得した位置情報を保存する装置である。位置情報記憶装置2は、位置情報を記憶するための記憶手段である位置情報記憶部20を備える。
【0025】
地域情報記憶装置3は、地域情報を予め取得して保存する装置であり、地域情報を記憶するための記憶手段である地域情報記憶部30を備える。地域情報は、後に説明する図5に模式的に示し、図6に具体的に示すような、地理的な単位領域を規定するメッシュに関する情報であるメッシュ情報を含む。
【0026】
なお、本実施形態では、位置情報記憶部20及び地域情報記憶部30は、それぞれ移動方向推定装置1とネットワークNを介して通信可能な位置情報記憶装置2及び地域情報記憶装置3に備えられることとしたが、移動方向推定装置1の一機能部として備えられることとしてもよい。
【0027】
アプリケーションサービス提供装置5は、例えば経路案内サービスといったアプリケーションサービスを移動端末4に提供する装置であり、例えば、サーバ装置により構成される。経路案内サービスのようなアプリケーションサービスを移動端末4が使用する場合には、移動端末4が有するGPS装置により測定された位置情報が当該移動端末4の所在位置を示す情報として用いられる。アプリケーションサービス提供装置5は、移動端末4が上記のような位置情報を利用するアプリケーションサービスを利用した場合に、移動端末4の位置情報を収集することができる。従って、位置情報は、ユーザの所在位置を反映しながら逐次収集されることとなる。
【0028】
なお、以下に引き続き説明する本実施形態では、移動端末4が有するGPS装置により測定された位置情報が当該移動端末4の所在位置を示す情報として用いられるが、これには限定されない。例えば、移動端末4が属する移動体通信網において、移動端末4が在圏するセクタを制御する基地局(図示せず)の所在位置を、当該移動端末4のユーザの所在位置を示す情報として用いることができる。移動体通信網では、移動端末4がセクタ間を移動した時に、接続する基地局の切り替え(ハンドオーバ)が行われ、ハンドオーバの発生時に、移動先のセクタ及び基地局の情報が、移動端末4から移動体通信網内に設けられたネットワーク制御装置(図示せず)に逐次送信される。従って、位置情報記憶装置2は、ハンドオーバ発生時における移動先の基地局の所在位置、及びハンドオーバ発生時刻を、移動端末4の位置情報としてネットワーク制御装置から取得し、位置情報記憶部20に記憶させることができる。移動端末4が在圏するセクタ及び基地局の情報は、移動端末4のユーザの操作等を必要とせず容易に収集可能であるので、移動方向推定装置1を含むシステムの構成を簡易なものとすることができる。また、基地局の所在位置を移動端末1の所在位置とする位置情報に基づいて、メッシュ毎にベクトルデータ生成を行うので、セクタの構成に制約されない移動方向情報を得られる。
【0029】
続いて、移動方向推定装置1の機能について詳細に説明する。図2は、移動方向推定装置の機能的構成を示すブロック図である。移動方向推定装置1は、移動端末4のユーザの所在位置を示す情報を含む位置情報に基づいて、所定領域における人の移動方向を推定する装置である。
【0030】
移動方向推定装置1は、機能的には、処理要求受付部10、位置情報取得部11(位置情報取得手段)、地域情報取得部12(地域情報取得手段)、所属メッシュ判定部13(所属メッシュ判定手段)、移動方向生成部14(移動方向生成手段)、移動方向集計部15(移動方向集計手段)、処理結果出力部16(処理結果出力手段)を備える。
【0031】
図3は、移動方向推定装置1のハードウエア構成図である。移動方向推定装置1は、物理的には、図3に示すように、CPU101、主記憶装置であるRAM102及びROM103、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール104、ハードディスク、フラッシュメモリ等の補助記憶装置105、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置106、ディスプレイ等の出力装置107などを含むコンピュータシステムとして構成されている。図2に示した各機能は、図3に示すCPU101、RAM102等のハードウエア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで通信モジュール104、入力装置106、出力装置107を動作させるとともに、RAM102や補助記憶装置105におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。再び、図2を参照し、移動方向推定装置1の各機能部について詳細に説明する。
【0032】
処理要求受付部10は、移動方向推定装置1に対する所定領域における人の移動方向を推定する処理要求を受け付ける部分である。処理要求は、例えば、ネットワークNを介して通信可能な端末装置(図示せず)から移動方向推定装置1に対して送信されたり、移動方向推定装置1が備える入力装置106を介して入力されたりするものであり、移動方向の推定を所望する地域に関する情報、推定に用いる位置情報の測位期間に関する情報、及びその他の処理条件等を含んでいる。
【0033】
位置情報取得部11は、処理要求受付部10により受け付けられた、移動方向の推定を所望する地域に関する情報と、推定に用いる位置情報の測位期間に関する情報とに該当する複数の位置情報を、位置情報記憶装置2の位置情報記憶部20から取得する部分である。ここで、位置情報記憶部20について説明する。
【0034】
位置情報記憶部20は、移動端末のユーザの所在位置を示す位置情報を記憶している記憶手段である。図4は、位置情報記憶部20に記憶されている位置情報の構成及び内容の一例を示す図である。図4に示すように、位置情報記憶部20は、各位置情報を識別するポイントIDに対応付けて、ユーザID、緯度、経度及び日時の情報を記憶している。ユーザIDは、移動端末4を識別すると共にユーザに固有の識別子である。緯度及び経度は、当該移動端末の所在位置を示す情報である。日時は、当該位置情報に示される所在位置が測位された日及び測位時刻を示す情報である。
【0035】
地域情報取得部12は、処理要求受付部10により受け付けられた処理要求に含まれる、移動方向の推定を所望する地域に関する情報に基づいて、当該地域のメッシュ情報を地域情報記憶部30から取得する部分である。メッシュ情報は、移動方向を推定するための地理的な単位領域を規定するメッシュに関する情報である。図5は、メッシュ情報により示されるメッシュの構成を模式的に示す図である。図5に示す例では、一定範囲の地域が4個のメッシュM1〜M4に分割されている。図6は、図5に示すメッシュM1〜M4のデータ構成及び内容を具体的に示す図である。図6に示すように、メッシュを表すデータは、メッシュを識別する情報である「メッシュID」に対応付けられた「緯度」、「経度」、「緯度間隔」及び「経度間隔」の情報を含んでいる。「緯度」及び「経度」はそれぞれ、メッシュの西南端の緯度(北緯)及び経度(東経)を示す。「緯度間隔」及び「経度感覚」はそれぞれ、メッシュの緯度方向(北方向)及び経度方向(東方向)の幅を示す。
【0036】
なお、本実施形態では、予め地域情報記憶部30に記憶されたメッシュ情報を地域情報取得部12が取得することとしているが、処理要求受付部10に入力された処理要求に含まれるメッシュの粒度条件、及び移動方向の推定を所望する地域に関する情報に基づいて、地域情報取得部12がメッシュ情報を生成することとしてもよい。この場合には、目的に応じたメッシュ情報を用いて移動方向情報を生成することが可能となる。
【0037】
所属メッシュ判定部13は、地域情報取得部12により取得されたメッシュ情報に基づいて、位置情報取得部11により取得された位置情報に示される所在位置が属するメッシュである所属メッシュを位置情報毎に判定する部分である。図7は、所属メッシュが判定され、所属メッシュのメッシュIDが対応付けられた位置情報20Aを示す図である。例えば、ポイントID「11」の位置情報に示される所在位置は、緯度「35.82」及び経度「139.64」であるので、所属メッシュ判定部13は、図6に示すメッシュ情報を参照し、当該位置情報の所属メッシュをメッシュID「M3」のメッシュと判定し、図7に示す位置情報20Aにおいて、当該位置情報のメッシュIDとして「M3」を対応付けて記憶させる。所属メッシュ判定部13は、ポイントID「12」〜「16」の位置情報についても同様に所属メッシュを判定し、位置情報毎にメッシュIDを対応付けて記憶させる。
【0038】
移動方向生成部14は、所属メッシュ判定部13により判定された所属メッシュに基づいて一のメッシュに含まれる位置情報を抽出し、抽出した位置情報に含まれる同一ユーザの複数の位置情報に基づいて、当該ユーザの移動方向を表すベクトルデータをユーザ毎に生成する部分である。具体的には、移動方向生成部14は、一のメッシュに含まれる同一ユーザの複数の位置情報から、測位時刻が最も早い位置情報である始点位置情報、及び測位時刻が最も遅い位置情報である終点位置情報を抽出し、始点位置情報に示される所在位置を始点とし終点位置情報に示される所在位置を終点とするベクトルデータを生成する。
【0039】
図8は、所属メッシュ判定部13により所属メッシュが判定された位置情報から、メッシュIDが「M1」であり、ユーザIDが「a」である位置情報を抽出した例を示す図である。図9は、図8に示す位置情報20BのメッシュM1における所在位置を模式的に示す図である。図9において、ポイントID「14」〜「16」の位置情報の所在位置はそれぞれ、符号P14〜P16により示されている。図8に示すように、ポイントID「14」〜「16」の位置情報のうち、ポイントIDが「14」の位置情報の「日時」は「2009/5/20 14:03」であるので、測位時刻が最も早く、以後、ポイントIDが「15」の位置情報、ポイントIDが「16」の位置情報の順に測位時刻が遅くなる。従って、ユーザID「a」のユーザは、図9において、矢印r1,r2に示されるように移動したことが判る。
【0040】
移動方向生成部14は、始点位置情報としてポイントIDが「14」の位置情報を抽出し、終点位置情報としてポイントIDが「16」の位置情報を抽出する。そして、移動方向生成部14は、始点位置情報に示される緯度「35.79」、経度「139.72」の位置を始点とし、終点位置情報に示される緯度「35.72」、経度「139.72」の位置を終点とするベクトルデータB1を生成する(図9参照)。
【0041】
こうして、移動方向生成部14は、メッシュに含まれるすべてのユーザの位置情報に基づいて、ベクトルデータをユーザ毎に生成する。図10は、メッシュM1に含まれる位置情報に基づいて移動方向生成部14により生成されたベクトルデータを一時記憶するテーブルの例を示す図である。ベクトルデータは、ベクトルデータを識別する情報である「ベクトルID」に対応付けて、「始点緯度」、「始点経度」、「終点緯度」及び「終点経度」を含んでいる。
【0042】
さらに、移動方向生成部14は、移動方向の推定を所望する地域として処理要求受付部10により受け付けられた地域に含まれる全てのメッシュ(本実施形態では、メッシュM1〜M4)について、同様にベクトルデータを生成する。
【0043】
本実施形態では、移動方向生成部14により、始点位置情報及び終点位置情報に示される2点の所在位置に基づいてベクトルデータが生成されるので、当該ユーザの移動方向を示すベクトルデータが適切に生成される。また、ユーザの移動軌跡を示す位置情報のうち、始点位置情報及び終点位置情報の2つの位置情報のみに基づいてベクトルデータが生成されるので、ベクトルデータの生成における処理負荷が軽減される。
【0044】
なお、以上説明した移動方向生成部14によるベクトルデータの生成では、始点位置情報に示される所在位置から終点位置情報に示される所在位置に至る方向及び距離を「向き」及び「大きさ」とするベクトルデータを生成することとしているが、始点から終点に至る方向を「向き」として、所定の単位長さを「大きさ」とするベクトルデータを生成することとしてもよい。即ち、このように生成されるベクトルデータは、「向き」のみに着目したデータとなる。この場合には、大きさが所定の単位長さに統一されたベクトルデータが生成されるので、ベクトルデータの生成処理、及び移動方向情報の生成処理の負荷を軽減することができる。
【0045】
移動方向集計部15は、移動方向生成部14により生成されたユーザ毎のベクトルデータを合成し、一のメッシュにおける人の移動方向を表す移動方向情報を生成する部分である。具体的には、移動方向集計部15は、例えば図10に示すような、一のメッシュに含まれる全てのベクトルデータを合成し、当該メッシュにおける人の移動方向情報として、「向き」のみを規定したベクトルを生成する。図11は、移動方向集計部15により生成された移動方向情報の例を示す図である。移動方向情報は、メッシュIDに対応づけられた「角度」及び「ベクトル数」の情報を含む。「角度」は、ベクトルの「向き」を表すデータであり、本実施形態では、東方向(図5における右方向)を0度し、反時計回り方向を正の方向とした角度により表される。「ベクトル数」は、移動方向情報の合成に用いられたベクトルデータの数を表している。図11に示す例では、メッシュID「M1」により識別されるメッシュにおける移動方向情報のベクトルの角度は280度であり、当該移動方向情報の合成には2000ユーザのベクトルデータが用いられたことが判る。
【0046】
処理結果出力部16は、移動方向集計部15により生成された移動方向情報を出力する部分である。処理結果出力部16は、例えば、移動方向推定装置1に処理要求を送信した端末装置(図示せず)に対して、移動方向情報を人の移動方向に関する情報として返信したり、移動方向推定装置1が備える、例えばディスプレイといった出力装置107に移動方向情報を人の移動方向に関する情報として表示させたりする。図12は、処理結果出力部16がディスプレイ等に視覚的に移動方向情報を出力した例を示す図であり、図11に示す移動方向情報をベクトルBM1〜BM4としてメッシュM1〜M4毎に模式的に表示されている。
【0047】
続いて、図13を参照して、本実施形態の移動方向推定方法における移動方向推定装置1の動作について説明する。図13は、移動方向推定装置1において実施される処理内容を示すフローチャートである。
【0048】
まず、処理要求受付部10は、移動方向推定装置1に対する所定領域における人の移動方向を推定する処理要求を受け付ける(S1)。この処理要求は、移動方向の推定を所望する地域に関する情報及び推定に用いる位置情報の測位期間に関する情報を含んでいる。続いて、位置情報取得部11は、ステップS1において受け付けられた処理要求に含まれる地域及び測位期間に関する情報に基づいて、当該地域及び期間に該当する位置情報を、位置情報記憶装置2の位置情報記憶部20から取得する(S2、位置情報取得ステップ)。また、地域情報取得部12は、ステップS1において受け付けられた処理要求に含まれる、移動方向の推定を所望する地域に関する情報に基づいて、当該地域のメッシュ情報を地域情報記憶部30から取得する(S2、地域情報取得ステップ)。
【0049】
次に、所属メッシュ判定部13は、地域情報取得部12により取得されたメッシュ情報に基づいて、位置情報取得部11により取得された位置情報に示される所在位置が属するメッシュである所属メッシュを位置情報毎に判定し、判定した所属メッシュを各々の位置情報に付加する(S3、所属メッシュ判定ステップ)。
【0050】
続いて、移動方向生成部14は、一のメッシュを選択し(S4)、選択したメッシュに含まれる位置情報を所属メッシュ判定部13により判定された所属メッシュに基づいて抽出する(S5)。そして、移動方向生成部14は、抽出した位置情報に含まれる同一ユーザの複数の位置情報から、測位時刻が最も早い位置情報である始点位置情報、及び測位時刻が最も遅い位置情報である終点位置情報を抽出し(S6、移動方向生成ステップ)、始点位置情報に示される所在位置を始点とし終点位置情報に示される所在位置を終点とするベクトルデータをユーザ毎に生成する(S7、移動方向生成ステップ)。
【0051】
移動方向生成部14は、ステップS4において選択したメッシュに含まれる全てのユーザに関するベクトルデータの生成を完了するまでステップS6〜S7の処理を繰り返し実施し、全てのユーザのベクトルデータの生成を完了した場合には、処理手順はステップS9に進められる(S8)。
【0052】
次に、移動方向集計部15は、移動方向生成部14により生成されたユーザ毎のベクトルデータを合成し、一のメッシュにおける人の移動方向を表す移動方向情報を生成する(S9、移動方向集計ステップ)。そして、ステップS1において入力された、移動方向の推定を所望する地域に該当する全てのメッシュを選択したか否かを判定し、全てのメッシュを選択した場合には処理手順はステップS11に進められ、全てのメッシュを選択していない場合には処理手順はステップS4に戻る(S10)。
【0053】
続いて、処理結果出力部16は、移動方向集計部15により生成された移動方向情報を出力する(S11、処理結果出力ステップ)。こうして、本実施形態の処理を終了する。
【0054】
以上説明した第1実施形態の移動方向推定装置1では、移動方向生成部14により、任意に設定可能なメッシュに属する位置情報が抽出されると共に、抽出された位置情報に基づいてユーザ毎のベクトルデータが生成され、移動方向集計部15により、ベクトルデータが合成されることにより移動方向情報が生成されるので、任意に設定された領域における人の移動方向を推定することが可能となる。また、移動端末の移動に伴って逐次収集される位置情報に基づいて移動方向情報が生成されるので、タイムリーな人の移動方向の推定が可能である。
【0055】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る移動方向推定装置1について説明する。第2実施形態では、移動方向生成部14によるベクトルデータの生成処理が第1実施形態と異なる。
【0056】
第2実施形態における移動方向生成部14は、同一ユーザの移動端末4の位置情報に示される所在位置を時系列に並べた軌跡が、第1のメッシュから第2のメッシュに向かうようにメッシュの境界を跨いでいる場合において、所在位置の軌跡とメッシュの境界との交点を求め、第1のメッシュにおける当該ユーザのベクトルデータを生成する場合には当該交点を終点とし、第2のメッシュにおける当該ユーザのベクトルデータを生成する場合には当該交点を始点として、ベクトルデータを生成する。
【0057】
まず、図14を用いて、移動方向生成部14による位置情報の所在位置の軌跡とメッシュ境界との交点の求め方を説明する。図14に示すように、位置情報の所在位置の軌跡は、メッシュM3からメッシュM1に向かって両メッシュの境界を跨いでおり、点Aは、境界を跨ぐ直前の位置情報を示しており、測位時刻ta、経度xa及び緯度yaといった情報を含む位置情報である。また、点Bは、境界を跨いだ直後の位置情報を示しており、測位時刻tb、経度xb及び緯度ybといった情報を含む位置情報である。そして、点Mは、位置情報の所在位置の軌跡と両メッシュの境界との交点である。移動方向生成部14は、点Mの時刻tm及び経度xmを、以下の式(1)〜(3)により求める。なお、点Mの緯度yは、メッシュM1及びメッシュM3のメッシュ情報より、y=35.80と求められる。
rm=|(ya−y)/(ya−yb)| …(1)
xm=rm×(xa−xb)+xa …(2)
tm=rm×(ta−tb)+ta …(3)
【0058】
例えば、図7に示すような位置情報20Aに基づいてベクトルデータを生成する場合には、移動方向生成部14は、ポイントID「13」の位置情報を、境界を跨ぐ直前の位置情報として抽出し、ポイントID「14」の位置情報を、境界を跨いだ直後の位置情報として抽出する。次に、移動方向生成部14は、上記式(1)〜(3)により、ポイントID「13」の位置情報からポイントID「14」の位置情報に至る軌跡と、メッシュM1及びM3の境界との交点の位置情報(時刻、経度、緯度)を求め、図15の位置情報20Cに示すように、交点の位置情報d1,d2を、ポイントID「13」,「14」の位置情報間に挿入する。図15において、符号d1及び符号d2の位置情報は同じデータであるが、符号d1の位置情報は、メッシュM3における移動軌跡の終点の位置情報として挿入され、符号d2の位置情報は、メッシュM1における移動軌跡の始点の位置情報として挿入される。
【0059】
移動方向生成部14は、メッシュM3のおけるユーザID「a」のベクトルデータを生成する場合には、ポイントID「11」の位置情報及び位置情報d1に基づいてベクトルデータを生成し、メッシュM1のおけるユーザID「a」のベクトルデータを生成する場合には、位置情報d2及びポイントID「16」の位置情報に基づいてベクトルデータを生成する。
【0060】
以上説明したような第2実施形態では、メッシュの境界近傍の移動が反映されたベクトルデータが生成されるので、移動方向情報の精度を向上させることが可能となる。
【0061】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…移動方向推定装置、3…地域情報記憶装置、4…移動端末、5…アプリケーションサービス提供装置、10…処理要求受付部、11…位置情報取得部、12…地域情報取得部、13…所属メッシュ判定部、14…移動方向生成部、15…移動方向集計部、16…処理結果出力部、20…位置情報記憶部、30…地域情報記憶部、M1〜M4…メッシュ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動端末のユーザの所在位置を示す情報を含む位置情報に基づいて、所定領域における人の移動方向を推定する移動方向推定装置であって、
複数の前記位置情報を取得する位置情報取得手段と、
地理的な単位領域を規定するメッシュに関する情報であり予め記憶されたメッシュ情報を取得する地域情報取得手段と、
前記地域情報取得手段により取得された前記メッシュ情報に基づいて、前記位置情報取得手段により取得された前記位置情報に示される所在位置が属する前記メッシュである所属メッシュを前記位置情報毎に判定する所属メッシュ判定手段と、
前記所属メッシュ判定手段により判定された前記所属メッシュに基づいて一の前記メッシュに含まれる前記位置情報を抽出し、抽出した前記位置情報に含まれる同一ユーザの複数の前記位置情報に基づいて、当該ユーザの移動方向を表すベクトルデータをユーザ毎に生成する移動方向生成手段と、
前記移動方向生成手段により生成されたユーザ毎の前記ベクトルデータを合成し、前記一のメッシュにおける人の移動方向を表す移動方向情報を生成する移動方向集計手段と、
前記移動方向集計手段により生成された前記移動方向情報を出力する処理結果出力手段と
を備えることを特徴とする移動方向推定装置。
【請求項2】
前記位置情報は、当該位置情報に示される所在位置が測位された時刻である測位時刻に関する情報を含み、
前記移動方向生成手段は、
前記一のメッシュに含まれる同一ユーザの複数の前記位置情報から、測位時刻が最も早い位置情報である始点位置情報、及び測位時刻が最も遅い位置情報である終点位置情報を抽出し、前記始点位置情報に示される所在位置を始点とし前記終点位置情報に示される所在位置を終点とする前記ベクトルデータを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の移動方向推定装置。
【請求項3】
前記移動方向生成手段は、
同一ユーザの前記位置情報に示される所在位置を時系列に並べた軌跡が、第1のメッシュから第2のメッシュに向かうようにメッシュの境界を跨いでいる場合において、前記所在位置の軌跡と前記メッシュの境界との交点を求め、前記第1のメッシュにおける当該ユーザの前記ベクトルデータを生成する場合には、当該交点を前記終点とし、前記第2のメッシュにおける当該ユーザの前記ベクトルデータを生成する場合には、当該交点を前記始点とする
ことを特徴とする請求項2に記載の移動方向推定装置。
【請求項4】
前記移動方向生成手段は、前記始点から前記終点に至る方向を向きとして、大きさを所定の単位長さとするベクトルデータを生成する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の移動方向推定装置。
【請求項5】
前記位置情報は、前記移動端末が備えるGPS装置により測位された所在位置を示す情報を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の移動方向推定装置。
【請求項6】
前記位置情報は、前記移動端末が在圏するセクタを制御する基地局の所在位置を、当該移動端末のユーザの所在位置を示す情報として含む
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の移動方向推定装置。
【請求項7】
移動端末のユーザの所在位置を示す情報を含む位置情報に基づいて、所定領域における人の移動方向を推定する移動方向推定装置における移動方向推定方法であって、
複数の前記位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
地理的な単位領域を規定するメッシュに関する情報であり予め記憶されたメッシュ情報を取得する地域情報取得ステップと、
前記地域情報取得ステップにおいて取得された前記メッシュ情報に基づいて、前記位置情報取得ステップにおいて取得された前記位置情報に示される所在位置が属する前記メッシュである所属メッシュを前記位置情報毎に判定する所属メッシュ判定ステップと、
前記所属メッシュ判定ステップにおいて判定された前記所属メッシュに基づいて一の前記メッシュに含まれる前記位置情報を抽出し、抽出した前記位置情報に含まれる同一ユーザの複数の前記位置情報に基づいて、当該ユーザの移動方向を表すベクトルデータをユーザ毎に生成する移動方向生成ステップと、
前記移動方向生成ステップにおいて生成されたユーザ毎の前記ベクトルデータを合成し、前記一のメッシュにおける人の移動方向を表す移動方向情報を生成する移動方向集計ステップと、
前記移動方向集計ステップにおいて生成された前記移動方向情報を出力する処理結果出力手段と
を有することを特徴とする移動方向推定方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−81609(P2011−81609A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233458(P2009−233458)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】