説明

移動機械の移動方法

【課題】移動機械および移動機械周囲の状況を常に把握しつつ当該移動機械を移動すること。
【解決手段】複数の移動機械1A,1Bを用い、全ての前記移動機械1A,1Bにおいて、任意の移動機械1B(1A)により他の1つの移動機械1A(1B)を包含する空間情報を取得し、当該空間情報に基づいて前記他の1つの移動機械1A(1B)を移動させる。これにより、移動機械1A,1Bおよび移動機械1A,1B周囲の状況を常に把握しつつ当該移動機械1A,1Bを移動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動機械を遠隔操縦または自立移動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載の遠隔操作ロボット装置は、移動手段を備えた移動機械(ロボット部)と、当該移動機械の回転台に装備されて移動機械周囲を映す撮像機器(CCDカメラおよび赤外線カメラ)と、移動機械から送信された画面を表示するモニタを有しオペレータの操作により移動機械に移動指令を出力する可搬型操作部とを備えている。この遠隔操作ロボット装置は、映像機器にて映された移動機械周囲の映像をモニタで見ながら、オペレータが可搬型操作部を操作して移動機械を移動させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−307337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の遠隔操作ロボット装置では、撮像機器により映された映像は、移動機械自体を基点としたものであって視野が狭く、しかも移動機械全体を映せるものではない。このため、オペレータが移動機械を目視できず、かつ狭隘な空間において、移動機械がどのような状況にあるかを把握することができない。このような場合、移動機械を円滑に遠隔操縦することが困難になる。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、移動機械および移動機械周囲の状況を常に把握しつつ当該移動機械を移動することのできる移動機械の移動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明の移動機械の移動方法は、複数の移動機械を用い、全ての前記移動機械において、任意の移動機械により他の1つの移動機械を包含する空間情報を取得し、当該空間情報に基づいて前記他の1つの移動機械を移動させることを特徴とする。
【0007】
この移動機械の移動方法によれば、各移動機械間で他の移動機械を包含する空間情報を取得して、これらの空間情報により各移動機械の移動を誘導する。すなわち、他の移動機械が自身の移動機械の目となって自身の移動機械を移動させる。このため、移動機械および移動機械周囲の状況を常に把握しつつ当該移動機械を移動することができる。
【0008】
また、本発明の移動機械の移動方法は、2つの移動機械を用い、第一移動機械により第二移動機械を包含する空間情報を取得し、当該空間情報に基づいて前記第二移動機械を移動させる一方、前記第二移動機械により前記第一移動機械を包含する空間情報を取得し、当該空間情報に基づいて前記第一移動機械を移動させることを特徴とする。
【0009】
この移動機械の移動方法によれば、2つの移動機械が対になって、相互の移動機械の移動を誘導する。すなわち、相互の移動機械が相互の移動機械の目となって移動させる。このため、移動機械および移動機械周囲の状況を常に把握しつつ当該移動機械を移動することができる。
【0010】
また、本発明の移動機械の移動方法は、各前記移動機械の移動が、遠隔操縦手段により操縦されることを特徴とする。
【0011】
オペレータが移動機械を目視できず、かつ狭隘な空間においては、移動機械がどのような状況にあるかを把握することができない。この点、この移動機械の移動方法によれば、遠隔操縦において、移動機械および移動機械周囲の状況を常に把握しつつ当該移動機械を移動する効果を顕著に得ることができる。
【0012】
また、本発明の移動機械の移動方法は、前記空間情報が、各前記移動機械に設けられた撮像手段による映像として取得される。
【0013】
この移動機械の移動方法によれば、撮像手段による映像を用いることで、移動機械周囲の状況を視覚的に把握でき、分かり易い。この結果、移動機械周囲の状況を容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、移動機械および移動機械周囲の状況を常に把握しつつ当該移動機械を移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る移動機械を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1に係る移動機械の移動方法を示す概略図である。
【図3−1】図3−1は、図2に示す第一移動機械が取得する空間情報の概略図である。
【図3−2】図3−2は、図2に示す第二移動機械が取得する空間情報の概略図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態2に係る移動機械の移動方法を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態3に係る移動機械のブロック図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態3に係る移動機械の移動方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態に係る移動機械を示す概略図である。図1に示すように移動機械1は、移動手段(図示せず)を有している。移動手段は、移動機械1を移動させるものであり、走行型、航行型、潜行型、飛行型など空間を移動させるもの、または前記を組み合わせたものがある。
【0018】
また、移動機械1は、空間情報検出手段2を有している。空間情報検出手段2は、例えば、撮像手段としてのカメラであり、当該カメラによって撮像された映像を空間情報とする。このカメラは、上下左右方向に撮像する向きを変えるパン・チルト機能や、撮像する映像を拡縮するズーム機能を備える。その他、空間情報検出手段2は、空間座標をデジタル化するデジタイザ、距離センサ、超音波センサ、赤外線センサなどがある。
【0019】
この移動機械1は、遠隔操縦手段3により遠隔操縦される。遠隔操縦は、無線または有線により行われる。遠隔操縦手段3は、例えば、移動機械1の移動方向を指揮するための操作部31を備えており、オペレータが当該操作部31を操作することで、移動機械1を指揮した方向に移動させる。また、遠隔操縦手段3は、モニタ4を備えている。モニタ4は、移動機械1に設けられた空間情報検出手段2から空間情報を取得して表示する。このモニタ4は、遠隔操縦手段3と一体に設けられている必要はない。なお、モニタ4に表示される空間情報は、後述するように、遠隔操縦手段3により移動機械1を操縦するために用いられ、当該移動機械1を包含する空間情報である。そして、本実施の形態の移動機械の移動方法では、モニタ4に表示される空間情報は、当該空間情報に基づいて操縦される移動機械1自体が取得したものではなく、他の移動機械1が取得したものである。なお、モニタ4に表示される空間情報は、他の移動機械1が取得したものに加え、当該空間情報に基づいて操縦される移動機械1自体が取得できるようにしてもよい。
【0020】
図2は、本実施の形態に係る移動機械の移動方法を示す概略図であり、図3−1は、図2における第一移動機械が取得する空間情報の概略図であり、図3−2は、図2における第二移動機械が取得する空間情報の概略図である。
【0021】
本実施の形態の移動機械1の移動方法は、図1に例示する移動機械1を移動させるためのものであり、少なくとも2つの移動機械1を用いる。本実施の形態では、第一移動機械1Aと、第二移動機械1Bとの2つを用いた例にて説明する。また、第一移動機械1Aおよび第二移動機械1Bは、共に潜行型の移動手段を備えるものとする。
【0022】
第一移動機械1Aは、その空間情報検出手段(カメラ)2Aにより第二移動機械1Bを包含する空間情報を撮像する。第二移動機械1Bを包含する空間情報とは、第一移動機械1Aの空間情報検出手段2Aにより第二移動機械1Bの全体、および第二移動機械1Bの周囲を撮像したものである。この第一移動機械1Aの空間情報検出手段2Aが取得した第二移動機械1Bを包含する空間情報は、図3−1に示すように、第二移動機械1Bを遠隔操縦する遠隔操縦手段3Bのモニタ4Bに表示される。
【0023】
第二移動機械1Bは、その空間情報検出手段(カメラ)2Bにより第一移動機械1Aを包含する空間情報を撮像する。第一移動機械1Aを包含する空間情報とは、第二移動機械1Bの空間情報検出手段2Bにより第一移動機械1Aの全体、および第一移動機械1Aの周囲を撮像したものである。この第二移動機械1Bの空間情報検出手段2Bが取得した第一移動機械1Aを包含する空間情報は、図3−2に示すように、第一移動機械1Aを遠隔操縦する遠隔操縦手段3Aのモニタ4Aに表示される。
【0024】
ここで、図2に示すように、第一移動機械1Aおよび第二移動機械1Bが矢印S方向に移動し、第二移動機械1Bの前方には障害物10Bがある。この場合、第一移動機械1Aの空間情報検出手段2Aが取得した第二移動機械1Bを包含する空間情報は、図3−1に示すように、第二移動機械1Bの進行方向前方に障害物10Bが存在するものとなる。
【0025】
このため、第二移動機械1Bの遠隔操縦手段3Bを操作するオペレータは、モニタ4Bの表示を見て、第二移動機械1Bの進行方向前方に障害物10Bが存在することを把握する。そして、オペレータは、遠隔操縦手段3Bを操作し、図2に示すように障害物10Bを回避すべく第二移動機械1Bを移動させる。
【0026】
一方、図2に示すように、第一移動機械1Aおよび第二移動機械1Bが矢印S方向に移動し、第一移動機械1Aの前方には障害物10Aがある。この場合、第二移動機械1Bの空間情報検出手段2Bが取得した第一移動機械1Aを包含する空間情報は、図3−2に示すように、第一移動機械1Aの進行方向前方に障害物10Aが存在するものとなる。
【0027】
このため、第一移動機械1Aの遠隔操縦手段3Aを操作するオペレータは、モニタ4Aの表示を見て、第一移動機械1Aの進行方向前方に障害物10Aが存在することを把握する。そして、オペレータは、遠隔操縦手段3Aを操作し、図2に示すように障害物10Aを回避すべく第一移動機械1Aを移動させる。
【0028】
なお、第一移動機械1Aや第二移動機械1Bが移動すると、空間情報検出手段2Aによって取得する空間情報、すなわちモニタ4Bに表示される範囲に第二移動機械1B全体が表示されない場合がある。同様に、第一移動機械1Aや第二移動機械1Bが移動すると、空間情報検出手段2Bによって取得する空間情報、すなわちモニタ4Aに表示される範囲に第一移動機械1A全体が表示されない場合がある。このような場合は、空間情報検出手段2A,2Bのパン・チルト機能やズーム機能により、移動機械1全体が表示されるようにする。
【0029】
このパン・チルト機能やズーム機能の操作は、第一移動機械1Aを包含する空間情報を表示するモニタ4Aを有する遠隔操縦手段3A側から、第二移動機械1Bの空間情報検出手段2Bを操作し、第二移動機械1Bを包含する空間情報を表示するモニタ4Bを有する遠隔操縦手段3B側から、第一移動機械1Aの空間情報検出手段2Aを操作する。また、第一移動機械1Aおよび第二移動機械1Bに、例えば、距離センサ、超音波センサ、赤外線センサ、汎地球測位システム(GPS:Global Positioning System)を用いて各移動機械1同士で相互の位置を把握し、パン・チルト機能やズーム機能の操作を自動的に行ってもよい。
【0030】
なお、第一移動機械1Aと第二移動機械1Bとの移動は、同時に行ってもよいが、1つずつ行ってもよい。また、第一移動機械1Aと第二移動機械1Bとの移動を1つずつ行う場合、1人のオペレータが1つの遠隔操縦手段3を操作し、この遠隔操縦手段3により第一移動機械1Aと第二移動機械1Bとの操作を切り換えて行うことも可能である。
【0031】
このように、上述した本実施の形態の移動機械の移動方法は、2つの移動機械1A,1Bを用い、第一移動機械1Aにより第二移動機械1Bを包含する空間情報を取得し、当該空間情報に基づいて第二移動機械1Bを移動させる一方、第二移動機械1Bにより第一移動機械1Aを包含する空間情報を取得し、当該空間情報に基づいて第一移動機械1Aを移動させる。
【0032】
この移動機械の移動方法によれば、第一移動機械1Aと第二移動機械1Bとの相互で空間情報を取得して、これらの空間情報により相互の移動を誘導する。このため、オペレータが移動機械を目視できず、かつ狭隘な空間であっても、移動機械1A,1Bおよび移動機械1A,1B周囲の状況を常に把握しつつ当該移動機械1A,1Bを移動することが可能になる。
【0033】
また、本実施の形態の移動機械の移動方法は、各移動機械1A,1Bが、遠隔操縦手段3により操縦される。
【0034】
遠隔操縦の場合、オペレータが移動機械を目視できず、かつ狭隘な空間において、移動機械がどのような状況にあるかを把握することができない。この点、この移動機械の移動方法によれば、第一移動機械1Aと第二移動機械1Bとで相互の空間情報を取得して、これらの空間情報により相互の移動を誘導するため、各移動機械1A,1Bがどのような状況にあるかを把握できる。このため、遠隔操縦において、移動機械1A,1Bおよび移動機械1A,1B周囲の状況を常に把握しつつ当該移動機械1A,1Bを移動する効果を顕著に得ることが可能になる。
【0035】
また、本実施の形態の移動機械の移動方法は、空間情報を、各移動機械1A,1Bに設けられた撮像手段(カメラ)による映像として取得する。撮像手段による映像を用いることで、移動機械1A,1B周囲の状況を視覚的に把握でき、分かり易い。この結果、移動機械1A,1B周囲の状況を容易に把握することが可能になる。なお、1つの移動機械1に撮像手段を複数設け、各撮像手段により3次元の空間情報を得るようにしてもよい。
【0036】
[実施の形態2]
図4は、本実施の形態に係る移動機械の移動方法を示す概略図である。なお、以下に説明する実施の形態2において、上述した実施の形態1と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0037】
本実施の形態の移動機械の移動方法は、上述した実施の形態1と同様の移動機械1を2つ以上の複数用いたものである。
【0038】
図4に示すように、例えば、3つの移動機械1A,1B,1Cを用い、各移動機械1A,1B,1Cが矢印S方向に移動する。そして、第二移動機械1Bの前方には障害物10Bがある。この場合、第一移動機械1Aの空間情報検出手段2Aが取得した第二移動機械1Bを包含する空間情報は、第二移動機械1Bの進行方向前方に障害物10Bが存在するようにモニタ4に表示される。
【0039】
このため、第二移動機械1Bの遠隔操縦手段3を操作するオペレータは、モニタ4の表示を見て、第二移動機械1Bの進行方向前方に障害物10Bが存在することを把握する。そして、オペレータは、遠隔操縦手段3を操作し、図4に示すように障害物10Bを回避すべく第二移動機械1Bを移動させる。
【0040】
また、図4に示すように、第三移動機械1Cの前方には障害物10Cがある。この場合、第二移動機械1Bの空間情報検出手段2Bが取得した第三移動機械1Cを包含する空間情報は、第三移動機械1Cの進行方向前方に障害物10Cが存在するようにモニタ4に表示される。
【0041】
このため、第三移動機械1Cの遠隔操縦手段3を操作するオペレータは、モニタ4の表示を見て、第三移動機械1Cの進行方向前方に障害物10Cが存在することを把握する。そして、オペレータは、遠隔操縦手段3を操作し、図4に示すように障害物10Cを回避すべく第三移動機械1Cを移動させる。
【0042】
また、図4に示すように、第一移動機械1Aの前方には障害物10Aがある。この場合、第三移動機械1Cの空間情報検出手段2Cが取得した第一移動機械1Aを包含する空間情報は、第一移動機械1Aの進行方向前方に障害物10Aが存在するようにモニタ4に表示される。
【0043】
このため、第一移動機械1Aの遠隔操縦手段3を操作するオペレータは、モニタ4の表示を見て、第一移動機械1Aの進行方向前方に障害物10Aが存在することを把握する。そして、オペレータは、遠隔操縦手段3を操作し、図4に示すように障害物10Aを回避すべく第一移動機械1Aを移動させる。
【0044】
なお、各移動機械1A,1B,1Cが移動すると、各空間情報検出手段2A,2B,2Cによって取得する空間情報、すなわちモニタ4に表示される範囲に移動機械1A,1B,1C全体が表示されない場合がある。このような場合は、空間情報検出手段2A,2B,1Cのパン・チルト機能やズーム機能により、各移動機械1A,1B,1C全体が表示されるようにする。
【0045】
このパン・チルト機能やズーム機能の操作は、空間情報を表示するモニタ4を有する遠隔操縦手段3側から、空間情報を取得する側の移動機械1A,1B,1Cの空間情報検出手段2A,2B,2Cを操作する。また、第一移動機械1Aおよび第二移動機械1Bに、例えば、距離センサ、超音波センサ、赤外線センサ、汎地球測位システム(GPS:Global Positioning System)を用いて各移動機械1A,1B,1Cで他の移動機械の位置を把握し、パン・チルト機能やズーム機能の操作を自動的に行ってもよい。
【0046】
なお、移動機械1A,1B,1Cの移動は、同時に行ってもよいが、1つずつ行ってもよい。また、移動機械1A,1B,1Cとの移動を1つずつ行う場合、1人のオペレータが1つの遠隔操縦手段3を操作し、この遠隔操縦手段3により各移動機械1A,1B,1Cの操作を切り換えて行うことも可能である。
【0047】
このように、本実施の形態の移動機械の移動方法は、複数の移動機械(1A,1B,1C)を用い、全ての移動機械(1A,1B,1C)において、任意の移動機械により別の1つの移動機械を包含する空間情報を取得し、当該空間情報に基づいて別の1つの移動機械を移動させる。
【0048】
この移動機械の移動方法によれば、各移動機械(1A,1B,1C)間で他の移動機械を包含する空間情報を取得して、これらの空間情報により各移動機械の移動を誘導する。このため、オペレータが移動機械を目視できず、かつ狭隘な空間であっても、複数の移動機械1A,1B,1Cおよび移動機械1A,1B,1C周囲の状況を常に把握しつつ当該移動機械1A,1B,1Cを移動することが可能になる。
【0049】
また、本実施の形態の移動機械の移動方法は、上述した実施の形態1と同様に、各移動機械1A,1B,1Cが、遠隔操縦手段3により操縦される。
【0050】
遠隔操縦の場合、オペレータが移動機械を目視できず、かつ狭隘な空間において、移動機械がどのような状況にあるかを把握することができない。この点、この移動機械の移動方法によれば、各移動機械(1A,1B,1C)間で他の移動機械を包含する空間情報を取得して、これらの空間情報により各移動機械の移動を誘導するため、各移動機械1A,1B,1Cがどのような状況にあるかを把握できる。このため、遠隔操縦において、移動機械1A,1B,1Cおよび移動機械1A,1B,1C周囲の状況を常に把握しつつ当該移動機械1A,1B,1Cを移動する効果を顕著に得ることが可能になる。
【0051】
また、本実施の形態の移動機械の移動方法は、空間情報を、各移動機械1A,1B,1Cに設けられた撮像手段(カメラ)による映像として取得する。撮像手段による映像を用いることで、移動機械1A,1B,1C周囲の状況を視覚的に把握でき、分かり易い。この結果、移動機械1A,1B,1C周囲の状況を容易に把握することが可能になる。なお、1つの移動機械1に撮像手段を複数設け、各撮像手段により3次元の空間情報を得るようにしてもよい。
【0052】
[実施の形態3]
図5は、実施の形態3に係る移動機械のブロック図であり、図6は、実施の形態3に係る移動機械の移動方法を示すフローチャートである。なお、以下に説明する実施の形態3において、上述した実施の形態1および実施の形態2と同等の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0053】
本実施の形態の移動機械の移動方法は、自立して移動可能な移動機械に対し、上述した実施の形態1および実施の形態2による移動方法を適用したものである。すなわち、遠隔操縦手段3を用いて遠隔から操縦することなく、各移動機械1が自立して移動する。
【0054】
移動機械1は、空間情報検出手段2、送信部12、受信部13、判断部14、および移動手段15を備え、これらが制御部11に接続されている。空間情報検出手段2および移動手段15は、上述したものである。送信部12は、空間情報検出手段2により取得した空間情報を他の移動機械1に送信するものである。受信部13は、他の移動機械1から送信された自身の空間情報を受信するものである。判断部14は、受信した空間情報により、障害物があるか否かを判断するものである。制御部11は、マイコンなどで構成され、空間情報検出手段2、送信部12、受信部13、判断部14、および移動手段15を統括的に制御するものである。
【0055】
例えば、上述した実施の形態1の移動方法に準じた場合、第一移動機械1Aは、空間情報検出手段2(2A)により第二移動機械1Bを包含する空間情報を取得する。また、第一移動機械1Aは、送信部12により、取得した空間情報を第二移動機械1Bに送信する。また、第一移動機械1Aは、受信部13により、第二移動機械1Bが取得した第一移動機械1Aを包含する空間情報を受信する。また、第一移動機械1Aは、判断部14により、受信した空間情報に基づいて障害物の有無を判断する。また、第一移動機械1Aは、移動手段15により、判断部14の判断に従って移動する。
【0056】
一方、第二移動機械1Bは、空間情報検出手段2(2B)により第一移動機械1Aを包含する空間情報を取得する。また、第二移動機械1Bは、送信部12により、取得した空間情報を第一移動機械1Aに送信する。また、第二移動機械1Bは、受信部13により、第一移動機械1Aが取得した第二移動機械1Bを包含する空間情報を受信する。また、第二移動機械1Bは、判断部14により、受信した空間情報に基づいて障害物の有無を判断する。また、第二移動機械1Bは、移動手段15により、判断部14の判断に従って移動する。
【0057】
また、移動機械1A,1Bは、例えば、距離センサ、超音波センサ、赤外線センサ、汎地球測位システム(GPS:Global Positioning System)を用いて目的地の位置を把握し、当該目的地に向けて移動する。すなわち、第一移動機械1Aは、図6に示すように、目的地に向かって進行する(ステップS1)。この進行中に、第二移動機械1Bから受信した空間情報に基づき障害物ありと判断した場合(ステップS2:Yes)、進行を停止する(ステップS3)。そして、障害物を避けるように回避移動を行う(ステップS4)。回避移動は、進行方向に障害物があることから、当該進行方向から外れる移動、または戻る移動となる。そして、第二移動機械1Bから受信した空間情報に基づき障害物なしと判断した場合(ステップS5:Yes)、ステップS1に戻り目的地に向けて移動する。この動作を目的地に到着するまで実施する。なお、ステップS2において、第二移動機械1Bから受信した空間情報に基づき障害物がないと判断した場合は(ステップS2:No)、ステップS1に戻り目的地に向けて移動する。また、ステップS5において、第二移動機械1Bから受信した空間情報に基づき障害物なしと判断しない場合は(ステップS5:No)、ステップS4に戻り、障害物なしと判断されるまで回避移動を行う。
【0058】
第二移動機械1Bも、同様に、第一移動機械1Aから空間情報を受信し、この空間情報に基づき移動する。
【0059】
なお、第一移動機械1Aおよび第二移動機械1Bは、いずれか一方が回避移動を行っている場合、他方の進行を停止することが好ましい。このようにすることで、静止した位置での空間情報を送信し、回避移動を行う的確な判断を行うことが可能になる。
【0060】
また、第一移動機械1Aおよび第二移動機械1Bに、例えば、距離センサ、超音波センサ、赤外線センサ、汎地球測位システム(GPS:Global Positioning System)を用いて各移動機械1同士で相互の位置を把握し、空間情報検出手段2のパン・チルト機能やズーム機能の操作を自動的に行ってもよい。このようにすることで、空間情報に、常に移動機械1全体が包含される。
【0061】
このように、本実施の形態の移動機械の移動方法によれば、移動機械1(1A,1B)および移動機械1(1A,1B)周囲の状況を常に把握しつつ当該移動機械1(1A,1B)を自立して移動させることが可能になる。
【0062】
なお、本実施の形態では、上述した実施の形態1の移動方法に準じた場合を説明したが、上述した実施の形態2の移動方法に準じた場合であっても、同様に移動機械1(1A,1B,1C)を自立して移動させることが可能である。
【0063】
ところで、上述した全ての実施の形態に係る移動機械の移動方法は、オペレータが立ち入ることが困難な場所で適用することに顕著な効果がある。前記場所としては、例えば、オペレータが立ち入れない程の狭隘な場所や、危険を伴う場所がある。特に、原子力設備においては、オペレータが放射線に曝されるおそれがあり、このような原子力設備において検査・保守・補修などの作業を行う移動機械を移動するのに顕著な効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明に係る移動機械の移動方法は、移動機械および移動機械周囲の状況を常に把握しつつ当該移動機械を移動することに適している。
【符号の説明】
【0065】
1(1A,1B,1C) 移動機械
2(2A,2B,2C) 空間情報検出手段
3(3A,3B) 遠隔操縦手段
31 操作部
4(4A,4B) モニタ
10A,10B,10C 障害物
11 制御部
12 送信部
13 受信部
14 判断部
15 移動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動機械を用い、全ての前記移動機械において、任意の移動機械により他の1つの移動機械を包含する空間情報を取得し、当該空間情報に基づいて前記他の1つの移動機械を移動させることを特徴とする移動機械の移動方法。
【請求項2】
2つの移動機械を用い、第一移動機械により第二移動機械を包含する空間情報を取得し、当該空間情報に基づいて前記第二移動機械を移動させる一方、前記第二移動機械により前記第一移動機械を包含する空間情報を取得し、当該空間情報に基づいて前記第一移動機械を移動させることを特徴とする請求項1に記載の移動機械の移動方法。
【請求項3】
各前記移動機械の移動が、遠隔操縦手段により操縦されることを特徴とする請求項1または2に記載の移動機械の移動方法。
【請求項4】
前記空間情報が、各前記移動機械に設けられた撮像手段による映像として取得されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の移動機械の移動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−248544(P2011−248544A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119906(P2010−119906)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】