説明

移動目標検出装置、移動目標検出方法および移動目標検出プログラム

【課題】SAR画像に対する移動目標検出処理において、信号レベルの高い移動目標以外の静止目標を除去し、移動目標の誤検出を減らすことを目的とする。
【解決手段】移動目標検出装置100は移動目標検出部150が抑圧比算出部152を備えることを特徴とする。画像差分処理部140は時刻tにレーダ観測された受信信号の振幅値を示すSAR画像Aと時刻t+Δtにレーダ観測された受信信号の振幅値を示すSAR画像Bとの振幅差を目標分布図として算出する。抑圧比算出部152は目標分布図をSAR画像AとSAR画像Bとのいずれかで除算した抑圧比を算出する。目標識別部153は抑圧比を閾値と比較して移動目標を検出する。移動目標検出装置100は抑圧比を閾値と比較することにより、目標分布図を閾値と比較するよりも容易に移動目標を検出することができ、移動目標の誤検出を減らすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、航空機、無人機、衛星などのプラットフォームに搭載され地表や海面の高分解能画像を撮像するセンサにより取得した画像から移動目標を検出する移動目標検出装置、移動目標検出方法および移動目標検出プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機、無人機、人工衛星等をプラットフォームとするレーダにおいて、搭載母機の移動方向に2つ以上の空中線(アンテナ)を並べ、自機速度に応じて1つ目の空中線にて受信される信号と数パルス分経過した時の2つ目以降の空中線にて受信される信号が同じ位相になるように調整すると、それら受信信号の差分によりクラッタを抑圧し、移動目標を検出することができる(例えば、非特許文献1参照)。この機能は、DPCA(Displaced Phase Center Antenna)またはSTAP(Space Time Adaptive Processing)と呼ばれ、近年の航空機搭載用レーダ等に用いられている移動目標検出機能である。
【0003】
このようなシステムの一例は、2つの空中線それぞれで受信した信号それぞれに対して合成開口レーダ処理を行い、2枚の複素SAR(Synthetic Aperture Radar)画像を得る。そして、システムはこの2枚の複素SAR画像を重ね合せて位相差を取り、画素毎にその位相差の振幅を求める。このような処理によって、システムは移動目標の存在する画素にだけ信号が現われる移動目標分布図を得ることができる。これは、静止目標の場合には2枚の複素画像の位相は同じであるのに対して、移動目標についてはドップラー効果のために2枚の複素画像の位相が異なっているからである。したがって、2枚の複素画像の位相差をとることにより、静止目標は相殺され、位相の異なった移動目標だけが画像として残ることになる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−232282号公報
【非特許文献1】MERRILL SKOLNIK著「RADAR HANDBOOK SECOND EDITION」McGRAW−HILL、1990年、p16.8−p16.31
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の移動目標検出処理において、フィールドデータを用いた処理を行う場合、元の画像において信号レベルの高い移動目標以外のもの(クラッタ等)の消え残りが発生し、消え残ったクラッタ等を移動目標として誤検出していた。
【0005】
本発明はこの誤検出を抑圧できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の移動目標検出装置は、電磁波を照射して照射方向の各所からの反射波の振幅を第一の時刻と第二の時刻とに観測し、第一の時刻における各所の反射波の振幅と第二の時刻における各所の反射波の振幅とに基づいて異なる時刻における反射波の振幅差が静止体より大きい移動体を検出する移動目標検出装置であり、第一の時刻における各所の反射波の振幅と第二の時刻における各所の反射波の振幅との差の絶対値をCPU(Central Proccessing Unit)を用いて算出する差算出部と、前記差算出部が算出した各所の反射波の振幅差を第一の時刻と第二の時刻とのいずれかの時刻における各所の反射波の振幅で除算した除算値をCPUを用いて算出する除算部と、前記除算部が算出した除算値と特定の閾値とをCPUを用いて比較し、除算値が閾値より大きい場合に当該位置に移動体が存在すると判定して移動体を検出する移動体検出部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、除算部が抑圧比として除算値を算出し、移動体検出部が抑圧比を閾値と比較して移動体を検出することにより、誤検出を抑圧することができる。
本発明では、従来の移動目標検出処理においてクラッタ(静止体)は抑圧され移動目標は抑圧されない点に注目し、検出された目標に対して抑圧比を閾値と比較した。そして、本発明では、抑圧比が閾値より低ければ当該目標をクラッタの消え残りとし、抑圧比が高ければ当該目標を移動目標と判定することにより、誤検出を抑圧できるようにした。本発明は、移動目標を検出をレーダ観測と並行して行う場合よりも、移動目標の検出を画像化後に行う場合に特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における移動目標検出装置100の構成図である。
実施の形態1における移動目標検出装置100の構成について、図1に基づいて以下に説明する。
図1に示すように、移動目標検出装置100はSARセンサ110、運動センサ120、画像再生処理部130、画像差分処理部140、移動目標検出部150、受信信号A記憶装置191、受信信号B記憶装置192、運動データ記憶装置193、SAR画像A記憶装置194、SAR画像B記憶装置195および目標分布図記憶装置196を備える。
【0009】
SARセンサ110(SAR:Synthetic Aperture Radar[合成開口レーダ])は2つの画像を生成できるアンテナ、送信機、受信機等で構成され、高周波パルス信号(電磁波[電波、光波]の一例)を生成し、これを送受信して受信信号を得る。SARセンサ110は高周波パルス信号をある方向に照射し、照射方向の各所において反射した高周波パルス信号(エコー信号、反射波)を受信し、受信信号の振幅を観測するレーダの一例である。SARセンサ110は、実開口レーダや逆合成開口レーダなど、その他のレーダであっても構わない。具体的には、SARセンサ110は高周波パルス信号を生成し、アンテナから高周波パルス信号を空間に放射し、何らかに反射したエコー信号をアンテナで受信する。さらに、SARセンサ110は受信したエコー信号を増幅し、増幅したエコー信号の周波数を中間周波数に変換し、中間周波数のエコー信号をデジタル信号(デジタルデータ)に変換して受信信号を得る。SARセンサ110が観測した受信信号の振幅はエコー信号の電力や強度を示し、受信信号は各所の画像化に用いられる。エコー信号の振幅の大きさは画像の輝度の高さに対応する。実施の形態1におけるSARセンサ110は、異なる位置に配置した2つの受信アンテナのそれぞれでエコー信号を受信したり、2度の観測を行ったりすることにより、第一の時刻(第一の時間帯)に各所で反射したエコー信号の振幅と位相と第二の時刻(第二の時間帯)に各所で反射したエコー信号の振幅と位相とを観測する。
【0010】
受信信号A記憶装置191にはSARセンサ110が観測した第一の時刻における各所からのエコー信号の振幅値と位相を示すデータが受信信号Aとして記憶される。
受信信号B記憶装置192にはSARセンサ110が観測した第二の時刻における各所からのエコー信号の振幅値と位相を示すデータが受信信号Bとして記憶される。
【0011】
運動センサ120はSARセンサ110を搭載したプラットフォームの運動をジャイロなどにより計測し、SARセンサ110による高周波パルス信号送受信時のプラットフォームの瞬時位置・姿勢を出力する。運動センサ120が出力するプラットフォームの瞬時位置・姿勢は高周波パルス信号送受信時のSARセンサ110の位置・姿勢に対応する。算出したSARセンサ110の位置・姿勢に基づいてSARセンサ110と高周波パルス信号を反射した各所との位置関係を算出することで、画像化において正確な位置に各所を表わすことができる。
【0012】
運動データ記憶装置193には運動センサ120が算出したSARセンサ110の位置・姿勢が運動データとして記憶される。
【0013】
画像再生処理部130は受信信号が示す各所からのエコー信号の振幅値と位相に基づいて各所を画像化する画像再生処理を行う。画像再生方法にはポーラーフォーマット法、レンジドップラー法、チャープスケーリング法など様々な方法があり、画像再生処理部130は、いずれかの画像再生方法を用いて、受信信号を信号処理して2次元の高分解能なSAR画像を再生する。SAR画像は複素データで表される。
画像再生処理部130は画像再生処理部A131と画像再生処理部B132とを有し、画像再生処理部A131は受信信号A記憶装置191に記憶された受信信号Aと運動データ記憶装置193に記憶されたSARセンサ110の位置・姿勢とに基づいて第一の時刻における各所を表すSAR画像データを生成し、画像再生処理部B132は受信信号B記憶装置192に記憶された受信信号Bと運動データ記憶装置193に記憶されたSARセンサ110の位置・姿勢とに基づいて第二の時刻における各所を表すSAR画像データを生成する。
【0014】
SAR画像A記憶装置194には画像再生処理部A131が生成した第一の時刻におけるSAR画像データがSAR画像Aとして記憶される。
SAR画像B記憶装置195には画像再生処理部B132が生成した第二の時刻におけるSAR画像データがSAR画像Bとして記憶される。
【0015】
画像差分処理部140(差算出部の一例)は2枚の画像から画像差分を算出する画像差分処理を行う。画像差分処理において、画像差分処理部140は、SAR画像A記憶装置194に記憶されたSAR画像AとSAR画像B記憶装置195に記憶されたSAR画像Bとに対して、2枚のSAR画像を重ね合せて位相差を取り、画素毎にその差の振幅を求める。画像差分処理で算出される2枚のSAR画像における各画素の振幅差は当該画素に相当する地表部分に移動する地物(移動体、以下、移動目標とする)または静止する地物(静止体、以下、静止目標とする)が存在することを示す。
【0016】
目標分布図記憶装置196には画像差分処理部140が算出したSAR画像AとSAR画像Bとの各画素の振幅差を示すデータが移動目標と静止目標との分布を示す目標分布図として記憶される。
【0017】
移動目標検出部150は元画像と差分検出後の画像とにおける振幅の抑圧比を算出し、算出した抑圧比に基づいて移動目標を検出する。このとき、移動目標検出部150は目標分布図記憶装置196に記憶された目標分布図が示すSAR画像AとSAR画像Bとの各画素の振幅差をSAR画像A記憶装置194に記憶されたSAR画像AまたはSAR画像B記憶装置195に記憶されたSAR画像Bが示す各画素の振幅で除算した値をSAR画像に基づく目標分布図における振幅差の抑圧比として算出する。次に、移動目標検出部150は算出した抑圧比を特定の閾値と比較し、抑圧比が閾値より大きい場合に当該画素に相当する地表部分に移動目標が存在すると判定する。そして、移動目標検出部150は判定結果に基づいて移動目標が存在した位置や時刻などを示す移動目標データを生成する。
移動目標検出部150はCFAR処理部151、抑圧比算出部152および目標識別部153を有する。
CFAR処理部151は、目標分布図をCFAR(Constant False Alarm Rate:一定誤警報確率)処理することにより、目標分布図からノイズを除去して移動目標か静止目標かの識別対象にする目標を選択する。
抑圧比算出部152(除算部)は、CFAR処理部151が選択した目標を対象に、目標分布図が示すSAR画像AとSAR画像Bとの各画素の振幅差をSAR画像AまたはSAR画像Bが示す各画素の振幅で除算した抑圧比を算出する。
目標識別部153(目標識別部)は抑圧比算出部152が算出した抑圧比と特定の閾値とを比較し、比較結果に基づいて識別対象である目標が移動目標か静止目標かを識別し、識別結果に基づいて移動目標データを生成する。
【0018】
実施の形態1における移動目標検出装置100は、航空機、無人機、衛星などの移動プラットフォームに搭載して地表や海面の高分解能画像を得る合成開口レーダ装置であり、SARセンサ110と運動センサ120と画像再生処理部130と画像差分処理部140と移動目標検出部150とを備えたことを特徴とする。
実施の形態1における移動目標検出装置100は、特に、移動目標検出部150を備えたことを特徴とする。
【0019】
図2は、実施の形態1における移動目標検出装置100のハードウェア資源の一例を示す図である。
図2において、移動目標検出装置100は、プログラムを実行するCPU911(Central・Processing・Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。CPU911は、バス912を介してROM913、RAM914、通信ボード915、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。
RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913、磁気ディスク装置920の記憶媒体は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶機器、記憶装置あるいは記憶部の一例である。
通信ボード915は、入出力機器、入出力装置あるいは入出力部の一例である。また、入出力データが記憶されている記憶装置は入出力機器、入出力装置あるいは入出力部の一例である。
【0020】
通信ボード915はSARセンサ110に接続され、SARセンサ110が受信した受信信号を入力する。
【0021】
磁気ディスク装置920には、OS921(オペレーティングシステム)、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923のプログラムは、CPU911、OS921により実行される。
【0022】
上記プログラム群923には、実施の形態において「〜部」として説明する機能を実行するプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
【0023】
ファイル群924には、実施の形態において、「〜部」の機能を実行した際の「〜の判定結果」、「〜の計算結果」、「〜の処理結果」などの結果データ、「〜部」の機能を実行するプログラム間で受け渡しするデータ、その他の情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「〜ファイル」や「〜データベース」の各項目として記憶されている。受信信号、運動データ、SAR画像、目標分布図、移動目標データなどはファイル群924に含まれるものの一例である。
「〜ファイル」や「〜データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示などのCPUの動作に用いられる。抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示のCPUの動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリやキャッシュメモリやバッファメモリに一時的に記憶される。
また、実施の形態において説明するフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、磁気ディスク装置920の磁気ディスク、その他の記録媒体に記録される。また、データや信号値は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体によりオンライン伝送される。
【0024】
また、実施の形態において「〜部」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」、「〜手段」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。すなわち、「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、磁気ディスクやその他の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、移動目標検出プログラムは、「〜部」としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0025】
図3は、実施の形態1における移動目標検出方法を示すフローチャートである。
実施の形態1において移動目標検出方法として移動目標検出装置100が実行する移動目標検出処理について、図3に基づいて以下に説明する。
各「〜部」は以下に説明する移動目標検出処理をCPUを用いて実行する。
移動目標検出プログラムは以下に説明する移動目標検出処理をコンピュータに実行させる。
【0026】
<S101:レーダ観測処理(1回目)>
まず、SARセンサ110が一回目のレーダ観測を行う。
このとき、SARセンサ110は高周波パルス信号を生成し、アンテナから高周波パルス信号を空間に放射する。次に、SARセンサ110は、各所において高周波パルス信号が何らかに反射したエコー信号をアンテナで受信する。SARセンサ110は、エコー信号を受信した際、受信したエコー信号を増幅し、増幅したエコー信号の周波数を中間周波数に変換し、中間周波数に変換したエコー信号をデジタル信号(デジタルデータ)に変換して受信信号Aを得る。そして、SARセンサ110は一回目のレーダ観測で得た受信信号Aを受信信号A記憶装置191に記憶する。SARセンサ110が観測したエコー信号の振幅はエコー信号の電力や強度を示し、エコー信号に基づく受信信号は各所の画像化に用いられる。エコー信号の振幅の大きさは画像の輝度の高さに対応する。
【0027】
<S102:画像再生処理(1回目)>
次に、画像再生処理部A131が一回目のレーダ観測結果を画像化する。
このとき、画像再生処理部A131は受信信号A記憶装置191から一回目のレーダ観測結果である受信信号Aを取得する。次に、画像再生処理部A131は受信信号Aが示す各所からのエコー信号の振幅値に基づいて各所を画像化する。画像再生方法にはポーラーフォーマット法、レンジドップラー法、チャープスケーリング法など様々な方法があり、画像再生処理部130は、いずれかの画像再生方法を用いて、受信信号Aを信号処理して2次元の高分解能なSAR画像Aを生成する。SAR画像Aは複素データで表される。そして、画像再生処理部130は生成したSAR画像AをSAR画像A記憶装置194に記憶する。
【0028】
<S103:レーダ観測処理(2回目)>
また、SARセンサ110が二回目のレーダ観測を行う。
このとき、SARセンサ110は、S101と同様に、二回目のレーダ観測結果である受信信号Bを受信信号B記憶装置192に記憶する。
【0029】
<S104:画像再生処理(2回目)>
次に、画像再生処理部B132が二回目のレーダ観測結果を画像化する。
このとき、画像再生処理部B132は、S102における画像再生処理部A131と同様に、受信信号Bに基づいてSAR画像Bを生成し、SAR画像BをSAR画像B記憶装置195に記憶する。
【0030】
<S105:画像差分処理>
次に、画像差分処理部140がSAR画像AとSAR画像Bとの差分を取った目標分布図を生成する。
このとき、画像差分処理部140はSAR画像A記憶装置194からSAR画像Aを取得し、SAR画像B記憶装置195からSAR画像Bを取得する。次に、画像差分処理部140はSAR画像AとSAR画像Bとを重ね合せて位相差を取り、画素毎にその差の振幅を求める。そして、画像差分処理部140はSAR画像AとSAR画像Bとの各画素の振幅差を示すデータを目標分布図として目標分布図記憶装置196に記憶する。目標分布図は特定の振幅差の値を示す画素に相当する地表部分に移動目標または静止目標が存在することを示す。
【0031】
<S106:移動目標検出処理>
そして、移動目標検出部150が目標分布図の値をSAR画像の値で除算した抑圧比に基づいて移動目標を検出する。
このとき、移動目標検出部150は目標分布図記憶装置196から目標分布図を取得し、SAR画像A記憶装置194からSAR画像Aを、または、SAR画像B記憶装置195からSAR画像Bを取得する。次に、移動目標検出部150は目標分布図が示すSAR画像AとSAR画像Bとの各画素の振幅差をSAR画像AまたはSAR画像Bが示す各画素の振幅で除算する。移動目標検出部150が除算した値をSAR画像に基づく目標分布図における振幅差の抑圧比とする。次に、移動目標検出部150は算出した抑圧比を特定の閾値と比較し、抑圧比が閾値より大きい場合に当該画素に相当する地表部分に移動目標が存在すると判定する。次に、移動目標検出部150は判定結果に基づいて移動目標が存在した位置や時刻などを示す移動目標データを生成する。そして、移動目標検出部150は生成した移動目標データを出力機器に出力する。例えば、移動目標検出部150は移動目標データを通信機器に出力し、地上のサーバ装置などに送信する。また例えば、移動目標検出部150は移動目標データを表示装置やプリンタ装置に出力する。
【0032】
実施の形態1における移動目標検出装置100は、移動目標を検出する際に、移動目標検出部150が目標分布図の示すSAR画像AとSAR画像Bとの各画素の振幅差を特定の閾値と比較するのではなく、目標分布図の示すSAR画像AとSAR画像Bとの各画素の振幅差をSAR画像AまたはSAR画像Bが示す各画素の振幅で除算した抑圧比を特定の閾値と比較する点を特徴とする。
これにより、実施の形態1における移動目標検出装置100は移動体の誤検出を抑圧することができる。
【0033】
次に、S106における移動目標検出部150の移動目標検出処理の詳細について説明する。
図4は、実施の形態1における移動目標検出部150の移動目標検出処理を示すフローチャートである。
【0034】
<S201:CFAR処理>
まず、CFAR処理部151は目標分布図をCFAR処理して識別対象となる目標を目標分布図から選択する。
このとき、CFAR処理部151は目標分布図記憶装置196から目標分布図を取得する。そして、CFAR処理部151は目標分布図に対して2次元CFAR処理を行う。2次元CFAR処理の結果は目標分布図における移動目標か静止目標かを識別する識別対象となる目標を示す。
【0035】
図5は、2次元CFAR処理における各セルの関係図である。
2次元CFAR処理では、目標分布図に対して各画素を注目セルとして図5に示すようにリファレンスセルとガードセルとを設定する。次に、2次元CFAR処理では、リファレンスセル領域の輝度(目標分布図が示すSAR画像AとSAR画像Bとの振幅差)の平均値とCFAR(スレッショルド)係数とに基づいて注目セルに対する閾値を決定する。そして、2次元CFAR処理では、全画素について閾値を決定し、閾値と比較することにより、周囲に比べて輝度の高い目標部分を抽出する。これにより、2次元CFAR処理では、周囲に比べて輝度の低いノイズ部分を除去することができる。
図6、図7は、2次元CFAR処理によるノイズの除去例を示す図である。
図8は、移動目標の識別例を示す図である。
ここで、S105(図3参照)において画像差分処理部140がSAR画像AとSAR画像Bとの振幅の差分を取った目標分布図が図6を示したとする。図6は、SAR画像AとSAR画像Bとに振幅差が生じた画素を黒く表しており、SAR画像AとSAR画像Bとに振幅差が生じた画素の集合部分を目標a〜目標qで表している。
2次元CFAR処理では、例えば、図6に示す目標分布図に対してノイズ部分である目標e〜目標qを除去する。
S202〜S203(図4参照)では、例えば、図7に示す2次元CFAR処理によりノイズが除去された目標分布図に対して、図8に示すように各目標が移動目標であるか静止目標であるかを特定する。
【0036】
<S202:抑圧比算出処理>
次に、抑圧比算出部152は識別対象となる目標を対象に目標分布図をSAR画像で除算した抑圧比を算出する。または、抑圧比算出部152は識別対象となる目標を対象に一方のSAR画像を他方のSAR画像で除算した抑圧比を算出する。
このとき、抑圧比算出部152は目標分布図記憶装置196から目標分布図を取得し、SAR画像A記憶装置194からSAR画像Aを、または、SAR画像B記憶装置195からSAR画像Bを取得する。そして、抑圧比算出部152は、CFAR処理部151が選択した目標の画素部分を対象に、目標分布図が示すSAR画像AとSAR画像Bとの各画素の振幅差をSAR画像AまたはSAR画像Bが示す各画素の振幅で除算した抑圧比を算出する。
または、抑圧比算出部152はSAR画像A記憶装置194からSAR画像Aを取得し、SAR画像B記憶装置195からSAR画像Bを取得し、CFAR処理部151が選択した目標の画素部分を対象にして一方のSAR画像(例えば、SAR画像A)が示す各画素の振幅を他方のSAR画像(例えば、SAR画像B)が示す各画素の振幅で除算した抑圧比を算出する。
抑圧比算出処理(S202)の具体例について後述する。
【0037】
<S203:目標識別処理>
そして、目標識別部153は抑圧比と閾値とを比較し、識別対象となる目標が移動目標か静止目標かを識別して移動目標を検出する。
このとき、目標識別部153は抑圧比算出部152が算出した抑圧比と特定の閾値とを比較する。そして、目標識別部153は抑圧比が閾値より大きい目標を移動目標と判定し、抑圧比が閾値より小さい目標を静止目標と判定する。
【0038】
実施の形態1における移動目標検出装置100は、移動目標検出部150が移動目標を検出する際に、目標識別部153が目標分布図の示すSAR画像AとSAR画像Bとの各画素の振幅差を特定の閾値と比較するのではなく、目標分布図の示すSAR画像AとSAR画像Bとの各画素の振幅差をSAR画像AまたはSAR画像Bが示す各画素の振幅で除算した抑圧比を特定の閾値と比較する点を特徴とする。または、実施の形態1における移動目標検出装置100は、目標識別部153が一方のSAR画像(例えば、SAR画像A)が示す各画素の振幅を他方のSAR画像(例えば、SAR画像B)が示す各画素の振幅で除算した抑圧比を特定の閾値と比較する点を特徴とする。
ここで、移動目標は異なる時刻のレーダ観測により得られたSAR画像AとSAR画像Bとでは現れる画素位置が異なり、移動前のSAR画像Aでは移動後のSAR画像Bが示す移動目標の画素位置における振幅値が小さい。また、移動後のSAR画像Bでは移動前のSAR画像Aが示す移動目標の画素位置における振幅値が小さい。このため、抑圧比算出部152が目標分布図またはSAR画像A(またはSAR画像B)を小さい振幅値を示すSAR画像B(またはSAR画像A)で除算して算出した移動目標の抑圧比は大きい値を示す。
また、静止目標は通常、移動目標より観測される受信信号の振幅が大きいため、SAR画像AおよびSAR画像Bが示す各画素の振幅値は大きい値を示す。このため、抑圧比算出部152が目標分布図またはSAR画像A(またはSAR画像B)を大きい振幅値を示すSAR画像B(またはSAR画像A)で除算して算出した静止目標の抑圧比は小さい値を示す。
つまり、抑圧比は移動目標を大きい値で示し、静止目標を小さい値で示す。
このため、目標識別部153は抑圧比を特定の閾値と比較して移動目標の検出を行うことにより、目標分布図の値を特定の閾値と比較して移動目標の検出を行うより、容易に閾値を設定でき、容易に移動目標を検出することができ、移動目標の誤検出を減らすことができる。
【0039】
次に、抑圧比算出処理(S202)と目標識別処理(S203)との具体例について図9〜図30に基づいて説明する。
【0040】
図9は、(1)SAR画像Aと(2)SAR画像Bとの具体例を示す図である。
具体例として、時刻tにおけるレーダ観測により得られた(1)SAR画像AとΔt後の時刻t+Δtにおけるレーダ観測により得られた(2)SAR画像Bとを図9に示す。
図9において、各セルは画面上の画素を示し、SAR画像には移動目標と静止目標との2つの目標を示す画素群に受信信号の振幅値が表されており、移動目標は時刻tから時刻t+Δtにかけて右方に移動していることを示している。
図10は、(1)SAR画像Aと(2)SAR画像Bとに対する目標分布図と除数を(1)SAR画像Aとする抑圧比とを示す図である。
例えば、画像差分処理(S105)において、画像差分処理部140はSAR画像AとSAR画像Bとの振幅の差分の絶対値を計算して目標分布図を生成する。(1)SAR画像Aと(2)SAR画像Bとの差分の絶対値を計算して生成した目標分布図を図10左側に示す。
また例えば、抑圧比算出処理(S202)において、抑圧比算出部152は目標分布図が示すSAR画像AとSAR画像Bとの振幅差をSAR画像Aで除算して抑圧比を算出する。(1)SAR画像Aと(2)SAR画像Bとの差分の絶対値を示す目標分布図に対してSAR画像Aで除算して算出した抑圧比を図10右側に示す。
【0041】
ここで、抑圧比に対してではなくSAR画像に対して閾値との比較を行って移動目標を検出した場合について説明する。
図11は、(2)SAR画像Bを閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図である。
例えば、図11左側に示す(2)SAR画像Bを閾値「1」と比較した場合、移動目標部分の値も静止目標部分の値も閾値「1」より大きいため、図11右側に示すように移動目標と静止目標とを分離することができない。
【0042】
次に、抑圧比に対してではなく目標分布図に対して閾値との比較を行って移動目標を検出した場合について説明する。
図12は、(1)SAR画像Aと(2)SAR画像Bとの目標分布図を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図である。
例えば、図12左側に示す(1)SAR画像Aと(2)SAR画像Bとの目標分布図を閾値「1」と比較した場合、(1)SAR画像Aに表れる時刻tにおける移動前の移動目標部分の値も(2)SAR画像Bに表れる時刻t+Δtにおける移動後の移動目標部分の値も閾値「1」より大きいため、図12右側に示すように1つの移動目標を時刻tにおける移動前の移動目標と時刻t+Δtにおける移動後の移動目標との2つの移動目標に分離して検出してしまう。
【0043】
次に、抑圧比に対する閾値との比較により移動目標を検出した場合について説明する。
図13は、(1)SAR画像Aと(2)SAR画像Bとの抑圧比(除数:SAR画像A)を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図である。
例えば、図13左側に示す(1)SAR画像Aと(2)SAR画像Bとの抑圧比(除数:SAR画像A)を閾値「1」と比較した場合、静止目標部分の値と(1)SAR画像Aに表れる時刻tにおける移動前の移動目標部分の値とが閾値「1」以下であり、(2)SAR画像Bに表れる時刻t+Δtにおける移動後の移動目標部分の値が閾値「1」より大きいため、図13右側に示すように時刻t+Δtにおける移動目標を静止目標と時刻tにおける移動目標とから分離して検出することができる。
【0044】
図9〜図13において、目標識別部153は抑圧比を閾値「1」と比較して移動目標を検出することを特徴とする。
【0045】
図9〜図13では、静止目標が時刻tにおけるSAR画像Aと時刻t+ΔtにおけるSAR画像Bとで振幅に差が出ないものとして説明した。
次に、図14〜図17に基づいて、観測誤差により、静止目標が時刻tにおけるSAR画像Aと時刻t+ΔtにおけるSAR画像Bとで振幅に差が出るものとして説明する。
【0046】
図14は、(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとの具体例を示す図である。
図14は、図9に対応する図であり、時刻tにおける(3)SAR画像Aと時刻t+Δtにおける(4)SAR画像Bとで静止目標の振幅に差が有る点が図9と異なる。
図15は、(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとに対する目標分布図と除数を(3)SAR画像Aとする抑圧比とを示す図である。図15は図10に対応する。
図16は、(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとの目標分布図を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図である。
図16は、図12に対応し、目標分布図を閾値と比較した場合、閾値に「0.2」以上「2.0」未満の値を取れば静止目標と移動目標とを分離して検出することができるが、1つの移動目標を時刻tにおける移動目標と時刻t+Δtにおける移動目標との2つの移動目標に分離して検出してしまうことを示している。
図17は、(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとの抑圧比(除数:SAR画像A)を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図である。
図17は、図13に対応し、抑圧比を閾値と比較した場合、閾値に「1」以上の値を取れば時刻t+Δtにおける移動目標を検出できることを示している。
【0047】
図14〜図17において、目標識別部153は抑圧比を閾値「1」と比較して移動目標を検出することを特徴とする。
【0048】
図9〜図17では、SAR画像AとSAR画像Bとの振幅差の絶対値を目標分布図とした場合について説明した。
次に、図18〜図20に基づいて、SAR画像AからSAR画像Bを減算して算出した振幅差を目標分布図とした場合について説明する。
【0049】
図18は、(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとに対する目標分布図と除数を(3)SAR画像Aとする抑圧比とを示す図である。
図18は、図15に対応する図であり、目標分布図が、(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとの振幅差の絶対値ではなく、(3)SAR画像Aから(4)SAR画像Bを減算した値である点が図15と異なる。
図19は、(3)SAR画像Aから(4)SAR画像Bを減算した目標分布図を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図である。
図19は、図16に対応し、目標分布図を閾値と比較した場合、閾値に「0.2」以上「2.0」未満の値を取れば時刻t+Δtにおける移動目標を検出できることを示している。
図20は、(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとの抑圧比(除数:SAR画像A)を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図である。
図20は、図17に対応し、抑圧比を閾値と比較した場合、閾値に「0.05」以上の値を取れば時刻t+Δtにおける移動目標を検出できることを示している。
図19と図20とにおいて、時刻t+Δtにおける移動目標を検出できる閾値の範囲は目標分布図と比較する場合の範囲「0.2〜2.0」に対して抑圧比と比較する場合の範囲「0.05〜」の方が広い。つまり、抑圧比を閾値と比較する移動目標検出方法は、閾値の設定が容易であり、移動目標の検出が容易である。
【0050】
図9〜図20では、時刻tにおけるSAR画像Aを除数とした抑圧比に基づいて時刻t+Δtにおける移動目標を検出することについて説明した。
次に、図21〜図22に基づいて、時刻t+ΔtにおけるSAR画像Bを除数とした抑圧比に基づいて時刻tにおける移動目標を検出することについて説明する。
【0051】
図21は、(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとに対する目標分布図と除数を(4)SAR画像Bとする抑圧比とを示す図である。
図21は、図15に対応する図であり、目標分布図を(3)SAR画像Aではなく(4)SAR画像Bで除算した値を抑圧比とする点が図15と異なる。
図22は、(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとの抑圧比(除数:SAR画像B)を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図である。
図22は、図17に対応し、除数を時刻t+ΔtにおけるSAR画像Bとする抑圧比を閾値と比較した場合、閾値に「1」以上の値を取れば時刻tにおける移動目標を検出できることを示している。
【0052】
図21〜図22では、SAR画像AとSAR画像Bとの振幅差の絶対値を示す目標分布図をSAR画像Bで除算した抑圧比に基づいて移動目標を検出することについて説明した。
次に、図23〜図24に基づいて、SAR画像BからSAR画像Aを減算して算出した振幅差を示す目標分布図をSAR画像Bで除算した抑圧比に基づいて移動目標を検出することについて説明する。
【0053】
図23は、(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとに対する目標分布図と除数を(4)SAR画像Bとする抑圧比とを示す図である。
図23は、図21に対応する図であり、目標分布図が、(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとの振幅差の絶対値ではなく、(4)SAR画像Bから(3)SAR画像Aを減算した値である点が図21と異なる。
図24は、(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとの抑圧比(除数:SAR画像B)を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図である。
図24は、図22に対応し、抑圧比を閾値と比較した場合、閾値に「−0.02」以上の値を取れば時刻tにおける移動目標を検出できることを示している。
【0054】
図23〜図24ではSAR画像BからSAR画像Aを減算した振幅差を目標分布図としたが、SAR画像AからSAR画像Bを減算した振幅差を目標分布図としてもよい。
この場合、閾値に「0.02」以下の値を取れば時刻tにおける移動目標を検出することができる。
【0055】
図9〜図24では、目標分布図をSAR画像で除算した値を抑圧比として説明した。
次に、図25〜図26に基づいて、一方のSAR画像を他方のSAR画像で除算した値を抑圧比として説明する。
【0056】
図25は、(4)SAR画像Bを(3)SAR画像Aで除算して算出した抑圧比を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図である。
図25は、図13などに対応し、(4)SAR画像Bを(3)SAR画像Aで除算して算出した抑圧比を閾値と比較した場合、閾値に「1.05」以上の値を取れば時刻t+Δtにおける移動目標を検出できることを示している。
図26は、(3)SAR画像Aを(4)SAR画像Bで除算して算出した抑圧比を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図である。
図26は、図13などに対応し、(3)SAR画像Aを(4)SAR画像Bで除算して算出した抑圧比を閾値と比較した場合、閾値に「0.98」以上の値を取れば時刻tにおける移動目標を検出できることを示している。
【0057】
図25〜図26において、目標識別部153は抑圧比を閾値「2(小数点以下を切り上げた場合)」と比較して移動目標を検出することを特徴とする。
【0058】
また、図9〜図26において、目標識別部153は、CFAR処理部151のCFAR処理(S201)により、SAR画像AとSAR画像Bとのいずれかが示す振幅が移動目標と静止目標との少なくともいずれかを示す所定の振幅以上であるセル(画素)について移動目標が存在するか判定することを特徴とする。
【0059】
図9〜図26では、CFAR処理により2つの目標(移動目標と静止目標)を識別対象とした場合について説明した。
図27〜図30では、CFAR処理を行わず、全ての目標(画素)を識別対象とした場合について説明する。
【0060】
図27は、(5)SAR画像Aと(6)SAR画像Bとの具体例を示す図である。
図27は、図14に対応し、時刻tにおける(5)SAR画像Aと時刻t+Δtにおける(6)SAR画像Bとの具体例を示している。
図28は、(5)SAR画像Aと(6)SAR画像Bとに対する目標分布図と除数を(5)SAR画像Aとする抑圧比とを示す図である。図28は図15に対応する。
図29は、(5)SAR画像Aと(6)SAR画像Bとの目標分布図を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図である。
図29は、図16に対応し、目標分布図を閾値と比較した場合、閾値に「0.2」以上「1.8」未満の値を取れば静止目標と移動目標とを分離して検出することができるが、1つの移動目標を時刻tにおける移動目標と時刻t+Δtにおける移動目標との2つの移動目標に分離して検出してしまうことを示している。
図30は、(5)SAR画像Aと(6)SAR画像Bとの抑圧比(除数:SAR画像A)を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図である。
図30は、図17に対応し、抑圧比を閾値と比較した場合、閾値に「2.00」以上「19.00」未満の値を取れば時刻t+Δtにおける移動目標を検出できることを示している。
【0061】
図9〜図30において、目標識別部153はSAR画像Aの第一の時刻(t)とSAR画像Bの第二の時刻(t+Δt)とのうち抑圧比算出部152が抑圧比を算出した際にSAR画像を除数にしなかった方の時刻に、当該画素位置に移動目標が存在したと判定することを特徴とする。第一の時刻(t)と第二の時刻(t+Δt)とは入れ替わっても構わない。
【0062】
また、図9〜図30において、抑圧比算出部152は目標識別部153がSAR画像Aの第一の時刻(t)における移動目標の位置を判定する場合に第二の時刻(t+Δt)におけるSAR画像Bを除数として抑圧比を算出し、目標識別部153がSAR画像Bの第二の時刻(t+Δt)における移動目標の位置を判定する場合に第一の時刻(t)におけるSAR画像Aを除数として抑圧比を算出することを特徴とする。
【0063】
上記のように、実施の形態1では、抑圧比を閾値と比較することにより、移動目標と静止目標との識別を容易にし、識別精度を向上し、移動目標の誤検出を抑圧することができる。
【0064】
なお、実施の形態1では移動目標検出装置100はSARセンサ110や運動センサ120や画像再生処理部130を備えているが、移動目標検出装置100はこれらを備えていなくても構わない。例えば、移動目標検出装置100は上空のレーダで取得されたSAR画像を入力データとしてSAR画像に写った移動目標を検出する地上のサーバ装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施の形態1における移動目標検出装置100の構成図。
【図2】実施の形態1における移動目標検出装置100のハードウェア資源の一例を示す図。
【図3】実施の形態1における移動目標検出方法を示すフローチャート。
【図4】実施の形態1における移動目標検出部150の移動目標検出処理を示すフローチャート。
【図5】2次元CFAR処理における各セルの関係図。
【図6】2次元CFAR処理によるノイズの除去例を示す図。
【図7】2次元CFAR処理によるノイズの除去例を示す図。
【図8】移動目標の識別例を示す図。
【図9】(1)SAR画像Aと(2)SAR画像Bとの具体例を示す図。
【図10】(1)SAR画像Aと(2)SAR画像Bとに対する目標分布図と除数を(1)SAR画像Aとする抑圧比とを示す図。
【図11】(2)SAR画像Bを閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図。
【図12】(1)SAR画像Aと(2)SAR画像Bとの目標分布図を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図。
【図13】(1)SAR画像Aと(2)SAR画像Bとの抑圧比(除数:SAR画像A)を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図。
【図14】(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとの具体例を示す図。
【図15】(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとに対する目標分布図と除数を(3)SAR画像Aとする抑圧比とを示す図。
【図16】(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとの目標分布図を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図。
【図17】(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとの抑圧比(除数:SAR画像A)を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図。
【図18】(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとに対する目標分布図と除数を(3)SAR画像Aとする抑圧比とを示す図。
【図19】(3)SAR画像Aから(4)SAR画像Bを減算した目標分布図を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図。
【図20】(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとの抑圧比(除数:SAR画像A)を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図。
【図21】(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとに対する目標分布図と除数を(4)SAR画像Bとする抑圧比とを示す図。
【図22】(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとの抑圧比(除数:SAR画像B)を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図。
【図23】(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとに対する目標分布図と除数を(4)SAR画像Bとする抑圧比とを示す図。
【図24】(3)SAR画像Aと(4)SAR画像Bとの抑圧比(除数:SAR画像B)を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図。
【図25】(4)SAR画像Bを(3)SAR画像Aで除算して算出した抑圧比を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図。
【図26】(3)SAR画像Aを(4)SAR画像Bで除算して算出した抑圧比を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図。
【図27】(5)SAR画像Aと(6)SAR画像Bとの具体例を示す図。
【図28】(5)SAR画像Aと(6)SAR画像Bとに対する目標分布図と除数を(5)SAR画像Aとする抑圧比とを示す図。
【図29】(5)SAR画像Aと(6)SAR画像Bとの目標分布図を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図。
【図30】(5)SAR画像Aと(6)SAR画像Bとの抑圧比(除数:SAR画像A)を閾値と比較した場合の移動目標の検出結果を示す図。
【符号の説明】
【0066】
100 移動目標検出装置、110 SARセンサ、120 運動センサ、130 画像再生処理部、131 画像再生処理部A、132 画像再生処理部B、140 画像差分処理部、150 移動目標検出部、151 CFAR処理部、152 抑圧比算出部、153 目標識別部、191 受信信号A記憶装置、192 受信信号B記憶装置、193 運動データ記憶装置、194 SAR画像A記憶装置、195 SAR画像B記憶装置、196 目標分布図記憶装置、911 CPU、912 バス、913 ROM、914 RAM、915 通信ボード、920 磁気ディスク装置、921 OS、923 プログラム群、924 ファイル群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を照射して照射方向の各所からの反射波の振幅を第一の時刻と第二の時刻とに観測し、第一の時刻における各所の反射波の振幅と第二の時刻における各所の反射波の振幅とに基づいて異なる時刻における反射波の振幅差が静止体より大きい移動体を検出する移動目標検出装置であり、
第一の時刻における各所の反射波の振幅と第二の時刻における各所の反射波の振幅との差の絶対値をCPU(Central Proccessing Unit)を用いて算出する差算出部と、
前記差算出部が算出した各所の反射波の振幅差を第一の時刻と第二の時刻とのいずれかの時刻における各所の反射波の振幅で除算した除算値をCPUを用いて算出する除算部と、
前記除算部が算出した除算値と特定の閾値とをCPUを用いて比較し、除算値が前記特定の閾値より大きい場合に当該位置に移動体が存在すると判定して移動体を検出する移動体検出部と
を備えたことを特徴とする移動目標検出装置。
【請求項2】
前記移動体検出部は、前記特定の閾値を1とすることを特徴とする請求項1記載の移動目標検出装置。
【請求項3】
電磁波を照射して照射方向の各所からの反射波の振幅を第一の時刻と第二の時刻とに観測し、第一の時刻における各所の反射波の振幅と第二の時刻における各所の反射波の振幅とに基づいて異なる時刻における反射波の振幅差が静止体より大きい移動体を検出する移動目標検出装置であり、
第一の時刻と第二の時刻との一方の時刻における各所の反射波の振幅を第一の時刻と第二の時刻との他方の時刻における各所の反射波の振幅で除算した除算値をCPU(Central Proccessing Unit)を用いて算出する除算部と、
前記除算部が算出した除算値と特定の閾値とをCPUを用いて比較し、除算値が前記特定の閾値より大きい場合に当該位置に移動体が存在すると判定して移動体を検出する移動体検出部と
を備えたことを特徴とする移動目標検出装置。
【請求項4】
前記移動体検出部は、前記特定の閾値を2とすることを特徴とする請求項3記載の移動目標検出装置。
【請求項5】
前記移動体検出部は、第一の時刻における反射波の振幅と第二の時刻における反射波の振幅とのいずれかの振幅が移動体と静止体との少なくともいずれかを示す所定の振幅以上である位置について移動体が存在するか判定する
ことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかに記載の移動目標検出装置。
【請求項6】
前記移動体検出部は、第一の時刻と第二の時刻とのうち前記除算部が前記除算値を算出した際に各所の反射波の振幅を除数にしなかった方の時刻に、当該位置に移動体が存在したと判定する
ことを特徴とする請求項1〜請求項5いずれかに記載の移動目標検出装置。
【請求項7】
前記除算部は、前記移動体検出部が第一の時刻における移動体の位置を判定する場合に第二の時刻における各所の反射波の振幅を除数として前記除算値を算出し、前記移動体検出部が第二の時刻における移動体の位置を判定する場合に第一の時刻における各所の反射波の振幅を除数として前記除算値を算出する
ことを特徴とする請求項1〜請求項5いずれかに記載の移動目標検出装置。
【請求項8】
電磁波を照射して照射方向の各所からの反射波の振幅を第一の時刻と第二の時刻とに観測し、第一の時刻における各所の反射波の振幅と第二の時刻における各所の反射波の振幅とに基づいて異なる時刻における反射波の振幅差が静止体より大きい移動体を検出する移動目標検出方法であり、
差算出部が第一の時刻における各所の反射波の振幅と第二の時刻における各所の反射波の振幅との差の絶対値をCPU(Central Proccessing Unit)を用いて算出する差算出処理を行い、
除算部が前記差算出部が算出した各所の反射波の振幅差を第一の時刻と第二の時刻とのいずれかの時刻における各所の反射波の振幅で除算した除算値をCPUを用いて算出する除算処理を行い、
移動体検出部が前記除算部が算出した除算値と特定の閾値とをCPUを用いて比較し、除算値が閾値より大きい場合に当該位置に移動体が存在すると判定して移動体を検出する移動体検出処理を行う
ことを特徴とする移動目標検出方法。
【請求項9】
電磁波を照射して照射方向の各所からの反射波の振幅を第一の時刻と第二の時刻とに観測し、第一の時刻における各所の反射波の振幅と第二の時刻における各所の反射波の振幅とに基づいて異なる時刻における反射波の振幅差が静止体より大きい移動体を検出する移動目標検出方法であり、
除算部が第一の時刻と第二の時刻との一方の時刻における各所の反射波の振幅を第一の時刻と第二の時刻との他方の時刻における各所の反射波の振幅で除算した除算値をCPU(Central Proccessing Unit)を用いて算出する除算処理を行い、
移動体検出部が前記除算部が算出した除算値と特定の閾値とをCPUを用いて比較し、除算値が閾値より大きい場合に当該位置に移動体が存在すると判定して移動体を検出する移動体検出処理を行う
ことを特徴とする移動目標検出方法。
【請求項10】
請求項8〜請求項9いずれかに記載の移動目標検出方法をコンピュータに実行させることを特徴とする移動目標検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2008−164545(P2008−164545A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356809(P2006−356809)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】